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政府委員(
中島征帆君) 今月七日から入
つておりまする第二次
スト前後の頃から現在までの大体の
経過を申上げまして、今日におきまする今後の
見通しを申上げますというと、十一月二日にこの
交渉問題が停頓いたしましたので、
労働大臣から
中山中労委員長に自主的な
斡旋方をお願いいたしまして、二日に
中山委員長は
双方に対しまして何らか自分の
斡旋案を出したいがどうかというような
申出をいたしましたところ、
経営者側はこれを受諾いたしましたが、
労働者側は翌日部内の
会議を
開きまして、漸くこの提議を受けるということに
意見を決定したわけであります。それにつきましては、二、三の条件が付いておりますが、これは省略さして頂きまして、これに基きまして、十一月四日の七時四十分に
中山委員長が現在までに
各社から出されておりました
増額案、大体七月乃至九月の実績を基礎といたしまして、三井、三菱の場合に千二百五十円の増収を図るという提案がそれまで出されてお
つたのでありますが、それに七百円をプラスいたしました千九百五十円の増加というふうな案を出されまして、これを
基準にしまして
労使双方で自主的に
解決を図
つて参りたい、こういうことにな
つたのであります。この千九百五十円の
数字を
中心にいたしまして、
双方で
団体交渉に入
つたわけでありますが、これを
経営者のほうは、この
基凖をそこまで近付くというふうな
意味にとり、又
労働者のほうは、これは最低であるというふうな
意味にとりまして、その間に
かなり開きがありましたが、結局において
意見の一致を見ませんで、五日から……、先ほど七日からと申上げましたが、五日から七日までの七十二時間
ストに突入したわけであります。その間におきまして、
炭労側からも
賃金の
要求の案を又更に出しまして、
経営者側の
坑内五百二十円に対して五百七十円という案で以て
要求を継続しております。その後なかなかこの間の妥協が付かなか
つたのであります。で、一昨七日に
関係方面のほうで
双方の呼出しがございまして、速かに
争議の
解決を図るようにという申入れがございました。それぞれそういうつもりで努力をしておるという
程度の回答をして引上げたわけでありますが、更に昨日も又両方を呼びまして、速かにこの
交渉に入れと、それで
交渉の
経過を逐次報告しろというふうな話もありまして、現在、昨日の晩から
交渉を継続中であります。その
内容等につきましては省略いたしますけれ
ども、現在までの
状況ではすでに
常盤炭鉱が
坑内五百五十円という線で以て妥結いたしまして
ストを中止いたしましたが、
九州方面でも
経営者側の案も出ております。その間の事情から
見通しを付けますというと、大体今明日中には
解決し得るのじやないかというふうな
段階に至
つておるわけであります。私
どもは是非とも明日の
ストに入る前に片付けてもらいたいという希望を持
つておりますが、これはなお今夜の
交渉の
経過如何によるということになろうかと思
つております。これに関連いたしまして、どの
程度それでは現在までに
減産し、又それが如何に各
産業に対して
影響を与えるかということにつきまして申上げますというと、今日までの、九日までの
減産数量を推定いたしますと、総額で五十四万九千トン、約五十五万トンの
減産になります。それから更に明日から第三回目の
ストに入りますと、一日で約十一万五千トンほどの
減産になりまして、これが累加されて行くわけであります。今日までの五十五万トンの
減産の
影響というものは、現在現われておりますのは、それほど顕著ではございませんけれ
ども、たまたま十月の
出炭が
予定の四千五百万トンの
計画に対しまして、約十八万トンの
増産を来たしております。
従つて第一回の
スト、三十一日及び一日の二日分と、それに続く二日ほどの
九州の
電力スト、この分だけに相当する
程度のものは、十月分の
増産で一応計算上はカバーされたというふうな恰好にな
つておりまして、それを仮に差引きますというと、三十七万トン
程度が現在四千五百万トン
計画に対する穴とな
つております。御承知のように九月までの全国の
出炭状況は殆んど四千五百万トン
ベースに対しまして一〇〇%に近付いておりますので、今度の
スト分の
影響だけを
減産すると考えていいわけでありますが、大体三十七万トンぐらいにな
つておる。で、これが今後逐次
影響を現わして来るわけでありますが、第一回の
ストが、たまたまその先月分の
増産分でカバーされたというわけでありますかどうですか、二日分の
減産の
影響というものは急激には今日までのところ未だに現われておらんのであります。で、私
どもの心配いたしますのは、七日までで
終つた三日間の
ストライキがいつ頃どういう
方面に現われて来るかという点でありまして、これは山から
需要地に参りますのに、
九州から
関西方面に持
つて来る場合には三、四日でありますし、北海道からこちらに参りますときには約一週間かかりますので、
従つて四日、五日以後の
ストのものが今明日から
あと四、五日かけて出て来る。こういうふうなことになろうかと思
つております。勿論その間に各
需要工場等で
貯炭を持
つておりますので、本当に
工場の
運転に差支えが出て来るのは更にその
貯炭分だけ先に延びるわけでありますが、現在入
炭状況は、今日までのところはまだ
関西方面の
電力にいたしましても、この
東京の
ガス用炭にいたしましても、大体順調に来ておりまして、いつこれが
スト中の穴が
はつきり出て来るかという点が問題だと思うのであります。で、私
どもは現在までのところは、特に
電力用炭を
中心にいたしまして、これの
優先出荷と申しますか、そういう
措置について
関係業者の
協力を求めておりますが、その
関係から
電力用炭は比較的改良されつつあります。現在大
ざつぱな貯炭の
傾向を申上げますと、
電気が
東京、
大阪が比較的少いほうでありますが、約十日分から十一日分、その他のところは二週間分以上でございます。
九州は若干減
つておりますが、一週間
分程度にな
つておりますけれ
ども、これもずつと以前からこの
程度を
維持しておるわけであります。そういうわけで
電力は一時に比べて
維持日数は比較的殖えておるという
状況にございますが、
ガス関係が割合に
貯炭が少うございまして、
東京が今日のところ、約四日
分程度であります。
大阪も大体その
程度であります。但し
あと数日間は
配船の
計画がございまして、数日間にはまだ今までの
影響は現われて来ない。こういうふうな
見通しにな
つております。それからその他の
産業は比較的
貯炭を持
つておりまして、大体まあ普通が二週間から二十日、多いところは一月以上もございますが、そのうちで最も少いのが
セメント関係の
工場でございまして、数
工場の
貯炭を調べますというと、高低はございますけれ
ども、大体五日分前後というふうにな
つております。場所によ
つては
セメントあたりはかなり
電力用炭と競合いたしますので、窮屈になるところが出て来るのではないか。これはまあ特にこれからは気を付けなければならん点だと思
つております。それから
ガス用炭につきましては、これが切れますというと、炉の
維持に早速支障を来たします。又
一般の
家庭燃料もこれは特に大都市におきましては根元でありますので、非常に
影響力が大きいわけでありますが、
従つて仮に
ストが中止いたしました場合に、
ガス用炭、これは
東京におきましては、日に毎日三千トンも焚くというような大きな
数量でございますので、ほかの
方面からこれを持
つて来て埋めるということはなかなか簡単に行かんわけでございます。
対策といたしましては、
従つて現在附近にあります例えば
鉄鋼用の
工場にございます
原料炭を一時借りるとか、或いは
ガス工場でできましたコークスを
水性ガスに変えることによりまして、多少カロリーは落ちますけれ
ども、これで
ガス量の
維持を図る、そういうふうなことで以て繋いで行くということ以外にはないわけであります。結局最終的には
ストが
解決して全体が操業したときに、各
炭坑に対しまして、こうい
つたような
方面に対する最優先的な
出荷で以て従来の穴を埋めてもろうということをやる以外にはないかと思います。それから更に全般的にこれが
長期の
ストの
影響が及んで来まして、逼迫が非常に深刻になりました場合にどうするかということでありますが、一応の我々の見解を申上げますというと、この
影響が急激に来ました場合には、実は例えば
全面統制というようなことが一応問題になるわけでありますけれ
ども、そういうことをやる機構も人手も
資料も直ちには間に合わないわけでありまして、
従つてそういう場合には殆んど
対策はなしということを言わざるを得ない。ただ
現状程度で収まれば、それにしても数十万トンの
減産がありますので、その
影響は逐次出て来るわけでありますが、その
影響の最もひどい、又
一般に
影響するところの最も大きい部分に対しまして、逐次
優先配給等の手を打ちまして、だんだんこれをまあ小さな範囲内で収めて行くように進めたい、こういうふうに考えるわけであります。併しながらこの穴が大きければ大きいほど、最
重要産業に対する
優先配給をした結果は、更にその
次順位の
産業に
影響しますし、そうすると、そこまで手を伸ばし、更にその次に及ぶということで、だんだんこれは広く又深く
政府の干渉というものが拡がらざるを得ないことになるのでありますが、そういうふうに
統制措置というものが法的にせよ、或いは実質的な
方策に委ねるにせよ、だんだんひどくなりますことは、決して結果において完全なものを望むわけには参りません。又いずれにいたしましても、
減産そのものは
影響というものを如何に統制しても完全にこれでカバーすることができないのでありまして、少いものを少いながらに如何に大体の調和を破らないで使うかということでありますので、非常にむずかしいことになろうかと思
つております。
従つてそういう場合にはやはり輸入でありますとか、
代用燃料でありますとか、そういうものを考えなければならないけれ
ども、これも急速に参らないということであります。この際一層
ストというものが大きくなり、且つ
減産の
数量が激しくなりますというと、
現状直ちに如何ともしがたいような
事態が来ないとも限らないということを実は憂慮いたしておるわけであります。ただ先ほど申上げましたように、昨日、今日におきまして、比較的
交渉が近付き、且つ進んでおりますので、恐らくは第三波に一時入りましても、これが更に継続するということでなくして、
解決するということを我々は希望しておるわけであります。