○
政府委員(
神戸正雄君) 御
説明申上げます。
地方行政調査委員会議は、先に昨年暮におきまして国と都道
府県、
市町村等の
事務の再
配分に関する全体の要綱を
勧告して
提出いたしたのであります。その節なお
特例として残した問題が三つありまして、それは
大都市と
東京都と
北海道と、この三つの
事務につきましての
特例であります。更にこの
事務に関連いたしまして
地方団体の
規模、
組織、
運営ということにも触れ、更には
地方の
行政、
地方の
税財政制度に関しまする一般的の
勧告を出すことになりまして、今回の
勧告と相成つたわけであります。
先ず
特例から申上げてみたいと思います。
大都市につきましては、すでに前の
勧告におきましても普通の市とは幾分か余計の
仕事を分配いたしたわけでございます。即ち
高等学校、
児童相談所、御
売市場、道路、この四つにつきまして
府県並みの
仕事を
割当させたのであります。このたびは更に一歩を進めまして、
大都市の
能率を挙げることのできると認めましたところの十二ばかりの
仕事を
割当させました。それは
民生関係のもの、
衛生関係のもの、
度量衡検査、
熱管理等についてでありますが、こういつたものを
割当ました。そういたしますと残りまする
仕事というものは、つまり
府県の
仕事をそれだけ拡張して
大都市に任せました上なお残る
仕事と申しますと、さう多くありません。
地方計画とか
農地調整とか職業安定とか、
自動車運輸行政といつた
程度のものでありまして、それらは
大都市といえ
どもう少し大きな
地域で、
府県で以てやつたほうがよかろうと思いましたので、それだけは取残した次第であります。従いましてこれまで
大都市に関しまして二重
行政、二重
監督、国と
府県から二重
監督を受ける、二重
行政であ
つて煩瑣であるというような苦情は殆んど取除かれたことと思いますが、無論少しばかり残
つておりますが、それは僅かでありますから、大体それでこれまでの連絡上、殊に
特別市に関する主なる理由となりました二重
行政、二重
監督の弊ということはなくなりますので、先ずそれでこれまでの争いというものは一応解決するわけであります。それで先ず辛棒できるというふうに
考えることができます。
ただ併しここに
特別市制の問題は随分長い間の問題でありまして、
調査の結果といたしまして、
自治法の中にも
一つの地歩を占めた
規定にな
つておりまするのでありまするし、又
大都市というものは
国家的に
重要性を持ち、1
国家的な影響を受け、又与えるところの
関係におりますから、これに
特別市として特殊の
地位を与える、そうして独自の発展を十分図らして、立派な
都市として
自治行政の運用をさせるということも
一つの
考え方でありまして、無下にこれを無視することができませんので、ここにこの
特別市制の
規定を削除しようという
考え方もありましたが、それは
現行の
特別市制の
制度を削除するということは、それに及ばんじやないかということに
考えた次第であります。併し他の一面におきましては、又
特別市を飽くまで主張する
余り、今の
五大市は必然的に
特別市になり得るような途を開いてもらいたい。即ちそれは
現行法におきましては御
承知の
通り国家が法によ
つて特別市を指定し、更に
人民投票を行う。
人民の
投票は全
府県民投票によるということになりますから、従いましてこうい
ぅ規定がある限り殆ど多くのものが必ずしも
人民投票では勝目がない。
一つ或いは
二つぐらいはどうかできるかも知れんという
程度でありまして、殊に
投票によりますといろいろな
投票がなされますから、その
予定が立たないのであります。そこで
人民投票は
府県民投票でなく、
当該市だけの
投票によ
つて特別市というものができる途を開いてもらいたいという
希望もありましたが、それは又行き過ぎであろうと私
どもは
考えたのであります。
特別市といたしますについては、その市のいろいろな面から見ての
重要性ということを十分に考慮しなければなりませんし、殊に取残された
残存の
地域のあり方、
残存地域との
関係ということを
考えますと、十分この
残存部にも
納得の行くようないろいろの
条件を具えてからやるほうがよいのではないか。
特別市になろうという
都市だけが都合がいいからというので特別になるのではなく、
残存部も十分
納得するような
条件を整えるように、即ちあとの
自治体というものが完全に
自治能力を発揮するだけの
人ロとか或いは
地域、資源というものが十分に或る
程度具わる、それから
共同でやるべき
仕事がありましようから、
共同の
仕事というものを処理する方式を
考える、或いは
責任を分担する方法を
考える、いろいろとこの十分な
準備を整えて、ただこの
特別市になるところの市だけが満足するような
条件ではなく、
残つた部分も
仕事が満足でなくとも、とにかく大体において満足し得る
程度というような、全
府県民が、いわゆる
投票の数によ
つて勝つた負けたをきめるのでなく、大体これならよろしかろう、分れたい、分れよぅ、分れましかよう、分れることを認めましようというふうに持
つて行きたいのでありまして、そういうことにつきましてはそう簡単に
扱つてはならない。そういう
条件を揃えて、そうして
一つ一つの
大都市につきまして
国会で御審議頂いて、それでは
特別市の
法律を出してやろうというようにして頂くような場合に
特別市を作るというふうに、慎重に持
つて行きたいという
考えで私
どものこの
勧告案はできておるのでありまして、
特別市というものをやめるというのではないが、併し作る場合には慎重に、
納得の行くようなふうに持
つて行きたいと、こういう
考え方からいたしまして、具体的の場合について採否をきめるようにというふうに
勧告いたした次第であります。
それから
東京都につきましてでありますが、
東京都につきましては、これは二十三区というものと三
多摩との
関係がありまして、一番簡単なのは
東京都を
大都市或いは
特別市というようなふうにして、そうして三
多摩を独立の県にするという
考え方であるようであります。併し
東京都と三
多摩との
関係は離したくないという
希望も実際あるようでありますから、この点を先ず取上げることにいたした次第であります。さて二十三区と三
多摩とを
一緒にいたしまして
東京都として行きます場合において起る問題は、二十三区が完全な
自治団体になりたい、
市並み、殆んど市とひとしい、二十三の特別区ではなくて、
特別市になりたいと、二十三の市になりたいという
考え方が一面にはありまするし、即ち完全な
自治体に区がなりたいという
考えが一方にありますし、他方には区というものも今日の
大都市の区のように
行政区にしてしま
つて、そうして二十三区の独自な性格というものをなくし、二十三区が全部一本で都知事の下に
仕事を行な
つて行くというふうに持
つて行きたいという
考えがありますが、
委員会議といたしましては、その中間をとつたといいますか、完全な
自治区でもなければ
行政区でもない、いわゆる特別区、はつきり特別区であるというふうに二十五区を持
つて行くことに
考えた次第であります。そうして二十三区というものの
仕事を、この二十三区という特別区の
仕事と都の
仕事の
配分を法定化しまして、これまでの互いに
争つた、これはわしのほうでやる、わしのほうでやるとい
つて一々境界の取合いをや
つているというようなことでなくて、
国家の力で以て、
法律の力で以てはつきり区別して頂いて、私
どもの
考えるところでは、特別区の
仕事としては市民の身近に迫る
行政というものを、これを特別区の
仕事として、そうしてそうでない、やはりこの二十三区が全体として統一的に一体的に処理することが適当だという
仕事は、これは都で
以つてや
つて頂くと、併しまあ都でや
つている
仕事の中でも、或るものは或る
程度区に任してもよいものもありましようから、区に委任する途を開く。そこでこれだけのことは是非区にやらしてもらいたい、この
仕事を特定いたしまして、更に都の
仕事の中で或るものは区にも任し得るものは任し得るものとする。こういうふうなことをこの
事務の面におきましては
考えた次第であります。
それから
北海道についてでありますが、
北海道につきましては、これは私みずから参りませんでしたが、親しく
委員の各位に参
つて頂きまして、十分御
調査を願いましたし、種々の資料も集めましたのでありますが、これは申上げるまでもなく、
北海道は御
承知のように、土地が厖大で
人口の稀薄なところであります。
内地でもそれに似寄つたところはありますが、
北海道は比較にならんほど
人口稀薄なところでありまするし、殊に
国家的に
総合計画を立ててやるべき
仕事があるということもすでに認められているところであります。かような
趣旨によりまして、他の
府県よりは
国家の
責任で行う
仕事を拡げるという精神で
事務の分配を按配したわけであります。とにかくこれは成るべく国でや
つてもらいたいというよう
仕事の面が他の
府県の場合よりは幾らか多くな
つております。ところで最近私
どものところで、国が
出先機関の
北海道開発局というものを作りまして、国の
責任の
仕事はわしがやるというので出て来たのでありますが、これをどうこう言うわけではありませんが、併し
余りに国が出向いて手を出し過ぎるということは、
地方民の感情とか、いろいろな
意思というものと食い違うということになる場合がある。
地方民の
意思等をよく汲み取るためには、国の
責任の
仕事もまあ成るべくは
北海道庁に、
北海道の
責任者に任してやらすようにしたほうがよかろうというような
考え方を
結論として得たのであります。そうして
出先機関である
開発局をつぶす
考えはありませんが、そういう
出先機関は、財政的にも技術的にも
地方の力では及びがたいような大きな
仕事、そういうものに力を尽す、大
規模な
仕事をする。そういうふうなことを
地方に仕すということは、やはり
内地でもそうでありますが、
内地でも一
府県内の
仕事でも相当
規模の大きな、国がや
つてもいい
仕事がありますから、そういうようなことを国がや
つて行けば、国の
責任も十分果せる。
地方にも
仕事をやらして、
地方の
意思を汲み取
つてやりますというと、国の
責任も……、
責任明確というような点から、幾らか原則と違うという点は出て来ますけれ
ども、そこは
二つが調和するという
立場になりますと、そういつたほうに持
つて行つたほうがよかろうというふうの
結論を出したわけであります。
それからその次には
地方団体の
規模の問題でありますが、
規模につきましては、かねて前の
勧告におきまして
町村の
整理を願いましたが、これはだんだん
町村も大きくな
つて、我々の
勧告に従いつつあると聞いております。市でありますが、市につきましては、これも市がどんどんできますが、市というものは我々の
勧告におきましても
相当仕事は普通の
町村より多くな
つております。いろいろの
仕事の、
町村ではやらん
仕事がありますが、大きなものはやはり警察とか
消防というようなものは市が独自で以てやるという建前にな
つておりますから、そういうようなことで市がやる
仕事は相当ありますから、市はこれまでの
程度よりは少し
規模を大きくして、
人口五万、これははつきりした数字ではありませんが、今は三万ですが、五万に引上げて、そうして市としての体をなしたところの市にする。又農村を集めて市にするということは避けたほうがよかろうという
考えを持つ次第であります。
次に
府県でありますが、
府県につきましてはかねてから道州制というものを持込まれまして、しばしば我々も頭を悩ましたのでありますが、これは
時勢の変化によ
つてどういうふうにもきまりましようが、今の
段階におきまして我々の
結論は、
府県の
規模というものは大体今の
程度でも与えられた
事務というものはできんことはない、現状のままでもできんことはないが、併しもう少し
規模を大きくしたほうが
能率的である。例えば
事務の
費用にいたしましても、
人口が六、七十万の小さな県でも
人ロニ、三百万というような県でも、その
事務の
費用というような問題になりますと、その
人口数とか
経済力というようなものに即応して殖えるものではありませんので、小さい
県といぅものは割合に
費用が余計かかるというようなことも
考えますと、やはり今の
府県の小さいのはもう少し何とか、
余り封建思想に捉われないで、
経済上、社会上いろいろなことを考慮して、二百万ということを謳いましたけれ
ども、これも別に根拠のあるものではなく、せめて百万
程度ぐらいの
府県にならんと
府県らしくないから、できるだけ多くしたらよかろうという含みのある
勧告をいたしました。しなければならん、どうこうしろということは申しておりませんで、成るべく大きくなるような
考えを持
つております。そうして
一緒になるような工夫をしてもろうということを申したわけですが、更に、それなれば道州はどうかということですが、現在の
府県の上に道州を作るという
考え方もあります。
府県を廃して道州を作るという
二つの
考えがありまするが、私
どもといたしましてはいろいろ
考えましたが、
府県と道州を重ねるということは、これは非
能率的になりまして、やはり
段階が殖えるだけ二重、三重と手数が殖えて行くということになりますから、
能率的でないと
考えたのであります。
然らば
府県をやめたらどうかというのですが、併しそこになりますと、道州になりますと、どうしても
地方自治という
考え方よりは、国の
出先機関という
気持が大きくなります。むろん道州に
なつたほうが交通とか治山、治水、
国土開発というような点を
考えますと、道州にな
つて大変やりやすくなる点もありますが、やはりどうしても
地方自治の面から見ますと、道州よりも
府県でやつたほうが
地方自治の確立にはよかろう。
やがてだんだん
時勢が変りまして、県を超越して道州のほうがいいのだという
考えになれば別ですが、今のところはなかなか
府県というもので行く
気持というものが一般に強いようでありまして、前に申しました
府県の併合とかいう点、六、七十万では小さいから
一緒に
なつたらどうかといつたところで、これもできるところがどれだけあるか疑わしいような次第でありまして、やはり
地方の
自治といたしまして、先ず道州まで行かないで、
府県で基礎を養うということにいたしたほうがよかろうと思います。
市町村の、殊に
町村の補完的な
仕事、
町村でようやらんことを
府県でや
つてやる、代
つてやるというようなことになりますと、これはやはり
府県のほうが近くなるのでありますから、道州に
なつたよりはよく行く、
従つて地方自治を育て上げるために今暫く
府県というものを残して
仕事をやつたほうがよかろうという
結論に達したのであります。
それから
地方の
組織の
運営でありますが、この問題は大体
能率的に、或いは
簡素化といいますか、近頃の
簡素化とか
能率化というようなふうの
立場から
考えた次第でありまして、これまで
余り府県の部な
ども多くなり過ぎましたから、もう少し少くしたらどうか。前の三部制みたいにすると、随分統合というので、時代は違うかも知れんが、排しもう一遍顧みて少くするようにしたらどうかという
考えを持つた次第であります。
それから
議員でありますが、
議員につきましても、
議員の数を少くしたらよかろうという
考えを、同様の
考え方の
出発点でそこへ持
つて来たわけであります。即ち
議員の数は多いよりも多少少いほうが
能率的であり。
経済的であり、又いい人が出て来る
可能性も多いのじやないかといつたような
気持を持ちまして、まあ成るべくそつちへ持
つて行
つてくれ、こういう
考え方を出した次第であります。そこに
名誉職という言葉がありますので、よくこれを何だかむずかしくおとりになるようですが、これは専務ではない、むしろ
名誉職として、
仕事を持つた人が推薦されたから
一つ地方の
自治の
仕事をや
つて見るという
気持でありまして、
議員を軽く見た趣意ではない。むしろ
議員という者を重く見る
趣旨で、
議員は
月給取りとは違うのだ。普通の職員と違うのだ。高い
地位において指導をする
立場にあるというような
考え方であります。
理事者と
議員とを対等に見ないで、一段高いところの観点から指導して頂くという
趣旨であります。殊に
国会議員のかたになりますと、
自然地方から
おいでになりますから専務的におやりにならなければならん
関係になりますけれ
ども、
地方の
議員という者は、
自分の住ま
つておる
町村、
府県にありますから、一定の
仕事をお持ちにな
つて、そうしたかたわらおやりになるということができる
関係になるとも
考えますので、そうして或る意味において
地位を高くして、そうしてしつかりと
理事者を指導して頂こう、こういう
気持を持
つておるのであります。
それから
東京都のことが
ちよつとそこに特別に入
つておるのでありますが、
東京都につきましては、実は
東京都の区でありますが、区長という者を公選をやめろという議論がありました。これはほうぼうからありました。それぞれ各方面から
行政区にしてしまつたほうが簡単だから、それには区長が公選であるから邪魔になる。
議員の選挙はとにかくとして、区長のほうはせめて全部都の吏員とする。そうして都知事の下に
仕事をすることにしたほうが
能率が挙るからいいのじやないか。
能率が挙る点からはよろしいのですが、併し折角
東京都の区というものが他の
大都市と違
つて、
自治的な意味を持つたところの
自治団体としての意味を持つた歴史を持
つておりますから、歴史を無視して一朝にして区長公選を取上げて、区というものの格を落してしまうということも忍びないのでありまして、これは尊重することにいたしました。区長は公選でやるということにいたした次第であります。併し先に申しましたように、この区というものは
行政区ではなく、或いは
自治区ではなく中間のものでありますから、従いまして財政の面におきまして若干特殊なことを織込んだわけであります。即ち区の収入というのは手数料、使用料、そのほかに還付税というものをおいてほしい、全然還付してしまう還付税ではない、法によ
つて一定の割合は都が保留しましてそうしてそのあとは還付する、取つたあとを廻してやるということになりまして、還付税になりますと都の税であるか、或いは区の税であるかといいますと中間的なものであります。都の税でも取ることは都が取りますから都の税でありますが、併し当然に一定の部分というものは返してもらいますから区の税である。極めてあいまいですけれ
どもそういつた中間性をとりまして、法規で以て一定の部分だけは都が取
つて調整に使う。併しながら一定の部分恐らく大部分は各区に、取つた所へ返してしまうということにして、各区は各区の
自分の財源を使うことは無論であります。併し弱い区は豊かな区からいくらか助けられるということになりましてそこで妙味があるといいますか、極めて不徹底でありますけれ
どもそういうことにして、特別区であるが故に特殊の財源の按分をいたしたわけであります。更に
仕事につきましても都のほうからして区の
仕事をや
つている工合はいろいろ調整させる。あまりや
つていないといえばやるようにということの権能は郡において持つということにならんといかん面がありますから、多少
仕事の面におきましても都が調整するようなことを
考えて行つたらよかろうというようなことを謳
つております。
それから更に
北海道ですが、
北海道は大体におきまして細かいことで、特殊的に見て
市町村の権限を少しふやしてやるとかいうようなことで大したことはありません。
それから国と
地方との
関係につきまして
二つばかりここに
勧告いたしております。
一つは国が
地方の検査とか監査とかという場合において、
地方自治に干渉する、
地方自治を妨げることをせんように用心する。同時に又
地方の
仕事を指導する、指導というと言葉は悪いですが援助するとか、助言するとかいうふうにして
自治を妨げない。併し又同時に
自治を伸ばすようにというふうにも
つて行
つてもらいたいという
希望をも
つている次第であります。
それからいろいろな
市町村における苦情とか
市町村間の苦情等は、
府県で以て調停斡旋をするといることにいたし、それから
府県間のことば国で以て斡旋をするというようなことも
考えてよかろうということもつけて申しております。
終りに
地方の財政
制度に関してでありますが、これにつきましては、全体といたしまして三つの方法を標準としました。
地方の
仕事が殖えれば
仕事の殖えたに応じて財源を
考えてやる。その財源も成るべく独立の税を
考えてやる。第二には平衡交付金なり補助金なりというものの支払、交付する方法、時期を適正にしてそうしてそれを以て
地方の
自治を侵し、干渉するというようなことのないようにしてや
つてくれ。それから第三には
市町村には財政に関して許可認可等を振廻して、
地方の自主性を損うことのないようにしてくれというような、三つの要綱を基礎といたしましていろいろの面について検討されたわけであります。終りに税につきましては税は実は細かいことをも
考えてみましたけれ
ども、これは廻りくどくなりますから結局
勧告には出しません。ただ併し税はシヤウプ
勧告に謳つた
通り、成るべく独立的な税というものを各団体に與えるように附加税主義をやめろというので、団体に與えるようにという
趣旨を相当尊重してくれということであります。例的にいろいろのことを挙げましたが、これも例示でありまして大した強い意味のことではありません。が、併し
地方の
事務の再
配分をした結果は、
地方団体殊に
市町村に
仕事が多く移る傾きがあるから、
市町村に
配分が多くなるような税をと
つてくれ。それから国のほうからも
自分の取り分を搾
つて、差控えて、余裕を
地方に與えるようにということで国のほうからも余分を
地方に與える。
市町村が
仕事が殖えて金が足らん点は国から或いは
府県からももらえるような方針を
考えてくれと例示的に言いましたけれ
ども強い意味ではありません。もつと強い意深になりますといろいろ検討をされなければならない。殊にシヤウプ
勧告の
地方財政
制度というものが、果して
日本の国情に適するや否やということは検討を要するものがあるのだろうと思うのであります。その問題については多く触れておりません。大まかなところを指示したに過ぎません。
それから次に平衡交付金でありますが、平衡交付金につきましては、これは国の所得税、法人税の一定割合を交付金として與える旧い
制度に戻つたほうがはつきりするだろうということもいわれておりますが、そういう国の取つたものを機械的に一定のものを
法律的にきめて、又変えられるというような、当になるような当にならんようなそういう交付金を以て、
地方の財政の足らんところを補うという
考え方はいかがであろうということで、その
考え方は私
どもとしては取りませんが、有力な
考え方としてあるようであります。私
どもの
考え方といたしましては、先ずシヤウプ
勧告の線に沿いまして財政需要額と財政収入額との突き合せをして、足らんところを国でも
つて、平衡交付金でも
つて補
つてやるという、あの根本的の
趣旨、併しながら今の平衡交付金はすべての
地方の
行政についての財政需要額を計算しますので、
地方のほうとしましては、これは平衡交付金の中にもつと入
つておるはずだ、いやこれだけだということで苦情が出ますが、そういう
地方行政について平衡交付金で織込むということ自身が無理であります。それよりは私
どもとしましては、各
地方団体が
地方団体の
意思によ
つて多く使おうと少く使おうと勝手であるような
仕事、法によ
つて義務付けられないような
仕事についてはこれは平衡交付金に見ない。平衡交付金では
法律によ
つて国から義務付けられた
仕事についての需要額というものを精密に見る。一定の基準に従
つてそれを前提として計算して財政収入額のほうでは、
地方の財政収入額の中から一定の割合を
地方の随意
事務において使うものとして或る
程度引いて行く。或いは財政力の裕りのある所は余計取
つて置く、余計引くことを認める。要するに
地方の財政収入額のある所は三割取
つて置く、五割取
つて置く、七割取
つて置くということにいたしまして、そうしてそれを引いた残りを中央で計算しまして、全部収入額の計算をして、総収入額と財政収入額と財政需要額とを突き合せて前の義務付けられた
費用の財政需要額と
地方で随意
事務で引いた残りを突き合せて見て、そうして足らんところは
国家が全部平衡交付金で見てやる。そうして若し
国家の財政の
状況が大蔵大臣なり、中央の国庫の
考え方によ
つてどうもこれだけは見られん、千二百億円というものはとても出せん、千億円よりは出せんということがあれば、
地方といたしましてはそれを背負いかぶることはできないから、それだけ、二百億円の出せんというところだけは何か国が義務付けた
仕事というものを引つ込めて国がみずからやる。
地方に委せた以上は
地方に金を支出させることは不都合であるからそうはさせない。国の
仕事というものを削除して財政のほうが何としても動かんというなら、それだけ義務付けた
仕事を減らして行こう、こういうことに持
つて行こう。こういうことが我々の根本の
考え方であります。そうして平衡交付金の交付の時期というものはいつも年度中途であとから来るので困りますが、少くとも
予定額は年度半ばにわかるようにしてもらいたい。かようにして交付金の交付の時期というものを明確にしてもらえば
地方としては安んじて
仕事ができます。随意的の
仕事のごときも余裕のある所は盛んにやるし、余裕がなければ辛抱する。辛抱するより仕方がないが、そういうことに持
つて行くのが本当ではないかと
考えた次第であります。
それから補助金の問題でありますが、補助金につきましては、補助金を国庫が濫用していろいろな干渉をするというようなことのないようにしてもらいたいという
趣旨からいたしまして一切補助金というものは使わない。新規のものとか、或いは極く特殊なものとか、或いは土木事業で非常に金がかかる事業であるとか、災害復旧というようなものを主にたいしまして、成るべくそれ以外のものは
整理するように持
つて行
つて頂きたいと思います。そのほかにも無論
国家が
仕事を
地方団体に委託するとか、委託して研究してもらうとかいうその委託の
費用というものは委託の
仕事に伴うもので、これは当然補助金ではありませんので委託の対価でありますから、これは正々堂々ともらうわけであります。委任した場合、委託した場合の金というものは全額国庫が負担して
地方に迷惑をかけないようにしてもらいたい。委託、委任という
仕事がありますがこれは国が全部持つ。それから或いは租税に代るべきものであるとか、国が土地を持
つておる、家を持
つておる、その使用、それに応ずるところの
地方税というものは固定資産税に代るべきものであります。これは
地方として租税に代るべきものがあ
つてもよいのです。
それから予算外の国庫の負担に属する債務の支拂、それも
地方団体に債務を持
つておれば国が出すのは当然である。はつきりとその
内容を現わしてもらいたい。こういうように
考えております。
それからその次に公債ですが、公債につきましてはこれは今の何といいますか何か特殊な金融調整をしなければならん
状況にあるという前提の下におきましては、これは十月頃に出しました
勧告で応急的なものであるが出しましたがそのような
趣旨でや
つてもらいたい。即ち例えば起債は事業別に一々検査せずにきめて手続を簡素にして団体別に分けるようにしてもらいたいということ、そんなようなことはこの特殊な事情下においては止むを得ないことと思いますが、併しそういう特殊なドツジラインとか何とかいうものから引つ張り出されたところのこういつたものは当分続くかも知れませんが、この特殊事情というものが続く限りは別といたしまして、常態に帰りましたならば起債、募債というものは一面において堀方団体の起債というものを自由にしてやり、他面においては援助するということも
考えてもらいたいと思うのであります。そこで自由にするということは野放しにするというわけではありませんので、最初に一定額というのを基準にしてそれを越えないだけにおいて償還金がある限りにおいては自由にできる。例えば一億なら一億、二億なら二億という償還金の
程度ならば
地方団体の特有の
考えで起債ができるというくらいの自主的能力というものを信任してもよいと思うのであります。併しながら又別に起債をしてはいかんという場合が起り得るので、まあ仮に
地方団体等がとんでもない事業のために起債をするということは
地方自治の基礎を危くするということも
考えられますからこれは制限しなければならない。制限する以上は国が
法律でこうこうこういう場合はいかんということとを最小限度の起債の制限を
規定しておいて、その
規定に引つかからん場合においては
地方団体が自由にできる。償還費の制限、それから何か一定の禁止的事項というものを最小限度に
規定して制限するというくらいにはしなければならない。それから補助の点、援助の点から申しますと、それはこんなことで今日の情勢下においては預金部資金に
地方債というものが頼
つております。併しこれは今時有の
状況であ
つて常態に
なつたならば金融機関なり個人なりから公募できるようなことにしてもらいたい。制限などは解いて貰いたいといということが
一つ。それからいま
一つには、
地方団体のために、殊に弱小の
地方団体のために
地方債の起債というものを
地方金庫というものを作
つて国も若干分担し
地方団体も相当に分担して、そうして余裕のあつた金はそこに預けるような途を開きまして、そうして困つた
地方団体、殊に弱い
地方団体にはそういうものの利用できる、個人や銀行等でなくてそういうものによ
つて余り高い利子の起債をしなくても、リーゾナブルな
納得の行くような低い利用で起せるような途を開いて行きたい。それからして殊に弱小の、あまり助け過ぎてもいかんかも知れんが、併しながら一般の銀行なり個人なりに頼
つて金を借りようと思
つても只ではいかんという場合においては、国なり
府県なりも或る
程度補償する、補償する
地位に立つというような途も開いて行きたい。濫用されては困るが特殊の場合はそういうことで凌いで行く。それはそういうこともありましよう。例えば大震災、大水害や何とかで以て非常に困つたというようなときに、併しながら
自分はただ国庫から災害復旧の金で以て補助を受けるのではない、
自分の力でや
つて行きたい、起債を以てや
つて行きたい、百年計画で以て返すのだというようなときには喜んでそれは認めていいし、そんなくらいの意気込でやるなら或る
程度の犠牲を払
つても国といえ
ども補償してや
つていいではないかということを
考える、そういうことを起債の面では
考えております。
最後にもう
一つ、
北海道ですが、
北海道は
人ロも稀薄で土地の広い所である。
国家的総合開発の
仕事を持
つておるからここにおいては国で以ていろいろ面倒を特に見てや
つてくれと、特別交付金というようなことも
考えられますからそんなことで見てくれとか、その他財政上において他よりは特に見てや
つてもらいたいということを付加えておきたいのであります。
以上簡単でありますが、全体を通じましての基本的な
考え方を申上げたわけであります。