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1951-11-22 第12回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十二日(木曜 日)    午後一時二十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            山本 米治君            小宮山常吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            菊川 孝夫君            野溝  勝君            松永 義雄君            森 八三一君   委員外議員    農林委員長   羽生 三七君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局法    規課長     佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省主税局税    制課長     泉 美之松君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委会專門員    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局税    制課勤務    志場喜徳郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○所得税法臨時特例に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣送付) ○物品税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○糸価安定特別会計法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) これより第十八回の大蔵委員会を開催いたします。  本日は所得税法臨時特例に関する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題として質疑に入ります。
  3. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 所得税法臨時特例に関する法律につきましては、前々から原則的なものについて、或いは総括的に御質問を申上げてありましたが、一つ逐條的に、もうこれは最後の御質問だと思いますので、お尋ねいたしたいのであります。先ず第一番に、第一條の扶養親族の定義と言つて、一万七千円以下の収入ということになりましたが、この一万七千円以下ということは、どういう根拠で先ずこの一万七千円をはじき出されたか。これは次の第三條の扶養親族一人につき一万七千円の控除ということと関連していると思うのでありますが、そういたしますると、控除の一万七千円というのはどういうところから基礎を、ただ勘でこのくらいにしようとせられたものであるか、それとも現在の国民生活の水準というものを考慮してそういうところから引出されたものであるか、或いは単なる税収入から現在の扶養親族の適用を受けるのはどのくらい適用するか、だからしてこの額が限度であるというふうにせられたものか、この点一つはつきりして頂きたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お尋ねに対しまして二つの点に分けてお答え申上げますが、一つ扶養親族控除額をどういう理由できめたかという問題、それからもう一つは、扶養親族としまして控除し得る所得者と申しますか、その限界をどうするか、この二つの問題があるかと思いますが、最初扶養親族控除の額につきましては、これは前々から申上げておりまするように二万円まで引上げるまで、一万五千円ということにいたしたのでございまするが、本年度といたしましては、先般も申上げましたように八月以後それを実行するということにいたしました関係上、二万円というのは八月以後二万円、七月までは従来の一万五千円、それを月割で年間の平均にとりますと一万七千円、ちよつと端数がありますが、端数を省略いたしておりますが、一万七千円前後になる、それを以ちまして今年の税を計算する場合の扶養控除額にいたしたのでございます。年末調整の際の控除もそれによつて税額を対照いたしておりまするし、それから二月に確定申告をいたします際の扶養親族控除額もその額になるのでございます。そういうわけでございますが、それじや二万円を一体どういう理由できめるかということになりますと、これは基礎控除扶養控除をどうするかという一般問題でございまして、これはたびたび御説明申上げたことかと思いますが、要するに生活費関係税収入関係財政需要関係負担の実情等考慮しまして、その他としまして本当に妥当な控除額になるようにと、今までは実際低過ぎたので、できるだけ上げるという考え方できめたのがこの案でございます、極く大まかに申しますれば……。
  5. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の二万円につきましては、生活費の点、或いは税収入の問題等妥当な線を出すためにとおつしやつたのですが、いわゆる米価にはパリテイ計算とか、CPSとか、こういうようなものを考慮された、まあいろいろ一応方式はあるわけだと思うのでありますが、あなたのほうはこの二万円の算出には、どういう方式で出されたかと、こういうことをお聞きしておるのでございます。
  6. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは正確に申上げまして、パリテイ計算計算のような機械的な方式は今ございませんで、実際の生活費状況その他を勘案いたしまして、そのときとしまして妥当な控除額をきめると、こういうことにいたしております。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 妥当というのはあなたがたが二万円が妥当と思われるなら、その妥当だと認める理論的な根拠はどこにあるかと、こういう点をお尋ねしておるのです。どういう点で、あなたがたがこの二万円を妥当とするか、あなたがたがこの二万円を妥当だとして出された以上は、私たちがそれを妥当と認めるには、これは妥当であるから妥当だと、こういうふうに言われるのではなしに、こういう点からこれだけは妥当だ、例えば私たちはこれを三万五千円に修正してもらいたい、修正したほうがいい、するためにはその妥当な根拠一つついて、そこに無理があるからこれを二万五千円にするというふうにして行かなければならんと思いますので、根拠も何もなしの妥当だけでは困るのですから、それをお聞きいたしておるのです。それはえらい大きな問題だと思います。
  8. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) それは基礎控除扶養控除も同様でございます。まあ大体現在の標準的な所帶においてどの程度生活費を使つておるか、これは勿論生活実態等もよく睨み合してきめて行くわけでございます。パリテイ計算や、例えば公務員給与を人事院で出しておるような機械的な一つ方式だけでこの問題をきめておりません。まあいろいろな状況も勘案いたしまして歳入額がどうなるか、財政需要に応じてどのくらい税が入つて来るか、そういうことを併せて考えまして、総合的にいろいろな要素を考えてきめて行くのでございまして、何か機械的な一つ算定方式でそろばんにして出て来る、それがいいとか惡いとかというようなわけにはちよつと所得税控除額は参らないかと思うのであります。今までどういう控除であつたか、それをどの程度に上げたらその生活費状況等から見て妥当であるか、そうすると税収入にどういう影響を及ぼすか、それによりまして税負担が一体どういうふうになつて来るか、こういうことをいろいろな角度から考えまして、結局この辺が妥当であろうということで控除額をきめるというふうにいたしておるのでございます。一つ方式で行くというわけには参らないかと考えておるのであります。
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私の申上げるのは、今回は非常に減税の処置をやつて、そうして物価値上りをこれによつてカバーをするという方式をとつたという御説明は非常にいいと思います。従いまして、そうすると物価値上りはどれだけあるからして、だから扶養控除のほうでこれだけカバーして行くんだ、こういうふうな大体の見通しがない限り、これは適正だと思つたからやつたのだという一点張りの御説明では、ちよつとこの点が私は納得が行かないと思うのでございます。実際問題としてあなたたち計算される上においては、数字に基きこれを検討されたと思うのです。これをだからお聞かせして頂きたい、こういうことを申上げておるのです。
  10. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その点でございますと、極くラフに申しましても基礎控除三万円から五万円に上げておる、これは幾らになりますか、約六割六分の引上げでございます。それから扶養控除は、これは三人まででございますけれども、一万五千円を三万円に上げているのでございます。これも約三割三分の引上げです。それから税率も若干調整しております。そういう改正を見まして全体としての所得税負担がどうなるか、これはもう資料にも、改正前後の負担比較表としてお手許にお配りいたしております。まあ改正した結果は現在の税額に対しましてどういう階層が動くか、それが所得階層別にどういうふうに動くか、種類別にどういうふうに動くか、それからその結果今御指摘通り主食値上りその他によつてそういう所帶の生計費がどれだけ殖えるか、殖えた場合にそういう改正を行いますれば、先般も申上げましたように大体カバーしてなお若干は余りがあると思います。相当残りがあると思います。そういう資料をいろいろ見比べまして、財政需要とも一方睨み合せつつ今年はこう、それじやこうということできめておるのでございまして、その資料は大体お手許にいろいろな計算といたしまして、お配りいたしておるわけでございましてそういうものを総合して御判断を願いたいと、こう考える次第であります。
  11. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 じやまあこの点はちよつとはつきりしませんが、将来におきましては或る程度扶養親族控除という問題は、これは給与体系の今の家族手当とも関連が非常にあると私は思うのですが、その点から考えまして、一般公務員給与家族手当動きと、或いは又一方民間会社における家族手当動きと、それからこの扶養親族控除というものは切離して考えられない問題だと、で、それからベース改訂の問題と切離して考えられないと思いますので、この点が或る程度、こういう点から出たという基礎でもこちらへもらわぬと、あらゆる資料を提供したのでありますから総合して判断せいと、こうおつしやつたのではこれはつつぱねるのには結構だと思うけれども、あなたのほうでは何か基礎があつて、ここを二万円にするか、二万一千円にするか、或いは一万九千円にするかというのは、僕は大きな問題だと思うのですが、最初に二万円と出しておいて、これではじき出したというふうに見えるが、勘によつてやられたというふうに見える点が多いと思うのだが、この三万円を五万円に引上げる問題にしても、ただ何ら科学的な根拠がないように思うのでございますが、すべて控除の問題につきまして、これは一つ科学的な根拠はあるのかないのか、実際そういうものを検討してやつているのか、永年の税務行政の勘からしてそういうふうに割出されたものか、その点をはつきりしてもらいたい、こういうことを言つている。
  12. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これはなかなかむずかしい問題でございまして、一つ方式だけで機械的に出て来るというものでは実はないのでございます。先ほど申上げますように、生活費状況とか、財政需要とか、或いは今までどの程度控除でできていたか、その後今お話のように、生活費等がどのくらい殖えて来たか、或いは国民担税力が果して殖えているか減つているか、そういう点をいろいろ考えまして、やはりきめるということに帰着するよりほかない。殊に所得税は税の中で一番大きな歳入を挙げておりまして、それによつて国家必要経費を賄う一番大きな基本的なものでありまして、非常に又アカデミカルに申上げますと、経費支出限界課税限界と比較較量するというむずかしい学説もございますが、そういう点になりますとなかなかこれは議論としましてむずかしくなりますけれども、いろいろな問題を考えて要するに今年の財政需要及びそのときの国民生活の実情からすれば、まあこの程度控除額でよろしかろう、こういう見地できめているわけでございます。ただ今までとかくインフレで相当物価が騰貴いたしまして控除等がやや低きに過ぎたということは一般の世論でございますし、委員会等におきましてもたびたび議論いたしましたので、できる限り私どもも控除引上げるという方向で、そういう際によく検討して、妥当な結論を下すということで参つて来たのでありまして、どうもパリテイ計算とか或いは公務員の例のバスケツト方式でございますが、ああいう一つ方式だけでこの額をきめるということはなかなかむずかしい問題であるということを御了承願いたいと存ずる次第でございます。
  13. 野溝勝

    野溝勝君 議題になつておりまする租税特別措置法の一部改正法律案でございますが、昨日主税局長質問した際に、主税局長の御答弁では、農民のために考えての案だというお話でございましたが、調べて見ますると、今まで、農地交換分合換地処分土地区画整理等の問題ですが、こういうものに対しましては、今まで所得税は取れることにはなつてつたのでございますが、現実には取つておらんようでございました。で、それを今回は清算金という名でこれを取るというのでございます。一体前には農地改革という意味を重要に考えられまして、日本の農村の民主化のために、この譲渡所得税などは免除しておつたのですか、或いは忘れておつたのですか、この点を一つお聞きしておきたいと思います。
  14. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在の税法の建前は、先般申上げた通りでございますが、極く、何と申しますか、零細な所得と申しますか、そういう部面につきましては、税務署の運用方針といたしましても、まああと廻しにすると申しますか、急いで追求しないというのが、これも一般考えでございまして、そういう意味からしまして、課税に実際上なつていないのもある、相当あるかと思います。そういう点につきましては、今度この法律案を変えましたからというので、改めて方針を変えるわけではございませんで、まあやはり極く零細なものにつきまして、強いて些細に亘るような課税というようなものにつきましては、やはり今後におきましても避けて行くようにしたい、そういうふうに大体することになつております。御了承願います。
  15. 野溝勝

    野溝勝君 それではつきりしたのでございますが、主税局長もこの区画整理とか、換地処分とかというものの清算金というものの性質は、御承知の通り農民の三分の二以上の同意がなければ事業ができないのでございます。個人の利得を目途とした事業ではないのでありますから、零細なる農民農業経営をよくしようという意図からやることでございますから、さようなことに対して支障のないようにお取り計らい願わなければならんと思うのであります。今の御答弁によりますると、僅かばかりの事業清算金に対しては、従来もこれを免税しておつたから、今後といえどもその方針を変えるものではない、こういう御答弁のようでございましたが、さように受取つても差支えございませんか。
  16. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 大体同じでございますが、ただ言葉の遣い方といたしまして、免税していたというのは、どうも少しどうかと思いますが、そこまで強いて調査しないと申しますか、調べて問題にするようなことはしない、こういうことにつきましては、同じ方針で行きますということをはつきり申上げておきたいと思います。
  17. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると僅かばかりのものに対してはという御意見でございますが、免税ということははつきり言われなんでも、考えるという御意見のように拜聽したのですが、それならば最小の事業清算金の額の單位は大体どの程度考えておられるのでございますか。
  18. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今朝も衆議院ではたしか三万円くらいまでは免税と申しますか、課税しないようにすべきじやないかという御意見がございましたが、はつきり三万円というわけにも参らんかと思いますけれども、今申上げました趣旨で御趣旨に反しないように運用を図つて行きたいと考えておる次第でございます。
  19. 野溝勝

    野溝勝君 最後にこの点を一つ聞いておきたいのです。我々といたしましても衆議院で要望した限度が最高のものだと思つておるのでありますが、三万円以下のものに対しまして課税をされるということになりますると、従来の大蔵当局が取扱われておつた内容よりは惡くなり、負担が重くなるわけでございますから、どうか一つ以上の事情を考慮されまして、衆議院同様な、私は限界以下のものに対しましては十分御考慮願いたいと思います。更にこの点をお聞きしておくのですが、例えば清算金が四万円あつた、或いは五万円でもよろしうございますけれども、そうすると基礎控除をするか、或いは免税点を設ける意味がどうなのか、その点明らかにして頂きたい。私は基礎控除は免除されるものととつておるのでございますが、さように解釈して間違いありませんか。
  20. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今のお話は、例えば基礎控除扶養控除を行いました結果、普通の所得税がかからなくなるような人の場合ですね。そういう場合でございますと、控除額所得額との差額、つまり赤になる。つまり基礎控除扶養控除と入れますと、例えば控除額が十五万円になり、その人の普通の所得が十万円しかないという場合には五万円足りなくなりますが、そういう場合におきましては再評価差額が仮に六万円出るとしますと、その六万円のうち、五万円だけは課税しない。これははつきり法律に出ているのでございます。そのほかにおきましては特に所得税関係してどうというわけには参らないかと思いますが、先ほど申上げました趣旨に応じまして、或いは御趣旨のような趣旨によりまして運用上遺憾なきを期して行きたいと、かように考えているのでございます。
  21. 野溝勝

    野溝勝君 大蔵当局の誠意ある御答弁を受けましたので、私はこの辺で質問を打切りたいと思います。
  22. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 今のに関連してちよつと質問いたします。讓渡所得課税は、次の通常国会において恐らく根本的に検討して、修正されるのではなかろうかと考えます。退職手当課税が今度の臨時措置によつて変つて、これに関連してなるだろうと予想されますが、その場合に証券等讓渡所得は実際上非常に実行困難な状況になつてつて、それに反して不動産讓渡所得は零細なものまで捉えられているという状況である。非常に両者の間に不均衡が生じているのでありますから、従いましてその点も考慮されまして、来たるべき改正におきましては、その不動産讓渡所得相当高い免税点を設けられて、今野溝委員の心配せられた点も十分緩和せられるように御配慮願いたいと思いますが、如何でございましようか。
  23. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 讓渡所得課税をどうするか、これはわれわれむずかしい問題でございまして、各方面の要望もございまするし、今愼重に研究いたしているところでございますが、只今大矢委員から御指摘になりましたような点もございますので、そういう点につきましても十分考究いたしまして、妥当な結論を下すようにいたしたいと考えている次第であります。
  24. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第二條の一時恩給及び退職給与についてでありますが、三割を控除するというのを、これもやはり三割の基礎ですがね、これは一体どうしてその三割ということにきめられたか、その根拠一つ説明願いたいと思います。
  25. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 退職所得につきましては、実はこの昭和二十七年の一月一日以後受けます分につきましては、要項にも語つておりまするように、先ず退職所得から十五万円を控除いたしまして、残りを更に二分の一控除しまして、その残額に対しまして普通の税率を適用して税額を出す、それを退職所得税額にするということになつているのであります。今回は臨時特例でございますので、そういう点は表に出ておりませんが、そういう趣旨によりまして、このうしろに出ておる税額表が実は計算されております。この法律の附録といたしまして、退職所得税額表が載つておりますが、その税額表は今申しましたような趣旨で算定されているのであります。これで来年一月一日以後受ける退職所得からそれで行くわけでございますが、そうしますと、今年と来年との間に相当負担の開きが出て来る。この條文はその負担を経過的になだらかにしようというので、こういう意味で第二條の規定は設けておるのでございます。二十六年度分、今年の分に限りまして、今の法律は一割五分になつておりますのを三割程度引上げまして、なだらかにしよう、今年も軽減しよう、こういう考えでございます。従いまして三割にした根拠如何という強いお尋ねを受けますと、これもなかなかそう簡單に出て参らないのでありますが、今申上げた趣旨からしまして、勤労控除として一割五分控除しておるのを倍額に殖やして三割程度控除にして、経過的な負担調整を図りたいという、こういう趣旨であります。算術的にむずかしい根拠があるわけではありません。
  26. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこで私申上げたいのは、来年の一月一日以降に支払の確定するものは十五万円は控除する、こういう点でありますが、これは実は行政機関定員法の、大蔵省の成るべく摩擦のないような退職者を出そう、公務員の中から退職者を出すようにしようという配慮から、即ち行政整理の裏付けを考えられておるわけであります。僅かな違いで以て、成るほど公務員のほうはそういうふうになるかも知れませんが、一般民間におきましては……その一月一日から行政整理に引つかかつた場合には退職金に対する課税相当軽減される、従つて政府のやるところの行政整理の場合にはよいけれども、そうじやない民間の、ただ一日違い民間会社等においていろいろの事情のためにやめなければならん者が出て来る。これは皆第二條で十分の三、つまり三割の基礎控除だけだということになつて、そこに税によつて行政的な措置を講ずるという私はきらいがあると思うのであります。というのは、いわゆる税金を軽くしてやるから、行政整理をしやすくしよう、こういう措置は、而も政府がやるときだけは都合のよいようにして、民間企業整備のときにはこういう配慮をしない。こういう退職金に対する措置はそういう含みがあると思いますが、あなたのほうでこれを一月一日にしたのは行政機関定員法との関連においてそうしたのであるかどうか、この点と、それから、そうすると一日違い民間企業整備によるところの整理該当者はこの恩典に浴さないが、そのときの措置はどう考えるか。
  27. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 退職給与の税を軽減したのは、ひとり行政整理関係考えただけではございません。一般民間の場合において昨年退職給与改正をいたしたのであります。その結果相当負担が重過ぎる、こういう声が一般の輿論となりましたので、今回改正案を提案いたしたのであります。そうしてやるとすれば、こういうものはやはり何と言いますか、税はすべて年でやつております。来年の一月一日から本格的な改正をやるというのが一般の原則でありまして、そういう意味合いからしまして来年分から軽くしよう、こういう考え方で一月一日にいたしたのであります。一日、二日の差でどうするかという問題でありますが、そういう問題がありますので、実は三割控除もいたしておりますが、これでも足りないじやないか、こういう考え方一つ考え方だろうと思いますが、その辺のところは民間のほうにおいてもこの法律が出ますと、それに応じて或る程度のアジヤストはできますから、まあそういう細かいことになりますと、今までやめた人にこれは遡つてどうするか、これはなかなか簡單な問題ではないのでございまして、そういう関係がありますので、本年としてはすべて今年の一月一日以後やめた人に遡りまして全部三割控除をするということで調整をいたしたい。もう一遍繰返して申上げますと、退職給与の支給時期、その時期において法律が出ますと、それに応じて或る程度民間においてはアジヤストできることもございますし、今までやめた人とのバランス等も考えて、こういうふうにいたしておるのであります。決して官公吏の行政整理があるからというので、この退職給与に対する税を軽くしたのではございません。むしろ一般民間等の場合において、どうも昨年の改正の結果少し重過ぎるということを感じましたので、改むるにやぶさかでなかれという意味で、今回改正案を提案いたしたような次第であります。
  28. 木内四郎

    ○木内四郎君 今私は誤解であつたかどうか知らんが、ただ勤労控除を三割にする意図があるというようなふうに受取つたのですが、そんなことはないのですか。
  29. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 勤労控除と申上げましたとすれば、それは私の言い過ぎでございまして……。
  30. 木内四郎

    ○木内四郎君 勤労控除関係も考慮して、一五%のを考慮してやられたと思いますが、ただ勤労控除は今後三割控除に上げるというようなつもりはないのですね。
  31. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 私の説明が不十分であつたかと思いますが、退職給与につきまして現在一割五分の控除をしております。これは勤労控除と少くとも同じ程度控除をしようというのでやつております。来年からは退職金につきましては一時所得税制度を大いに考慮に入れまして、非常に特別な考慮を払つたわけでございますが、今年は暫定的な、経過的な問題があるので、一割五分の控除を三割に引上げまして、過渡的な調整を図りたい、こういう意味だけで申上げた次第でございまして、勤労控除の問題は又更に大きな別の問題だと考えております。
  32. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますと、これは先ほどこの法文でも明らかな通りに、又局長も説明されました通りに、今年の一月一日に遡つてこれが適用になることになります。従いまして今まで退職金をもらつた、或いは一時恩給をもらつた場合に、あれは源泉徴収で取られております。これの調整を一体どういうふうにしてやられるか。それから今後毎月納める税金があればいいけれども、ない場合には現金でお返しになるのですか。この点の調整をどの條文調整されるのですか。
  33. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お話通り来年の二月の確定申告の際におきまして、退職後所得があればその分も一緒に申告してもらつて、そうして退職所得につきましては、ここに書いてあります通り三割控除計算いたしまして、取過ぎがございますれば返すということになります。それは来年の二月に確定申告で精算するということに相成るのでございます。と申しますのは、退職しないでずつと引続き勤務しておりますと年末調整の手があるのでございますが、退職されますともう所得がなくなるか、或いはあつても違つた所から所得があるということになりますので、年末調整でやるという途がございません。従いましてこれはすべて翌年の二月の確定申告の際に申告して頂きまして、そうして正しい年税額計算して、そうして退職金に対する税の取過ぎがございますればその分は返すということになります。それを計算する際にもこの三割控除をして、今まで一割五分控除して課税したのを三割控除して課税するということになりますので、所得がなくなつたような人の場合におきましては、恐らく二月の確定申告の際に返すということが出て来るかと存じます。
  34. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと確定申告の特例のほうに入るわけでありますが、確定申告というのは、これは税金に対して相当関心を持つておる人ならばこれは何ですが、一般民間の整理なんかでもう田舎に引込んでしまつたというような人は相当出て来るのじやないかと思いますが、この確定申告をやつたらこういう恩典があるということの周知徹底につきましては、これは相当配慮をされなければ、これは法律はみんな知らなければならんと言つてしまえばそれまででありますが、実際問題としてそれはなかなかできないのでありまして特にやめたような人は、まさか確定申告をしたあとで税金を返してもらうというようなことを思つている人は殆んどないと思いますので、これが配慮は税務当局お考えになつていますかどうか。その点について収入のある者はよいけれども、ない者につきまして……。
  35. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御尤もでございまして、私ども極力周知徹底方を図りまして、当然返すべき人には返すようにやつて行きたいと考えております。なおただ退職給与は来年から大分軽くなりますので、実際問題として今年すでにやめられた人で大分高い源泉を取られておる人は相当関心があると思いまするので、方法がよければ十分徹底する方法もあるんじやないかと考えております。
  36. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に退職所得について最後に申上げたいのは、この退職の中に非常にいろいろの例がございまして、なかんずく今公務員給与民間企業におきましての給与との関連におきまして、結核についての特別処置がどこでもとられております。というのは、結核で休んだ場合には、普通の病気で休んだ場合よりも月給を余計もらえる。例えば普通の病気の場合は六〇%であるが、結核の場合は八〇%、こういう処置がとられて、結核による退職者等はこれは退職金によつてもう二年なり三年なりの療養を必要とするわけであります。これはお認めになつておるだろうと思いますが、こういう人たちに対する特別の処置というものをこの退職金、これはもう退職金のみが唯一のこの人たちの療養の費用に充当しなければならんものだと思います。一般退職金と性格は相当違う場合が多い。而も結核はほかのいわゆる休職の場合の処置においてもそれだけ国家の公務員に対しても配慮がなされておるのでありますが、税の面において結核退職者に対する配慮というものは全然この場合には考えておられんように思いますが、その考慮はほかの條章によつてされるものであるのか、それとも今後それについて御検討になるのか、或いは全然御配慮がないのかどうか、この点について御説明を願いたいと思います。
  37. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 結核になりまして医療費が相当かかるという場合におきましては、所得の一割を超えまして医療費がかかつた場合、その部分は普通の所得でございますが、普通所得税課税する際に所得から差引いて計算する規定がございます。これは御承知のことかと思います。それから官公吏の場合は例の健康保険で無料で給付を受けます場合はこれは問題ないと思います。民間の場合におきまして結核として特別な費用が要る、或いは官公吏の場合に普通の療養費のほかに特別に施療等をしてもらいまして自分で負担してやつておる場合におきましては今の規定の適用になる。それから今のお尋ねは結核等でやめた退職給与等に対して何か特別に考慮はないかということかと思いますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、なかなかそういうわけにも行かんそういう事情がございますので、一般的に退職給与の税を相当思い切つて下げたのでございまして、税額表を御覧になればわかりますように、今度は実は相当に軽くなるのでございます。二十万円退職金をもらいますと五千円でございます。それから三十万円もらいますと一万五千円、五十万円もらえば四万二千五百円、百万円でも十三万五千円というところでございますので、ここの点まで考えますればお話のような点も大体呑み込んで頂けるんじやないかと実は考えておる次第でございます。
  38. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この別表第四の退職所得の税金は、これは今の第二條に基いて算出されたのがこういうふうになるのでございますか。
  39. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 違うのでございます。この別表の税金はさつき申しました基礎控除十五万円、これを来年の一月からこれで適用する、今年の半分はさつき申上げましたように三割控除いたしまして、課税方法は今までの税法課税方法でやりまして課税するということになります。すでに取つた取過ぎの分はやり直して来年二月に返す、こういうことになるわけであります。
  40. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると具体的にどうも明らかにしてもらわんとよくわかりませんが、五十万円の場合にこの新らしいのと今の第二條に基くのとで五十万円とした場合にどれだけ税金が違うのですか、例はございましようか。
  41. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在の税法は実は非常にその点が複雑になつておりまして、退職した後にほかの所得があるかないか、それから退職時の普通の給与が幾らであるか、これによつてみな負担が違うことになつております。と申しますのは、分離課税でなくて総合で課税することになつておりますから五分三乗のほうで変動所得の平均課税という方法をとることになつておるのでありまして、個人々々によつて退職給与は同じでありましても退職時の給与が幾らだつたか、その後所得が引続きあるかないか、それによつて非常に負担が違う、非常にむずかしいのでございますが、その一例は、要綱の例えば九頁に現行の場合を計算しているのがございます。これは給料の金額を想定して、それに対して一定の退職給与をもらつた場合に今の税法で行くとどうなるかという計算をいたしております。これは一割五分の控除でございますので、三割の控除になりますと、これよりも又相当の軽減になりますが、そこまで計算したのは今手許にありませんが、大体これを御覧になりましてお考えになりますればおわかりになると存じます。
  42. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それはこれで計算して見ますが、次には第四條の不具者等に対する所得控除の適用除外でありますが、不具者の解釈でございますけれども、法の第八條でございますが、どうも第八條の解釈によりますると、「この法律において不具者とは、納税義務者又はその扶養親族で、心神喪夫の常況にある者及びめくらその他の身体障害者をいう。」ということになつておりますけれども、この不具者の適用につきましては、本人では不具者と認める場合もあるし、これは一体政令か何かで詳しく規定してあるものでございますか、その点一つお伺いしたいと思います。
  43. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御尤もでございまして、政令の所得税法施行規則の第六條でございます。その税法集の百三十四頁を御覧になりますと、百三十四頁の六條に、「第八條第二項に規定する不具者は、左の各号の一に該当する者とする」というので、一項から十二項までずつと列挙しておりまして、これはたしかなんか身体障害者福祉法ですか、あれに基きまするいろいろな定義と歩調を合せまして、あれの全部ではありませんが、あれの一定の段階を拾いまして、厚生省とも打合せしまして範囲をきめているような次第でございます。この政令の條項によりまして、具体的には大体はつきりするかと考えておる次第でございます。
  44. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これは私もう一遍調べて見ますが、そういたしますると、これは單なる身体の障害者であつて、その本人の能力、例えばめくらであるけれどもむしろ宮城道雄氏のような人もございますですね、そういうことは全然考慮されずにただ身体障害者であるからというので、如何に身体健全なものよりあれでもそういうことは考慮されずに不具者の適用を受けることに相成る、今度の新らしい規則によりますと四千円の税額を軽減するということになるわけですね。そういうふうな処置をおとりになるおつもりですか。
  45. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その通りでございまして、所得がある人の場合におきますると軽減でございまして、而もその所得金額の如何を問わず四千円は不具者であれば軽減するということにいたしております。ただ扶養親族として控除します場合には、所得がない場合に限ります。所得があります場合におきましては、この不具者控除とそれから基礎控除と、両方受けることになるわけでございます。
  46. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると四千円の今度の税額控除になつたのと、前の勤労控除と不具者控除それから寡婦等の控除と、これは減税が一体どれだけ安くなるのですか。実際の税額といたしまして、四千円の税額控除と今までの不具者控除との場合にパーセンテージで行きますと本人にどれだけ有利になるか、どれだけの減税になるか、この点を一つ説明願いたい。
  47. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは実は所得の階級によつて違うのでありまして、今度のほうが低額所得者に有利になりまして高額所得者は若干不利になる。と申しますのは今までは所得から一万五千円の控除つたのでございます。所得税税率は最低二〇%でございますが、二〇%の税率の適用を受ける人の軽減額、今までの方法で参りますと税額では三千円の控除になる、即ち所得から一万五千円引くということは、その二〇%の税をまけてもらうことになりますので、税額で申しますと三千円軽減していたことになります。それが今度は税額で一律に五千円になりますと、税率の二〇%の適用を受ける人は、今までよりも控除相当大幅に増加する、それから二五%の税率の適用を受ける人もまだ前よりも軽くなる、三〇%の所に行きまして今度のほうがむしろ若干不利になる、それ以上の所得者は今度のほうが不利になるということになります。数から行きますとどちらかというと、こういう控除は低額所得者のほうが多うございますので、全体といたしましては納税者に有利になる、こういうふうに考えておりますが、個別的には今申上げましたようにその人の所得が多いか少いかによつて、多い人は今までよりも若干不利になつて、少い人は今までよりも有利になる、こういうことになります。これはこういう控除の性質上どうも今までのよりもこのほうがいいのじやないか。それから所得控除になりましても、非常に源泉課税の際にむずかしくなる、と申しますのは、今までは扶養控除は一律一万五千円でしたが、今度は三人目まで二万円で四人目以上は一万五千円というようになつたので、表を作ります際に、この不具者関係所得控除をいたしますと、むずかしいために表の数を十倍ぐらいにしなければならない。従いまして源泉課税をされる場合にも面倒になりますので、今度はむしろ税額控除に改めたほうがいいというので、二つの点を考慮いたしまして、四千円の税額控除にいたした次第であります。こういう控除の性質から行きましても、今度のほうがいいだろうというので変えることにいたしたのであります。
  48. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは次に寡婦控除でございますが、寡婦と不具者と、これは一体金額を一緒にせられましたが、この理由一つ。それから寡婦の問題、戰争未亡人等の関係がありまして非常にこれは軽々しく判定……不具者と一緒にしてしまつであるわけですが、なぜそう申しますかと言うと、戰争犠牲者で夫を失つた者、それからまだ夫の生死不明の者、これを寡婦ということになつておりますが、そういたしますと、未帰還者の家族等で細々と子供を抱えて養つている人もこれも寡婦でありますし、又同じ夫を失つたという中には、離婚した中には、相当女でも男以上に收入のある人もございますが、そういう人たちと、本当に戰争未亡人等で子供を抱えて養育をしている人たちに税金をかけるということになれば、もう少し寡婦の税額控除をたくさんするということに私は持つて行かなければいけないと思うのでありますが、まあ身体障害者と同じようにしたという根拠、それからこれをもつと今後殖やして行かなければいかんと思いますが、社会福祉法の問題とからみ合しまして、この点について配慮は、考慮はされているのか。一体四千円に不具者と一緒にしたという理由、今度寡婦の控除についてどういうお考えを持つているか、この点一つお伺いしたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは議論しますといろいろな考え方があろうかと思いますが、不具者の中にも非常に気の毒な人と、それほどでもない人とおる。それから未亡人の中でも恐らくいろいろな事情に置かれている人がおありになるだろうと思いますが、さて然らば差別をつけるだけの十分な理由があるかということになりますと、これは私はやはり議論が又出て来るのじやないかと思うのでございます。従いまして、所得税で全部そういう問題を解決するわけには行かない。所得税はやはり一つの解決にしかならないのでございまして、余り違えまして複雑にするのも、一方においては考えなければならない。そういう点を考えますと、先ずやはりこういうような担税力の低い、社会的に弱者に対する救済の制度といたしましては、先ず同額程度でいいのじやないかと、こういう考えでございます。それで細かく議論いたしますと、同じ不具者の中でも差別をつけるか、或いは寡婦の中でも差別をつけるかという問題もあろかと思いますが、そこまでは税法では手が及ばないと申しますか、行き切れないというところが本当かと存じます。なお今お話のような問題はやはり別途に来年度から相当な手当等を支給しまして救済することになつておりまして、そういういろいろな措置で、現在としましては妥当な社会保障ができますように行くべきものではないかと、まあ私どもはかように考えておる次第でございます。
  50. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は寡婦も相当これは引上げてもいいのじやないか、寡婦控除なるものはもつと引上げてもいいのじやないかということを申上げるために言つているのであつて、不具者や勤労学生と一緒にしてしまうというほうが、あなたのほうは簡單であるからそういうふうにしたのだと言うのですが、それでは税金を取る場合に別の面によつて考慮するというならなんですが、不具者も、勤労学生も、それから寡婦も皆一緒に税額四千円の控除というふうにしてしまうということは、これは不公平じやないか。そういうことは担税力のない程度は一緒であると、こういうふうに認めてやつたものか、それとも取扱上の便宜からそういうふうにやつたのが、こういうことを聞いておるので、将来これを殖やす必要があると考えておりますが、あなたはどう考えているか、この点を申上げておるのです。
  51. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これはいろいろな見解もあろうかと思いますが、私は不具者の場合はこれはやはり同情すべきところが多いのじやないか。勤労学生はちよつとその次かと思いますが、不具者と寡婦と一体どちらにすべきかということになりますと、これは率直に申しまして私は菊川さんと反対の議論をする人も出て来るのではないかと思うのでございます。従いましてそういう際におきまして、強いて何と言いますか、区分するだけの十分な理由があると申しますか、そういう点でちよつと私どもとしましては考え得られないのと、それから今申しましたように、やはり社会救済といつたようなものも、所得税だけでどうも解決するわけには行きませんので、なお不十分な点、或いはそのほかいろいろな方法で考慮いたしまして、全体としまして公平を期するという方向で解決すべきものではないかと考えます。なおこういう寡婦を将来上げるか上げないかの問題は、これはやはりさつき申しましたように、所得税扶養控除とか、基礎控除とか、或いは所得税税率をどうするかというような問題と関連しまして総体的にきめらるべきものでありまして、この際もつと引上げるべきだとも考えないのでございますが、その点よく考えまして妥当な結論を得るようにいたしたいと考えております。
  52. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 條文の解釈についてちよつと伺いますが、所得税法臨時特例に関する法律案の第十九條の第三項に「法の適用については、前項の規定により徴收して納付すべき所得税は、法第三十七條の規定により徴收して納付すべき所得税と、……みなす。」という、ずつとこういう規定がありますが、これは一体どういう場合に適用があるのですか。何故こういう規定を設けなければならなかつたか。
  53. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは非常に法制技術的と申しますか、万全を期した規定でございまして、罰則の適用その他につきまして、法律が違う場合におきましてはいろいろな問題がございますので、こういう規定を設けまして、疑問の余地なからしめようという規定であると思います。
  54. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 どうもこの規定がなくとも当然行けそうであるし、殊に罰則の点についてはそういう御懸念もあるかも知れませんけれども、この罰則以外に何故こういう規定を設けなければならなかつたかと、ちよつとそれがわかりかねるので、何か非常に重要な事由があるのではないかと考えますけれども。
  55. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは特別の事由というわけでもございませんが、今御指摘のように罰則の適用等につきましては、相当法律を嚴格に解釈することになつておりますので、やはり疑問の存する際におきましては、こういう規定を設けておくのがいいのじやないかという考えでございます。
  56. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 この罰則の規定については、あとのほうで「法第六十九條の二の規定並びに法第七十二條及び第七十四條の規定」云々というので足りるので、その前のほうは罰則のことに関係ないように考えられるのですが。
  57. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) いわゆる刑法上の罰則のほかに、利子税とか、加算税とか、民事罰とか、そういうものの適用につきさしても、こういう規定を設けておかないと疑義がありますし、はつきりしないということになるかと存じます。
  58. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 それからこの租税特別持経法の一部を改正する法律案の第五條の六というのは、私何回読んでもどうも非常にわかりにくい法文なのであります。例えば第五條の六真中頃に「その事業の用に供された日以後三年内の日を含む各事業年度について同法及び同法に基く命令の規定により計算される当該機械等の償却範囲額は、同日以後三年間を限り、これらの規定により計算される当該機械等の償却範囲額の百分の百五十に相当する金額」と、こう書いているのですね。卒然として読んで見ると、一定のものの償却範囲額はその償却範囲額の百分の五十に相当すると、こうとしか読めないのです。誠に不可解な條文のように考えられますが、如何ですか。
  59. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは條文の書き方は恐らく法人税法、その施行規則等で普通の償却をきめておりますが、それを一応上台にいたしまして、それで認める償却、それで又これを適用して認めるわけでございますが、その償却範囲額がその法律で定まりました五割増の金額とするというわけでありまして、他に表現の方法があるかないか、そういうような御意見があるものと思いますが、これも正確な書き方の一つだと思つております。
  60. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 むしろ第何條の規定にかかわらず、この場合の償却範囲額はその前の規定の百分の百五十に当る、こういうふうになればいいのだが、そうじやなく、この規定に基いて認められる償却範囲額は、その認められる償却範囲額の百分の百五十にすると、こう規定されているのはどうもおかしいと感ぜられます。
  61. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは申上げますと、五カ年間、御承知の通り法人税法及びその施行規則で或る事業年度の控除不足額は五カ年間繰越控除する規定を設けておりますが、その規定もこういう書き方によつて自然に適用になるようにしようという意味でございます。若しこれを書かないといたしますと、そういう規定が自然に適用になるかどうか疑問で、又今後そういう規定をここにも入れなくちやならないということにもなりますので、飽くまでもやはりこれは法人税法の特例ではあるが、同時にその特例としましてきめました償却範囲額というものは法人税法及びその施行規則で定めました償却範囲額に置き替わる、そういうふうになるのだ。従つてそれによつて控除不足分が生じますれば、当然五カ年間は向うの施行規則等で控除ができるようにしよう。それをここに全部同じようなことを羅列して引けばいいわけでありますが、それを略する意味におきまして、こういうような表現方法を採用いたしておるような次第でございます。
  62. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私は果してこういう表現方法で局長のおつしやるようなことになるかどうか頗る疑わしいと思うのでありまするが、それよりもなおむずかしいのは、その次の項なんでありまして、この項は十遍ほど読んで見てもよくわからん。その中の最も不可解なのは、その真ん中頃に、「(本項の償却不足額があるときは、当該償却不足額を加算しない前の金額)」と括弧しております、が、これは問いを出してそれの答えに問いを以てしておるようなので、どう読んでもわかりかねる。いずれこれについても先ほど伺つたような理由があるかも知れませんけれども、要するに私は非常にこの法文は難解で、恐らく專門に起案されたかたも翌年ぐらい読んでみたら何のことが書いてあるのかわからんということになるのではないかと思う。この償却のことは非常に技術的なものでありますからして、この法文は成るべくすらりとして、そうして特殊のものは命令に譲るとかいうことにして極く簡潔にしてもらいたいと思います。一方において退職積立金のごとき重要な規定を政令に譲るようなお話でありますが、私はこれは考えもので、むしろああいうふうに法人の計算上非常に大きな変動を来たすようなものは法律はつきり規定して、而もその積立金の運用を縛るならば、縛ることも法律はつきりして誰にでもわかるようにすると同時に、こういう非常に專門的なことは或いは命令に譲るとか、そのほか私は取扱通牒で十分行けるのではなかろうか。幾ら読んでもわからんような法案をたくさん作られるのは誠に閉口だというような感じがいたしますけれども、如何でございますか。
  63. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 大矢さんが主税局長の当時は大分法律簡單にしまして、命令で書いていましたり、或いは取扱通牒で更に相当大胆な解釈、通牒をよこしたこともあるのでありますが、最近は成るべく法律か政令かで事柄をはつきり書こうということになりまして、法律で書くとなるとやはり相当細かいことまで書いてしまうというのが最近の傾向でございます。この條文は難解なようでございますが、一遍事柄をわかつて頂きますと、案外簡單に読めるのではないかと思います。一項と二項との関係におきましても、やはりそれぞれ両方の規定が関係ございまして、右に行つたり左に行つたりしておりますが、その答えは割合に簡單ではないかと思うのでございまするが、まあ成るべく私どもとしましても法文の体裁を簡單にしようということは考えておりますが、同時に、この頃は法制局の意見といたしまして、成るべく法律で書くならわかりいいように書くという方針になつております。まあややその辺が若干ちぐはぐになつておるきらいがございますが、今後よく一つお話の点等も勘案いたしまして、條文を作りますときよく勉強して見たいと思います。
  64. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 退職積立金の関係はどうなりますか。
  65. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 退職積立金の点は法文で書くかどうか問題にしたのでありますが、これは特別な臨時措置というよりは今後の恒久措置にいたしたい。法人税法課税標準の計算については命令を以て定めるという規定がありまして、その規定に基きまして現在御承知の通り貸倒準備金等の規定も準備的な状態でございますので、まだこれは政令でいいのじやないか、こう考えるのでございます。併しこの点につきまして、将来適当な機会に法人税、所得税を通じまして大分たびたび改正を加えました結果條文がちぐはぐになつておる点がございますので、適当な機会に総合いたしましていいものを作りたいと思つておるのでございます。差当り税法相当御承知の通り複雑になつておりまして、そのときの改正事情その他で簡單なつたり複雑になつたりしておることは、私ども率直に認めておるのでございます。できまするならば所得税法法人税法につきましては、全部新たに書下しの一つ法文を作つて見たらどうかということも主税局におきましてそろそろ準備いたしておるのでございますが、なかなか容易な、陣容も擁しませんので、一年、二年ぐらいかかるかと思いますが、外国でも、私イギリスに参りましたところが、やはり所得税法につきまして二年がかりで作つたと申しておりましたが、約四、五百頁の千條に及ぶ新所得税法の、條文の実態は変えなくて本当の形式的な書き方、実態につきましても極く細かな所得計算方法の技術的な問題、そういう問題は新らしい事項があつたのでございますが、体裁を新らしくするようなグラフができておりまして一つつて来ましたが、まあそういうものも参考にし、一つ税法の整理と申しますか、法律的な及び会計技術的な新らしい姿にするというような方面につきましては、なお大蔵省といたしましても少し勉強して見たいと思つておる次第でございまして、そういう際にはよく一つ更に御意見等を承わりまして、十分体裁のいいものにするように努めたいと考えております。
  66. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題と関連するのでありますが、どうも私どももこれは拜見しましてなかなか、租税特別措置法の一部を改正する法律案を何回読み返して見てもわれわれわからん点が非常に多いのであります。ちよつと簡單な問題でありますが、丁度御説明のときに私おりませんでした関係ちよつとお伺いいたしたいのでありますが、今の棚卸資産に対する積立金ですね。これは棚卸資産を常時決算ごとに九〇%と評価するということと実際的にはどういう違いが出て参りますか。
  67. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは会社の経理をはつきりさせよう、つまり会社の内部の計算だけで評価を格下げするということでございますと、最近の会計原則と申しますか、商法上の原則等から考えましても、まあ面白くない。やはり利益として出すべきものは出して、その中で一定の金額ははつきり準備金なら準備金に繰入れまして、損金にすべきものは損金、それを適当のときには繰戻しまして、又新たな必要があれば又積立てる、そういうことは最近の会計原則に基きまして、すべて公然と明瞭にという、そういう趣旨でやつたほうがいいのじやないかという趣旨で今回このようなふうにいたしたのでございまして、実質は結局やり方によりまして、同じ評価減という方法によりまして、できないこともないかと思います。
  68. 田村文吉

    ○田村文吉君 評価自体については十分いろいろな問題が起り得ると思いますが、これはお互いに税務署と当事者と両方でそれを幾らにするということですから、そういうような問題をもつと簡單に、いわゆる国民が見まして簡單にわかるような法律にすべてを一つつてもらいたい。余り大蔵省に頭のいいかたばかり揃い過ぎておるから、もう少し大蔵省に凡才をおくようにしたらどうかということをこの間も笑つたのでありますが、少し複雑になり過ぎる。そういうようなものは九〇%なら九〇%に評価するというだけにしてお置きになつて、昔のようにやつてお置きになれば何にも面倒はなかつたのじやないかというふうに考えるものですから、それで実質的にどういう違いが出るかということを実はお伺いしたのであります。実質的には大した変化のないことであれば、それはそれでできた法文でありますから私どうこうは申しませんが、次に第二の問題としてお伺いしたいのでありますが、積雪寒冷地帶における公務員に対しては特殊の給与をやるとか、或いは又事業所得に対しては、事実上殆んど考えられておりませんが、若干の考慮をするとか、或いは單作地帶の農家に対しては若干のことを考えるということが謳われておりますが、積雪寒冷地帶における公務員以外の勤労者は如何なる方法によつても救済されていない、これに対して政府当局としては何かお考えがあるか、これは全然止むを得ざるものとして運命と諦めてもらうのだというお考えでおいでになるのか、どうもその点が非常に不公平に実は感じるのであります。ひとりこれは勤労所得者だけではありません。そのほかに類似の人もございますが、どうも生活損耗が非常に多い生活をしておつて、それに対して公務員ならばこうする、勤務地手当を加減するとか、又形式の上から言えば、事業所得に対しても生活損耗を引いてやるとか、これは事実は余り行われていません、いませんが、そういう方法があるのに、勤労者に対しては、形の上から言つても、どこから言つても方法がないということを、そのままに見逃しておくべきものであろうかどうか、こういう点を私非常に疑問に思つておるのですが、どうお考えですか。
  69. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お尋ねの前段のお尋ねでございましたが、先ほど申した通りでございまして、ただ一つ、以前は原価と申しますか、時価の一割、原価の五分というので、原価に対しましても五分以内の評価減を認めていたのであります。そのほうはどうも考えますと十分合理性がないと思いますので、今回それは考えておりません。従つてその点は実質的に変つていると御了承願います。  それからもう一つは、今積雪寒冷地帶の課税の問題でございますが、これは私どものほうにいろいろな意見が出ておりますし、実はいろいろ研究いたして見たのでございますが、御指摘のように、事業所得等でございますと、経費と申しますか、所得を得るための経費そういう方面においては、普通の所よりも多ければ多いで十分実情に応ずるように査定する、これは当然のことでございますけれども、そういうことができるのでございますが、勤労所得となりますと、なかなか勤労所得を得るための費用が余計かかるということも、なかなか簡單には言えんでございましようし、又生活費の問題になりますと、率直に申上げまして田舎よりも都会のほうが生活費が余計かかる、基礎控除扶養控除を違えるか、人により、地域により、いろいろ條件の差がござまして、これを所得税法で何か考えるということはどうもなかなかむずかしい、決して頭から解決しないという態度で臨むわけではございませんが、解決するといたしましてもどういう方法で行きますか、これはなかなか簡單な方法がなくて、所得税の性質上止むを得ないのではあるまいかというふうに、今のところ考えておるというような次第でございます。なかなか所得税控除その他に差を設けてやるというのもむずかしうございますし、さればと言つて、仮に積雪寒冷地帶は何かさつきの不具者控除みたいな控除を設けるというのはどうか、限界につきましてもむずかしいのでございまするし、考えられましてちよつといい結論が出ないので、止むを得ないのじやなかろうかというふうに今のところなつておりますが、なお併しいい考えがありましたら、十分の理由がありますれば、検討してやつて見たいと思います。
  70. 田村文吉

    ○田村文吉君 公務員のほうは何かいわゆる石炭手当とか、或いは又勤務地手当だとか、寒冷地帶の手当が出るとかいう手が打たれておるのですが、民間の者は全然そういう手がない。税法上でも加減してもらう以外に手はない。それはそういう所に人間が住んでいるのが惡いのだから、成るべくそういう人間は、そういう所よりもつと温いところで生活したらいいのだということになると、それでは大きい国土計画の上から言つても困る。どうしても寒いなら寒い所で我慢して、仕事はやつてつてもらわなければ困るのであります。こういうところでありますから、これは面倒な問題ではありましようが、これはどうしても所得税法の上で特別措置考えて頂く以外には、私もいろいろこの問題については研究して見た、研究して見たが、最後結論は、結局税法上において加減してやる以外にない。殊に今日は社会立法の関係からいろいろの控除考えられている。そういう場合において、そういうような点を一つ考えて頂くべきじやないだろうか、こういうふうに考えて、ただ面倒だからやらないということでなしに、もう何千万の人のうちで全く税法上において不公平に扱われるという人が何百万、或いは千万以上の人があるだろうと思うのです。こういう人たちに何か一つ考えてやつて頂いていいのではないか、こう考えますので、どうもそういう点にもう少し御同情がないというと困るのです。税当局に特にお願いすると同時にですね、何かはかにそれとも考え方があるのか、税法自体に何か救う方法があるのかということを考えて見て頂きたい、こう思うのであります。
  71. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 先ほど申しましたように、これはなかなかむずかしいのでございまして、私どもも、生活費の問題として一遍考えて見ようかということで考えたのでございますが、基礎控除、家族控除を地域によつて変えるということになりますと、いろいろ問題が出て来る、都会と農村で生活費が違うということもはつきり出て来る、その差をつけるというと、これもどうも必ずしも妥当であるかどうか、問題になるので、率直に申上げまして、私どもこれならば妥当であるという、あれはこうすべきであるという、はつきりした根拠と方法を見出し得ないような状態でございますが、なお併し、確かにそういう声は、一般的な声でありますので、ともかく更に反省して検討して見たいと思います。なかなか今のところむずかしい問題であるということを重ねて申上げておく次第であります。
  72. 山本米治

    ○山本米治君 只今田村委員最初にお触れになつたこの棚卸資産に対する価格変動準備金制度の問題でありますが、この時価に対する軽減割合を二年後に九割となるようにという制度ができまして、大変結構と思いますが、この価格変動は業種によつて相当違うと思うのです。そういう意味合いにおいて、この二年後に九割というのにもう少し幅を持たせる、彈力性を持たせるというような御考慮がないかどうか。例えばまあ最近綿花関係もそうであります。羊毛関係におきましても非常な大幅な変動でありまして、この一年間に価格が半分になつたり、三分の一になつたりするというようなこともあつたのでありますから、ここにもう少し彈力性を持たせる、業種によつて彈力性を持たせるというようなお考えはないかどうか、一つ伺いたいと思います。
  73. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 業種によりまして差をつけるという考え方も確かに一つ考え方かと思いますが、どうも併し、きればと言いまして綿糸、羊毛等には二割にして、その他は一割にすると申しましても、なかなかこれはまだ簡單な物差で行くわけにも参らないのじやないかと思うのでございまして、これも大体一つ限度を設けまして、その範囲内におきまして企業で適正な経営をやつてもらうという意味合いのものでございますから、個々の範囲内におきましてそれぞれ各地の実情に応じてやつてもらいたい、そうなりますと、もつと幅を全般的に広くしたらどうかという御意見もございましようが、そうしますと最近、又場合によりますと不適正なものにもなつて参りまして、なかなか簡單な方法を見出しがたいのでございます。先ず一律でいいんじやないかと私考えたのでありますが、なお実行した上でそういう点につきましては、実情に即しないところがございますれば、よく検討して見てもいいかと思いますが、卸売事業と製造業と、それから棚卸資産の比較的多い事業と少い事業をむしろ差をつけるならば差をつけたほうがいい、このことでございますが、そういう角度から細かく行きますと、なかなか問題が又ございまして、今のところこれはという案が実は見出しがたいのでありますが、まあ実行した上で、更によくそういう問題につきましては検討してもいいと思いますが、差当りはこの程度でいいんじやないかと、こう考えております。
  74. 山本米治

    ○山本米治君 只今の御答弁通り、これに段階をつけるとなると、業種にいたしましても、今のそういう棚卸資産の多いもの少いもの等差別をつけるとなると、なかなかこれ又むずかしい問題で、そういう意味で私はむずかしいとは思つておりますけれども、なお御研究の上、或いは暫らく実施の上そういう区別の或る標準ができましたら、御考慮、御研究をお願いしたいと思います。
  75. 田村文吉

    ○田村文吉君 或る仮定を持つたようなことで以て論ずるようで恐縮でありますが、これは法人税法の上にも、あらゆる方面に関係しますが、私はこの機会に申上げておきたいと思うのでありますが、生糸が現在二十二万円一梱しておる。今日この生糸というものが二、三年あとに十万円に下るか、五万円に下るか、これは誰も下らんと断定し得る人は恐らくないと思います。と言うのは、丁度大正時代におきまして、非常な景気になつたときに、商品が大抵十倍近くまで行つた、その場合値が下るときにはどういう下り方をするかというと、決してこの法律によつて救われるような一年に一割程度の値下りで済むというようなことはないのでありまして、下るときにはぐつんと三割、五割と下つて来る、そういう時代が長い間かなり続いて参りました結果は、例の、御承知のように台湾銀行の問題や、或いは非常に不祥な取引が出たりいたしまして、十何年というものは事業家は苦労をしたことがあります。事業家から考えますと、多少利益があるときに原価の償却を十分しておいて、そうしてそういう時代が来ても泣き言を上げないようにして行かなければならないということは、特に今日のような日本の自立経済が叫ばれておる時代におきましては非常に必要なことであると私は考えております。それを何もかも税金を取るほうがいいということで、表面的に数字が出たからと言つて、皆税金を根こそぎ取つてしまう、これでは、私は必ず、ここに断言いたしますが、三年か四年のうちには非常な困難と、経済界の恐慌を来たす、との場合に備える途が一つもない、こういうようなことになりますので、実は私は棚卸資産減の評価をお認めになるなら、毎年一割ずつ殖やして行く、或る程度までは十分の一とか、或いは五分の一とかいうくらいまでは、手持の商品というものは切下げられるように御配慮なさるものかと実は考えておつたのでありますが、この法律を拜見すると、ただ一遍こつきり、一遍きり一割をお考えになつて、そのままずつと行くと、こういうことでありまするというと、非常に私は事業の将来の上から考えて、日本の経済の全体から考えて非常に心配なことを、これは税務当局としては税を取りたいというお心持は無理はないけれども、余りにそれでは残酷であり、又将来日本の経済を混乱させるもとだと、こう考えますから、実はもう少しこれに対する御考慮があるものと考えておつたのであります。併しこの法案を拜見して非常に失望いたしたのでありますが、事柄自体は、さようなことは御研究になつておることとは思いますけれども、必ずさような時代が遠からず来るということだけは私は断言申上げます。そしてそれに対して税務当局としての御配慮を願つておかないと、そうしてしまいには卵を生む鶏もなくなつてしまうということになるのではないかということを申上げて、御注意を促しておく次第であります。
  76. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 只今の御意見非常に御尤もな点だと存じますが、ただそういう場合につきましては、いろいろ政府のとるべき施策があろうかと考えるわけでございまして、これは私の個人的な意見に過ぎませんが、やはり最近におきましては大分考え方事業界、政府考え方等も昔よりも進んでおりまして、デフレの傾向にあるときには、むしろインフレ政策、インフレ傾向のときには政府においてはデフレ政策を、引締めの政策をやりまして、極力景気の変動を少くするということにつきまして、この前の不況以来、世界の各国におきましてもよほどそういう点につきましては考え方が進んで来たと申しましようか、彈力性のある運営をするような方向に来ているのではないかという気もいたしますし、併しこの問題は一般財政政策という問題でございまするので、あえて私はこの機会に申上げるのはどうかと思いますが、併しそういう問題も併せて考えないと、なかなか税法上の問題だけでは行かないのじやないかという意味におきまして、ちよつと附加えたいのでありますが、税法の問題といたしましては、実は我が国の税法は、その点におきましては、世界のどこの国の税法よりも実は相当、率直に申しまして、配意をしておるということは言い得るのでございますが、一つは今度設けましたこの制度も、殊に貸倒の準備金制度を設けておりますのも、今年はこれも若干拡張しようと思つておりますが、これが一つ、償却等につきましては最近特に一、二年来改善を加えまして、相当な償却ができるようにいたしております。更に今回特別措置法による五%増の償却、それから重要産業、これは一部産業に限りますが、重要産業につきましての二分の一の特別償却を認めております。固定資産につきましては、償却もできるだけ多くいたしまとて将来に備える御趣旨のようにやりたいと思つております。  それからもう一つは、欠損が出ました場合、この措置をとることになつておりまして、これは日本はずつと昔やつておりましたが、今まで余りやつておらなかつたのでありますが、欠損を生じました場合には繰戻し控除と言いまして、前に取つた税金を返す、相当経済的に、むずかしく申しますと、経済が不況になつて、企業が相当赤字を出す、そういうときに返すのは大変だ、こういう心配はあるけれども、最近の財政政策の考えからいたしますと、そういう赤字政策をやつたほうがいいという説もありますが、税金を、返すべき税金は返しまして、結局企業に対しまして幾らか足しにする。それでなお切れない分につきましては爾後五カ年間、法人の場合でございますと繰戻し控除を認めまして、負担調整を図る、これは勿論経済的な政策の配慮というよりも、飽くまでも法人の事業負担を適正にするという見地から考えられておるわけでありますけれども、そういう点は実は昨年から本年にかけて相当税法としましては考えて来ておるつもりでございます。欠損の控除等につきましても、アメリカ、イギリス等の例よりも実は日本のほうが進んでおりまして、アメリカでも最近になりまして繰戻し控除を認むべきだということを国会で議論をされておるようでありますが、恐らくそうなるのかも知れないと思つておりますから、できる限り税法の上におきましても配慮を加えてやつておる。ただもつと一つ徹底した施策を講ずべきではないかと、こういう御意見かと思うのでありますが、それは一つそのときの財政事情並びに今後の推移等を考えまして、私どもといたしましては十分勉強しまして、或いは産業の健全なる発展、不況に備えるといつたようなことにつきましては、よく考えを入れまして配慮いたしたいと思います。
  77. 田村文吉

    ○田村文吉君 税の方面からのいろいろの御配慮を頂いていることはわかつているのでありまするが、何分にも一ドル二円で済んでおつたものが、今日一ドル三百六十円という途方もない数字上の厖大な形になつているのでありますから、これが收縮し始めるときには非常に危険があるということを考えまして、私どもは今日、昨年朝鮮事変以来大分殷賑産業が出たんじやないかというような簡單考え方で進んではおかしいじやないかというような議論がとかくある。又それに対する対応策もこの程度つてつたらいいじやないかというふうにお考えになるということは御無理もないことでありまするが、甚だ私ども口はばつたいことを申上げますが、大正時代におけるあの恐慌をずつと体験して参りました上から考えますと、今の為替は三百六十円にもなつている今日の時代で、この物価がまだ一割くらいの償却を認めているというような、棚卸を認めて置くというようなことでやつてつたら、これは事業会社というものは二、三年のうちにはもう非常な目に会う、そのときになつて政府は救済をするとか何とかいういろいろの手をお打ちになるでしようが、そのときには惜しいかな鶏は死んじやつて卵は生まない時代になる、こういうことになろうかと考えますので、ただ御配慮は私は十分にわかつておりますが、この日本の物価のインフレの形における対策としてはまだまだ非常に不十分、若干不十分だというもんじやなくて、非常に不十分である、こういうことを私は憂えるのであります。まあ以上は意見の問題でございますから、又私の或る仮定の下に議論をしている形でございますから、強いてそれに対してどうこうという答弁を求めるわけじやありませんが、あなたもこれからますます大いに政治上に働いて頂かなければならんのでありまするが、よくこの点は呑み込んでおいて政治をやつて頂かないと困るということをはつきりと私は申上げて私の質問といいますか、意見の開陳を終ることにいたします。
  78. 小林政夫

    ○小林政夫君 今のに関連して来年度の法人税の税率引上げによる増收が三百億、こういつた価格変動準備金の損金算入、或いは特別償却に評る減税は百億、こういうことですが、今の価格変動準備金の操入の恩典に浴する場合は、簿価が時価の九割以上であるという場合に浴し得るわけですね。そうしてこれは物価政策の、物価に対する見通しの問題とも関係して来るわけです。一体この百億の減る中で、価格変動準備の損金算入によつてどの程度この百億の中に減税分を考えているか。
  79. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今回特別償却の制度を拡張する、それから変動準備金を設ける、それから例の退職積立金を損金に算入する、それから先ほど申上げましたように貸倒準備金の限度を若干引上げたいと思つておりますが、そのような措置によりまして御指摘のように百数十億減る。法人税の税率引上げによりまして三百億強、三百二、三十億、ただ收入となりますと、三百億になるかも知れませんが、課税から行きますとそういう見当としまして、差引二百億足らずの法人税が殖える。大体この見当でございます。その中で大きなのは棚卸資産の関係と、それから退職積立金の損金の関係、これがそれぞれ四、五十億くらいになるんではないかと見ております。そのほかに特別償却の改正、それから変動準備金等の改正で、合せまして百数十億減になる、こういう大体の見当でございます。法人税の来年の收入はまだはつきり固めておりませんので正確なことは申上げかねますけれども、大体におきましてはそういうようなことに相成るかと私ども見ております。それから棚卸資産の変動準備金の関係でございますが、例えば原料品なんか持つている所でございますと、これは相当その効果は觀面に出て来る。それから卸売企業のような場合におきましても、相当出て来るようでございまして、若干尻上りになりましても、企業によりましてはこれは相当積める企業が多いと思つております。ただ製品になりますと徐々に値が上つて参りますと、安い原価で仕入れましたものでコストが計算されます関係上、必ずしも積立準備金は余り出て来ないという場合が出て来ると思いますが、原料品、それから卸売企業が持つている商品、それから有価証券、こういうものにおきましてはやはり状況次第、或いは企業の種類によりまして相当損金に算入し得る、積立金ができる、かように見ております。
  80. 小林政夫

    ○小林政夫君 見通しの問題ですから大分むずかしい問題ですが、大蔵大臣も世界的な趨勢からいつて物価は強調であると思うというようなことを予算委員会でいつておられております。そうなつて来ると、今五十億くらいに見積られているが、時価の九割よりも以上に簿価がある、原料の面であろうと、製品の面であろうと、これは相当少くなつて来る。今五十億くらいと言われるが、その五十億というのは、業種別に大体当つて見ての話でありますが、当つて見ても相当来年度の物価の趨勢、又インフレを心配しておるときにおいてデイス・インフレの線で貫くとしても、更に問題がある。その点について物価政策の問題とも関係するのであるが、その見通しが正しいかということについてもう少し具体的の説明ができたら……。
  81. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この見積りはいずれ来年度の予算の算定をします際におきましては、更に詳細に計算根拠を明らかにしまして、御説明申上げるつもりでございますが、現在一応調べておりますところによりますと、御承知の通り棚卸資産につきましていろいろな評価方法がございます。そのどういう評価方法をとつておるか、それをもとにいたしまして、そういう際におきまする簿価と、それから時価の一割、その差がどのくらい出て来るか、そういうものをもとにしまして、大体どのくらい積立準備金に繰入れる余地があるか、そういう方面で一応試算しましたのが先ほど申上げました数字でございます。その際に物価がどんどん上つて行きますと、これは御指摘通り比較的積立て得る限度が少くなつて来る。これも併し有価証券、原料品などの場合には必ずしもそうでない場合もあると思いますが、早く廻転するような場合におきましては比較的影響が少い。二カ月ぐらいで廻転するようなものが大分でございます。そういう場合におきましては、或る程度物価が上りましてもやはり積立限度というものが相当出て来るかと思いまして、これは一概にはなかなか言いにくい。併し物価が、これは先ほど小林さんもお話のようでございますが、今後そんなに日本の物価が上つたのでは、これはいろいろと影響がございまして、国際物価に比べまして日本のが若干上り過ぎているくらいでございますので、大臣も話されましたように、世界の物価は若干上り気味だろうが、日本の場合はそれよりも上り方が少くて、或いは横這いしている、そういう方向で、できるだけ政策をとつて行く、恐らく来年度の予算の編成に当りましても、そういう條件を予算の上においてどうして作るかというのが一つの重要問題だと考えておるのでございますが、そういうことによりまして極力安定を図るということを考えつつ、私どもとしましては考えておるということを附加えさせて頂きたいと思います。
  82. 小林政夫

    ○小林政夫君 これは、問題はそこにあるということは一応御指摘のあるところでございますが、それから田村委員の御意見にあつたかも知れませんが、一回限りのことで、次回からは大してこれによる減税効果というものは期待できないので、そうこれによつて事業が減税として非常な恩典だということは必ずしも言えない。ないよりはましでありますが、殆んど一回限りのものになるというふうに思われます。  それから次に所得税法臨時特例に関する法律案の中で、附則の第四項ですが、これの意味ですね、これを第二十條とも関連して逐條解釈して頂きたい。実際どういうことになるのか……。
  83. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この棚卸資産変動準備金の影響でございますが、大体私どもの調べによりますと、法人の持つている棚卸資産の総額が一兆一千億くらいに期末総額はなりはしないか。これを総平均一%格下げをしましても、利益が百億以上減りまして、それだけでも総額で四十二億以上法人税に影響して来るというわけでございまして、これは案外小林さんから御指摘がございましたが、全体から見ますと、影響が実は相当大きいのでございます。勿論範囲が広い個々の企業にとりましては、大したことではない場合もございましようが、全体としてこれは無條件にどの企業にも適用になりますので、うまくやりますと相当に影響が多い項目の一つであると、かように私ども考えておりますが、併し今お話のように、物価事情もございますので、まあ全部限度額までやるものとしては見ていないのでございますが、今申上げました程度歳入への影響は少くともやはり考えておかなければいかんのじやないかということを考えておるのでございます。  それから今御指摘の特例法の附則の四項でございますが、これは例の還付加算金をつけますのを、確定申告の申告期限後からにする、こういう意味改正でございまして、税法改正によつて不用になつた返す部分につきましては、そのほうがいいのじやないかという考え方でございます。
  84. 小林政夫

    ○小林政夫君 確定申告後ということに間違いないですか。
  85. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 確定申告の期限後から還付加算金をつけるということです。
  86. 小林政夫

    ○小林政夫君 先ほど二十六年度においては保証あるということは私も認める、法人税の二割……、棚卸資産の問題ですが、二十六年度の税收においては減收になるということは、或る程度あるということは認めますが、それは法人税の二割増額と関連して考えると、その二割殖やすということをそれによつて或る程度減殺するというような効果は一回切りであつて、それからあとは常にそういう減税措置ともならない。一期の決算においてそういう措置が行われるのであつて、ぐるぐる廻つて行くわけですから、その次には積立金は総收入に繰入れられるわけです。だんだん事業規模が大きくなつて、棚卸在庫が殖えて行けば、金額的には上つて行くけれども、まあ收益の割合、ぐんと所得の割合よりも在庫が殖えたという場合には、かなり影響があるのでしようけれども、正常な規模で企業が運転されるならば、法人税の増徴は行政効果としては一決算期限りということは言えると思う。
  87. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 少くも四回に分けて順々にやつております。さつき申上げましたのは最初の一年における影響でございますが、二年目までは累積しまして、その所得の法人税の減になつて出て来る。一回限りではございません。少くとも四事業年度には累次二・五%ずつ殖えて行きますので、その分は減になるということになります。それから一割に達したあとにおきましては、御指摘のようにこれは棚卸資産が増加し、或いは価格が殖える、それだけの分が殖えて行く、こういうことになると思います。それから今の計算は、フルにやるとして計算しておりませんので、フルにやるということまで細部的に計算しますと、もつと累積して大きくなると思いますが、最初の年度におきまして、そのような減になるだろう、こういう見方でございます。
  88. 小林政夫

    ○小林政夫君 私はフルに計算した場合のことを言つたのですけれども、今の税收の点は、フルに計算していないわけですね。
  89. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは来年一年の計算として計算いたしております。フルに計算いたしまして、これは一遍に一割まで行くとしますれば、もつと相当減るだろうと思つております。
  90. 小林政夫

    ○小林政夫君 それから法人税の段階を設けるという意見があつたわけですが、局長としては資産再評価しておるものもあるし、していないものもあるし、いろいろ段階を設けることは望ましいという見解の表明があつたのですが、これを一つ考え方として売上高利益率、売上高に対して純所得、償却或いは金利その他の一切を引いた純所得の割合で考えることについては、どう思いますか。
  91. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今の問題は恐らく法人税の税率引上げではなくて、資本金に対する利益率によるか、或いは売上げに対する利益率等によつてつて行くか、そういういろいろの物差があるから、それで超過利得を計算したらどうか、こういう一つの問題としてのお尋ねかと存じますが……。
  92. 小林政夫

    ○小林政夫君 必ずしも超過利得というわけではない。
  93. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 売上げによる利益といいますと、卸売企業はマージンが少い。それから小売も物によつては非常に違う。製造業によりましても違う。それは商品の回転期間によつて違いますし、事業の性質によつて、非常に正常な場合にあつて違いますので、売上げによる利益率が多いからすぐそれを以て超過利潤にするというわけにも行かないのじやないかと思いますが、世界の各国でいずれも所得に対するフラツトの課税のほかに、超過所得税とか、戰時利得税とか、特別の利得に対する課税方式がございますが、売上げによる利益率でやつている例はちよつと私今まで聞いたことがございません。大体やつておりますのは、二つございまして、一つは投資資本に対する利益率が一定以上超えた場合、これは我が国におきましても超過所得税、或いは臨時利得税等で始終とつた方式でございます。これにつきましては先般申上げましたように、資本の構成が現在非常にまだ正常化していないので、いい物差に今のところどうもまだならない。もう少しそういう物差を用いるには時期を要するのではないかということを申上げた次第であります。もう一つ方式は、過去の利益に対するその後の利益の増加額、例えば戰前利潤百万円であつたもの、それが戰争になつてから二百万円の利潤が出て来た、そういう場合におきましては、差額の百万円を増加利潤として課税いたす、こういう方式はとつたことがございます。我が国におきましても臨時利得税の初期にそういう物差を用いたことがございます。そうなると過去の平均利益が果して企業にとりまして公正なものであつたかどうか、或いは非常に過少であるとか、或いはもうそのときからすでに影響が現れていて、過大であつたとかいろいろ問題がありまして、これにつきましてもいろいろ工夫をこらしてきめておるようでございます。アメリカの現在の超過所得税は、資本金と過去の利益と二つを比較しまして、相当複雑な方式計算いたしておるようでございますが、なかなかいい物差を見出すのにむずかしい問題があるということでございまして、お話のように売上金をもとにしましてやるという方式は、これはどうも私まだ今までそういう方式で特別な課税をしておる例は見たことはないのでございますが、なかなか簡單ないい物差にするにはむずかしいのじやなかろうかと今考えております。
  94. 小林政夫

    ○小林政夫君 例はないので、一応あなたのお考えを伺つたのですが、いろいろな要素がそこに含まれるので、或る程度物差として使えるのじやないかというふうな気持でお尋ねしたわけですが、本日はこの程度で、なお相互に研究して見たいと思います。
  95. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に法人税についてお尋ねしたいと思います。第一は、国家資金と申しますか、今相当政府の資金で以て、政府資金が放出されて、その恩恵に浴している事業、即ち政府並びに政府関係機関の、或いは政府の直接投資に基くところの銀行等から借入金をして、そうしてその恩恵に浴している法人と、然らずして、自己の資金のみ、或いは相当無理をして市中銀行からのみ資金を仰いでいる法人と、これは分け得ると思うのでありますが、その二つの場合に、政府資金の利益を受けているものと然らざるものとでは、相当今資金ということについては一般法人にとつて大事な問題だと思いますが、その政府資金によつて利益を挙げておる会社と、そうでない会社との間に、法人税を課する場合に或る程度の差を設けてもいいのじやないかと思いますが、こういう点は考慮されないのでしようか。
  96. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お話のような問題も一つの問題かと思いますが、政府から資金の供給を受けておるために、銀行等よりも比較的安い金利で出ている例はございましよう。ございましようが、だからといつてそれじや余計な利益を得ておるかということになりますと、必ずしもそうにもならない。大体政府資金が今まで行つておりますのは、前の復興金融金庫からの貸出を受けた資金、それから最近は開発銀行で資金を出しております。それと見返資金で行つておりますが、これが主として戰後において政府の資金で賄つている分でございます。そういうものはこの貸出の建前といたしましても、普通の金融には乗りがたいものを実は金融いたしておるわけでございまして、そのために課税上何か特別に課税したらどうかというのは、どうも私ども考え方がすぐそうは来ない。その結果相当余計儲かつておる場合におきましてどうするかという問題になりますと、さつき申しました超過所得税或いは臨時利得税等の問題になつて来るというだけでありまして、今お話のような角度で何か法人の課税に特別なことをやるかというような問題は、実は今まで余り問題にしたことはないのでございますが、何か或いは特別な理由、或いは特別な方法でもございますれば、よく研究して見たいと思います。
  97. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それで私はなぜそれを申上げるかというと、今銀行のオーバー・ローンということが盛んに問題になつているのでありますが、銀行も法人税法の適用を受けることになるのでありますが、大体オーバー・ローンになつている一番大きな原因は、これは政府資金を利用しているのじやないか、実際問題として、直接的か間接的であるか別として、日銀の貸出にいたしましても、結局はそういうところから出ているのじやないかと思うのでありますが、そうしますと銀行のごときは預金で以て貸出をしておる以上に、日銀からの借入によつて儲けておるということになると、これは相当、これは間接的な政府資金かも知れませんが、そういうことになりますと、その面に対してはもつと課税してもいいじやないか、こういうことが考えられるわけですが、この点についてはどうですか。
  98. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御指摘のように、銀行のオーバー・ローンと言われておりますが、預金に比べましてオーバーして貸しておる所もありまするし、又平常時の預金に対する貸出の比率に比べまして、貸出しが多いというのもオーバー・ローンと申しますもののうちになると思います。民間の銀行に日銀からの借入金が相当あるということは御指摘通りでございます。そういうような状況で、銀行が少し余計利益を上げておるかどうか、これは相当私は問題だと思いますが、そういうことになつて来ますと、むしろ日銀の貸付の金利と申しますか、それで一つは調節する。日本銀行の場合には、信用を造出して貸付けまして、ただの、金利のかからない厖大な利潤、貸出しで利潤があるわけでありますから、そこの利潤は日本銀行の納付金という形で吸收する。この納付金は七十億にも、下期にはたしかこのくらいになつたかと思いますが、ちよつと違うかも知れませんが、相当な金額になりますが、その辺で何と申しますか、日銀の貸付金によりましたそうした利得は納付金の形で吸收して行く、こういうことになると思います。従いまして銀行に対するオーバー・ローンと申しますか、何か知りませんが、日本銀行から銀行が借入れまして、それによつて余計に利益を得過ぎるようでしたら、やはり日銀の金利の操作と申しますか、それで調整する。勿論金利はそれだけではなくて、そのほかに経済施策的考慮を入れてやられると思いますが、そういう途で考えらるべきでありまして、銀行に対しまして何か特別な課税をするというのはどうも私どもこれもなかなか、果してそうすべきものだという考え方をとり得ないのでございますが、なおもう少しお尋ねがございましたらお答えいたしたいと思います。
  99. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次にこれは法人税との関連があると思うのですが、讓渡所得について一つつて見たいと思うのであります。これは法人に直接関係があると思いますが、今東京の兜町の株式取引所におきまして、日々大体二百六十万株くらいの受け渡しがきれておるのでありまするが、あれには讓渡所得はかかることになつておるはずですが、あすこを所轄する税務署は日本橋の税務署になつておりますが、大体日本橋の税務署の職員を調べて見ますと百五、六十名、約二百名くらい、これに二百五十万株の日々の讓渡がなされておつて、これの課税というものは非常にどうも不明確だというのが世間一般の評判になつておるのでありまするが、実際の問題として、そうすると、その讓渡所得がうまく捕捉できていないということになると、一体直接その株式の上場されるところの株式会社のほうにも利益が還元して来るという結果になつておるのじやないかと私は思うのでありますが、一体この讓渡所得がうまく捕捉されないということによる利益というのはどこに行つているのであるか。その点局長のお考えではこの讓渡所得が一体うまく捕捉できているとお考えかどうかということが一つ、それからその利益を誰がうまいことをしているのだという点が一つ、私は捕捉できていないと思うのですが、もう世間一般の評判ですから。税務署の職員の口を聞きましてもどうもやはりあれが一番相当な逃げる所が多いのだろう、人手が足らぬためにうまくつかめないのだというようなことを言つておりますが、そういうことから一つこの点を解明してもらいたい。そうすると今度は所得税法の今度の改正にもこれは影響して来ますので、一遍一つそれを説明願いたいと思います。
  100. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 讓渡所得課税がわれわれむずかしいことは今菊川さん御指摘通りでございまして、なかなか株式の讓渡による利益の調査、査定というのはむずかしいものでございます。昨年のシヤウプ勧告では、名義を強制的に書換えさせまして、それによりまして讓渡所得を十分つかんだらどうだ、こういう勧告をいたしたのでございますが、然らば日本の今の証券界の実情からしまして、強制するということが果していいかどうか、強制する案も実は作つて見たこともあるのです。ところがそれを現在の状況の下にやりますると、相当証券界に混乱を来たす、そうしますと経済全体に惡い影響を来たし、延いては生産等にも影響し、延いては勤労者の生活にも影響するといつたようなことに相成りまして、そういう方法で行きますのは、どうも少しどうかというので、実は見合わしたような次第でございます。然らば一体十分に努力していないのかということでございますが、これは私どもの考えとしましては、相当まとまつて株式の讓渡によりまして利益が出て来たような人、これはすぐわからなくてもそのうちよく調べればわかるのじやないかということで調査することにいたしておりますが、併し十分に実績が挙つていないことは御指摘通りでございます。従いまして今後讓渡所得課税をどうするかという問題、これはいろいろ徴税技術、負担の公平、両面から申しまして、それからもう一つ資本の蓄積、そういう見地を取入れまして、何とかうまい案がないかどうか、一つ研究しているところでございます。この次の国会には何かいい案を作りまして、御審議願いたい。それでもう一つは、資本の蓄積の見地から全部免税してしまつたらどうか、有価証券移転税みたいな考えでやつたらどうだという意見もございます。これも一つ意見だと思いますが、併しそれで果して勤労者との負担のバランスの点から言つて余り行過ぎにならんかどうか、これはやはり考えて見なくちやなりませんので、そういう点もよく考えまして、この次の通常国会一つ十分御議論を願いますように私どもとしましても勉強して見たい、かように考えておる次第であります。
  101. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これはなぜ私は申上げるかと申しますと、今度の所得税法改正に大きく影響があると思うのです。局長は今のやつはなかなかうまく行つていないということを認められた以上は、それで研究されるということでありますから、それは私どもと見るところが大体一致していますので申上げませんが、これはもつと簡單にして、而もこいつを捕捉するというふうにせられまして、必ずまあ売買によつては損する場合もありましようけれども、何とか取引株数によつて簡單に取り得るように、まあ手数料を株屋に払うような形式にして税金を全部かけるとかいうふうにせんと、余り複雑にしちやつてつて全然手が付かん、幾らでも脱税の余地があるということにして却つて逆効果を来たしているというので、これは検討の余地があると思いますので、研究されるのでありましたならば、我々も研究しまして、この次の国会に提出されましたときに十分論議したいと思います。  次に第二十六條の三カ月間の徴收猶予でございますが、一体この必要はどういう点から三カ月間の徴收猶予をされるのか。それでこの三カ月間を限度としたのはなぜ三カ月にしたのか、どうせ猶予するのならば六カ月にしたつていいのじやないかというような理窟も出て来るわけでありますが、四カ月にするということも出て来るのでありますが、この三カ月に限つた理由、それからなぜこういう徴收猶予の必要があるか、この点を一つ説明頂きたいのであります。
  102. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在の制度は菊川さん御承知の通り法人の納期は事業年度終了後二月以内に決算を確定して納付をしなければならないということになつておりますが、御承知の通り企業は先般申上げましたように相当利益は実は挙げている、一年間特に最近の新聞紙等に出ておりまする毎日の会社決算報告を御覧になればわかりまするように、大体無配であつたものは配当を復活する、或いは増配するとか、減配しておりますのは一部の貿易とか油脂とか、そういう前期に非常によくて今期惡かつたものでございますが、その他のものは概してよくなつております。そういうときになぜ延ばすのかと、こういうお尋ねも更にあるかと思いますが、併しこの利益があつたということと、企業の金繰りというのは実は少し違いますことは、これは御承知の通りでございまして、事業を拡張しておりますので、実は相当金詰りと申しますか、現金の手当には各企業も相当骨を折つているのでございます。そうしましてこの納期が特に三月決算と九月決算が非常に多い。九月の決算が多いので、最近新聞には盛んに九月決算の決算報告が出ておるのでございますが、従いまして納税も事業年度終了後二月以内ということになりますと、納期が、殊に大きな法人、税額のかさ張る大きな法人の場合は三月決算のものは五月末、九月決算の場合はもう今月末に追つておるのですが、今月末に重つちまうわけでございます。法人税の多くの部分が三月と九月に事業年度の終了する分でやつである。従つて納期限が五月と十一月になつておる、そうしますといよいよ以て資金繰りに困つている際に、各社がいずれも金融機関に資金繰りに殺到しますのでますます金繰りがむずかしくなつて来る、こういう事情がありまして、どうも今の事業年度終了後二カ月以内で全部全額納めさせるのはやはり実態に即しないのじやないかというので、実は半額だけを三月延ばすということにいたしたのでございます。それによつてよほど会社の資金繰りが、納税の資金繰りが円滑に行くだろうと、そういうふうにしたほうがいいだろうというふうに考えるのでございます。  それから三月にした理由でございますが、これは私は、年にこれで丁度四回になるのです。半分を三月延ばしますのでその次の事業年度の半分を納めるまで更に三月になりまして、会社は結局三月ごとに、一年の利益が同じと見ますれば、四分の一ずつ納めると、こういうことになりまして、まあその辺のところが実際問題として先ずいいのじやないか、これを毎月納めるようにしてくれという要望もございましたが、それでは又両方とも面倒でございまするし、先ず二回に納めておりますことを四回に分けて納めるということになりますと、よほど今申上げましたような事情も薄くなりやしないかということで三月に、半分ずつ三月延ばす。但しこれは一つの特例でございますので金利を払つてもらう、四銭を払つてもらうことにしているのでございますが、従いまして資金繰りに余り困らないという会社はやはり預金して置くよりも納めたほうが得でございますから納期までに納めてもらう。それから銀行からでも簡單に借りられるときは納めたほうが得でしよう。併し借りるのがなかなかむずかしいというような事業は、若干銀行の表面金利よりも高い金利を出すということでございますれば、三月延ばしてできると、こういうことになるのでございまして、今の企業の実態から行きますと、先ずこの辺のところが妥当じやあるまいかという趣旨で徴收猶予と、それから三月というのをきめた次第でございます。
  103. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 こういうふうに三月に限定してしまいますると、結局それはどこでも今の金繰りは無理でありますから、やつぱり三月たつたときに半分が殺到して来て、同じようにあなたの言われる銀行から借入れるということは、これはやはりその三月の期間が来たときに、その半分の税金について相当殺到することは考えられるわけですが、三月にせられて、半分だけを三月にされたという理由は私にはよくわからないのだが、今あなたがそれを、そうすると年四回になるというお話でございますから一応納得しまして、その次は二頁の初めからの「合併に因り存続した法人の事業年度が六箇月をこえ、」云々というこの項目でありますが、これは一体合併した法人に対するどういう処置をとろうとしておるのだか、読んでもちよつとわからんのでありまするが、かい摘んでこれを御説明願いたいと思うのでありますが……。
  104. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今三月延ばしました理由は先ほど申しました通りでございまして、殺到するとか何とかおつしやつたのですが、この半分の金額について実は殺到することになる。それではよほど実際問題としまして一遍に五百億殺到するか、二百五十億殺到するか、これはよほど私は違うと考えまして、よほど緩和になるということでございます。これは一月にすればもつとなだらかになるのじやないかという議論もございますけれども、それじや毎月税金のたびに勤労所得者のために会社の金繰りを考えて頂かなければならないし、又会社としましても相当つらいわけであり、先ずその辺でいいじやないかという考えでございます。  それから今御指摘の合併の場合の條文でございますが、これは合併しました場合におきましても、全事業年度の税金の半額程度を納めておけばいいということにいたしまして、現在の法文に若干無理がございまするので、それを改めようとするものでございます。なお技術的に相当細かいことでございますれば、計算でも示して御説明申上げてもよろしいのですが……。
  105. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういう細かいことは要らんですが、法人のところをもう一遍……。
  106. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 合併しました場合におきまして、例えば合併前の利益と合併後の利益と相当増減のあるような場合、そういう場合におきましてその合計したものを以ちまして半額でございますか納めておけばいいというような趣旨にいたしまして、合併前後における利益の変動から来る何と申しますか税のほうからの不円滑を直そうというものでございます。非常に技術的な問題でございますので、若しも必要でございますれば、説明員のほうから説明させましよう。
  107. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 ちよつと何のことかわからないのですが……。どういう理由でせられたかわからないのですから……。
  108. 志場喜徳郎

    説明員志場喜徳郎君) 御説明いたしますと、現在の場合、御承知の通り事業年度が六カ月を超える法人でございますと、例えば簡單のために一年といたしますと、一年の事業年度の法人は六カ月を過ぎましたときは、十九條の規定によりまして、中間申告と申しまして前の事業年度の確定した法人税額の半額をそのまま納めておけばいいと、そしてあとの六カ月を過ぎましてその事業年度が終りました際に、その一年間の事業年度の決算を行いまして、そこで確定税額を納めればいいとこうなつておるのが第十九條でございます。ところが現在の法律には第二十條におきまして、若しもその法人が合併法人であると、そして例えば事業年度が始まりまして六カ月以内に他の法人を合併した、こういいます場合には、最初の六カ月が終りました際に、普通ならば先ほどの概算申告でいい、特にその場合だけ決算をいたしまして、六カ月間で……、そうしてその決算した利益に基いて税金を納めると、更に事業年度が終りました場合には、その年度の確定決算をいたしまして税金を納めると、こう五つておるのでございます。ところが合併法人の場合でありまする場合に、たまたまこれらの法人が上半期において利益が相当多いが、下半期においては減るという場合がございましようと思います。そういつた場合には、普通の法人に比較いたしまして上半期において余計な多くの税額を納めておる、これは勿論事業年度が一年過ぎましたら精算されますけれども、上半期にはそういうふうに合併した法人だけが特に負担を重くしなければならんというような点もございまするので、今度も全く合併が行われなかつた場合と同じように、その場合でもその法人の前の事業年度の税金の半分と、それから合併によつて消滅しました法人の前の事業年度の税額の半分と、それを合わして、概算で普通の中間申告の場合のように納めておけばいいと、そうしてその事業年度が終りますれば、その確定した決算に基いてその事業年度の税金を精算すればいいと、こういうことにしたのでございます。今まで合併法人につきまして、特に普通の場合よりもいわば二回決算をやらせるということをいたしておりましたのを、普通法人並に一回の決算でよろしい、六カ月の場合には前事業年度の税金だけを納めておけばよろしいと、こういうふうにしたわけでございます。
  109. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこでお尋ねしたいと思うのですが、申告所得の場合に、申告をした額と、それから確定のこれは監査をおやりにならなければならんと思うのですが、確定額との監査は、これはあなたがたのほうで調べられると思うのですが、これはどの程度まで調べることになつておりますか。特に法人につきましては、今おつしやつたようなむずかしい問題が、三十五、六万日本には現在法人がある、こういうお話でございましたが、そうすると、これの申告した分につきまして、すべてこれには法人につきましては特に申上げられると思うのですが、帳簿にいたしましても一応揃つておるわけでありまして、普通の法人でない私企業とは違つて整理をされておる、こう見なければならんと思うのですが、一体今おつしやつたような利益が、合併前と合併後の問題とは一々その法人の帳簿に従つて審査をされることになつておるかどうか、この点を一つお尋ねしたいと思います。
  110. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 確定申告の際におきましては、大体決算に基きまして正確な額を組みまして申告をすることになるわけでございますが、勿論その申告に対しましては、よく調査いたしまして、その期の事業年度の利益を明らかにいたしまして、その概算で納めるものと、過不足がございますればその際に調整する、こういうわけでございます。それぞれやはり確定申告の際に詳細な調査をし、税額も正確なものにするということになりますことは、一般の場合と同様な関係になつております。
  111. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それではお諮りいたします。羽生農林委員長より糸価安定特別会計法案について発言を求められておりますが、この際発言を許すことに御異存ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 平沼彌太郎

  113. 羽生三七

    委員外議員(羽生三七君) 大蔵委員会の貴重なる時間を頂きまして、一口農林委員会からお願いがあるのであります。  それは当委員会に付託になつておりまする糸価安定特別会計法案についてでございますが、この法案は別個農林委員会に付託されております繭糸価格安定法案に見合う特別会計法案でございますが、私ども農林委員会では繭糸価格安定法案につきまして数日来審議を重ねており、本日総司令部へ多数修正部分についても意見をまとめたわけでありますがそれと関連いたしましてこの特別会計法案に若干のお願いがあるのであります。それは多少この経緯について申上げなければならないのでありますけれども、政府最初意図しておりました法案の名前は、農林委員会のほうに付託になつた繭糸価格安定法案の場合におきましては、最初は糸価安定法案というものであつたようであります。ところがその後糸価だけの安定では困る、繭の価格も安定させるようにという要望が衆議院の一部にあつて繭糸価格安定法案とこの法律の題名をきめたようであります。そこでこの法律政府考えでは糸価を安定させれば当然繭の値段も安定するという見地に立つて趣旨説明をされたわけでありますが、農林委員会といたしましては法律の題名に明らかに繭糸価と謳つであるのでありますから当然別途繭価、繭の価格の安定というものが考慮されなければならないということを強く主張して来たわけであります。その意味におきましてこの法律の第十條、会計法でありません、この繭糸価格安定法の第十條に、「繭の価格の異常な低落を防止するため必要な措置を行うものとする。」ということが規定されておるわけでありますが、これに基きまして糸価安定特別会計法を見ますと、この特別会計におきましては、この会計の中に剰余金が出た場合には一般会計に繰入れること等を規定しておるのであります。ところが御承知のようにこの繭糸価格安定法が、最低の価格の場合に買入れて最高の価格のときに売渡すのでありますから、まあ大体絶対に損のない見通しであります。従つて相当な剰余金が出るということが予定されますので、その意味において大要次のようなことを当大蔵委員会で御勘案願えたら非常に仕合せだと思うのであります。それは糸価安定特別会計法の第四條の歳出中に、繭糸価格安定法案、つまりこれは原案のほうでありますが、繭糸価格安定法案第十條の繭の価格の異常な低落防止のため行う必要な措置の目的を達成するための経費にも充て得ることとすること、これが一つであります。つまりこの第四條には、「この会計においては、生糸の売渡代金、一般会計からの繰入金及び附属雑收入をもつてその歳入とし、生糸の買入、貯蔵及び加工に関する経費、事務取扱費その他の諸費をもつてその歳出とする。」こうなつておるわけであります。ここへでき得るならば、繭の価格の異常な低落防止のため特に必要な措置を行うということが繭糸価格安定法案にありますので、その目的を達成するための経費にも充て得るようにと御規定を願いたいのであります。  それからその次は第八條であります、これは特別会計法案のほうの第八條でありますが、この第八條の利益金の積立の件でありますが、第八條の利益金による積立金は、これは損失補填のことが規定してありますが、損失補填のみならず繭糸価格安定法の運用に必要な一般事業資金にも充当し得ることとすること、この二つがお願いであります。  繰返し申上げますが、前の一つは、第四條の歳出中に、繭糸価格安定法案第十條の繭の価格の異常な低落防止のため行う必要な措置の目的を達成するための経費にも充てるように規定して頂きたいということ、それから第八條の利益金による積立金は損失補填だけが規定されておりますが、それのみならず繭糸価格安定法の運用に必要な一般事業資金にも充当し得ることとして頂きたいのであります。以上の二点がお願いでありますが、只今申上げましたように、大体最低値で買入れまして最高価格で売渡すというのがこの繭糸価格安定法案の趣旨であります。まあよほど突発事故の起らない限り絶対損のない特別会計でありますので、その剰余金を一般会計に繰入れるということになりますと、それは養蚕業者の犠牲等において一般会計に繰入がされるということになりますので、当然そういう剰余金が出た場合には、繭糸価格を安定させたり、或いは又その拡充のために必要な経費に充当し得る途を開いておいて頂きたいというのが農林委員会のお願いでございます。  なおこの詳細は文書にいたしまして皆様のお手許へお届け申して審査の御参考に供してお願いしたいと思うのでありますが、取りあえず委員会が終つたところでこんな簡單なメモで御報告申上げましたので、まだ十分要領を得ていないと思いますが、後刻までに委員長さん初め委員の皆様に文書にして十分意のあるところを盡してお願いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  114. 森八三一

    ○森八三一君 農林委員長にお伺いしますが、今の特別会計のほうにつきましては只今御説明がありまして、いずれ文書を以て御配付を願うということでありますのでお願いをいたしまするが、基本の繭糸価格安定法案のほうの修正が基礎に及んでおると思いますので、先刻司令部のほうに云々ということもあつたんでありますが、基本である繭糸価格安定法案の修正点についても同時に一つ参考としてお示しを願うことをお願いいたします。
  115. 羽生三七

    委員外議員(羽生三七君) この修正部分は文案として今まとまつておりますが、特別会計法案のほうには直接関係のある部分がないのであります。他の第三條或いは第九條、第十五條等の修正でありまして、直接この会計のほうには関係はないのでございますが……。
  116. 森八三一

    ○森八三一君 参考のために……。
  117. 羽生三七

    委員外議員(羽生三七君) 参考のためということでありますれば御説明申上げますが、簡單に要点だけを申上げます。この繭糸価格安定法案の第三條の二行目の所に「政令で定めるところにより、生糸の価格、」という所がありますが、その「生糸の価格」を削りまして、繭の生産費に生糸の製造及び販売に要する費用を加えて得た額を基準とし、そうして「主要繊維の価格」と、こう続くわけでありまして、従いまして「生糸の価格」という所を削つた関係上、当然、繭の生産費に生糸の製造及び販売に要する費用を加えて得た額を基準として農林大臣が生糸の価格を決定しなければならないことと規定したわけでございます。これはどういう点かと申しますと、政府は繰返し繰返し糸の値段を安定させれば、それで繭の値段が安定すると言われておりますが、養蚕家の大多数はやはり適正な生産費を償うに足る価格というものを強く要求せられておりますので、この点を特に以上申上げたような字句によつて挿入いたしたわけであります。  その次は第九條に、「政府は、生糸」とありますが、その次に括弧いたしまして、(その生糸の加工品を含む。)、つまり生糸のみならず、その加工品もこの法律の対象に限定いたしたわけであります。  その次は第十五條、審議会の委員の所でありますが、政府原案には「委員は、関係行政庁の職員及び」となつております。ところが一方、前の第十四條に、「関係行政庁に建議することができる。」、こうなつておりますが、関係行政庁の職員が委員になつて、そうして自分の行政庁に建議するということは、非常に辻褄の合わない話でありますので、この場合関係行政庁の職員というのは削りまして、「委員は、養蚕業者、製糸業者その他蚕糸業に関し学識経験のある者のうちから農林大臣が任命する。」と規定いたしたわけであります。このほかは重複しますので省略いたしますが、特に自由党の白波瀬委員の御発案で、生糸の値段が非常に不当行為によつて釣上げられた場合の禁止事項を挿入してあります。それは新たに第十條を設けまして、次の字句によりこれを表明したわけであります。「政府は、不当な利益を目的とする買占めその他の行為により生糸の価格が異常に騰貴し、又はそのおそれが著しい場合においてこれを防止するため必要があると認めるときは、第七條に規定する生糸の売買取引につき、政令で、一定の価格をこえる価格による契約又は対価の支払若しくは受領を禁止することができる。」、それから第二項といたしまして、「禁止価格は、標準生糸についてはその最高価格を下らない額とし、その他の生糸については標準生糸の禁止価格に政令で定める額を加減して得た金額とする。」、以上であります。この白波瀬委員の御発案は、問題は、政府手持の糸の値上りは、あえてこれを抑えない、ただ現物がすでにないにかかわらず、曾つて昔あつた事例であるそうですが、思惑、或いは投機的行為によつて不当な糸価を作り上げる場合におきましては、海外における影響等も考慮して、本来ならばこれは物価取締令とか、何か適当なほかの法律で規定したほうがいいでありましようが、そういうのもどうかというので、この字句を挿入して、ここに新たに禁止事項を設けたわけでございます。この点は御説明を承わつて見ますというと、大体世界繭業会議、世界の生糸の会議であります。これにおいては、日本の生糸の価格が適正な価格で見合うならば、まだ二十万俵程度の輸出は可能であるということを言つておるそうです。ところが本年春でありますか、皆さんも御承知のように三十万を超えるような大暴騰が続きました。すぐ暴落いたしましたけれども、そういう暴騰のためにジヤーリー氏を初め、その道の專門の人たちは、こういう騰落の激しい生糸を相手に商取引はできないということを強く要望されておるという点も考慮されて、特別のこういう禁止規定の挿入を委員会で発案されたのであります、大体以上の趣旨であります。
  118. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 第四條の修正御希望について、関連してちよつとお尋ねしたいと思うのですが、我々も少年時代に農家で繭を作つたことは記憶に新たなところであるのでございますが、繭の値段が製糸業者或いは生糸の取引所等の操作によつて不当に叩かれるという、そのためにこうむるのは、繭を生産する養蚕業者、即ち養蚕農家がその被害をこうむる。そこで第四條の規定に従つて、この会計の資金を繭の暴落防止の処置として使うことができるということを四條へ挿入した場合に、その根本法である繭糸価安定法におきまして、具体的にこういう場合にどこで繭の買入れをやるとか、或いはそういう処置はちやんと根本法の中にあるのか。その四條の修正を申込まれると同時に、本法においてもやはり修正しなければならんと思うのですが、その処置が講ぜられておるか。今の御説明ではそれがないと思いますが、その点についてお伺いしたいと思います。
  119. 羽生三七

    委員外議員(羽生三七君) この点は御指摘通りでありまして、第十條の繭の価格の異常な低落を防止するため必要な措置を行うものとするという、極めて抽象的な規定でありますので、これを根本的に修正することになりますというと、今の見通しではこの繭糸価格安定法案そのものが成立するかどうか、ちよつと疑問のような点になつて来ておるのであります。そこで私どもといたしましては、別途これに対する具体的措置を速かに確立するよう政府に要望することといたしまして、農林委員会といたしましては、満場一致只今別の形で内閣総理大臣、大蔵大臣、農林大臣宛の蚕糸対策に関する申入事項を決定いたしまして、この今の第十條の趣旨に副う何らかの措置を早急にとることを要望したわけであります。従つて具体的な問題といたしましては、第三條の修正、つまり繭の生産費に生糸の製造及び販売に関する費用を加えて得た額を基準とするということで、養蚕家のかたがたの利益を確保させて、その具体的な第十條の措置につきましては別途政府に対する申入れを行うことによつて、近い機会に政府の善処方を期待いたしておるわけであります。
  120. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 わかりました。
  121. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それではちよつとお諮りいたしますが、四法案につきましては一時質疑を見合せまして、丁度農林委員長もおられることですから糸価安定特別会計法案の内容説明をここで伺うことにしたほうがいいでしようか、如何でしよう。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  122. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。では農林委員長からの申出はいずれ文書がこちらへ廻付されますから、それによつて又御研究願うことにいたします。前の四法案について質疑を続行して頂きます。
  123. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 大体この二つの、所得税法臨時特例と、それから法人税法の一部を改正する、この二つの法案については主税局長に対する質問が今日はずつと事務的な、事務的と申しますか、技術的、事務的、或いは行政的もありますけれども、局長並びに課長に対する質問を続けまして、そうしてまだ租税特別会計措置法の一部を改正する法律案と、物品税法の、二つ法律案については大蔵大臣に御質問する機会がまだありませんので、それとこの四つは非常に関連もございますので、四つをまとめて最終的に、一応今日は質疑を打切らずに残して置いて、大蔵大臣の出席を求めて、そうしてこの四つをもう一遍、この二法案、そこに書いてある赤の二法案はもうすでに大蔵大臣に一遍出て聞いてございますが、あとのはこれはまだ機会がございませんので、これをもう一遍なにして、主として租税特別措置法物品税法、これは関連もあるし、必要と認められたような場合、委員の中でも、大蔵大臣出席の場合に、質問してないような質問等を要領よく簡單にまとめることに申合せておいて、そうして今度の機会には四法案を一括最後質問として大蔵大臣にするということにして、今日は、今後は主税局長質問をして、まあ大体それで終れたら終れるくらいにしておいて、打切りはせずに留保にしておく、こういう措置一つおとり願いたいと思うのですが。
  124. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  125. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。本日の委員会はこれを以て終了いたします。    午後四時二十八分散会