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政府委員(内田常雄君) その経緯を御
説明申上げますると、小林さんがお想像になるようなことではございません。七月十三日の閣議決定の法案というのは今日この
委員会にお出ししてある法案と殆んど同じでございます。やはり全文が二十五条でありまして殆んど同じでありまして、その七月十三日の閣議決定の
法律案は
平和会議が調印される前に
大蔵省発表として新聞等で発表いたしております。かなり当時の新聞も詳しく報道がされておりました。ここにも持
つておるのでありますが、八月二十八日の
大蔵省の発表、
平和条約第十五条に引用された
連合国財産補償法案、本年七月十三日閣議決定、及び大要は別の通であります。こうして発表をいたしました。ただ新聞は
法律案そのものを発表した新聞があつたかとも思いますが、大体我々の作
つておつた大要を述べておりました。ただ今度の
臨時国会で一番初めから述べられなかつた
理由として政務次官が話されました
通り、字句の訂正、この現在
法律案として
提出いたしております第二に連合国の定義があります『「連合国」とは日本国との
平和条約第二十五条に
規定する連合国をいう。』とこうな
つておりますが、これは七月十三日の閣議、あれでは
平和条約の二十五条を引用しないで、この
法律において連合国とは、日本国と戦争した国、又は交戦状態にあつた国で、日本国との
平和条約の当事国となるものをいうとこういう書き方がしております。大意は同じですが、一旦
平和条約が調印されてその十五条に基いてこの
法律を作るとすれば、同じことを狙
つておるのに抽象的な言い廻しをするよりも、その
条約の二十五条に、二十五条にいうよりもそれから又他の部分におきましては、この
法律案の第三条に、「連合国又は連合国人が
昭和十六年十二月八日(以下「開戦時」という。)において
本邦内に有していた財産について戦争の結果損害が生じた」ということで十二月八日という字を引いておるのでありますが、元の閣議決定の第十三条にこの具体的な日時を引かないで、第三条「連合国又は連合国人が開戦時において
本邦内に有していた財産について戦争の結果損害が生じたときは、」こういう書き方をしております。それを十二月八日という字に直しました。場合によ
つてはこのほうが利益のように思う点がはつきりいたしております。かような点を直します際に、一応その日米両国の間で閣議決定の文を英文で交換もいたしておりましたために、それをこちらから向うにこう直したほうがいいということを送
つて行くと、向うからこの十二月八日につきましては十二月七日に書けということでありましたが、向うでは十二月七日でもこちらでは十二月八日だから日本のほうで書く場合においては十二月八日だと、即ち英文に直すときには十二月七日と書いておくからというような往復をいたしましたし、又向う側で極くつまらんことを「てにをは」を言うて来たことがあります。あとはいずれどなたかから御
質問もあり御
説明しなければならんことと思いますので申上げますが、この四条の損害の原因が書いてあります。我々が連合国財産について補償する場合に、こういう原因によ
つて損害をこうむつたものだけに限るということの第一号に、「日本国又は日本国と戦争し、若しくは交戦状態にあつた国の戦闘行為に基因する損害」と明らかに書いておりますが、最初の閣議決定案ではこれがただ簡単に「戦闘行為に基因する損害」とある。私案はこの
法律案と申しますか、アグリーメントのときに外務省の
条約局長と一緒に交渉の当事者とな
つたのでありますが、閣議決定においては「戦闘行為に基因する損害」というのは
アメリカの飛行機がらメリカ人の日本における財産に対して空襲を加えて損害を及ぼした場合は日本は補償しないのだ、こういう
趣旨ではないので、戦闘行為に基因する損害は両方相互の間の戦闘行為は初めから了解し合
つておつたと思うのであります。日本軍の戦闘行為、或いは米国軍の戦闘行為は書かなか
つたのでありますが、後に
アメリカが日本の閣議決定案をカナダその他小さい国に見せたときに日本側でごたごた言うて来るといかんから、やはりこれは日本国の戦闘行為及び日本国と戦争し又は交戦状態にあつた相手方の交戦行為、両方含むことをはつきり書いてもらいたい、それはこの前の交渉のときに別に日本側が日本軍の戦闘行為による損失を補償するという、こういう字句にな
つてお
つたのです。実は我々の打合せの結果補償するということは明らかな結果であるということで申入れて来たことがあります。ただしまいの二十一条に、現在の
法律案は一項と二項に分れておりまして、補償金には租税を課することができないという
規定と、それから補償金をもらつた連合国人には租税を課することができないと二つに書き分けております。最初に閣議決定案はどつちか一方だつたと思います。ところが向うも心配した国があつたそうでありまして、源泉徴収で補償金にかかるというようなことになると、連合国人には補償金について課税しないと書かれても、所得に総合してかからんのみならず源泉徴収でかかるようになると困るので、如何なる意味においてもこれは損害の補填だからかからんと書いておくべきだというような極めて神経質な
意見がありまして、これはこちら側が決して向うに閣議決定案よりも有利な
内容で補償することではなしに、こちらでもかけないで補償
金額にも別に源泉徴収はかけないというのでいたずらにかような所で論争を続けてみましても、あの点は全く字句の点だけでありましてフロムとあるのをバイと
なつたりという点で、その間先方に閣議決定よりも新らしい利益を供するような
趣旨はございません。