○曾祢益君 私も
独立国の
日本には、中立不可侵條約や無防衛無抵抗主義ではや
つて行けない。従
つて国連憲章に基いた
安全保障が必要である。恐らくは第五十一條に基いたような地域的集団保障が暫定的には必要ではないか。かように
考えるのでありますが、併し今述べられた圧力がなか
つたといたしましても、どうも今度の條約は、内容的に見て、これは條約を多少知
つている者の常識から言
つて、いろいろ恰好が不平等とか、まずい点がたくさんあり過ぎると
考えるのであります。先ず不平等の建前に私は立
つている。これは平等の建前ではございません。
総理は憲法の建前を守り、且つ
日本の民心、或いは経済復興と程度、更にまた海外の思感等を
考えられて、再
軍備の約束をしなか
つたこの点は諒とします。併し又そのことが
アメリカから見るならば、継続的且つ効果的な自肋及び相互援助といいまするか、ヴアンデンバーグ決議の基
本條件がない。だから
アメリカから見ると、かような立場、片務的な
安全保障はむずかしいという條件もあ
つたかとも思います。併しそれにいたしましても、今度の
日米安全保障條約という、できたものを見ますると、非常に不対等の原則が貫かれておるのではないか。
先ず前文であります。プレアンブルでありますが、
日本の懇請に対して
アメリカは差当り駐兵をしてやる、かような建前にな
つております。私は條約の專門家ではございません、何故例えば非常に素人的
意見で恐縮ですが、
日本の安全と極東の平和と安全は両国共通の関心事である。
日本の
自衛力がないから両国は次の
通り協定する、というぐらいの前文で、堂々と平等の立場からやれなか
つたかどうか、この点私は先ずわからないのであります。
続けて第一條の駐兵の目的でございまするが、
総理が如何に御説明になりましても、これでは駐兵を認めるだけであ
つて、つまり
日本は駐兵を認める。
アメリカは駐兵を引受ける。このことが第一條の根本であります。成るほど駐兵の目的が書いてはございます。併しこれだけでは
アメリカが集団
安全保障條約に副うた義務として
日本を保障するという
條項にはな
つておらない。この点は釈迦に説法でありまするから申上げません。例えば北大西洋同盟條約の第五條のごとき、明確なる義務規定はどこにもないではないか。これは駐兵
協定であ
つて、或いは駐兵
條項であるが、
安全保障條項には通常の観念から言
つてならないではないか。
時間がございませんので、続けて申上げます。更に又大規模な内乱騒擾の場合の規定でございます。これは私も
国際共産陣営の
侵略というものは、直接
侵略、間接
侵略いろいろな手がございます。いわゆる間接
侵略が、多く、いわゆる直接
侵略と合わさ
つて、からみ合
つてやられるということがあるし、かような場合に、果して
日本が当分の間十分なる
自衛力を発揮し得るやということについての懸念は持つものであります。北大西洋同盟條約につきましては、明文は設けなか
つたが、
解釈においてかような趣旨の内乱騒擾に対しては、やはり武力が発動することを
声明しておるのであります。併し何故にかようにわかり切
つたことをはつきりとした明文で設けたか。これは一体どちらの立場から述べられたか。
日本政府からお頼みにな
つたのか、或いは
アメリカからそれは押付けられたのか、この点はやはり
独立国の建前として、非常に重大な点と思うのでありますので、伺いたいと思うのであります。
更に又
駐屯の目的が
日本の
安全保障にだけに限
つておるならば、これは
日本の自主的な立場ということが明らかとなるでございましよう。併しそうではない。極東における
国際の平和と安全の維特に寄與するためにという
條項があります。これは一応尤もなようでございまするが、併し
日本から見れば、
日本みずからが守られることそれ
自身が、消極的ではあるけれども、最も大きな極東の平和と安全に対するこれは貢献なんだ。それ以上のことは
日本から要求するのは、
日本自身に
自衛力がないのでありまするから、そのようなことまで書く必要はない。して見ればこれは
アメリカ側の要請であるということが明らかになるのではないかと思うのであります。
政府は説明書等によりまして、この
アメリカ軍は
日本を基地として
国際平和、
日本の安全のために外国に出動するということは非常に当然のようにこう
考えておられるのでありますが、私は、又
アメリカ側といえども、勝手に、みずからの認定で外国に出動するために
日本を基地化するという意図はなかろう。これは
国際連合憲章から見まして、いわゆる
国際平和と安全のために出動する場合には、
安全保障理事会の決定若しくは総会の勧告のあ
つたときに初めて出得るのだ、私はかように
考える。併しよく調べて見ると、それ以外にもあるような気がするのであります。即ち五十一條に基くところの集団的
自衛権の発動として、必ずしも
国際連合の機関の決定なり勧告なしに出動する場合も出て来るのではないか。それはどういう場合かと申しますと、現実には
フイリピンとの防衛同盟條約の発動として、或いはオーストラリア、ニユージーランドとの防衛同盟の條約の発動として出て行く場合、かような場合も予想されるといたしますれば、結局
日本は必ずしも必要でないのみならず、見方によ
つては
日本に対する
一つのこれは牽制としての駐兵ということに事実上なるのではないか。私はかようなものは、
日本が
自衛力を持
つていない現状で、従
つて相互防衛的な太平洋同盟條約にな
つておらない今日、かようなものを押付けられる理由はないと感ずるのであります。
次に第二條の規定のごときは、極めて明瞭なる不平等
関係を私ははつきり示しておると思います。
更に
最後に第四條の規定でございまするが、この四條の規定は複雑難解でございます。複雑難解でありまして、要するに、
国際連合が完全にその
自身の治安、
安全保障能力を持つというようなことは、いつかわかりません。して見ますると、
日本が
自衛力を持つとき、或いは
日本が
自衛力を持
つて、完全なる相互主義に立
つた、いわゆる集団
安全保障條約ができるとき、いずれもこれは
日本の
自衛力ができることを当然の前提にしております。而して
吉田総理はしばしば言われたように、この
日本の
自衛力建設ということが先の先であるとすれば、この第四條に具体的にはつきりとした期限を設けてないということは、第四條の規定は事実上において半永久的
駐屯を意味することになるのではないか。この点が更にいわゆる不対等
関係から見て非常に大きな問題と存ずるのであります。
更に又この
安全保障條約に関連する
吉田、アチソン交換公文を拜見いたしましたが、私は何故にかような交換公文を
安全保障條約と一緒に作らなければならなか
つたかわからない。
日本が
講和條約に基き、且つ国連に参加を
希望する
日本といたしましては、朝鮮動乱が続いておるか続いてないかは、続かないことを
希望するのでありますが、続いておるような場合に、
講和後も続いておるような場合に、
日本が国連軍に援助することは当然である。そのときに
なつたら、そのときに
日本が
アメリカとではなくて国連当局との間に如何なる軍事的便宜を與うべきかを具体問題をきめればいい。それにもかかわらず
アメリカのアチソン国務長官と
日米安全保障條約を作
つたときにこの
講和後の国連の援助問題を話したいということは、これ又私は不対等の原則からなされた事象ではないかと思うのであります。
最後に憲法に反する問題でありまするが、いろいろ
政府のお
考えを伺
つたのでありまするが、私はどうしても納得できない。若しこの行政
協定も、これは七十三條による條約である。併しこの
安全保障條約によ
つて事前に、あらかじめ
承認を與えているのだから、それは一向憲法に違反しないのだ、かような御
議論のようでありまするが、若しそういう
議論をして行きまするならば、国会が一切の法律、條約、或いは予算の審議はしなくてもいいからと言
つて政府に白紙委任をしても、これが合憲法的であり、民主主義に反しないのであるか。かような
議論にすら発展しかねまじき、私は非常に無理な論法をしておられると思うのであります。
で、殊にこの実際の判定の基準というものは、形式ばかりではなくて、内容が非常に重要だと存じます。この内容たるや如何に重要であるか。如何に国連に関連する問題であるか、如何に
国民の
権利義務に重大な
関係があるかということについては、すでに皆様が、或いは米比間の條約におきまして、
協定におきまして、内容はほぼ想像がつくのであります。かような重要な内容のものを
政府は一方におきまして白紙委任状を取り、他方におきまして必要なものは法律或いは予算で国会の審議に附する。これは全く私に言わせれば矛盾ではないか、かように
考えるのであります。従
つて私はこの行政
協定に対する白紙委任状も、いろいろ
考えますると、実は行政
協定の内容ができてから、それと相待
つて安全保障條約を
締結して、そうして併せて国会の審議に持
つて来るというのが、
政府の予定ではなか
つたか。これは想像でありまするが、それが常識的にそうである。然るに急遽
安全保障條約の行政
協定の内容に関する話合いが付かざるにかかわらず、
安全保障條約の調印を余儀なくされた跡がそこにも私は歴然としているではないか、かような感覚を持つのであります。
今度の
安全保障條約及び平和條約につきまする正式の
政府の議案といたしましては、両條約限りでございまするが、この比較的軽徴ともいうべき平和條約に関連する二つの議定書と宣言、
安全保障條約に関する交換公文は、
政府の御説明によれば、併せて一括御審議御
承認を願います、こう言
つておられる。これが本当であ
つて、
安全保障條約を急遽や
つて、行政
協定は実はまだできておらない。だから白紙委任状をくれ、これは非常に無理である。そこに
国際関係から来た無理というか、歪みがそこに現われているのではないか。どうしても納得できないのであります。
最後に私は、この行政
協定の如何に重要かということについては、
政府も十分御承知とは存じまするが、今行政
協定すらできておらない、まだ
占領下であるこの過渡期におきまして、いろいろ日米国交上忽せにできないような事件が起
つておることを御注意申上げたいのであります。例えば、元の軍工場が民需に転換しております。これは横須賀市の例でありまするが、その民需に振替えました工場が、又軍事施設として強烈にこれの接收の問題が起
つておる。更に又或る特需工場におきましては、事実において
日本の労働基凖法その他労働
関係法規が全然励行されておらない。かような状態を
政府は放任して置くならば、
日本が折角
安全保障を依頼しようというこの日米
関係から見て、先ほどのロムロ氏の所説のごとく、これは非に重大なことではないか。どうぞこの点につきましても
政府が確固たる、この過渡期から行政
協定に至る間に十分なる御注意があ
つて、真劍に
国民の
権利義務を守り、日米間に累を及ぼさないような
措置を講じて頂きたいと存ずるわけであります。
以上一括いたしまして重要点につきまして
総理の御
答弁を願いたいと思います。