○兼岩傳一君 私は同僚議員及び傍聽者の諸君が、この僕の一時間に亘る応答を聞かれて、果して私の
質問が正しか
つたか、或いは
総理代理の
閣僚、次官諸君の答弁が正しか
つたかは、これは又同時に速記録を通して全
国民に行
つて国民自身が判断すると思いますので、そういうような問題の
質問はここで打切りまして、私に與えられておりますいま少しの時間を利用いたしまして、平和條約並びに安保條約を、我が党はこれをどう見ているか。これに対して
吉田総理がこの二條約によ
つて本当に
日本が救われると
考えておられるかどうかという点を質したいと思うのです。恐らく
総理は答弁されないと思うのですが、これは法律を私は無視するもので、非常に許しがたい問題であり、特に
日本国民の今後の百年の運命をきめるこの両條約、私は数年たてば同僚議員も、何故我々がこのように、この條約を
締結することによ
つて日本国民の陷る筆紙に絶する困難なる
状態が来るということを述べたかということを御了解されて、全
国民もそれを知られる機会が来ると
考えますが、それでは遅いのです。
従つて私はここで両條約の持つ役割を極めて明快にしつつ、
総理の答弁を最後的に求めたいと思います。
私はこの両條約の審議に当
つて、あらゆる会派のとられる判断の最後の問題は、果してこの平和、安保の條約が文字
通り平和であり、
日本の安全を保障するかどうか、これが私はあらゆる
政治的な
見解はどうであろうとも、会派をどう異にしようとも、この問題が私はこの條約に対する最後のイエス、ノーをきめる基準だと
考えます。私はこの両條約に対する批判の根拠となるものはこういう点にあると思います。これは我々が今後
世界の平和を維持し、
日本の平和、
独立を維持して行くためには、資本主義の体制であるとか
社会主義の体制であるとかいうことで毛ぎ
らいするかどうか、これに対して
総理は共産主義がこの世の中からなくならぬ限りおれはみこしを上げぬのだという答弁を数日前にされたかと思うと、昨日はおれは
イデオロギーには捉われぬのだというような、そういう全く前後矛盾した答弁をしておられますが、事実資本主義体制というものは
世界の半数を占め、
社会主義体制というものが他の半ばを占めておるということは、これは存在するところの
世界の現実そのものである。若しもどちらかの一体制が他の体制を亡ぼそうとすれば、これはもう明確に
世界大
戰争になるのであります。併しこの二つの体制が平和的に若し共存できるということ、つ
まりどういう体制を選ぶか。
日本についての体制は
日本人がきめる、
朝鮮の体制は
朝鮮人がきめるというふうに、民族の自由な意思に任せて、
内政に干渉しないということであるならば、
世界の
戰争は避けられる。そうして
世界人民の熱望はこれである。これは私の理窟でなくて、第二次大戰において、一方がドイツ、イタリア、
日本という資本主義国で、これと戰
つたのが資本主義の米英と経済制度の異
なつた
社会主義ロシア、これが共同して現に戰
つたということ、これはもう理窟を超えて現実、
歴史的な事実であります。
従つてこの
歴史的な経験として
国際連合が生れ、二つの体制は決して
戰争の原因とはならないということ、それから他国の
内政に干渉してはならないということ、もつとそれぞれの国家が自分の主権で以て自分の体制をきめ、それらの
国々は全く平等である。どれが上でどれが下ということはないということ。そうして第三に、現実に
世界平和を維持するためには、どうしてもこの二つの体制を代表する米英と
ソヴイエトのような大国がこの
歴史的の事実から生み出された国連憲章の精神に
従つて協調して行かなければならない。これが
世界歴史の結論なのであります。それが守られれば
世界の平和は維持されますし、
日本の平和も
独立も維持され、
世界の人民も幸福である。私はこの点を
総理に
質問したいのでありますが、若し
原則が守られなければ、あなたがどんなに
国民の先頭に立
つてこの條約に調印されようと、私は
日本の今後の平和は守れないと思う。これは私の
意見でなくて、
朝鮮の現実がどうであ
つたかということを
考えて頂きたい。
朝鮮については、
日本政府では国連の決定だと言い、又は北鮮が南鮮に侵入して来たか
らいかんじやないかと言
つておられる。併し私は
総理にお尋ねしたい。
朝鮮が
朝鮮を侵略するということがあるか。これはすでに衆議院で非常に論議されましたが、私は
吉田総理に対してはもつと
吉田総理の胸を打つような事実を以てお尋ねしたい。それは大正十四年広東に初めて
国民政府ができまして、北伐を開始いたしました当時、
総理は非常に優秀な
外交官として活躍せられた。当時
日本の軍閥が干渉のために出兵をした。これに対してその当時の外務大臣幣原氏は、
中国に対して干捗してはいかんじやないか、不干渉主義でなくてはいけないではないかということを
主張したために、軟弱
外交だというそしりを受けました。併しその後の
政治的の推移、
中国の
内政に干渉した軍閥こそが満洲事変を起し、支那事変を起し、太平洋
戰争に持
つて来たではありませんか。その
歴史を繰返してはならんということは、私は
吉田総理も深く
決意しておられるところであろうと思う。然るに明らかに
朝鮮では、
朝鮮が
朝鮮に侵入するという、論理的にも理解すべからざる、
歴史的にも許し得ない、そういう妙な
言葉で以て
内政干渉戰争が行われておるではありませんか。私はこの点について
総理が、
朝鮮が
朝鮮に侵入しておるなぞということを正気であなたがしておられるか、先輩幣原の
考えとあなたの
考えとはどういう今変化が来ておるか、これに私は
お答えを願
つて最後の
一つの
質問にしたいと思います。