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政府委員(亀徳正之君) それでは皆さんからお述べ頂きました御
意見に対して、順序を追いまして簡単にこちらで
考えております点を申上げまして、なお御必要に応じまして更に深く突つこんで御答弁申上げたいと
考えます。
第一点は、
所得税に関連いたしまして、
農漁民に対して一五%の
勤労控除の
制度を設けよという御
意見でございますが、これはシヤウプが再度来朝されましたときも取上げられ、我々としても一応
検討済の問題でございます。その際に問題となりました点は、普通の
一般の
勤労所得者に対する
勤労控除をどうするかという問題が第一。それから第二に、
農漁民に
勤労控除を認めた場合に、その他の中小企業者、特に大工、左官、或は主として
勤労を主とした営業
所得者に対して更に
勤労控除を拡張するかどうか、こういう二点が問題にな
つて来るのであります。飜りましてこの
所得税の
課税の
状況を見ますときに、大よそまあ三つのグループに分けて
考えられるのではないかとこう
考えられる。第一のグループは、大体
勤労所得者のグループ、次にはここに挙げられております
農漁民のグループ、それから第三が営業者のグループ、そして一番
課税が的確に行われておりますのが
勤労所得者、それから次に的確に行われておるのが大体、漁民の場合はいささか問題がございますが、
農漁民でございます。それから第三に、一番徹底を、これは欠いておるのではないかと思われるのが営業
所得者のグループ、まあこういう恰好にな
つております。従いまして今
農漁民に対する
勤労控除を
引上げるという問題が当然問題になりました場合には、当然
勤労所得者の
控除をこれを一五%にしたら何%上げれば釣合いがとれるかという問題が当然出て来るのであります。で、今回の
税制改正によりまして、恐らく来
年度は
基礎控除五万円、
扶養控除は三人まで二万円という線が確保されておるのでありますが、今回の
改正が最もやはり有利なのは、厳密に
所得税法の適用を受けておるものが最も有利な
状況になるというのが今回の
税制の
改正の狙いでありまして、むしろ営業については
改正にな
つても更に
所得を徹底して把握して、むしろ
勤労者の
農漁民のかたがたに対する
所得の権衡がとれるように更に
課税を充実して行く、行かなければならないのではないかという問題すらあるのであります。従いまして我々の
考え方は、
現行の
勤労所得者の
控除の
引上げの問題もありますが、これは現在の
基礎控除と
扶養控除の思い切
つた引上げによ
つてともかく救い得る。従
つて農漁民のかたの
勤労控除の御
要望も、
一つ我慢願いたいと、こういう
考え方でおります。
なお試みに
農民のかたの
所得税の
納税者が大体暦年どういう工合にな
つておるかという数字を御
参考までに申上げますと、
昭和二十三年には三百七十三万九千人、これは最も新らしい最終
課税の実績であります。誤謬訂正その他を済ましたあとの数字でございますが、二十三年が三百七十三万九千人、それから二十四年が三百二十万五千人、二十五年の軽減
措置によりまして非常に
納税者が減りまして百八十四万四千人、二十六年は、これは米価の
引上げその他によりまして、
現行法でありますれば二百七万一千人となる予定のところが、今回の
所得税法の臨時特例に関する法律によりまして百五十三万二千人になる予定でございます。このように非常に
納税者のかたがたも半分以下に減る
状況でありまして、この数字によ
つても端的に今回の
所得税の
改正によ
つて最もやはり負担軽減の恩典を與えられる
一つのグループに属するかたがたであるということが言えるのではないか。現在の財政
需要その他を
考えますときに、一応
勤労所得者の
勤労控除もそのまま据置き、それから
農業に対する
勤労控除の新設という問題も御勘弁願うということで、さして無理な結果にならないと、こう
考えるのであります。それから第二点の
雑損控除を差引く場合に一応
医療費、
扶養控除、
不具者控除、その他を差引いたあとで
雑損控除をしてもらいたいいとう御
意見でありますが、これは
雑損控除については繰越があるから、むしろこれをあとにしてくれと、こういう御議論でございますが、我々から言わせればむしろ話は逆であ
つて、
雑損控除については繰越その他が認められるから先ず先に引くという
考え方に立
つておるわけであります。と申しますのは、若しも
医療費
控除控、
扶養控除その他について繰越が認められるという建前にな
つておりますれば、それは問題ないのでありますが、
雑損控除だけが繰越を認められる、而も
雑損控除については
青色申告をしない者についても認めておるわけであります。従いましてむしろ
雑損控除をして、そのあとに
医療費、
扶養控除、
不具者控除をするという御議論の
前提には
雑損控除を先にや
つて、あと
医療費その他も繰越して引いてもらいたいという御議論が裏にあると思いますが、
医療費、扶養、
不具者控除は
原則として繰越いたさない建前にいたしております。従いまして今おつしや
つたような御
意見を採用しますと、
雑損控除をした人には事実上
基礎控除、
医療費
控除が繰越されるという結論になりますので、それでは面白くないのではないか、私としては繰越ができる
雑損控除からやはり先ず引いて行くという建前をと
つております。それから第三番目の
青色申告に対する特典を拡張して、且つ
青色申告の簿記を徹底的に簡素化するという御
意見でありますが、この点につきましては我々といたしましても、十分
考慮しなければならない問題だと
考えております。ただどうい
つた簿記の様式にすればよいかという点は非常にむずかしい問題でありまして、
現行法におきましても簿記の様式を法定しておきませんで、記載事項だけを一応法定しておりまして、簿記の様式まで詳しく法定してはおらないのでありますが、まあ実際の指導面で或いは多少複雑なことを要求しておるのではないかと見られる向もありますので、この点については十分
検討をしたいと思
つております。
次に
農業協同組合に対する
法人税の問題でございますが、まあ
現行の
法人税……公益
法人、或いは宗教
法人とい
つたものにつきましても、その営利事業については
課税するという建前をと
つておりますので、これらの
考え方と歩調を合わす
意味合いにおきましても、一応
農業協同組合に対しても
課税するという建前はそのまま続行して行きたいと
考えておるのであります。ただシヤウプの
改正によりまして、こうい
つた特別
法人も
一般法人と同様に、昨年三五%の
税率で
課税するということにいたしたのでありますが、やはり特殊な特別
法人に対する
課税については、何らかの
考慮を払わなければいけないのではないかという趣旨によりまして、今回
法人税率を一律に四二%に上げるに際しましては、こうい
つた公益
法人並びに
農業協同組合に対する
税率は
現行の三五%に据置くということにな
つておるのであります。五の問題は四と同じ
考え方でお
考え置きを願います。次に
相続税の問題でございます。特にこの点について問題になりますのは、
農家のかたの
相続の場合に、長子のかたが
原則としてやはり
相続されて、農地その他が
分割されないように、又
分割されないために長子が一人で
相続される場合には、
現行の
相続税は非常に高
いものになる。従
つて、
相続税の面から農地の
分割の傾向が助長されるのではないかという御
主張があり、恐らくその問題とも関連しているものと
考えるのでありますが、
相続税の問題は、飽くまでも、我々としましては、民法の
原則の下にやはり
課税しておりますので、民法の
原則が
現行のままであります現在、
相続の場合は、民法の
原則が一応働くということを
前提として、
相続税を課せざるを得ないという立場にあるわけであります。ただ
現行の
相続税が非常に相当
税率の点において、
基礎控除額の点において相当なお
考慮の余地があるのではないかということで、むしろ
相続税全般の問題として、
基礎控除の問題、
税率の引下げの問題について目下
検討いたしております。
次に、
林業関係の問題についての御
意見について御答弁申上げます。
林業税制についてはなかなか問題が複雑でありまして、我々もいろいろこの問題については頭を突つこんで研究いたしたのであります。殊に
山林課税につきましては、御存じのように、先般ホール氏が来朝されまして、
林業税制に関する勧告を残して行
つておるのであります。我々もこの勧告を研究いたしておるのでありますが、ここで述べられておるの(イ)(ロ)の点もこれに似た点が勧告の中に現われておるのであります。(イ)の八割という
考え方の
基礎には、再
造林費を
控除する、それがなかなか算定しがたいから、便宜八割の
控除率を以て
考慮してもらいたいという御
意見であろうかと思うのであります。ただ再
造林費を引くという点から我々も少し
検討して見たのでありますが、実際の実例に基いて
検討いたしますと、現在の
課税方式は甚だ複雑ではありますが、取得価額の算定につきまして、再
評価の
関係を働かせまして、財産税のときの調査
価格に一定倍数を乗じだものを以て取得価額とみなして、それを差引きました
関係上、財産税の
申告の非常に少か
つたかた、こうい
つた特殊の場合を除きましては、
所得税の負担はさほど高
いものでもないのではないか。むしろ
森林についての問題は、
富裕税乃至
相続税にあるのではないかというふうな印象を我々としては受けておるのであります。ただホール氏の勧告の線に従
つて、再
造林費を
現実に引くという
考え方で
計算しますれば、むしろ
現行の
課税方式によ
つて計算いたしましたほうが
所得が出ないで済むというような結論になるようであります。ただ勿論、ここに出ておりますような八割というような数字には決してならないのでありまして、恐らく八割の根拠付けられる資料の提出は御無理ではないかというふうに
考えるのであります。むしろ問題は、やはり
森林法その他が出まして、
森林の保護育成という面から我々としても何らかの
考慮を払わなければならないということは
考えておるのでありまして、むしろこうい
つた八割の
控除ということでなしに、別個に
譲渡所得、
山林所得等一括して、いわばこうい
つた不規則
所得の
課税方式を再
検討して、その不規則
所得の
課税方式をどうするかという問題の一環としてこの問題を取上げて
検討して見たい、こう
考えております。
所得税の(ロ)の
森林を持
つておられるかたが
法人組織になられた場合の
譲渡所得課税の免除の問題でありますが、この点は、これは現在
法人並みになりました場合には、必ずこれは
譲渡所得課税の対象になりますので、特に
森林だけを除外するということは現在の
税法の建前上困難ではないか。むしろ先ほどの
譲渡所得課税そのものの
方式に若干今問題がありますので、その問題の解決によ
つて或る
程度この(ロ)の問題も解決されるのではないか、こういうふうにも
考えられるのであります。ただ、これに関連して、先ほどおつしやいましたように、
変動所得としての平均
課税をする
方式が非常に複雑でありまして、これが
納税者のかたにも非常に御迷惑をおかけしておるという事情も我々としてもよくわか
つておりますので、この点は、
変動所得の平均
課税をした場合と同じような負担の軽減を図り、同時に
変動所得の平均
課税という複雑な
方式によらないでも済むようなことに改めたい、目下その点を研究中であります。それから
相続税の問題につきましては、これは先ほど申上げましたように、
相続税全般の問題として
考慮いたして行きたい、特に
延納を認められました場合の利子をどうするか、こうい
つた問題は
山林だけということではなしに、
相続財産のうちに金に換えることのなかなかできな
いもの、換価困難な資産が
相続財産のうちに相当部分を占めておるような場合、こうい
つた場合についての
相続税の
延納が認められました場合に、その利子税、現在の日歩四銭を何らか軽減する必要もありやしないかという点は研究いたしております。それから
期限を二十年に延長するという問題でありますが、この点は現在
相続税が非常に重いということに関連しての問題でありまして、この
相続税の負担の軽減という
措置が或る
程度図られますならば、あえて二十年でなくして
現行或いは若干それを引き延ばすという
程度でいいのじやないかと
考えるのであります。
それから
森林の
評価の問題であります。この
評価について一番問題になりますのは、結局
富裕税の
課税標準としてこの
評価の問題が非常にまあやかましい問題にな
つておるのであります。まあ私もこの問題にちよつと首を突つこみまして、さる
山林経営者のところを拝見さして頂いたのでありますが、このかたの場合は、
評価をぎりぎり一ぱいにやられておりますので、
所得税はかからなくて
富裕税が十五、六万円でございましたか、毎年かか
つて行くというような
状況のところも見せて頂いたのであります。
富裕税の
評価につきましては、これは第四の、これは廃止することという御
意見が出ておるのでありますが、
富裕税の廃止ということもいわば
一つの研究問題とな
つておりますので、これが若しも廃止することになるとするならば、この
森林評価の問題の大半は少くとも国税に関しては解消すると思うのであります。併しなお現在
富裕税は残
つておりまするので、依然として問題は残された形でおるわけでありますが、我々としましては、
幼齢林の
評価の問題或いは奥地林の
評価の問題については、或る
程度考慮の余地はあるのではないか、又標準伐期を過ぎました樹木に対してそのまま
グラーゼルの
方式を適用して行くということは、確かに穏当を欠くと思いますので、その点は早急に改めたいと
考えております。
それから
水飴の問題でございますが、いろいろ縷々お話になりましたように、まあ
水飴の
課税につきましては非常に問題が多いということは我々も十分了承しておるのであります。現在の
物品税が果して奢侈品
課税に徹底しておるかどうかという点は確かに問題の存するところでありまして、例えば当然必需品として免税していいような紙等が現在
課税にな
つておるのでありまして、これはいわば財政物品とでも申しましようか、相当な税額もありますので、思い切
つた低い
税率ならばさほど弊害もないのではないかという建前から現在
課税しておるのでありまして、
水飴も百斤五百円で、従価税に直しますと八%
程度になるのでありますが、最も低いところで
課税いたしておりますので、現在これを直ちに廃止するかどうかという点はちよつと今ここで申上げかねるのであります。なお
物品税につきましては、御存じのように、最近むしろ直接税よりも間接税の
引上げによ
つて財政を賄うべきではないかという議論も非常にやかましくな
つておる時代でございまして、むしろ方向は間接税の増徴こそ
考えられる、その軽減はいわば若干ストツプされたような恰好ではないかというような
状況でもありますので、いろいろ問題もあろうことはわかるのでありますが、今直ちにこれを廃止するかどうかという点は問題があろうかと思います。なお
水飴によります本
年度の税収は一応十四億
程度としております。