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1951-11-20 第12回国会 参議院 農林委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十日(火曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     羽生 三七君    理事            片柳 眞吉君            山崎  恒君            岡村文四郎君    委員            白波瀬米吉君            北村 一男君            宮本 邦彦君            赤澤 與仁君            飯島連次郎君            加賀  操君            溝口 三郎君            江田 三郎君            門田 定藏君            小林 孝平君            三橋八次郎君            松浦 定義君   政府委員    農林省蚕糸局長 青柳 確郎君   事務局側    常任委員会專門    員       安樂城敏男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農林漁業組合再建整備法の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○繭糸価格安定法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それではこれより委員会を開きます。  農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律案議題といたします。本案については大体質疑終つたと考えますので、格別の御発言がなければこれより討論採決をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽生三七

    委員長羽生三七君) ではさよう決定いたします。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います……別段御発言がないようでありますから、本案について採決を行います。  農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律案原案通り賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立
  4. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 全会一致でございます。従つて本案は原案通り可決することに決定いたしました。  なお本会議における委員長口頭報告内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書には多数意見書署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     赤澤 與仁  小林 孝平     片柳 眞吉  門田 定藏     溝ロ 三郡  三橋八次郎     山崎  恒  松浦 定義     白波瀬米吉  岡村文四郎     加賀  操  江田 三郎     飯島連次郎  宮本 邦彦
  6. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 署名漏れはございませんか……署名漏れはないと認めます。   —————————————
  7. 羽生三七

    委員長羽生三七君) なお先般当委員会から政府に申入れました農耕地土壤生産力増進対策並びに主要農作物種苗改良対策確立に関する申入に対して、お手許にお配りしたような文書を以て農林大臣から回答がありましたので、御了承をお願いいたします。   —————————————
  8. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは引続きまして、繭糸価格安定法案議題といたしまして、取りあえず政府から、先日の提案理由説明に引続いてその詳細について更に説明を求めたいと思います。
  9. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先日政務次官から繭糸価格安定法案提案理由を申上げましたが、今日は私からなお補足いたしまして逐條的に御説明いたしたいと存じます。  第一條は、この法律目的でありまするが、これは提案理由で申上げましたことで盡きておると思いますから、省略さして頂きます。それから第二條は、生糸売渡及び買入規定であります。政府は繭及び生糸価格の異常な変動を防止するために、申込に応じまして、最高価格で保有する生糸売渡し、予算範囲内で最低価格生糸買入れることにいたしております。即ち、生糸売買操作によりまして繭及び生糸価格の安定を図つて参るつもりであります。戰前におきましても、繭糸価格の安定につきましては、数回に亘り長い間業界で多大の努力が拂われて参りましたことは、御承知通りであります。帝国蚕糸株式会社、或いは又帝蚕倉庫などによりまする生糸買入並びに共同保管、銀行の生糸担保融資に対しまする政府の補償、養蚕業者の行いまする乾繭保管、又は委託製糸に対しまする低利資金融通等いろいろの方法が相次いで行われて来たのでありまするが、最後に結実いたしましたのが、生糸売買による繭糸価格の安定を企図いたしました昭和十二年の糸価安定施設法でありました。数年来我々は繭及び生糸価格の安定につきましては、業界人たちとも数回に亘り協議いたしまして、いろいろと考えて参つたのでありまするが、少額の経費でその目的を達成するためには、結局生糸売買による方法が現状におきまして最善であるという結論に達したわけであります。ここに申しまする最高価格最低価格は、いわゆる公定価格とは意味が異なりまして、政府がただ生糸売買する場合の価格でありまして、昔の糸価安定施設法で売渡価格及び買入価格言つてつたものと同様なものでございます。そうして政府はこの最高最低価格の幅の中で生糸価格を安定させようと企図しておるのであります。保有する生糸売渡しという工合に書いてありまするが、これは当然のことを規定しておるのでありまして、買入申込がありまして、そのとき政府生糸を持つていないときには売渡せないということであります。なお、本法政府生糸を保有するに至りまする場合は、最低価格生糸買入れる場合のみであります。最低価格生糸買入れる限度は、予算範囲内であります。今度の補正予算で御審議願つておりまするが、一般会計から三十億円が基金としてこの糸価安定特別会計に繰入れられ、この三十億円を限度といたしまして買入ができるようになつております。この三十億円で果して十分かどうかというような問題について少しく申上げて見ますと、お手許にお配りしてありまする資料を御覽願いますとおわかりになつて頂けると思いまするが、戰前におきましてどの程度生糸を棚上げしましたら糸価が安定したかと言いまするというと、最高昭和十五年から昭和十六年の場合で年間生産量の二カ月分買上げたのでございます。最少は大正十五年から昭和二年の場合で、年間生産量の〇・三カ月分を買上げたのであります。買入数量の多いほうから便宜三回のこの安定施設をとつて参りますというと、平均をして見ますると一・七カ月分くらい買上げまして、一応目的を達したのでございます。三十億円で何俵の生糸が買えるかは一俵当りの單価によつて勿論異なつて参りまするが、戰前と比べて参りますというと、現在は生糸需給の規模がずつと縮小して参つておりまするし、又需要に対しまして幾分供給不足勝ち状態にありまするので、従前に比較いたしますれば少い数量買上げによつて十分価格維持はできるものと考えております。従いまして現在のところ三十億円の資金が用意されまするならば十分目的は達し得るものと存じておるのでございます。なお生糸売渡買入生糸の二大市場でありまする横浜及び神戸で行うことといたしたいと思つております。  それから次に第三條は最高価格及び最低価格のきめ方の規定でございます。政令で定める種類纎度及び品位生糸、これは大体白二十一中A格とする予定でございまするが、この生糸標準生糸といたしたいと思つております。この標準生糸最高価格及び最低価格政令の定めるところによりまして「生糸価格、繭の生産費生糸製造及び販売に要する費用、主要纎維価格並びに物価その他の経済事情を参しやくして農林大臣が定める。」と書いてございまするが、その場合はあとでも御説明いたしまするが、繭糸価格安定審議会に諮問いたしまして、そこでの公正な御意見を十分尊重いたしまして定めることといたしたいと思つております。標準生糸以外の生糸最高価格及び最低価格は、以上のようにしてきまつた標準生糸最高価格又は最低価格に、政令の定むるところによりまして算出される額、即ちこれは買入又は売渡申込当時における実際の取引格差をとることにいたしたいと思つておりまするが、この額を加減した額といたします。従いまして標準生糸以外の生糸最高価格及び最低価格は、売渡又は買入の日に自動的にきまつて来るわけでございます。前以て標準生糸の場合のように何円ときめ得ないのは、格差というものは当座の需給事情によつて相当な変動があるからでございます。標準生糸最高価格及び最低価格をきめるに当りましては、先ほど申上げました通りいろいろの要素を斟酌して参るのでございまするが、これはどういう意味のものであるかということを一応御説明を申上げて見たいと思います。  本法目的は第一條にも書いてありまするように、生糸輸出増進国内における蚕糸業経営の安定とにありまするので、安定しようとする生糸価格最高限度及び最低限度、即ち最高価格及び最低価格はこの目的に副うようなものでなければならないと考えております。生糸価格は御承知のように物価変動影響を大きく受けますると共に、他の纎維価格変動とも密接な関連がありまするが、これは單に日本国内物価及び纎維価格について言えるばかりでなく、生糸の主要なる需要国でありまするアメリカのそれらの経済事情とも全く同様な関係がございます。従いまして最高価格をきめるに当りましては輸出増進ということ、即ち生糸需要者の立場を十分考慮いたしまして單なる生糸時価によらないで、日本及びアメリカにおきまする物価並びに纎維価格と均衡を得ておる生糸価格を最近の統計資料に基まする一定の算式によつて求めます。そしてこれを基準にいたしまして、その上に物価及び生糸の標準的な変動率参考として、一定割合をとり、その位置を最高価格といたしたいと思つております。次に最低価格につきましては、蚕糸業経営の安定を図るというこの法律目的からしまして、先ず前に申上げました方法できまります最高価格基準として、物価及び糸価の標準的な変動率参考として、その下値一定割合限度として経済事情を参酌して定めまするが、この場合繭の生産費生糸製造販売費をも併せ考慮いたしまして、少くともその合計額生糸のコストの一定割合を下らないように定めて参りたいと考えております。なお只今一定割合とだけ申上げましたが、これらは先ほども申上げました生糸輸出増進及び蚕糸業経営の安定という本法目的に副うように愼重決定して参らなければならないと存じまするので、各方面の権威あるかたがたから十分御意見を伺いまして最終的な決定をいたして参りたいと考えておる次第でございます。  第四條は標準生糸最高価格及び最低価格決定の時期及びその適用期間規定でございます。適用期間から申上げますると、これは毎年六月一日から翌年の五月三十一日の一カ年間といたしておりまするが、これは一生糸年度中は経済事情に著しい変動のない限り、同一の最高価格及び最低価格適用して行くということでございます。次に決定の時期でございまするが、これは毎年三月としておりまするが、これは二つの要件からきまつたのでありまして、一つ養蚕生産計画を立てる点から言いますれば、できるだけ早いほうがよいと思うのでございます。又次にはこの価格は一年間原則として据置かれますので、適用を始める六月一日に最も近い時期までの経済的な諸要素を取入れることが望ましいのでありますが、これらは業者の兼合いで一応繭の掃立て等を目標といたしまして、三月といたしたのであります。この三月という時期につきましては、そのときの経済事情変動している場合等には四月又は五月まで延期できることといたしております。それから五條標準生糸最高価格及び最低価格改訂規定でございます。経済事情に著しい変動があつたとき、又は生ずる虞れがありまする場合には改訂ができるということといたしております。これは例えば物価が著しく変動しました場合とか、或いは為替レートに変更があつた場合等を想定しているのでございます。次に第六條は標準生糸最高価格及び最低価格決定又は改訂いたしましたときの告示の規定でございます。これは一般に周知してもらうために必要であるからでございます。  第七條は政府買入れます生糸種類纎度及び品位についての規定でございます。種類というのは白とか黄色の糸とかということでございますし、纎度というのは十四中とか二十一中ということでございます。又品位というのはA格とかB格とかいうことでございます。これは蚕糸業法第十六條第一項に規定しておりまする検査即ち輸出生糸検査規則によりまして、検査を受けたもので、省令で定めるものといたしておりまするが、現在のところでも大体十四中、二十一中を通じまして、十程度のものを考えて参りたいと存じております。これは生糸市場において最も多く取引されており、又糸価の安定を図る上に最も適格なものを買うという趣旨でございます。第八條は政府に対する生糸買入又は売渡申込に対しまして応じないことができる場合の規定であります。第一は申込数量省令で定めておりまする荷ロを單位としていないときでありまするが、これはいわゆる半端荷口買入れたり売渡したりすることは、政府があとでこの生糸を処理する場合に非常に困るからでございます。買入の場合は荷單価は五俵程度以上といたしたいと考えておるのでございます。これは大体一般商習慣に基いておるのでございます。第二は売渡申込のあつた生糸輸出生糸検査を受けてから六カ月以上たつたものであるときて、これは長期に亘つて保管しなければならない場合がありまするので、できるだけ新らしいものを買おうという趣旨であり、これ又一般商習慣におきましても同様な條件が附されておりまするのでそれに従つた次第でございます。第三は買入申込が買占等不当な利得を得ることを目的としておる場合であります。これは本法における政府売渡目的に副わないからでございます。それから次に第九條でございまするが、第九條は輸出確保のための條件附売渡規定でございます。蚕糸業輸出産業であり、蚕糸業の振興は生糸輸出の消長と密接な関係があることは御承知通りでありまするが、政府がその保有する生糸売渡す場合に輸出向を優先的に取扱うことは斯業の発展のためによい影響を與えるものと考えておる次第であります。ここに言つております條件というのは、この場合の生糸は必ず輸出しなければならないとか、或いは輸出しなかつた場合にはどうするとかいうことなどでございます。  それから第十條は繭価維持のための特別措置規定であります。私どもは通常は生糸買入れることによりまして生糸価格のみならず繭価をも維持し得るものと考えておるのでございます。生糸買入れるということは、繭並びに生糸価格の安定のための單なる一つの手段に過ぎないのでありまして、決して製糸家に厚く、養蚕家には薄いというような趣旨のものではないことを御了承願いたいと存じます。殊に現在は製糸設備に比べまして繭は不足状態にありまするので、最低価格による生糸買入のときが繭の出廻り時期と合致いたしました場合にも繭が買いたたかれ、その価格が不当に釣下げられることは普通は考えられないと思つておるのでございまするが、万一生糸買入によりましてもなお繭の異常な低落を防止できない場合には特別な措置を講ずることといたしております。必要な措置具体策につきましてはそのときの事情によつて異なると思いまするからそのときの事情に最もふさわしい方法によつて繭価維持を図つて参る考えでございます。第十一條政府保有生糸の貯蔵などについての規定であります。この中で「整理のために売り渡し、」というのは政府の保有する生糸相当量に上りましたとき既存市場において生糸価格に新たに惡影響を與えないように売渡す場合であります。戰前糸価安定施設時代にはインド、ブラジル等に新販路を求めまして売却したことがございます。  第十二條生糸取引届出についての規定であります。これは公正な生糸市場価格を把握するために必要な制度でありまして、これによつて調査されました価格を利用して標準生糸最高価格最低価格を毎年きめるときの基準となります生糸価格標準生糸以外の生糸最高価格最低価格をきめるときの基準となる格差整理売却又は新規用途販路等への売却のときの時価というようなものが決定されることになるのでございます。これは政府本法適用して参りまする場合に、現在拠りまする正確な信用される価格調査がありませんので、新たに実施して参りたいと考えておるのでございます。又関係業者にとりましても、日々この制度によりまして価格が発表されることは大いに便利があろうかと考えております。横浜神戸及び大阪において受渡しされます生糸に限りましたりは、大部分生糸がこれらの地域で取引されまするので、これらについてのみ調査をいたしますれば十分であるからであります。第十三條は繭及び生糸に関する調査についての規定であります。本法運用のために必要な調査をして参るという趣旨でございます。第十四條及び第十五條繭糸価格安定審議会についての規定であります。本法運用にはいろいろむずかしい問題がありまするので、繭糸価格安定の重要事項につきましては、政府の独断に陷らないように各界の御意見をお聞きした上で愼重決定して参りたいというのがこの審議会設置理由でございます。従いまして委員の構成につきましては、公正な御意見を伺いまするように意を用いて参りたいと思います。なお審議会諮問機関ではありまするが、その御意見につきましては十分尊重して参りたいと考えております。  それから十六條及び十八條は罰則についての規定であります。第十二條、即ち生糸取引届出條文でございます。それから十三條、これは繭及び生糸に関する調査規定でございます。これらの條項の違反の場合に罰則適用するという趣旨であります。次に附則の中で、第二條規定を除く本法施行の期日を公布の日から十五日経過した日からとしてありまするのは、いろいろと事務上の準備からの必要でございます。第二條規定本法公布後六十日までに施行することといたしております。これは標準生糸最高価格及び最低価格がきまらないうちはこの法律が働き得ない規定であります。最高価格最低価格決定のためには審議会の開催、資料準備等に若干時日を要するからでございます。なお特に本法施行の日から昭和二十六生糸年度末までの標準生糸最高価格及び最低価格決定の日を第二條施行の日、即ち遅くとも本法公布になつてから六十日後といたしておりまするのは、第四條で毎年三月にきめることとしておりますることの例外規定で、これは本法昭和二十六生糸年度の途中で施行されることとなるためでございます。  以上で本法律案の各條につきましての御説明を終りまするが、おわかりにくい点又不十分な点もあろうかと思いまするので、これらにつきましては後ほど御質問を頂いた上でお答え申上げたいと存じます。
  10. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは御質問を願います。
  11. 小林孝平

    小林孝平君 この法案の第一條に「生糸輸出増進及び蚕糸業経営の安定を図るため」、こういうふうにあるのでありまするけれども、この内容を見ますると、繭価の安定を図るという措置が殆んどないのでありまして、十條にそういう項目がありまするけれども、その実質的な内容は非常に微弱である。こういうように思うのでありまして、私はこの法案繭糸価格安定法、こういうふうになつておりまするけれども、その実体は要するに糸価の安定を図るということが大部分になつておる。こういうふうに考えておるのでありまして、この第一條目的を達するためならばもつと蚕糸業養蚕製糸の両方面に亘りまして、その技術を改善し、経営合理化図つて生産を高めて、蚕糸業経営の安定を図るというような措置を図らなければならないと思いまして、この内容が第一條目的に余り合致しておらない、こういうふうに全般的には考えておるものであります。そこでこの点については、更に後刻いろいろ御指摘いたしまして、お答えを願うことといたしたいと思うのでありまするけれども、この際に基本的な三、四の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。第一の目的にも書いてあるように、生糸輸出増進というのがこの法律の主なる狙いであろうと思うのでありまするが、一体この法律施行することによつて、今後どれだけ輸出増進が図り得るのであるか、その見通しをお尋ねいたしたいのであります。私は生糸が、最近ストツキングの、靴下の用途から殆んどアメリカにおいては引離れてしまつて、この大衆的消費から離れたということによつて、今後の輸出見通しというものは、そうここにこの法律施行によつて生糸輸出増進ということを積極的に、非常に過大に望むことができないのではないかと思うので、特にこの点をお尋ねいたします。
  12. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) この法案によりまして、生糸輸出増進ができるか、それならどれぐらいできる見通しかというような御質問のようでございますが、従来海外需要者側で一番生糸に対する経済的な欠点といたしましては、とにかく価格暴騰暴落をするという面が、非常に生糸需要の促進の大きな原因になつておるのでございます。従いまして、この法案一つ目的でありまする輸出増進につきましては、この価格の安定をいたしますれば、相当私は輸出が伸びるのではないか、こう思つております。従いまして我々は本委員会の御要請に基きまして、実は蚕糸業の五カ年計画というものを先回立てましたのでございまするが、今年を基準にいたしまして、五年後の昭和三十年には大体十五万俵ぐらい出せるのではないか、こう考えておるのでございます。現在、そんならどのぐらい出ておるかと申しますと、お手許に配つております蚕糸統計月報を御覽になるとわかるのでございまするが、昨年は大体九万俵程度まで出ております。海外需要は漸次好転して参つておるのでございまして、この程度くらいのものは出るのではないかと思つております。併しこの数量は單に我々だけの想定ではございませんので、海外業者も、価格さえ安定いたしますればこの程度のものは出るのじやないかというような保証さえも、海外から来ておる人たちの話を聞きますと、伺う次第でございます。
  13. 小林孝平

    小林孝平君 今の御説明では、要するに価格の安定を図れば輸出見通しは非常に有望である、こういうふうにお答えになり、更にこの法律目的が、価格の安定を図るということに重点があるのでありまするが、その点に関連しまして第三條では価格決定方法規定されておりまするけれども、その詳細は政令で以て定める。こういうふうになつておりまするけれども、私はこの法律が今後うまく運用されるかどうか、又この法律によつてこの第一條目的が達成できるかどうかということは、一にかかつて価格決定の如何にあると思うのでありますから、先ほどの御説明では非常に空漠としておりまして、具体的にどういうふうに価格決定されるかということがわからんのでありますので、できればこの政令規定される価格決定方法はどういうものであるかということをお尋ねいたしたいと思います。
  14. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) この最高価格最低価格をどうきめられるかということは、蚕糸業の将来に非常に大きな影響がありまするので、政府といたしましては一応の案は準備しておりまするが、最終的には関係業界その他経営者のかたがたの意見を十分お伺いいたしました上できめたいと考えております。現在考えておりまする価格のきめ方の大体の構想をお話申しますと、標準生糸最高価格最低価格をきめるに当りましては、二つの要素が考えられるのでございます。一つ物価参酌値でありまして、他は繭の生産費及び生糸製造販売費、つまり生糸のコストの問題でございます。それで先ほどもお話しましたように、最高価格生糸価格物価参酌値を基準といたしまして、その上値の一定割合を標準として当時の経済事情を斟酌して定めます。又、最低価格は、第一次的には、この最高を、きめられました最高価格基準として物価並びに生糸の標準変動率というようなものに基きまして、その下値の一定割合基準として経済事情を斟酌してきめるのでございますが、この場合繭の生産費生糸製造販売費を併せて考慮しまして、少くともこの生糸のコスト、つまりこの二つの合計額一定割合を下らないようにいたしたいと思つております。それで問題は物価参酌値ということでございまするが、実は米穀統制法なり或いは又糸価安定施設法の当時、この基準になります物価参酌値はどういう観念で定めたかと、こう申しますというと、いわゆる率勢糸価とか率勢米価とか申しまするように、過去の長い期間のその商品の変動状況から将来を予測するという形で参つたわけでございます。従いまして、その材料にいたしまする過去の長い経済変動が将来とも繋がるならばこれは問題ないのでございまするが、現在のように経済変動の激しい場合には、こういう方法は、いわゆる率勢糸価式な考え方では、なかなか困難ではないかと思いまして、私たちといたしましては別な方法をとろうかと、こう考えております。それは現在の生糸価格変動と最も平仄を合せるような、申しますれば相関関係の深い経済的指標はどんなものがあるかという点をいろいろ検討して参つたわけであります。それを考えて見まするというと、一番関連性の深いものは、何と言つて日本国内物価並びに主要纎維価格変動率生糸価格変動というものが、相当密接な相関関係にあるわけでございます。又海外の面を見まするというと、先ほども御説明いたしましたように、アメリカ纎維価格指数の変動とかなり似た面があるわけでございます。従つてそういう最も生糸の経済変動変動期に近い指標から相関関係の面を考え出しまして、それで最も均衡のとれた生糸価格を編み出したい、こう考えておるわけでございます。従いまして考えておりますることは、成るべく現在の価格決定の時期に近い数年のこの相関関係を調べまして、そうして生糸のほかのこれらのものとの間に均衡のとれた生糸価格を一応出しまして、それを物価参酌値といたしまして、それから経済事情を考えて上値をきめ、又下値をきめて参りたい、こう考えておる次第でございます。それで現在業界で問題になつておりまするのは、上値と下値の間の、つまり値幅の問題でございまするが、これは我々といたしましては、現在市場で言われておりまするが、アメリカ方面及びヨーロツパ方面の本当の生糸のいわゆる海外の一種の輸出の大手筋と輸入の大手筋と申しまするか、それはこの全体の幅は大体二割くらいの程度にして行く。中心値から上一割、下一割、平均二割くらいにしてくれという要望もございます。又国内におきましては生産者方面、つまり製糸家及び養蚕家は一割なり一割五分というような程度のことを申しております。又上下、つまり中心値を押えまして上下一割乃至一割五分と申しております。又国内の流通機構を担当しておる人たちの部面から見まするというと、上下二割幅程度くらいにはしてもらいたい、こういうようなことを申しております。まあこれらの事情を十分斟酌いたしましてきめて参りたい、こういう工合に価格の面は考えております。
  15. 小林孝平

    小林孝平君 この三條の「政令で定めるところにより、」こういうふうになつておりますが、この政令でお定めになる際に、この生糸価格はそのうち価格決定の際に何%参酌する、繭の生産費は何%参酌するか、或いは主要纎維価格は何%参酌するか、こういうようなことを規定されるものでありますかどうか。それに関連いたしましてこの問題が一番基本的な問題でありまして、これによつてこの法律がどういう本当に繭価の安定に役立つかどうか、或いは養蚕家に余り犠牲をかけないでうまく行くようになるかどうかというように非常に重要な関係がありますので、できればこの政令内容を発表して頂くわけに参らんかと思います。
  16. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) これは先ほどもお話申上げましたように、非常に重要な事項でございまして、我々としましても今ほどお話申上げましたように、一応の構想はできておるのでございまするが、十分業界、利害関係者その他の権威者の意向も十分考えましてきめて参りたい、こう考えておるのでございます。お話のようにこの一定割合というものは政令できめられることになるわけでございまするが、そういうふうに現在のところ考えておる次第でございます。
  17. 小林孝平

    小林孝平君 その内容が、試案がございまするならば業界その他権威者の意見を聞かれると同時に、国会の意見もお聞きになることが適当であろうと思うので、是非この法案の審議の途中において御発表頂くようにお願いいたす次第であります。
  18. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 御趣旨に副うようにいたしたいと思つております。
  19. 小林孝平

    小林孝平君 それから第十條の規定に関連いたしましてお尋ねいたしたいのは、先ほども御説明にもあり、又この法律の名前が繭糸価安定となつておりますけれども、具体的の問題はこの十條に関連をいたすのでありますけれども、この繭価維持のための必要があればこの十條の規定を発動しておやりになることになつておりますけれども、先ほどの御説明では必要な措置というのが非常にあいまいでございますが、具体的にどういうことをおやりになるのかお尋ねいたします。
  20. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先ほども私の逐條説明の中に申上げておりますように、私たちは現在の繭並びに生糸の実需の状態におきましては生糸売買操作をやりますれば生糸価格の安定だけではなしに繭の価格も完全に安定できはせんか、こう考えている次第でございます。而もここに書いてあります繭価維持特別措置でございますけれども、勿論この法律は恒久法でございまして、現在の状態がよしんばそういう形であつて、将来必ずしもその考えている通りにならない場合もなきにしもあらずでございますので、我々といたしましてはここに考えております最低価格といるのはいわゆる暴落の時期でございまして常時あるわけでもございません。言い換えますれば非常事態と申しますか、そういう事態でございますので、そういう事態に対処いたしますためにこの規定を設けたわけでございまして、従来そんならどういう方法が行われておつたかということを考えて見ますというと、養蚕者に対しまする乾繭保管に対して政府は融資をやりまするとか、或いは又養蚕家委託製糸をやりますために政府が低利資金の融通の措置をやりまするとか、或いは又従来はやりませんが、繭の買入というようなこと、いろいろのことがまあ考えられようと思うのでございます。併しその最低価格を割ります場合におきます事情の、原因の如何によりましてとるべき措置もおのずからきまつて来るのではないかと我々は考えているのでございまして、そのときそのときの事情に即応した適当な措置を講じて参るというのがここの規定でございます。
  21. 小林孝平

    小林孝平君 局長の御説明では非常にいろいろの措置ところおつしやいますけれども、もう少し具体的に、こういうときはこうするという具体的の内容がなければこういうような第十條一條を設けてあるという趣旨に合致しないと思うのでありまして、今申上げたような、局長がおつしやつたような事柄でもこれらの或るものは相当多額の予算措置を必要とする、こういうふうなことにもなるのでありますので、單に漠然とこういう十條で以ていろいろなことをやらしたというのでは甚だ不十分だと思うのであります。要するに先ほども申上げたように、この十條を附加えて更に法律の名前が糸の上に繭という字をくつつけて養蚕家のほうにも少し顔を立てたという程度の感じをこれは誰にも與えるだろうと思うので、なお一つ本当に養蚕家のことも考えておられるなら具体的な必要な措置というのはどういうことをやるか、その際は予算的に必要があれば予算も計上するというような具体的な御説明がなければちよつと納得しかねると、こういうふうに思うのであります。又今の御説明のようにこういうような現在の、この提案理由にもありまするけれども、現在のような繭の需給事情の下においては、この三十億でいいと、こういうようなことが書いてあるのでありまするけれども、これに関連いたしまして先ほどのお話でも、現在の製糸施設では繭が不足だと、そういうふうな御説明でありますので、そうしますとこの価格決定の際も、こういうような状態であるのに、こういうような一定価格を設けるということは繭価を徒らに圧迫するようになるのではないか、これがあるために却つて繭の値段というものが抑えられて、養蚕家は非常に不利になるのではないかと、こういうふうに思うのでありまするけれども、その点は如何ですか。
  22. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) この価格の安定の方法は、終戰後とられました物価統制などにとられました一本値で安定するという形ではございませんので、いわゆる最低値の範囲で安定しようという考え方を持つておるのでございまするので、むしろその繭の値段或いは生糸の値段というものは、いずれかと申しますと、需給関係によつて主として左右されまするので、たとえこういう価格が一応公示されましても、最高値段にくつつくとか、或いは又最低値段にくつつくというようなことはなかろうと思うのでございます。
  23. 羽生三七

    委員長羽生三七君) ちよつと今の小林さんの御質問に関連して私からもお尋ねしておきたいのですが、この今の第十條の必要な処置を行う場合というときに、その繭の価格の異常な低落の原因となつた問題を考慮して、その都度必要な処置というお考えでありますので、その場合に例えばという、例えばこういう場合にはこうという何か一つ二つの事例として具体的な問題をお取上げ願うようなことはできませんか。
  24. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 実はその事例として現実にどういうのが一番簡單にやりやすいかというようなことになろうかと思いますが、これは先ほどもお話しましたように、過去におきましてこういう事態に対処して政府がやりましたことといたしまして、養蚕業者が繭が自分の売る値頃でないという意味合いから、繭を手離すことがいやだというために、実は乾繭保管をやつたのでございます。それに対して政府は低利資金を供給したという例がございます。又現実に現在乾繭倉庫が、養蚕家自体の持つております乾繭倉庫は全国に約百カ所近くもございまするので、こういう方法が一番現状に即したやりやすい方法ではないか、こう考えておるのであります。
  25. 小林孝平

    小林孝平君 今のそういうことをやるにしましても、いろいろの金融の面とか、或いは施設を拡充するというような点で予算措置が必要なのでありますけれども、局長はそういうふうな意思があるといたしましても、この法律だけでは実際それがやろうと思つてもできないということになるのでありますので、この点はどういうふうにお考えになつておるか。従つて私はこういう十條の規定を設けられるならば、こういうことを予想されるに必要な予算措置を同時に考えなければならんのではないか、こういうふうに考えておるのであります。これだけでは本当にちよつと体裁につけただけに過ぎないという感じを受けるのであります。
  26. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先ほどもお答えいたしましたように、我々といたしましては生糸売買操作によつて十分繭の値段も安定ができるのではないかと、現在のところ想定しておりまするので、こういう工合に書いたのでございまするが、若しこういう事態になつたというようなことになりますれば、現在の今議会に提案されておりまする例の糸価安定特別会計法、この中には、生糸買入売渡に伴う予算だけしか現在考えられておりません。おりませんが、甚だくどいようではございますが、我々はそれによつて価格をも現在の事実では安定できるという工合に考えておる次第でございます。若しそれが情勢の変化に基きまして将来でき得ないというような事態になりますれば、政府はその事情に対処して更に研究を進めて参りたいと、こう思つております。
  27. 小林孝平

    小林孝平君 この第十條の規定につきましてはいろいろ問題がありまして、只今の御答弁では不満でありまするけれども、又時を改めてやることにいたしまして、先ほどちよつとお聞きするのを忘れましたが、この糸価の安定で輸出増進はできると、これに関連いたしまして、ただ安定すれば何でもどんどん余計できる、輸出できるものとは考えられないので、大体どのくらいの程度に安定すれば、先ほど御説明なつた十五万俵というものが出るのであるかという点をお尋ねいたしたいと思います。
  28. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 海外からのいろいろの情報を総合して参りますというと、勿論小林さんのお話のように買手側といたしましては価格安定をすること、その値頃が自分たちの経済にマツチするということ、この両方がやはり要望されると思うのでございます。併し或る一部の見解では、この両方を望んでもなかなか困難であるとするならば、とにかく価格の安定だけでも先ずやつてもらいたいというのが海外業者の一致している意見のようでございます。従いまして今度の糸価安定法案が世界の生糸の供給の大部分を占めております日本で、公開の討議がされるという点が海外に伝わりますにつれまして、海外からの要望といたしましては、いろいろ意見が出ております。意見が出ておりまするが、その面につきましては先ほども申しましたように、両方を望むことが、これは一番よいことではあるが、価格の安定ということと値幅ということと比較すれば値幅が一番大事であるという情報が伝わつて来ております。
  29. 小林孝平

    小林孝平君 もう一つ、最後はこの審議会の点でございまするけれども、これは先ほど数回申上げておるように、この価格をどういうようにきめるかということは、一番基本的な問題になりますので、私はこの審議会の重要性というのは他の審議会と非常に異なつておると、こういうふうに考えておるのであります。それでこの審議会価格決定に関連いたしまして、どういう人々を大体この審議会委員にするのかという政府の大体の構想を今日でなくてもいいから一つ示して頂きたいと、こういうふうに考えております。それに関連いたしまして、私はこの価格決定のやり方に、こういう審議会で案を作つたものを私は国会にかけて、最終的には国会においてこの決定をする。これは丁度この三月価格決定することになつておりますが、三月は国会の開催中でありますので、国会において最終的価格決定するというようにすべきであろうと思うのでありまするけれども、これに対して御意見を承わつておきたいと思います。
  30. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 初めに審議会の構成でございまするが、これは先ほどにもお話いたしましたように、こういう重要な事項につきまして公正な意見が吐露さるるような機構を考えておるわけでございまして、一応條文には関係行政庁の職員並びに学識経験者と、こう書いておりまするが、我々の考えておりますることは、この学識経験者の内容でございまするが、これは利害関係者を中心にいたしまして、更に中正な考えを持たれまする学者なども中に入れまして、そうして構成をして参りたいと考えておるのでございます。而も、一面又この利害関係者の業界の中で国会議員にも関係しておいでになるかたもございますので、成るべくそういう人たちも入つて頂きまして、公正な意見を出すことができるようにして参りたい、こう考えております。そうして一面今の国会で価格をきめたらどうかというような御質問でございまするが、これはやはりその価格決定方法、これは国会できめて頂きまして、この部面は審議会の運営の部面でございまするので、これはやはり政府並びに政府の独断に陷らないように、この審議会を利用してそうして運営が円滑に行くようにして行つたほうがいいのじやないかという考え方から、こういう工合に考えた次第でございます。
  31. 小林孝平

    小林孝平君 ちよつともう一つ、まあ国会で決定方法をおきめになつてと、こうおつしやいましたけれども、先ほど申上げておるように、三條のこの規定では非常に漠然としたもので少しも決定方法法律できめてないのでありますから、私はこの審議会委員に国会議員を入れるというようなことではなく、審議会審議会として研究をし、その最終的決定は国会においてやると、こういうやり方にすべきであろうと思つておるのであります。まあそれはそれといたしまして、今のこの審議会の問題に関連いたしまして、この審議会令というようなものが出るのでありますから、その内容を要綱でもいいのでありますからそれを一つ御発表願いたいと思います。
  32. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) いずれ御要望に副いましてお届けいたします。
  33. 山崎恒

    山崎恒君 第一條の「繭及び生糸価格の異常な変動を防止することを目的とする。」というようなことが書いてあるのですが、政府は第二條のこの「最高価格でその保有する生糸を売り渡し、」或いは「最低価格生糸を買い入れる。」この操作のみによつて一條の繭及び生糸価格の異常な変動を防止することができるという確信があるかどうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  34. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 逐條説明の際にもお話申上げましたのですが、お手許に配つてあります繭糸価格安定法案資料第三編価格調節に関する立法例というのでございますが、これの十三頁を御覽になると大体おわかりになりますが、この下から二行目を御覽になりますと、これで大体そのときの生糸の総生産数量に対しまして買上げの上、棚上げいたしました数量のこの比率を出しておるのでございます。大体少いところは〇・三カ月分ぐらい買いまして一応その目的を達しておるわけでありまするし、多いときは二カ月を大体買つてその目的を達しておるのでございます。この時分は御承知のように、生糸需給の状況を見まするというと、日本の繭の生産額並びに、従つて生糸の生産額は最高に達しておる時期でございまして、その時代におきましての生糸の競争纎維であります人絹が破竹の勢いで伸びて参つたのであります。人絹との非常に抗争が甚だしき時分でございまして、併しそれに即応して生産製品も困難であり、桑は永年作物であるが故に、その需要にマツチした供給力を添えるということがなかなか困難であるという時期で、なお且つこの程度で大体系価の安定ができ、従つて繭の価格の安定ができたわけでございます。従いまして、我々といたしましては、現在の情勢で見まするというと、これは今の需給の情勢でございますが、蚕糸統計月報、これを御覽になりますと、現在の需給の情勢がよくおわかりになると思うのでございます。蚕糸統計月報の二頁を御覽になりますと大体おわかりになると思うのでございますが、戰後におきまして、日本の生産数量がこういうように順次増加して参つておるのでございます。併し一方、引渡高という面を御覽になりますというと、輸出及び国内の消費の需要は、こういうような変化をして参つておるのでございまして、その結果はどうなつたかと申しますと、期末在庫の合計欄を御覽になりますとよくおわかりになるのでありますが、一九四七年には十三万三千俵、約一カ年間の生産数量さえも滯貨になつておりましたのが順次その滯貨が減りまして、現在一九五〇年の十二月末には六千七百七十五俵になり、現在の九月末の数字ではそんならどうかというと四千九百俵と、五千俵足らずの需給の情勢になつておるのでございます。従いまして戰後におきまする需給の情勢はどうかと、こう申しますというと、需要と供給を大ざつぱに見ますれば、供給はなかなか需要に副わない、年々二十万俵も消費する能力があるにもかかわらず、生産が十五万俵しかないというような情勢でございまして、むしろ在庫の面から見まするというと非常に減つておる、需要が窮迫しておるというような状況になろうかと思うのでございます。従いまして生糸売買操作をやりますれば、繭の価格の安定ということは十分可能だと我々は考えておる次第でございます。
  35. 山崎恒

    山崎恒君 只今需給関係によつての御説明でありますが、成るほど予算範囲内の三十億を以てして、現在の生産状況から考えますれば、数字的にはそういう結果になると思いまするが、これはまあ生糸の安定には直接考えられんですが、然らば繭の異常な変動という面につきましては、この生糸買上げる、或いは売渡ししたのみによつて繭価、繭の価格というものが直接関連的には操作できるかどうかということが、ここがまあ疑問であつて、そこで先ほど小林さんからも最初質問されましたが、十條の問題でありますが、この十條の問題で、單に価格の必要な措置によつてできるというような説明ではありまするが、私は生糸はそれで三十億の範囲内では或いはできるかもわからないと思いまするが、繭の価格の操作というものは直ちにそれによつてできるとは考えられない。かように思うのですが、これは、先ほど或いは乾繭保管等の問題も出ましたが、然らば政府乾繭保管等に対しまして融資の方法を考えておるのかどうか、考えておればどういう特別の融資の方法を構想されておるか、そうした問題がここにやはり関連的にはつきり説明がないというと納得できないと、かように思うのですが、これはむしろ先ほども小林委員から話されました繭はつけたりであつて糸価安定法というような單行法のほうがむしろ私どもは納得行つて繭価安定法というものを別に一つつたほうがいいと、こう思うのですが、その綾を一つお聞かせ願いたいと思います。    〔委員長退席、理事片柳眞吉委員長席に着く〕
  36. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 生糸価格の安定をやりますれば我々といたしましては、現在のところ繭価の安定も可能だという面は、一応生糸を三十億円で買上げれば生糸価格は安定できるという面は、今の需給の情勢から見ればおわかりになるかと思います。それから一方そんなら生糸の価路と繭の価格の面はどうかという面のお話を申上げますというと、御承知のように現在の製糸設備を申しますというと、繭の生産量に比較いたしますれば生糸がこの通り需給の情勢が逼迫しておるにもかかわらず三割も余分に製糸設備が現在用意されておる状態でございます。従いまして繭と生糸との面の価格を考えて見ますれば、その生糸を買われまする時分の糸価から見ますれば繭が割合に割高に買われておるという点が現在世間から言われておるような状態でございます。これはやはり製糸家といたしましてのいわゆる需要と繭の数量との間に或る程度のアンバランスがあるのではないか、こう思われるのでございます。従いまして現在この法律に基いての乾繭保管に対する融通方法というようなものはまだ第十條に基いてのものは考えておりません。おりませんが、普通の事態におきまする繭の売買につきましては、我々といたしまして、養蚕家が若し乾繭保管をしたいという場合につきましての資金の融通方法は現在きめておるのでございます。その方法は農林系統の金融機関を通じまして、中金及び信連を通じて末端の養蚕農業家が乾繭保管をするという場合の資金の融通方法決定しておるのでございます。それは大体の構想といたしましては、組合製糸を行う場合におきまする率と大体同じ率で乾繭をおやりになる場合に、その農協に対して乾繭保管の融資の方法は講じておるはずでございます。然るにもかかわらず、なかなか現在乾繭倉庫というものは相当多いにもかかわらず御利用になつていないというのは、やはり今申しました生糸需給関係並びにそれに伴いまする繭の需給関係、これらのものが乾繭倉庫があつて、而もそれに対しての資金の融通の手段を我々は講じておるにもかかわらず利用されない大きな原因ではないか、こう思います。
  37. 山崎恒

    山崎恒君 この問題は十條にかかつて来るのですが、そういうことになりますというと、只今この十條の直接繭の操作に対する点は考えていないという御答弁ですが、これは乾繭倉庫の利用というものは、政府自体が生糸の操作というものはもう三十億の以内においてできるのですから、直接関連して局長の御説明では、生糸買入、又は売渡をすれば操作をする繭が必ず上るという確信を持たれておるのですが、そこで次の例を見るというと、従来とられております糸価安定法というようなものがあつたのでありますが、養蚕農家というものはいつもしてやられておるというのが従来の例であります。これはもう製糸業者のほうがいつもうまく乘切つておるというような状況でありますので、そこで十條に対するところの裏付の方法をみつちり考えないというと、これは養蚕農家というものは、單にこの法律は繭というものはつけたりに過ぎないということになつてしまうので、そこでそれに対する政令等によつて乾繭倉庫を必ず利用をして、そうして政府糸価安定法とタイ・アツプして繭の価格の操作もするのだと、而も特別融資というものを、これだけするというようなはつきりしたものがなければこれはならんと思う。そのお考えを一つもう少しお聞きしたいと思います。
  38. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先ほどもお話いたしましたように、現在のところそういう事態は起きないものとこう考えまして、この十條に基くいわゆる措置としての考え方はまだやつておりません。併し一般養蚕家が繭の合理的な処理をやりますために乾繭で取引をしたいという面につきましては、山崎さんも御承知のように統制会社が整理されまする際に元の持主であります養蚕業者に対しまして乾繭倉庫をお渡ししておるわけでございます。而もその補修、並びに又新たに養蚕家といたしまして繭を乾繭にしたいという部分がありまする際におきましては、新設に対しましても我々といたしましてこの固定資本に要しまする資金の融通、これにつきましては最近できました農林漁業資金融通法に基きまして長期の低利の資金を御用立するというような考え方で対処して参りたい、こう思つております。これは固定資本の部分でございまするが、又流動資金につきましても先ほどお話ししましたような資金計画は十分立てまして繭の取引前に金融機関を通じまして末端の農協にその趣旨の徹底を図るようにして参りたい、こう思つております。    〔理事片柳眞吉君退席、委員長着席〕
  39. 山崎恒

    山崎恒君 だんだんわかつて来ましたが、結局問題は私は蚕糸局が糸のほうの操作はまあこれでできるんだと、ところが養蚕農家自体が糸の操作によつてのみ繭の価格の安定というものができるかどうかということがやはり不安なんです。そういうような観念からやはり蚕糸局が繭の安定のためには例えば乾繭倉庫を利用するものに対してはこれだけの資金を融通するんだと、或いは一時前渡金を出すんだというようなことを、はつきりした点をやはり発表するような措置がないというと、養蚕農家というものは私は非常に心配されるだろう、こう思うんです。十條のこの問題を裏付ける方法で確乎たるところのやはり方針を作つて頂きたい、かように思うのです。
  40. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 時間も大部経過いたしましたので私は詳しい質問は次回に讓ることにいたしますが、私は繭の生産者という立場においてこの問題について小林委員と同様蚕糸の質問を留保したいと思います。ただ私の県が屈指の繭の生産県であるということと、それから局長も御承知の先般の全国農民大会その他繭の生産をめぐる諸団体等からこの法案については繭の生産者の犠牲において製糸業の安定を図るという大体の狙いであるから断乎この案については一つ修正なり、或いは反対せよと、こういう強い刺激が頻々と来ておりますので、只今までの法案なり説明では私どもは納得できませんから、重要の問題については後の機会に質問を改めていたしたいと思いますが、以上一つ予告を申上げておきます。
  41. 宮本邦彦

    宮本邦彦君 先ほどの小林さんの質問の継続みたいんですが、一つだけここで申上げておきたいんですが、いずれあとでほかの問題もありますけれども、先ほどの小林さんの御質問のこの審議会の問題ですね、この十五條、十四條を見ますと、繭及び生糸価格の安定に関する重要事項を審議する、こうなつているんですね、繭及び生糸価格なんですな。ところが十四條のほうの審議会委員関係行政庁の職員及び蚕糸業、こうなつているんですね、それで繭の関係者というものがぼけているんじやないかというような気がするんですが、先ほどの局長の御説明にも何といいますか、蚕糸業関係のある人ということで以て利害関係のある人で御説明になつているんですが、繭の生産者の立場がちつともここに入つていないように思うのですが……これは先ほどの小林さんの質問の延長なんでございます。
  42. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 実は蚕糸業と書きまして、我々のほうの事業の関連者のいわゆる通念といたしまして養蚕生糸、勿論養蚕はもう大株主というような工合に、この字で十分現わされているわけです。蚕というのはかいこでございますから、養蚕家がこれを代表しておるというような形でお考えを願いたいと思います。
  43. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは暫く休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩    —————・—————    午後一時四十八分開会
  44. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは午前中に引続きまして委員会を再開いたします。ちよつと速記をとめて下さい。    午後一時四十九分速記中止    —————・—————    午後二時三十七分速記開始
  45. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 速記を始めて下さい。
  46. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 ちよつとその説明は理解しがたいのですが、いろいろなフアクターを総合して最低価格がきまるわけでありまするから、総合した結果、そういうことになると思いますが、これはまあなんでありますが、字句の解釈としては、やはり「繭の生産費」と、こう言い切つておる以上は、この中に一定割合というものを入れると……、少くとも旧法との対照においては、やはり生産費は一〇〇%見る、勿論ほかの農業と兼業しておりまするから、その負担割合は当然出て来ますが、ここはやはり生産費一〇〇%見ることのほうが、私は正しいと思うのですが、如何でしようか。
  47. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 法律の表現法としては前と同じようでございますが、現在考えておりますることは、この繭の生産費生糸の加工費、これを寄せましたいわゆる生糸のコストと申しまするか、これのまあ一定割合というようなものを現在考えておる次第でございます。
  48. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 ちよつとまあその点はおかしいのですが、まああとで更に或いは再質問いたすかも知れませんが、それからもう一つ、第三條で標準生糸最高価格最低価格をきめる場合に、今度の法案では、「生糸価格」という字句が……、生糸価格をきめる場合に「生糸」という、これはどういうふうに理解したらいいのでしよう。
  49. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) これは午前中にもお話いたしましたように、いわゆる物価参酌値を出しまする場合に、生糸価格とそれからほかの内外の主要纎維価格の相関関係を調べまして物価参酌値を出しております関係上、そこで生糸価格というものを入れたわけでございます。
  50. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 これは又あとで意見として申上げたいと思います。それから物価参酌値といつて、主要食糧の米等については一般物価と相当密接して考えるという思想はいいと思うのですけれども、輸出品であり、又国内的には概して奢侈品のようなこういう生糸一般物価との関係を余り強く見るということは、やや適切でないと思うのですが、それはそれといたしまして、米とか麦とかその他の農産物価格との関係を、或る程度これを一般物価参酌値に入れるよりも、そういう特に競合関係のある麦の価格等と相当見合う必要があると思いますが、これはやはり物価参酌値という大きな枠に入つてしまうのでありますか。
  51. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) ほかの農産物の間の関連は、今回のこの価格決定方法の中には考えておりません。ただまあ強いて考えますれば、この最低価格の場合に、繭の生産費及び生糸の加工費というようなもののコストを考えまする場合に現われて来るのではないかと思われます。それから大きく言いますれば、物価というようなものを考えますので、その面で入つて来るのではないか、こうも考えております。
  52. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 それからその次には、先ほど白波瀬委員から非常に適切なお話がありましたが、第二條で、最低価格政府生糸買入れるわけでありますが、併しこの法案がスタートするときには手特の生糸はないわけでありまするし、又昨今の需給関係から見て行けば、むしろ生糸価格が上るという方向のほうが強いと思うのでありますが、そうなつて来ると、先ほど白波瀬委員が言われたようにどんどん上つて、而も政府は何ら現物を持つておらないということで、経過的に見ても将来生糸政府が掴み得る、或いは最高価格と言いますか、シーリング・プライスを或る程度設定しないと何としても理窟に合わないのではないか。或いは政府が或る程度生糸を持つてつても、或いは補正的の手段としてシーリング・プライスを設定するという必要があるとも言えるのであります。少くとも政府が相当数量生糸を現実に掴むまではこれはやはり最高価格と言いますか、これをチエツクしないと輸出も振興せんし、收拾がつかないことになると思うのでありますが、それは物価統制令で三月まではできるというのですが、三月に失効することが明瞭なこの時期に、そういう規定を置かなくてよろしいのかどうか、私も頗る同様の疑問を持つわけであります。これはもう御答弁は要りません。あとで我々も考えます。そこでその次には、政府最低価格で買つて最高価格で売るわけでありまして、その値幅はまだきまつておりませんが、併し少くとも二割程度の幅はできるわけであると思います。そうすると最低で買つて最高で売るわけでありますから、その間、相当の利益が生れて来ることは予想されるわけでありまするし、勿論或る程度のコストはかかると思いますが、過去の例から推しましても、米等と違いまして相当の利益を現に上げておるわけであります。この利益金がどうなるかということについては特別会計法案規定があるわけでありまして、これは積立をする。積立をすることは非常にいいと思いますが、ところが第八條第三項で、折角できた積立金を政府が必要があると認めたときはこれを一般会計に繰入るということになつておりまして、これは隣席の岡村委員等は、供出価格政府が買つて、競争入札で高く売つた場合はこれを農家に還してくれということを政府言つておられますが、私も差益が出れば、これを一般会計に繰入れるということはどうもおかしい、少くともこれは積立金として管理しておいて、この差益を蚕糸業のためにこれを使うということのほうがいい、安い価格で買つて、儲けた分を又一般会計に返すということではならんと思いますが、その辺はどんなふうでありますか。
  53. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 実は特別会計法の規定でございますが、これは普通の書き方で、こういうような形になつておるわけであります。それで勿論利益がありますれば、先ずこの会計を充実する意味で積立に入れることは当然でございますが、なお又政府の必要がある場合は一般会計に繰入れるという形になつておりますが、我々といたしましては、片柳委員のおつしやいますように過去の例がございまするし、非常にそういう工合になるということを希望はするのでございまするが、何分にも政府全体の財政関係からきまることと思いますので、そのときになつてから善処して参りたい、こう考えております。
  54. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 それから第九條の関係で、これ又先ほど他の委員からも御発言があつた点でございますが、この法案輸出増進が大眼目になつておりますが、單に政府最高価格で売る場合に條件をつけることだけで、果して輸出増進という目的が達成されるかどうか。国内でも相当私は現在でも売れるという情勢もあるのではないかと思いますが、国内消費を或る程度調整するというようなお考えは全然ないのでありますか。
  55. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 我々といたしましては現在のところ配給までも規制しようというようなことは考えておりません。
  56. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 只今議題になつておりまする法案の名称とその目的についてお伺いいたします。名称は繭糸価格安定法案となつております。その目的は第一條で、「この法律は、生糸輸出増進及び蚕糸業経営の安定を図るために、繭及び生糸価格の異常な変動を防止することを目的とする。」ということになつておるのでございます。十月の十七日の公報で、農林省は臨時国会に提出を予想される法律案の中に糸価安定法案を予定しておるのだということを発表しておるのでございます。その要綱案によりますと、糸価安定法案目的は、本法は、生糸の異常な変動を防止することによつて生糸輸出増進蚕糸業経営安定を図り、蚕糸業の健全な発達に寄與することを目的とするということになつておるのでございます。糸価安定法案と、只今議題になつております繭糸価格安定法案とは、その目的が非常に異なつて、構想においては根本的に違つておるようでございますが、只今議題になつています法案におきましては、繭の価格の異常な変動を防止することを目的とするということを附加えてあるのでございまして、そのために、先ほど来問題になつております第十條の繭価維持のための特別措置を入れて、「繭の価格の異常な低落を防止するため必要な措置を行うものとする。」という條文も、糸価安定法案にはなかつたのを附加えてあるのでございます。半月ばかりの間にどうしてこういうふうに法案内容が、名称も変つたのか。従前に発表していたのでは、これは目的の上にも、農業のためにするというような思想は少しも入つていない。糸価安定の制度が、これは蚕糸業の振興の重要な施設であるのだということは言うまでもないのでございますが、それは生糸輸出増進のためであると同時に、農業経済の改善という、この二つの明確な目的を有するものでなくてはならないのが、どうも農林当局は養蚕業に対しては甚だ軽視しているようなふうに見えるのでございます。先ほど局長の説明では、製糸業に厚くして農家に薄いということは決してないのだというように言明されていたのでございますが、十月の中頃に発表していることから今度改変して、繭糸価格安定法案というようなものになつた。その心境の変化を一つお伺いいたしたいと思います。
  57. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 今お話になりました通り、当初はこれは糸価安定法でございました。それがこういうように変つたと、こういうような御質問でございまするが、私たちはその当時におきましても、生糸価格を安定するということは、これは繭及び生糸価格を安定する一つの手段である。生糸売買操作によつてやることは一つの手段である、こう考えておるのでありまして、飽くまでもその当時におきましても、單なる製糸経営安定だけではなしに、蚕糸業経営安定を図ることを目途にしておつたわけであります。併しその後一般民間からのお話もございましたので、我々はこういう事態は近く起きないと思いまするが、恒久法でありまするだけに、やはり何らかの繭価最低価格になりまする場合に、更に繭価が買いたたかれるという場合を防止する意味合いで、十條を加えた次第でございます。当初の案におきましても私たちといたしましては、蚕糸業経営の安定を目途にしておるのでございまして、單なる製糸だけではなしに、養蚕及び種、桑苗というような工合に、この蚕糸に関連する産業のすべての経営の安定を目途にしておつたわけでございます。
  58. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 私がお伺いいたしましたのは、突然こういう半月くらいの間に法案の名称を変えて、目的も農家のためにもやるのだというようなことは、表現はしたけれども、その内容については第十條でも従来通りの融資はやるのだ、その以外には殆んど現在は考えているような手段はないというようなことで、ほんのつけたりにやつたようになつて、甚だ農業のために、農家のためにも……、私は農家には決して薄くないということの御説明はありますけれども、糸価が安定すれば、必ず繭の値段も安定するというように局長は言つておられますが、逆に繭の値段が安定すれば、糸価もおのずから安定するということも考えられるのでございます。そうして繭の値段を安定させるということのためには、先ほど他の委員からもお話がありましたように、生産費を安くして、良質のものを豊富に低廉に生産を増加して行くという手段が最も重要な手段かと思うのでございます。蚕糸業の振興五カ年計画というものを農林省で立てておられる。そうして五カ年間に桑園を二十五万町歩に殖やす、繭の生産を三千三百万貫、生糸を三十万俵くらいにしたいのだという立派な案を持つておるのでございますが、それらについては現状では、ただ案を持つているという程度で、養蚕のほうのためにやつている施設というものは非常に少いような気がするのでございます。十七日の参議院の本会議でも、農林業振興基本政策確立に関する決議があつたのでございますが、これは一貫した長期不動の農林政策を確立するために、政府の断乎たる措置を要求したものであるのでございますが、本決議に関しましても、蚕糸業、殊に養蚕業等は、これは日本の農業経済のために非常に重要なものであると考えるのでございますが、この蚕糸業振興五カ年計画、これはこの決議にも即して、是非とも実現させる必要があると思うのでございますが、本決議に関する農林政策については、これは近いうちに政府から参議院に回答しろということになつておるのでございますが、こういう基本政策の中にこれを織込んでやつて行くという確信を持つておられるかどうか、この点をお伺いいたしたいのでございます。
  59. 羽生三七

    委員長羽生三七君) ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  60. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 速記を始めて……。
  61. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 法案の名称に関連しまして、特別会計法案は、これは糸価安定特別会計法案ということになつておるのでございます。先ほど申しましたように、糸価安定法案が急に繭糸価格安定法案ということになつたのでございますが、そんならば特別会計の、やはり繭糸価格安定の特別会計法案というようにすべきだと思うのでございます。名前はどうでもいいというようなことは、非常に私は注意しなければいかんことだ、名前はどつちでも、中身さえあればいいのだという考えで、粗雑に乱暴にこういう法案を出されることは私はどうかと思います。特に特別会計法案は、繭糸安定という字にしておかなければならん理由がどこにあるか、そういうことを一つお伺いしたいと思います。
  62. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  63. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 速記を始めて……。
  64. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 蚕糸局長は中身はちつとも変つていないのだから、名前はどうでもいいのだと言われるけれども、これは将来残る法律なんで、青柳さんは青柳さんなんで、白柳さんじやないのですから、それは大蔵省によく言うて、適当な機会に改正なさるのがいいと思います。第十一條で、政府はその保有する生糸を貯蔵し、加工し、整理のために売渡すと書いてありますが、この政府生糸買入れ、売渡したり、貯蔵したりすることについては、これは直営でおやりになるのですか。又代行というような形式でおやりになるのですか。それをお伺いしたいと思います。
  65. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) この貯蔵の問題でございますが、これは政府みずからがやつて参りたい、特別会計でみずからやつて参りたい、こう考えております。勿論この貯蔵に当りましても、現在横浜神戸に設備等の十分な倉庫がございますので、それに寄託いたしましてやつて参りたい、かように考えております。それから加工の部分でございますが、これは新規用途というようなことを大体想定して、加工というような工合に考えておるのでございますが、これはそのときの事態になりましたら、政府はやはり委託しまして、新規用途の加工をして参りたい、こう考えております。
  66. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 生糸の貯蔵は直営でやられるという御説明でございますが、売渡し、買入れ等も直営でおやりになるのでございますか。又それを若しおやりになるならば、この責任者としての官吏の数も相当に私は必要じやないかと思うのでございますが、そういうものの官吏の、公務員の定員や何かの増加措置はとつておられるのですか。
  67. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) これは今年度の補正予算には、この特別会計に基きまする増員は要求しておりませんが、来年度の予算からこれに基きまする定員は増加して行こうと考えております。それで我々はこの買入れ、売渡しをして参りますものの、午前中に御説明申上げましたように、大体横浜神戸のこの二つの市場で行いますれば、十分この目的が達せられまするので、非常に人数も少くて済むのではないか、こう考えております。而も横浜神戸には販売業者なりそういう売買関係、それに伴う保管関係、そういうようなものの整備したものもありますので、我々としましては、この会計を動かしますために現在考えております定員は、二十四、五名ぐらいを目途にして現在考えております。
  68. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 本年度内に三十億の予算で約二万俵の生糸買入れるという予定になつて、二万俵という生糸数量は相当なものだと思うのですが、こういうものを検收して、そうして引渡しを済ますのだというようなことは、二十五人の定員を増加するのは、これは本省における事務の人ぐらいのものだと思います。私の特に関心を持つておりますのは、現在の物品会計と言いますか、そういうものについては、これは会計法でもはつきりしたものが実はないので、買入、運搬、貯蔵、加工というようなものを、すべて作業労務の請負を、大体運送や倉庫業者とか、政府がやつておるのが、今まで人がないものだから、そういうものを皆代行さして契約をやつておる。併しそれが非常に不正な事項が起つたり、国費の濫費になつたりするという事情がたくさん出ておるのでございます。御承知の木炭特別会計でも、これは日通等に運搬から貯蔵、供給というようなものを一つに代行さしておる、そうして何十億という赤字が出て来た、政府には人がないから、皆そういうものに任しておる。農林大臣が直接の職権の一部をそういうものに代行させるという制度が、これが今の物品会計じや一番癌になつておる元だと思います。私は特に何十人でも、何百人でも、これが必要があるならば、定員を増加して、本当に物品を納入した場合には、農林管の管理の責任者として、どれだけの数量がきちんとこの倉庫に保管されておるのだということをはつきりするような制度を、新らしい法律が若しできるならば、立派な物品会計制度というものを立つて頂きたい。そうでないと空の検收なんということをせずに、ただ千俵入つたとか二千俵入つたとかというような書類で、金の引渡しなどができておる例が非常に多いのでございます。そういう意味で是非とも直営でやるのだ、直営に必要な定員は、これは確保してもらうのだということをはつきり一つつて頂きたいと思つているのでございます。併しそれについては現在行政整理だなんということで、現在の定員さえも減らされているのだ。二十六年度の補正では一人も増員を要求もしていないのだから、誰が一体二万俵なんという大量のものを、一つずつ検收するというようなことをどなたがおやりになるつもりでいるのでしようか。恐らく私はそういうことは実行不可能だろうと思う。皆業者の代行なんということに任してしまうのじやないかと考えるものですから、私は非常に不安に考えているのでございますが、そういうものについてははつきりと一つ処置をとるようにして頂きたいと存じます。
  69. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 生糸のほうはほかの商品と違いまして、とにかく横浜神戸におきまする倉庫も先ほどお話ししましたように、非常に経済的にも又設備的にも充実したものがございます。而もその商品自体の検收に当りましてはほかの商品と違いまして、国立の生糸検査所におきまして検査をやつており、而も、それは封印されて、はつきり商品としては中身を見なくとも十分できるわけであります。従つて検收などにもそれほど人も要らないというような工合に考えられます。而もこういう事態はいわゆる最悪の事態でございまして、常時起き得る事態ではございませんので、我々といたしましてもこの国家財政から考えまして、でき得る限り少数な人間で現在の取引事情にマツチして、国有財産を管理して行くという面から見ますれば、今の二十五名ぐらいで十分やつて行けるのではないかという工合に考えております。
  70. 江田三郎

    江田三郎君 いろいろこの質問と答弁とを聞いておりますというと、この法案では繭価なり糸価の安定が図り得ないという質問に対して図り得るのだということで、而も問題になる点の具体的なことは、これは必要な措置をとるというだけで、具体的には一向お示しがないので、何か聞いておりますと、安全保障條約の行政協定みたいなような気がいたすのであります。(笑声)それは別問題にしまして、先ほどの溝口さんの糸価安定特別会計法という名前について質問がありましたが、これはまあ何かの間違いで繭という字が落ちておると、こういうことですけれども、やはり間違いじやないと思うので、これで行きますと、大体生糸買入れなり売渡しをするだけで、やはり繭のほうは何もやつておらんわけですから、何かそういうこの特別会計のほうとこちらとを見比べますと、慌てて繭の字を加えただけで、本来の目標は糸価にあつたのじやないかという気がするわけです。そういう点があつたからこそ全国のいろいろな養蚕農家のほうからこれに対する午前中の飯島委員の御意見のようなことが言われるわけなんです。そこで私はもう少し繭価の、繭の価格の安定の問題についてお伺いしたいのですが、先ほど片柳委員質問に対しまして生糸の加工費と繭の生産費一定割合を補償するのだと、こういうまあお答えがあつたわけです。併しそういうような両方の一定割合を元にして、仮に価格をきめましたところで、その際糸を作る製糸家が自分の加工費をみすみす赤字が出るということを、一定割合しか補償されないということを算盤において買うことがあるかどうか。私は恐らく製糸家としては、自分の加工費は全部ペイできなければ、或いはそれに近いものでなければ買わんというのがこれは常識ではなかろうかと思うのでございまして、そうなるというと、価額をきめる場合に、最高、最低の価格をきめる場合には、一定割合で補償されておつても結局はその犠牲というものは、繭の生産農家のほうへばかり片寄つて来はしないかと思うのですが、そういう点はどうお考えになりますか。
  71. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) これは最低価格でございまするので、その場合におきまして、その後におきまする生糸価格の上げ下げがどうなるかというような問題で必ずしもしわ寄せであるとは思つていないのでございます。現在におきましても、繭の売買の際を見まするというと、先ほどもお答え申上げましたように、その繭の売買をやりまするその当時の糸価から見まするというと、割合に繭のほうが高く買われておるというようなことが世間から言われております。それはどうかと言いますと、買入した繭からできます糸の今後の情勢によりまして非常に違つて来るのではないかというような気がいたすのでございます。それからいま一つ製糸家といたしまして、一応加工費というものが出ます。出ますが、併し最低値段になりまして、とにかく蚕糸業全体が難澁しておる際に、その加工費の内容を調べて見ますれば、必ずしも製糸家のほうでは今現金を出さなければならんという部面だけからこの加工費が成立つておりませんので、製糸家のほうでもその面は今おつしやいましたようなことにはならないと思うのでございまして、或る程度製糸家もその情勢において負担するようなことを考えられると思うのでございます。
  72. 江田三郎

    江田三郎君 製糸家としてはすぐに現金を全部にかけるのでないからして必ずしもそうならんと言われるが、そうするというと製糸家経営というものは非常に不安定なことになるわけで、さようなことで一体製糸業というものは、将来の投機的な計算だけで経営して安定し得るかどうか、私非常に疑問だと思うのですが、その点はともかくとしまして、今、この今まで比較的繭の場合には、よ過ぎるほどいい値で買われておるのだ、比較的割合から言うといい値で買われておるのだということであるが、ここに出ておりますところの「繭及び生糸価格及び生産費に関する資料」の中の、この価格というものは、これは蚕糸局でお調べになつたでしようが、一貫目二十五年で千六十七円という、この相場でいいわけですか。十五頁にあります。
  73. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 繭価の千六十七円というものは、春蚕、夏秋蚕ごとに、例の養蚕価格製糸家との間に団体協約を結んでおりますが、それで各府県で行われました団体協約によつてできました価格の加重平均をやりますと千六十七円になるのであります。
  74. 江田三郎

    江田三郎君 価格のほうがそうなつた場合に、生産費調査が八頁に出ておりますが、それで行きますと、二十五年度は千二百十九円、繭の価格のほうが千六十七円で、生産費調査で行くと千二百十九円ということで、これでは生産費つておるということに考えざるを得んのですが、この点はどうなんですか。
  75. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) これは全国たしか五百戸の養蚕家生産費を調べたのでございますが、その面から見ますれば、お話の通りに思います。
  76. 江田三郎

    江田三郎君 今まで、先ほどの御説明のように、比較的繭が高く買われておる、そう言われるのに、この統計で見ると、二十五年度で行くと、只今のように生産費が千二百十九円なのに、繭価のほうは千六十七円、二十四年度は生産費が千五百七十九円なのに繭価のほうが九百円というようなことで、これは私が作つたものではなしに、蚕糸局のほうから出された資料の中にこういう数字が出て来るわけです。そうすると、先ほど言われたようなことにはならないのじやないかと思うのです。而も生産費について、先ほどの御説明のように、生産費は非常に大きな幅がある、少くともその中庸的なものは合理化の進んだ農家の生産費を保証する程度と言われましたけれども、これはやはり平均的な数字でして、その次の表にありますように、千二百十九円というものは、小、中、大の経営規模別を見たその平均値で千二百十九円になつているのですが、それさえも今出された資料から行くと保証されてはいなかつたということになると思うのでして、そうなるとこれは繭の価格の安定について先ほど来の何ら別に心配がないというようなことじやなくて、別なことになりやしないかと思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  77. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先ほどお話申上げましたが、繭が割高に買われておるということは、生産費よりも繭が割高だというようなことを申したわけじやございませんので、繭の価格がきまりまする際に、その当時の生糸価格から見ますると、原料代としてのいわゆる繭代の部分が高く買われていやせんかということを申上げたわけであります。
  78. 江田三郎

    江田三郎君 だから私は言うのでして、糸に比べて繭のほうが比較的高く買われておると言われながら、実態においてはこういう数字が出たわけです。そうすると、将来繭と糸とが割高に買われないで普通に買われた場合には、もつと繭価というものは安くなるというように、常識的にそういう結論になつて来ると思うのです。そうするといよいよ矛盾が大きくなるのじやないですか。
  79. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 先ほどの二十五年度の千六十七円という数字は、実は先ほどもお話いたしましたが、これは全国の繭価協定できまりました価格そのままを見ておるわけでございます。併しこれに例の養蚕団体が集荷費といたしまして一貫匁三十円或いは三十五円ばかり取つておりますので、これより実際の価格は上つておるだろうと思います。
  80. 江田三郎

    江田三郎君 これは三十円や三十五円加えても大したことにならんのですから、この表が違つているのなら、もつと我々の肯けるような資料をあとから出して頂きたいと思うのです。それからなお第十三條によりますと、今後も繭の生産費調査をすることになるわけですけれども、この生産費調査というものはどこでおやりになるのか、又その際一体米価の場合にもいつも問題になるのですが、労働費の問題なんです。特に統計調査部の調べを見ましても、労働費は養蚕の場合には雇用労働が少くて、家族労働が非常に多いわけですけれども、この家族労働の單価というものはどの程度に見て行かれるのかということです。これは米価の場合でも一体農村の実際支拂賃金で行くのか、或いは他の産業の労働者の受ける賃金と少くとも釣合いのとれたものであるかというようなことが非常に問題になるわけですが、将来この点はどういうようにお考えになるのですか。
  81. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 現在ここに生産費と、こう書いておりますのですが、米のほうは生産費という形においていろいろ考えて見ますれば、まあパリテイがいいか、或いは実際のこのような生産費調査というような形をとればいいかということが非常に問題になつておるようなわけでございます。従いまして我々のほうといたしましては、パリテイの理論によつて出しますか、或いは又こういうような調査に基いてやりまするか、これは十分研究をしましようかと、こう思つております。それで若し生産費調査をやるということになりますれば、現行通り農林省の統計調査部で行われると思います。それから現在農林省の統計調査部におきまするいわゆる労賃という部面は、たしかその地帶におきます日雇労賃の費用をそのまま掲げておるように思います。従つてそれらの問題につきまして、これが必ずしも公正な生産費じやないというような点もありますれば、十分それらの面は統計調査部と話合いをしまして研究して参りたいと、こう思つておるわけであります。
  82. 江田三郎

    江田三郎君 それが不合理だということなら十分調査するということでなしに、一体どういう考え方を今持つておられるかということなんです。少くともこの生産費調査から見ますと、自家労働部分というのが全生産費の半分以上を占めておるわけです。そのはじき方如何でどういう生産費でも出るわけです。それをどういう基準でやつて行くかということは非常な違いが出て来るわけですから、蚕糸局のほうでこういう法案をお作りになつて、そうして十三條によつて繭や生糸生産費調査するんだということを言われるならば、どういうような生産費調査をせられるかということは、もつとはつきりしておらなければならんと思うのです。そういう点につきましても、若し考え方の正確な資料を頂けましたら頂きたいと思います。それから私は今のような形で繭の生産費を補償するということについてのその点から考えますと、どうもこの法案は至つて不十分のように思いますので、従つて第十條によるところの必要な措置というのがもつと具体的なものでなければならん。そういうことについて例えばということで若干お話がありましたけれども、そういうことをもう少し次の委員会までに、一体政府が考えている具体的な措置としては、こういう場合にはこういう方法があるんだということをはつきりとお示し願いたい。或いはそれによりまして、片一方のこの糸価安定特別会計法というものも繭糸価のほうに変えなければならんということも出て来るわけでありまして、少くとも今までのままだつたら繭の字がないほうが本当ですけれども、私は内容的にも繭の字を入れなければいかんと思うのです。
  83. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 各委員からいろいろお尋ねがありまして、お答えがありましたが、どうしてもこの法律は繭よりも糸に重きを置いておると見ざるを得ないような法律であります。そこでこういうことができるかと思うのでありますが、最低価格に買つて最高価格に売る。言いようにおいてはどつちも同じです。法律には、注文に応じて最高価格に売り、予算範囲内において最低価格に買うと書いてある。これは商取引において絶対有利な條件なんで、最低価格に買つて最高価格に売るということは取引として最もうまく行かないのでありまして、第三條にそれが書いてありますが、こんなことでは最低価格に買つて最高価格に売ることは不可能だと思う。恐らく法律になくても、一般通念として売買するものを最低価格に買つて最高価格に売るというそのことは非常に面倒だと思うが、どうしておやりになるか、一応お聞きしたい。
  84. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 我々といたしましては、こういうような工合に考えました。大きなポイントは午前中にもお話申上げましたように、過去何回にも亘りまして、政府なり或いは又民間なりで生糸価格なり、或いは繭の価格なりというようなものの安定を期しまするために、いろいろの方策が講ぜられておつたわけでございます。併しそのうち最も成功をいたしまして妥当と思われるのがこういうような方法ではないかと私たちは現在のところ考えておるのでございまして、而もこれは過去において成績を挙げておる方法でございまするので、或いは蚕糸に限つて特殊の例かも知れませんが、こういう方法を採用するというふうに決定したわけであります。
  85. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 これが最低である、これが最高であるというその境なんで。どこを見てこれが……。実は私は糸をやつておりませんが、輸出を何年もやつてつたものでよくわかつておりますが、外国では生糸だとか、或いは日本のその他の物価の毎日のように相場の変動するのを非常に嫌つております。なんとかそうしないで安定することはできないか、どうも日本の相場は毎日のように変つて非常に困る、向うではそんなに相場は毎日余り変つておらん、非常に買うのに困るから、一応そうしないで、毎日のように相場を変えないで報告をしてくれることができないかということを今でも言つて来ておりますが、生糸もそうだと思います。そこで糸価の安定ということは、損もしない、得もしない、まあ喜んで買い得る、喜んで売り得る相場をきめることが僕は安定の相場と言い得ると思う。ところがこの法律には最低に買つて最高に売ると書いてあるのだから、これはどうしても私にはわからない。そこでそうなると、損は絶対にしないで売る、最低に買つて最高に売る、損は絶対にしないという原則で行かなければならんと思うが、それはどうか。
  86. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 過去にこういう制度をやりました場合に、大体利益を計上しております。それでこの方法といたしましては、ただ最低価格になれば政府はこれだけの金額を以て買うんだ、又最高価格なつた場合にはこういう措置を以てやるんだということを世上に一応公表しておきますれば、そのときの材料如何によりまして、その範囲内において適当な価格のところで調節されて来るのではないかと、こう思われます。それで白波瀬委員もお話になりましたように、最高価格とこう申しましても、或いは最低価格とこう申しましても、必ずしも我々としては実勢がそういうことであるものならばこれはやつて行かないのでございまして、従つて最高価格の場合に実勢がどうしても上るというような場合におきましては、第五條でございまするか、価格改定の措置もございまするので、その方法でやりますれば、何も一般に迷惑をかけないで運用して行けるのではないかと、こう思つております。
  87. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 私の狙いが一つあるのでありまして、これは片柳委員もお尋ねになつておりましたが、これで見ますると、最低価格で買つて最高で売る、必ず利益金が出る、出た利益金は一方の合計法で積立てる、こういうふうになつておりますが、会計に繰入するが、損失が出た時分にはそれから減額をすると法律は書いてありますが、損にする心配のない仕事をおやりになつて、必ず利益金が出るのにきまつておると思います。片柳委員は雑穀を引合にしてお話になつておりましたが、あれは売つて見ねぱわからん、結果において売つた利益があれば生産者に戻すと、こういうことを要求いたしておつたのでありますが、これは恐らく結果を見なくても利益金の出ることは間違いないと思います。そこで繭の生産者が、白波瀬さんからもお話がありましたが、繭の生産時期で売る時分にはいつでも安い繭を売つてしまつてから生糸価格は高くなつて行く、こういうお話をされておりましたが、今江田委員はそう繭の価格は安く売れておらん、表はそうでないと、こういうことを言つておられましたが、確かに繭は生産されたときに即時売るとこれは当然安いと思います。そこで思うようにうまく売れればそれでいいのでありますが、生糸から逆算をして繭の生産費の足らないような時期にはこの利益金はバツク・ペイのように戻す方法も講じてやつてやれんことはないのじやないか。これを、利益金は国の特別会計に繰入れて、そして若し損があれば減額をすると、こういうふうに書いてありますが、誠にそれはこの法律から言えば健実な方法でいいかも知れませんが、損をしないという建前でやる以上はそういう心配は要らんので、利益金は生産者に返す、こういうこともやつてやれんわけではないと思うのですが、どうか一つお聞きしておきたい。
  88. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 利益がありました場合に養蚕家全部に対してそれを返すというようなことを考えますと、なかなか技術的には困難ではないかというような工合に考えられるのでございます。なにしろ少額な繭ならとにかく、八十万戸の農家がすべてやつておるという面からいたしまして、技術的にはなかなか困難ではないかという工合に考えられておるのでございます。従来そういうような儲けのありました際にどんなことが講ぜられておるかと、こう申しますというと、最近の例から申しますと、養蚕家に対しまして生産関係の施設に使つて参りますとかというようなことが最近例の業会の利益金の際にとられたわけでございます。それから過去におきましては、現在横浜にございますあの例の倉庫なり或いは検査所というようなものは、利益金を民間側で政府に寄附いたしまして、そうしてできているような経過がございます。又今の中野の試験場、あれなども、やはりこういう関係で利益を得ました際に、必ずしも紐つきかどうかは存じませんが、とにかく建てられておるというふうな従来例がございまして、我々蚕糸局のほうといたしましては、先ほども片柳さんの御質問のように非常に希望したいことでございます。併しこれは政府全体の財政の面から考えられることでございますので、私からの答弁としてはその程度しか現在お答えができないのでございます。
  89. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 利益金を戻すことは非常に面倒だろうと、こういう御心配で、今までもあつた利益金はいろいろ施設に使つておると、こういうお話でありまするが、それは、成るほど朝から出た生糸、それを処理する場所に使いますことは繭を還元したと同様になるということも考えられますが、最初から利益金があれば還元するのだ、こういうことになつておりますと、買入の時分からその態勢で行つてりますから、何も面倒ではないと思います。すぐ金額さえきまれば返せると思いますが、併しながら僅かな金を返すわけには参りませんから、それは相当の返すだけの金額にならんといかんと思いますから、これはできるなら……、局長をそう攻めてもわかりませんが、そうすることが適当と思います。それから先ほど繭に対する資金の面のお話をされまして、局長のほうからは繭の融資は中央金庫をしてやらしめておると、こういうお話がありましたが、やつてはおりますが、これは中央金庫の自己資金でやつておりまして、銀行と中央金庫と両方でやつておりますが、殊に長野県のような非常に組合製糸の盛んなところでさえも非常に困つて、金庫の持ち込んでは金庫から自己資金を持つてつておりますが、繭の金の要ります時期は、中央金庫として一般農家の資金の非常に多く要る時期に向つておりまして、非常に迷惑をいたしておりまして、これが今より以上に繭に対する資金が要ることになりますと、政府が何かの方法で預託をしてやらなければいかんと思います。そこで今まで通りのお考えで、中央金庫がやつておるというお考えでおられたのでは非常に困りますので、是非今後繭の資金を融通いたしますために、金庫に政府の預託をしてもらうことをお願い申上げておきます。それから施設の方面で農林漁業特別融資の金で乾繭倉庫なり、その他の施設ができるというお話をされましたが、金額を殖やして年重なればそういうこともできましようし、考えられましようが、現在まだ二十七年度あたりでは絶対に考えられませんし、又考えても入つて参りません。普通農業倉庫が、米麦の統制が外れますと農業倉庫が非常に必要になり、不完備であるから新築をしたいと思つても現在はできません。二十七年度では何とかしたいというのでやつておりますが、まだまだ入る粋がないというのであります。二十六年度は僅かに二億円の修理の金しか見ておらんようなわけで、これも一つ蚕糸局のほうで、農林省のほうで、特に必要のある乾繭に対しまするものは、あの枠にそのつもりで入れて参りませんというと、まだここ二、三年はそういうものに非常に廻つて行きにくくて、要望いたしましても、貸すこともできない実情にありますから、是非その方画も蚕糸局のほうからこういう資金が要るから、これも枠がとれるようにしておけと、こういうのでないと、そのまま置かれると駄目だと思いますから、その点もお願い申上げておきます。
  90. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) その面につきましては、今年度はすでにこの乾繭倉庫につきましては四千万円ばかりを認めておるのでございます。現に借入れが来ておるのでございます。大体総額としては八千万円ぐらい、今申込が来ております。我々といたしましてはこの制度に附随いたしまして、とにかくそういう面から考えて行く必要もございますし、又養蚕面からも本当にそういう御希望があるならば極力副いたい、こう思いまして、我々のほうでは来年度も枠をとつて参りたい、こう思つております。
  91. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 金の話ばかりして誠に相済みませんが、日本蚕糸業会に計上されておりました封鎖機関に指定されて以来の清算後の手特の生糸が、インフレで莫大もなく高く売れたというので相当の金があつたつもりでありますが、その話はさつぱり出ておりませんが、一体あればどうなつておるか、それを聞きたいと思います。
  92. 青柳確郎

    政府委員青柳確郎君) 岡村委員のおつしやいました通り相当の金額に達しておりまして、その金額の内容を見ますと、価格差益金と申しますか、統制価格の変更に伴いまして、当然差益金としまして政府に納めるべき部分と、それから本来の出資に戻すべき金額と両方になつておるのでございます。それで我々の考えといたしましては価格差益金のほうの分は直ちに国税庁を通じて納めさせて行きますし、あとの残余財産につきましては、出資者の御希望によりまして、勿論これは出資者の自由意思でございますが、自由意思に基きましてでき得れぱこの糸価安定特別会計の基金として指定寄附をして頂きたい、こういうような気持で実は昨年からその問題を考えておるのでございます。幸いに出資者の人たちの御意見では、大体はでき得れば、こういう方面に、若し糸価安定法でも通れば、そこに寄附したいという御希望のかたが非常に多いのでございます。そんな関係からいたしまして、現在の心組みといたしましては、法的の措置をとりまして、勿論これは強制する意味の法的措置ではございませんが、出資者の自由意思に基きまして寄附するような法案を作りますか、或いはそうでなしに、自由の意思に基いて政府に寄附するような方法があるか、それを目下検討しております。そういうような現在段階になつておるわけでございます。
  93. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後三時四十八分散会