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説明員(
井上尚一君)
お答えを申上げます。第五條の二におきまして、
輸出信用保険の
保険事故と申しますか、その事由が列挙してありますが、これ以外に
バイヤーの一方的
キヤンセルによ
つて以て生ずる
損失の
カバーについて考えたらどうか、或いは
マーケツト・クレームについてはどう考えておるか、或いは
航路の
変更によ
つて以て生ずる
損失についてはどうかという御
質問でありますが、先ず第一の
キヤンセルの問題でございまするが、この点につきましては、私
どもも、かなり研究を加えましたつもりでございまするが、言うまでもなく、
我が国の
貿易業の健全な発展を来たして参るという点から申しまする場合には、エツキスポーター、
輸出者みずからにおきまして、海外の事情について十分な
調査を加え、或いは殊に
バイヤーの
信用状態についても、十分慎重に
調査を期するということが当然必要なわけであることは、これは申すまでもないのでありますが、そういう点から申しまして、
キヤンセルについて、即ち
契約成立後
当該輸送品の船積みまでにおいて生ずべき
キヤンセルに伴う
損失につきましては、むしろこれを今般の
保険制度で
カバーすることは、
却つて輸出業者が相手方の選択について安易に流れる傾向がないであろうかと、言い換えれば、この
制度について
却つて濫用の弊害が生ずるという点をも考えました結果、今回の
法律改正の中には
キヤンセルにつきましての
保険は一応除外して考えましたわけであります。なお次に、
マーケツト・クレームにつきましては、これは
保険の
方法で以てこの危険の
カバーを考えませずに、別の
方法としまして
クレームの適当なる
解決を考えて行きたいというつもりでおります。即ち
契約條項等につきましても、現在の
実情としましては、
クレームの
解決について必ずしも適当なる
條項の
挿入がないような
契約も実はかなり少くないのでありますが、今後はそういう面につきましても
十分指導等を加えて参りますると同時に、いわゆる
救済條項と申しまするか、そういうような
條項の
挿入乃至は
国際商事救済委員会制度の活用、そういうような
方法で以て、別途この
クレームの適当なる
解決を考えて参りたいと
思つております。それから第三点の
航路変更の問題につきましては、実は通産省の事務
当局等としましては、
輸出信用保険制度の改正について、もう少し大幅な根本的全面的な改正につきまして今鋭意研究中でございまするが、プラント輸出を対象とする
バイヤーの信用危険の担保につきましては、これは緊急を要するという
理由で以て、今般の改正の部分のみを切離しまして、この臨時国会に実は提案し、わざわざ御
審議を願いましたようなわけでございまするが、これ以外に事務
当局の案、現在の研究の内容等も、例えば輸出金融
保険と言いまするか、金融機関が
輸出業者に対して融資をする、そしてその融資が決済期に回収がないという場合に、金融機関に
政府のほうからよ
つて生じた
損失を
保険金として払うという輸出金融
保険というような構想でございますとか、或いは輸出促進費用の
保険、即ち一定の商品、一定のマーケツトにつきまして宣伝、広告、
調査費等を投ずるが、実際現実に或る商品を当該マーケツトに出しました場合に、その出しました経費の回収が十分できないというような場合のそういう経費についての
保険を考えるというようないろんなことを考えつつあるのでございまして、御指摘の
航路の
変更の問題につきましても、できればこの次の通常国会に、この
輸出信用保険制度の一層大幅な改正の内容にこれを盛込みまして、国会に提案御
審議を願いたいと、かように考えておるようなわけでございます。