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政府委員(石井
昭正君)
只今農林物資関係の業界の皆様の非常に御詳細な
お話がございました。
実は、今般の鉄道
運賃の
改正につきましては、昨日参議院の御承認を得まして本
会議を通過いたしまして、本日より
実施いたしておるわけでございます。ここに至ります間につきまして
国鉄当局からは八月末に
貨物も旅客も共に三割五分という申請をして参
つたわけでございます。それにつきまして運輸省といたしましては、法律の定めるところによりまして運輸審議会にこれを諮問いたしました。運輸審議会におきましては、九月十二日から四日間に亘りまして公聽会を開催いたしました。これは單なる聽問会ではなく、新聞紙上に公告を、成規の手続をいたしまして、御希望のあるかたを全部
意見を開陳の機会を持
つて頂いたわけでございます。そこでまあいろいろの御
意見の陳述もございました。又一方
運賃値上が国民及び
経済に及ぼす
影響は幾らかでも少いほうがよろしいのでございます。この点につきましては私
どももできるだけ何とか少い率にとどめたい。併しなから一方
国鉄の財政を破綻に瀕せしめまして、結局輸送力にひびを入らせては、これ又何にもならないし、又旅客輸送等につきましても旅客の安全を害する、或いは非常にサービスの悪い輸送をするというようなことにな
つても又何にもならないのでございます。その間の勘案を見極めてできるだけ低位におさめたい、経費の内容等についても十分検討をいたした次第でございます。
この公聽会の際におきましてもいろいろ各方面の代表のかたがたがお見えになりまして、実に熱心な御
意見の開陳があ
つたのであります。総じて申上げますれば、大体特殊の例外を除きましては、或る
程度運賃の値上は止むを得ないが、成るべくこの率を少くして欲しいと、そういうふうに検討しろ、或いは経営の
合理化をやれ、その他の方法で少くしろというのが大多数の御
意見であ
つたと思うのであります。勿論そういう
趣旨に則
つて私
どもも検討いたしたわけでございます。各種業界のかたがたの御
意見はそういう基本的なラインにおいては、全然お変りないのでありまするが、ただやはり御自分の御
関係する
品目につきましては、特にその
品目だけは値上は困る、或いは値上するにしても、他の一般値上率よりも低位にしろというような御
意見がすべてであ
つたのであります。そういう御
意見も十分拜聽いたしましてその
基礎もよく
調査いたしたのでございますが、且つ又これと並行いたしまして
国鉄当局におきましては特に
農林水産
物資、或いは商工
物資等につきましては、
関係官庁のかたがた、或いは業界代表のかたがたと膝を交えた御懇談を申上げ、勿諭
運賃値上の止むを得ない点はこれは御了承願うとして、果してこれがいろいろの面において本当に国家的な
産業に大きな
影響を及ぼすかどうかというような点も膝を交えて御懇談する機会を相当持
つたわけでございまして、而もこの
農林関係につきましては、
林野庁とも御懇談申上げました。
林野庁のほうは、勿論
林業関係のかたがたのお意向を代表せられておりまするので、必ずしもそれは完全に一致するということはないと思いまするが、併しこの際の値上としてこの
程度は止むを得ないという御
了解には達して頂いたのでございます。
一方
国鉄当局におきましてもそれに対しましては、
関係の向のいろいろ御
陳情その他を検討いたしまして、全般的な
影響を及ぼさない範囲におきましてできるだけの御
要望に副い得る
措置は講じたわけでございます。例えば
林業方面から
お話のございました上級
木材に対する
品目を、現在ひのき類、かし類、けやき類とな
つておるものを木曾ひのきと、かしと、けやきに限定しろというような御
要望に対しましては、これは非常に現場の取扱上、ひのきを木曾ひのきに限定するということは非常に困難が伴うのでございまして、かような異例な
品目の限定を未だ曾
つてしたことはないのでございまするが、併しながらいろいろ御
事情を承わ
つて何とかこれの御
要望に副いたいというようなことにいたしまして、特にかような誠に異例な
品目の設定をいたしたのでございます。現場における取扱の困難は非常なものがあると思うのでございますが、然るにもかかわらず、そういう御
要望も考慮いたしておりまするし、又
坑木につきましても、現在の
割引距離を更に短縮いたしまして、七百五十キロ以上を四百一キロ以上に短縮して
割引率を適用するようにいたしたというような点もあるのでございまして、これは一応三割フラットの
値上げで予算を組んでおりまする
国鉄当局から見ますれば、やはり相当の犠牲でございまするが、併しながらこれも
林野庁もその全部の御要求に対しまして、すべてを御
要望通り応じないで我慢して頂くという考え方に立ちますれば、やはり一種の歩み寄りと申しますか、
国鉄当局におきましても、多少できるだけ
運賃収入の減少も止むを得ないが、そういう御
要望に副うというような
措置を講じたのであります。
只今いろいろ
お話かだんだんございましたが、こういう点について皆さんのほうから一言も御言及がなか
つたということにつきましては、私
ども誠に残念に思う次第でございます。
こういうふうにいろいろと御折衝申上げまして、成るほど鉄道
運賃値上そのものは原則として止むを得ない。併しながらこれだけのことを聞けということは、全部に勿諭十分な御満足を得なか
つたことは止むを得ないと思うのであります。相当いろいろと御懇談申上げて、力の及ぶ範囲の御考慮は申上げたのでございます。併しながら勿諭
只今お話のございましたように
皆さま業者の
関係、業界の
皆さまにと
つて見れば御不満のあることは止むを得ないのでございまして、
運賃は安ければ安いほどに越したことはないのでございまするから、もとより当然のことと思うのでありますが、
お話のございました
趣旨の殆んど大半が、と申しますか、殆んどすべてが
等級改正を考慮しろというように拜聽いたしましたが、この点について御
説明を申上げたいと思うのであります。
等級につきましては、これは一昨年の
昭和二十四年の第六臨時国会でございましたか、
貨物運賃の値上をお願いいたしました際に、
等級改正について強い御
要望かあ
つたのでございます。そこで
等級改正をするようにというような附帶的な御意向が非常に強く、運輸省といたしましても、
国鉄当局といたしましても、これを了承いたしまして、値上法案を通過さして頂きましたことは皆さんのおつしや
つた通りでございまして、ところがその際にもいろいろ申上げたのでありまするが、
等級改正と申しましても、これは非常に広汎な大きな仕事であ
つて、戰争後の
経済状態の変化と、それから異常な
インフレーシヨンというものがございましたので、なかなか
等級改正という大
事業はできないのだということを申上げたのでありまするが、
従つてやれば一年なり、二年の月日をかけなければできない。そういう点については実はGHQのサゼツシヨンもございまして、つとにその
基礎資料を集めて準備に着手し始めるというふうに申上げたのでありまするが、併しながら当時の
等級改正の御
要望は、特に例のドツジ
均衡政策とでも、財政
政策とでも申しますか、ドツジ予算の
関係上、非常に
経済界がデフレ傾向と申しますか、にな
つて参りまして、特段の
産業方面におきましては非常にやりにくくな
つて参
つた時代でございまするので、何とか
運賃値上を堪えられない部分に対しての検討をするようにというような御
要望が強か
つたようであります。そこで
等級改正については一面四月という目標を置きまして、かたがたその間には暫定的な
割引を一応
実施いたしまして、四月を目途に
等級審議会というものを
国鉄内に設置いたしました。これには国
会議員のかたがたからも代表をたくさん出して頂きまして、或いは
関係官庁、或いは学識経験者、或いは
関係業界の代表のかたがたのお集まりを願いまして、石川一郎氏を会長といたして審議いたしたのでございます。でその
結論はやはり本格的な
等級改正というものは、これは大変な大仕事である。これはかすに時日を以てしなければならん。差当
つて不
均衡と認められるものだけを是正するという
措置に出ようということで、いろいろ御研究に
なつた結果が昨年の四月一日に
実施いたしました
等級改正なのでございます。これによりまして取りあえず著しき不
均衡は一応是正されたものと考えている次第でございまするが、なお併しながら根本的な
等級改正についてはこれに引続いて研究するように、各種の
資料を集めているのでございます。何分にも凡百の
品目でございますので、相当
資料の収集に手間がかかる上に、なお一番困りましたことは、図らずも二十五年の六月から朝鮮事変が勃発いたしまして、やや安定するかに見えた
日本経済が果してどういう方向に向
つて行くかわからないというような状況で、
物価の値上りな
ども品目によ
つて非常にバランスを失して参りました。そういう点から一時、その推移を見て参りたいと、かような気持も動いたことも、これも事実でございます。それを
只今では怠慢であるというようなお叱りの向きもあ
つたようでありますが、併しながら私
ども考えまするに、やはり基本的な
等級を
改正いたしますのは、これは容易な仕事ではないのでございます。多少
経済情勢の推移を見究めるというようなことも必ずしも不当なことではないのではないかと思うのでございます。併しながら今日の
貨物の
等級がこれは戰前のものが原形でございまするから、従いまして我我か考えておりましたのは、決して十全な完璧なものとは勿諭思
つておりません。又如何に立派なものを作りましても、これは生きて動いておる
経済事象に対応いたしまして、皆様の全部の御満足を得るものができるとも思えないのであります。それにいたしましてもなお検討、
改正の
余地あり、特に
等級数或いは
等級間の開き等につきましても、或いは
品目の分類の方法等につきましても、そういう基本的なことから検討して
改正を要すべき点が多々にあるように私も存じておりますが、そういう点は決して研究をおろそかにしておるわけではございません。今直ちにこの御
要望に副い得ないというわけでございます。
だだその次に一つ御了承を願いたいと思いますることは、この
等級を御覽になります上におきましていろいろ誤解もあるかと思うのであります。それは一つはこの
貨物の
運賃は、これは御
承知のように実費主義と
負担力主義とまあ極端に申せば二つの考え方があるわけであります。で現在
我が国の使
つておりまする方法は、
貨物の
運賃制度は実費主義と
負担力主義とを適当に調整しておるわけでございまして、先ほどいろいろの
お話がありましたように、
価格に占める
運賃の
割合だけをと
つて御議論なさるのも如何かと思うのであります。そういうことになりますれば、お手許に差上げた表を以て御覽になりましてもわかりまするように、トン
当り数百万円に上るものもあれば、僅かにトン
当り二、三百円というような
価格の品物もあるのでございます。それに対して一律の定率のものが
運賃であるというようなことに相成ると、これは
鉄道輸送の原価そのものと全然隔離した一種の物品税とでも申しますか、というような恰好に相成
つてしまうのでありまして、これは甚しい極端な考え方ではなかろうかと思うのであります。で、やはり鉄道
運賃というものは、運送原価というものを中心にいたしまして、或る
程度の中でございます。例えば一級にいたしましても、五級の倍とか三倍という
程度しかこれはもらえないのが常識じやないかと思います。如何にダイヤモンドが高いと申しましても、ダイヤモンド一トン
当り数千万円の
運賃をとるというわけには参りかねるのでございます。やはりそこにおのずからの
負担力によ
つて調整いたします限度があるのでございまするから、
従つてそういう
意味で以てお考えを願わなければならんということと、いま一つは、これは
等級は凡百の
物資を或る一定の数にまとめるのでございまして、
只今のところは十一
等級でございまするが、仮に幾ら多くいたしましても、国有鉄道の前例を以ていたしましても、二十
等級以上多いことはなか
つたと思うのであります。二十
等級にいたしましても、とにかくたくさんの
物資をそれだけの
等級に区別するのでありますから、同じ
等級の中にもそれは肩を並べては少しおかしいと思うものもあります。勿諭例えば五級ならば五級の品物の一等上の最上位に位するものと、最
下級に位するものとの差は、五級の最
下級に位するものと六級の最上位に位するものとの差よりも遥かに高いものも確かにあると思います。併しそれを以て不合理と仰せられて頂いたのでは、これは
等級に区切りをつけるわけに行かなくな
つて参るのであります。そういう点は或る
程度、それをまとめます上において、どうしても一から十まで、きちんとどこを見ても不合理ではないというふうには行きかねると思うのでありまして、その点も御了承願
つておかなくちやならんかと思います。
それからもう一つ御了承願わなくちやならんのは、現在の
等級は、容積というものを
等級の中に組入れているわけでございます。
先ほどお話のございましたうちに御了承のかたもあると思うのでありまするが、やはりこれは、先ほど減トン扱いと申されたのでありまするが、減トン扱いと申しますのは、結局例えば十五トンの
貨車にいたしましても、容積の
関係で十五トン積めない、十トンしか積めない、或いは十二トンしか積めないというものに対して、今の
運賃制度で申しますると、十五トン分一車使えば、この
運賃を頂くわけでありますが、それに対して十二トンでよろしい、十三トンでよろしいという制度が減トン扱いでございます。昔は先ず重量で
等級を一応検討いたしておりましたので、その容積の調整を減トン扱いによ
つてや
つたのでございまするが、
従つて軽い物は、例えばトン
当りの非常に容積が大きい物、これは十五トン
貨車を使うようにな
つても、十トンしか積めないというものに対しましては、十トン分なり十二トン分なりの
運賃でよろしい、こういうことにいたしておりました。ところが戰争中いろいろ事務の簡素化、或いは職員の能率の低下というようなこともございまして、この
等級を
改正いたしまして、容積
関係のものをトン毎に落してしま
つたので、従いまして例えば五級のもので非常に容積が大きなものは、結局十五トン
貨車を使
つても、たくさん積めませんから、六級なり十級なりにする。その代り
運賃の計算は全部十五トンでするというようなやり方に改めたのであります。この容積
関係の換算が加わ
つておりますので、なお
等級を御比較になる際に、いろいろ不合理と思われるような点も多々感ぜられるのでありまするが、卒然としてこれを御覽になればそうでございまするが、どういうわけでそういうところでランキングしたのかということを十分御検討願いますると、多少御
了解願えるのじやないか。
それにいたしましても、勿論先ほ
ども申上げましたような、幅のあるところへ押付けるのでございまするから、右と左と見方によ
つては、それは不合理だとお感じになる点もなきにしもあらずと思います。この点につきましては
等級審議会等において、詳細な
資料を出しまして御
説明いたしましたように、もともと
等級としては五
等級に分けたのでございまして、それに対して、それ以下の六
等級以下は五
等級のバリエーシヨンなんでございます。いわゆる
負担力の
関係においては五
等級に分類している。それ以下はいろいろ社会
政策、
産業政策、或いは
国鉄の商業
政策である場合もあり得るのでございまするが、そういう各種の
政策的な
意味を加味した
等級が六
等級以下でございます。
農林物産の品物につきましては、もう見ればおわかりになる
通り、非常にその点の考慮を払
つているはずでございまして、相当この
政策的な
等級のほうへランキングしている分が多いのでございまして、
従つて初めから
等級内のところを差等をつけて、もつと低くしろという御要求は、誠に
国鉄として当然そうあるべきかと思うのであります。すでに
等級の全般におきまして、そうついうスタンド・ポイントに立
つて設定しているのであります。それを又更に下げろというお言葉でございますが、直ちには応じかねる点も多々あ
つたのかと思うのでございます。併しながら先ほ
ども申上げましたように、
等級改正につきましては十分検討もしなければなりませんし、各界……、
農林関係のみならず水
産業界、或いは鉱山業界、その他各方面からいろいろ御要求がございまするので、これは飽くまで、先ほ
ども申上げましたように、根本的な
改正を行うように十分注意はいたしております。幸いに
経済状態も余り大変動がないような見通しもついて参るようでございますが、至急
国鉄当局を督励いたしまして、十分なできるだけ多くの方法の
割合で、御満足を得る
等級改正ができますように督励いたして参りたいと存ずる次第でございます。その際に
当りましては、本日頂きましたような
資料、或いは御
意見、十分に斟酌さして頂きたいと考える次第でございます。