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1951-11-16 第12回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十六日(金曜日)    午後二時十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            清澤 俊英君            伊藤 保平君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            山本 米治君            菊川 孝夫君            野溝  勝君            松永 義雄君            小林 政夫君            田村 文吉君            菊田 七平君            森 八三一君            木村禧八郎君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    外国為替管理委    員会委員   大久保太三郎君    法務府法制意見    第二局長    林  修三君    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省管財局長 内田 常雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省管財局外    国財産課長   佐々木庸一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○糸価安定特別会計法案内閣送付) ○学校及び保育所給食の用に供する  ミルク等譲与並びにこれに伴う財  政措置に関する法律案内閣送付) ○旧外貨債処理法による借換済外貨債  の証券の一部の有効化等に関する法  律案内閣送付) ○連合国財産補償法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) これより第十四回の大蔵委員会を開会いたします。  先ず糸価安定特別会計法案予備審査学校及び保育所給食の用に供するミルク等譲与並びにこれに伴う財政措置に関する法律案予備審査外貨債処理法による借換済外貨債証券の一部の有効化等に関する法律案、右三法律案提案理由説明を聴取いたします。
  3. 西川甚五郎

    政府委員西川甚五郎君) 只今議題となりました糸価安定特別会計法案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  今回、政府は、生糸の輸出の増進及び蚕糸業経営の安定を図るために、繭及び生糸価格の異常な変動を防止することを目的といたしまして、別途、今国会繭糸価格安定法案を提出いたし御審議を願つているのでありますが、この繭糸価格安定法実施いたすことになります場合には、生糸の売渡又は買入等、これに関する経営一般会計と区分して、その状況を明確にいたすことが適当と考えられます。このため新たに糸価安定特別会計を設けることといたし、この法律案を提出いたした次第でございます。  次にこの法律案内容概略を御説明申上げますと、糸価安定特別会計は、一般会計からの繰入金三十億円を以てその資本とし、生糸売渡代金一般会計からの繰入金及び附属雑収入を以て歳入とし、生糸買入、貯蔵及び加工に関する経費事務取扱費その他の経費を以て歳出とすることといたしますと共に、その他特別会計に必要な規定を設けようとするものでございます。  次に学校及び保育所給食の用に供するミルク等譲与並びにこれに伴う財政措置に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  これまで学校及び保育所における給食の用に供するミルク及び小麦等につきましては、アメリカ政府の寄贈又は米国対日援助見返資金の支出によつて賄われて参りましたが、今後政府財源を負担して本年度内給食を継続することといたし、これに要する経費補正予算に計上しているのでありますが、これに伴い学校給食等に関する法的措置を講ずる必要がありますので、この法律案を提出いたした次第でございます。  次にこの法律案内容概略を申上げますと、先ず給食用の、ミルク及び小麦等食糧管理特別会計において買い入れ、これを都道府県を経て給食を受ける児童譲与することができることどいたし、その買い入れ譲与することのできるミルク及び小麦等の価額は二十四億九千六百余万円の範囲内としているのであります。次に給食用ミルク及び小麦等買入のために要する財源は、一般会計から食糧管理特別会計繰り入れることといたしておりますが、輸送、保管、加工等に要した経費についてはこれまでと同様給食を受ける児童に負担させることができることといたしておるのでございます。  なお、ミルクにつきましては、買入契約をしたミルクが本年度内に輸入されないために、その買入財源一般会計から食糧管理特別会計への繰り入れ年度内に終らないこととなる場合も予想されますので、その支払に支障を及ぼすことのないよう、その繰り入れのできなかつた金額は、来年度に繰り越して使用することができることといたしているのでございます。  次に旧外貨債処理法による借換済外貨債証券の一部の有効化等に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  戦時政府は、旧外貨債処理法によつて外貨債邦貨債に借り換える措置をとつたのでありますが、右の借換に当り、原証券引換の方法によらなかつたために、その原証券及び附属利札が、なお、海外残存しているものと推定されるものが米貨債約八百七十七万ドル英貨債約七十五万ポンドほどあります。  又、開戦後外債貨借換実施までの間における海外にある外貨債に対する利払債務又はくじびきに当せんした証券に対する償還義務につきまして、政府は、旧敵産管理法に基いて、これらの支払資金をその外貨債発行者から政府の指定する勘定に円貨を以て払い込ませることによつて、その発行者債務を免責し、利払に相当する利札は、海外残存のままこれを無効とする措置をとつたのであります。右の利払資金相当額は、米貨約五百九十八万ドル英貨約三百六十二万ボンドとなつており、又、右のくじびき当せん外貨債償還資金に見合う金額は、英貨約六ポンドとなつているのであります。  これらの残存証券は、旧外貨債処理法によつて国内法的には無効とされ、或いは円貨による償還資金の積立がなされているのでありますが、それらの中には、当時の事情からいたしまして我が国の一方的な国内措置だけで相当無理な処理がなされたと認められるものもあり、現にその相当部分復元方について、アメリカ合衆国政府から申入を受けている次第であります。政府としましては、我が国が戦前にかち得ました対外債務の誠実な履行者としての信用を保持し、且つは、将来における外債誘致への影響を勘案いたしまして、これらの無効となつ外貨債効力を復活する等の措置を講ずることが必要と考えました結果、この法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案内容につきまして概略を御説明いたします。  第一に、先に申述べました借換済外債貨残存証券及び附属利札でその借換が当を得なかつたものと認められるものにつきまして、大蔵大臣の指定により、これを旧外貨債処理法による借換の日にさかのぼつて有効なものとし、又、前述の旧敵産管理法に基いてとられました措置によつて無効とされました利札につきましても、これを再び有効なものとすることといたしました。  第二に、右により有効とされます外貨債地方債又は社債であります場合には、旧外貨債処理法の精神に従いまして、その元利支払義務政府が承継することといたしました。  第三に、以上による借換済外貨債復元に伴いまして、すでに借換により発行されている邦貨債との二重発行を調整する必要がありますので、その邦貨債の得取者から借換価額相当額政府に納付させることといたしました。なお右の納付につきましては、本人の選択によりまして、借換発行された邦貨債そのものを以て代納することもできることといたしました。  このほか、右の邦貨債取得者から政府に納付されたものの内部処理その他本措置実施に伴い必要な事項規定いたしております。  以上がこの法律案を提出した事由及びその内容概略であります。何とぞ御審議の上、速かに可決されますようお願い申上げます。   —————————————
  4. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) この三法案に対する御質疑は次回に譲ることにしまして、次に連合国財産補償法案議題といたします。御質疑をお願いいたします。
  5. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 一番に、本法案については将来やはり国際間のいろいろ問題も起ると思いますので、私は慎重に一つ審議をしなければならんと思います。つきましては委員長或いは専門員や、本日出席管財局長の御発言では、この法案は、批准書と同時に、批准するときにはもうここの国会を通過しておらなければ困るんだというようなお話で、ございましたが、本朝議院運営委員会官房長官出席されまして、この法案は余りあわてなくても、講和条約発効までに間に合えばよろしいからということを説明いたしておりまするので政府意向はそう余りあわてないでもいいという意向で臨んでおるということを先ず前提として、一つ慎重に審議をしなければならん。私はさように考える次第であります。つきましては第一番に送金額はどのくらいに一体なる見込か、この前に一応御説明を願つたんですが、この前に御説明願つたのちよつと食違いがあると思うので、これは勿論精算ができておりませんから確定額というわけには行かんと思いますけれども、どのくらい最高要るだろうというお見込であるか、この点お伺いしたい。
  6. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 先ず最初菊川委員の御発言ですが、この法律案は余り急がない、講和条約発効までに制定公布されればよかろうという御意見でありますが、議運における官房長官の御発言につきましては、今私どものほうの者が打合せに参つておりまして……。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それは俺が聞いたんだから大丈夫だ。
  8. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) それに関して私はもう一度御説明申上げまして御了承願います。私どもが一番心配いたしますことは、発効までに公布されればということでございますが、講和条約発効するためには御承知のように、アメリカを初め連合国の各国の批准書寄託が必要である。この補償法に一番関心を持つておりますのは、財産の額から申しまして米英が主でありますけれどもアメリカのほうはこの法律案を作ります際に、非常によく日本側の立場も理解してくれておりますが、英国その他におきましてはかなりアメリカとは違う意味関心を持つておりまして、従いまして菊川委員承知のように、又私もこの際御説明申上げたいと思いますが、講和条約の、八月十五日の改正の前の条約草案として公表されたものにおいては、その十五条の意味において今の形と違いまして、日本国国会連合国財産補償法というものを先ず制定公布すれば講和条約十五条がこれを引用する、こういう形になつておりますことは御承知通りと思います。つまり連合国財産補償については一九五一年何月何日日本国会が制定した法律第何号による、こういうことが十五条の規定でございますが、私どもそれについて一体日本条約を批准する、調印する前に国会に向つて、先にその条約内容前提とした手続法にいたしましても、そういうものを国会が先に作つてしまう、言い換えれば条約自身国会の御承認を得る前に、この補償法というものを先に政府政府提案として国会提案するということは、これは非常に疑義があるし、日本立法手続において疑義があるばかりでなく、国際法規のあり方としても疑義があるということで、八月十五日の条約最終案におきましては、現在の条約十五条にありますように、法律を先に作るということを言いませんで、日本国内閣が一九五一年七月十三日に向う側に示した法案内容よりも不利でないような補償措置を取る、こういう恰好にしたわけであります。それに関連して英国側等においてこの補償法を先に作る。これは本来は条約自身規定することであるけれども、まあ条約をできるだけ簡単にという趣旨において修正するならば先に法を作らんと我々は不安心であると、こういう文句までも非常にこれは総司令部外交局を通して言つて来ております。これは後で御覧に入れても結構でありますが、こういうことを考えますと、先般も外務省の条約局長が言われたように、仮にこの法律を作らなくても日本連合国財産補償義務というものは条約を承認すれば十五条によつて発生するということを言われておりましたが、全くその通りですが、英国その他の国が法律を作るまでは批准書寄託を躊躇するかも知れない。従いまして英国その他の国の批准書その他の寄託がないと条約効力発生が遅れる。こういう順繰りの関係にもなりますので、最初に申したこの法律案にこの問題を譲つた経緯並びに条約効力を発生させるための措置といたしまして、日本政府としては条約寄託すると同時に、寄託までの間にこの法律を制定公布する。然り而して法律の附則にありますように、制定公布しても発効は、「平和条約最初効力発生の日から施行する。」、こういうことになるわけでありまして、官房長官議運における云々ということに対しましては私は不思議に思うのでありまして、今いろいろ打合せをさせておりますけれども、私の今申しました説明は……。
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 重大な問題だ、議運において官房長官がでたらめなことを言つたんでは……。
  10. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これはまあ私の説明説明として、お前の説明の中どうもそういう点が納得できないという部分があれば、それは私の説明は私の説明として御理解願えるのじやないかと思います。
  11. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 あなたの御意見として、あなた個人の御意見として伺います。
  12. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) まあそれはそれだけにいたしまして、その次の送金額はどのくらいになるかということでありますが、これはこの前御説明申上げましたが、この法律案の第十七条のこの補償は、原則として本邦通貨日本国内において支払うというのが原則であります。その限りにおきまして送金の問題は起きるのであります。ただ十七条の第二項及び三項の関連になりまして、連合国人財産自身外貨表示財産であつた場合には、それは建前としては日本国政府外貨建補償をすることが規定してございます。但しその外貨建補償は他の円貨建補償と同じように、向うの申請に対して応じ得るので、外貨建補償する場合においては日本為替状態の許す状況に応じて外貨建補償をするし、これの送金については外国為替に関する法令従つて送金を認める。こういうことで外貨建補償をすることは、一部日本側は承認しながら、それの実行については運用を以て日本為替状態にマツチせしめる。こういう措置をとつておりますほか、第三項を置きまして、さような外貨建補償外貨状況と睨み合せて受けることが、連合国人にとつて必ずしも利益でない場合があるので、さような場合には請求権者外貨建補償というものをすつぱりあきらめて円貨に換算した補償を受けて万事解決させる。こういう第三項の規定連合国側打合せの上で置いてございます。従いまして外貨送金なるものがどのくらいかということは、この第三項の運用如何によつてつて参りますが、仮に第三項が一つも働らかない、外貨財産についてはすべて外貨建補償をするとした場合におけるその送金額が先般申上げたと思いますが、大体全体の補償額の二割程度だと思います。具体的にはドルで一千二百万ドルポンドにいたしまして七十万ポンド円貨に換算しますと、ドルの一千二百万ドル部分は四十三億円、ポンドの七十万ポンド部分は七億円、合計五十億円ということで、五十億円の範囲で、それが今申しました十七条の三項の関係円建向うが満足すれば、この分は円で支払うことができる、こういうことに考えます。
  13. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の官房長官発言とあなたのとは、丸つきり違いまして、こういう重要な問題で、而も参議院が本日会期を延長しなきやならんかどうかということを審議する際に、出席して軽卒な発言をするということは、これはまあ問題だと思います。併しあなたに申上げても仕方がないので、今の御説明はあなたの御意見だというふうに承わつて、やはり官房長官のほうは政府を代表して来ているのですから、そういう意味であなたの御意見として承わるよりしようがないですから、食違つておるのですから、これはあとで……。  次に私のお伺いしたいのは第二条につきまして、「連合国法令に基いて設立された法人その他の団体」ということになつておりますが、そこで連合国の定義ということになりますると、平和条約の二十五条に規定するのが連合国ということになつております。従つて仮にこういう例を引きまして、こういう場合はどうなるかという点についてお伺いしたいと思うのですが、イギリス法令に基いて設立された法人である株式会社なり、何なり、法人であるが、それが英印合弁の場合、イギリスインド合弁で、イギリス法令に基いてやつておるけれども、株式の割当が例えばインド人とそれからイギリス人と半分々々という場合には、この連合国インド連合国の中に入つておりません。本法案によりまして連合国の中に入つておりませんが、そういう場合に如何なる処置をされるつもりであるか、この点についてお伺いいたします。
  14. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) お答え申上げます。この第二条の二項の第二号の解釈といたしましては、只今お尋ねの場合には、その法人英国法に基いて創立され、設立されておる法人である限り、その持分にインド人或いは中立国人が加わつておりましても、その関係では連合国人と、かように解釈しております。
  15. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第二条の三項につきまして、「日本国主権が回復される地域」ということになつておりますが、この主権という問題につきまして、例えば沖縄小笠原等は、これは主権ということについては、日本主権があるのだ、ただ信託統治ということになつて主権剥奪ということはないから、これは日本主権があるのだ、こう総理が答弁いたしております。このことから考えまして、あなたがこの法案によりますと、九州その他の……、平和条約により、日本国主権が回復された地域の中には、即ち沖縄小笠原を含んでおるものかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  16. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 大変むずかしい問題でありまして、先般条約のほうの委員会におきましても、お尋ねの点が問題になりましたが、この補償法日本財政上の負担をかける法律であるから、この補償法関係においては、でき得る限り日本財政利益になる実際上の措置を取つて参りたいと私ども考えております。そこでこの北緯二十九度以南の諸島につきましての主権につきましては、これは総理説明その他におきましても、今直ちに完全な主権が回復されるわけではなしに、潜在的な主権として日本主権が存立するのだ、こういうふうに解釈されておることでありますから、従つてこの連合国財産補償法関係におきましてはですね、この第三項の解釈においては、日本財政上の利益になるように解釈いたしまして、沖縄にある連合国財産についてはですね、この法律適用については補償を免れるものとして運用して参りたい。なお、そのことにつきましてはこれは行政的にそうやつて参るだけで、必ずしも明確でない。現実の問題といたしましてこの問題になつている地域にある連合国財産であつて、而もこの法律の第三条の意味における特別の措置を受けたものというものは、恐らくは殆んどない程度のものだろうと考えられますので、余り実績がありませんから、必要の場合におきましては、この法律第二十五条に、「この法律実施に関し必要な事項は、政令で定める。」こうありますから、今の主権問題は、沖縄等に関する主権問題の措置に関して連合国側打合せの上、条約解釈とも関連せしめて、必要な政令作つて参つたらよかろうじやないか、かように考えております。
  17. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それは今の御説明ちよつとはつきりしない。又無理だと思います。無理だと思いますけれども、今のところはそれでは沖縄だとか、小笠原あたりにはこれの補償は及ばないものである、適用せないものであるという御答弁でよろしうございますか。そういうふうに解釈して……。
  18. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) さようでございます。
  19. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それで、あなたはないとおつしやつたが、沖縄だとか、小笠原には存外宗教法人というものがあると思う。例えばアメリカの力ですね、教会だとか、そういうものが私はあると思うのですが、こういうふうに考えるが、そういうところがありました場合に、どう処置するか。そういうことについて……。
  20. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) この連合国財産補償法の形は国内法になつて参りますから、国内法運用をする者は結局日本政府でありますから、従つてこの運用上の問題として、沖縄その他南西地域にあるものは、この二条の適用上は補償しないでもいいものと解釈して、我々は運用して参りたい、こういうことでありまして、この連合国財産補償法運用如何が、直ちに条約第三条のこの主権の問題を解釈する裏書とはならないように考えていいものだろうと思います。従つてこの条約補償しないからと言つて、この法律補償措置を取らないからと言つて、直ちに条約沖縄及び南西地域日本主権がないのだ、こういう裏書上の解釈を強いてする必要はないように私は考えております。それでこの現実お尋ね宗教法人その他は、今まで調べたところでは、沖縄その他の地域には宗教法人はないそうでありますけれども、これは相手方の請求を待ち、こちらで審査し、向う証拠書類を審査するわけでありますから、どういうものが出て来るかもわかりませんが、出て来た場合には一応我々は法令解釈としては、今までのような解釈で、補償の必要はないものと考えたいと思います。
  21. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第二条の四項につきまして、「その他の対敵措置」ということがありますが、「「戦時特別措置」とは、旧敵産管理法による措置その他の対敵措置」というのは、一体どういうのがあつたのですか。あなたのほうの御調査では……。
  22. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) それは具体的にはこの法律の第九条等にも出て参りまするが、旧工業所有権戦時法というようなものがございます。これは敵産管理法とは違つた法源になつておりますけれども、その内容は専ら敵国人工業所有権を取消したり、或いは日本政府の一方的措置によつて広くその工業所有権実施を認める等の措置をとつたものであります。これらのものが顕著なものでございます。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そのほかには……、この工業所有権戦時法だけですか。
  24. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) なお更に、そういう法律がないものでありましても、この同じお尋ねの四項のあとにありますように、逮捕、拘禁、売却等具体的処分といたしましては、日本の軍の機関等強権を用いて具体的にやつたものも含まれると思います。例えば横浜の山の上に連合国人の家屋があつた連合国人がこういう所に住むのは防諜上適当でないというようなことで憲兵等強権を用いて撤去、立退きを命じたというようなものがあつたようでございます。
  25. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に同じく第二条の第四項の「日本政府又はその代理機関による公権力の行使」、この代理機関というのは一体どういうものがあるのですか。
  26. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 今申す憲兵であるとか、或いは府県その他の公共団体というようなものも入るものと解釈いたします。
  27. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いや、それは解釈というものじやなしに、その代理機関言つて法律できめる以上、あなたの解釈憲兵、それから府県その他と言つておられますけれども、こういうものが日本政府代理機関であつたということがはつきりしませんと、これは例えば代理機関というのは代理の権限を持つてつたかどうかはつきりしませんと、問題は広くなるのだと思うのであります。町内会長をやつてつた警防団長をやつてつたというのは代理機関になるというふうに非常にこれは広範囲になると思うが、これはどこまでと限定するつもりであるか。その点についてはつきりしてもらわんと……。
  28. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) ここではこの代理機関について、第二条の中に特別な定義は設けませんから、一般の……これは政府委員解釈じやありません、一般の解釈として、政府代理機関と認められるもの、従つて或る個人が連合国人を圧迫してその者を私宅に監禁したとか、撲つたというようなものは入らない。今申す憲兵であるとか、或いは府県というものは代理機関に入るということで、運用上支障はないと考えております。なお万一代理機関範囲について明確にする具体的な必要が生じましたときには、第二十五条の実施規定で、日本国利益のために政令を設けるようにいたしたいと考えます。
  29. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私はこの「日本政府又はその代理機関」の代理機関ということについては、解釈が、あなたは府県だ、或いは憲兵だとか言つておりますが、これはむしろ日本政府がやらしたということになつて来るのじやないかと思うのでありますが、むしろそれよりも警防団長とか、或いは町内会長というようなことになると、非常に広くなつて、この代理機関という解釈を明確にしておかんと、この措置は非常に大きなことになるので、代理の権限云々ということからして、私は法律家じやありませんから余りよくわかりませんが、ここで今ごまかしたのじやおかしなことになると思う。この代理機関日本政府代理ということになつておるが、そんな簡単なものじやありませんですよ。
  30. 松永義雄

    ○松永義雄君 代理という言葉のオリジナルを一つ
  31. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) その代理ということのオリジナルな意味は、その効果が政府に及ぶ、従つて憲兵府県がやつたことは政府の当該機関としてやつたものじやなくても、その効果が政府に及ぶという、こういう場合を含んでおると思います。
  32. 松永義雄

    ○松永義雄君 そんなことはわかつておる。憲兵は国家の代理なんですか。
  33. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) この用語は、この法律で初めて使われておるのではなしに、他の最近の政令等にも、これは英語の用語との関係もあるので、ガヴアメント・エージエンシイという言葉がこれに対応する言葉として占領軍のメモランダム等にもしばしばございますので、それらの関係においてもエージエンシイという言葉を法律上有権的に定義付けないで用いられておるものでありまして、法務府の法律的取扱においても容認されているところでございます。但しこれが現実の問題として具体的に処理しにくいようなケースが現われるようでございましたならば、先般も申しましたように、二十五条による施行政令において代理機関範囲を明確にいたしたいと思います。
  34. 松永義雄

    ○松永義雄君 代理機関言つても、今局長さんが御説明なつたところの解釈は、それはわかりますが、その言葉からエージエンシイという言葉が出て来たのですか。それともエージエンシイという言葉から代理という言葉が出て来たのですか、どつちですか。
  35. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) それは法律上の観念として両方から相寄つて一致しておるものと思つております。
  36. 松永義雄

    ○松永義雄君 それではエージエンシイという意味代理だと、こういうことになつて、従来の民法の代理という考え方とは、立法の、何と言いますか、系統から言うと違つておるということになるのですか。
  37. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 民法上の代理ではなしに公法上の権力の代理であつて、行政法上の解釈における代理という意味解釈してもらえればいいと存じます。
  38. 松永義雄

    ○松永義雄君 従来行政法上の代理という観念はあるのですか。
  39. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) あり得ると思います。
  40. 松永義雄

    ○松永義雄君 それは代行とか、代表者とかいう言葉が使われておるが、代理という言葉は……。
  41. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 日本の行政の観念からして例えば地方公共団体というものは……。
  42. 松永義雄

    ○松永義雄君 私もよく研究しますから、今日ここで言い合つてつたつてしようがありません。
  43. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 地方公共団体は国とは一応別の法人でありまするが、地方公共団体が国の事務を行なつておる場合においては、その場合地方公共団体の行為は国の代理機関としての行為と、通常こう読まれておるようであります。
  44. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その代理機関につきましては、将来これは「代理機関による公権力の行使」とみなされるか、みなされぬかが補償の対象になるかならぬかの大きな岐れ道なので、従つて戦時中にいろいろなものがあつたが、どの限度までは日本政府代理機関と認められるか。これはただ単に英語の法文から直訳して来たのですか。これは審議するに当つて非常に大事なものだと思つております。金額は極く僅かで、一億か二億でも、けちなことを言うななんというわけにはいかんと思います。これは国会議員としての責務上明らかにしてもらいたい。単に一般の通念としてそうなつているからと言つて管財局長自身がどこまで認めるかわかつておらずに、早く通すのだ、早く通すのだと言つたつて駄目だ。
  45. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 二十五条に施行政令の余地を残しておりますし、他の法令においても同じようなことがあつて現実法律の建前には影響のないことでありますから、二十五条で日本利益の必要に応じて政令作つて参ると、こういう考え方で如何でございましよう。
  46. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それはそういうふうでいいのだが、その利益解釈が、あなたがたの解釈ではよくわからん、どの程度まで認めるかということをここで明らかにする必要があると思うが、政令で作るだからそいつに従えということには行かんと思う。それは論争は別としてこれは一番明らかにして頂きたいと思います。どの程度政令に譲るのであるか。この点を一つ
  47. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) この問題は保留しておいて頂きます。
  48. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これは法務府のほうの政府委員からも説明をされるように願います。
  49. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 明らかにしておかないと将来も問題が起きる場合もあると存じますから……。次に第二条の五項につきまして「その他これらに準ずる財産権」ということがありますが、一体これは「その他これらに準ずる財産権」というのは、例えば連合国人日本において持つてつた信用、抽象的な言葉で言うと信用とか、営業権というようなものも指すのであるかどうか。それから例えば金時計や金の指輪なんかはみんな持つてつたわけでありますが、これを供出せいというわけで無理にとり上げた。ダイヤモンドとか、こういうようなものもこの財産権の中に入るか。これを一つお伺いしたい。この点例えば「その他これらに準ずる」というのはどういうことを考えておられるのか。
  50. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) この財産範囲につきましてはおおむね考えられるものをこの第五項に載せてあります。従つて「その他これらに準ずる財産権」としてここに掲げてあるもの以外のものは現実には余りないと思います。例えば考えられるものは商標権というようなものが入り得るものと考えます。それからなお尋ねの金時計その他を供出したということにつきましてはこれはその金時計そのものは動産として論ぜられるのでありますけれども、この補償法の趣旨が日本人には行わないで、連合国人のみを対象としてやつた戦時特別措置に関連する損失補償でありますから、さような場合には一般的には補償の対象にしないで済み得ると考えております。
  51. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その当時の軍のやり方から考えまして、連合国人にも相当の処置を私はやつておるのではないかと思います。逮捕、拘禁した場合においてダイヤモンドか或いは金側の時計をとつておるという場合に、仮にこれをとられた、ダイヤモンドを一つとられた、或いは金側の時計をとられたと言つたつてわかりはしない。そういうところもやはり請求をした場合にはそれを含むかどうかということです。
  52. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) それにつきましてはこの法律のしまいのほうに請求手続が、ございまして、挙証責任その他必要の書類は請求者の側が提出しなければならないという旨が第十五条の第二項に規定してあります。つまり自分が本当の請求をすることができる請求権者であるとか、或いはその請求内容を明らかにした書類を添附しなければならない。こういうようないろいろの責任を一応外国人側に持たせる建前をとつております。但しこれにつきましてはあとのほうに規定がございますが、日本側向うから挙証のための必要書類の写しの発給を求められた場合には日本側はその発給に応ずる義務はあるが、挙証の責任は連合国人がとる。こういうような建前にいたしてございます。
  53. 山本米治

    ○山本米治君 只今逐条審議的に行われておりますが、これを最初菊川委員が出された本日中において両条約の問題と同時にこれを片付ける必要があるかどうかということは議事進行上先決問題だと思いますので、先ほど官房長官が今朝自分で急ぐ必要はないと言われたというような話がありますから、その点を先ずはつきりさせて審議せられたらどうかと思いますので、官房長官を先ずここへ呼んで今朝の話を伺うということにしたらいいと思います。
  54. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  55. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは速記を始めて下さい。
  56. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 「その他これらに準ずる財産権」について、あなたは今の御説明ではいわゆる証明をしなければなちんということになつておりますが、証明は連合国側において処置をするのでありまして、例えばアメリカ人であればアメリカ政府なりに証明書をもらつて来れば日本側として拒否するわけには行かないと思いますが。
  57. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) その証明はアメリカ政府の証明ではなしに、日本政府に対して、日本政府がこの法律運用上必要だと認めれば、一応の書類を連合国人に出させる義務を負わしておるのであります。
  58. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますると、そういう証明を日本政府に対して請求して来た場合に、政府としては拒否するつもりでおられるのでありますか。
  59. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 拒否することはできません。のみならず、例えばそれが登記簿の謄本といたしますと、そうすると自分が開戦時においてその不動産について所有権を持つてつたという証明をするときに、先ず不動産登記簿の謄本を持つて来れば……、相手方において謄本を請求すれば、日本側では交付することは勿論のこと、実費まで日本側に出させるということにいたしております。
  60. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それに関連いたしまして、「有体物で返還されたものについて生じた損害額は、その財産の返還時の状態を開戦時の状態まで回復するため補償時において必要な金額のうち」云々ということがありますが、これはあなたの提案理由説明あとで、例えば家具とか、そういうものは焼けておる。そういうものを元の金額補償することになつておりまして、わたしはオルガン、ピアノがあつたということを、それを日本政府として認めざるを得ないその当時の証拠がありもしないし、ピアノを登記しておつたわけではないから……。
  61. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 只今菊川さんのお尋ねの点はその通りだと思いますが、ピアノ、家具等には一々登記簿がございませんから、最後のきわどいところに参りますと、行政運用で、不動産価格の何割ぐらいを、それに関連した動産と見るというような一つの標準を作りまして、大体これはそれよりも多かつた場合もあろうし、少い場合もあろう。殊に動産の中に或いはミレーやミケランジエロの絵を持つ場合もありましよう。それが本物か本物でないかも知れませんが、そういうものがあると思いますが、大体不動産価格の二割を受取るということで、実際の処理を進めて参るよりほかないと思います。
  62. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 菊川委員ちよつとお願いしますが、法務府の法制意見第二局長の林政府委員が見えましたから……、ほかの委員会へ行かれるそうでありますから、御質問の保留の点について……。
  63. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) なお、御質問がありましたので「その他これらに準ずる財産権」についてはさつきお話を申上げましたが、この文章は修飾でありまして、条約の十五条におきましても「種類のいかんを問わずすべでの権利又は利益で、」というような言葉を使つておりますし、又イタリーその他第二次大戦後の平和条約におきましても、一切の合法的利益を回復し、一切の財産を現存状態で返還するとか、或いは具体的に並べましても、そのすべての主張、すべての権利又は利益というような文句を使つておりますので、その全体をカバーするそれが一つの合法的の権利利益であるならば、これは特記したものでなくてもできるというような、総体論として掲げてあるだけでありまして、現実にはこの第二項に特記してある者の財産以外に問題になるものは余りないと思います。
  64. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その点についてお尋ねしますが、例えば営業しておつた者の申請権というものが考えられます。日本人で申しましても、銀座の角に店を持つてつて、それが一つの大きな権利になつておるような場合もあります。そうした場合に、あなたはこういうことまでも……あそこに店を持つていた、だから大きい権利じやないかというときに、そういう特記の中へ含まれるか、そういう点を聞いておるのです。
  65. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) この一切の財産権という範囲で、只今申すような申請権といいますか、営業権といつたようなもの、それらについては確かに問題があり得るかと存じます。それらにつきまして問題を生じました場合は、これも第二十五条の政令の余地もございまして、それらの具体的問題に応じて、具体的な規定を設けるより仕方がないと思います。何度も申上げますようにこれらの一般規定を設けますためには、でき得るだけ日本利益のためにいたしまして、一部分は或いは政令で負担するものがあると思いますが、そういうものはできるだけ逃げられると、こう考えるのであります。
  66. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 答弁を聞いておると、作ることを逃げられるようでなかなかうまいのでありますね。
  67. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつとお諮りいたします。官房長官に申上げますが、只今連合国財産補償法案について審議中なんでございます。ところが本日の議院運営委員会において官房長官が述べられたことについていろいろと御議論はここにありまするが、どういうふうに議院運営委員会でこの法案についてお述べになつたかをちよつとお聞きしたいと思います。
  68. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) 私は非常に議運で間違えた発言をしました。というのは多数の法案が書いてありまして、これは今国会で成立を希望するもの、これは十二月三十一日までに成立を希望するもの、これは条約発効のときまでに成立の必要なもの、こういうふうに印しがついてあつたわけです。その条約発効のときに必要なものという印しのところに、連合国財産補償法案が入つてつた、気が付かずというのは申訳ないのですが、ずつと読上げたわけですが、そこで連合国財産補償法案条約発効のときまでに成立すればいいというようなことを言つた結果になつたのですが、これは私自身も多少この問題に関係しておりまして、甚だ迂闊で申訳なかつたのですが、実は経緯は御承知だと思いますが、条約の草案ができる前にこういう法案が必要であるというくらいの強い関係筋の意見もありまして、これは形式的には成るほど条約発効と同時に動き出すものではありますが、条約の各国の批准等の関係から見ますると、できるだけ早く、一日も早く成立しておくことが必要であり、且つ日本の信義と言いますか、国際信義上も当然のことであろうと思うのであります。で、実はこの法案の名前をあの条約十五条に入れるような話もあつたのを、間に合いませんで閣議決定のときにやるということになつております。で、そういうわけでありまするから、これは一日も早く成立さしてもらいたいというところに、私が読上げるべきであつたのであります。これは全く読み方の間違いでありますので、先ほど議運にも連絡しまして訂正をいたしておきました。議運関係の人もそれはわかつたということで、併し念のため、明日私が行つて今申したようにこれは読み方の間違いであつたということを、一言言つてくれというお話でありました。明日そうするつもりでありますが、要するにたくさんあつた中で、こう読上げたものですから、その中にひよつと入つてしまつたというだけでありまして、誠に誤解を与えまして恐縮でありますが、議運発言はすでに取消しておりますので、さよう御承知を願いたいと存じます。私から見ましても、これは一日も早く発効することが最も望ましいと、こう強く考えておるような次第であります。
  69. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 議運のお取消しの手続をされたのは結構だと思いますが、僕は今日の議運は、条約を、自由党のほうでは今日、明日中にこの両条約を参議院において議決をしてしまえ、政府のほうでそういう御希望が非常に強いようであるということは、新聞でも明らかにされておりますし、又それは当然院内においてもそういう話でございます。而もそういう重要なこれと関連がある法案を、御説明になるときに当りまして、我々は今朝のあなたの御発言で、それではあわてなくてもいいのだろうという態度で以て、この委員会に臨んだわけであります。従いまして、今日、明日と、日があるのでしたら私も文句は余り言いたくないのだが、日のない今日、明日の二日間、非常に今たて込んでいるのに、そいつを優先しなければならん、これができないと非常に重大な問題だと思うのですが、そのときに今、そういつたような今朝重大な発言をされたわけですから、僕はいいのじやないかと思つたのです。外交官出身の老練なあなたが発言したから、信用して間違いなかろうという確信の下に我々は態度を、そういう態度で以て来たわけでありまして、この法案につきましては、やはり討論もしなければならんし或いは採決についての党の態度も決定しなければならん。最初には今日は急ぐ必要はないというのでこの委員会に臨んだわけであります。従つて重大な委員会審議に齟齬を与えたということに、私は結果的にはなるだろうと思うのであります。これは間違いであつた。間違いであつたと言われてしまえば、間違いと気違いはどこにでもあることでありますから、それを追及するわけにもり参ませんけれども官房長官として誠に軽卒な間違いであつた、この重要な段階に立つて従つて今後は十分一つ御注意願いたいと思います。御警告を発しておきます。
  70. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) これは誠に私の間違いで重々、申訳ないのであります。御忠告の趣旨は肝に銘じて大いにこれから注意しようと思います。
  71. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 とにかく、我々は議運におきまして、事外交問題に関しましては、岡崎長官の長い間の外交官の経験から基いておる御説明でありますから、万々間違いがない、慎重を期せられて、私はせられたものと思つたから、非常に今日は、この委員会審議に齟齬を来たしてしまつて、我々十分質問しようと思つたところが、いや、やはり急ぐということで一委員からは議事進行の御発言もあつたりして混乱しておつたようなわけであります。非常に今日は遺憾の意を表しておきます。
  72. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) 委員長にも誠に申訳ないのでありまして、何とぞよろしく一つ……。
  73. 黒田英雄

    ○黒田英雄君 只今の官房長官の御説明では、一日も早く成立を希望するというふうなお話でしたが、どの法案つて一日も早く皆希望されておるのだろうと思うのですが、この法案平和条約国会が承認すると同時に、これも一緒にきまらなくちやいかんものであるが、その他は遅れてもいいというお考えですか。
  74. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) これはまあ国会でやられることですから、遅れてもいいとかいかんとかと言つても仕方がないことでありますが、元来これは条約の草案のできる前にも法律として出しておいて欲しいという希望があつたくらいでありまして国会条約を承認をされる場合に、当然この法律ができていることが関係国に期待されておることでありまして我々としては無論この条約の承認と同時に、遅くとも条約の承認と同時に、この法律案が成立していることを強く希望するわけであります。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今のお話ですと、法的に通しておかなければならないというのではなくて、そう希望している、それが体裁としてよろしい、非常に念が入つている、こういう形なんですか。法的にこれを通しておかなければこの条約発効に差支えがある、こういうことなんですか。
  76. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) これはむしろ第一には、日本の信義というような問題になるのじやないかと思います。つまり条約はできて、十五条の中には、閣議決定の趣旨よつてこれこれということが書いてある。ところがその閣議決定の趣旨によつた法律案が一向成立していないということになりますと、一体日本国会は条約は承認したのだが法律はどうしたのだ、こういうことになりまして、甚だその点が妙なことになると思います。従つてつまり国会条約を承認するときには、この法律案もできていることを当然関係国も期待されておることであろうと考えます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは只今のお話でわかりました。それは期待されることであつて、若しこれが予算が伴つてどうしても補正予算においてこの予算を組まなければならないという場合に、この法律案を通さなければならないということが出て来るのですが、併し実際に、この予算を組むのは来年度の、二十七年度予算に組む。それで又必要が起れば臨時的に平和回復費等も準備されて来ると思うのです。ですから実際的には予算関係からして、この臨時国会においてこれを通さなくては信義に欠けるということにならないと思います。問題は、予算措置において欠けるところがあれば、これは法律が通つても予算が通らなければなお信義に欠けるのであるけれども、実際の予算の問題は来年度になつて来るので、それで官房長官承知のように、この費用は、いわゆる講和関係費として、これはまあ或いは賠償の費用、或いは又外債の利払とか、或いは防衛分担金とか、その他等々の、日本財政と睨み合していろいろ考えなければならない費用です。で、百億なら百億を出さなければならないとしても、それとほかのバランスの問題が起つて来ると思うのです。財政も、講和関係費全体としてですね、そういう意味でやはりこれは慎重にここで審議されるのが適当であつて、若し外交辞令として、信義の問題としてどうしても通さなければならんというのなら、我々は信義としてこれは守るなら守るという意思表示がここでなされればそれでいいのじやないかと思うのです。又この条約は衆議院を絶対多数でもう通つているのですから、これが逆転するというようなことはあり得ない、これはまあ常識から言つても想像つくと思うのです。そういう意味で、どうも私は国際信義の問題だけだつたら、必ずしもこれは強制されるものではありませんし、又国内法ですからやはり国会の自由意思にこれは委せられてよろしいかと思うのですが、その点如何ですか。
  78. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) 今予算のことを木村君は頻りにおつしやいましたが、これは実際上どれだけ予算が要るか、又ほかとの振合い上どれだけ出すか、こういうことはいずれ予算委員会その他関係委員会で検討されることは当然だと思います。併しながら法案ができてないことにはその審議も実際上できないのじやないかと思うのです。で、国際信義と申しますか、これはよくあることですが、国際的には約束しておいて、国内で法律案が通らなかつたから駄目だつた、こういうようなことも過去において日本の場合でなくてもよくあるわけであります。そこで関係国では先ずこの法案を成立さしておいてくれ、そうすれば安心して十五条の点等もきまるのだから、条約の草案が早くできるというくらいの意気込みだつたわけであります。併しそれは条約の草案もできないうちに、法律案だけ通すわけにも行かないものですから、今日まで延びて来たわけであります。この条約ができるときに、逆に木村君のおつしやることだと、日本は信用があるから大丈夫だ、必ず通すのだから安心できると、こういうふうにお考えになるかも知れませんが、関係国では必ずしもそうじやない、又逆に考えてそれならなぜ法案条約のあの長い根本的の条文さえ通しておるのなら、その条約十五条に書いてある法案を通すことに、何故にそう時間がかかるのかという疑惑を持つことは先ずこれは当然だと思います。いずれにしても国会のきめることであることは間違いないのですが、私の考えでいえばこれは条約が承認されるときはこの法律案が成立していることが自然のことであるし、最も望ましい、こう確信しております。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはお話よくわかるのですが、併し上げ足をとるわけじやありませんが、若しお話で行くなら、条約が通つているのなら、どうしてこれを急ぐ必要があるかという問題が起る。それもただ時間的の問題で、対外的にもこれはやはり信義上守らなければならないけれども、又国内的にも国会のやはり自主性というものもこれも重要な問題です。それで委員会自身としてこれは慎重審議すべきである。これはやはりそれが条約違反にならない限りこれは一向差支えないのじやないか、条約違反にはならないのだ。私にはそれがどうしても信義に欠けるということは思えないのです。それからさつき予算の問題といわれましたが、やはり法律案と予算案と、これは切離しては考えられないと思うのです。一応形式的には切離しできるかも知れませんが、そういうものではないと思うのです。これは官房長官よく御存じだと思うのですけれども……、ですから、どうしてもそんなに急がなければならないということは、それは政府の面子とか何とかということとしてはそうでありましよう。併しそれは、国際信義に欠けるといつて大上段に振りかぶつて来られますと、今度の条約の結び方自体という問題になつて来る。第一調印しておいて、それでこれが国会の承認を得なければならないとなつたとき、国会で否決されたらどうなんです、なお体裁が悪い。それなら政府はもつとこの条約調印に行く前に、国会の意思をよく尊重してやれば、否決されるようなこともないわけです。そういう問題も起つて来るわけです、問題を大きくすれば……。ですから私は、今の御説明ではどうも納得できない。国際信義に背く、そう大上段で来られる問題じやないのじやございませんか。
  80. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) これは、あなたがそういうふうにおつしやるのは、まるで平和条約は全然対等でいやなら結ばなくていいのだという議論のように思いますけれども、根本的には、そんなことは言いたくありませんけれども、決してこの無条件降伏という事実は払拭されているわけではないのでありまして、国会に先によく相談して、条約を結んだほうがいいとおつしやるが、そういう事情には行かなかつたことは、もう私が言うまでもないと思います。そこでこの十五条の関係法律案は、これは今予算云々というお話がありましたけれども、これはどうせ法律と予算というものは、これは結局どうしたつて別個なんです。趣旨は金を出すということにあつても、例えば賠償にしても条約規定はしてあるけれども、幾ら金がかかるのかということは、将来の交渉に待つことで、これにしても幾ら金がかかるかということは、将来の交渉に待つ。併しながら閣議決定で……。
  81. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それは交渉じやない。
  82. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) それはその範囲でだんだんやつて行く、向うは何と言うかまだわからないのですから。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じや、なお更きめられない。
  84. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) いや、それはそういうことじやございません。併しいずれにしても、閣議決定だけで以て法案ができないということは……。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうように交渉によつて金額がきまるのだつたら、なお更これはその余地があるのなら慎重にすべきだと思うのです。なお更、予算関係全体の講和関係費として、日本としては成るべくこれが少いことを望むわけなんです。そういう弾力性があるなら、なお更、今ここで至急通す必要はないと思う。それから先ほど官房長官は言いたくないからおつしやらないと言われましたが、この条約が寛大であるという意味は、イタリーと違つて日本に批准権があるということじやないのですか。それを除いて寛大という点は、それはあるかも知れませんが、一番寛大であるということは日本国民の自由に任すということじやないのですか。その点はこれまでの占領下にあつた非常に卑屈な考えから押付けられたというように考えては、なお向うアメリカのほうの意思を却つて逆に解するのじやないか、我々は対等でないとおつしやいますけれども向うでそう言つているのですから、総理もそう言つておるのです。この対等に待遇された、批准権があるということは、これこそ寛大ですよ、そういうふうに官房長官がおつしやつたから、私どもはあれしませんけれども、そういう気持でこの条約に臨まれたのでは、日本の自主性というものは非常に私は心配です。これは少し……。
  86. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) これは講和条約の議論になるから私はもう言いませんけれども、木村君が作る前によく国会と相談してと言われる、それを言つておるのです。それはなかなかできない。何も批准権があるから寛大だとか何とかということをおつしやいますが、そういう議論じやない、作る前になぜ相談しなかつたかということをおつしやるが、それはなかなかできなかつたのだ、そういうことを申上げたわけであります。これは併し講和条約の問題ですから、これについては申上げません。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局只今の折衝によつてこの金額が又上つて来るということになると、我々はここで百億というものを組むことになる、そういうことが予定されてしまうことはよくないのじやないですか。実際問題として……。
  88. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 只今官房長官からおつしやつた折衝によつてきまるという意味は、恐らく査定によつてきまる、こういう意味だと思います。この法律を作りましても、向うのいいなり放題に補償するわけではないのでありまして、今向うが一切の証拠書類を提出し、又請求書を出して、日本側の行政権の発動としてこれを査定いたしましてこれがきまる、こういう御趣旨だろうと思います。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは了承しました。勿論官房長官もそういうことを言われているのですが、それにしてもやはり影響すると思うのです。査定にしても影響がないというふうにいえないと思うのです。
  90. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) とにかく私途中で出まして審議のお邪魔みたいなことになつていますが、私の出た趣旨は、運営委員会で話したことは私の間違いである。これは急いで一日も早く成立を希望する法案の中に入つておるのを誤つて他のほうに読上げたのであるということを釈明に参つただけであります。あとは従来の御審議をお願いいたします。
  91. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それで最後にあなたがお帰りになる前に聞いておきたいのは、それではその時期は一体いつであるか、十日間延長ということは大体議運でも決定されたので、これは各会派一致して賛成しておりますので、大体そういうふうにきまると思います。従いましてこの会期内を指すものであるかどうか、この点をはつきり伺いたい。(「そんなこと当り前じやないか」と呼ぶ者あり)慎重審議で、今日で押切ろうというようなことでやつてしまうのか、やつてしまわなければいかんのか。そんなことは私はないと思うのですけれども、これは国会の会期内において、できればこの最も早い機会に、それは何もぎりぎり一杯まで我々は引張ろうとは思いませんが、その時期等については当然そう解釈してよろしうございますね。
  92. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) 私の希望を申上げますれば、これは条約成立と同時に発効することが最も望ましい、条約の承認と少くとも同時に発効することが最も望ましい、こう考えております。
  93. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それはあなたの御希望ですね、言葉尻をとるわけじやないが、「私の希望」と言われるがそうですね。
  94. 岡崎勝男

    政府委員岡崎勝男君) 私の希望即ち政府の希望であります。
  95. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 朝の政府の希望とは大分違つて来ましたね。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは附則みたいなものじやないのですか。例えば行政協定なんというものも今後に待つのであつて、そういうものがはつきりできてから、条約と同時にこれが成立しなければならんということが成立つのであつて条約からこれが生じて来るのです。ですからそういうことになるのじやないですか。
  97. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 便宜私から御説明申上げます。これは木村さんがおいでになる前に私から詳しく御説明申上げたのでありますが、条約の附則ではないのであります。沿革から申しますと条約の本文になつてつたものであります。条約本文そのものであつたのであります。それを日本平和条約の場合には相手国が非常に多数であり、且つ早期に条約の成立を希望したために、日本側の希望を容れて列国が足並を揃えるためには、条約はできるだけ簡単にするという趣旨で、本来条約と一体であるべきものを別に法律の形で横にのけたわけであります。従いましてこの条約の草案として八月二十日に条約草案というものがきまりますまでは、先ほど官房長官もお話になりましたように、条約第十五条の形が今日の形ではなしに法律としてこれを制定公布する、こういうことがありました。ただそれを、条約成立前に、条約原則を受けた国内法国会政府から提案するということは、これは国内法的に見ても、如何にも国会に出して法律的に当を失すると思いましたので、更に最終の修正をいたしまして日本は必ず条約と一体のものとして法律的措置として提出するということから、従いましてあと日本政府の信義に信頼してもらいたいということで話がきまつたものでございますから、従つて附則ではございません。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは実情はとにかくわかりました。
  99. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは官房長官の只今のお話により、案を読み損なつたのだということ、明日の運営委員会においてそれを又はつきりおつしやるということで、大体官房長官に対する御質問はこれで打切るということにして本論の質問に入つてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは質問を続行願います。法務府から来ておられますから、これに対する質問を願います。
  101. 松永義雄

    ○松永義雄君 委員長、答弁を願います。さつき質問したのだから……。
  102. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) さつき申上げたのですが、法制意見第二局長の林政府委員です。
  103. 松永義雄

    ○松永義雄君 先ほど菊川委員から代理ということで御質問があつて、その答えに具体的の事例として仮にあるとして憲兵のごときは代理人だと、こういうような説明があつたから、代理というものはそういう意味なんですかと、こう言つて僕は聞いておるのです。それから先は余りくどく言わないほうがいい、そこで打合わせてもらつて……。
  104. 林修三

    政府委員(林修三君) この代理機関と申しますのは、日本政府から法令上その代理権を委任されておる機関であると考えるわけでございます。政府の構成機関そのものではなくて大体それから委任をされておる機関であると考えます。
  105. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすると、例えばどういうようなものですか、このような場合でない一般の場合において……。
  106. 林修三

    政府委員(林修三君) 例えば都道府県のような地方公共団体はこの一例かと考えます。
  107. 松永義雄

    ○松永義雄君 そういう場合において都道府県の官庁ですか、それは政府代理人だと、こう見るのですか。
  108. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、この表現は多少この法案そのものが対外的ないろいろな問題もございますので、こういう表現をとつておりますけれども、そういう今の都道府県、市町村等の政府自体ではない機関が政府から法令上委任を受けてやつておるような場合には、これの中に入ると思います。
  109. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすれば政府機関でない、政府機関以外の機関或いは個人、そういう場合には代理ということは関連がある、こういうわけですか。
  110. 林修三

    政府委員(林修三君) 大体さようなことになると思います。
  111. 松永義雄

    ○松永義雄君 それなら普通の意味代理という考え方で、先ほど政府機関の一部のものは代理機関だという説明があつたから、変だと思つたから伺つたのですが、それでよくわかりました。
  112. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に先ほど第二条の五項のこの「その他これらに準ずる財産権」のときに途中で切れてしまつたのですが、いわゆる営業権だとか、その辺に持つていた老舗というものは含まないというふうに解釈してよろしうございますか、「その他」に含むのかどうか、それはどうです。これをはつきりしてもらいたい。
  113. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 営業権につきましては今までの扱いは法律上二色となつております。金を出して買いました営業権というものは財産に入ります。金を出さない営業、普通商売している間に発生したものは、営業権はそのままでは法律上の財産にはなつておりません。
  114. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますると、今のあなたの御答弁のような趣旨で以て本項は御解釈になつて処理されるつもりですか。
  115. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) その通りでございます。
  116. 清澤俊英

    清澤俊英君 今の代理の問題で、代理機関の個人が、機関としての活動でなくして個人の行為で公権力を行使して損害を与えた場合はどうなりますか。その場合は賠償は必要はないのですか。
  117. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 只今御説明の場合につきましては、国家賠償法におきましても同じような例があると思いますが、公権力行使の形をとりまして、本来公務員であつた者がやりました行為につきましては国家が責任を負わざるを得ないと思います。
  118. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その次に第三条でございますね。ここに「連合国又は連合国人が……本邦内に有していた財産」、戦争前に持つてつた財産が戦争の結果損害を生じたときは、これを補償するということになつてつて、但書で以て「但し」と、後段で否定しているのでありますが、逮捕されたり抑留され又は拘禁され、若しくはその有していた財産を云々した場合に限るのだということですね。そうしますと、そのときに財産を持つてつても、逮捕、抑留、拘禁というような事実がなくて、戦争の結果損害を生じておつたやつは、これは除外されるわけですか。
  119. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) さようでございます。ただ……。
  120. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 焼けたような場合もあり、……、そうすると次に行きまして、第四条になつて日本国又は日本国と戦争し、若しくは交戦状態にあつた国の戦闘行為に基因する損害」、即ちこれは爆撃等の場合ですね、爆撃による焼失ですか。併しその焼失を受けても、逮捕、抑留、拘禁、この第三条の但書に該当しない限りは補償しない、こういうことになりますか。
  121. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) その通りでございます。ただ一つの例外、第三条の二項でありまして、二項を除いてはお話の通りであります。
  122. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  123. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) そうでざいます。なお敷衍して申上げますと、イタリア条約、或いはこれと同じにできましたブルガリアその他の条約におきましては、そのような限定をしないで、およそ連合国人であつて、それが広い意味の戦争の結果損害を受けたものは、皆イタリア政府補償せざるを得ないような条文が設けられております。日本の場合には、その点一般の無差別爆撃等によつて敵の空襲の結果までも日本が損失を補填することにつきましては、どうも納得のいかない点があるというので、戦争損害と日本の責任との間に結付き得ないとして、何とかそこに伸縮のつく範囲に、先方の理解の下に、こういう限定が設けられたのでございます。これは日本利益のためでございます。
  124. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 わかりました。次に今度は、それと関連して第二項でございますが、もと居住していた個人、それから業務を行なつていた法人は、第四条第一項第一号又は第五号に掲げる損害であつても、これをやはり補償しないのでございますか。
  125. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) さようでございます。
  126. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうふうに解釈してよろしうございますね。
  127. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) そうでございます。フランス人の宣教師等で、身体についても財産についても日本政府又はその代理機関が何らの拘束を加えないで、ふらふらしておつた者がございます。それらの者が我が国の軍隊の空襲といいますか、戦闘行為から、或いは敵の空襲によつて損害を受けましても補償しない建前でございます。
  128. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじや第三項で、平和条約の第十五条の規定によつて返還の請求のないときは日本政府で処分することができることになつておりますが、この第三項では「やむを得ない事由があると認めたときは、」という規定を設けておりますけれども、これは一体「やをむ得ない事由」というのは如何なる場合を考慮しておられるのでありますか。大体一方においてはこの期間までに返還の請求がなかつたときは日本処理するといつておきながら、ここでこういう除外規定を設けておりますが、これは一体どういう場合を想像し、どういう交渉の経過からこれを設けられたか。大抵これは止むを得ないからして、この期間内に請求しないのだと思うのでありますが、大抵止むを得ない理由によつて返還の請求ができないのであつて、個人的財産を持つてつたのは大概請求をすると思うのでありますが、この点どういうふうに解釈しておりますか。
  129. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 只今の菊川委員の御質問には二つの問題が含まれているのであります。それは第十五条の返還請求は、これは所定の期限まで、効力発生後九カ月以内に返還の請求がなかつたならば、補償問題まで至らないで、日本政府は返還をしないで国庫に帰属せしめる。本人の請求のみならず本人の代理者又は本人の属する政府請求するものまで認めておりますから、多少そこに請求権者について余裕をとつております。その期限内に請求がなかつたら返還しない。ところがここに書いてありますのは我々の希望からいつたものでありまして、補償は返還すべきものについて、返還されないものの範囲において補償するのだ、従つて返還の請求さえもして来ない場合には、補償もしなければ返還もしない、こういう二段構えで我が国利益を擁護したわけであります。そこで止むを得ない事情というのは、今お尋ねのような返還の請求をして来ないのは、皆、事情があるでしようが、そういう事情は止むを得ないと認めないで、例えば本人が死亡したけれども、相続人が法律人決定できない、そのために請求が遅れているというような、狭い範囲では止むを得ないと日本政府が認めるということで、日本政府の態度につきましては別に交渉いたしておりません。成るべく日本利益を思つてやりたいと思つております。
  130. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 わかりました。そういう極めて限定した範囲で以てこれを解釈するものであるというふうに承知してよろしうございますね。
  131. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) さようでございます。
  132. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじや第五項でございますが、補償請求権を当該財産と共に継承したときに限るということになつておりますが、これは遺産相続の場合又はその請求権の継承の確認方法、遺産相続なんかの場合に、一体これはあなたのほうで審査をするということになつているのだが、遺産を相続した人が、これは請求権を継承したかどうかというような確認は、一体どういうふうにしてするつもりでいるか、それからサンフランシスコ会議前に死亡したときなんかは、こういう補償法というようなものは予定されていなかつた、わからなかつた、三、四年前にはわからなかつた。そのときにもうすでに継承してしまつてつたという場合は、請求権まで果して継承しておつたかどうか、それはただこの財産を継承したものはすべて請求権も継承したものとみなしてやるのか、この点について、一応遺産相続の場合と一般の売買の場合と、この点分けて一つ……。
  133. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 御質問の点はかなり争つたところであります。この部分につきましては、遺産相続の場合におきましては、返還の場合につきましては相手方政府に現在請求しておるものが権利者であるということを確認してもらう手続をとりたいと思います。補償の場合におきましても補償請求手続を、相手方政府を通じてやりますから、その政府の責任において確認してもらう措置を講じたいと考えております。第二段にお出しになりました売買の場合、補償請求権がないものとして安い値段で売つてつた場合には、どうするかという御質問だと思いますが、ここに書きました五項の解釈といたしましては、売買と共に補償請求権も譲り渡したということが売買の契約上明らかでない場合においては、元の財産の所有者に残つておるものだと解釈することにいたしております。従つて売買があつたから当然に補償請求権が、条約規定従つて請求して来るときに、その財産を持つている者に帰属するというのではありません。むしろ逆に、損害を受けた財産を損害を受けたときに持つていた者に元来請求権がある。この請求権を売買契約におきまして明示的に相手方に譲り渡してない限りは、相手方に渡さないという解釈でございます。
  134. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の御答弁によりますと、最初管財局長が答弁されたときには、いわゆる確認というものは、継承権があるかないかというようなすべての確認は、証明の確認という十五条の規定なんかは日本政府がやるんだ、そう言われたでしよう。十五条の証明書の問題なんか……。ところが、今の課長の説明では、外国のほうでそれはやつてくれるから、こういうふうに言われたが、食違つているのじやないですか。それでいいでしようか。十五条によつてその請求権が継承されたかどうかの証明を外国のほうでやるとあなたはおつしやつたが、管財局長は証明書の手続のすべては日本政府がやるんだ、こういうことを言つておられたが、大きな食違いがありますが、それでいいのでしようか。
  135. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 食違いはないのであります。立証の責任は飽くまで請求権者にある。この立証する資料としての書類を日本政府が持つている場合に、その書類の請求があつた場合には日本政府がこれに協力して、その登記簿、謄本、抄本というようなものを日本政府が提出するということであります。今の遺産相続等の場合におきまして、果してその者が遺産相続人であるかどうかというような証明書類につきましては、請求権者日本政府請求すべき筋合のものでもないし、又請求されましてもそのような書類は日本の法務関係等にもないわけでありますから、それは向うには立証する義務がある。それに基きましてそれぞれ本国で整えて日本側に提出するということになつております。
  136. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第六項につきまして、「旧外貨債処理法規定適用を受けた公債及び社債並びにこれらに係る利子債権については、適用しない」と、書いてございますがその理由一つ……。
  137. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) それはこういう趣旨でございます。本日この委員会にも予備審査にかかつております旧外貨債については、平和条約の十八条の問題がありまして日本側がこれの償還その他について善意を持つて処理をすることになつております。この処理の仕方については、これは相手国或いは相手側の債権者と協議の上で、でき得る限り日本側利益のために処理がなされることと思います。その際、連合国財産補償法のほうで、敵産管理等に関連して、連合国人の持つてつた外貨債日本で処分してしまつて返還できないものを現金で補償することになりますと、同じ外貨債処理についてこの敵産管理にかかつたものは現金で直ちに補償してもらう、然るに敵産管理にかからなかつた連合国人の持つている外貨債につきましては、別に協議の上処理されるということになると、一方は非常に利益を受ける、直ちに現金で損害補填をしてもらつておるじやないか。他の大部分のものはそのような利益を受けられないということで、外貨債処理に対する不公平を免れんことになりますから、ここでは外貨債につきましては、つまり敵産管理にかかつて返還できない状態になつているものであつても、現金補償はしないで、別の措置を講ずる。別の措置と申しますと、一方返還に関するいわゆる政令がございます。これは追つて法律に直します。その際に同じものを返還できない場合には、外国の市場で同種類のものを買つて、現物を本人に返還する、補償しないで……、そういう規定をおきまして返還されたものを平和条約十八条によつて外貨債処理としてゆつくり一般の方針と並んで処理する。こういうことのほうが、利益であるということで、補償から外しまして返還のほううで以てする。返還そのものを一般の外貨債と同じ方針で借金なり或いは償還なりするということになります。
  138. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それはわかりました。次に第四条についてお尋ねしたいのでございますが、四条の一項の三号でございますが、第五号にもありますが、「相当の注意を怠つたことに基因する、」こういう言葉がございますが、  これも翻訳だと思いますが、この「相当の注意を怠つた」云々ということと、昔は「善良なる管理者の注意」という、この言葉だと思いますが、さて「相当の注意を怠つた」かどうかということの判定、これは日本政府にあるのでございますか、どうですか。
  139. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 「相当の注意」という言葉にきまして菊川委員のお話の通りでございます。当初におきましては善管注意というような言葉を使いましたが、向う側はそれはわからんということでございまして、向う側にわかる言葉に変えたわけでございます。変えました言葉の内容をどう扱うかということでございますが、敵産管理については各国とも例がございます。各国において敵産管理委員の義務というものがいろいろ違うようでございます。例えばフランスにおきましては、不在者の財産の事務管理をしたと同じような義務、自己のものと同一の義務の程度にするというような規定を使つておるのでございます。それよりも重い善管注意を要求しておるところもございます。相手国によつてそれと同等の注意というふうに考えたいと思つております。
  140. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでその判定を、これは相当の注意を怠つたか怠らなかつたかという判定が日本政府にあるものかどうかということをお尋ねするのは、特に何故かというと、第五号に「連合国占領軍が相当の注意を怠つた」ということが書いてありますね。一体連合国に、お前のほうの連合国占領軍が、相当の注意を怠らなかつた、これは怠つたというようなことを言えるかどうか、言う勇気があるか、これをやつて行くつもりか、こういう点をお伺いしておるわけです。これはなかなかむずかしい問題だと思いますが、文章では簡単ですけれども
  141. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) この法律の施行は日本政府が行いますことでありますから、「相当な注意」の判定は、日本政府でやるつもりでおります。但し十八条に「特別の協定がある場合には」という規定がございます。十八条の三項でございます。再審査の規定について向う側が、いわゆるヴエルサイユ条約かイタリア条約の例にありますように、混合委員会的なものを作つてそこできめるように話がまとまつたといたしますれば、日本政府だけの判定で行かない例も生ずるかと思います。
  142. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすれば、連合国占領軍がとつた相当の注意云々の判定も、日本政府にありと解釈してよろしうございますか。
  143. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) その通りでございます。
  144. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第五条、「その返還後日本政府の負担によつて補修されたものであるときは、」この返還後日本政府の補修の字句でございますが、一体これは事例として、こういうことの返還してしまつてから日本政府はこれを補修しておる事例、どういう理由でこれを補修されたか、この点についてお伺いしたい。その事例はあるのですか。
  145. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 司令部は一般的に現在ある連合国人財産につにきまして保全しろというメモランダムを出しておりまして、その保全命令に従いまして屋根が飛んだようなものにつきましては屋根を仮設でもしておきませんと、屋根がますます傷んでしまいますので、その場合に保全の措置をとつております。ところがこの五条の一項の末段で書きましたような場合は、一つの保全工事が終つた状態でおりましたところ、その後突発の事故で、例えば台風で又こわれてしまつたといたしました場合に、取急いで日本政府が工事をやつた例があるのでございます。その工事が法律上の返還手続が終つた後まで更に延びたといたします場合には、この条項によつて処理したいと考えたからであります。
  146. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第六条の地上権、永小作権、地役権の問題でございますが、これらの返還されなかつたものについて生じた損害額の算定でございますが、さて「これらの権利と同様の権利を本邦内において取得するため補償時において必要な金額とする。」ということになつておりますが、「これらの権利と同様の権利を本邦内において取得するため」ということになりますると、これは非常に地上権だとか、永小作権というようなことになりますと、特に銀座であるとか、ああいう方面の算定はむづかしいと思うのでありますけれども、一応算定は、請求権者請求して来た場合の算定は対立しなければいいけれども、その算定はすべて大蔵省においてこれをされる予定でありますかどうですか。
  147. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) これは原則といたしましては地上権、永小作権、地役権等につきましては、建物と違いまして土地が消えてなくなるということはないものでございますから、都市計画その他の特別の事由がなければ適用の事例は少いものと考えております。例えば不動産の賃借権等で元の建物が借りられなかつた、元のビルが焼けたために借りられないという場合におきましては、元の使つてつたと同様の使用価値の建物を借りるために必要な金というふうに考えております。但しこの場合に必要な金と申しますのは、例えば敷金等が余計に要るというような場合を考えまして、その賃借権を設定するに必要な賃借料につきましては、戦前と同じような賃借料を払わすようにするために国が補償するということは考えておりません。その時に一般市場において行われております賃借料を払つて、そうして同様の権利を取得するために必要な金を、政府のほうで必要な分だけ政府補償するのでございます。
  148. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この点今私が御質問申上げたのは、例えば丸ビルなんかで部屋を借りておつた。ところが拘留その他で追放されてとり上げられてしまつた。もうあとの人がこれを借りておるわけだ。ところが丸ビルを借りようと思つたつて、返還するというたつてなかなか困難だと思います。従いましてそれと同じようなやつを日本政府において取得するための権利金を出してやるということになつておるわけです。そういたしますると、そのいわゆる金額の算定というものは一体それをあなたのほうでおやりになるつもりであるかどうか。この点についてお伺いしておるわけです。
  149. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お話の点につきましては適当な民間の評価委員等の知識を借りまして算定するつもりでございます。
  150. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうなつて来ると、法律の中にはそういう民間の知識云々ということは全然ございませんですが、その民間ということになるとちよつとむづかしいと思うのですが、やはりその当時の公定相場、その時の元借りておつた部屋は今幾らで借りておるか。それからどれだけ権利を払つておるかということであなたがたが技術的に算定されるか。今あなたが言われる民間人の評価委員を設けるということですが、そういうふうにやられるつもりでございますか。
  151. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) そうではございません。現在のところ今のお話のようなものにつきましてはお話のような決定の仕方をするわけでありますが、市場で一体幾らしておるのかということは我々のほうで必ずしもわからないことはございません。例えば勧銀であるとか、例えば不動産の会社というようなところから資料をとろうということを申上げたのであります。
  152. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に商標権についてでありますが、第十条のこれは「商標の信用を開戦時の状態に回復するため補償時において必要な金額との合計額」、これも非常に算定はむづかしいと思います。これは一体どういうふうにして「商標の信用を開戦時の状態に回復する」云々というようなことは算定されるのでございますか。この意味ちよつと僕は呑み込めんのでございますが、こんなのもを金で換算するということは非常にむずかしいと思いますが。
  153. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お話の通り非常にむずかしいと思います。我々が考えておりますのは、例えば新聞に今まで使つてつたのはどういう会社であつたけれども、今度使うのはどういう会社であるというような新聞広告をやる費用と考えております。
  154. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 つまり商標の信用回復というのは、新聞広告の費用を大体考慮しておられるわけでありますか。そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  155. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) そうでございます。
  156. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第十一条の「株式の損害」でございますが、これはこの前小林さんも質問して非常にこれは苛酷であるとのことで問題になつたのでありますが、政府は「開戦時における当該会社の払込済資本金の額に対し連合国人が開戦時において有していた」云々で、これは様式のパーセンテージによつて会社が受けておる損害額に乗じるわけですが、株式はそのまま返すのか。その時の株式そのものは一体日本の株式取引所のその時の相場によつて補償するものであるか。それとも額面のその会社の株を政府が処置して現物でこれを補償するという処置をとるのであるか。それともその時の相場、これは相当株式でございますから非常に影響等が大きいと思うのでありまするが、御案内の通りに株は最も相場の変動の強いものでありますけれども、この算定をどういうふうにいつ、請求した時にやるのか、それとも今度返す時にやるのか。この説明を承わりたい。
  157. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お話のような問題につきましては、現在のところ、株そのものを返すという方式をとつております。そのものを返す方式といたしましては、敵産管理人から買つております第一次取得者が持つております場合には、その移動を今禁じておりますので、禁止された人が持つております株そのものを返すということに承知いたしております。それ以外の株式につきましては、すでに第二次取得者以外に移つておりますものにつきましては、これを現物で返してやるということになりますと、取引の混乱を起しますので、会社が増資して新株を発行して返す、乃至は会社が市場で適当な時期を見計らつてつて来て現物を返すというふうにいたすわけであります。買つて来て返しました株式につきましては、政府が一定の金を会社に戻す。新たに増資新株を発行して渡しました場合においても政府は一定の金を会社には戻しております。
  158. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、そのほかにその会社が損をした分を株式のパーセンテージによつて割り出しただけを又今度はその連合国人補償する。こういうことになるわけですか。
  159. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お話の通りであります。
  160. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうするとこの株式というのは、大体その株式の法律解釈は我々若い時に習つておるのですが、その株を持つておる者は、どういうことがあろうとその所有株数によつてだけは株主が危険負担をするというのはこれは世界の慣行だと思うのでありますが、にもかかわらずその慣行を更に超えて一体補償しなければならんというのは、私は非常に苛酷だと思うのでありますが、やはりイタリアのほうの方式もこういうことになつておるのですか。
  161. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) これはお話の通り非常に無理な点がいろいろ含まれておると思います。更に実際計算いたします場合にも実例を調べて見ますというと、二百四十数社適用があると思われる会社があると思いますけれども、そのうちの大部分というものは一%以下の持株数であるというのが多いのでございます。従つて計算上も非常に経費のかかり過ぎるという点もあるのでございます。この点は日本政府側としても非常に強く反対の趣旨を申入れましたが、連合国側の同意を得ることはできませんでした。同意を得ることができませんでした根拠には、イタリアのも同様に書いておるということでございます。イタリアの規定につきましては、イタリアとの平和条約の七十八条の第四項のロ号の規定がございまして、ロ号の後段は、補償法の細目を、御質問の部分についてこのように規定しているのであります。「この補償は当該会社又は組合がこうむつた総損失又は総損害を基礎として計算され、且つ右の損失又は損害に対しては右国民が」……これは連合国国民のことでございます。「当該会社又は組合において有する利益がその会社又はその組合の総資本に対して有すると同一の比率を有しなければならない。」という規定でございます。
  162. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) なお、その関係を私から一言申上げますが、さつき佐々木外国財産課長からお話がございましたように、株式そのものはこの補償法には規定はございませんけれども、これは連合国財産返還政令のほうですべて現物を返します。百株持つてつたものには会社が増資するなり、市場価格で買うなりして返すが、返された連合国人は、株数は揃つたけれども、株式が代表する会社の資産が第四条に掲げる原因によつて損害を受けておつたならば、同じ百株返されても財産的価値は違うのであります。尤も開戦時から終戦後を通じまして、株式の値段は相当違つて来ておりますから、開戦時の百株の市場価格と返還時の百株の市場価格とでは、返還時のほうが株の価格が上つておる場合もあり、下つておる場合もありますが……。そこで仮にそれらが上つておる場合にしても、その上り方が会社の財産が減つておるにもかかわらず、それは日本における一般的インフレのために上つておる場合もあるのだから、その株式が代表する財産的価値は実質的に変化しておることは変りがない。そうすると株式の数を返すばかりでなしに、株式が代表する会社の資産の欠陥をもこの株式の割合によつて、補填しなければならないことになる。こういう理屈が出て来たわけです。これは一方におきまして、連合国人が全株を持つておる日本法人は、この法律案の第十一条のような計算をしないで、その法人自体が第二条の規定連合国人として取扱われるのですから、これは十一条の規定によらないで、その会社が戦争の結果受けた損害額自身を物理的、算術的に計算して、補償される。然るに日本法人について、全株でなしに一部の株を持つておる者は、会社の戦争損害について何らの補償を受けないということは不合理じやないかということが生ずるのであります。そこでイタリーの条約におきましても同様な規定が置かれてあるのでありますが、我がほうとしてもこの理論を肯定せざるを得ませんが、向うの要求通りに応ずるわけにも行かない。株式を返還した上、会社財産が戦争の結果こうむつた財産をも補償するとすれば、会社がこうむつた損害のうち、戦後の措置によつて日本人株主或いは日本人債権者の負担によつてすでに埋められておる部分……、その顕著なるものとして、企業再建整備或いは金融機関再建整備等として、会社の損害について先ず第一に一般の株主の出資額を十分の一に切下げ、更に会社の一般債権者の債権額を六割まで切つて補償しているわけでありますが、こういう部分は会社の損害補償額から差引く。
  163. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 十二条の規定ですね。
  164. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) はい。そこで、そういう日本人の債権者なり、株主なりの犠牲によつて会社の損害を今日埋めてある状況においては、従前の株式の数を返せばそれでいいじやないか。その埋めきらない部分だけを連合国側の主張するように返そうというので、十二条の規定を特に設けまして、同条の第一号及び第二号で先ずこれを差引いて、更に第三号という規定をおきまして、その会社が戦争の結果損害を受けたが、損害を受けた後、会社が更にその後の事業活動によつて利益を受けた分があれば、それも更に差引くべきものといたしたのであります。併し会社が損害を受けた後において如何なる利益を生じたかということは、計算上非常に困難で、一概にわからないから、第三号の規定のように、会社が開戦時に持つていなかつた財産の価額が、取得価格を超えるときは、それが現実利益であるにせよ、物価の変動に基くものであるにせよ、その差額は、会社の営業によるその後の利益と見て、これも差引くということにしてあるのであります。これは菊川さんや、小林さんから言われるように、日本側の負担が重過ぎる、或いは二重負担になるのじやないかという御議論の点を実は十二条の規定で極力殺しておるのであります。従つて株式については、株式そのものを返還するのほか、現実の会社財産の損害について、連合国人株主に補償する金額は第十二条の適用上ずつと減らされて参るわけでありまして、日本側の不利益が極めて少くなるという点について、十一条と十二条とを一緒にお考え願いたいと思います。
  165. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 十二条の第三号の「会社が開戦時において有していなかつた財産で」という条項でございますが、これによりますと、大抵の会社は戦後、まあ特殊な会社は別といたしまして、工場は軍の払下げを受けたりして相当財産を取得しておるものがありますが、そういうものは相当評価もしなければならないと思いますが、これは会社の帳簿面の評価、簿面価格によつてやるのか、或いはあなたのほうの判定によつてそれをやるのか、それを一つ……。それは管財局あたりからもらつた財産は時価と帳簿価格というものが相当違いがあると思います。再評価してあるものもありますけれども、再評価してもまだいい会社も相当あると思いますが、その判定を一体会社の簿面価格によるのか、それともあなたがたの時価によつて算定される予定であるか、この点をちよつとお伺いしたいと思います。
  166. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これは他のかたから先般も御質問がありましたが、それと同じように、すべてこの算定は日本政府が自主的にいたします。その算定の基礎としては、只今お尋ねの中にもありましたように、会社の資産再評価の基準というものがありますが、そういうものを十分参考にいたし、又同じ種類の設備、機械等の取得時から補償時までにおける現実価格の推移というようなことも参考にいたしまして、日本側の査定によつて第三号の規定の文字通りいたす予定であります。このことは日本側がきめますが、先ほどから説明がありました通り向うがこれに不服の場合には……。
  167. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 審査会へ任す……。
  168. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) なお、このことは法案にも詳しく書いてございまして、この十六条の一項、二項というように書き方を分けておりまして、先ず請求者がいろいろな立証を揃えて請求の申請をする。それがそのまま呑める場合は日本政府は呑みますが、呑めない場合は第二項で日本政府がみずからの査定によつてその請求額を変更して決定通知をする。それで不服な者は補償審査会に出て来る。なお、その補償審査会に請求人が出頭して意見陳述をする、こういう筋合であります。
  169. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう一つ、この件についてお伺いしたい。私の伺つたのがまだ管財局長ははつきりしないと思うのですが、いわゆる会社の帳簿価格というものがございます。これは再評価してないものは別として、この会社の原簿に載つておる財産、これによつて判定するものか、時価によつて御判定になるかということです。この価格は戦後、開戦中に持つておらなかつた財産補償時に有しておるときのこの時価が、その取得価格を超えるときは、この時価というものはいわゆる簿面価格か、それともあなたがたが算定をされるのかと、これを申上げておるのです。それによつて相当狂いが出て来るわけでありまして、これをあなたがたが算定を大きくしてしまえば殆んど十一条というものは死んでしまうことになる。これが簿面価格ということになると、これはちよつと問題が起きて来る、こういうことでございます。
  170. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これは簿面価格ではございません。これは全く読んで字のごとく時価でございます。時価の算出方法については、その取得価格は会社のほうでわかつております会社の帳簿によつて。それから今日までの同一種類の財産についての価格指数の変動等を加えた時価で、日本側で定める時価で査定いたします。
  171. 田村文吉

    ○田村文吉君 無償交付等の場合は、株式の問題はどうお扱いになりますか。
  172. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 時価で評価するということが合理的と我々は考えます。その理由は、実は無償交付株についても、連合国人が株主であつた会社については、その持株率に応じて無償で渡せということを向うで要求されているからであります。無償株交付の要求の非常に強いのは、会社に対し支配的な持株率を持つておりました場合に、その無償交付株の交付されないことによつて、その持株率が減つて来る。支配できなくなるのが困るということから来ているのであります。従つて無償株はこれを日本人と同じように交付いたします。交付いたしますが故に、差引くことができるということであると考えております。
  173. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次にこれは一つ説明を、本当にお教え頂きたいと思いますが、これは何回読んでも理解できないのは、第十四条の「請求権者が開戦時において有していた財産又はその果実によつて戦時特別措置として弁済された当該請求権者が開戦時において有しれていた債務の額」というのは、これは一体何のことを言つているのかわからない面がございますから、一応御説明を願いたいと思います。
  174. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 旧敵産管理法におきましては、敵産管理人が財産の処分の権限を持つておりまして、従いまして敵産管理をされた連合国人が持つております債務につきまして、その連合国人の預金又はその預金の利子等から払つた分がございます。連合国人につきまして、例えばその預金のもとが建物であつた。建物は返すということで返します、建物は返されて、おまけに預金で支払われた債務は消えておつたということでは、二重に向うが利得することになりますので、債務の減つた分によつて取得した分は差引こうというのであります。
  175. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次にもう二点お伺いしたいのでありますが、第十八条でございますが、十八条の三項、「日本政府と当該請求権者の所属する国の政府との間に特別の協定がある場合には適用しない。」この特別の協定がすでにできたものがあるのか、今後これを結ぶつもりであるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  176. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これは協定ができたものは、ございません。これは経過的に申しますと、先ほど来の御質問にも関連するのでありますが、査定はすべて日本側がする。従つてその査定に対して不服のある場合に更に再審査をして日本側が一方的に再審査決定するのではいけないというので、再審査については別の協定による和解委員会のようなものを作つて、当該連合国人及び第三国人をも加えて再審査の衡に当らせたいという向う側からの強い要望がありまして、イタリアその他の例はそのようになつております。ところが、補償の建前は、先般来の官房長官の問題にもからむのでありますが、日本側法律でやる、こういう仕組になつた以上は、形式的にでも日本側法律によつてやるんだから、日本側が再審査決定するという建前でなければ困るということを強く頑張りまして、大体これに承服されたのであります。但しそれに対する承服を留保している或る国等もありまして、それらの国についての問題が生じた場合には十八条の一項を排除して、その国との間に、場合によつては第三国人も加えたような和解委員会のようなものを作りまして、そこが再審査の処理をするということをしなければならない場合も出て来るかも知れないということで、その規定を置いたわけでございます。なお又、その第三項によりまして、或る連合国との間に十八条の一項を排除した和解委員会でも作るような協定をいたしました場合には、先般外務省、法務府と相談いたしました結果、それらの協定の内容の如何によつては憲法七十三条による条約と見て国会の承認を求める、事前又は事後において。こういうわけでございます。
  177. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それから最後に第二十条の連合国財産補償審査会を大蔵省に設けることになりますが、これの構成は日本人だけであるか。それとも外国人も入れるか。それからこの所管はやはり大蔵大臣の所管の下に、この連合国財産補償審査会というものを置くのであるか、この点について……。
  178. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 連合国財産補償審査会は日本人のみで以て構成いたします。大蔵省の所管といたしまして、運営及び組織につきましては、ここでいう政令は恐らくは特別の政令でなしに、大蔵省設置法に基く政今の中に入れることに相成ろうと考えております。
  179. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私の問題は大体これで終ります。
  180. 田村文吉

    ○田村文吉君 二十一条の課税問題ですね。これについては株式を返還する、或いは補償するわけですが、配当金などをとつた者に対しても税金をとらない、そういうことになるわけですか。
  181. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 株式が連合国人の所有のまま残つておりました分につきましては、お話の通り配当金など入つておる場合もございます。これについては昔の分につきましては源泉で課税された残りが連合国人の所有の配当金として残つておるわけであります。かようなものにつきましては税金はかからん、こう考えまして、補償金として支払えるものについては源泉の課税で差引きもしないで、総合で税もかけないというのが二十一条の規定の趣旨でございます。
  182. 田村文吉

    ○田村文吉君 そういたしますと、つまり日本国にとられていた間の財産利益というものは、全然無課税で個人が取得するという形になりますね。
  183. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) お話のように補償をせられるにつきましては無課税でございます。但し株を追つぱらわれてしまつたあと連合国人が株を持つていたならば、その利益というものは補償の対象になるかという問題につきましては、非常に問題になることと考えております。イタリア条約規定、それから今までの戦後処理のいろいろな条約上の取扱といたしましては、得べかりし利益というものは補償しないことになつております。
  184. 清澤俊英

    清澤俊英君 それからこれに関連して、これは増資とか払込みをとつた場合、これが放つたらかしになつておる場合、こういつた場合はどんなことになつておりますか。
  185. 佐々木庸一

    説明員佐々木庸一君) 全然新らしい株に応募した場合におきましては、連合国人の払込をとりまして新らしい株を渡すことにしております。但しその渡します期日は、この新株の引受申込の期限をきめておりましてもその期限には関係なく、向う請求に応じなければならんということを考えております。
  186. 森八三一

    ○森八三一君 十九条で百億円というように会計年度の限度がきまつておりますが、恐らくこの法律発効すれば請求権者請求を行うと思いますが、その査定の結果が百億円を越えるというような事態が発生した場合における実際の支払順位はどうなつておりますか。
  187. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) お尋ねの場合はまだきまつておりません。向う請求を査定いたしました結果、百三十億になつた、そのうちの百億を拾い上げるのに、どの分からやるかということは、恐らくは請求があつた順序に従つて百億に達するまで支払つて、残りの分は翌年度に繰越すということに相成ろうと思います。これらの点につきましては連合国側打合せもできておりませんので、具体的には二十五条の政令等で補完せらるべきものと考えております。
  188. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  189. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて下さい。それでは明日の内閣委員会との連合委員会は延期することに内閣委員会に申出ることにいたしまして、明日午前十時から本法案に対する質疑を続行して頂くということで、今日はこれで散会することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それではこれで散会いたします。    午後四時三十五分散会