○
政府委員(内田常雄君) この株式会社は法人でありますから、その株式会社が連合国人である場合には別に株式の問題を論ずる必要なく、その連合国人たる株式会社の積極財産がこの四條に掲げてある原因によ
つて損害を受けた限度において物理的、算術的に補償いたします。ところがその株式会社が
日本法人であ
つて、連合国人でない場合に、今度は連合国人たる自然人又は法人がその株式を持
つておるというような場合、その持
つておる株式は戰争中いわゆる強迫によ
つて敵産管理として処分されてしま
つておりますから、その株式は條約の十五條の前段によりまして返還しなければなりません。ところが返還いたしましても、返還されたものは一つの有価証券でありまして、株式としては返りましても、その株式が代表する会社の資産の中身は戰争によ
つて損害を受けておるものが多かろうと存じますので、その場合を
規定したのが十一條でございます。その場合その株式に係る
損害を
算出するためには、先ず株式の発行会社を一つの主体と仮に見立てまして、その会社が物理的に受けた
損害を計算するのが第十二條に書いてあるのでありますが、その際
日本の法人である会社が、戰争の結果受けた
損害の全部を計算いたしまして、その
損害に対してその会社において、連合国人が持
つておる株式の割合で補償をいたすことは、補償の行き過ぎになる場合が、終戰後の会社に関するいろいろな経理
措置の
関係で出て来ることがおもんばかられるのであります。そこでこの十二條の第一号、第二号というような金額を会社の
損害額から差引いて計算する。つまり連合国人である株式の所有者に補償すべき金額をできるだけ小さくするために一号、二号を先ず差引く、つまり連合国人によ
つて株式を持たれておつた会社が、企業再建整備にかか
つて債権者の債権を切捨てた、又連合国人以外の株主の株式も十分の一に切捨てたという場合が通常の場合でありますから、これらは
日本人の負担によ
つて会社の
損害を処理しておるのでありますから、
従つて日本人の負担によ
つて処理した会社の
損害は連合国人に補償しない、こういう
趣旨であります。一号、二号はその
通りであります。ところが三号は、非常に
説明が困難でありまするが、ともかく我が方に有利な
規定として設けたのでありますが、その会社が企業再建整備によ
つて日本人たる債権者或いは
日本人たる株主の出資金を切捨てておるほか、切捨後において又会社が
事業がうまく行
つて利益が出て来て、会社の
内容が漸次充実して来ておる、こういう場合もあり得ると思います。そのような場合に、一方においてこの会社が受けた戰争の
損害だけを計算して、それから一号、二号を引かれるにしても、それを連合国人株主プロパーにおいて補償すれば、又どうも行き過ぎのような気がいたしますために、何らか事をかまえて更に差引く分を附けよう、その場合に一体会社が終戰後正当な活動によ
つてどれだけ儲けたかという計算は非常にしにくいものでございますから、そこで会社が開戰時に持
つていなかつた財産でその後取得した、その後その財産の働きによ
つて財産を殖やした分があれば、嫌な言葉を申上げるようでありますが、仮にそれがインフレ
利益による会社の益であつたとしても、そういうものは差引いてしま
つて、連合国人株主に対する補償はできるだけ小さい形で我慢をしてもらいたい、こういう
趣旨で第三号を置いたのであります。これらの点はかなり連合国の間にも問題を起したのでありますが、結局主たる相手側でありましたアメリカの代表のほうで辛うじて呑んで頂きまして、このようなことになりました。このような
規定はイタリア等ではございません。イタリア等ではこのために非常に苦しんでおるようでありますが、そのために補償の実行もできないでおるということでありますが、我が方はこういう三号のようなものを入れておけば、或る
程度自然の形で補償の実施もできるであろう、こういうことでございます。