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1951-11-27 第12回国会 参議院 文部委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十七日(火曜 日)    午後二時六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            高田なほ子君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            平岡 市三君            高橋 道男君            荒木正三郎君            堂森 芳夫君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部大臣官房会    計課長     寺中 作雄君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省社会教育    局長      西崎  恵君    文部省管理局長 久保田藤麿君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君   —————————————   本日の会議に付した事件教育及び文化に関する一艇調査の件  (文部行政に関する件)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) これより本日の会議を開きます。文部大臣がお見えになつておりますから、御質疑のあるかたは……。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 大臣に対しましては、いろいろな質問事項があるのでございます。まあ実践要領の問題につきましても、又大豆の給食にからまる不正の問題、こういう問題が山積しておるのでありますが、その中で今日は京都大学事件、この問題につきまして、未だ当委員会では余り事件を一、二聴取したぐらいで問題になつておらないのであります。で、この問題について、是非これは明らかにして頂いたい。日本文教政策の今後のあり方について、明らかにされなければならない問題があると思いますので、この点について伺いたいと思うのであります。  そこで先ず第一に伺いたいことは、第一に学生が八人、何か退学させられた、こういうことを聞いておるのであります。新聞の報ずるところによりますというと、この責任者がこういう形で以て一応責任をとらされた。私はお聞きしたいのでありますが、これはどんな理由で一体こういうことになつたのであるか。この理由が問題だと思うのであります。と言いますのは、教育におきましては、何と言つても最初に教育者責任を糺すということをしないで、問題が起つたときに、その問題の末梢的な問題だけを取上げて、そうして根本責任が放棄されておる。こういうことになりましたならば、これは教育本末転倒も甚だしいと言わなければならないのであります。それで学生がこういう事件を起した、そうした場合に教育者は一体これを教え導いて来た者にあつては、どういうような一体これが責任がこれと共に関連して起るのか。我々は教育の本体から言いますれば、先ず本を糺す、教師みずからがこの問題を糺して然る後自分の教え子に及ぶというなら話はわかる。然るに反対に、こういう問題を起したその末梢的な事件だけを取上げて、それを糺して処分してしまつておる。こういうことであるので、教育の本当の精神から考えまして、誠にこれは情ないやり方である。こういうことは断じて許されない。こういうふうに思うのでありまして、こういうことから、先ずどういう理由によつてこの八人の学生退学処分に付せられたか、この理由について先ず伺いたい。
  4. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 退学とは私は聞いておりません。無期停学と聞いております。その理由とするところは、学生として不穏当な行為があつたというのと、それから従来から同学会において学生としては行き過ぎた行為があつたということのために無期停学にしたというように聞いております。ただこういうような学生処分とかそういうことについては、私は学長に全部任せておつて文部大臣が一々この学生処分がいいか悪いかという、そういうことまで大学に立入るという考えは持つておりません。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 大学に立入らない、大学の自治を尊重するということについては、無論これは厳として守られなければならないと思います。この問題につきましては、何かこの前衆議院の委員会のほうで大学管理法を修正して、この原案を直してもこれについて文部大臣の権限を拡大しなければならないなどということが某議員発言としてあつたそうでありますが、これはとんでもない問題だと思います。こんなことでは昔の大学への復活でありまして、そういうことは我々は全然望まないのでありますから、文部大臣はその学内処分をしたことについては、一応これについて今のような答弁をされるということは了承されるのでありますけれども、併しやはりですね、この学内処分の仕方、そういうものがやはりいろいろな影響を文部行政の中に持つて来るのでありまして、そういうものに対しては無論報告を受け、それに対して指導、助言する、こういうことはあり得る、これは文部省設置法からこういうことはあり得るわけだ。そういう点から窺つて見ますと、只今の理由とするところですが、不穏当な行為、行き過ぎた今まで行動があつた、こういうことで無期停学でありますか、私は退学と言いましたが、これは無期停学だそうですが、そういう処分に処せられた。そこで大体ですね、私の問題にしたいのは、そうすると学校当局学生にはそういうような処分をしたが、学校当局立場というものはどういうことになるか、口を拭つてすましておればいいことになるのですか。これは文部大臣としてどうお考えになりますか。
  6. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私も文部大臣大学に対して指導、助言するという責任を持つているということはよく承知いたしておりますが、併しすべてそういう細こいことまで指図はしない、大学に任せてある、又学長或いはその他の係の人たちも、決してただ学生処分してそれでよいと思つているわけじやなくて、非常に責任を感じておられることは当然だと思うけれども、そういう場合に、どういうようにそれをしたらよいかということは簡単に行かないことでありますから、それで先ず事件をもつと徹底的に調べ上げ、又学内で相談をされておることだろうと思つております。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 私はですね、結論的に申しますと、大体今度の問題で責任問題だ、責任問題だと騒いで歩き、或いは騒ぎを拡げておる者、こういうものこそ責任を負うべきだと考えている。だから学生が一体無期停学になることもどうかと思う。更に学内教授や何かが責任を負い、又文部大臣もこれに関連して何らかの責任を負う、こういうことこそ……。本末転倒だと考える。日本憲法から考えてこういうことはあり得ないと思う。私は、御承知のように、文部大臣がこの前予算委員会で触れられたのでありますが、責任を負われるとすれば日本憲法の当然の建前としまして、もつと国民に対して責任を持つて頂きたい。然るに、天皇空車の問題について問題を起して、これには非常に恐懼しまして、みずから国会に出られまして、求められないのに文相からこういうことを釈明をされたということについては……、然しながら一方におきましては六・三制の不完全実施のために二千人の町村長はやめておる、何人かの町村長が自殺をしておる。又給食不完全実施によりましてこの責任問題はごうごうと下から起つておる。こういう問題は頬被りで、国会においてそういう問題についてはみずから発言を求めて、そうしてその責任を負うということはされない文部大臣が、天皇空車学生が囲んだ、こういうことによつてこれは責任を負われるという、この予算委員会において言明されたということは、むしろ軽卒過ぎる。こういうふうに思う。どういう根拠におきまして、一体真に憲法を守るか、守らないかということについてこの問題は帰着して来るのでありますけれども、どういう一体憲法関連において文部大臣は大体ああいうような軽卒な発言をされたのであるか、この点先ず私は伺いたい。
  8. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は責任を感ずるかと問われたから、自分管轄下に起つたことに対しては責任を感ずるのは当然だと思つております。責任をとるかと言うから、責任を感じた以上、その感じたことを何かの形に現わすということは、これも又当然のことではないか、こういう考え方であります。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 私は責任の問題はいろいろあるので、例えば京都大学でああいうことが起つたよりももつともつと比べてこれが先ほど申上げた、もつと深刻な重大な問題がある、これについては責任を明らかにするという態度文相は進んでとられない。然るにああいう問題に対しましては何か特別扱いにする、私はそこが憲法との関連において納得ができない。これは而も吉田総理と相談して責任をとると言われたのですが、これはどういうことになつているか。若し都合があればいいですが、これもあとでお伺いしたいと思うのですが、こういう問題はむしろ私は責任問題の末梢問題だと思う。余り文相がこういうものをしやちこばつて考えることに、むしろ私は賛意を表しかねるのであります。そこで問題の中核にむしろ私は進めてお伺いしたいと思うのでありますが、大体公開質問状を発した、こういうことでありますが、この公開質問状なるものについては、これは文部省はこの内容を関知しておられるのでありますか、どうでありますか。
  10. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは文部省のほうにわかつておる考えでございます。事務当局に必要がありましたらお答えいたさせます。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 これは文相もお読みになつたと思うのです。私もここにこれは大抵間違いないだろうと思うのですが、公開質問なるものを拝見しておる。これはどういうふうにお感じになつておりますか、こういう公開質問状を……。
  12. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もこれを大体見たときにですね、実にこんな質問大学学生ともあるものがどうしてするのか
  13. 岩間正男

    岩間正男君 文相公開質問をせざるを得なくなつた学生心理状態、こういうものについて立入つて考えになりましたか。当然これは人情味に富んだ天野文相でありますから、学生心理を相当深く把握されている文相だろうと思います。当然この心理状態立入つて御検討になつたと思いますが、どうお考えになりますか。
  14. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは岩間さん、私もですね、多年学生を教えて来ている人間なんですから、学生がそういうようなことになるという国の事情というものをまるでわからないものではないけれども、それにしても実にひどい行為だと私は思つております。あなたのようにこれを軽々しく私は考えられません。一般国民感情ということもあつて岩間さんのようなのが日本一般国民感情だとは私は思つておりません。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 文部大臣は奇怪なことを言われる。私はこれに対して何らの意思を表明していない。軽々しいとか、奇怪だとかいうことはどういうところから出るのですか。私の意思を推測してあなたはおつしやつているのじやありませんか、私は意思表示をしたか、これについて……。(「意思表示をした」「意見相違」「委員長進行」と呼ぶ者あり)無礼であります。
  16. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はあなたがどう考えるかと言うから今のように述べたので、あなたのほうがこの事件を軽々しく考えておられるのは……一般国民感情とは遠い、その質問だけを言つたのじやないのです。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 そこのところのこだわりをいつまでも持続けるつもりはありませんけれども、(「その通り」と呼ぶ者あり)これは私公開質問状は、非常にこれは重大なものと考えておる、日本民主化のために重大だと考えている。これは天皇制復活だとか、そういうような問題と関連して非常に重大な問題と考えている。そこで私はこの中で教育的な要素の面についてお聞きしたいのですが、例えばこの公開状の一節によりますと、「私達は一個の人間としてあなたを見るとき同情に堪えません。例えばあなたは本部の美しい廊下を歩かれながら、その白い壁の裏側法経教室のひびわれた壁であつたことを知ろうとはされない。あなたの行路は数週間も前から何時何分にどこ、それから何分後にどこときつちり定められていて、あなたは何らの自主性もなく定まつた時間に定まつた場所を通らねばなりません。」こういうような条項や、それからその質問の中で「あなたの行幸理由として京都では多くの自由の制限が行われ、又準備のために貧しい市民に廻るべき数百万円が空費されています。あなたは民衆のためにこれらの不自由と空費を希望されるのでしようか。」又曰く「あなたが京大に来られて最も必要なことは教授の進講ではなくて、大学研究の現状を知り、学生の勉学、生活の実態を知られることであると思いますが、その点について学生と会つて話し合つて頂きたいと思うのですが、如何でしようか。」こういうような条項の中に現われた私は精神から考えて見ますときに、大体天皇行幸というものが今日日本で行われております形が果して民主憲法と副うものであるかどうか、この点が非常に私は重要であると思うのであります。つまり大学におきましては終戦後制定されましたこの憲法、この憲法を非常に重大な一つの問題としてこれは教えておるに違いありません。そうして天皇象徴でありましようけれども、人間天皇であり個人としての天皇であります。そこには人格の差別はもうなくなつて来ておる。成るほど象徴ということにつきましては、昨日も本委員会参考人意見金森国会図書館長が述べられた、こういうような形で象徴ではありましようけれども、決して天野文相考えておられるような象徴という説は成り立たないということを憲法起草者であり、そうしてあのときに全責任を負われた金森館長のすでに言明されておるところであります。こういう観点から見ますときに、当然私は問題になるのは、天皇行幸されるときにこれに便乗して如何なることが行われておるかということであります。つまりこれは数百万円の金が使われておる。道路を直し、学校を直し、或いは京大の問題につきましては、今まで校舎が非常に破れておる、研究室は又非常に荒廃しておる、水道は五十年も放置されて水も出ない、又ガスも出ない、こういう実情について我々は一々報告を受けておるのであります。そこにもつてきまして、恐らく、これを私は実情を見ていないのでありますけれども、これは大学のいろいろな応急措置でもつて急に部屋を直すとか、或いは破れた所を繕うとか道路を清めるとか、こういうようなことがなされたことはこれははつきりわかると思う。然るに天皇が非常に窮迫した日本経済のこういう現状おきまして、多くの地方費使つてこういうことをされて、そうしてそこのところだけを天皇がお通りになつて、その裏に、ちよつとうしろにこれに書いてあるように、この法学部の立派にデコレーシヨンされた裏側ではどんなひびわれた教室があるかということを御覧にならない。こういう形では民情視察もあつたものではないのであります。こういう意味天皇はいわば、私から申しますというと、引廻されておるような形であります。これに対して、当然神格から人格に戻されましたところの天皇としましては、当然これは一個の人格でありますから、これについて特別待遇を以て余りにこれに対して何というか、必要以上の取越苦労をやつている。こういう態度に対しまして少くとも日本の正しい憲法を守り、そうして民主主義精神を貫こうとする新らしい時代の感覚を持つた学生諸君は、当然これに対しまして、私は反感を覚えるのは当り前だと思う。これを教育立場考えるときに、こういう精神について徹底しようということを大学諸君は教えておりまして、そうしてつまり彼らの実践したものは何かというと、まるで裏腹の問題を実践しておるのであります。そこで私は、はしなくも京大当局事務局長が参りましていろいろ事件経過報告しましたが、そのとき私は聞いたのであります。あなたは天皇を迎えるに当つて一体どのような気持でこの学内は迎えたか、改まつて迎えたか、或いは普通の人を迎える気持で迎えたか、この点は非常に重要問題であるがどうだとお聞きしましたところが、この事務局長の曰くには、やはり当り前の気持で迎えようという気持と、或いはやはり天皇が来られるのだから何とかしてやはり改まつた気持で迎えようという気持と実は相剋した……学内でも意見があつた、併しながら結局事なかれの立場で、これは事大的の方法をとつたほうがいいというので、こういうような一つの非常にいわば仮装された恰好で以て迎えようということになつた、こういうことをはつきり述べておるのであります。この一事を以てもむしろ天皇行幸によつて大学当局というものは非常に混乱をしておる、非常な負担にさらされておる。非常に内部にそのようなこのいわば普通の学問状態というものを混乱させることが起つておる。こういう事態学生諸君が純真な気持で見るときに、これに対して本当に日本民主憲法を守る、この精神に生きようへこう考えるならば、当然私はそのような反感不満や或いは割切れない感情は、これは真理の下に芽生えるのは当り前だ、芽生えないとすればおかしい、芽生えないとすれば教育が不徹底に違いない、日本憲法に対して……従つて当然そういうことが起るということは、今言つた天皇行幸というものを何か殊更にこれを装い、何か神格化のほうに持つて行こうとするところのそういう形の中でこういう事態が発生したとあなたはお考えになりませんか。今私の申しましたことについて、これは真理的につまり経過の中におきましても、この事態を発生させたものはまさにこういうようなやり方である。こういうふうに思うのでありますが、文相はこれに対して何か、私の意見に対しましてこれを正すべきことがございましたら承わりたいと思うのであります。
  18. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) やはり天皇人格には相違ございませんが、併し日本国並び日本国民統合象徴という意味では、ただの個人でない、従つてそれをお迎えするときにはどの程度にするかという程度がむずかしいと思うのです。岩間さんを地方の人が迎えるときにも一個の国会議員として迎えたり、やはりただそこらの人を迎えるのと違つた心持で迎えたりしても何も差支えないと思う。汽車の中でこの間、岩間さんと乗合せたけれども、国会議員というので人が敬意を表したように私は思う。そのときに岩間さんは、不都合な話だ、民主政治に反すると、俺は国会議員だから、こういうように迎えるといかんとお考えにならないのではないか、程度の問題だと思う。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 誠にその通り程度の問題であります。これはその人格を敬愛するときに尊敬の念を以て迎えることは何も差支えない。そこで大体そのことはそうでありましよう。何ら差支えないことになつておる。併しどうですか、今言いましたように、今行われておる天皇行幸というものは非常にこれは地方負担になつております。単に京都だけではありません。今度の行幸の例えば一例をとりますと、松坂市の場合は二十分天皇がおいでになるためになんぼ使つておるか、九十万円使つております。そのうち松坂市警が四十七万円を要求しておる。又三重の大学の農学部に十五分寄るために百五十万円の金を使つておる。これは一例に過ぎません。今学園の窮乏した財政の中で、或いは町村の窮乏した財政の中で百万円とか、五百万円という金、どれだけ一体全く血を以て賄うような金であるかということは文相はお考えであろうか。こういう窮乏したさ中に天皇が全国を廻つておることに対してそれによつて費されておる金、金だけでありません、それによつて費されるところのいろいろな関係者手ひま、こういうものは非常に驚くべきものであり、こういうものは程度問題で、これは例えば例を挙げては失礼かも知れませんが、明治天皇にはそういうことは余りなかつたのであります。やはりお忍びということがあつた。そうしてやはりこういうような冗費を成るべく省こうとされ、そうして千葉胤明氏の話なんかによりますと、和歌を書くにさえも今までの反古紙を使われたということです。こういうやはり精神に徹されることが必要だ。而も現在におきましては、これは敗戦国の、そうして憲法によつてつたところの象徴天皇であります。そういう一つ天皇国民のいわば儀式的な機関として残されたような象徴天皇であります。そういう天皇を迎えるのにまだ旧態依然として行われておるこのことこそは大きな問題を生んだ最大の原因であると指摘せざるを得ないのであります。こういう責任を十分に突き詰めると、要は憲法精神に本当に真剣に立ち向うかどうか、この精神を成るたけごまかし、そうしてこれは押しつけられたる憲法である、何とかもう終戦後にこれを元に戻すのだ、こういうような意向で、そうして先ほども申されましたように、例えば天野文相実践要領の中に、これは最後案ではないそうでありますけれども、この中で例えば天皇は無私で、そうして道徳的中心にならなければならん、こういうような考えこそが憲法とそぐわないところにこれを追い込んでおると思うのであります。こういうことは誠に私は慎しむべき問題じやないかと思います。殊に私はもつと具体的に文相にお聞きしたいのは、例えば日本戦争前の体制においてはどうであつたか、天皇をいわば一つ神格押上げて、これを利用することによつて、いわゆる天皇制というような形におきまして、あらゆる場合天皇御名ということによつて行なつた。そうして御承知のように戦争もあのように天皇御名によつて大戦の詔勅が出された。御承知のように、これによつて非常に日本の今日の敗残を来たした。天皇はまさにこれは戦犯として指摘されておる。ここまで追い込んでおる。ここまで追い込んだ責任は誰が負うのであるか。これは誰が負うかと言えば、これはやはり天皇を担ぎ廻つて、そうして必要以上に天皇を利用した連中が負わなければならないのであります。然るに今の体制の中にはつきりそういう形がすでに復古調として現われつつある姿を私は見るのであります。だから問題は憲法を徹底的に守るかどうか、この平和憲法精神に徹し、更にこの民主的な精神に徹するかどうかということに私はあると思います。こういう点から考えて当然私は大学とか文部省というものは率先してこういうような憲法を守れという闘いを今日こそなすべきであると、その中でおのずから天皇の位地もきめるべきである、このことこそは文部行政根本態度であると考えるのですが、文相はそうお考えになりますかどうですか。
  20. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 天皇を利用して、そうして自分らの勝手な野望を遂げようというようなことには、私も微力ではあるけれども戦時前から反対して来ておる人間であります。岩間さんのような議論を私は戦前、若しくは戦時中聞きたかつたと思う。誰も言わないのです、こういうことを。我々微力なものだけが少し言つただけです。まして今日においては、私はそういう天皇を利用するとか、天皇神格化とか、そういうことは実にあり得べからざることだと考えております。ただ私が道徳的中心言つたことは、これはこの委員会においてもそういう意味ではないのだ、天皇は宗教的であつてもいけない、権力的であつてもいけない、天皇親愛中心でなければならない。この親愛というのは人と人との関係だからこれを道徳的と言つたのです。道徳的という言葉によつて宗教的とか権力的とかいうことを排除するという意見を述べておるにもかかわらず、岩間さんが、私は故意に岩間さんがそういうことを言われるのだとは思わないけれども、お忘れになつて又同じことを今日言われますことは、幾度ここに来て私は答弁しても意味をなさんように思う。甚だどうもそういう点については不満を感ぜざるを得ない。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 今の意見については改めて私は又やるつもりでありますからこれはやめますが、併し昨日もここに参考人が見えまして今お話としましたように、例の金森氏とか尾高氏、こういうような有識者の意見を聞きますと、全然今の意見というものには否定的です。これは明らかです。私はそういうことを楯に申しておるのではありません。併しこれによつて例えば天皇道徳的中心にして、天皇は無私である、こういう点について例えば尾高氏が触れたのですが、天皇は神性を持つものでなければ絶対にそういうことは言い切れない。具体的には、例えば明治天皇を明治神宮として祀るということは国民はしたけれども、大正天皇についてはしなかつた。ここに差別がある。そのようにやはり実質的には差別がある。そういうような、天皇を持つて来て、そうして道徳の一つ中心に置く、一つの抽象的な概念の代名詞みたいにしてそこに置くということは、これは現実には合わないということをこれは述べております。こういう言葉というものは、私は非常に一つの鋭い言葉じやないかというふうに聞いたのでありますけれども、そういう点から、文相はそう主張されるのは、それは自由でございますけれども、私は今ここに論議を持つて行こうとは思わいのでありますけれども、ただ文相のなされていることは、戦争前から私はそういう天皇神格化する、手段化するということに反対して来た、然るにその時代に岩間君たちは何も声を上げなかつただろうと言われますが、上げようとして上げ得ないところに我々は学校の下積みの教員で押し込められておつたのであります。これについては今までも、これは繰返したことであります。併し我々が弱かつたからこそあの馬鹿げたことを繰返したのでありますから、再びしないということを私は命にかけても誓つている。そうして我我はこれを再びしないために、平和を本当に求めるために今日闘つている。文相はあの過去のそういうような問題を持つて来て、そうして、だから君たちはどうなんだ、これはおかしいことであります。我々は一つのそういうような反省から生れた堅い決意というものを尊重せられていいと思う。そういう点で、我々は今むしろその地点に立つて考えるとき、これは文相自身は或いは異同されない、少しも変らないと思つているのでありますが、残念ながら時代の差では転換するのだ。地球は廻つているのであります。そうして昨日文相が書かれたところは進歩的であつたかも知れない。併し今日から見ると遥かに時代から取残されていないと誰が言うことができましようか。こういう点について天野哲学は反省すべきだ。天野哲学の位地というものを考えて御覧なさい。これについていろいろ文相お怒りでありましようけれども、私はあえて申上げたい。天野哲学の果した任務、そうして今日的な意義、今日の、この現実の中で果す形、そういうものについて私は再思索をされることが今日必要ではないか。そうしてこれが、道徳実践要領というものが、一体どういう時代的意味を持つているか。予算委員会においても私はこれを指摘した。天野個人意思なんかは問題ではない。この激しい世界の混乱、こういう対立、こういう中、現実の激しい中において天野個人意思はどうあれ、それがどのように最後の力、或いは政治的な力によつて現実的な役割を果されつつあるかということについて深い反省の工作を今日なされなければならないということをこの前予算委員会において指摘したのであります。そういう点から考えまして、私は問題ははつきり憲法を守る、その精神を本当に守るかどうかということに帰着する。文部省とか大学というものは、先ず誰よりも率先して、学に関係している人たちとしては、良心的にこのことを先ず第一に守るべき……やはり徹すべきだと思う。それがまるで反対の方向に行つております。而も又国務大臣としての、これは天野文相の場合はもつとこれは憲法的な拘束があります。憲法の九十九条に「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」。この憲法を擁護尊重の義務を最大に持つところの文相は、今日憲法について、例えば憲法を起草し、そうしてこの最大責任者であつたところの金森館長が今日これをはつきり否定するような行動をされておるのであります。虚心坦懐と言われますが、私は文相に対してこういう点で一体どういうふうにお考えか。もつと虚心坦懐に、今日やはり再検討されるところに発展を見る、この立場に立たない限り今度の京大問題ということの本質を私は明らかにすることはできない。単に生徒を八人切る、無期停学にしたということでは、どうも口を拭つて済むというようなことは……こういうことをやるよりも前に、先ず元を糺して、現在の一体内閣の教育は何だ、この中心の最も大切なこの憲法精神を徹底的にこれを学び、単に学ぶだけでなくて実践する、こういう方向に行くこと、こういうような悲願にも似た一つの気高いそういう実践があつてこそ私は初めてこの文部省並びに大学というものの任務が当然果されるのだ、こういうように思うのでありますが、こういうことを反対に逆なことを言つておるのであります。反対に逆のことを言つておる。そうして時代の滔々とした反動勢力の中につまり天野さんは躍らされておるのである、こういうことを私は考える。こういう点でどうでありますか、私の見解に対して御意見を伺いたい。
  22. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 新憲法を守ろうということにおいては私たちは人後に落ちないわけであります。ただ私は人が右に走ればすぐ随いて右に走る、人が左に走ればすぐ随いて左に走るということは、私たち哲学学徒の潔しとせざるところであります。ですからいつでも右のほうから見れば生ぬるいと言われ、左のほうから見ても又不満足である、こう言われるのは哲学者の運命、覚悟の前です。ただ新憲法を守ろうということにおいては人後に落ちるものではないと信じております。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 そういう御決意だつたならば早速道徳要領なんかおやめなさい。京大の前に不当処分を取消しなさい。身を以てやりなさい。言葉じや駄目です。(「そんな資格はないよ」と呼ぶ者あり)憲法精神については、これは何もあれする必要はない、そうでなければ単なる空言に過ぎない。曾つてやはり全面講和というようなものに署名をした文相が、今日単独講和の閣僚になつているじやないか、曾つて教育憲法を出すことに反対したところの文相が、今日道徳実践要領を出そうとしているのである。これは右する左するの今の論議に対して私は答えることになると思うのでありますが、我々はこういうような一つの矛盾に対しましては、やはり残念ながら鋭い批判を持たざるを得ないのです。こういうことは如何に曲弁されましても、やはり時代の動向の中で天野文相個人的に信念を以て、これは自分自身ではそういうところに止り木につかまつていられるでありましようけれども、社会全体が大きく動いておる、この中であなた自身の位地について哲学的な一体反省をされておるのでありますか。私は突つこんで失礼と思うようなことも顧みず申上げておるのでありますが、実際この点について文相はどう考えておるか。この点再反省して頂きたい。
  24. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は自分自身の弁護などをしたい、言訳などする考えは毛頭持つておりませんけれども、ただ事柄を岩間さんがよく知らないで言われるからちよつと申します。ただ自分を弁明しようなどという考えは持つておりません。ただあれに署名したというのは、これは私が念を押したいのは、願望だというから私は署名をした。私の論議はすべて願望という観点から言つておるのですけれども、これ以上若し実践ということなら、私は平和問題談話会には籍は置けないということをその席で言つたのです。それは皆がよく知つております。一体平和問題談話会というのは、もといろんな人が集まつて、そうして意見を交換しようという趣意でできたものであつて、決してあれが一つの団体となつて平和三原則を主張するとか、そういう政治に影響を持つようなことをしようとしたものじやないのです。岩間さんはそういう事情を少しも知らないで、ただ表面からそういう論をされるということは、私はどうかと思うのですが、併し私は自分はどうでもいいのです。自分は国のために何か少し役に立ちたいと思つているだけのことで、自分個人はどうだつていいのですが、ただ事情がそうだということを申しておきます。それから実践要領についてはしばしばもう述べたことですからここに繰返しません。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 最後に、私は大分失礼を顧みず面を払つて申上げたのですが、只今のようなお話をなさるというと……だから天野哲学の今日の観念哲学としての位地をお考え下さいと私は申上げておるのです。希望するものを貫くというところに私は新らしい哲学の問題が出ていると思うのです、思惟する、希望する、これだけで終るのだつた人間はやさしいのです。全面講和望ましい、併し現実的じやない、こういうことで放つてしまうのだつたらこんなやさしいことはない。だから日本はああいうざまになつた。我々は希望するのならなぜそれを貫かないか、今日身を以て貫かないか、それを貫いてこそこのあらしの中で民族の危機が守れるのじやないか、そういうことをあなたはおやりにならないか、あのときは希望するから判を押せと言われるから押したのである、それが何が悪い、こういうような御答弁になりますと、私はそこに天野哲学の限界をはつきり見るのであります。いわゆる観念哲学の限界もはつきりするというのです。我々は哲学的な造詣はありません。併しながらやはりこれは思考と実践を統一したい、この統一の中にこそ私たちは、あの日本戦争中に単に教壇の上から例えば正しいこと、正義というようなものを説いて、言葉で説いて、而も教師自身はまるで反対の行動をしたことに深い反省を持つたのであります。これは命にかけても今日平和を守るということを闘わなければならない。単に教壇の上で口頭禅を繰返すことが過去の日本であり、そうでないこと、今日一歩を踏み出して行つて、そうしてこの行動の中、実践の中でこれを解決しようとすることが今日の正しい倫理である、これが新らしい時代の倫理である、こう考えておるのです。私はそういう哲学の造詣は少いのでありますけれども、この点については断じて承服することができないのであります。過去のことはそういう希望であつたけれども、希望しつつ実現できなかつたのだから、それで今度は単独内閣にお入りになつた、これを弁解でなくして何と言いますか。我々は希望であつたら貫くべきだ、そんなに希望というものと主義の実践というものが離れてばらばらでいいのですか。(「限界があるよ」と呼ぶ者あり)何が限界だ。黙れ。今私はこういうことを申上げまして質問を終ります。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 京大事件についてはかねがね私も御質問申上げようと考えておつたのです。今日ちよつと資料を持つて参りませんので、主な点を二つだけ御質問申上げます。今度の京大事件について、結果として八名の学生が学窓から追放されたような形になつております。私はあの新聞を見ましたときに非常に心の痛む思いがいたしました。これは学生の行動の行き過ぎということについての限界というものについても、相当のこれは慎重な検討が必要であろうし、又そういうことでこれは検討した結果そういうことが出たのだろうと思うのですけれども、しみじみ私が考えますところによれば、誰が学生をこうさせたかというところに来るのです。これはやはり学生を取巻いている環境というものについては相当考えなければならないし、あのお迎えする当日の環境というものは非常に不自然であつたように考えられます。過日横山事務局長がここに見えられまして当時の模様についてひとわたりのお話をなさつたのですが、その御報告の中にこういうことがございました。当日は学校側としても十分警戒をするつもりでおつたし、そのために写真機を持つた者を各所に配置させておいた、これは学校側ですかと私が改めて御質問申上げましたところがそうだ、こういうお話であつたのです。少くとも私は学生を何か事を起すものであるというような考えの下に、私どもが常識で判断できないような各所に写真班を置いて不逞の輩を見守るというこの学生を冒涜した態度が、むしろ学生をして反抗させる機運を作つたのじやないか、こういうようなことを考える。(木村守江君「初めから聞いていないのでわからないのだ」と呼ぶ)木村さんは木村さんとしての聞き方が、ございましようし、私は私でそういうようなことではこれはむしろ学生に刺戟を与えるものではないか、そういうふうに受取つたわけであります。で、これはもう天野さんに申上げる必要はないのですが、国家の象徴としての天皇ということはこれは承知でございますが、併しながら昨日の参考人の御発言の中にもあつたように、天皇象徴ではあるけれども象徴させるべきものではない、象徴させるべきものではない。私は今度の京大のお迎えの形の中に象徴させるような姿があつたのではないだろうか。これは写真機の一件だけではわかりませんけれども、そういう空気は今後是正して行かなければならない、こういうことを非常に私は強く思うものであります。又大臣も今度の京大事件関連して今後の正しいあり方を研究したいということも新聞紙上で御発表になつたようでありますが、とにもかくにもこうした天皇をお迎えする場合の学生に与える雰囲気というものに対して一体どういう善後措置をおとりになつて行かれるのか、具体的にはこれはお答えにはおなりになれないと思いますけれども、大臣としてこの環境というものについて、どういうふうにして行くのが正しいのか、こういう見解をまず承わりたいと思うのであります。
  27. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この大学の当局というものは実に苦しい立場に立つておると思うのです。一方の人からは学生を初めから信頼したから間違つておる、こういう非難を受けており、あなたからは又学生を信頼しないからいけないと、こう言う。そういう立場において若い今の学生を扱つて行くということはこれは非常にむずかしいことだということを先ず私は御理解頂きたいと思うのです。現に前日そのうちの主な学生学生課長が会つて、そうして何もそういう変な行動はないという約束をしてあるから、それで大学当局としてはそんなに厳重な警備というようなことも望ましくないといつてしなかつた。それが一方の人からは非難され、併し他方の人からはやはりそういうことが起ると困るから、今のような望ましくない、誰もしたいことじやありませんけれども、そういうことをしたのだと思う、だからどつちをしても必ず非難を受けるというような立場にいて、非常にこれはむずかしいということを先ず御理解頂きたいと思うのです。
  28. 高田なほ子

    高田なほ子君 大変に苦しいこれは答弁でございますが、私はこれは信頼したから、信頼しないからということに問題が出て来ているようですが、今後のあり方、又正しいあり方としては、学生もまた一個の人格者として深く信頼する場合には、私は余り物事が起らないのじやないか、これは信頼したから、こういうことが起つたというようなことを言つておられる側の人に対する反駁は、あの写真機の一件でもわかると思う、若し信頼するならば、そういうようなことを初めからするはずがないのです。こういうふうに信頼したと言いながら、その実際は信頼しないような行動をとつているところに、若い純真な人たちにむしろ反抗心を起させて行くのではないだろうか。私は少くとも過去の教育的経験から、どんな悪い子でも、どんな悪質な子供でも、子供を信頼している上に立つた指導というものが常に成功したということを自分の経験として知つております。それでこういうごうごうたるむずかしい論議の中で大臣としてはどういう信頼をしてやつて行くのがいいか悪いかということについてはすでにもう結論が出られていると思うのですが、そこでこれもまあもう一度御答弁願いたいと思うのですが、これに関連しまして昨日の新聞でございましたでしようか、学内の自治の最高の責任は結局警察にあるというようなことが出ておつた。私はこの見解に対して非常に納得が行かない。これはいろいろの事情もあるのだと思うのですが、結論として甚だおかしいのじやないかと思うのです。これは大臣はどういうふうにお考えになられますか。
  29. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 高田さん、私は観念論、観念論といつて非難されるのですが、人間考え方から存在は規定できるというのが観念論だと言われておる。あなたの御経験はそれはありますけれども、あなたのような女性のかたが小さい小学校の生徒を教えるのと、大学で一万人もいる学生大学教授が教えるのと同一に考えられるのが、私がしよつちゆう非難される観念論だと私は思うのです。そういう点で私は高田さんに、もう少しあなたが教えられた生徒と、あなたの女性ということと、一万人もいる学生ということの間の違いを私はお考えを頂きたい。それから今の警察のことでございますが、これは法律上言えばそういうことになる。大学は勿論学長が管理権は持つておりますけれども、大学といえども治外法権というわけではございませんから、法律的に述べればそういう結論になるものだと思う。
  30. 高田なほ子

    高田なほ子君 ここで大臣と討論をする気持は毛頭ございません。勿論小学校と大学生徒は違うかも知れません。併し私は、クリストのお話を持ち出してはちよつと臭みがありますが、あんなに無頼の大衆を率いて行つた、これはやはり人間の誠実です。善なる誠というものに対する信頼が、あれだけの偉大なる教化をもたらしたものだと私は考えている。これは討論になるからまあ私はやめたいと思います。やはり結論としては、大学生であれ、小学生であれ、やはり信頼の上に立つた指導こそ望ましいのであつて、そういう方向に行くのが最も私は正しいあり方ではないだろうか。こういう見解を持つものですが、そこで具体的に一つお伺いしたいのですが、今後こういう、学校天皇が御覧になるというようなことが、これからも随分にあると思うのですが、そういう際にいつでもの例のごとくに、御覧になる所だけを特別きれいにするというようなのは、学校当局としての必要以上の心遣いのように思われるのですが、これはもう天皇をお迎えする礼だと言えばそれまでですが、そういう、今必要な所に経費をかけないで、余り必要だと考えられない所に、礼を尽くすためにそういうことをするということは、これはどうかと思うのですが、こういうことに対しては大臣は今後どういうような御見解と、どういうようなお導きを以て行かれるおつもりでしようか。
  31. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もこの人間人間との関係の一番基本的なものは信頼だと思つております。ただ高田さんが挙げられたクリストなどというものは、これは実に何と言つたらよろしいのですか、非常に特別な人間でなければ……みんなの教師にクリストを期待されるというのは、これはもう私は到底できない相談だと思うのです。又相手はたくさんだということです。又第二の点について、天皇が来られるときに幾らかの掃除などをするというのは、天皇でなくつたつてお客が来るときは掃除をするのですから、私は何も差支えないが、度を越してはいけないと、私も思うのでございます。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 度を越してはいけないと思うだけでなく、何か今度の問題の反省として、そういうようなことを今後大臣のお考えとして、それぞれのところにお漏らしになるようなおつもりはございませんでしようか。
  33. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この天皇ばかりでなく、一般に誰が行つてもそういうようなことは余りしないように、私もしたほうがいいと思つております。
  34. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣にお伺いしたい点は、先ほどからの質疑で大臣気持はもうわかるのですけれども、最近の我が国の動向で天皇を権力の中心というところに持つて来て、これを利用して統一して行こうという、こういう底流があるような点はお感じになりませんかどうか。戦前は勿論天皇中心で行きましたけれども、ポツダム宣言受諾以来は司令部の至上命令権でまとまつてつてつた、今度二条約発効によつて日本が独立した機会に、意識するとしないとにかかわらずこういう動向があるというような点を、お感じになつていらつしやるか、いらつしやらないか。
  35. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は直接にそういうことを知つておりませんけれども、そういうことも可能的だと思つております。そういうことがあつては非常に困ると思つておる。極端なことを言えばやはり極端なものが出て来るのです。だから天皇親愛中心というように、言うほうがいいのだ、そういうことによつて宗教的な考えとか権力的な考えを批判して行くのがいいのだ、私はそういう考えを持つているのです。極端なことを言えば極端になるという虞れがある。両極端にいつも反対をして行きたい、こういうふうに思つているわけでございます。
  36. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は終戦直後天皇が初めて地方行幸された場合に、全く天皇はもみくちやにされるように、全く国民大衆の中にとけ込んで国民の歓迎を受けた、実に微笑ましく感じたわけでございますが、最近それがむしろ逆になつて、最近の京大事件のような例は……ああいう状態では今後天皇は我が国の大学には行幸ができないのじやないか、御遠慮をなさるようになるのじやないかと、こういうふうに感じますし、又吉田総理にしても、一国務大臣においても、地方に出張した場合の護衛というものが非常に厳重になつて来たように思います。我々が期待していたのとむしろ逆に行つているのでございますけれども、これはどういうところに原因があるとお考えになりますか。
  37. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は総理大臣のことは存じませんが、私どもは別段そういうような護衛などは大して受けることも何もございません。ただ併し矢嶋さんの御心配になるような傾向は確かにあると私も思うのです。そういうことは大いに警戒して行かなければならない、それには右翼的な、極右を生じさせないためには極左も力を持つてはいけない、両方関連して行くものだと思う。だからやはりそういう傾向は大いにやはり警戒して、これを抑圧するようにしなければいけませんけれども、それには我々の唱えるところは中正でなければいけないと思う。私はそういう考えを持つております。
  38. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私ここで是非大臣にお伺いいたしたい点は、今度の京大事件にいたしましても、恐らく京大学内に入つて行きますと、学生諸君の間でも甲論乙論、討論をやつているだろうと思います。私は確かに現在の大学生指導というものは、教育というものは非常に至難なものだと考えますが、私ここに大臣に要望と共にお伺いいたしたい点は、政治家が詭弁を弄する点が私は非常に学生に悪影響を与えていはしないか、現在の学生、若い者というのは、ともかく筋の通らんことは受入れられないと思うのです。昔の若い者は長いものにまかれろ主義で、非常に事大主義的で、妥協的であつたのですが、少くとも終戦後新学制下に、新憲法下に育ちつつあるところの若い者というものは、ともかく筋の通らないことは絶対受入れられないと思う。そこで国の文教政策にしても、或いは大学学長教授会で打ち出したところの大学の運営方針につきましても、筋の通らないことには学生は絶対に承服しないだろうと思う。例えば一つの例を挙げますと、最近国会でも非常に問題になりますが、憲法護持とか、或いは再軍備是か非かというようなことが盛んに唱えられておりますが、吉田総理は再軍備は絶対しない、警察予備隊はこれは日本陸軍には絶対しないのだ、これは警察予備隊の設置したときの通りだと、こう言われますが、外電では日本の警察予備隊は日本陸軍の前身だということを伝えるし、外国新聞記者は皆そういうふうに信じている。而も政府当局はそういう詭弁を弄している。こういう点ですね、今の大学教育というものは、新憲法から教育基本法、それから学校教育法の、大学の府で打ち立てられている、そういうところで教育を受けている大学生が、政治家のこの詭弁と申しますか、政治の実体というものに対してはどうしても割切れないものがある、その線から大学一つの方針を立てて、大学教育を打ち出して来る、そうすると学生の中にはそこに討論があると思うのです。如何に穏健な学生であろうと、筋の通つた憲法を変えればともかくですが、憲法を変えないで平和憲法になつてつて、再軍備はやらないということになつている、然るにかくかくだと、こういう筋で一方から押されれば、私は他方の学生というものはその討論に負けて、学校の、あの学校で言うと同学会でありますが、まあ健全なる運営ができない事情にあるのではないかと思うのです。従つて私は大臣にその点を、政治家の、国の政治の動向というものをしつかり新憲法なら新憲法の線に沿つたものに、筋を通してもらいたい。それでいけないなら、憲法の改正をやるなら、国民の総意によつてはつきりと改正をやつた後に、筋の通つた政治、教育をやつてもらいたいということの要望と同時に、そういうことを大臣はお考えになつていらつしやるか。これを改めない限りは結局私はこの責任というものは、吉田内閣の総理に私は来ると思うのですが、それを改めない限りは、今育ちつつあるところの青少年は絶対に私は指導して行けない。ここに根源があると考えるのですが、大臣はどういうふうにお考えになるか。
  39. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もこういう点においては矢嶋さんと全然同感です。筋の通らないことを若い者が受入れるわけはない。私は自分は筋の通らないことはしない考えです、文部省としては……。ただ矢嶋さんにこういう点に御考慮を頂きたい。筋の通つたことでも、それがあたかも筋の通らないことのようにそれを見るという見方もあるのです。又わざと筋が通らんことのように宣伝するということも社会にはあるのです。そういう現象を私は非常に残念に思つておる。要するにものの見方が、私の言葉で言うならまつすぐに見ないで、はすつかいから見ている。そうして筋の通つていることを通らんように言うという場合だつて非常にある。私は吉田総理は再軍備はしないことだと考えていると思う。
  40. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これを討論すると時間がかかるからそれはそれで承わつておきますが、次に簡単に承わつておきたい点は、京大は八人の学生処分したわけですが、その理由はどういうふうに報告を受けておりますか。どの条項を適用してやつたのですか、どういうふうに報告しておりますか。
  41. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今大学局長から詳しく、どの条項についてどうしたということまでは聞いておりませんが、ただ大学としては、無期停学なんですから、恐らくはその学生が本当に何と言いましようか、考えを改め、そういう無法なことはせんというようなときになれば、又考慮をしようという考えから、ああいう無期停学という処分をとつておるのじやないかと思うのですけれども、これは世間で相当又非難のあることでもあります。だから非常に、先ほども申すことですけれども、大学のやることというものは、むずかしいということを御了解頂きたいと思う。
  42. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その学生処分した適用条項報告というのがわからないのは残念ですが、次にお伺いいたしたい点は、この問題について京都大学学長責任があると大臣はお考えになりますか。あるとすればどういう責任があるとお考えになるのか、文部大臣としての意見を伺いたい。
  43. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 責任ということが非常にむずかしい概念で、だからまるで責任がないということがないことは、これは明らかですけれども、学長として、どういう種類の責任かということは、私は今すぐここで判断することはできません。
  44. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それだけを承わつておきますが、それでは最後に、大臣は、予算委員会でちよつと伺つたのですが、予算委員会で曾つて責任を感ずるので、総理と相談して善処するということを答弁された。それで巷間では、大臣はこの問題でやめるのではないか、こういうふうに考えている人もおるわけです。大臣はこの問題について、そういう、大臣責任言つたのは、そういう意味なのか、又そういう責任大臣にあると考えるか、そういう責任をとろうと考えておるのかどうかという点を私は承わりたい。
  45. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は責任を感ずるかと言うから、自分の所轄の中に起つて来たことですから責任は感ずるけれども、その責任を感じたらその責任を何かとれというから、責任を感じて何にもないということはないから、そこに何らかの手続等があるかも知れないから、私はよくそういうことはわからないから総理の意見も聞いて見ようと思つているのです。きめるのは自分ですけれども、意見を聞いて見ようと思つたのです。それ以上は私は答弁をいたしかねるということを申上げておきます。
  46. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その大臣が総理と相談して云々というのは、私はどうも余り自主性がないと思うのです。この問題ははつきりしていると思うのですがね。その大臣がああいうところで総理と相談して責任云々ということが、やはり天皇を権力の中心化しようという無意識なものが潜在しておると思うのです。又あの大臣の発表を聞いて、国民がすぐ、はあ文部大臣はあの重大事件でやめるのだと、こういうふうにとるところに、私はやはり新憲法精神を生かして行く上に危惧される点があると思うのですが、私は要望ですが、京大事件なんかで大臣には絶対にやめてもらいたくない、そんな責任はないということを私は大臣に失礼ですが教えます。若し大臣責任をとるならば、天野文相は最近非常に苦境に陥つておると私は思います。それはまあここは予算委員会でないから申上げませんけれども、よく論ぜられるところの講和関係費、それが果して日本の収入の範囲内において、先ず内政費を優先的にして、伝えられるところの講和関係費が二千億ぐらいの枠内で収まるかどうかということが、最近の新聞で非常に散見される。それが若し枠内に収まらない場合には、必ず天野文部大臣の所管しておる……民生安定のほうは主管されておりませんが、文教関係は真つ先に来る、それは現在来ておる。大臣が場合によつたらこれは自分が職を賭するくらいの決意によつてやりたいというところの給食をも、来年度から補助しないということを閣議で決定しております。それから大臣は学術の振興と言つておりますが、今度の定員法では天引整理によつて研究所の研究員まで整理をされておる。更に大臣は、絶対に整理ができないというところの義務教育の教職員についても、今大臣のおられるところの吉田内閣では着々とその整理の方策を立てつつある。更に大臣はこういうことを懸念されて、義務教育国庫負担法というものを、それこそ天野文部大臣の生命をかけて立法化したい、これは数年来の念願でありますけれども、これに対してすでにもう大蔵とか、地財委とか、吉田内閣の中枢部では強硬なる反対をしておる。こういうときに大臣は、今度は若干精神力に頼つて実践要領を出すということを各方面から盛んに非難を受けておる。それで京大事件が起るというと、天野文部大臣責任をとれと言わんばかりに衆議院のほうで痛めつけられておる。今度は文部省内に帰るというと、鳩でもない人間が、生徒が食べるところの豆で汚職事件を起しておる。全く非常に天野文部大臣は熱心な誠意のある僕は立派な哲学者であられると思います。その善意な努力にもかかわらず、天野文政というものは最近逐次ひびが入りつつあります。二条約発効後には更に私は救うべからざるところの楔を打ち込まれるのじやないかと思いますが、若しそういう点について納得ができん場合は、敢然として天野文部大臣は辞表を叩きつけて初志を貫徹して頂きたい。こういう京大事件あたりで総理と相談して善処するというようなことを発言して頂きたくないし、又やめて頂きたくないということを私は要望いたす次第でありますが、何か発言がございましたら承わりたいと存じます。
  47. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 御意見はよく承わつておきます。
  48. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 皆さんにお諮りいたしますが、給食の問題の質問を続けようと思いますが、その前に矢嶋君から文部大臣のおられる間に体育問題について質問をしたいというのでありますが、如何でしようか。矢嶋君文部大臣質問しますか。
  49. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あとに問題がございますので、簡単にお伺いいたしたいと思います。  スポーツの問題については、先般予算委員会で大まかなことを承わつたのですが、もう少し掘り下げて、あと事務当局に承わりたいと思つております。大臣にここで承わつておきたい点は、この社会体育と学校体育の面について、先ず社会体育の面でございますが、この社会体育の面で、まあ非常に年中行事で最も大きな問題とされているところの国民体育大会ですね。これが毎年実施され、而もまあ選手制度によつて行われているわけなのでございますが、国民体育大会の開催の回数ですね、現在毎年一回開催しているわけですが、そういう点について大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、承わつておきたいと思います。
  50. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その点は私も実は考えておることで、毎年というのはどうであろうかという疑問を抱いております。ただ併し、すでに開催することのきまつている分は、これはやはり今から変えるというのもどうであろうか、それが済んだらば、或る年限をおいてやるという意味でよいのではないか、そういう考えでございます。
  51. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に承わりたい点は、この学校体育において、又社会体育においても同様でありますが、費用に窮する関係上、その補助を特定階級から受けているということは、私は余り感心することでないと思うのでございますが、そういう面とからみ合せてですね、まあ差当りの回数とか、或いは国民大会の開催の度数というものが出て来るわけなのでございますが、この学校体育並びに社会体育の費用の捻出先について、大臣はどういうふうにお考えになつていらつしやるか。それから又これらに対するところの国又は地方公共団体の補助というものですね、それをどういうふうに考えておられるか承わりたい。
  52. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これも一概に言えないのではないか。特別な者から、これも大体その学校の先輩とか、その部の先輩とかという者から金を集めるのですから、これは一概に悪いとは言えないのではないかと私は思います。それから国又は地方公共団体の補助ということも、これも程度問題であつて、適当な額であるならば差支えないと考えていいのではないか。その額がやはり多過ぎるというようなことがあるといけないし、程度問題ではないかという考えでございます。
  53. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで最後でございますが、オスローのオリンピツク派遣選手に対する国庫の補助については、外貨の節約という立場から考慮しなくちやならない、こういう見解と、若干の外貨は要つて国民外交としての使命も大きいことであれば、できるだけ多数の選手団を派遣すべく国費においても補助して然るべきではないか、こういう見解があるのでございますが、文部大臣としてはどういうふうにお考えになり、どういう御善処をなさるお考えであるか、それだけ承わつて大臣に対する質問はこれで終ります。
  54. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは私は両方に根拠があると思うのです。やはりこのオリンピックというものが、運動としてのそれ自身の意味を持つておりますけれども、それ以外にも国際的な友好関係とかいうような点に非常な意味を持つておるものだと思うのです。これをただの遊戯と考えたら非常に間違つておる。だからそういう点はできるだけ援助をすることがよいのですけれども、併し外貨の節約ということも今の時代、これは非常に必要なことでありましようから、両面を考え併せて適当なところに落着けるということに考えて行くわけでございます。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 学童給食の汚職事件についてあらましを質問いたします。先ほどこの間お願いしておいたこの資料を御頂戴したのですが、非常に細かい数字が数多く出ておりますのでちよつと研究する時間的な余裕がありませんでしたので今日は極めて大ざつぱなことだけお伺いしまして、又次回に譲つて頂きたいと思うのですが、その一つはこういうことですが、頂きました資料の中の一番の「アメリカ政府寄贈大豆の取扱に関する文部省の方針」、この方針書の中の「放出大豆取扱業務に対する配慮」の(2)の項ですが、「当時の市場情勢等を十分に検討考慮した結果、単純に競争入札に付することが却つて弊害を伴う危険を認めた。」こういうふうに書いてあります。併し二十五年九月三十日に出された「完全給食実施方針」の中では、加工民営などの非常に厳正、公正な実現をするために工場選定に対する委員会を作るとか、或いは点数制による入札制でやるということが非常に厳格な言葉で書いてある。この厳格な言葉で書いてあるということは当然これは入札制というものは最も正しいのである、これによればもう大体間違いはないという確信の下に出されたこれは方針書であろうと思う。ところがここに来ると俄かに「単純に競争入札に付することが却つて弊害を伴う危険を認めた。」と、こういうふうにあるのですが、非常にこれは従来からの方針と矛盾をして来ておると思う。こういう矛盾をあえてここに書かなければならなかつた理由、それからどんな危険が一体出て来るのか、そういうことをここで明らかにしてもらいたいと思うのです。お願いします。
  56. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) その4のほうに申しております厳格な公入札的な扱い方を慫慂いたしております意味は、パン工場の指定の問題を特に取扱つておるはずでございます。これはパン工場についてそうした制度が点数制といつた形で公入札のものが現在ございますのもそのままうまく利用して行こうという非常に一般的で而もそのパンの限定された原則を示しておる考え方でございます。それから放出大豆を処理いたします特に限られたこの場合の問題は私どものほかの関係において第一原則といたしております。競争入札といつたようなことに対して非常に例外的な意味合いを持つたのでございます。当時の市場の状況がどうあつたかということのために普通であれば単純に競争入札をいたすのでありますが、その当時の市場の状況が、先般のこの委員会でも御説明申したと記憶いたしておりますが、いろいろな意味のストツクを多分に市場に保つている事実を私ども教えられておりましたし、又その当時そのストツクを何とかして始末をしたいといつたような業界の線があつて、而もその品物が非常にいいものと、又我々が一応規格を与えておつたわけですが、その規格に合うようなうまいものであれば、却つてよかつたかも知れません、けれども、その当時世間で言われておつたいわゆるストツクというものは、非常に規格のまずいものでありまして、それをこれに置替えられるというような危険を、特にこの際に私どもは考慮したということでございます。殊にその当時、私どもが単純にこれを競争入札をするとすれば、その処分をしたい、いわゆる業界に持つてつた、いわば不良品といつたようなストツクと切替えられるという危険を、厳重に私どもは認めたという意味でございます。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはパンの場合にのみ通用するように今おつしやつたのですが、これはパンに限らず、まあこれは具体的にパンということになつておるようですが、パンに限らず、こういう原則が立てられたということは、取りも直さずこの完全給食方針の眼目を実際に行われるために私はやられたんだろうと思うし、又あなたもそれを否定なさる勇気はないだろうと思う。そこでこういうストツクが、当時市場に溢れておつたので、規格の変つたものに置替えられる危険性がある、こういうようなお話でしたけれども、それはただ文部省の観点だけで、これに対して何か非常に科学的な調査のようなものがされてあつたのですか。ただ危険だと、大体認めたという程度の軽いものなんでございますか、そこらの経過一つ……。
  58. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 第一の御質問は、完全給食実施方針に書いてありますように、競争入札式の扱い方がいい、厳正であるという趣旨において私どもは考えております。従来申述べております通りでありまして、私の勇気とか何とかいうことは関係ないと確認いたしております。それから第二の、当時の市場の状況がどうであつたかということについての、科学的とおつしやいますが、科学的と申すほどでないかも知れませんが、私どもの関係いたしました範囲においては、専門家の意見を相当に徴しております。それから当時の安本なり食糧庁なりにも、十分そうした関係のことを教わつております。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 次にこの第五項の問題ですが、「味噌の嗜好性については、特に慎重を期して都道府県教育委員会の希望に基き操作計画をたてている。」これは一貫する責任ということでこういうことをやられたのだと思うのですが、こういうことをやる手間を省くために、この完全給食方針が出て、各都道府県でそれぞれ児童の負担や嗜好というものに適応するように運営をして行こうというのではなかつたんでしようかね。非常にここらが矛盾をしているのですが、ここはどうですか。
  60. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) パンと味噌、油といつたような種類のものと、余り一緒のレベルにおいて御検討願うということが私はどうかと思うのでありますが、ほかのように非常に明白な規格でそれほど……パンの業者から申せばいろいろ問題があろうかと思いますが、割合に単純に扱えるものと、この味噌のような場合、私が今までこの給食関係関係しました限りにおいて、味噌ほど厄介なものはないと思いましたほどでございまして、それを同一レベルで御覧を願わずに、味噌のような場合には、できるだけ地方の嗜好性を特に考えるということは最も妥当なことだと思つております。又教育委員会側に従来特定の味噌屋が、関係者があつて、而もそれがよく奉仕をしておつてくれるというような種類のものがあるようであれば、それらもできるだけその中に入つてもらつて、従来通り、又従来以上に厚意的な奉仕をしてもらうということがいいじやないかというふうに考えておるわけであります。従つて都道府県の委員会に成るたけお手数をかけまいという私の従来の考え方は、この意味においてはむしろ手数をかけても、よりよき効果を出すことと、どちらがウエイトが重いかという観点の判断に基いたものでございます。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうするとあれですね、このパンと味噌と一緒にされてはちよつと迷惑である、困るというようなお話ですが、むしろパンよりも味噌の嗜好というようなほうが……、これは討論になりますから深くは申上げませんが、東北と関西との味噌の嗜好というのは非常に違つておるのですね、それを一所で作らなければならないという理由は成り立たないと私は思うのです。こういうようなことはやはりあなたの見解はそうであつても、常識的に考えて甚だしく納得の行かないというようなのもこんな点にあろうかと思うのですが、これはまあやつてしまつたことだから仕方がないと思いますが、ここらにも入札制ではなかつたということ、それから児童の現実の嗜好というものに違反してまで、どうも一緒くたのところでこれをやつて行かなくちやならなかつたというところに、私どもは非常な明快な……人に聞かれても明快に答えができないところがそこにある。
  62. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 全く反対に解釈しておるようでありますから申上げましよう。特に味噌は一カ所に集中したのでございませんで、代行業者としての業者を中心に置いて、それらが各府県の委員会の希望に基いたこれならという下請業者を使わせる形をとつたのでございます。わざわざ一カ所に集めて、例えば北海道にも、東京にも、信州にも、九州にも同一規格の味噌を配給したというのじや全くございません。観点がまるきり反対になつておるように思いますので、この点特に申上げます。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 下請工場の、先ほどの資料で、そういうことは大体はわかるのですが、まあこれは下請工場は富士醤油との、何ですか、生産能力というものとも関連して考えられる問題ですから、嗜好でそういうふうにだけしたとは、私どもはまだ資料を調べてないからよくわかりませんから、これはここらで打切ります。  それからもう一つ質問したいことは、私、これはわからないのですが、学童給食用の小麦の場合ですが、これが港に着いた品物を、その品物をそのままそこで加工するのではなくて、食糧庁手持の小麦を私は加工しておつたと思うのです。そうするとあれですか、今度の大豆はこういうふうに手持のものがあとでこのギフトに振替えられるというようになつているのですか、どうなんですか、食糧庁との関連ですが……。
  64. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 小麦の関係の場合は、現在小麦粉或いは小麦が統制の関係にありまするために、文部省でたまたまこれを時分で私どもの主義通り簡単に扱うということが先ずできないという前提が一つあります。大豆の始末のときには、丁度大豆が統制関係から外れたという一点と、更に小麦粉のように比較的割合に厄介なものだそうでありまして、丁度私どもがこの受けました大豆そのものは、割合に品物から申しますとまずいものであつたように伺つております。必ずしも上等の品物でなかつたというふうに聞いております。そんなような関係から、代替制をこれにつけるということは、そう簡単に参りません。小麦粉、小麦の場合は、そういう統制の関係がございます上に、更に事実において代替制を相当に認めて行くということは、必ずしも穏当ではありません。そのために輸送費とかいつた関係を成るたけ節約する手段として、我々がたまたまアメリカからもらいます小麦粉なり原麦なりを食糧管理庁に一旦売つて、その代金を地方に渡して、地方が各食糧事務所でそれぞれ規格に合いましたものを受取る、それを委託加工の形においてパンにして、児童に配給する、こういう形をとつております。その間別に作為的な関係からこういう区別があるわけではございません。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 小麦の場合は今御説明になつたのですが、あれですか、今度の大豆もどこからかの大豆立替えで、あれですか、この四千四百万トンが一旦見返物資のような形になつて処理されたものをあとでギフトに振替えて行つたのですか。
  66. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 小麦の場合は先ほど申上げましたように、振替方法をとつておりますが、大豆の場合は全くそれと反対に、現物そのものを始末したわけでありまして、先ほど来申しますように、統制が外れておるということ、一つは、現物が簡単に代替できるような品物でなかつた、上等でないというような意味もあつて、代替をやらせるようなことが却つてまずいのじやあるまいかということで、現物そのものを、この資料に書いておりますように、四つの会社に振り分けて油に搾つた、こういう形になつております。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうですか、そこはわかりました。それでまだ非常に細かい数字の資料を頂戴しておるので、私は殆んど研究する時間がありませんし、又こういうことは軽々にお伺いすることもまずいことでもございますし、十分私も研究さしてもらいたいと思いますから、質問はこれで打切りまして、次期に、あとにもう少し詳しい御説明を、できるだけ詳しく伺える機会を持つて頂きたいということを希望いたします。
  68. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。
  69. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 管理局長にお伺いいたしたい点は、先般のルース台風の文教施設の災害は御承知のように非常に大きかつたと見られるのですが、これは文教施設のみならず全般的にもまだその復旧対策が積極的に推進されていないようでございますけれども、この文教関係のは倒壊したような所も多うございますので、早急に復旧してやらなければその日その日の授業に差支えると思うのですが、現在今日の閣議では五十億の緊急融資が閣議決定されたようでございますけれども、大蔵当局との交渉はどういうふうに進んでいるか承わりたい。
  70. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 私どもも今度の災害の大きさ、又これを緊急に処理しなければいかんという態度でおりますことはかねがね申上げる通りでありますが、今日の閣議で五十億にきまつたという数字のことは今私初めて伺つたので、繋ぎ資金的に処理をするということ、大体教育関係の枠が二十九億見当であるということ、そうした程度のことまでは承知いたしておりますが、五十億といいますと、私どもの承知いたしておりますのよりも、少し十億ばかり減つておるように思いますが、その部分についての数字は私は正確に伺つておりません。あとで又伺つて善処すべきものは善処しなければならんと思つております。
  71. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは私予算委員会で大蔵大臣に伺いました。ところが今度の倒壊に対する補助にしても老朽校舎と然らざるものと補助率の差等をつけるつもりだ、こういう答弁があつて私は差等をつけることは絶対やめて欲しいということを要望し、又その席上で天野文部大臣も差等をつけてもらいたくないという発言をされたわけでございますけれども、その後大蔵事務当局との折衝はどうなつているか、又見通しですね…。
  72. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 私もあの席におりまして、大蔵大臣の御答弁を伺つておりますが、差等をつけるということをおつしやつたわけではなかつたと記憶しております。大蔵省の事務案では確かに或る年齢以上のものと、或る年齢以下のものとの区別をしたい、又義務制の学校と非義務制学校とにおいても区別をしたいという事務当局意見があつたことも事実であります。目下のところ私どもが今漕ぎつけておりますところでは大体そうした線は御免こうむる、その形が大体御免こうむつた結果の数字が大体二十九億という線に出ておるわけであります。それを閣議で今日どういうふうに御決定になつているか、私はよく伺つておりませんが、先ほどのような個別について削減されているというふうには考えておりません。
  73. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは御努力を願うとしても、この災害復旧の補助について更に伺いたい点は、私立学校の災害復旧に対する補助でございますが、殊に大分県それから宮崎県は数少なうございますけれども、少数校でございますけれども、現在経営難に陥つているところに更に台風でひどくやられておるようでございますが、その私立学校の施設に対する補助というものは特別な考慮をされるお考えでおられるかどうか、その点を承わりたいと思います。
  74. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 私立学校に対する関係、これは昨年の大阪の例が一つございますので、補金助というよりは貸付金ということにして割合に比率をよく見たいものだと思つております。これについては大体成算を持つております。
  75. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 是非まあ立派な先例になるのでやつて頂きたいと思いますが、それと絡み合いますが、例年問題になるところの私立学校に対する補助ですね、ルース台風に局限されないわけでございますが、昨年は十億を予算化して着々事業を行われておるわけでございますが、先般来年度予算要求として御説明頂きました私立学校振興会という名前において要望を大蔵省に出されておるところの予算というものは、是非ともこれは貫徹して我が国の私学の振興を図られたい、こういうふうに考えておる次第でありますけれども、私は先般大蔵省の主計局長に会いましたら、主計局長はけんもほろろの意見で、相当私の意見と主計局長意見とは根本的に見解の相違があるように私は伺つて一応引下つたのでございますけれども、提案された文部省としては相当の私はお考えを持つていらつしやると思う。その決意、更に文部省のその後の大蔵省との折衝状況なり、見通しについて私は是非実現させたいと考えるが故にお伺いしたい。
  76. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 振興会の、これも名前はまだ仮称でございますが、ああした考え方は是非とも貫徹したいと考えております。これはそのときも御説明申したかと思いますが、私立学校がお互いに助け合つて、而も割合に楽な形でその財源ができて来る考え方を私は考えておりますので、是非これを実現させたいものと思つております。大蔵省との折衝の経過でございますが、これはまだ私がここでとやかく言うほどの段階ではないと思いますが、ほかの関係に比べて何とかしなければならない筋のものであろうというくらいに彼らが考えておつてくれることは間違いないものと思つております。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次にお伺いいたしたい点は、この前予算委員会でもちよつと触れて御答弁頂いたのですけれども、もう少し伺いたい点は、この南九州のああいう温度の高い温地帯を視察して、白蟻の被害というものは如何に大きいかということは私実物を見せられてびつくりしたのですが、これは特に専門の建築学界においても相当対策というものが講じられ又研究されておるものと思うのですけれども、この白蟻の被害に対する補助ですね、こういうものはまあ地方教育委員会当局者の説明によるというと考慮されていない。それで手当が遅れてまあのつぴきならん状態に追い込まれて来つつある。こういうことをまあ聞きもし、何とかして欲しいという陳情を受けたのですが、大体我が国における白蟻の被害の状況というものはどういう状況なのか、大ざつぱでよろしい、どういう状況なのか、又建築学上からこういうものの研究対策というものは基本的に講じられつつあるのじやないかと思いますが、それと、それからこれに対する要望並びに被害に対する補助、復旧に対する補助、そういうものをどういう事情になつておられるか簡単でよろしいですから伺いたいと思います。
  78. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 白蟻の被害が全国的にどんな状況かという点は私の承知していますところでは、和歌山県を中心にした部分と、熊本、宮崎、鹿児島を中心とした部分といつた部分がかなり激しく被害を受けておる地域だというふうに心得ております。建築学界的な意味からどうという部分については私詳しく存じませんが、これを予防するというよりは、或いはこの被害を或る部分発見してからの始末であるかも知れませんが、薬品的な研究という部分ではかなり進んだものがあるように聞いておりまして、そうした始末を現にやつておられる事実を若干心得ております。文部省のこういう被害に対する対策、又は補助という面から見ますと、只今のところまではまだそれに対する手当、補助はできておりませんが、私の考えております線は、要するに危険校舎という枠の中に或る部分年齢で判断されたもの、或る部分風水害の関係で危険の状態を脱しておるといつたような種類のものと併せてこの白蟻の被害の関係から来ております危険と認定されます校舎もいわゆる危険校舎の枠の中に入れて始末をしたい。少くとも六・三の完全実施のために市町村が非常にウエイトをその三つの部分に止むを得ず、必要のためではありましようが、非常に過重な負担をしておつて下さるという面と考え併せて、この危険校舎に対する手当を是非実現したい。これがない限り、火災の予防にしても、又風水害に対する予防にしても、年々巨額の被害を出しておるわけでありますので、それを予防するという角度からも是非実現したいというふうに考えております。
  79. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 局長に対する最後の質問でございますが、これも先般予算委員会で占領軍の基地との関連において一般的にちよつと触れたわけでありますけれども、ここでもうちよつと掘り下げて伺いたい点は、今日午前中本委員会において請願が採択されました福岡市の月隈小学校の校舎問題でありますが、防衛協定によつてまあ吉田さんは基地はできないと言うけれども、現実において基地はできている。そうなるとこういう種類の問題は今後ぼつぼつ起つて来るのじやないかと思うのでございます。たとえそういう防衛協定に基いての特殊な取扱方がきまらなくても、ああいう月隈小学校のような校舎の移転に対しては現在文部省において持つておられるところの予算内で何とか処理される方途があるのじやないか。又そうしても何ら違法にならないのじやないか。こういうふうに私は考えるのでありますが、内容は詳しく申上げますと長くなりますから申上げませんが、簡単に申上げますと、結局御存じと思いますが、校舎がある所に基地ができたわけなんですね。アメリカさんに訴えに行くと、アメリカでは飛行場の近くには学校は作らないそうですが、こちらは学校を作つた所へ以て来て滑走路をぐんぐん延ばして来たのだから手に負えないわけですね。そうして授業は実際できない。しよつちゆう不時着があるし、燃料タンクが落ちる。とても学校教育は騒音によつてできないと同時に、教師は生徒児童の生命保護について非常に危険を感ずると言うし、父兄にしてももう安心して学校にやれないわけなんですね。こういうのは二条約発効後においては何か考えられるべきものだと思うのでございますけれども、そういうものを待たなくても現在の管理局において握られているところの予算内で何とか私は取扱ができるものじやないかと思うのでございますけれども、少し突つこんで見解を承わりたいと思います。
  80. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 只今の月隈と申すのと、私が承知していますのと、同一物であるか、或いはちよつと記憶が不確かでありますが、同一事件が北海道に一件、福岡県の板付の飛行場の関係で一件、二件あつたと心得ておりまして、二件とも大体解決いたしております。今あなたのお話のような線から教育委員会と協議の上大体解決ができておるものと承知しております。月隈がそれに該当するかどうか、ちよつと私自信がありませんけれども、福岡県の部分、北海道の部分、二件とも解決いたしております。
  81. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それね、あの福岡の板付というのはこの月隈に間違いないんです。
  82. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 同一物ですか。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ええ。
  84. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) それなら解決しております。
  85. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは解決しておらんです。
  86. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) しております。
  87. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いつ解決しましたか。
  88. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 北海道のほうは大分前だつたと思いますが、板付の関係の部分は今度の補正予算と前の予算の配分のうちのやりくりを教育委員会でやつて下すつたはずになつております。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時期的に言つていつ頃ですか。
  90. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) だから最後の解決したのはこの間補正予算の配分をやりました時、従つて九月に入つてからだつたか、十月に入つてからだつたかと思います。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 解決していないということを福岡市当局からも、福岡県教育委員会からも、私はそれ以後私も見ましたし、又陳情を受けておるわけなんです。更に調査願いたいと思います。
  92. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと今の矢嶋君の質問関連してですが、今のような場合に、教育機関に支障を及ぼす場合には私は文部省関係の予算だけでなく、やつぱり防衛費というものが組まれるならば、その方面からもこれは成るべく早く支出してもらつて解決する問題だと思うのです。こういうような問題を放置しておきますと、ただ単に教育上の支障のみならず、対米感情というようなもの、特にそのいろいろな国際的なデリケートな問題がある場合に非常に支障を来たすと考えるために、これは文部省が予算がないから困るというようなことではなく、文部省自体の予算がなかつたらばこれは国家、政府全体としての責任においても早急に解決しなくちやならない問題だと思うのです。こういう問題はむしろ文部省が政府に、大蔵当局、或いは防衛……どの省に属しておるかわかりませんが、そういう方面に強力に当つて早急に解決してもらいたいと考えております。この問題については本日当委員会において請願を採択して、今明日中に政府に廻つて行くはずですから、早急に解決してもらいたいと考えております。  それからその次にこれも矢嶋君のルース台風の問題とは直接関係ありませんが、それと同じような問題ですが、全国に戦災都市の義務教育の機関が非常に廃頽して使用に堪えない、見るに忍びない状態が今なお現存しております。こういうものに対して文部省のいわゆる〇・七坪一人当りの建築基準でこれをやつて行くというような状態でありましたならば、いつになつて解決するかわからないというのが実際の状態だと思うのです。そういう点から少くとも戦災都市の義務教育施設の復興というものに対しましては、別途の方法で早急にこれを復旧して教育に支障のないような方向に持つて行くというような何か具体案がありますかどうか。又どういうような恰好でやつて行くとお考えでおりますか、ちよつと御意見を拝聴したいと思います。
  93. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 第一の点は全く同感でありますが、只今のところまだ件数も先ほど申したような程度でございますので、特に取改まつて始末をしなくても解決ができて行くという程度考えておりますが、今後基地の問題がどうというようなことがもう少しはつきりしませんと、この態度をどうというわけに行かんのかと心得ておりますが、考え方としては全く御同感でございます。  第二の戦災都市の関係がまだ不完全に残つておるのじやないかという部分の問題誠にその通りでありまして、〇・七坪の関係が非常に私どもとしては急いでおります関係から、戦災関係の部分があとに残つて行きます状態は御指摘の通りであります。〇・七坪の問題が解決しますと同時に、残りますそうした種類の問題でありますが、第一は御指摘のように戦災都市の非常に応急に造つたバラツクとか、非常にあいまいなもので、仮物程度のものが残つておるというそういう部分の問題、それから雨天体操場の問題と、更にこれをベース・アツプして行きます問題と、いろいろ残つているわけでありますが、その中で雨天体操場の問題と戦災都市の中のそういう危険校舎といつたようなものの復旧問題について、特に力を入れなければならんというふうに考えております。特に先ほど申しました危険校舎の問題が市町村の頭痛の種になつておりますことは又御存じの通りと思いますが、これらのものと並行させながら、どういうふうにおいて行くかというところを今盛んに研究しておるわけでありますが、一面義務教育費の負担のあの法律案が施設の分をどんなかうに含ませるかという問題が或る程度固まつて来ませんと、私どもの今考えております部分との間は、理論的に矛盾するものでは全然ございませんが、向うのきめ方と私どものきめ方とに矛盾の起らんように、又考え方に誤差を生じて来んようにといつたような考え方が一応必要でございますので、そういう部分を今検討しておるわけでございます。御指摘のように放置できない、まあ予算の関係が完了しても、この部分についての配慮は十分せられなければならんというふうに考えておる次第でございます。
  94. 木村守江

    ○木村守江君 大体わかりましたが、これは今これを申上げてもしようがないのですが、明年度の文部省の予算の中に、大体老朽校舎、危険校舎に対する予算を文部省は計上しておるというような話を聞いておりますが、それと同時に、この戦災都市の義務教育施設の何か予算でも組もうというお考えがありますか。
  95. 久保田藤麿

    政府委員久保田藤麿君) 明年度は戦災市町村関係の分の予算を組んではおりません。これは〇・七坪の関係の中に一応包含されて計上されております関係から、それだけを今特に引出すということは、六・三の〇・七を完成します形の上にいささか支障になりますので、明年度の分としては考えておりませんが、〇・七坪の関係が私どもの考えております程度の姿において完了したあと残る問題として、先ほど申しましたように、危険校舎の問題、雨天体操場の問題と同列に、特にそこから引抜いて考えなければならん問題だというふうに考えておるのでございます。
  96. 木村守江

    ○木村守江君 大体わかりましたが、これは実際予算というものは、次から次、次から次と、私はもう六・三建築、〇・七坪できたらそれで今度は戦災の義務教育施設の予算がとれるというように考えられますが、実際問題として私はやはり次から次、今度の問題でも、例えば六・三建築が終つたなら大体その次に来るのは実業教育振興のために要する費用とか、いろいろなものが次から次へ舞込んで来ると思うのです。そういう点から、そういう考え方からすると、この戦災都市の義務教育施設の経費というのは、来年度も組まれていないということを伺いますと、だんだんだんだん残されまして、いつになつても解決できないというような状態になりはしないかということを恐れるのですが、その点よく含んでおかれて、成るべく早く戦災都市の義務教育施設のほうも、一般の非戦災地と同様な恰好までに持つてつてもらいたいと、そういう点でできるだけそういう都市に対しては、まあ六・三建築の補助の優先的配付とか、或いは起債の分配の点等についても特段の考慮を入れなければならんという考えを持つておりますが、どうでしよう。
  97. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの際スポーツ問題に関して政府委員に少しお伺いいたしたいと思いますが、戦後非常にスポーツが盛んになつて来たことは非常に結構でありますし、今後もこれを育成して行かなければならない、そういうふうに私どもは考えるわけであります。私は狭い範囲内で見ておるところでは、先ず学校体育でございますが、学校体育、学校スポーツというものとプロ・スポーツの区別がつかないような事情で、セミ・プロになりつつあるのじやないかという印象を深くするわけなんです。と申しますのは、スポーツが盛んになることは結構なんですが、大学の選挙は勿論のこと、高等学校以下の選挙でも非常に、県内は勿論のこと、県外への遠征が非常に多くて、そうして遠征先においてはプロ試合にも劣らない程度の入場料を取つてつておる。こういう状況を私見まして、盛んにはしなくちやならんのだが、学生スポーツはこれでいいのかなと、こういうふうに私は感じておるのですが、文部省の知られておる実情とこれに対する指導というものはどういうふうにお考えになつていらつしやるか、承わりたいと思います。
  98. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 只今お話がありましたような傾向がないでもないと思います。それで併しスポーツの持つ教育的な効果は私からことで申上げるまでもなく、非常に大切なものでございますので、文部省としましては、学校体育に関しまする学習指導要領を全国的にこれを配りまして、この学校スポーツ、学校体育が適止に行われまするように指導、助言をしておる次第でございます。この中で練習の場合とか試合に関する場合とか、或いはコーチ或いは選手の選定というようなことについて細かく指導しておるのでございます。只今のお話のように学校の生徒がプロに近くなつて来る、セミ・プロになりつつあるというふうなことは遺憾でございますので、さようなことのないようにしておる次第でございますが、現実問題としてそういうものがときどき見受けられますのは甚だ遺憾に思いますので、一層注意をして参りたいと思つておる次第でございます。
  99. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこれを問題にするわけは、結局学習にも影響して来る、その面もありますが、費用の問題だと思います。生徒が校友会費とかいろいろ言つておりますが、出した金が一部選手のために非常に偏頗な使い方をされる。更に費用が足りないから百円も百五十円も入場料を取つて、例えば野球をやるという問題ですね、更にそれでも費用が足りないから、ちよつとさつき大臣に基本的に尋ねましたが、外部から援助を仰ぐわけですね。外部から援助を仰ぎますというと、結局金を出した人がやはり学校教育に対して、学校経営に対して発言権を持つて、校長初めその学校に勤務する教職員が自主性のある、信念のある教育をやれなくなる、こういう結果になるということは、もう戦前の非常なる選手制度時代に経験済みだと思います。そこで政府側はこういう外部の学生並びに高等学校の生徒の入場料というものは、どの程度までを適当と考えていらつしやるか、これは或る程度やはり私は指導されて然るべきじやないかと思いますが、如何でございますか。
  100. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 学生のスポーツとしていろいろな試合が行われる場合がありますが、その場合に入場料を取るというふうなことは、できるだけ望ましくないと思つておるのでございます。併しどうしても経理上止むを得ないというような場合におきましても、それから利潤を上げるというふうなことではなくて、最小限に止めなければならんというふうに考えております。文部省で出しております先ほど申上げました学習指導要領にいたしましても、そういう面についても入場料を取つてはいかんというてとは書いてございませんが、できるだけ少い経費で効果を挙げるようにというようなことについて詳しく指導している次第でございます。
  101. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 適正なる指導が徹底するようにして頂きたいと思うのですがね。それから更に、非常に終戦直後においてはスポーツというものを学校においては全学生児童のリクリエーシヨン的な性格で普及されておつたのが、最近非常に試合本位的になりつつある。まあ生徒の出したお金が一部生徒によつてその大部分を使用されるというような状況になりつつあるという点について、私はそれではいけないのじやないかと、ここに遺憾の意を表する次第でございます。具体的に若干の点について伺いたい点は、高等学校、中学校、小学校の対外試合というものは、どの程度が適当だとお考えになつておるかどうか。一部野球の強い高等学校では、年に全国的な試合に五回も六回も出るのは果していいのかどうか。それから中学校の生徒が県外へ試合に行つて全国的な大会を持つということですね。これは年齢的に、精神的に言つても、体力的に言つても、又経費面から言つても、果して妥当なのかどうかですね。更に小学校の生徒と言えば、これは体力的にも精神的にも私は未熟な段階にあると思うのですが、ああいう生徒を全県下を単位とするような大会に出場させるというようなことは果して適当なのかどうか。ああいう県単位の大会なんかに出すということは、経費でも困るし、体力でも困る。それ以上にいたいけな子供に対して興奮させるのではないか。果してそれで適当であるかどうか。非常に試合本位的に、する者も見る者もなりまして、ますますその度合というものは進みつつあると思うのでございますが、指導の任にある文部省としてはどの程度が適当と考えておられるのか、又どういう指導をされておられるのか、承わつておきたいと思います。
  102. 辻田力

    政府委員(辻田力君) お話は誠に御尤もなお話でございますが、文部省といたしましては、従来からこの点についてもいろいろ心配いたしまして、指導要領にも書いてありますし、又通牒のほうでもそれぞれ県に対して指導いたしておりますが、小学校におきましては、校内競技に止める、対校競技は奨励しないという方針でおります。中学校では、宿泊を要しない程度の小範囲のものに止めまして、この対校競技のために数日間かかるような所に行くということは禁止しておる次第でございます。新制高等学校につきましては、地方的大会に重点を置きまして、全国的な大会は年に一回程度に止めるように指導しておる次第でございます。
  103. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部省指導方針ははつきりしましたが、実態というものには遠いと思うのですね。結局文部省は命令権はないわけですから、これは地方教育委員会に今体育保健課というのがあると思うのですが、地方教育委員会でやはり方針を立てて学校に流すのでありますか、それともその指導要領によつて学校が自主的にきめるようになつているものでございましようか、どうですか、この点伺いたい。
  104. 辻田力

    政府委員(辻田力君) まあ場合によつて、土地によつて、実際に精神と言いますか、この指導にたがつておるようなところもあるかも知れませんが、併し全国的には大体この方針によつてつておるように考えておる次第でございます。只今の指導順序でございますが、これにつきましては、各府県の体育保健に関する課長会議とか、或いは指導会議において十分デイスカツシヨンいたしまして、そこできまつたところによつてつておるような次第でございます。それで地方指導者におきましても、その点は十分心得ておる次第でありますが、或いは二、三の場合にそれに反するようなことがあるということは残念でございますが、我我としましてはそういうふうにして指導しておる次第でございます。なお高等学校につきましても、実は私たちのほうには全国的な大会を開きたいという要望と申しますか、希望が、随分いろいろな種別につきましてあるわけでございますが、いつもこの精神に則つてお断りすると言いますか、その精神によつてつておるわけでございます。例えば最も最近心配しております野球の方面にいたしましても、この精神から全国的な大会は年に一度、止むを得ない場合にも、それに準ずるような場合でも二回程度にいたしておるのは、やはりこの通牒或いは指導要領の精神によつてつておる次第でございます。
  105. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 指導方針は非常に立派なのでございますけれども、私はそれは実態とその指導方針とは随分違つて、非常に私は心配しておるから申上げておるのですが、是非文部省は実態を調査されて、それから斯界の権威者の意向もお聞きになつてはつきりした指導方針を立て、それが又徹底するようにして頂きたいと思うのです。次にこれと関連してお伺いしておきたいのは、さつき申上げましたように、非常にスポーツが盛んになつたことは結構なんです。私も非常に好きなのでございますが、試合本位になりまして、例えば最近こういうのがあるのです。地方において防犯協会あたりで青少年の不良化防止に中学校の野球大会を開くというようなものですね。これは社会体育の所管の面に入るかと思うのでありますけれども、これをどういうようにお考えになつていらつしやいますか、又そういう方面と何か協議をし対策を立てられるというようなお考えはございますか、どうですか。全く下部の実情を見ておりますと、野球は非常に好きだと、国民感情に合うという点では非常に結構なんですが、小学校学校の選手をあらゆる場合に国民のリクリエーシヨンのために引張り出して、或いは学校でやる、或いは警防協会とか警察あたりが主催してやるというようなことは、やはり私はそういうふうに少し手放し状態になつておるのではないかと、こういう感じを常々持つておるので、あえてお伺いするわけであります。
  106. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) 只今御質問になりました防犯協会の野球大会の問題でありますが、これは私たちのほうは非常に望ましくないものと思つております。と申しますのは、主催者の中に、やはり教育的は考慮を払う教育的な団体——文部省とか、或いは地方教育委員会とか、そういうようなものが参画いたしまして、主催者になつて、そうして教育的な考慮の下でこの計画を進めるというのでなければいけないというように考えておりまして、当初防犯協会がやりました最初のときに手違いがありましてそういうことにならなかつたのでありますが、あとから気が付きまして、この防犯協会主催の野球大会につきまして、その是正方についていろいろ協議もいたしておるのでございますが、まだ十分にこちらの言う通りにはなつて参りませんが、併し防犯協会のほうでも、文部省の意図を酌みまして、成るべくそれに副うように努力したいというような意思は表明いたしております。多少時日はかかりましても、これを文部省の線まで妥協して頂くように今後も努力をいたしたい、かように考えております。
  107. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それから学校体育の面で柔道が復活されたわけでございますが、結局これは当時論ぜられましたように、やはり指導者の再教育というものが最も私は重大なものだと考えておりましたが、文部省でもこの指導者の養成については相当の考慮を払われたようでございますが、指導者養成の再教育の進捗状況ですね。更には、これとも関連いたしますが、来年の四月から剣道も正課に入れるのではないかと、こういう声を聞くわけでございまして、その方面はどういうふうにお考えになつておりますか、承わりたいと存じます。
  108. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 柔道が学校体育として復活いたしたことは誠に有難いことでございまして、併し適正な運営をしなければ、又曾つて唱えられた悪い面も出て来る虞れがありますので、お話の通り指導者の養成ということが非常に大切な問題であります。で、文部省におきましては、昨年の途中に関係方面からその復活を認められましたので、急遽委員会を設けまして、その指導の手引を各権威者に集まつて頂いて作りまして、その指導の手引に基きまして昨年二回、本年今までに三回、地方のブロツク別に、指導者講習と申しますか、指導者養成の手続をしておる次第でございます。なお本年あと三回、教育委員会文部省と共催でやつて、遺憾のないようにしたいと思つておる次第でございます。それからなお、その文部省の主催の講習会で指導を受けた人が今度各県に帰りまして、各県ごとに又各県の教育委員会の主催の下に一般のかたがたに対する講習会と申しますか、養成をしておるわけでございます。  次に剣道の問題でございますが、これは本日現在までの段階におきましては、まだ関係方面との関係もありまするしいたしますので、明年の四月から必ず復活するということにはまだなつていないのが実情であります。我々といたしましては、これにつきましてもいろいろ説明をして了解を得るようにいたしておる次第でございます。
  109. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はデンマークの例にも見るごとく、体育の健全なる発達ということは、やはり戦争に負けた我が国の再建と非常に関連が深いと思うのです。で、これは体育行政の面においても又それの裏付になる予算の面においても、私は重大視して行かなきやならん問題だと考えているのですが、最近後楽園とか或いは神宮球場ですね、こういう方面、私ときどきまあ寸暇をさいて見に参るのでありますが、試合に国民が賭けて見ているということですね、これをどういうふうにお考えになるか。これは相当高い広い視野から、やはりこのプレイする者に対しても、又これを見る国民に対してもやはり正しい競技の仕方、それから正しい見方というようなものを、これはスポーツ関係者だけではできないことでしようけれども、相当私は意を払つてやらなければ、一部に見られるああいうスポーツを賭けて見るという……特にひどいのになるというと今度の球はストライクかボールか、ヒツトが出るか出ないかという、そういう個々のプレイにまで賭けて見るというそういう実情、これは私は何かこう植民地の頽廃した国の競技場で見られるような風景ではないかと我々としては非常に残念に思うのでありますけれども、如何お考えになりますか。
  110. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) 只今矢嶋委員のおつしやつたことにつきましては全く同感でありまして、最近競馬に次いで競輪ができましたり、その他そういうふうな賭が非常に盛んになつて参りまして、又プロ野球等が出て参りましたので、それにも刺戟されたのと、アメリカが御承知のように職業野球にはいろいろ賭けおるようおりますので、そういう悪習も真似たような関係で、学生のスポーツに対してさえも賭をするというような傾向もあるようであります。これはもう全く同感で、嘆かわしい次第でありまして、何とかしてこれを今のうちに是正しなければならんと思うのでありまして、我々は我我の力の及ぶ限りにおいて、あらゆる機会においてこのスポーツの神聖を害する、又賭事というような賭博的な精神の盛んになるようなことを絶対にやらないように指導して行きたいと思いますが、併しこれはやはり只今矢嶋委員も御指摘になりましたように、世の中全般がそういう機運にならなければなかなか達しられないのでありまして、競馬、競輪等が盛んに行われている現今ではなかなか直ちにこれを実現するということはむずかしいと存じますが、この上共に御趣旨に副うように大いに努力いたしたいと思います。
  111. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほど私天野文部大臣にちよつと簡単にお伺いいたしましたが、国民体育大会ですね。これは現在年々行われておりますが、この選手派遣に要する費用の捻出については相当各地方では苦慮しているのではないかと、私はこう考えるのですけれども、指導者の立場にある皆様がたとしてはどういうふうに把握されているか。私はまあ御意見申しては申訳ございませんが、国民体育大会は二年に一度ぐらいでいいのではないか。それから更にこの出場者につきましても、今のような選手制度の一方よりもやはり国民体育大会、国民の体育の祭だというふうな感覚から、全部の国民が参加するということはできないのだけれども、できるだけ幅広く国民の体育祭に参加できるというような角度から開催さるべきじやないか、そういうふうに検討されて然るべぎじやないかと、これはまあ私の見解でございますけれども、皆様がたとしてはどういうふうにお考えになり、どういう指導をされているか、承わりたいと思います。
  112. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) 国民体育大会が敗戦の日本にとりまして非常に人心を鼓舞するのに役立つたことは矢嶋委員のおつしやる通りでありまして、国民体育大会というつの大きなスポーツの祭典を通じまして、若人はもとより、国民全般の士気は大いに高揚をいたしておると考えます。そういう意味で非常に有意義でありますので将来もこれを続けて行きたいと考えておりますが、併しながら大体来年東北地方をやりまして、再来年四国をやるということが決定いたしておりますが、それをやりますというと、全国のブロックを一巡いたしたということになりますので、あとはおつしやる通り隔年にいたしますか、或いは又三年に一遍にいたしますか、それはよく協議をいたしまして適当な措置をとりたいと思つておりますが、いずれにいたしましても、毎年これを開催するというような方針は持つておらないのでございます。それからその費用の点でございますが、これは申すまでもなく、成るべく安く上りますようにあらゆる点に考慮をいたしておりまして、例えばこの開催地の旅館の宿泊料の問題でありますとか、或いは輸送料の問題でありますとか、そういう点につきましてもいろいろ考えて、実際において割安にいたしているのでありますが、併し多数のものがこれに参加する関係上、地元におきましてはそれぞれの負担はこれは免がれないのでありまして、現在は各府県御当局にいろいろ御考慮を願いまして、或いは全額負担のところ、或いは半分負担のところ、一部負担のところというふうにいろいろ御考慮を願つているのであります。この御考慮を願うということは、今後もやはり続けて頂きまして、成るべくならば出る本人の負担にならないように、個人負担にならないように、又負担になりましてもこれが極めて少額で済みますように我々も今後も考えたいと思つておりますが、或る程度の費用はこれは止むを得ないと考えております。それにも増してその効果というものが十分あるから、只今申しましたような方針で今後は善処して行きたいと思います。
  113. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次のことは私は大臣のほうに伺つたほうがよかつたのでありますけれども、さつき大臣が急いでおられたので、伺えなかつたのでありますが、希望と併せてお伺いいたしたい。それは国内の競技に出場する選手にしろ、或いは海外に遠征する選手にしろ、これはまあ国民としてアマチユアとして行くならば、自分の懐から費用を捻出し、或いは自分が属するところのクラブから、団体から費用を捻出してやるのが私は基本的には正しいかと考えるのであります。併しながら我が国のこの国民経済の、国民所得の貧弱さというものでは、そういう私は理想論は通らないのです。だから、何らかの意味で外部からの援助というものを与えなければならない。その場合に、私は一番弊害の少い援助の仕方というものは、やはり国庫とか或いは地方公共団体とか、こういうところから補助を与えるのが一番弊害が私はないと思う。どういう弊害があるかということは私は申しませんけれども、或いは特定資本家から補助を受けるとか、或いはPTAから補助を受ける、こういう方法は私は弊害を必ず伴うと私は見ているものでありますが、そういう角度から国民体育大会をやるに当つては、できるだけのやはり国の祭として国会からの補助金を出す。そうして年年歳々やつては大変ならば、例えば二年に一遍やれば、その剰余金というもの、それを今後の独立した日本が、国際競技に参加する費用にも出して、できるだけこの国際競技には基本的には間違つているかもしれないが、国庫でできるだけの補助をして、できるだけ多くのスポーツマンを国外に派遣して、国外から新らしい日本を眺め、又新らしい日本のスポーツというものを眺めさせるということは、私はやはり日本の再建という立場から考えて決して価値のない国家の投資ではない、こういうふうに考えているのでありますが、そういう見解に対して政府委員はどういうふうにお考えになつていらつしやるか、又そういう角度において御努力を願えるのかどうか、この際承わりたいと思います。
  114. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) 次回オリンピツクに出場します選手につきましては、大体我々のほうでは国を代表いたしまして、国際親善或いは国の国威を宣揚するというようないろいろな意味を含めて行くのでありますから、国家的な意義が非常にある。であるからできるならば、これを国家として全経費を負担してやりたいと思つておるのでありますが、併し国内の財政状態からなかなかそれが許されない実情でございます。戦前からもこの種のものには大体半額ぐらいの実費を国が補助するという慣例があるのでありまして、現在もその慣例に従いまして半額補助ということを目標といたしまして我々は予算折衝をいたしておるのでありまして、これを直ちに全額負担に直すということは非常に困難を伴いますので、当分のうちはその線で私たちは交渉をして行きたい。又国内の国民体育大会に関しましても、同様な考え方ができるわけでありまして、成るべく学生等も国内には参加いたしますので、そういうものの負担にならないように、国又は地方公共団体のほうでこの面倒を見てやるというところに進んで行きたいと考えております。
  115. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう二、三点で終りますから、遅くなつて済みませんが……。それではオスローのオリンピツクには文部省としてはどの程度送りたいと考えておりますか。
  116. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) オスローのオリンピツクにつきましては、いろいろその際各方面とも交渉いたしたのでありますが、現下の情勢、財政状態、その他各国との関係等を考え併せながら、大体十五、六名のところが適当であろうと考えまして、十五名につきまして補助金を考えたのでございます。その補助金の額は、往復の旅費並びに向うでの滞在費を大体見まして、それの半額というところを狙いで立てたのであります。これは我々のほうの計算と大蔵省のほうの計算と多少変つて参りますので、査定のときには我々の要求額とは変つて参りますけれども、大体考え方はそういうような線で考えたのであります。
  117. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は夏季のオリンピツク、そちらを伺いたい。
  118. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) ヘルシンキの問題でございますが、ヘルシンキのオリンピツクは来年の夏でございまして、まだどれだけの選手を派遣するかということは、最後決定はいたしておりません。従いまして私たちはその選手の決定いたしましたときに、その選手の半額補助ということを、只今申しましたような計算で交渉いたしたいと思つております。選手の人数につきましては、いろいろ希望もあるし、又見方によつてそれぞれの説をなす人があるのでありますが、御承知のように賠償問題もございますし、或いは外貨の問題もございますし、その他関係の国国からも選手が出るのでありますので、そういう選手の数も睨み合せる必要もありましようし、その他諸般の事情を考慮いたしまして、適当の選手の数を決定しなければならんと思います。その点ではまだ私のほうではこれだけの選手でなければならんというふうな確たる数は持つておりませんが、体育協会とよく相談いたしまして、只今申しましたような諸般の事情を睨み合すと同時に、国際的な水準に達しているような選手を選定いたしまして、適当の数のところで折合いをつけたいと、かように考えております。
  119. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に……。体育が非常に盛んになるのは結構ですが、まあ盛んにならなくてはならんと思うのですが、体育が盛んになつたから、それに連れて或る程度の制限は当然じやないか、こういう考え方は実際あつたと思う。やはりスポーツの狙いどころから言つて、少しでも犠牲者が出るということは、非常に私は遺憾なことだと思いますが、最近の新聞面に出て来る犠牲者だけを見てみましても、余りにも学校関係が多過ぎると私は考えているのですが、これは全くプレーする本人の不注意ということもありましようが、やはり指導者の注意の弛緩ということも相当原因しているのではないかと思います。で、文部省においては最近のスポーツによる犠牲者ですね、こういうものがどの程度に統計がとられているか、又その原因というものについても調査統計は行われているかどうか承わりたい。若しなかつたならば、他日、件数並びに原因と目さるべきものの統計を私は是非頂きたいと思います。
  120. 西崎恵

    政府委員(西崎恵君) 文部省で照会いたしまして統計を集めたことはございませんが、そういうような問題が起きます都度各地から報告して参りますので、大体のことはわかつております。それには勿論原因その他のことが書いてあるのであります。御承知のようにそれに関する詳しい、漏れのない調査をいたしたいと考えております。ただ、今御指摘になりましたことは、私も同感でありまして、或る程度指導方針が悪かつたために起つたんじやないかというふうに考えられる事故もないではないのでありまして、戦後スポーツの盛んな余り指導の手が隅々まで行き届いてなかつた、まあ指導者の知識というものが、或いは経験が欠如しておつたというようなことも考えられますので、指導者の再教育並びに指導者に対するいろいろの注意ということにつきましては、今後極めて最近の機会に善処するようにしなければならないと思います。
  121. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで終りますが、私の質問申上げた趣旨というのは、終戦後スポーツが澎湃として興隆して、その功績というものも非常に見るべきものがあつたのでございますが、先ほど申上げましたように、健全なるスポーツの興隆というものは我が国の再建とも密接不可分の関係にありまして、いよいよその途は推進させなければならないと考え、更にこの二条約の発効によつて我が国が自主権を回復し、独立をするこの機会に、今まで手放し状態であつた体育会というものの健全なる発達を図る意味においての何らかの適切なる指導を要する段階に来ているのではないかと、そう私まあ考えましたので、健全なる体育振興のために今後も善処して頂きたいということを要望しまして質問を終りたいと思います。
  122. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 別に御質問がなければ本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十三分散会