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参考人(松沢隼人君) 私は
中小企業振興会の松沢隼人でございます。本日は特に参議院の
通産委員会の先生がたが、年末を控えて非常に苦しんでおる
中小企業の
ために民間の声を聞いて頂く機会を与えられたことを衷心からお礼を申上げたいと思います。
私は、年末の緊急
金融対策と、それから次は恒久的な
金融対策、次は一般行政に関して
意見を申上げたいと存じます。お
手許に差上げてございます事項について申上げたいと思いますので、この点御許し願いたいと思います。差詰め年末を控えまして、どういうふうにお願いすれば金が出て、実際日もない年末の年が越せるか、これはもう抽象論や先の問題では、理想論では解決がつきませんので、実際
政府で肚をきめればや
つて頂ける実行性のある問題についてお願いを申上げたいと存じます。先ず年末
金融に関して緊急措置をお願いいたしたい、そして少くとも今日本中の
中小商
工業者の取りあえずの年末
資金といたしますれば最小限度三百億はどうしてもなければならんと思うのであります。そこでその三百億円余りの
資金を
一つこういう方法でお願いしたならばどうかと
考えておる点を申上げますれば、
資金運用部の
資金を
中小企業専門
金融機関即ち最末端の
信用金庫並びに
信用組合等が全国の各都市に大体できておりますので、これが数において六百八十を算しておるのであります。これを動員して
政府から三百億の金をこれに
一つ預託をしてもら
つて、そして公平に全国的にこれを流れるような措置を講じて、是非出して頂きたいと思うのであります。
金額は、この六百八十の機関に平均五百万円
程度を預託してもらう、その合計は三百四十億になるのでありますが、これを六カ月の
期間で預託をして頂きたい。
法律を作つたりいろいろやれば予算措置等が問題になりますが、一応運用部の
資金をくれるのでなくして貸付、いわゆる預託をする、預入れをしてもらうということに、
政府がこれは肚をきめれば実際できる問題だと思いますから、是非ともお願いしたいと思うのであります。理由といたしましては、極度の金詰りに苦しむ、
中小企業者の年末の危機を救う
ためには、少くとも三百億円余りの
資金を必要としますので、従来のやり方を改めて、
中小企業者に公正に実際に渡るようにする
ためには、従来の大
銀行、
銀行等に預託して、すでに八月十四日に百四十億の預託をされて、年末に一部これを
政府が回収したのでありますが、そういうことの
ために一層金詰りがひどくな
つておるのでありますが、このやり方を改めてもらいたいということは、実はこれは預託に際して大阪の
一つの例を申上げますが、或る
信用組合がこの預託を三カ月間の預託を受けたのでありますが、これを三カ月で貸付けて、三カ月に返すときに間に合わないと困るという心配から、
銀行にそれを預け放しで、遂に一銭も貸出さなかつた、そして利鞘稼ぎしたということが大阪、関西
方面の新聞に叩かれて問題を起しておる事実もございまして、どうも三カ月ぐらいでは、やつぱりその回収等が心配になりますので、やはり六カ月ぐらいの
期間をどうしてもこれは見て預けてもらいたい。これは
無尽会社等も
中小企業機関としてはあるのでありますが、
無尽会社は相当
資金量もあり、又この組織がやはり無尽に入らなければ出さないというような、やはりそこに抱合せがありまして、とかく問題がございますから、一層そのすつきりこれを実際にすぐ貸付け得るところの、やはり能力ある
信用組合を活用することが一番効果的であるという趣旨で、これを是非御採用を願いたいと思うのであります。すでに
政府はこれをやや大形の
組合についてはや
つておる実例がございます。それを少し拡張して頂きまして、やはり地区的な問題を考慮して、必ずしも大蔵省は
預金高が二億なければいかんとか、四億なければいかんとかいうような
考え方をやめて、やはり小さいケースでもその土地に重要な機関である以上、これをむしろ認めるというやり方で、六百八十余りの
信用金庫なり、
信用組合なりを活用して、紐付で流してもらうということにして頂くならば、三百億円余の金が実際に年末に役立つという見通しがあるのであります。是非ともそうした方法を
一つ第一案としてお願いいたしたいと思うわけであります。次の案といたしましては、それがどうもいろいろ問題だ、困難だという場合でありますならば、第二案として、
国民金融公庫に更に
一つ見返
資金等から六十億
程度を注入して、現在の今度の補正が
通りますと、九十億に
資金量がなるのでありますが、更にこれを六十億をプラスして百五十億として、
窓口の拡張を図
つて信用組合等を代理所として流すような措置を講じて、年末に是非間に合せて頂きたい。これは過日の
委員会でも
銀行局長がすでに、見返
資金から
中小企業の分を公庫に流すことを
考えておるということをすでに言明されておるのでありますから、これも可能なことじやないか。これは大蔵省が肚をきめればできることだ。何も
法律改正せんでもできることでございますから、この点特に御考慮を願いたい。もう
一つの方法は同時に商工
組合中央金庫に対して百五十億
程度の
政府資金を、割商引受或いは預託、まあどつちでも、要するに商工
中金の
資金量を百五十億注入してもら
つて、これも
一つ窓口を
信用組合まで
一つこれを便うことにして、年末に間に合せてもらう。そうすると公庫と商工
中金とを通じて、同じやはり三百億
程度が流れることになりますから、これを
一つ政府で
考えて頂きたい。この一案二案いずれかを採用して頂きまして、是非とも年末の危機を乗切る
ために御考慮をお願いいたしたいと思うわけでございます。
次に
中小企業信用保険法に基く特別会計、即ち
信用保険基金というものが十五億円積立てられてあるのでございますが、これがまだ
保険事故がありませんから、そつくり眠
つているわけであります。そこでこの十五億円の基金だけでも是非とも
一つ従来の
保険法で貸付けた実績に
一つ睨み合せて、この基金を預託するという方法を講じてもらいますならば、やはり
資金量の
関係等もあ
つて、この
保険法による
保険の貸付が相当遅々として進まないのでございますから、これを打開する意味にもなり、又これを奨励し、促進する意味にもなりますので、せめてこの基金だけでも預託の途を
一つ講ずるように御配慮を願いたい。まあ以上が年末に間に合うところの、
一つ実際間に合う
金融対策として御採用を願いたい点でございます。
次は、ややこれは恒久対策の面になるのでありますが、
中小企業の
金融体系の確立を是非
一つこの際お
考え頂きたい。
中小企業金融行政は、複雑多岐に亘
つておりますので、農林
金融のようにすつきり整備する必要があるわけであります。
中小企業金融は
一つにまとめて行く構想で、商工
中金をこの際農林
中金と同じ機構に
改正し、農協と同じように
信用組合の親
銀行としての系統
関係を確立して、商工
中金は卸をやる、直接貸しをせず卸をやる。
信用組合は小売として
中小企業金融に筋金を通すことにして頂きたい。これは現行でも商工
中金の傘下に
信用組合は入れることにな
つておるのでありますが、商工
中金の
資金量が余りに不足しておるので、実際は有名無実にな
つておるという
現状でございます。そこで今国会に商工
中金法の
改正が提案されておるので、この機会に是非ともこの点御考慮を願いたいと思う点でございます。
次は、
中小企業資
金融通法の制定の必要性についてお願いしたいと思うのであります。
中小企業の、産業の合理化を促進する
ために、長期且つ低利の
資金の必要があるので、農林漁業資
金融通法に倣
つて中小企業の振興の
ために特別会計を制定して、少くも農林漁業に出しておる額と同じ百二十億円を出して、我が国の輸出産業の中核をなし、輸出産業の八割の輸出実績を持
つておるところの
中小企業の育成増強を図
つて頂きたいのであります。輸出を促進して外貨獲得に役立たせる
ために産業の合理化は必要に迫られておるので、この際
中小企業資
金融通法の制定を切望して止まない次第であります。又本法の制定によ
つて、
中小企業金融体系が確立され、その裏付ができ上ることにも重大な
関係を持つので、この点特に
一つ御考慮を願いたいと思うのであります。
次は今、国会に提案にな
つて御
審議にな
つておるところの
中小企業信用保険法の
改正について申上げます。
中小企業金融難打開の
ために、画期的な立法である
保険法が昨年の十二月十五日施行以来約一カ年を過ぎた今日、年額百四十四億、これを月割にして十二億の枠があるのでありますが、十月末日で十六億円余りしか
金融機関から流れていない。この
法律が完全に運営され、
中小企業者の福祉となる
ためには、今回の
改正に際して左の点を
改正して頂きたいと思うのであります。現在提案にな
つておる
改正案は誠に結構でございますから、これはそのまま呑んで頂いて、そのほかに
一つお願いしたい点は、
中小企業信用保険基金法の
改正を行な
つて、先ほど申上げましたように、
金融機関の貸出の実績に応じて基金から預託する途を
一つ考えて頂きたい。次は
保険の貸付を六カ月以上の貸出に限られておるのでありますが、これを三カ月以上の貸付に引下げてもら
つて、又
保険金の支払を、事故発生後六カ月とあるのを三カ月に
改正してもらう。これは
保証協会がこういうふうにな
つておるのであります。これと同じことに直して頂ければ非常にこれが楽になります。次は
銀行の自由
保険を強制
保険に改めて、
政府と
金融機関との
保険契約によるところの枠は必ず消化する途を講じてもらいたい。次は
政府が
保険契約をする際、先ほ
どもお話がございましたが、大
銀行は
保険を
利用しないから、その範囲を
中小企業専門の
金融機関に限定するように
改正して頂く。即ち熱意のない大
銀行等は枠をや
つても無駄にいたしますから、これを集中してもらうように
改正してもらいたいという意味であります。次は
保険法の取扱機関に指定する場合に、
中小企業庁と大蔵省とが協議してこれをきめるのでありますが、これをきめるのに際して、どうも従来の
預金実績が相当高いウエイトを持
つていなければいかん、或いはその機関が
預金が少い、出資が少いという場合には、なかなかこの指定が困難である。熱意があ
つても困難、こういうことは非常に、ただ額だけできめるということは、非常にこれは公平をむしろ欠くのであります。地域的に事情を十分考慮して、やはり熱意のある経営機関に対しては、どんどんこれを指定するように
一つ大蔵省の方針と
中小企業庁の方針が
一つこの点で改められるように特に御処置を願いたいと思うのであります。
以上の措置によ
つて中小企業信用保険法が完全に運営されて、
中小企業金融の不安が除去される、立法の精神が活用されるので、この際各位の御協力を是非お願いし、この
改正に際してこの点を更に追加して修正等をお加え願えれば有難いと存ずるわけであります。
次は一般行政の
関係でありますが、最近不正
金融会社等が非常に続出しまして、
中小企業の金詰まりにつけ込んで、又法の盲点を衝いて、届出受理というふうな、あたかも大蔵省が認可しているかのごとき大きな看板を下げて、最近
金融機関の類似行為をするいわゆる
金融会社が続出して参りました。いわゆる掛金さえすればすぐ金を貸すというふうな甘言を以て加入をせしめているのであります。そこでいよいよ約束の
通り借入れしようとして業者が参りますと、いやあれは
預金じやない、あれは出資の、いわゆる掛金である、分割払である、よく証書を見て下さい、そこにあなた判こを押しているじやないかというようなことで、泣くに泣けない羽目にな
つて、金を借りることはできないことはおろか、掛金さえも戻してもらえない。どうしても戻してくれ、こう言えば、それでは損害金をよこせというので、大体二割、三割の解約手数料というものを取るという始末で、実に各地にひどい問題が絶えないのでございます。私の住んでいる群馬県の高崎でもそういう問題があります。毎日三十人も五十人も押掛けて揉んでいるのでありますが、もう当事者は逃げ廻
つて会わないというのでいろいろ問題を起しておるような事実もあるのであります。又月五分の有利で利殖をするというようなことを、非常に有利だというようなことで、投資信託のようなことを大新聞で堂々と広告して
資金を集め、そうしていざとなるとこれを返さない。これはまあ少し慾にはま
つてつけ込むのを慾で廻そうというのですから、そこへ預けることも、少し、預ける者もどうかしているのでありますけれ
ども、実際問題としてこれらの、事件にな
つているのもすでに
東京にもたくさん出ております。出資者を泣かしている詐欺的なものが相当あるわけです。まあ名前を挙げますと、鈴や
金融とか、日本
融資納税代弁会社とか、東邦殖産、大和
金融、日本
融資産業、いろいろな名前を使いまして各地に看板や広告が出ております。外交員が飛廻
つているという実状であります。
地方は
地方でそれが行われて、そうして高い金利で、これを
金融機関の、いわゆる正当な活動にまで障害を起しておるというようなことが相当起
つておるのであります。従いまして、商
工業者の被害も大きいからして、これの取締策を緊急に
一つ樹立して頂きたいのであります。先般大蔵省は、この点について、いや、もうなかなかこれはむずかしい問題だというので、
考えてはおられるのでありますけれど、御神輿を上げないのでありますが、こういう点について特に
委員会としてお
考えを願いたいのであります。そうした取締の対策と同時に、まあこれは根本的な問題としては金詰りが大きな原因をなしておるのでありますから、消極的な対策として都市
中心の
信用組合の育成、これと、員外貯金
制度の制限を廃し、員外貯金は扱
つてはいかんというような制限を撤廃してもら
つて、簡便な小形な機関として生きられる、育つような処置をや
つて増強の途を開いて、これに先ほど来申上げておりますような
政府資金を注入して
金融難打開の途を講じてもらう、こういうことによ
つて金融会社の不当な進出を防止することができるのであります。国民大衆に簡便な、正当な
金融の途を開くことによ
つて自然解決する対策の必要が切実なものがありますからして、この点特に重ねてお願いを申上げたいのであります。
次は
銀行法の
改正と
中小企業金融でありますが、大蔵省の調査でわかるように
銀行は
資金の公共性を失
つて営利本位とな
つて大口に
資金を貸付けて、
中小企業金融等には
資金を出さない。そこで大蔵省の方針の
通り大口
融資や不急不用のようなものの
融資をやめて、
資金の公共性が発揮されるような小口
金融に重点を置くよう
銀行法を
一つ進んで
改正する必要があると思うのであります。今回の
改正案がとかく
銀行界の
反対に会
つて非常に難航しておるというようなことをちらちら新聞で見ておりますが、この際
一つ政府を鞭撻してこれを断行してもらうようにむしろお
考えを願いたいと思うのであります。
次に
中小企業の減税対策でありますが、これは
資金とは違うのでありますが、実際問題としてこの重い
税金の
ために非常な苦しみをしておりますので、この機会にこの点も触れてお願いしたいのであります。国民負担の均衡から見て
中小企業者の負担は実に全体の七割に達しておるので非常に無理がありますので、
中小企業者の負担に堪える範囲に引下げるような点を特に御考慮願いたいのでおります。
政府の減税対策において
中小企業に大幅引下げを特にお願いしたい。所得税のいわゆる課税率、標準について三五%今回の国会に出てこれが変更されるようにはな
つておりますが、
中小企業者には二〇%
程度に課税率を、標準をきめてもらう、そうして資本力のある大
企業の課税率を大幅に引上げてバランスを取
つて頂き、更にこれは先般大蔵大臣が車中談等で発表しておりましたが、超過所得、即ち
地方税の制定の際に廃止に
なつたところの超過所得の
制度、即ち臨時利得税を復活するようにして、いわゆる取れる者から取
つて負担の均衡を図
つてもらうように御考慮を願いたいのであります。
最後に
中小企業庁の存廃論がときどき論議されているようでございますが、今回の行政整理に際して
中小企業庁を存置して内局に若しした場合には大
企業との対立行政は一体誰がするかということになるのであります。大体
中小企業と大
企業は対立的な立場にあるのでありまして、この行政庁がなくなるということは
中小企業の非常な不幸であります。どうにか
中小企業が目鼻がついて行くまで、少くとも
中小企業行政の一元化を期して行く意味からい
つても、是非とも
中小企業庁は
一つそのまま存置されて一層機能が発揮されるようにこの際むしろ御考慮を願いたい。
以上の八点につきまして特に
通産委員会の賢明な各位にお願いを申上げて、私のお願いを終りたいと存じます。よろしくお願いをいたします。