○
政府委員(
大久保太三郎君) それでは
外国為替資金特別会計法の一部を
改正する
法律案の内容につきまして御
説明申上げます。
今回の
改正案は、只今の
外国為替資金特別会計法の第六条に一項を加えまして、「
日本銀行は、
外国為替管理委員会の指示するところに従い、前項の規定により
外国為替管理委員会から取扱を委任された事務の一部を
外国為替一
銀行に取り扱わせることができる」。というのでございまして、現在の第六条には「
外国為替管理委員会は前条の規定による」前条のと申しますのは、
外国為替資金の運営を規定したものでございますが、その第五条の規定による
外国為替資金の運営に関する事務を
日本銀行に取扱わせることができるとございまして、その
日本銀行に委任いたしました事務の一部を今回更に
外国為替
銀行に取扱わせることができるというふうに規定いたしたいと
考えるわけでございます。
それではこの
改正案の中の事務の一部を委任しよう、再委任しようとする事務の一部と申しますのは、只今提案理由に述べられました外貨資金を
委員会勘定に預け入れること、それから
委員会勘定の外貨資金の支払を指図する、そういうことを再委任しようと
考えているわけでございます。で、これにつきましては、何故にこういう
改正が必要かという点につきまして、只今の
外国為替の集中の機構から御
説明申上げますのがおわかりになり易いかと存じますので申上げますと、現在我が国の為替管理制度におきましては、輸出その他によりまして、
日本の取得しました為替等を外為
委員会に集中するという建前をと
つております。輸出業者が輸出手形を振出しますと、それをすぐ十日以内に為替
銀行に売らせる。又
外国から
日本に外貨の送金がございました場合には、その人は十日以内に必ず
外国為替
銀行に売らなくちやならないということにいたしております。そして又為替
銀行がそういうふうに取得いたしました
外国為替資金を又
委員会に、即ち
外国為替資金特別会計に集中する、売り上げるという建前をと
つているわけであります。尤もそのアメリカのドル資金につきましては、為替金融をできるだけ正常に行わせるという趣旨から、
外国為替
銀行が必ずしも
委員会に売らなくちやならんというのではなくして、為替取引に必要なドルの資金は保有してもよろしいという建前をと
つておるわけでございます。若し為替
委員会が必要があればいつでもこれを召上げるが、一時為替の持ちを持
つてもいいという建前に相成
つております。ポンドの資金につきましては、これはいわゆる全面集中でございまして、為替
銀行が業者等から買いました資金は全部
委員会に売り上げまして、
一つも持ちを持たないという建前にいたしておるわけでございます。ところが戦後におきまして非常な特殊な事情がございます。と申しますのは、
日本の為替
銀行は只今のところ自分でドルの資金を持ちますのに十分な円資金を持
つていない、円資金のほうの制約がございます。それから同時に内外の金利差がございますので、若し自分の勘定で外貨を持ちますと採算がとりにくい。つまり国内の高いコストのかかる金で以て安い金利しか生まない。又全然金利の生まない外貨資金を持つということは資金的に採算上困るという事情もございます。第一に挙げました資金上の制約というものが大きな理由だと存じますが、そういう実態でございます。それからなおもう一点といたしまして、為替
銀行の中には戦前に海外において債務を負
つておるというものもございまして、その戦前の債務が残存する限り、自分の名義で
外国に預金を置きますと差押えを受ける危険も若干考慮されるわけであります。そういう
関係もございまして実際に殆んど
外国為替
銀行が自分の資金を保有できないという
状態、従
つて自己の買取りました外貨資金は殆んどすべて
外国為替特別会計に集中されまして、
委員会がこれを運営いたしまして、そうして輸出入の為替取引を順調にや
つて行くということに相成
つておるわけでございます。従いまして、
委員会は
外国為替
銀行とほぼ同じような内容の事務を行うという権能を与えられておるのでございまして、その資金運営上の権限といたしまして、
外国為替資金特別会計法の第五条に具体的に規定いたしておるわけでございます。この条を
御覧願いますとおわかり下さいますように、
委員会が外貨資金の集中の機関といたしまして、
外国為替等の売買、それからこれに伴う取引の当事者になり得るということは勿論でございますが、この目的を達成いたしますために、円貨、円の資金或いは外貨いずれをも
外国にある
銀行或いは
日本にある
外国為替
銀行に預入いたします、或いは貸付ける、又預入れを受ける。それから借入れができる、そのほか
外国為替手形の引受けをしたり、又
外国為替等にかかる債務の補償をすることができる、こういうふうに大体
外国為替
銀行の業務内容に相当する権能を持
つておるわけでございます。こういう業務内容の権能がございませんと、先ほど申上げましたような、
日本側の
外国為替
銀行の実際の
状態から見まして、そのビジネスを行わせ、そして
日本の輸出入貿易の伸展に寄与させるということができないわけでございますが、先に申上げましたように、
外国為替
銀行が輸出入貿易に関連いたしまする為替の取引をやる、そのために
外国に自己名義の外貨預金を持てないという
状態にございますので、これらの取引はすべて
委員会名義、
委員会が外貨勘定を設けまして、その外貨勘定を通じて行われておるのでございます。輸出代金は直ぐに
委員会勘定に入金される。そうして輸入の信用状は原則としてこの
委員会勘定を引当てといたしまして発行される。それからそれらの信用状に基きまして振出された輸入手形、それはその勘定から決済されるという実情なわけでございます。こういう仕組でございますので、
外国為替
銀行が輸出入その他の為替取引を至極円滑に迅速に行いますためには、丁度
銀行が自分の自己名義の預金を持
つてお
つて操作するのと同じように行わせるというために、
委員会といたしましては、為替
銀行に特定の取引につきまして、為替
委員会に代りまして為替
銀行がその資金を
委員会勘定に預け入れる。それから
委員会勘定の支払いを指図する、先方の預か
つておる
銀行に対してそれから支払
つて下さいという指図をする。そういう権能を与えることがまあ運営の技術といたしまして是非とも必要なわけでございます。ところで
委員会の行います為替の売買、その他の運営は、これは本来
銀行業務でございますので、
委員会は全部
日本銀行に取扱わせておるわけでございます。これは第六条の只今の規定でございますが、それで先ほど来申上げました二、三の取引につきましても、
委員会の代理人である
日本銀行がその為替
銀行に再委任いたしまして、
委員会の復代理人という資格でやらせるのが適当と思われるのでございますが、特別会計法にはその再委任という点につきまして明文がございませんので、これを今回の
改正によりまして、為替難行の
委員会に対する地位を明らかにしようというのが狙いでございます。提案理由にもお述べになりましたように、従来は司令部が資金の管理者で、
委員会はその委任状を司令部からもらいまして、司令部の代理人の資格で運営しておつたのでございます。その委任状で復代理人の選任の権限が与えられておりまして、
委員会も又代理人として限られた一定の行為をしておつたのでございますが、先般外貨資金の管理権が司令部から
外国為替管理委員会に委譲されまして、同時に司令部の委任状が撤回されましたので、為替
銀行に会計法によりまして、
委員会の権能を委任するということが必要にな
つて参つたわけでございます。先方の預託先の
外国銀行におきましても、再委任について法律上の明文が欲しいという要望もございます。
外国為替取引を円滑に運営するためには一部
改正を必要とするという点から今回の
改正案を出しまして、御審議をお願いしておる次第でございます。