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参考人(辻原弘市君)
只今御紹介を頂きました
日本教職員組合の辻原でございます。先ほどから種々具体的な計数を挙げられまして、今回の
給与切下げの問題につきまして、
公述人のかたがたから詳細に
亘つてお話下さいましたので、できるだけ重複いたしました部分を省きまして多少変つた面からこの問題について意見を申上げてみたいと存じます。
先ず私は
結論から申しまして、今回の
政府が
決定をいたしまして国会に提出いたしておりますところの
平衡交付金の
給与財源計算におきまして、これを切下げ
平衡交付金を極めて少額にとどめているという点につきましては、誠に私
どもの立場からいたしましても不当極まるものである、かように考えておるものであります。前の
公述人のかたからも述べられておりますように、当初
地方財政委員会が要求を出しておりました三百七十五億の
平衡交付金の際には、
給与の算定に当
つては
地方財政を主管いたしますところの
地方財政委員会におきましても、決して
国家公務員に比して
地方公務員は高いという論はと
つておらなかつたことは御承知の
通りでありまして、逆に低いという立場を堅持いたしておつたことを私は記憶をいたしておるのであります。又私
ども主管いたしておりますところの
文部省におきましても、この問題に関しましては決して高いという論を主張いたしておらなか
つたのであります。然るに最終的な勧告におきましては、これを切下げて
財源計算をいたしておるのでございます。このことにつきまして、私
どもが再三再四
地方財政委員会の野村
委員長にも折衝いたしました際に、その答えといたしまして次のように述べられているのでございます。と申しますのは、決して現在におきましても
地方財政委員会としては
国家公務員に比して高いという論を持
つておらない。ただ現在すでに
平衡交付金が百億という極めて少額にとどめられたために止むを得ない
措置としてそれを採用しておるにとどま
つておるのだ、こういう答弁があ
つたのであります。なおこの点につきましては、過日の本院文部
委員会におきましてもその点の
委員長の答弁が記録にとどま
つておるはずでございます。以上のごとくこの問題は単にその面だけをとらえて見ましても、決して正確なデータに基いた計数上の査定から生れて来る問題ではなくして、いわゆる
平衡交付金を少額にとどめようとする政治的な方途から生れたものである、私
どもはかようにこの問題を把握いたしておるのでございます。
然らば次に一体この
大蔵省が高いと断定をいたしておりますところの調査それ自体の方式なり、或いはそれによ
つて出されたところの
結論が果して妥当なものであるかどうかという点についてでありますが、私は先ず
最初にこの高い安いが論じられておる問題の焦点が一体どこにあるかという点についていささか私見を申上げてみたいと思うのでありますが、そもそもこれは午前中に
公述をせられました
公述のかたからもその意見が出ておつたと思うのでありますが、
給与を比較する場合に、単に
本俸のみの比較を以てこれが
給与全般の比較である、こういう
結論が出し得るものであろうかという点であります。少くとも私は
給与を比較する場合には、その個人が受けるいわゆる
給与と称されるすべて万般に
亘つての内容全体のトータルにおいてこれを比較対照を試みるのでなければ、正確な真の対照比較にはならないということを考えておるのであります。一例を
国家公務員の場合と私
ども地方の教
職員の場合を例にとりましても、
本俸或いは
勤務地手当、家族手当といつた面についてはそれぞれの種類がございますけれ
ども、ところが超過勤務手当という例を取上げてみました場合には、
教員におきましては、現在私
どもの町村によりましても、少くとも一日十時間以上の勤務をや
つておるわけでありますが、それに対する超過勤務手当というものは何ら支給せられておらないのであります。又旅費等の面を眺めてみても、現在教
職員におきましては国が定めた線が四千円でございますけれ
ども、それが実際
地方へ行
つて各個人に渡る場合におきましてはいろいろの差引がありまして、実額は三千円乃至は二千円というふうに極めて少額にとどま
つておるのでありまして、これを以て
国家公務員に比します場合には、その少くとも数倍、或いは十数倍に上る旅費額というものが使途されておる例をまま私たちとしては見るのでございます。かように極めて少い例を上げてみましても、
本俸のみの対比を以てこれをあたかも
給与総額全体の比較である、かように論じますことは、たとえを申上げますと、二匹の動物を比較検討いたします場合に、その動物の大きさを頭で以て計
つて、これはこの動物の大きさであるといういわゆるおとぎ話のような話に私は帰着するのではないか、かように考えておるものであります。
第二に、ではこの調査の
結論自体がどうであるかという問題でございますが、この点につきましては、いろいろ具体的な先ほどから各県の状況もその都度申されておりましたのでくどくは申しませんけれ
ども、これを基本的に眺めてみますならば、やはり対比する
国家公務員の側におきましても私は問題がある、それはいわゆる理論的な法
通りのきつちりとした切替え方式をとるところに必ずしも
国家公務員の実体の
給与を現わしておらないという点が、先ず
国家公務員の場合に問題があると思うのであります。
次にそれに対比されるところの
地方教
職員及び
地方公務員の、
結論でございますけれ
ども、これはお手許に
大蔵省が調査をいたしました調査の資料を提示いたしておりますので十分御承知のことと思いますが、僅かの数を以て抽出いたしまして、而もその
計算におきましては曾
つて千六百円
ベース当時にそれぞれの各県におきましては、従来の既得権を尊重するという立場におきまして、当時の
給与を主管いたしておりましたところの
給与実施本部との間の了解事項として認められたところのその県の妥当な
給与をもこれは省いて
計算をしておるところに、いわゆる合法的であるはずの
給与が逆に切下げられておるのでありまして、そういう点におきましてこの
地方教
職員並びに
地方公務員の
給与の実態というものを現わした
大蔵省の調査というものは、非常に統計的に申しました場合には僅かに七万名
程度の数で以て厖大な
地方公務員の全体を現わしておるというところに問題がございます。その
計算方式におきましても先ほど申しましたように合法的な部面までを切下げておるという
計算方式が非常に問題なのでありまして、これが具体的に現われます場合には、いろいろ
知事会議或いは先ほどの
公述人のかたからも言われましたように、各県において必ずしも
勤続年数或いは学歴を対比される場合におきましても正確な
数字が出ておらない、こういう点に帰着するわけでございます。
次の問題でございますが、
政府はこの
財源計算に基きまして、なお
地方に国が
措置いたしました
財源計算の方式に則
つて具体的な
給与措置をもそれに従わしめよう、かかる意図を以てこの
切下げ措置の
閣議決定をいたしておる点が非常に重要な問題でございます。なおこの十一月七日の
閣議決定に基きまして、明くる十一月八日に
地方自治庁から通牒として各都道
府県に発せられましたこの通牒が非常に現在
地方では問題を起しておりまして、特に私
ども教
職員の立場におきましては、少くともこの通牒によ
つて具体的に今度の
ベース改訂においては三百七十五円も差引かれるのであります。こういう未だ曾
つて見ないような問題が出ておるのであります。少くとも
地方自治の本旨に立脚いたしましたならば明らかなように、
地方には
地方の実情とそれに伴う独自の政策が存するのでありまして、国がみだりに干渉すべきではないということは当然であります。このことは今更私が喋々申上げるまでもなく、先般来から行われておりますところの
地方行政調査
委員会議の勧告にもその趣旨が明確でありまして、国と
地方公共団体の権限というものはそれぞれ法に従うところによ
つて独立をしておる、みだりに
地方に対して国が主管すべき事項を委任する等のごとき行為は、これを避けなければならない、或いは
地方自治を拘束するがごとき行為は、これを厳に戒めなければならない、かような事柄は常に
地方自治の尊重という立場におきましていろいろの機会にとり上げられ、戒められておられる問題でございます。従
つて今回のこの問題も如何に
閣議決定の内容がそうではないとかいうように否定をいたしましても、現にその影響するところが
現実の問題としてそこに
給与の具体的
措置に介入しようということに相成
つておる点を考えました場合には、明らかにこれは
地方自治の本旨にもとるものでありまして、
地方の
措置すべき権限をも拘束をしておると、かように私としては論断せざるを得ないのでございます。このことは更にくどく申上げますれば、画一的な
中央集権制というものを非常に強化しようというふうな具体的な現われであると、かようにも把握できるのでございます。特に
給与に関しましては、
地方自治法の第二百四条及びその施行規定五十五条の第二項においても明らかにせられておりますように、国の
給与の例に従
つて地方の条例がきめるということを規定せられておりましたし、又昨年の十二月に制定せられました
地方公務員法の趣旨の中にも、その二十四条において明らかとな
つておりますように、生計費並びに国及び他の
地方公共団体の
職員、並びに
民間事業の従事者の
給与その他の事情を考慮して、当該
地方公共団体の条例において定める、こういう旨を明記いたしてあるのでありまして、更に教
職員に関しましては、教育
公務員特例法の二十五条の五に同様の趣旨が明確にせられているのであります。ここの
地方公務員法に言うところの趣旨は、他の条件を考慮しつつもその
地方の独自性というものを固持しなければならない。そうして
公務員自体の生計費を考慮しつつ十分その地域の実情に合うごとく
給与を
決定する必要がある。単に国にすべて準拠すべきものであるというふうな事柄は述べておらないのでございます。特に国に人事院の存在を認め、
国家公務員に対しまして
給与の勧告
措置を行わしめているごとく、
地方におきましては、この
地方公務員法において
人事委員会を設置いたしまして、その
地方独自の勧告を行い、
給与の
措置をとる権限を与えているのでございます。このことは当然
地方にはその
地方に適合した
給与の
措置の必要であることを認め、公国画一的であるということを排除いたしておるものと私は考えるものでございます。従
つてこの
人事委員会の勧告に先立
つて、国が
地方に
給与の
措置云々と述べるがごときは、これはすでに
地方公務員法の趣旨を没却いたしているものでありまして、
人事委員会の存在というものを空文化いたしているものである、かように考えざるを得ないのでございます。更にひるがえ
つて従来千六百円
ベース以来順次二九、三七、六三又は現在の七九
ベースと
給与改訂が累次行われて参りましたけれ
ども、その間にありまして
法律的
措置として再
計算の
措置をとられました以外には、かかる通牒で以て
地方を拘束するなどということは未だ曾
つて例を見ないのでございます。而もそれぞれ国に準拠して
地方が独自に行うということに何らの支障も何らの不都合も生じなかつたというのが、現在までの
給与の取扱に対する経過でございますが、現在ではなぜかかる
措置をあえてとるに至つたかという点については非常に理由が不明確なのでございます。勿論
地方財政の
地方財政の窮迫
状態を救うためにということを述べておりますけれ
ども、併しながら
地方の自治を侵害いたしまして
地方の政策をゆがめて、そこに何の
地方財政の救助であるというようなおよそ私は本末を顛倒いたしているものであると、かように考えざるを得ないのであります。従いましてこのことは単に交付金の
増額にとどめるための、先ほ
ども申上げました
通り政治的な意図であり、而も何とか交付金を抑えようという彌縫策に出でた愚策である、かように考える以外の何ものも出て来ないのであります。
次に先ほど申上げました
地方自治庁の通牒なるものでございますが、すでに十分内容の点につきましては御承知のことだと存じますけれ
ども、ただこの通牒の
意味それ自体が非常に不明確でございまして、而も意図するところは明確でありますけれ
ども、文章から来るところの解釈については種々な解釈がなされるということは文章表現を見れば一目瞭然でございます。従いまして私
どもといたしましては、過日
地方自治庁の鈴木次長に対し直接この問題に対する折衝を行な
つたのでございます。と申しますのは、内容の点について如何なる見解に基いて出したか、こういう通牒を発した鈴木次長の具体的解釈を得るためにや
つたのでございます。その結果鈴木次長が責任のある答弁と、又私
どもと最終的に一致いたしました点をそれぞれ文書に取交わした点を申上げてみますならば次のように述べているのであります。文書により私
どもは確認をいたしておりますのでそれをそのまま読上げてみたいと思うのであります。
第一は、この通牒は国の
財源措置についてこれを明らかにするためのものである、これが第一項の確認事項であります。第二項といたしまして、従
つて文中の
措置することというのは国の
財源措置を
地方公共団体に明らかにするという
意味である。即ちこの通牒に記載された以外に附加して
措置することはない。この
意味は、
閣議決定の通牒の内容の中に次のような文言があるのでございます。来るべき
地方公務員の
給与改訂については左に掲げる
措置をとること。この
措置をとることの
意味が今申しましたように
財源計算の内容を明らかにするということである。それ以外に何らの
措置をも考えておらない、従
つて今後この問題に対しては改めて通牒を発するとか、更に現在私
どもがや
つている解釈以上に大幅な解釈をするとかということはしない、こういう点を文書により確認いたしたのでございます。
第三点といたしまして、以下その通牒の文面の中に次のような文章がございます。今回の
地方公務員の
給与の改訂について、国がすべき
地方財源措置は
地方公務員の
給与と
国家公務員の
給与基準との間の不均衡の調整を期待し、それを前提として
計算されるものである。かような
意味合いの事柄が記述せられておりますので、その
給与の不均衡乃至調整を期待しということは如何なる
意味であるか、この点に対しては次のように確認をいたしたのでございます。ということは、国が
財源を
措置する場合についての記述であ
つて、
地方の
給与措置面についての記述ではない
意味は、
給与の調整を期待するということは、決して
地方にそれがや
つてくれるであろうという期待の
意味ではない、いわゆる国が
財源を
措置する場合に、
措置すること自体が調整を期待したことで、かように
地方の問題に触れているのではないということを言明をいたしたのでございます。
以上のように、この点につきましての解釈が鈴木自治庁次長、並びに担当課長であるところの佐久間課長及び補佐官立会の上で確認をいたしたのでございますが、若しこの
通りであるとするならば、私
どもとしては非常にこの通牒自体に対しまして、又
閣議決定自体に対しまして大きな疑問を持つものであります。と申しますのは、以上のように単に
財源計算の内容において明らかにするという
意味合でありますならば、何故にあえて閣議においてそういうことを
決定する必要があるか。又自治庁通牒においてかようなものを都道
府県知事に発しなければならない理由が存在するか。
財源計算について明らかにするということでありますならば、すでに十月十九日に
地方財政委員会においては詳細な
大蔵省の
財源計算の基礎を都道
府県知事に通牒で以て説明いたしているのでありまして、あえてそのことについて
地方行政の主管である自治庁が通牒すべき筋合のものではない。こと
財源計算の問題でありますならば、主管は
地方行政委員会であ
つて自治庁の権限外のものである、かように考えますので、この点について何が故に
意味合のない通牒を出す必要があるのであるかという点について、誠に私
どもとしては不可解なことである、かように考えているのでありまして、従
つて自治庁が私
どもに言明をいたしました内容とするならば、かかる通牒は不必要であるという点について、我々としてはこれを撤回すべきが至当ではないか、かように考えているのであります。
更に又この問題に対しまして、決して
地方にかかることを拘束するものではない、従
つて地方公務員の
給与を切下げるというふうなことは考えてないのだというふうなことをいろいろ理由をつけて申しますけれ
ども、この点につきましては先ほどから私が種々申上げておりますように、如回に抗弁をいたしましても、実際問題としてそれの効果が現われて
地方の自治団体を拘束をいたしているという点から考えてみました場合には、明らかにこれは現在の教
職員並びに
地方公務員の
給与の既得権の侵害でございまして、断じて私
どもとしては許容できる筋合のものではない、かように考えるものであります。先ほ
ども申上げましたように、それぞれ各人の
給与と申しますものは、従来いろいろな法的
措置が行われましたけれ
ども、ちなみに三千七百円
ベース当時の、いわゆる闇
昇給云々の問題が提示されました場合においても、それが都道
府県の
知事の認める場合においては決して闇ではない、明らかに合法的な
給与措置であるということがその後の人事院の公開審査におきまして明らかにな
つているのでありまして、かように
給与の既得権というものは如何なる場合においても非常に強く尊重せられて来たのが現在の
給与の状況であります。如何なる理由に基きましても、従
つて根拠不明なかかる
意味合で以て死活に関する
給与を切下げるなどということはこれは到底
公務員自体として忍びないところでございます。又およそかかる
措置は未だ曾
つて見ないところである、かように私は考えるものでありまして、特に物価が上昇いたしましてインフレが進行しているさなかにおきまする
措置として引上げるということならいざ知らず、切下げるなどということは、如何なる国の歴史にも私はおよそ例を見ないであろう、かように考えるものでございます。而もこの問題に対しましては、私
どもとしてはかねがね非常に問題であると考えましたので、種々意のあるところをそれぞれの主管大臣に対しまして、特に
地方自治庁の岡野国務大臣に対しましては、
閣議決定せらるる直前の七日に種々意見を申述べまして折衝をいたし、その結果決して既得権は侵害しない、
給与は切下げを行わない、かような言明を私
どもに与えたのであります。併しながらその翌日にその私
どもに対する公約を一擲いたしまして、この
措置を
決定し而も通牒を発したということにつきましては、誠に私
どもとしては遺憾に堪えないところであります。又
給与の額の
決定の問題でございますが、私は法に定められたこの
給与の額の
決定と同時に、従来
給与と
財政というものは、その
地方の教育
行政なら教育
行政という上に非常に大きな影響をもたらしているのでありまして、その点において
給与が
一つの大きな
意味の政策である、かように考えられているのでありまして、例えてみまするならば、山間僻地を多く持つところの
地方等におきましては非常に多数の定員を要するという建前から、
給与の問題よりもむしろともかく定員だという考え方におきまして非常に多くの定員を無理して抱えている所もあります。又
都市におきましては、他産業と或いはその他のいろいろな企業との振合いから
給与がそれらに比較して低い場合におきましては、優良な教
職員が確保できないという立場において、生計費とは若干離れた見地におきましてもこの点に対して均衡をとるべく努力して
給与の額を引上げている例が少くないのでございます。かようにこの
給与の点におきましては、単に
本俸が高い低いなどというような観点で
決定せらるる筋合のものでないということは、すでにいろいろな例に徴して見ましても明かなところでありまして、これらは少くとも法に定められた点と加えまして今申しました政策、
地方の産業経済機構、地勢、風土といつたすべての点にこれは関連を持つものである。かように私
どもといたしては把握いたしているのでありまして、画一的であるというがごとき考え方は根本的に誤りである、それ自体が非常に実情にそぐわないものである、かように考えているものであります。
又
給与の面につきまして今回国の
基準云々ということを非常にやかましく申しているのでございますけれ
ども、若しそのように国の
基準というものをあえて云々するならば、単に私は
給与の面にとどまらずすべての問題に言及しなければならないのではないか、かように考えるものでございます。例えば今申しました教
職員の定員を一例に挙げて見まするならば、現在教
職員の定員は、国で定めた
基準は公立の小学校におきまして一・五、中学校におきまして一・八でございます。ところが最近の
地方の状況から見ました場合に、特に
平衡交付金の少額というものが影響して、
地方財政が逼迫するにつれまして漸次この国の
基準を下廻りまして、現在ではすでに国の
基準を下廻ること二万名の多きに上
つているのでございます。若し国の
基準云々を主張するならば、私は特に教育の面におきまして重要な定員について国はその
基準を維持すべく
措置をしなければならないのではないか。従いましてこれは通牒を発するということも、あえて
給与の問題と考え合せてみた場合に不自然な
措置ではない、かように考えるものでございますが、恐らくこの面については何らの用意もしていないであろうと考えるものでございます。併しながらかくのごとく単に一方の面だけを取上げまして、他の一方の面においてはそれを捨て去つたということは、国の政策といたしましても極めて首尾一貫しない方法である、かように私は考えざるを得ないのでございます。
最後に私は、現下
地方公務員並びに教
職員が置かれている立場というものをよく考えてみて頂きたい。即ち公けに奉仕するという立場に置かれておりますところの
公務員は、昨年非常に私
どもといたしましても問題としました
地方公務員法の制定に伴いまして、幾多の基本的人権の制約がなされているのでございます。又同時に職務に専念する義務というものを負わされているのであります。ところが半面その教
職員を
公務員を安んじて職務に専念せしめるところの
給与の
措置面につきましては一体どうな
つているか。論ずるまでもなく明らかでありまして、現在においても七千九百円という極めて低い
ベースに釘付けせられてお
つて、朝鮮動乱以来の少くとも
政府の発表によりましても三〇%に近い物価の上昇の中に、殆んどその生活状況も破綻を来さんばかりの状況に陥
つているのでありまして、かかる
状態に放置して置きながらあえて義務面のみを拘束しようとする、そういう現在の
政府の政策に対して私は非常に大きな憤懣を持
つているのでございます。特に今回
政府が国会に提出をいたしておりますところの予算案を見ました場合に、予備隊の強化を含むところの巨額な非生産的経費の支出と相待ちまして、資本蓄積を意図いたしますところの厖大な投資をや
つているにもかかわりませず、こういう状況に置かれておりますところの
公務員に対しては、僅かに千五百円の
給与の
措置しかとらないという方針のみをしか
決定いたしておらないのでありまして、かような点におきましても私
どもとしては非常に残念に思うのでございます。又この
措置が単に
国家公務員だけでありまして、
地方公務員に至りましてはすでに本朝来、又従来から本
地方行政委員会が多大の資料と多大の日数を費やされまして検討いたされました
地方財政の実態に対して大きく
増額を要望されておりまするところの
平衡交付金に対しましては、僅かに百億という少額で以て打切
つて、これを以て
地方財政の穴埋めと称して事態を糊塗せんといたしているのであります。かかる政策の上になお且つ今度は先ほど縷々申上げました切下
措置を行わんという、かような政策がそもそも
公務員に対する私は
給与政策であ
つて然るべきかどうかという点について非常に疑問を持つものでありまして、ここに反大衆的な政策に終始をいたしているという予算の基本的な性格が窺われるのではないか、かように考えているものでございます。私
どもは今後少くとも当面の問題といたしまして人事院が勧告をいたしました一万一千二百六十三円の獲得に向
つて全力を挙げて闘
つて行きたい、かよう考えているものでございますけれ
ども、当
地方行政委員会の各位におかれましてもどうか私
どもの意のあるところを十分御賢察下さいまして、この最低一万一千二百六十三円の実施とそれに伴う
平衡交付金の所要
財源を是非確保して頂きたい、かように念願いたしまして、なおそれらに対する計数的な他の資料はお手許に配付をいたしてございますので、又機会を見まして詳細御説明をいたしますとしまして、本日の私の
公述はこれを以て終りたいと存じます。