○堀木鎌三君 今ちよつと私ほかの
委員会へ参
つておりましたので、
一松委員がどういうふうなところから
お話になりましたのか、全部は承わりませんが、何と申しますか、この
前文を我々が読みまして、先ず
考えられますことは、やはりここに書いてあります、
日本国の
法制によ
つて作られはじめた安定及び
福祉の
條件を
日本国内に創造するために
努力して参らなければならん、又
国際連合憲章の五十
五條及び五十六條に定められたものに対しまして、我々が
国際的に責任を負うというふうなことにな
つて参るのですが、私は特に
今一松君の言われた
労働問題について更に念を押しておかなければならない責任を感じておるのであります。細かいことは
労働委員会で申上げたいと思いますが、本
委員会におきましても、総理が、チープ・レーバーということがです、
日本の国のチープ・マネーと不可分の、密接不離の関係にあるようにして、そしてチープ・レーバーを肯定されるがごとき言辞があ
つたので、特に私は御
質問いたしたいと思うのであります。今
労働問題でよく言われますことは、
労働三法を初め、
労働各種の
法制が
国際的
水準にあるということを言われ、そうしてリツジウエイ声明に基きまして、
実情に合わないということからすべての問題が検討されると、こういうふうな形なんでありますが、この
実情問題というものがですね、頗る何と申しますか、
意味があるんであります。
実情、
実情の名に隠れて、とかく反動的な方向に向わんとする傾向なきにしもあらず、これは私の断定ではなしに、現に
国際の
労働会議等におきまして、最近の吉田内閣の傾向が、或いはこの終戰後始められました新らしい民主主義の傾向に反するのではなかろうかという疑いすら持
つて参
つたということの事実を以てしても、その傾向が必ずしも私の断定でない、こういうことが言い得ると思うのであります。そういう
意味から、私に言わせれば、今丁度
一松委員の言われましたように、
労働大臣としては、先ほどの御答弁のように新らしい民主主義の下に、終戰後
日本が歩んで参りましたこの
国民的な理想というものは飽くまでも棄てられないというふうな点が強く政策面に現われて参りませんと、とかく何と申しますか、違
つた、逆な方向に参り勝ちであるということを感ぜざるを得ないのであります。特に
労働大臣として御注意を願いたいことは、
労働省の機能的なものが非常に限局された、
專門的な
労働問題に限られるような傾向がありやしないか。
労働問題が全
日本産業の基盤的なもので、すべての産業、経済の問題全般の重要なポイントをなしておるという認識の下に立
つて吉田内閣の政策というものが果して行われておるんだろうか。外国においては、為替問題をきめることすら、
労働者の
生活をどこへ持
つて行くかということから審議されておる。ところが今の内閣全体の行政の方針を、行政の
動きを見ますと、およそ経済、産業の問題は別個の問題にな
つて、
労働大臣がどこまで御指導にな
つておるかということについて、
〔
委員長退席、
理事一松政二君
委員長席に着く〕
私は頗る疑いを懷くような全体の行政の
動きでなかろうか。そういう問題から
考えますと、ただ
実情というあるがままの姿で参りますると、とかくこれが違
つた方向に参る傾向がある。で、例えば一例を申上げますると、
日本の物価が高い、そしてそれは
国際水準を上廻
つておる、その
国際水準を上廻
つて参りましたことは、
国際的な価格の騰貴ということも
一つあります、併しながら、と同時に中共
貿易が杜絶して、原材料を遠隔の地から求めなければならない。で、船賃だけでも、ものによりましては原価に相当するくらいの船賃を、近間の中共その他の
貿易において得たものよりは更に高いものにな
つて来ておる。そうすると、これを
国際価格に鞘寄せするということが内閣の方針でありますが、そうなると、そこに、どこにその価格のしわ寄せが生まれるかということにな
つて参りますると、これは当然今までの
実情に副わないというふうな観念の頭の持主であ
つたら、労銀の占むる割合というものの所へしわ寄せが参るにきま
つている。もう材料のまま、そのままきま
つて来る。あと生産費の相当部分を占めまする
労働問題にしわ寄せが参るということがよく行われる。で、この問題は私は非常に注意しなければならない問題だと、こういうふうに
考える。
労働者の賃金の問題のみならず、
労働者の
福祉の問題、すべての
労働條件にかか
つて来て、賃金問題その他の
労働條件にみんなしわ寄せされて来るという心配があるわけであります。そうすると、ここで一体、他方の
労働者以外の
政府なり、経営者は何をしなければならないか、
政府なり経営者はです、そういう
労働者の
福祉に関係する新らしい意欲を、
努力を重ねないで、
現状のままで以て
労働賃金の高いことを言い勝ちなんです。経営者
自身がみずから経営の合理化について
努力するのは当然のこと、
政府の通産大臣なり、大蔵大臣のや
つておりますところのです、金融だとか、産業の面におきます政策が
労働賃金から、賃金及び
労働條件にですね、如何なるように積極的な
努力がされなければならないか、そういう点は、
労働大臣が本当に
労働者の味方にな
つて、その
努力をなす
つた上でなければです、
実情に副わないということで、
労働條件に持
つて行くわけには行くまい。果して
政府が、
政府なり経営者なり
資本家なりがです、そういうふうな点についてできるだけの
努力を拂
つてです、なお且つ
実情に副わないかどうかというふうな問題をお
考え願わなければならない問題だ、このバランスが合わないままにどうも
労働條件が
実情に副わない、こういうふうな
態度では私は、この條約を本当に、本当にです、施行して行く
日本の
国際的な
義務が遂行されないと、こう思うのであります。中でも特に例を挙げて申しますと、
労働大臣の非常なお骨折で、婦人少年局の存置でありますとか、その他の問題は一応きま
つておるようであります。併しながらなおまだこの婦人少年の
労働問題についてはもやもやしたものが残
つていないとは言えない。
日本の
労働問題のうち一番
国際的の問題になりますことの
一つは、やはり少年
労働、婦人
労働の
労働條件の問題だ、
日本の
実情から見まするとです、先ほど
労働大臣も言われましたように、
法制があ
つても実際は、
実情から言いますと、まだまだ理想に到達すること甚だ遠いものがあるというふうに私は
考えるわけであります。
労働省の
労働基準監督局の機構も減らされる、無論ある程度の行政整理のおつき合いがあ
つていいかということを
考えますと、実際
労働基準局では現在一番大切なこういう中小企業、全体の国の問題として
労働問題が
現実の問題として現われて来るのは中小企業ですが、こういう婦人、少年
労働問題、中小企業の
労働問題等は、
実情としてどうお
考えに
なつた
つて国際水準まで行
つていない。併し何とか或る程度
努力しなければならん責任がある。そこを埋めようとしないで、
実情に合わないんだということだけで、埋める
努力が精一ぱい出て来ておるのならいいのですが、しないで
実情に合わないのだ、こういうふうなことにとかくなり勝ちである。今後実は
労働省が
労働三法を改正される、これは
労働大臣としては責任は負わないかも知れませんが、こういうことすら、あの
労働三法を改正されるもとのところには、こういうことすら出ているわけです。
労働法を改正するのは、從来GHQという
一つの法外の実力があ
つた。それに頼
つて労働の
最後の平和が保たれた。この圧力がなくなると、何とか
法制的に
考えなくちやならないのではなかろうかということが
一つ挙げられております。
労働省の三法改正の理由に、これは私はこういうことが挙げられるようじや実は困
つたものだ、そういう圧力がなしにお互いにあの新らしい民主主義の方向というものが守られて行かなければならない。幸いに三法については
労働大臣も私の
意見を容れられたのか、
労働大臣自身の頭が私の頭より進歩的であ
つたのでおとりにな
つたのか、それは別といたしまして、非常に改正についても愼重を期せられた。私
どもがそう言つちや悪いのですが、幾分邪推よりも進歩的の方向へ動いております。(笑声)
労働大臣は、全体の
政治なり、行政の
動き方を見ますと、よほど御決心をなさらないと、今までの個々の問題で起
つて来ましたものを一例として挙げましたが、そういう問題でもときどき反動的な、そうして新らしい條約の方向に向
つて行こうとする
努力が消されてしまう傾向になりやしないか。この條約の批准に当
つて、
労働大臣が積極的に十分に新らしい
労働行政を国政全般の上から是非指導されなければならないし、その御決心がございましようか、その御決心を承わりたい、こういう
意味におきまして、私、御
質問申上げた次第であります。