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参考人(原口幸隆君) 要点だけ御
説明申上げます。世界における金政策の流れについては、特にアメリカの金政策というものがこれは重点的に
考えられますが、各国の保有高の約六四%を持
つておるアメリカとしては、これはインフレの抑制のためにも、或いはアメリカ
経済が世界
経済に占める地位から言
つても、金の価格を上げないということが政策の大綱的なものにな
つておりますので、一オンス三十五ドルの公債というものがきめられて現在にずつと及んでおります。その後
一般物価は三倍にも上
つておりますが、非常にアメリカの産金業者としても非常に困難を来しておる。従
つてアメリカは金価格維持のために国際通貨基金や、対外援助などの圧力を利用して、各国の産金が減少するのを意に介しないというような非難さえ出て来ております。その他の諸国の金政策にいたしましても、世界の産金量の大半を擁しております英帝国、南阿連邦、カナダを含めまして、各国はアメリカの政策に鋭く対立して、非常な折衝をし、アメリカ並びに通貨基金に対して各種の折衝の結果、各国においてそれぞれの特殊な政策をとられております。
その内容について簡単に申述べますと、カナダにおいては補助金交付或いは租税減免
電力料の割引、或いは為替レートの切下げというようなことがとられておりますし、それから南阿連邦においては二重価格制度がとられ、租税減免の途が講ぜられております。それから濠州においても補助金の交付の制度があり、租税減免、
政府の融資がされております。或いは南ローデシアとメキシコ、コロンビアにおいても、補助金即ち二重価格制度のいわゆる産金の補助政策がとられておりまして、そういうように各国においては、それぞれの
立場において自国の産金政策について非常に具体的な補助政策がとられて、そうして漸くまあ世界的に自国の産金問題を処理しているというようなのが現況であります。
それに対して現在の
国内における
政府の施策の点については、金山が戦争中に金山整備によ
つて、製練、選鉱
設備などを撤去転用されて、殆んど全滅に帰しました。それを戦後にな
つて金属鉱山の労資が協力一体して復興せしめたのでありますが、
政府は戦後金山復興に積極的な努力を払わなか
つたばかりでなく、金買上価格を極めて低くすることによ
つて、金山復興を阻害して来たというように
考えられます。例えば一例を挙げれば、戦前における
一般物価を一〇〇とすれば、昭和二十四年においては、
一般物価は約二〇三という
数字を示しておるのに対して、金の価格は僅かに一一一というふうに半分であります。
以上の金属鉱業の
現状並びに世界の各国のと
つておる産金政策の外貌、或いは現在の
政府の施策という点から
考えて、我々の要望といたしましては、第一に金価格の引上げをお願いいたしたい。これは
政府買上価格の引上げは国際的な
関係もあ
つて不可能でもありましようが、加工用金については、自由処分が認められておりますので、これによ
つて平均価格を大巾に引上げるように努力すべきである、こういうふうに
考えます。二十六
年度五・七トンの
生産に対し加工用金の
割当は二トン前後でありましたが、加工用金の
需要は今まで抑制されていた
関係で、非常に大きく非常に大であり、而も工芸品などは
輸出によ
つて外貨獲得も十分可能でありますから、産金量の半分を自由処分し得るように要請したいと思います。加工用金は
相当割高でも、完成品中に占める比重は非常に僅かでありますから、むしろ
操業度の拡大安定によ
つて吸收し得るばかりでなく有利であるというふうに
考えられます。併し加工部門における雇用量の増大或いは失業
状態の解消というような副次的な効果をももたらすというふうに我々には
考えられるのでございます。で加工用金の価格はどのぐらいの
数字が妥当であるかと言えば、金山の採算可能な点を
中心に
考えると、大体六百円というくらいなところでありますが、通貨用と加工用半々とすれば、平均価格は五百円となり、現在十五グラムが採算可能品位であるのに対して、これを十二グラムまで品位を低下し得るわけであります。従
つて十二グラムという高品位では金山の壽命が短くなることを防げないし、増産も十分期しがたいが、これは直接
生産面に対する補助育成によ
つて補い、価格面の操作はこの
程度が最低限度であるというふうに我我は判断しております。
それから第二に銀の価格統制撤廃又は国際価格に基く
政府買上げをお願いしたい。これは現在のニューヨーク相場は八十八セント一キロあたり一万二百円でありますが、一万五百円の相場もあるくらいでありまして、銀の自由処分を認めるか、或いは国際価格によ
つて買上げるか、いずれかによ
つて金の附随として生れて来る銀の問題を処理してもらいたいというわけであります。
第三には、探鉱奬励金の増額の問題でありますが、現在の認められております六千万円では
不足でありまして、最低一億五千万円を必要とするというふうに計算上
考えられます。これは是非二十七
年度の予算において計上して頂きたいというふうにお願いするわけであります。
第四には、金山の
設備費の補助であります。永年に亘る低物価政策及び戦時中の金山整理による犠牲から急速に金山を復興せしめて、金増産を図るために青化製練所、浮遊選鉱場、送電線設置などに要する経費に対する補助金を最低二億円を支給されたいというのが我々の希望であります。
最後に融資斡旋についてでありますが、閣議決定による十トン
生産計画に基きまして、開発銀行又は見返り
資金の融資斡旋を実現して頂きたいというのが我々の最後の要望であります。なおこの点につきましては二十五
年度の産金復興対策というものが閣議決定としてなされておりますが、その際における見返り
資金の融資の十五億円というのが決定されたはずでございますが、実際には殆んどこれが実現されていない、こういうような
状態であります。更に先ほどの世界の産金政策という問題と連関いたしまして、戦前においては
日本において産金奬励法という産金対策についての保護法がでございましたが、保護法があ
つて世界各国がと
つておると同じような
程度に産金問題についての補助があ
つたはずでありますが、戦後現在の金山窮境の
立場において、更に戦前における産金奬励法の趣旨を活かして再び金山の復興ということをひとり鉱山労働者のみならず、国家的な
立場よりも我々の念願を取上げて頂きたいということでございます。以上であります。