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1951-11-21 第12回国会 参議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十一日(水曜 日)    午後二時十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            高田なほ子君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            高良 とみ君            高橋 道男君            山本 勇造君            荒木正三郎君            大野 幸一君            堂森 芳夫君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員            若林 義孝君            浦口 鉄男君   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○博物館法案衆議院送付) ○文化財保護法の一部を改正する法律  案(堀越儀郎君外十九名発議)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。これより博物館法付託になつておりますので、その提案理由発議者を代表して衆議院議員若林君の御説明を承るごとにいたします。
  3. 若林義孝

    衆議院議員若林義孝君) このたび提出いたしました博物館法案について御説明申しあげます。  わが国が、文化的な国家として健全な発達を図るためには、いろいろな方策が考えられましようが、国民の教養及び識見を昂め教育の力が最も大きな原動力となることは今改めて申し上げるまでもありません。  併しながら、わが国においては往々にして学校教育を重視し社会教育の面に力をおよぼさなかつたうらみがあるのでありまして、国民の自主的な教育活動を促進する環境は、まことに貧弱を極めておるのであります。学校における学習活動と、実際生活における自己教育活動とは、当然、相まつて行われるべきでありまして、かくしてこそ真の教育目的が達成され文化国家の理想も実現できるものとであります。  戦後、社会教育法図書館法が相次いで制定され、公民館図書館が活溌な社会教育活動中心機関として広く国民利用公開されておりますことは、御同慶に堪えません。しかし、一方において、実物教育機関としての博物館が、社会教育法に「別に法律をもつて定める」と規定されながら、現在何等の保護助成の道が講ぜられずにいたのでありまして、近時、視聴覚教育重要性が痛感される折柄、誠に遺憾に思うのであります。特に、わが国においては、その国がらから貴重な文化財が豊富にあるにかかわらず、十分な活用が行われず却つて文化財を損耗しつつあつたと申しても過言ではないのでありまして、視聴覚教育機関としての博物館整備充実を図ることはまさに緊急の要務であります。  ついては、この博物館の健全な発展を図るために、大要次のごとき事項規定した法律案を提出したのであります。即ち、第一には、新しい博物館性格を明かにしてその本来の機能確立し、博物館教育委員会所管に属することを明確にしたことであります。  第二には、博物館職員制度確立し、專門的職員資格及び養成の方法を定め、博物館職員組織を明らかにしたことであります。  第三には、博物館の民主的な運営を促進するために博物館協議会を設け、土地の事情にそつた博物館のあり方を規定したことであります。  第四には、公立博物館に対する国庫補助金交付規定を設け、その維持運営奨励的補助を行うことにしたのであります。  第五には、博物館資料輸送料についての規定を設け、特に私立博物館については、固定資産税市町村民税入場税課税の免除を規定し、私立博物館の独自な運営発展を促進するようにしたことであります。  以上が、この法律案骨子でありますが、なお細目に亘つて浦口委員から御説明を聞いて頂くことにいたしますが、博物館主要性にかんがみまして、十分に審議の上御賛成下さるようお願い申上げます。
  4. 浦口鉄男

    衆議院議員浦口鉄男君) それでは次に先ず制定の必要性について申上げます。ここに提出いたしました博物館法提案理由及びその概要について御説明申上げます。従来、学校教育活動に比して極めて貧弱であつた社会教育活動は、今後益々拡充上助成されなければならないのでありますが、殊に、社会教育施設としての公民館図書館博物館等は、社会教育の場として誠に重要な施設と申さなければなりません。公民館及び図書館は、すでにそれぞれ法律的な根拠を得て活溌な教育活動を展開しているのでありますが、博物館につきましては、社会教育法に「別に法律をもつて定める」と規定されながら丁今日まで実現を見なかつたものであります。  近時、視聴覚教育重要性が痛感され、実物教育機関としての博物館整備充実が喫緊の問題となるに及んで、一層、速かに博物館制度確立を期さなければならないものと考えるのであります。  第二に博物館現状について申上げます。  わが国博物館と目されるものは、凡そ二〇〇館余でありまして、うち約一四〇館が私立博物館であります。しかしその数においても施設においても極めて貧弱でありまして、到底諸外国に及ぶべくもありません。古い歴史を持つわが国においては、相当貴重な資料が豊富にあるにもかかわらず、博物館が割合発達しなかつた理由は、いろいろあると思われますが、最も大きな原因としては、明治以降これらの施設に対して国が何等保護助成施策を講ぜず、現在に及ぶまで野放しの状態におかれていたことであります。特に、終戦後におきましては公私立博物館とも財政難のために経営困難となり、貴重な資料がいたずらにそこなわれ又は散決し、殊に、私立博物館にあつては、固定資産税課税によつて博物館維持すら困難となり、更に入場税課税によつて利用者もおのずから限られるという始末で、既に閉館又は廃館するに至つたものもある現状であります。  又博物館種類についてみましても、わが国には、その国がらから歴史、美術に関する博物館が多く、科学産業に関する博物館が誠に少いのであります。国民科学的知識の培養、産業改善及び振興等についての知識技術の普及など、実際生活に即応する実物教育資料整備活用とは、博物館にとつて極めて重要なことなのでありますが、これらの点については、全くかえりみられていないと申しても過言でないのであります。  かようなわけで、わが国博物館は全く不振を極め、博物館本来の機能を期待することは、到底望めなかつたのであります。  第三に法案の要旨を申上げます。  このような博物館現状に立脚し、この法案は、公私立博物館について次のような内容規定いたしまして、博物館制度確立を図ろうとするものであります。  以下、各車にわたつて、その概要を御説明申上げたいと思います。  第一章 総則におきましては、  第一には、この法律目的および博物館定義を明示いたしました。すなわち、この法律の適用を受ける博物館設置主体を、地方公共団体公益法人および宗教法人に限定し、博物館運営管理基礎確立すると同時に、特に、わが国において発達を見なかつた科学産業に関する博物館をこの定義において明確にいたしたのであります。  第二は、博物館事業を明らかにいたしました。従来、往々にして、資料の陳列を主とし、博物館研究活動館外活動又は出版活動等に積極的な機能が失われ勝ちでありましたので、博物館の動的な面を強調し、関係機関との立体的な活動を促進するよう、その本来の機能規定したのであります。  第三は、博物館專門的職員について、その資格養成について規定し、職員制度確立をはかろうといたしました。第四は基準を設定したことであります。即ち博物館の健全な発達を図るために文部大臣が、設置及び運営上望ましいと思われる基準教育委員会に示すことにしたのであります。  次に、第二章におきましては、博物館登録制度規定いたしました。すなわち、博物館設置しようとするときは、設置者は、その任意申請により、都道府県教育委員会の審査を経て、登録を受けることにしたのでありますが、これは、博物館の持つ特異な性格によるものであります。博物館機能は、各種各様の有益な資料によつて基礎づけられるものであり、又一その各種類にわたる資料が常に公共的に活用されることが大切なのであります。したがつて博物館の基本的な機能を確保しようとする場合には、單に設置主体のみを限定することで、それが期待できるとは申し難いのでありまして、その機能基本的要件が確保されなければ意味がないのであります。つまり、博物館設置について、単にその報告とか、届出とかによつて、この法律規定する機能を持つ博物館が直ちに予想されることは申されないのでありましてここに、博物館公共的活動基本的要件を備えているかどうかを審査する必要が生じて来るのであります。かようにして、これらの要件を具備しているものが、博物館として保護助成されるということは、極めて妥当であり、望ましいことと考えるのであります。又固定資産税入場税市町村民税及び博物館資料輸送料の減免をする関係上、脱税を目的として設置されるような私立博物館を排除するためにも、この制度を設ける必要を感じたわけであります。これは、博物館を拘束するということではなく、博物館特異性から、その機能基礎を確保し、積極的にその助長を図ろうとするためのものであります。  第三章におきましては、公立博物館設置運営について必要な規定をいたしました。  第一は、公立博物館運営を民主的にするために、館長の諮問機関として博物館協議会を置くことができることにしたのであります。  第二は、公立博物館が無料で公開されることを原則とすることを規定いたしました。  第三は、公立博物館に対して、国庫から補助金交付するように規定いたしました。これは、博物館維持運営について、その精算額に応じて奨励的に補助するものでありまして公民館図書館の場合におけると同様に規定したものであります。  第四は、これらの公立博物館は、教育委員会所管に属することを明示いたしました。  第四章は、私立博物館について規定いたしました。私立博物館は、その独自な運営によつてわが国博物館事業の面において、誠に大きな役割を占めて参つたのでありましてその業績は高く評価されなければなりません。  そこで私立博物館についてその自主性を尊重し、その特色をますます発揮できるように留意して必要な規定を設け将来の健全な発展を期待しているものであります。  なお、附則におきましては、現在博物館に勤務する職員について必要な経過措置を講ずるとともに、地方税法の一部改正規定いたしたのであります。  最後に、この法律規定する博物館は、いかなる特典を得られるかと申しますと、要約すれば次の通りであります。 一、公立博物館にあつては、補助金交付を受けられること及び入場税免税になること。 二、私立博物館にあつては、固定資産税市町村民税及び入場税免税になること。 三、公私立博物館資料の運賃および料金について割引がなされること。  以上が、この法律案の主な内容でありますが、博物館重要性にかんがみまして、その健全な発達を図るために十分御審議頂きまして速かにこの法案が成立いたしますよう特にお願い申上げるものであります。
  5. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本法案に対する質疑は次回に譲りまして、第二の法案を上挺することにいたします。ちよつと速記をとめで不さい。    午後二時二十五分速記中止    ——————————    午後三時十分速記開始
  6. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは速記を始めで下さい。  本委員会付託になりました堀越儀郎君ほか十九名発議文化財保護法の一部を改正する法律案を上提いたします。先ず発議者を代表して高橋道男君から提案理由の御説明を承ることにいたします。
  7. 高橋道男

    高橋道男君 ただ今議題となりました文化財保護法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申上げます。  第七回国会において成立し、昨年五月三十日に公布施行せられました文化財保護法によつて、我が国の文化財保護行政は、今や、新たな軌道に乗ろうとしているところであります。従つて、この法律充実改善について根本的検討を加えることは、今暫らく運営を経た後に譲るべきものと存じますが、従来からその必要を痛感されていました京都国立博物館及び奈良文化財研究所新設の機運が熟しましたことと、今日までの同法の実施状況に照して若干の規定整備を加える必要も認められますので、これらの小範囲の改正をいたそうとするのが、この改正案の趣旨であります。  次に本案により改正いたそうとする主な事項について御説明申上げます。  改正の第一点は、京都国立博物館及び奈良文化財研究所新設であります、御承知の通り奈良京都中心とする関西地方は、質的に最も貴重な文化財が数的にも最も多く保存されている地方であります。従つて、この地方に適当な公開施設を設けますなら文化財の出品を行いますのに便利であり、充実した企画に基く公開を実施することができますし、その文化財保存され来つた地方歴史的、自然的環境風土の中においてこれを鑑賞することが一層深い感銘を與えることとなり、わが国文化財の内外における認識理解を深めるのに寄與すること少なからぬものがあろうと存じます。又この地方に適当な研究機関を設けますことも、その豊富な研究対象が手近にありますので、その研究を行う上において大きな利便がありますことは申すまでもなく、また文化財所有者の求めに応じて速やかにその保存に関する適切な指導助言を與えることもできる等、文化財研究充実向上及び文化財保存の徹底に大いに貢献し得るものと期待されます。この観点に立ちまして、現在の京都市立博物館を讓り受け、これを充実改良いたしまして京都国立博物館を設けると共に、新たに奈良文化財研究所新設し、現在東京都にある国立博物館及び文化財研究所と東西相対応して文化財公開及び研究の中核といたしますことは、文化財保護行政目的達成上最も適切な施策であろうと存ずる次第であります。なお、この二つの機関設置は、予算の関係昭和二十七年四月一日から実施することといたしておるのであります。  改正の第二点は、国宝その他の重要文化財所在変更について、現在事後届出を要することとなつておりますものを、事前届出を要することといたそうとするものであります。国宝その他の重要文化財所在変更に当りましては、その移動の際における文化財き損防止上必要な指導移動先環境に応ずる管理上必要な指示を事前に行うことが文化財保存上適当な場合があり、事後届出のみでは、保護の万全を期し得ない憾みがありますので、原則として文化財所在変更につきましては、所在変更しようとする日の二十日前までに事前届出を要することといたそうと存ずるのであります。  改正の第三点は、都道府県教育委員会に関する規定整備いたそうとするものであります。即ち史跡名勝天然記念物現状変更に関する文化財保護委員会の許可の権限都道府県教育委員会に委任し得る道を開き、また都道府県教育委員会は、当該都道府県の区域内に存する文化財保存及び活用に関し、委員会に対し意見具申を行なうことができることとし、文化財保護行政に関する都道府県教育委員会権限と責任を拡めることといたしますると共に、この教育委員会專門的技術的補助機関として文化財專門委員を置くことができる旨の規定を設けることといたした次第であります。  以上のほか国宝又は重要文化財の国に対する優先的売渡申出に対する国の買取通知期間を二十日から三十日に延長し、文化財保護委員会附置の「研究所」の名称を「文化財研究所」と改めるとともに、重要文化財修理等につき国から補助金負担金を受けた者又はその相続人等がその重要文化財を有償で譲り渡す場合に国に返納すべき納付金に関する規定文化財保護委員会事務局各部所掌事務に関する規定及び国有財産法との調整規定その他二三の点について若干の事務的整備を行なうことといたしました。  以上がこの法律案提案理由及びその内容骨子でございます。何とぞ、十分御審議上速かに御賛成あらんことをお願いいたします。
  8. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 提案理由を承りましたが何か御意見のあるかたは御発言願います。
  9. 加納金助

    加納金助君 動議を提出いたします。本法案は我々文部委員全員発議でありますから質疑及び討論を省略いたしまして、直ちに表決せられんことの動議を提出いたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  10. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 只今加納君の御提案のように、本法案全員提案でございますから質疑及び討論を省略して直ちに採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは採決をいたします。文化財保護法の一部を改正する法律案を上提いたします。本法案を原案通り可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立
  12. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 全会一致でございます。よつて法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長口頭報告内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本法案内容、本委員会における審議経過、及び採決の結果を報告することにいたして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多数意見者署名をすることになつておりますから、本法案を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     加納 金助  木内キヤウ     若木 勝藏  大野 幸一     堂森 芳夫  木村 守江     荒木正三郎  高良 とみ     高橋 道男  山本 勇造     矢嶋 三義  岩間 正男
  14. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御署名洩れはございませんか。……ないと認めます。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時二十五分散会