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1951-11-08 第12回国会 参議院 大蔵・人事・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月八日(木曜日)    午後二時六分開会   —————————————  委員氏名   大蔵委員    委員長     小串 清一君    理事      大矢半次郎君    理事      清澤 俊英君    理事      伊藤 保平君    理事      木内 四郎君            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            平沼彌太郎君            菊川 孝夫君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            松永 義雄君            小林 政夫君            小宮山常吉君            田村 文吉君            菊田 七平君            櫻内 辰郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   人事委員    委員長     吉田 法晴君    理事     大野木秀次郎君    理事      杉山 昌作君    理事      千葉  信君            加藤 武徳君            草葉 隆圓君            西川甚五郎君            森田 豊壽君            木下 源吾君            森崎  隆君            小野  哲君            西田 天香君            紅露 みつ君   労働委員    委員長     中村 正雄君            一松 政二君            原  虎一君            波多野林一君            大屋 晋三君            宮田 重文君            赤松 常子君            重盛 壽治君            椿  繁夫君            高橋龍太郎君            高田  寛君            林屋亀次郎君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   —————————————  出席者は左の通り。   大蔵委員    理事            清澤 俊英君            伊藤 保平君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            菊川 孝夫君            野溝  勝君            松永 義雄君            小宮山常吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            森 八三一君            木村禧八郎君   人事委員    委員長     吉田 法晴君    理事            杉山 昌作君            千葉  信君    委員            加藤 武徳君            木下 源吾君            森崎  隆君            小野  哲君            紅露 みつ君   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事            一松 政二君            原  虎一君            波多野林一君    委員            宮田 重文君            赤松 常子君            重盛 壽治君            林屋亀次郎君            堀木 鎌三君   政府委員    日本専売公社監    理官      久米 武文君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君    常任委員会専門    員       熊埜御堂定君    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    公共企業体仲裁    委員会委員長  今井 一男君    日本専売公社総    裁       秋山孝之輔君    全専売労働組合    中央執行委員長 平林  剛君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体労働関係法第十六條第二  項の規定に基き、国会議決を求め  るの件(内閣送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) これより大蔵人事労働連合委員会を開会いたします。先例によりまして私が委員長の職務を務めさして頂きます。  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題に供します。  本日は参考人といたしまして、公共企業体仲裁委員会委員長今井一男君、日本専売公社総裁秋山孝之輔君及び専売労働組合中央執行委員長平林剛君の三君がお見えになつております。先ず公共企業体仲裁委員会委員長今井一男君から御説明を伺いたいと思います。
  3. 今井一男

    参考人今井一男君) 今回国会に御厄介になるようになりました専売裁定は、本年度、即ち昭和二十六年度基準賃金年度半ばにおいて改訂しようという問題であります。本年度の当初の賃金につきましては先に同じく裁定がございまして、その裁定国会のお世話にならずに両者間に履行されて今日に至つておるのでございますが、これが基準賃金七千九百円ということに相成つております。ところがこの賃金は、若し年度経過中に経済事情変化が起つたならば、途中で改訂しようという団体協約がくつ付いておるのであります。その協約に基きまして両者間に話合いが行われ、それがまとまりませんで、調停委員会を経、調停委員会調停案両者間に受諾されませんで、我々の手にかかつたのであります。我々は裁定を行います際に、両者間に意見一致を見ました部分につきましては、その意見による、意見一致を見ないものにつきまして我々が独自の見解を示す、こういつたやり方とつております。これは我々の委員会の性格が人事院などのようにあらゆる資料余裕のある時間を使つて、いわゆる科学的にはじき出す立場委員会と異りまして、両者間の労働紛争を速かに解決する、こういつた立場に立つ関係から起つて参る基本的な態度であります。従いまして、元々の七千九百円という協定が一応本年度間は特別な支障の起らない限りそのままで行こうと、こういつた建前なつておりまするが故に、その後の変化だけを織り込もう、こういつた考え方に立つたわけであります。この点が調停委員会調停案一万一千九十三円よりもかなり大幅に減つた原因であります。尤も組合側といたしましては、それでは不服であるといういろいろの注文がございまして、特に大企業賃金が最近割高になつておるとか、或いは当初の裁定そのものが低過ぎるとか、いろいろな見解もあつたのでありますが、この点は仲裁委員会では採用しなかつたのであります。ただ一つ従来のやり方と異りました点は、従来はすべてその時期までに判明いたしましたところの資料基礎にいたしまして、いわば過去の資料基礎にいたしまして賃金を決定いたしました。これはまあいわば慣行であつたのであります。ところが今回は本年度の非常な経済事情変化に鑑みまして、将来の傾向を織り込んで賃金をきめて欲しいというのが組合側の要望であり、又公社側におかれても、本年度事情特殊性があると認めるからその点は同意すると、こういつた見解でありましたので、我々としてはその線に沿いまして将来の傾向を織り込んだのが今度の賃金の特徴に相成つております。尤も将来の傾向を織り込むにいたしましてもいろいろの技術的な問題はございますが、両者間が常に一番重きを置いた資料でありますところの労働省の毎月勤労統計によりましてその変化を中心にして将来の傾向値を推算いたしました。この推算方法といたしましては、勤労統計の特殊な性質から月によつて非常にでこぼこのある点を我々考えまして、これを移動平均によりまして調整した上で傾向値見積つたのであります。その結果補正いたしますと、二三%ちよつと殖やさなければならんという結論が出ます。これは平面的に引つ張つたものであります。更に一方もう一つの問題といたしまして、前回裁定におきましては、そのときから実施されました即ち昨年の十二月の年末手当の半月分、こういつたものは新らしい制度でありまして、当時の情勢からいたしまして、これは基準賃金の繰延べであると、かような解釈の下にその月割額に相当いたします約三百円を引去つたものを以ちまして、七千九百円というのは即ち八千二百円と相成るべきところを七千九百円に決定いたしました次第でありますが、その後朝鮮動乱等影響が昨年十二月末以来かなり強く出て参りまして、民間の方面におきましては臨時給与、即ちそういつた賞与的なものが非常に多くなつたのであります。即ちそれまでのその以前に比べまして二倍半以上になつておりますので、前回裁定後の基礎資料変化とこれを認めまして、今回訂正の場合にはその三百円を戻して計算をしないというとバランスがとれない、こういつた考え方に立ちまして、そのいわゆる八千二百円に二三%余の増を見積ると、こういつた考え方に立つたのであります。ただ本年度は御承知通りいろいろの諸物価が値上りになりまして、二三%という数字はそういつたものを見ない数字でありますので、この諸物価関係をどの程度織り込むべきかということは極めてむずかしい問題でありましたが、併しながら一応国民生活の水準とされておりますいわゆるCPIが、私どもが前に裁定いたしました昨年の九、十、十一月に比べまして本年の八月はすでに約二七%も上つておるといつた点を考慮いたしまして、約三%の余裕見積つたのであります。そうして技術的にはじきましたものが一万四百円でありまして、この一万四百円という数字はいわゆる当初の約束いたしました両者間の賃金を単に技術的に引き直したというだけであります。なおそのほかに組合要求といたしましては、四月以降の赤字補給金要求もございまして、これにつきましては調停委員会で或る程度、いわば四千七百円というものを承認されておられますが、この点は当初の約束がそういつた意味なつておりません等の点から、我々はこの組合要求も採用いたしませんでした。そういつた関係から我々裁定書交付の際には組合側から未だ曾つて経験しない文句を頂いたことを申上げておきたいと思うのであります。ただ問題はこれが予算上可能であるかどうかということでありますが、この点は我々企業的に見まして、若しこれが民間企業でありますならば、何ら問題のない金額であることを確信いたすものであります。即ち本年当初の見積りよりも実質上の利益は九十億以上殖えておる、そのうち四十五億は今回の補正予算によりまして専売益金増加として国庫に納付するのでありますが、あとの金額はいわゆる予算的な増加でありまするが故に、これは現金関係において工合が悪いという意味でありますが、国庫納付に相成らんのでありますけれども、とにかく利益増加はさようなことに相成つております。いわば両者努力によりまして本年度専売事業というものは極めて順調に推移いたしておるのでありまするし、又今回補正予算に載つたと承知しております六億七千六百万円を差引きますと、この裁定に必要な金額はおよそ四億円程度に過ぎないのでありまして、いわば専売たばこの売上げに対しますというと〇・二%にしか当らないのであります。これをピースに換算いたしますれば八銭、二十円の新生に換算いたしますれば四銭というふうになるのであります。新聞紙上で拝見いたしまするというと、たばこ小売人販売手数料を十二月から上げられるそうであります。それはピースにおきまして二十銭、新生におきましても同じく二十銭の金額に相成るかと思うのであります。そういつたものよりは遙かに小さなものであります。若しここで業者側が更に努力を重ね、組合勤労意欲を続ける下におきましては、恐らく年度末までには今回の補正予算に盛られました金額以上の益金さえも得られるのでないかと想像いたします。そういつた意味におきまして、この裁定がその点には至大な影響を持つと考える次第であります。特に一部には公務員賃金と比べて云々という議論も聞くのでありまするが、若し公務員の今回伝えられておりますところの一万六十何円という金額がどういう根拠ではじき出されたものか、私ども存じませんし、まあこれの高い安いを言うべき場合でもないと考えておるのでありますが、若しも公務員そのものを引き移し的に専売職員にも移すということでありますならば、これは専売公社法公労法建前から言つてもおかしいと思うのであります。そのくらいでありますならば、専売公社法にはつきりと専売公社職員給与公務員の例によつて政府これを定めると、こうお書き頂いたほうがむしろ問題は直截ではなかろうかと考えます。又公労法においても賃金に関する限りは団体交渉から除けると、そういつた結果に相成る次第でありまして、而もその差たるや、差とも言えぬ程度でありまして、これがいわゆる銀行その他におきまする二万円とか何とかいうベースとは比較にならないのでありまして、我々全く技術的にはじきましたところのこの賃金が、あの専売という企業体性質並びに現在の勤務の状況から見まして、この程度金額を出すことはむしろ国民経済国民負担見地から見まして、これによりましてより専売益金を大ならしめ、刺戟たらしめたならば、却つて効果的なものだと存ずる次第でありまして、一つ皆様の賢明な御配慮をお願いしたい。  最初にこれだけ御挨拶に代えて説明を終ります。
  4. 大矢半次郎

  5. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 専売公社仲裁裁定について御審議を頂くことにつきまして、厚く御礼申上げます。  仲裁裁定に至るまでの経過只今今井委員長からの御説明通りでありますから、私は反復いたしたくありません。要するに専売といたしましては、当初七月の四日でありましたか、組合から前協約に基いて経済的、又諸般の情勢が違うから、基準賃金の改訂をしてもらいたい、こういう要求があつたのであります。勿論労働協約に基きまして、調停委員会調停お願いをいたし、その主張が甚だしく違うので、これ又両者協議が成立たなかつた次第であります。九月に遂に仲裁委員会の御厄介になることに相成りまして、十月十二日でありますが、最後裁定が下つたのであります。それは私どもの当初主張した九千九百なんぼというものと、組合要求した一万一千八百円との差はかなりあるのでありますが、殆んどその中間の裁定を得たので、私ども必ずしも仲裁裁定金額が適当であるとは思わなかつたのでありますけれども公労法の精神によりまして理事者及び組合はこの裁定に服従すべし、又すべきであるというふうに考えまして、私どもはこれを了承したのであります。併し私の権限においては誠に窮屈な、只今今井委員長お話のように人件費について特に規定がありまして、到底私の独断ではできないし、大蔵省に対して予算のこういう変更をすれば仲裁裁定を呑み得るということを申出たのであります。その案といたしましては、その当時はたばこ売行かなり上昇の見込がありましたので、更に当時の予定より三億乃至四億はこれは売行増加ができるということが一つ、なおもう一つ考え得ることは、当時の予備費がありましたが、これは本年のたばこ耕作かなり増産で、品質においても、量目においてもかなり増産が見込まれるということから、七、八億の予備費とつておく必要があつた。又九月でありますから、十月の季節を越えざるうちは、天災というものに備える上においても若干とつておくことが無論必要なのであるが、だんだん日も経過してたばこ購買価格においても量目においてもほぼ予想が立つようになつた。初め考えたような予備費から繰入れるものがそう多額でなくても済むのではないか、又もう一つは期日もだんだん進行いたして参りまして、この間のルース台風が恐らくあれは最後とは私申上げかねるのでありますけれども、先ず今後ああいうものはないだろうというような見込みも付いた結果、ここに若干の裁定に振り向け得る、大蔵大臣の提案によつて国会承認を得られるならば振向け得る予備費があるということを大蔵省に私ども申出でて、成るべくそういう措置をとるように進捗をいたして参つたのであります。さような次第で本国会において御承認を得られるならば、私は仲裁裁定両者が呑んで、そうして協力一致して、先ほども今井委員長からお話があつたように、本年の予定歳入、即ち製造も販売もすべて予期以上な成績を挙げ得るならば、或いは只今補正予算に組んであるよりは更に更に歳入を挙げたいというような熱意に燃えておるのであります。私どもは大体公社開設以来労使の間において甚だしくいがみ合つたというような事実はないのでありまして、仲裁の御厄介になつたのは二遍でありますけれども、常にさように紛糾をせずに解決しておるのでありまして、私は公社組合に対しては、私どもに対する協力については全く満足をしておるのでありまして、この親善のよい関係を将来も維持して、ますます公社の業務を発展させたいということから、金額においては私必ずしも満足とは申上げかねるのでありますけれども仲裁裁定を尊重して、そうしてこの一万四百円というベースを私は呑みたいと思つております。どうぞ国会の諸公におかれましても、私どもの意のあるところを御了解下さいまして、この裁定に対して適当なる措置お願い申上げたい。  なお私、これは裁定とは直接の関係はないのでありますけれども、私の管下にある数人のものが国会の近くに、而も参議院の御所管の所内においてハンストというような甚だ好ましからざることをやつておる。これもその衷情は誠に私わかるのでありますけれども、こういう手段でこういう問題を解決するということは、民主国日本においては私は甚だ好まないのでありまして、組合長にも早くやめるようにということを申しておるのでありますが、国会の御措置如何によりまして、私の希望するように一日も早くこういうことをやめて欲しいというようなことが実現し得るのではないか。お託びを申上げると同時にお願いを申上げて私の説明を終りたいと思います。
  6. 大矢半次郎

  7. 平林剛

    参考人平林剛君) 私は全専売労働組合中央執行委員長平林剛であります。  私ども組合は約組合員が三万八千名でありまして、専売企業との関係におきましては、すでに御承知通りたばこ産業に従事することによつて専売益金を年間に約千百七十五億円ほどの金額を納付する役割を担当しておるのであります。これは私どもの一時間当り労働に換算をいたしましても約六千七百五十万円、一日我々が働くことによりまして益金として五億二千万円を国庫に納める役割を仰せつかつておるのが私ども専売労働者であります。私ども組合が今回仲裁裁定を頂くまでの経過只今もよく説明のありましたように、今年の七月の四日に専売公社要求書を提出いたしました。その要綱は七月以降から基準賃金を一万一千八百円にして欲しいということであつたのであります。この要求は、朝鮮動乱以後の物価上昇によりまして私ども生活の維持が困難になつたことと、それまでに協定をいたしてありました基礎なつておる民間産業賃金が著るしく変化して参りましたので、協定に基いて団体交渉を行なつて参つたのであります。調停委員会は八月の二十五日にこの要求に対しまして八月以降一万一千九十三円にしなさいという調停案を提示したのでありまして、そのほかにも我々の生活上のことから考慮して一時金として一人当り四千七百円を速かに支給しなさいという調停案を頂いたのであります。併しながらこの調停案は先ほど専売公社総裁説明をいたしましたように、公社の受諾し得ないことになりましたために、これでは調停案を即時実施することが不可能であると考えましたので、我々はこれを同じく受諾しないという立場とつて不成立に終つてしまつたのであります。こんな経過を経まして、今回の裁定が提示されました。基準賃金を八月以降一万四百円にしろということが骨子でありますが、これは組合要求から見ますと、基準賃金において約千四百円低いのであります。而も実施月は八月に相成りました。調停委員会から提示されました調停案比較をいたしまして、なお六百六十三円基準賃金において低く、而も調停案で提示されました一時金四千七百円は仲裁委員会の否定するところとなつて参つたのであります。私どもはこの裁定に対しましていろいろの意見がございますけれども公共企業体労働関係法に我々の賃金紛争を最終的に処理するために裁定には服従せよという規定がございますから、私どもは法律の趣旨に基きましてこの裁定服我はこの裁定に服従し、これを一日も速かに実現して頂くことが我々の生活の窮乏を一日も早く救うことであると考えましたので、組合態度をさように定めたのでありますが、ところが政府側の考えはすでにこの国会に提出せられておりますような態度でありまして、私ども公共企業体労働関係法趣旨から、政府考え方につきましてはいささかこの際に反省をして頂く余地があるのではないかと考えておる次第であります。大体政府予算上不可能であるという旨でその承認国会に求めておりますけれども専売裁定を実施する上において私は予算上は可能であると思うのであります。これは仲裁委員会説明専売公社が証言をされたことで明瞭であります。経営者裁定を履行するためのお金約四億円は現実にある予備費を流用して頂けばそこに財源があるということを明言をいたしておるのでありまして予算上はないということはどこにも言い得ないのではないかと思うのであります。又私は仮に政府言葉が今既定予算としてきまつておる四十一億何がしを越えておるから予算上不可能であるというお言葉のようでありますが、それならば今臨時国会に対して政府補正予算編成中であります。補正予算をまだ国会としておきめにならないこの時においてなぜ予算上不可能であろうか。これは誠におかしい話だと思うのであります。公共企業体労働関係法の第十六條によりますると、政府予算上不可能な協定予算上不可能な裁定があつた場合にはその裁定若しくは協定について国会承認を求めるということが規定をされております。ですから、若し双方の紛争を円満に解決をするという趣旨であるならば、政府公労法上の重大な関係者でありますから、裁定若しくは協会を承認して頂くような措置国会に求めるのが政府のおとりになる態度ではないかと思つておるのであります。ところが大変この点をあいまいにいたしまして、国会のほうに責任を持つて来られるのは私は公共企業体労働関係法を共に運営して行く重大な関係者としておとりになる態度ではないと思うのであります。特に大蔵当局専売裁定が提旨され、或いは専売賃金問題が調停案にかかつておりますときは、今回の臨時国会に提出をした補正予算編成中であつたのであります。私は若し政府公共企業体労働関係法の本当の趣旨を御理解しておるならば、専売公社賃金が多分この辺になる、或いはこうなる、こういうことをあらかじめ用意をされて補正予算を組まれるという態度こそが公共企業体労働関係法趣旨に合致をするものである、かように考えておるのであります。  もう一つは、政府の中に頻りに専売公社の今回の裁定による賃金はほかと比較をしてバランスがとれないということをおつしやつております。まあこのバランス論は、大蔵省としては全般の財政の見地から見て全般的なバランスをとるというお考えは、これは大蔵省として当然のことであるかも知れませんけれども公共企業体労働関係法によつて仲裁裁定が示されたのでありますから、そういう場合には、ただ御自分のほうの職務でバランスだけを見るということではなくして、大蔵大臣といえども大蔵省といえどもやはり法律の拘束下にあるものだと考えておるのでありまして、こういう建前からバランス論だけでない立場をおとりになる、これが政府に対して私どもは強く要望したい点であるのであります。特に仮にバランス論がありましたとしても、公共企業体労働関係法によりまして、国鉄或いは専売二つの企業体に対してそれぞれ団体交渉を許しておるのであります。つまり一年間のその年の賃金を定めるには公社組合団体交渉をしてきめろということが定められておるのであります。従つてこの定めに従つて団体交渉する結論は、別々の場所で団体交渉し、別々の企業形態を持ち企業経理を持つのでありますから、或る場合にはバランスが崩れるということは当然あり得ることであると思うのであります。なんでもかんでもバランスはとらなきやならんということであれば、国鉄と専売組合は一緒の人と話をしなかつたならばさようなことにならないのでありまして、やはり公労法団体交渉によつて賃金を定めよという定めがあるならば、その結論によつては、時にバランスが失われることは当然でありまして、これはやはり専売公社法の第二十一條に規定してありますように、「公社職員給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」かようなところから行きましても、当然多少のバランスを失することがあつても止むを得ないことである。それをお認めになつておるのが公共企業体労働関係法であると思つておるのであります。特に国会におきましては、公共企業体労働関係法第三十五條その他によりまして、賃金に関する紛争は一切仲裁委員会にお任せになつておるわけであります。これは国会がおきめになつ公労法で明らかであります。この賃金紛争についての最終的処理を仲裁委員会にお任せになつ国会の意思に反して、裁定が出るとやれバランスが失つておるの、高過ぎるの、低過ぎるのと、こういうことを政府がおつしやることは、私は国会がおきめになつ仲裁委員会にお任せになつたその精神にも反して行くものであろうと、かように考えておるのであります。特に大蔵大臣政府の各委員会におきまして、国鉄労働組合とのバランスについて大変御心配をなさつておるようであります。国鉄と専売とのバランスの違うことは私のとらないところであるというようなことをおつしやつておるようでありますが、私は専売公社公共企業体労働関係法のどこを見ましても、国鉄の賃金専売賃金は全く同じでなくてはならんというようなことはどこにも書いてない。それから又専売公社賃金は国鉄の賃金より低くなつてはいかんということも書いてないのであります。むしろ私は最近いろいろのことを調べて見ますと、公務員との対比を見た場合に、公務員よりベース賃金において我々は低い賃金であつたということがわかるのであります。人事院のお調べになつ資料によりますと、昭和二十五年の四月当時においてやりました勤労統計における工業平均を一〇〇といたしますと、公務員は約八三・三でありました。ところが専売公社は七三・三であつたのであります。今年度に入りまして一月における対比で見ましても、工業平均において一〇〇であつたときに公務員は九〇・一でありました。ところが専売公社は七五・四であります。このようにベース賃金におきまして我々の賃金公務員より低かつたということが言い得るのであります。バランスのことを大変大蔵省は心配しておりますけれどもベース賃金においてそのように我々は、今までそういう意味ではバランスを失しておつたということを言い得るのであります。而も平均年齢とか、或いは平均勤続を比較して云々と言われますが、その場合でも平均年齢において専売の平均年齢が三〇・二歳、公務員は二九歳でありまして、平均勤続において専売は七・七でありましたが、公務員は七年であります。いずれもこれは人事院が使用した資料によつてかように申上げるのでありますが、それだけでなく公務員の勤務時間は四十一時間三十分、我々は一週四十四時間であります。かようなことから行きまして、私は若しバランス論を言われるならば、今までにおいてももつと専売賃金についても御考慮願いたかつたと思つておるのであります。結局このようなバランス論が言われておりますのは、大蔵大臣専売労働者に対する、或いは専売労働者が果しておる役割に対して余り御理解がないのではないか、こういうところに帰するのではないかとさえ考えるのであります。言い換えれば、大蔵大臣専売益金確保の最高の責任者でもあるということをお忘れになつておるのではないかと思うのです。先ほど申上げましたように、我々は年間に千百七十五億円の国庫納付に協力をいたしておるのであります。専売公社の従業員は四月当時約三万九千五百五十人おりましたけれども、現在では三万八千八百十七名という、少い人員でこれだけの労働をしておりましたし、四月以降は予定以上の専売益金を七十五億円も八月末の計算で確保して参りました。今度の臨時国会における補正予算の組替えにおきましても、なお特に四十五億円専売益金増加するために努力せよという案をお出しになつておるのであります。私は大蔵大臣がまさか我々を働けるだけ働かして賃金はそれでよろしいというようなお考えではないと信じまして、そういう点について一段と御考慮を願いたいと考えておるのであります。  とにかく私どもはこの機会に、裁定の問題に関して公共企業体労働関係法のあり方をいろいろ考えて参つておりますので、それについて一言意見を申述べさして頂きたいと思うのでありますが、私どもは公共企業体労働関係が制定されましてから、裁定にめぐり会つたのは今度で三度目であります。第一回は昭和二十五年の初春におきまして、例の一億二千万円を承認するか不承認するかで大変国会で審査を煩わしたわけでありますが、実にこの問題は裁定が提示されてから三カ月間揉みに揉みまして、結局裁定を実施することになりました。第二回目は昭和二十六年の三月提示されたいわゆる基準賃金を七千九百円にしろということであります。これは国会に持つて来ることなくて解決することになりましたが、実際は今まであつた定員を千二百名減らして裁定を実施させたのであります。言い換えれば私どもが四万人で同じ仕事をやつていたのを少い人員でやる。つまり我々の労働の過重によつて裁定が実施されたのであります。第三回目が今度であります。私はこの三回の経験に鑑みまして、一体公共企業体労働関係法の精神はどこへ行つてしまつたかということを強く言いたいのであります。つまり専売公社組合との賃金紛争は、専売裁定が最終的な紛争の解決点、最終点であります。ところが裁定が提示されてから紛争が捲き起つておるわけです。最終的処理を行うべき裁定でありながら、裁定が提示されてからごたごたが起きておる。これはつまり一体賃金問題の紛争の最終点は裁定で終るのか、それとも国会若しくはその後の労働組合のいわゆる国会闘争とか、又いろいろのことをやらなければ解決しないのか、こういうところの悪い例が私はとうとうでき上つてしまつておるような気がするのであります。でありますから、私は公共企業体労働関係法の本来の趣旨に舞い戻りまして、今度の国会においては、どうぞ今までの何かこうわからない悪い慣例をこの際こそ正しい慣例に引戻して頂きたいということを特にお願をいたしたいと思うのであります。我々の強調いたしたいことは、今の月給ではとても食えないということでありまして、専売労働者はその食えない賃金公共企業体労働関係法に対して忠実でありました。これからも私は無用に紛議はできるだけ慎んで参りたいと考えておりますが、今度がまあ三度目の正直であります。今までの政府見解から行きますと、私どもはもうとても普通の措置では駄目じやないかというような観念を懷きかけて参りました。東京において今総裁からも私どもがハンストを以て政府に反省をして頂きたいということを訴えておることに御意見がありましたが、私どもも好きであれをやつておるのではないと思うのであります。ハンストをやつておる者も、決して好きでハンストをやつておるのでなくて、ハンストをせざるを得ない状況に我々を追い込んでおると思うのであります。勿論ハンストのような命を賭けるようなことは野蛮的で、民主主義の社会においては行うべき措置ではないかも知れません。併し別の意味で、私は公労法を、法律というものを守つて行こうという民主主義が悪い慣例で崩れかかつていると思うのであります。こういう意味の民主主義こそ私は国会において正当な御判断によつて処理をお願いをいたしたいと思うのであります。私ども組合長といたしまして大変心配をいたしておりますのは、止むを得ざる措置としてこの十日頃から私どもがやはり政府に反省をして頂くために団結の意思を示さなければならんのではないか。かように考えておりまして、このままで行けば我々は今後の生産に対しても協力する態度を放棄する考えにみんななつてしまうことを大変恐れておるのであります。専売裁定を実施することは、僅かに四億円の予算措置であります。それによつて私どもの今後の態度にもいろいろ心理的に影響するところでありますから、四億円かそれとも今後の専売益金数百億円かというところに立つておるのでありまして、大蔵大臣がまあ国の財政について大変明るいということを聞いておりますけれども、私ども労働者の気持ももう少しよくわかつて頂きたいものだ、こう考えておりまして、この点につきましては、専売労働者国会における審議に深い期待を寄せておるのであります。裁定を実施することは、これを実施することによつてたばこの値上りをさせるとか、国民大衆に御迷惑をかけるということはないのであります。むしろよい労働慣行を確立いたしまして、私どもは生産に対する意欲を燃やすことができ、このために生産が上り、専売益金の確保ができるのであると確信をいたします。これが公共の福祉にも通ずるものであると考えますので、長いこと申上げましたが、国会の御善処を深く期待いたしまして、私の意見を終る次第でございます。
  8. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) 以上、一応参考人意見の開陳がありましたが、この際参考人に対して御質疑のあるかたは御発言願います。ちよつと速記をとめて下さい。
  9. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) それでは速記を開始して下さい。御質疑のあるかたは御発言願います。
  10. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私第一番に秋山さんにお尋ねしたいのでありますが、最後国会でこれが実現できるようにという御要望を述べられましたけれども、先ず第一番に、あなたが大蔵大臣とこれが実現のために折衝されたと思うのでありますが、その折衝の経過、どういうふうに大蔵大臣と折衝されたか、その経過お話を願いたい。これが一番大事だと思いますので、実はここの国会でそういう案件として出して来た、その出して来方について、十六條の解釈からして私らはどうもそんな出し方をするものじやない、十六條から行きましたならば、承認を求めるように国会へ出して来なければならん。ところがこれは何とも解決しないのだが、十六條の規定によつて国会議決を求めるというわけですが、これは「承認を求めなければならない。」こう書いてあるわけでありまして、承認を求めるには求めるようにして、予算を添えてこういうふうにあなたの今言われたような予備費なら予備を流用したいと思う、予備費を科目変更したいとか、そうしてもらいたい、或いは予備費が足らなければほかにも予備費を殖やすように、こういうようなところから持つて来て、そうして予備費を流用することがいいか悪いかということを先ず国会に諮らなければならんと思うが、大蔵大臣にそういうように予算を出して呉れという折衝を如何にされたか、それから大蔵大臣がどういう見解であなたの要求を蹴られたか、そういう顛末を一つお話願いたい。
  11. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 大蔵大臣の折衝の経過をお尋ねでございますけれども、大体只今も申上げておるように、公労法に対する三回の経過がありまして、大蔵大臣見解只今成立しておる予算というもので予算を解釈しておる。私たちは大体法制の知識も余りありませんので、大体私のほうの扱つておる仕事の予算に余りがあれば大蔵大臣承認を得て国会議決を経て給与増加もできる、こういうのが私の考えです。そこに大蔵大臣とは根本的に相違がありまして、折衝をしてもこれはもう殆んど壁に馬を乗りつけたというような状態でお話を申上げるようないきさつは余り綾はないのです。もう極く普通の議論をするだけで、殆んどまあ何といいますか、衝突ではないのですが、意見の相違で、いささかも妥協の余地ないとこういうような状態にあるわけであります。予算の提出方法については、これは私がこういう書式でやるというのは社の権限外でありますから、どうぞ政府委員にお尋ね願います。
  12. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 予算の提出は政府の権限、国会に出すのは勿論その通りでありますが、その予算を出すために、あなたのほうから大蔵大臣に対してこういう予算を組んでもらいたいという申請をすることになつているわけです。その申請をするときに、丁度たまたま補正予算を出して来ているわけで、もう政府各機関とも全部こう変つておるわけであります。従つてあなたのほうの専売公社給与予算もすべて変つて来ているはずでありますが、その変る際にこういうふうに直してもらいたいという要求をあなたのほうからお出しになつたかどうか。それからきまつていると大蔵大臣が言いますが、丁度たまたま今補正予算のほうはきまつておらなかつたわけでありまして、きまつておりませんし、まだ衆議院を今日通るか、通らないか、こういう状態なのでありまして、従いまして、あなたはこの裁定の実施を大蔵大臣要求される場合には、補正予算というのはただ閣議において決定をしておつた程度のものでありまするからして、従つて閣議決定の変更を求める措置をおとりなつたかどうか、こういうことをお尋ねしておるわけであります。
  13. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 先刻御説明を申上げましたように、勿論私ども予算上こういうことをやつてもらいたいということは、最初はたばこの売上げを原則にした、こういうことであつたのであります。これもなかなか折衝すると、たばこの売上げというものは将来も湧いて来る、今これを確定した予算と認めるわけには行かないというようなこともありましたし、次に御説明を申上げた追加予備費の問題でありますが、予備費も初めはお話申上げたように、ときたまたままだたばこの購買費というものの見通しもさように的確には付かなかつた、同時に台風季節も必ずしもまだ経過しておらないということだつたのでありまするが、あとは作物もその初めのごとき支出ができ得るということは大蔵大臣に申述べて、これを予算一つ入れてもらいたいということは熱烈に私は希望したのであります。
  14. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に当事者並びに仲裁委員委員長である今井さんにこの公労法の解釈について一言証言を求めたいと思うのでありますが、労働組合で大体ストライキをやれないという組合は、これはもう足を縛られた人間に同じだと思います。従いまして、何らかのそれに対する裏付けと申しますか、救済処置が講じられなければならんと思うのであります。その救済措置として仲裁委員会が設けられておる。そうしてその仲裁委員会において出された裁定は飽くまでスポーツの場合であつたらこれは審判官でありますから、これをあとで出してしまつてからアウトだ、セーフだといつて騒いでいるようなことでなしに、従いまして国会におきましても、あなたがたがお出しになつたその内容について、賃金を算定するにはこういうようにやつたという内容については一応我々は検討はいたしましても、これに対してとやかく喙を入れるということはこれは慎しまなければならん。これは国会にそういう権限は私はないと思います。又公社側組合側も、これに対してあとでいろいろ意見があつても、これに対して一々苦情を言つておつたんでは納まらないじやないか、野球でアウトであるか、セーフであるか、審判が下つた場合はそれに従がわなければならんと私は思うのでありますが、そういう趣旨の下に出された裁定国会において審議するに当りましては、十六條の二項によつて承認を求めて来られた場合には、飽くまで政府のほうではそういうふうな裁定一つ承認をされるように予算を付けて、そうして国会に提出をして来て、その予算の金の持つて来方の悪い場合、例えば葉たばこを購入しなければならん資金を削つて、そうして裁定実施に充てるというふうなきめ方をしておつた場合に、それはいけないというふうにして国会において削除するようなこともあり得るであろう、併し今回のような出し方は、一体これを承認してくれというのか、それとも承認せずに蹴つてくれというのか、さつぱりわからんようにぼやかして来て、そうして責任を国会に押し付けて来て、そうして実際に国会において否認をしてもらいたいということを、暗に仄めかす出し方をしている。こういう出し方が果して十六條の精神に合致しているかどうか、私はそうではないと思うし、又立法当時からこれは飽くまでも国会において議決を求める際には我々は立法当時には当時者として関与しておつたこともあるわけであります。予算を付けて国会に出すのだ、而も十日、五日というような期限まで切つてあることは、速かに解決しなければならんという私は趣旨からこういうふうな期限まで切つて立法されたものと、こういうふうに理解して今日までおつたのでありますが、この裁定が何回も仲裁委員会に出されましたけれども、完全に法律通りに守られたというのは守られたというのは少いのでありまして、むしろ国鉄の裁定のごときは一遍も守られておらないわけでありますが、こういうことで果して公共企業体労働関係法の立法精神が活かされておると考えておるかどうか、今度は国会の出し方は、私が今申上げましたような提出の仕方をすべきであると考えるのであるが、三者のかたはどういうふうに理解してこの十六條、十七條の関連を考えておられるのか、それぞれ簡単でよろしうございますけれども一つ御証言願いたいと思います。この際……。
  15. 今井一男

    参考人今井一男君) なかなか簡単に申上げにくいことでありますが、私仲裁制度というものだけで、果して罷業権を奪つたあとの穴埋めになるかどうかということに対しては非常に疑義を持つております。大体仲裁というものは、そういつた罷業権と、丁度穴埋めというような立場で出すような建前とつておりませんから、単に一般の企業体における公正な賃金労働紛争解決の見地において出すという立場だけでありますからして、従いまして不十分だと、ゼロではありませんが、不十分だと私は感じております。なおこれは予算上不可能と十六條で規定されましたゆえんのものは、菊川委員承知通りその当初におきましては、明らかにその公社企業体予算の全体の中からやり繰りが付くということを目途にいたしたものでございましたけれども、二十五年以降給与総額というような規定予算総則に加わりましたので、一般の官庁でもないほどのむずかしい制限が人件費につきましては、特に公共企業体だけが加わることに相成り、そのために賃金に関する問題はすべて国会へ提出しなければならん形に相成りまして、その点は私どものみならず、調停委員を通じまして常に遺憾とするところであります。調停委員会等においては、殆んどこれでは実際に調停賃金問題を処理することは不可能じやないかという意見さえ出ておる次第であります。併しこれを国会に提出いたします場合に、成るべく問題を早く処理しなければならんことは公労法の本旨からはつきり言えますが、これについて私は予算を付けるか付けないかというような点は、比較的に技術的な些細な問題ではなかろうかと判断するのであります。と申しますのは、公労法ができました一番の元は二十三年七月の御承知のマ書簡でありますので、マ書簡というものの狙いは、これは私の理解するところによりますれば、政府というものを、成るべく当事者にさせない。政府が当事者に立つというと労働問題がとかく政治問題となることは甚だ日本の占領政策上好ましくないといつた見地から出されたものだと考えるのであります。それが国家公務員法となり公労法なつたものと理解いたしまするが故に、その立場におきましては、政府は成るべく意見を言わないで、そつくりそのまま国会のお指図に従うという立場をとることが、これが公労法の精神を活かすゆえんではないかと考えるのであります。なお最初におつしやいました、仲裁制度は審判制度であるから、事のよしあしについて裁定がうまいまずいについて国会意見を言うべきでないといつた御見解につきましては、私はこの十六條の二項といたしまして国会へ提出申上げた際には、これは予算上資金上という問題につきましての御審議を頂くからだと思います。その意味におきまして菊川委員の御意見に賛成でありますが、併しながら一面国会日本の最高機関といたしまして、あらゆる問題を批判討議される立場におられますから、そういう場におきまして、どうもあの仲裁は悪い、あの調停はいかん、こういう御返答をなさることはこれは私は権能としてはあり得ると思います。併しながらそれは十六條二項の直接の規定を出るものではなかろうか、かように解釈しております。
  16. 原虎一

    ○原虎一君 今井委員長にお聞きいたしたいのですが、仲裁裁定の理由書、理由のお終いのほうにありますのは、「今回の補正予算案においては政府に納付すべき専売益金を四十五億円増大し得る状況にあり、その実質的利益年度当初に予定されていたよりも凡そ九十億円の増大が予想されるのであるから、企業経理の建前からみて公正な賃金の支払を拒むべき理由はどこにも発見し難い。また給与改善費として、今回の補正予算案には既に六億七千六百万円が計上されているのであるから、更に増加を要するのは約四億円である。この程度の額は何ら専売益金関係なく予備費等から支払い得られるであろうし、若し労使共に一層の努力を重ねるならば、今後の増収その他によつてもこの程度の額は産み出し得られるであろう。そしてこれは好転した公社の業績を維持するためにも不可欠のことと考える。」そこでお聞きしたい点は、補正予算政府は六億七千六百万円を計上したのであります。従つて仲裁裁定の実施に必要な残額は約四億円足らずでありますが、これを裁定の理由から見ますれば九十億円の益金の増大が予想されておるのでありますから、四億円程度の金は一カ月足らずで生み出されるように考えるのです。そこで問題は、この実情においてこの理由書に間違いはないと思いまするが、これは即ち専売公社がこれに対して何らの反対をしない。これを承認している、でありますならばこの建前に立ちまして、秋山総裁は何故これが公社会計において実行できないかという問題であろうと思います。従つて私は第一に理由書に相違ないかどうかということを今井委員長にお聞きすると同時に、秋山総裁はそうだとすれば、何故この予算措置政府とつてもらう、いわゆる国会議決を経なければならん手続をしなければならんのであるか、同時に前二回に亘り平林君が陳述しておりましたが、第一回はこの国会議決政府は求めて出したが、我我が審議中に今度は公社会計で支払い得るからとというので呑んだ。このきのいわゆる予算措置というものはですね、公社会計で支払処置というものは如何なる形においてなされたものであるか。第二回も同様であります。これは公社会計で支払われている。これはどういう処置をなされたものであるか、この点を御説明を願いたいと思います。
  17. 今井一男

    参考人今井一男君) 九十億円の問題だけ申上げます。これは公社から出ている資料でありまして、私も、ここに書いてございまするが、実質的な利益であります。即ちこの中の四十五億円は専売益金として国庫に納付いたします。併しながら後の大部分は例えば建物が殖えたとか、或いは建物に使つたとか、或いはたばこその他の手持材料が殖えたとか、これは資産の増加でありまして、従つてこれは確かに利益であります。利益でありますけれども専売会計は御承知通り官庁簿記を使つておりますので、それを損金として一応落すのであります。従つてその分は国には納めないでいい、こういつた形になつておりまするが、若しこれが民間企業でありますならば、明らかに九十億円殖えているのでありまして、これは本年度補正予算において殖えているのでありまして、賃金三原則等から申しましても、これは一点の疑いを容れない。この利益増加につきましては組合側が十分貢献しているということは明らかであるということを謳つたものであります。
  18. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 只今お尋ねに相成りました前二回のこの仲裁裁定をどうして呑んだかというお話でありますが、これは漸次事業の振興と共に余裕が生じて、余裕金の中から解決ができたのであります。これは給与増額のために余裕の金の中から支払つた。もう一つは何故この度補正予算を組むときに九十億も益金が殖えているのに給与増額の措置をとらなかつたか。増加を図らなかつたかということであつたように記憶いたしますが、さようですか。
  19. 原虎一

    ○原虎一君 それで一応お話願いたい。
  20. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) それはです。初め私どもは最初に要求のあつた当時の公社案としては九千九百何がしというものを以て組合と交渉を開始したのでありますが、その後勿論その調停は成立たずに、同時に大蔵省等の交渉においても公務員、鉄道その他の関係からその九千九百何がしもこれを認むることができないということで補正予算の六億何がしというものを殖やしたその額の中で給与基準を定めるということに相成つたのであります。でありますから、全面的に公社の期待は大蔵省の受容れるところとならなかつた、こういうことになつたわけでございます。
  21. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) ちよつと先ほど菊川委員の御質疑に対しまして、平林執行委員長からのお答えがまだ出ておりませんが、この際お答え願います。
  22. 平林剛

    参考人平林剛君) 菊川さんのお尋ねでありますので、私はまあ法律専門家ではないので、国会でおきめになつた法律をその後いろいろ労働省その他の解釈、例規から承知をしておる、そういう立場から御意見を申上げます。  私は今まで国会並びに政府公労法についての解釈、例規その他をお示しになつた当初の見解から申上げると、私はこういうふうに理解をしているのであります。つまり第三十五條によつて絶対に双方が服従をしろということによつて私どもからストライキ権をなくしたのが今度の公労法の法律でありますから、そういう意味において十六條の第二項を解釈して参りますと、私はここに書いておるのは前項の協定をしたとき、つまり予算上資金上不可能な協定若しくは裁定があつたときには、政府はそれを国会に付議して承認を求めるということにまあ読めるわけであります。つまりこれは政府裁定全文そのままの承認を求めるというふうに私は解釈をすべきではないか。つまり裁定がこういうふうに出た、だからこういう裁定国会がおきめになつ公労法に従つて仲裁委員会がきめたのだから、こいつで一つ承認してもらいたい、こういう態度を以て国会に臨むのが政府態度ではないかと思うのです。これは公共企業体労働関係法の第一條の第二項に、つまりこの法律で定める手続に干与する関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ主張の不一致を友好的に調整するために最大限の努力をしろという、もつと積極的な意味関係当事者が紛争の処理に当れということが規定してあるのでありますから、今政府国会に出しているように、まあすべて国会でやつて下さい。私は国会できめられた予算以上のものは不可能でございますというようなあいまいな、何を国会承認を求めているのかわからないような態度国会に臨まれるのは、第一條の目的に全く反しているものであるという解釈をとつているのであります。でありますから、そういう気持から公労法の底に流れている気持から行きましても、十六條の第二項は積極的に政府予算を伴つて国会承認を求める、それが紛争を速かに解決するものである、こういうふうに公労法を理解しているのであります。
  23. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 私はこの公労法につきましては、大体甚だ不備なものだという感じを持つております。事業人として考えますと、給与というものは事業の根幹でありまして、主宰者が一々公労法の名によつて罷業権を奪つているのでありますから、仲裁裁定に行くということは、これは法律にも謳つてありますから、これは当然それによつて解決すべきものだ、併しこれが私の経験から申しまするというと、この給料を上げたり下げるということは無論ないのでありますけれども、事業の繁盛を図る、隆盛になるということに努力するには給料をきめる権利が責任者にないということは、もう誠に困つたものだと私は思つております。でありますから、このたびの裁定におきましても、できるだけ裁定を守つて、そうして労使の協調を図るのが私があずかつている仕事の繁盛するゆえんである、こういうふうに固い信念を持つておりまして、私は法律というものに余り知識を持ちませんが、実際やつて見るというとなかなか独立企業体というのは実はないのでありまして、総裁も誠に権限の小さいもの、私はそういう感じを持つております。
  24. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の御証言の中で私腑に落ちないのは、今井仲裁委員長お話だと思いますが、二十三年の七月二十二日の書簡によりまして、公共企業体が生れたということは私もよく承知しておりますが、その書簡を出した当事者から当初その当時者となるべき者を呼んでその書簡の説明も何回も行なつたわけでありますが、この行なつた際にも、これはその説明には私が先ほど申上げましたようにスポーツにおけるアンパイアという精神で以て今後これを理解して行かなければならぬ。そういう意味でこの書簡も出されているということを十分了解してもらいたいという説明があつたわけでありますし、又争議行為を禁止した裏付として仲裁委員会が設置されたということもこれによつて明らかであるし、又その当時から我々はそう理解して来たのでありますが、従いまして、絶対的なものでないという点につきましては、私は非常に仲裁委員長としてはそういう御理解の下にやつておられるということでは若干不満足の意を感ずるものであります。と申しますのは、一体それでは労働組合を法律で存在を許しておきながら争議行為を禁止する、これは団体交渉と争議行為がない限りにおいては労働組合と私は言えないと思う。ところが最後に訴える手段がどうしても解決しない場合は争議行為だと思います。併し公共企業体が争議行為をやつた場合には公共の福祉に重大なる支障を及ぼすからして、その争議行為に訴えずに、公正なる審判官を設けて判定を下された場合には、その判定に従つて双方が服従するという慣習が打ち立てられているところに、この公労法の制定の意義があると思います。けれどもこの公労法の中には、仲裁委員中に不適格と認めせれた者は、政府のほうでどしどし罷免する要求をすることができる、大蔵大臣労働大臣、運輸大臣もできることにもなつております。内閣総理大臣がそれによつて罷免をすることもできることにしておるわけであります。従いましてそういう点も考えまして、仲裁委員会裁定を出した場合に、いつも間違いばつかりやつているような……、たまたま一遍でも間違いをやつておれば、これは大臣のほうから堂々と罷免の要求ができることになつておるわけであります。従いまして、政府意見を言わないで国会へ出すということは、生のままで出されたその審判を一つ実施したいと思うからして、国会においてこれを審議してもらいたい、こういうふうに出して来るのは、これは立法の精神から言つて私は当然だろうと思います。特にここで今井さんにお尋ねしたいのは、今日までそれでは仲裁委員会はこの紛争解決の絶対的なものを思つてあなたは仲裁に当つておられるのであるか、ただ単に一つのサゼツシヨンを与えるというふうにお考えになつて出しておられたものであるかどうか、この点について一つはつきりお答え願いたい。
  25. 今井一男

    参考人今井一男君) お叱りを蒙つて恐縮でありますが、これが仲裁をいたします際には、少くとも与えられた時間内において、与えられた材料を以ちましてベストを尽して、その範囲内におきまして公正を期している自信は持つております。ただ私があえてこれで罷業権のカバーにならないということを申上げたゆえんのものは、一般社会を睨み合わせての公正な賃金労働問題解決のための公正な賃金という方法は何も公労法を以ちませんでも、両当時者がここで約束をすればいつでもできることであります。それで罷業権を奪つたということは何といいますが、そんなことを言つちや悪いのですが、若し国鉄なら国鉄がストライキをやつた場合に当局が驚いて止むを得ずここまで出すであろう、こういつたところまで頭に入れてはやはり私は率直に言つて罷業権を奪つたカバーにならんのじやないかと思うのであります。併しながら私どもはそういつた立場とつておりません。私どもとしては単に普通に公正な、そういつちや言葉がまずうございますが、公正な賃金をはじく、民間賃金その他諸般の情勢を総合いたしまして、その企業能力も考えました上で、公正な賃金をはじくということでありますから、恐らく組合の諸君としては常に不満足であります。若し争議権があつて当局と交渉すればもつともつととれる、こういつた感じは持たれるであろうと私ども常々思つておるのであります。そういつた意味において仲裁制度だけで罷業権のカバーとしては不十分だ、こう私ども感じておる次第であります。決して私どもが自信のないでたらめなものを出しておるという意味じやありません。私の言葉の足りなかつた点は一つ御了解を願いたい。それから私の解釈はマ書簡の、政府は成るべく当事者になるなというようなことは、即ち賃金問題即政治問題に持つて行くということになると考えます関係から、これにつきまして政府裁定をそのまま国会へ出せ、こういつた解釈が公労法趣旨に合うのじやないか、承認を求めろと公労法の十六條の二項にはつきり書いてございますが、承認を求めるという行き方は私はそのままの解釈だと思います。併しながらそれに予算を付けるか付けないかという問題は技術的な問題でありまして、大した大きなウエイトとは考えない、こういつたわけであります。
  26. 原虎一

    ○原虎一君 先ほど総裁の御陳述によりますと、今度の仲裁裁定に基いて政府がそれを履行するためにそういう措置をとつたのでなくして、いわゆる一般公務員給与ベース引上げによる給与支給のために補正予算の中に専売公社の従業員の給与が盛られておる、こういうふうに解せられるところの御答弁のようでありましたが、その点をもう度一御説明願いたいと思います。  それからの第一、第二回の仲裁裁定の履行に対して私がお聞きしたいのは第一回の場合においては政府国会議決を求めて来たのであります。その議決を求められたものに対して、我我が審議をしておるうちに取り下げまして、公社の会計においてこれを実行したのであります。そのときの財政上の事務手続というものがどういうふうになされたのであるか。もつと具体的に申しますれば、公社会計の中の給与支給額総額がそれを上廻るものであつてもそれを支給されたのである。然らば如何なる事務手続がなされてそうなさつたのであるかということをお聞きいたしたいわけであります。
  27. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 補正予算のとき、編成かなり前からやつておりまして、その当時においては今日の裁定を予期せずにおつたのでありまして、裁定を承わつて後には只今説明を申上げましたたばこ売行がよろしい。もう一つは予備金の流用ができるということを申述べたわけであります。  それからもう一つ第一回のときの国会に審議をお願いしておる最中に仲裁裁定を呑み得たということは、あれは二月頃じやなかつたかと思いますが、三月でしたか、期が大分期末に接近して参りまして、公社給与総額において余裕を生じたということから、新たなる何らの措置をせずに給与総額のうちから裁定を呑み得た、こういうことでございます。別段の措置はなしにすんでおります。
  28. 原虎一

    ○原虎一君 そこでお聞きしたいのでありまするが、今回政府予算措置をなさずして議決を求めて来ておるのであります。従つてこれは非常に大きな、金額は僅か国家予算でありますから四億足らずのものでありますが、労働問題としては思要な大きな問題であります。そこで問題は、あなたにお聞きしたい点は、今後公社経済において余裕が生ずれば残りの四億足らずのものが公社経済において支払い得る見込みがあるかという点をお聞きしたいと思うのであります。前回はやはり審議中においても公社経済において支払うということの能力が生したからこれを取下げて、公社経済で会計から支払われた。今回もそういうことが、而も先ほど仲裁委員長今井さんからは、相当の予想以上の公社会計においては益金が出ておる。これが持続して行くものと我々は推定できるのであります。その点をお伺いしたいと思います。
  29. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 私は公社の業態の現在から見まして、将来においてさように減るとは思わない。むしろ協調してやつて行くならば殖える可能性はあると信じておりますけれども、第一回のごとく、公社給与総額において四億という金が呑み得るという確信は持たないのであります。恐らくは呑み得ないということを確言して間違いないと思います。
  30. 原虎一

    ○原虎一君 もう一回続いてお伺いします。それでは公社会計での会計上の余裕は生じても、一つ給与総額という枠があるために四億円程度給与も支給できない。即ち公労法に基く仲裁裁定というものは最終決定にして、これは両者が服さなければならん、こういうこの法律も給与総額というものがきまるためにできない、こういうことになるのでありましようか。その点お聞きしたい。
  31. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 只今お話通りでありまして、事人件費に関しては給与総額というもので縛られるので、ほかの収入は如何に殖えてもそれを人件費、即ち給与に廻すことはできないのであります。
  32. 中村正雄

    中村正雄君 ちよつと総裁に、私労働委員長として先ほどの証言に関連して確認する意味でお尋ねしておきたいことがあるわけなんです。最初の公述によりますと、現在出されておりまする専売裁定に関しまする国会承認を求める案件については、いわゆる予算上不可能なものが約四億とこういう状態になつておるわけなんですが、この四億につきましてはたしか私、聞き違いかもわかりませんが、予備費その他の関係からも幾分可能なような公述があつたと思います。又今後専売益金増加等についても賄えないというようなお話はなかつたわけなんです。従つて端的にお聞きしておきたいのは、この四億足らずの予算上不可能な裁定というものが、現在の専売公社の財政上及び将来の財政の見通しからして実質上に履行できないのか、それとも形式上予算総則に給与総額という枠がきめられておるからできないのか、もう一度申しますと、実質上不可能なのか、形式上不可能なのか、いずれか、この点についてお話願いたいと思います。
  33. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 先ず実質上又は形式上というお話でありましたが、専売公社のあの厖大なる経理の面において、僅かに四億というものはどういう節約をしてもやろうと思えば私は出し得ないことはないと思うのであります。併し只今申上げましたように給与総額というものの規定が厳格なる枠がかかつておる、こういうことから国会裁定の御審議を、承認を求めなければできないのである、こういうことに御了承願いたいと思います。
  34. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、私のお聞きしている点の御回答としては、実質上公社の財政上経理上から見て四億という金は出せないものではないけれども予算総則にある給与総額という枠があるから出すことができないと、反対に申しますると、予算案を修正願つて給与総額の枠さえ殖やせれば出し得ると、こういうふうなお答えと解釈していいわけですが。
  35. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) その通りであります。
  36. 中村正雄

    中村正雄君 わかりました。
  37. 重盛壽治

    重盛壽治君 私は公述人のかたがたは三人でありまするけれども、この三人が、仲裁委員長今井さんは大体国民の一般の輿論を持つておいでになつたという立場で御発言して頂いておることと解釈します。秋山さんに関する場合は経営者の代表として、平林さんは労働組合の代表としてお答えになつている。その立場で明確にお答えになつておりまするが、御三人のどの証言も、今井さんのお言葉を以てしますれば、今日の経済状態からこの程度賃金引上は当然であつて、民間給与ではこれはもう当然過ぎるほどのものであり、専売といえどもこの程度は最低やらなければらんという意味合いに立つて裁定なさつたということをおつしやつておる。秋山さん又不満ではあるが、労働組合の諸君と協力一致して四億程度のものは出して、そうして公社の能率増進を図つて行きたいという感覚に立つておつしやつておられる。又平林さんは少し角度は違いますけれども、結論的には労働組合法、公労法を尊重し、裁定を尊重して、不満であるが、自分だけ一部を尊重し、一部を従にせられたような姿であるが、いずれにしてもこれは一つ呑もうという御決意である。従つて御三方ともこの問題を、専売給与に関しては一つ裁定を実施して、一日も早く相協力して専売事業の発展隆盛に努めようという御覚悟でおられると私はお察しします。そこで秋山さんにお伺いしておきたいことは、そういう考え方でおやりになつても、公社のいわゆる公社法と申しますか、公社の機能が発揮できないということは公社法に不備があるのではないか。特に最も問題の残つて来るのは会計に起因するものが多い。従つてこれらの根本問題を解決しなければ、仮に今度の裁定が解決付いたといたしましても、将来経済状態が変つて来るたびにやれストライキだ、坐込みだ、裁定だというような問題が起つて来るのではないか。それで私は政府としてもこの際公社法を改正して、いわゆる専売の自主性を確立してやらなければならんのではないかというふうに考えておりますし、このことができなければ、どうしても専売公社としての使命は私は達成できないのではないか。現在の立場におきましては、御三人がやろうということをできないという姿にしておるのは、政府公労法を履き違えたり、或いは公社法を、肝腎な会計制度を政府が把握しておるところに欠陥があるのでありますが、こういう姿から行くと、ただ秋山さんが主張せられても、政府が四億を出そうということにならなければ実施できない。こうおつしやつておるが、こういう根本的な問題に対して総裁としては政府がやらないからやれないのだということで、国会のほうに一つよろしく頼むというお立場だけをとられておるのか、それとも積極的にこの際、将来こういう紛争を起しては日本専売公社の運営に非常な支障を来たすから、こういうことを二度三度続けて来たから、今度こそは公社法の一つ一部改正をして、これの円滑なる運営のできるような方向にしてもらいたいと、或いは又ここで若し政府が仮に蹴つたというような場合に当つては、一体どういう態度をおとりになるか。自分の責任においても、よし、これだけは本当にやらなければ専売事業はやつて行けないから、腹を切つても一つやつて行きますという御決意があるかどうか。一つそういう点をはつきりお聞かせを願いたいと考えております。
  38. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 誠に今の御質問は、私の平素考えておることと一致する点もありますけれども、決意を示せということになりますと、この議案の通過するかしないかによつての問題でありまして、私は通過すると思います。故にその点はお答えを免途して頂きたいと思います。ただ公社の機構においては私甚だ不用意で、私のごとき者も出て公社をやれば国家のためにあの当時において若干寄与するところがあるかもわからん、甚だ不敏でありまして、微力でありましたが、私図らずも承わつたのでありますが、その後やつてみますと、いろいろな支障もあります。あるというのは当時の非常に短い期間に、日本で初めてパブリツク・コーポレーシヨン、こういう組織を取り上げたのでありますから、必ずしも完璧を期したものとは私は考えておりません。併しこれを実際立派なものにするということは私どもの責任であるということは痛感しております。併しこれにはなかなか政治的にいろいろな関係を持つておりますから、さように茶話でお話するようなわけに行かない。相当な用意もし、いろいろなことを考慮して行かなければなりませんのですから……。私は腹案は持つており、又公社においても一つの機関を設けて、如何に公社というものがなくてはならないかということについては目下検討中であります。後日国会に御提案を政府お願いをして御審議を頂く機会があろうと思いますが、ただ甚だ経営上不便を感じておるのであるが、今年の公社の成績はお蔭様で先ず先ず政府の要望する予算歳入も上り、又将来も私はそういうふうに行くのは決して私どもだけの努力、尽力ではない。耕作人五十万、販売人十三、四万、従業員四万、この人たちの努力の結晶でありまして、決して微力なる私が公社をここまでにしたというようなことは毛頭申上げません。どうか今後とも公社の将来についてはよくお考えを願つて、適当なる御勘案を願いたいと思います。
  39. 重盛壽治

    重盛壽治君 総裁としては公社の不備は認めておると、従つて将来の問題は僕は直ちにやるべきであろうと思いますが、公社法の一部改正をしなければ本当の公社としての機能は運営できないということはお認めになつたと認めて、私はよろしうございます。
  40. 木下源吾

    木下源吾君 先ず今井さんに一つ、いろいろ今井さんさつきから言われておるが、例のマ書簡に公務員並びに公共企業体職員に対するいろいろなことが書いてあるが、その中にその人々のつまり憲法上の基本権まで制約される、併し一方においてはこれらの人の利益を守らなければいかん、そのためには守る手段を講じなければならないと書いてあるはずであります。それでそのいわゆる手段というものが集約されて、私は公務員法においては人事院の勧告であるし、公企労法においては仲裁裁定というこの手段が明確にこれに該当するものと考えておりますが、今井さんの御見解を先ず一つお伺いしたい。
  41. 今井一男

    参考人今井一男君) 先ほど菊川委員にもお答え申上げましたように、マ書簡の狙いとして人事院勧告、或いは仲裁裁定というものが罷業権その他団体交渉権を奪つた代償としてできたことは御意見通りだと思います。
  42. 木下源吾

    木下源吾君 そこでお伺いしたいのですが、若しもこの委員会裁定というものが今までのようにたびたび政府の一方的な自由な裁量によつて蹂躪されるならば、大体この公労法というものの目的は遂行することは不可能だと考えるが、これについての今井さんのお考えを一つ伺いたい。
  43. 今井一男

    参考人今井一男君) 裁定のうち一部そのまま呑まれたものもあり、又若干削られたものもあり、まあ全面的に全部削られたものは実は最初からございませんが、いずれにいたしましても、最終的な拘束力をもつ仲裁が全面的に行なわれないということは、公労法の運用上から見まして、その立法の趣旨から考えまして感心しないことは仰せの通りでありますが、併しながら私どもの法律解釈によりますと、曾つて末弘委員長が衆議院で述べられましたように、仲裁裁定とういものは法律上労働協約に代るものである。従いまして、その瞬間すでに組合は一定の財産権を持つ。この財産権というものは憲法による保障があつて、ほかの人がこれを潰すわけにいかないものである。従いまして、給与総額という枠はございましても、給与総額というものは予算性質上、予算総則に掲げられている一つの條文でありまして、私どもの理解するところによりますれば、これは国会政府に対しまして、予算を使うときはかくのごとくこの範囲でやれ、こういつたことをお示しになつたものに過ぎないと思うのであります。従いまして予算そのものは対国民の関係においてはそのまま効力はない。例えば予算がない場合に何か外部へ注文をする、予算がないからしてお払いはできない、こういつたことが仮りに起つた場合に、それで政府は債務を免れるわけには参らんだろうと思います。いわんや公共企業体政府から独立いたしました一つの法人格でありますから、それに対しまして債権をもつておりますならば、勿論公社総裁といたしましては、予算の制約を受けまして支払えないという主張はいたしますが、これは法律上極めてむずかしい問題ではございますけれども、結局最終的には一応裁判所できまらなければならん問題でありますが、裁判所方面の御意見を伺いましても、そういつたことの債務は免れ得ない、こういつた解釈がございますし、私どももさように解しているのでありまして、その意味におきまして、何でも政府のほうでは国会で否決されましたならばそれで権利がなくなる。こういつたような御解釈のように伺つておりますが、併しながらこの解釈は必ずしも我が国における最終的なものでございませんので、私どもそこにおきまして、まだ仲裁裁定というもの全体が全然効力がない、こういつたふうに判断を下すことはまだ早きに失する、こういうふうに考えております。
  44. 木下源吾

    木下源吾君 いま今井さんのお話のように、この前の国鉄裁定のときに裁判であなたのおつしやるような見解を判決したことがあつた。即ち仲裁裁定はこれは債権債務の発生したものだという判決があつたことを記憶しております。その後の上級裁判所でこれが覆されたということも承知しております。併しながら私は今それらのことを言つているのではなくて、公企労法のこの第一條に書いてある目的がこのような状態になつて、政府がつまり一方的に蹂躪する場合においてはこの目的が遂行することができないのではないか、現実に……。そうするならばこの法律というものの存在というものが価値がないのではないか、こういうことをお尋ねしているのでありますが、これがもう明瞭に第一條で労使相方の紛争をこれによつて解決するということをきめてあるにもかかわらず、それが現実に行なわれない。然らばこの法律はあつてもなくても同じなんで、爾余のことは論ずる限りでないと考えるのであります。このことについてあなたはこの法律の中の一部のつまり機関としておやりになつているが、私はそう考えるのだが、あなたは、なお併しながらこの法律は何らかの目的を果す上において役に立つていると思うかどうか、これをお尋ねしているわけです。
  45. 今井一男

    参考人今井一男君) 公労法規定が非常に不備と申しますか、とにかくそのために紛議が起り、そのためにいろいろごたごたしていることは私どもも十分承知しております。併しながら私どもの理解している立場から申しますれば、先ほど申上げましたように、政府が一方的にこれを蹂躪できるものかどうかということに対して疑義がございます。又公労法の精神から申しまして、先ほど菊川委員にもお答え申上げましたように、私は公労法趣旨から言えば政府というものは当時者となることを成るべく避けるべき立場にある。少くとも運用としてはそういつたあれが望ましい、かように考えているのでありまして、公労法実施以来の経過は決して満足すべきものでないことは御指摘の通りでありますけれども、併しながらまだこれが全面的にゼロであつたというような結論を出すのは早い、こういうのが私の考えであります。
  46. 木下源吾

    木下源吾君 総裁にお尋ねしますが、総裁はこの問題の発生を御承知のはずであります。先ほど平林君から言われたように、団体協約によつて経済條件が変つたときにはこういう交渉をやる、それに基いて今度の紛争が始まつたのだということは御承知なつている。然らば総裁はそのときにすでに経済状態が変つた場合においては、この状態においては今の政府が考えている、政府のやろうとする金額賃金よりも非常に上廻ることもあらかじめ承知しなければ、この協定に同意をすることができなかつたと私は思うのです。この点については当時協約されたときには一体どういうお考えでおやりになつたか、結果として今あなたがこの協約をやつたときのことが更に行われないということになつている。甚だ遺憾である。併しながらそのときに一体前途の見通しをどういうように見てやられたか。これに対する、見分が協約に同意するときにあらかじめ将来のことを考えて、それを実行に移すための準備をどういうようにやられたか、これを一つお尋ねしたい。
  47. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) その当時の情勢を判断して今日あることがなぜわからなかつたかというお尋ねでありますけれども、私といえどもやはり特殊な公共企業体を預つておれば、やはり公務員とか、或いは鉄道とかいうところの給与ベースを全然度外視して自分の従業員の給与を考えることはできない、これは人情であります。併し当時、先行き若干高くなるということは考えておりましたけれども、私は組合の一万一千八百円、かような要求は実は期待しておらなかつた、これはそれを呑めばもう何でもないことでありますけれども、私の考えはさように一時に上げるということは、公社の従来の上げ方すべてから考えて見て、やはり自分は九千円台が適当であるということからそういう提案をして団体交渉を始めたのであります。勿論その辺に落着くことを覚悟をいたしまして考えて、大蔵省とも内談はしておりましたけれども、やはり公社の意のあるところが完全に通じなかつたということは甚だ私の微力のいたすところで残念でありますけれども、そういう状態に終つております。
  48. 木下源吾

    木下源吾君 それではなぜこの払えないものを今度仲裁に服したか、ただ公労法がそういうふうにきめておるから服したのだと、これはただ体裁だけじやないかということになる、最初にあらかじめこの経済状態で引上げなければならん場合も来るであろうことは予想されておる、この覚悟なくして又それに調停を提起することはできないわけだ、あなたのおつしやるように、まあ九千円程度ならばというようなことはあなたの一方的な考えですよ。客観的情勢はそういうことを許さない。今井君にも先ほどから聞こうと思つているが、時間も要るから聞かんのだけれども、国民一般の生活支出というものは最近において三〇%も上つておる、僅かにこれは二三%である、給与の分はこれでもバランスがとれないです。殊に民間企業との比較においても著して相違がある。いろいろ民間企業でも政府公務員の場合に言つておるが、中小の朝鮮動乱影響で逆に困つておるようなそういうような工場ばかりを対象にしておる、何万人と使つておるそういう大きなものの民間企業というものとの比較一つとつておらん、そうしてそういう大きいものはどうか、一万二千円一万三千円すら……こういう状態にある、こういう客観情勢が現実に示しておるのに、自分は九千円か、そこそこのものを考えておつたのだというだけでは済まんと思う、それよりも大切なことはです、現実にそういうような客観情勢が動いて来て、一方数千円にしなければならないのであるが、なお且ついろいろな情勢で一万四百円にしたのだ、この場合にあなたがこれを呑んだのだ、今度呑んだ、これを呑む以上はあなたはこれを支払うという義務が生ずる、責任があるわけです。それをただ公企労法が示しているから、こういつてこれを呑んだのだ、これだけではこれは誰れでもやる、子供でもそんなことはやる。私はそれだけでは到底この国会の証言では実質的な効果をあらしめることはできんと思います。当時すでに高くなることを予想して、高くなつた場合には再び団体交渉をやつてきめる。ただ交渉をやつてこれできまらないときには調停がある、仲裁があるということはわかつている。わかつているならばなばなぜその先にこれについての準備、総裁が今後やろうとすることの準備を整えなかつたか、こういうことなんですが、その辺の心境を一つざつくばらんにお伺いしたい。
  49. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 今どうもただ仲裁を呑んでその尻を国会に持つて来るのは甚だ無責任だ、誠意がない、こういうお叱りでありますけれども、私はさような考えは毛頭持たないのであります。できるだけ予算的の措置もして、先刻から申上げているように、たばこ利益においても又予備費の支出においても可能であるということで今日まで……力のあるなしは別ですよ、微力ながらそういう措置とつて来たのでありまして、それは御批判は如何ようでもよろしゆうございますけれども組合としては私の誠意は認めてくれているのでありますから、お叱りは承わつておきますが、私はそういう誠意を以てやつているということだけは御了承願います。
  50. 木下源吾

    木下源吾君 私は誠意の問題を言つているのではなくして、現実に先ほど平林さんの証言にもありますように、今このことが抑えられるならば、法を守るために、又政府に反省を促すために団結の強化を図らなければならない、当然これはこういうことになるであろう。一日の利益が四億なんですよ。若し合法的なあらゆる行動で以てこの反省を促がすということになれば、国に何十億の損害が行くかわからない、損害というか収入減になるかわからない。これはもう総裁自身が事業を経営しておられるからわかつている、私はわかつていると思う。あなたの事業経営にそれほどの利害関係のある問題なので、而もただ誠意を以てやつたというだけで、現実に何にも現われておらんということになる。現実に何にも現われておらん。責任の上から総裁は重大な決意をしなければならんのじやないかと私は思う。そのくらいの当然……ただ法の不備だとか或いは予算総則がどうだとかそういう問題ではないので、現実に政府のつまり一方的な独断的なやり方によつて国全体が損害を受ける。或いは団結を強うして行動しないだけで、そういうことは私はないと考えますが、精神上の弛緩だけでも、更に雇用人として使用しておる側に対する不信というこの精神上の弛緩だけでも少からざる損害を国家に与えるものだと私は考えるのですが、その企業に責任のあるところのあなたとしては当然私は重大な決意をしなければならんと、かように考えるのです。その心境を一つ承わりたい。
  51. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 公社の労使の不調和から来る国家に与える損害についてはお説の通り私も存じております。故に私の今までやつて来たことは相当誠意だけでなしに、具体的な案まで示してやつておりますけれども、当時給与総額は四十一億何がし、それをともかく補正予算計上で六億何がしまで持つて行つた。それが足らんのでそのまま引続いて協議はしておりますが、その点において御不満のあるところは私の微力で、これはまあお辞儀をせざるを得ないのであります。併しこれが達成できないから私の決心云々ということにつきましては、先刻も申上げておるように私の決心は私がするのでありますから、どうぞお任せおき願いたい。
  52. 木下源吾

    木下源吾君 これは大いに私は意を強うするのですが、その決意を早く一つ大蔵大臣に私は示して頂きたいと思う。問題を早く解決すると私は思う。
  53. 秋山孝之輔

    参考人秋山孝之輔君) 私の決心をする時期方法についても私が自主的に考えることを御承願いたい。
  54. 木下源吾

    木下源吾君 これは平林さんにちよつとお伺いするのですが、正しい主張と、そうして法を守るという精神から相当の決意を組合はするであろうということをさきに承わつた。これは専売企業に対して、国のつまり企業に対して相当我々は関心を持たねばならんことであります。言うまでもなく企業の実体は労働者です。その労働者諸君がこの経緯によつて相当皆が決意をするであろうというようなお話でありましたが、こういうことについてのあなたの観察されておる状況を一つお話を願いたい。
  55. 平林剛

    参考人平林剛君) この裁定の取扱については、只今衆議院でも審査をして頂いておりますが、私は今度の国会においては専売裁定については公労法に基いて正しい解釈をして頂けるものと信頼をいたしております。何故かと申上げますれば、野党の各委員のかたもさようでありますが、与党においても裁定は尊重すべきであるという意見は多数の幹部のかたがお持ちのようであります。で私は国会に深い信頼を寄せておるところでありますが、ただ誠に私が解せないのは、与党も野党も裁定を尊重すべきであるという意見でありながら、衆議院の労働委員会においては裁定を尊重すべきであるという議決が多少遅れておるということであります。これは野党も与党もまあ党派を離れて公労法の精神については正しい御理解を頂いているのに、何故議決が行われないのであろうかということに一抹の危惧を抱いておるのでありまして、この点につきましては、まあ国会全体が一つ深く御賢察を願つて一日も速やかに公労法の正しい運営に基いた御判断を願いたい、それをひたすら願つておるのであります。ただ若しこれが政府の言われるがごどく実際上できないものはできないというようなことだけでも押し通つてしまうようなことであると、そうしたらどうするかということは、私はただ国会只今のところでは深い期待を寄せておるだけである。ただ組合員は、まあ私ども組合の幹部はそういう気持で国会に臨んでおるのでありますが、併し実際上多数の組合員はわけもわからなくなつておるのです。公労法に対して実際何だかわからなくなつておるのでありまして、そういう意味で今後の心理的な影響は非常に大きい。私ども政府が今までの態度がさようでありましたので、止むを得ず十日以降は、政府が働けるだけ働かして何もやつてくれないというような態度であるならば重大な、重大と言いましても私どももさような考えを持たざるを得ない、こういうふうに考えておるのでありまして、ここ一、二日に国会が速かに正当な御理解ある態度を決せられることをお願いをしたい、ただそれだけであります。
  56. 千葉信

    千葉信君 私は今井仲裁委員長にちよつとお尋ね申上げます。私も坐つて御質問申上げますから坐つたままで結構です。私のお尋ねしたいと思うことは、この専売仲裁裁定をめぐつて、この紛争の解決については非常に仲裁委員長は重要な立場に立つておられると思うのです。特にこれは先ほど菊川君からもお尋ねいたしましたし、又木下君からもお尋ねした問題に関連する問題でありまするが、仲裁委員長としてこの公企労法の條文に従つて出された仲裁裁定そのものの価値というか、比重というか、若しくは最終結論に対するこれを支配する力というか、そういう点について仲裁委員長からこの公企労法の條文の解釈に対してどういう見解を持つておられるかということが非常に大きな要素となると思うのです。これは国会の論議の場合にも大きな比重になると思うのです。先ほど菊川君の御質問に対してはやや証言が不明確な印象を受けましたけれども木下君の質問に対する証言の中では末弘委員長の前におつしやられたことなんかを引用されて、非常に明確になつては参りましたけれども、まだやや不明確な点がございますので、確認の意味からも御質問申上げるわけであります。ということは、大体今までの御証言の中では公企労法に対する御意見というものと、それから従来国会においてこの問題に対しとつて来た結論なり、或いは政府とつて来た態度というような現実的な問題に関連していろいろな立場から御答弁をされた点がございまして、而もその中で純粹に仲裁委員長としての立場から公企労法に対する見解の発表というものはやや焦点が薄れておると思うのです。私のお尋ねしたいと思う点は、大体私ども公企労法の第十六條なり、或いは第三十五條の解釈から言いますと、仲裁裁定が出たのちにどう国会でこの問題が審議されて、最終的な争議の解決であるべき仲裁裁定が行われてもなお且つ常に国鉄にあつても専売にあつてもこういうふうに賃金問題が紛争しておるということは、これは公企労法の不備、欠陥とか、用語の不足という問題から起つておるのではなくて、現在の日本の置かれておる非民主的な状態というものが大きくその作用をしておるのです。これは私申上げるまでもなく、今井さんも御存じだと思いますけれども、イギリスにもこれは同様に国家公務員に対しては或る程度制限規定が設けられているし、そして又仲裁機関というものも設けられております。ところがイギリスの場合を見ますと、イギリスの場合でも日本の公企労法とそう変つていない仲裁に関する規定であるにかかわらず、向うのほうでは、イギリスの場合にあつては仲裁が行われれば、その仲裁の結論に対しては今までにただの一回もその仲裁を履行しなかつたためしがないのです。これは予算上の問題その他の如何にかかわらずイギリスが民主国家としての立場から仲裁機関として立法化してその権威を認められておる機関の決定は、国の予算云々、ましてや日本のように不確定な、主観的な見方に立つての予算上の不可能とか何とかいう問題を楯にとつて拒否したなんということは一度もないのです。完全に仲裁裁定は如何なる財政状態の場合においてもイギリスでは実施されて来ておる。ところが日本の場合にはそういうふうな紛争の起るような、そういう紛争の解決できないような公企労法の状態かというと、公企労法にあつてはイギリスの場合と同様で、仲裁裁定が行われたのちにも紛争が長引くということはあり得ない條文になつておるはずなんです。それをそういう紛争の形に持つて行くことは、例えば十六條の解釈におきましても、この前段にあるところの予算上又は資金上不可能な資金の支出を内容とするというこの点は、私は政治的な考慮であるとか、或いは主観的な見通しによつて左右さるべき性質のものでなくて、客観的な明確な事実だと思うのです。その事実の認識の上に立つてこの條文があると思うのです。特にまして今度の場合のごとく非常にたくさんの利潤を挙げていたり、又将来も勤労意欲の高揚によつて事業成績を挙げることができるような場合のことは勿論として、現在の段階においてもすでに従業員諸君の勤労意欲や、又理事者諸君の努力によつて、資金上若くは予算上誰が見ても支出が可能だという段階における場合のごときは、これは問題になるはずはないと思うのです。ところがそれを政府の解釈ではこの條文は自分たちの思うままにでたらめの解釈を従来行なつて、そうして政治的な考慮や至観的な見通しの土に立つて不可能とか不可能でないということを常に言つて、そうしてこの公企労法を歪めて来ていることが私は日本の実態だと思うのです。そしてその場合に、この十六條の場合に如何なる協定をもという條文は、第三十五條の場合にありましては、これは最終的決定として服従しなければならない、つまりこの條文から言いますと、この裁定の行われたということは協定だと思うのです。これは勿論異論のないところだと思うのです。それだからこそ仲裁裁定が最終結論となるし、従つて罷業権にしてもその他の権利にしても或る程度の抑制をしても民主国家としてちつとも非民主的でないという理窟も生れて来ると思うのです。そういうことになりますと、一体今度行われた仲裁裁定そのものを出される場合に、仲裁委員長としてのお立場から、この十六條なり、三十五條の解釈に当つて、これが専売紛争の問題に関する最終決定であるべきはずだ、そして若しも国会でこれを論議し、若しくは又政府国会承認を求めれば、問題はこれは当然に予算上、資金上支出が不可能な場合には紛争が長びくことがあるかもしれないけれども、それ以外の場合においてはこれはもう仲裁裁定には完全に政府もこれを承服し、国会にその承服の上に立つて若し予算上変更の必要があれば出す必要があろう、こういうふうにお出しになる仲裁裁定に対して明確な御見解公労法上持たせて出されたかどうか、その点をこの際ざつくばらんに、楽な気持で御答弁を願いたいと思います。
  57. 今井一男

    参考人今井一男君) 先ほど申上げましたように、又千葉委員のお言葉のように、我々仲裁裁定協約に代るもの、かように理解いたしております。従いまして、それと同時に債権債務が発効して各当事者を拘束する。併しながら十六條の政府を拘束しない、これは私政府というのは契約の当事者ではありません。一応拘束しないと書くのはむしろ当然のことではないかと思つております。又後段にあります払つてはいけないということも、単にそれまで払つてはいけないということでありまして、従つて単に支出そのものをやるというと、予算がない以上はこれは公社総裁としては会計法違反になりまするぞという、こういつたものを示したものとかように理解するものであります。これが先ほどもちよつと触れたかと思うのでありますが、第一次国鉄裁定が問題になりました昭和二十四年におきましては、先ほど原委員が何か誤解された質問があつたように思うのですが、あの当時には給与総額というものの規定予算総則の中には謳つてなかつたのであります。従いましてその公社の支払能力、これ即ち予算上、資金上、こういつた問題に結び付いて理解が十分された建前にあつたのであります。又我々もその見地に立つて第一次の国鉄裁定を出したのでありまするが、併しながら昭和二十五年度予算から給与総額という一つの枠が、これは先に申上げたように一般の官庁にもない、公共企業体だけにある枠がこれが予算総則に入つたのであります。むしろ私に言わせるならば、公共企業体こそ或る場合においては賃金の高い人を余計使つて見たり、少し使つて見たり、反対に賃金の安い人をうんと使つて見たりというような臨機応変の措置がなければ、却つて能率が挙らないのじやないか、ところが妙なことに、これは国会でおきめになつたことでありますが、妙なことに公共企業体のほうにそういう規定が入りまして、一般の官庁のほうにはむしろない、一般の官庁こそ私は必要じやないかと思うのでありますが、その関係から予算総則というものはとにかく予算上の拘束力を持つておりまするから、公社総裁といえどもそれに拘束されることは止むを得ません。従いまして私どもの理解している十六條の予算上、資金上というものの法律上の効力と、予算総則に基く給与総額の効力とはこれは本質的に異なると思います。と思いますが、結局において国会においてお手直しを願わなければ出せない意味においては結論的に実際運用としては同じ問題になる。従いまして私ども今回の裁定を出しました際に、そういつた実際上の面におきまして給与の総額には引つかかる。引つかかりますが故に、これは国会の御厄介になりまして、お手直しを頂かなければ出せない。併しながら国会におきまして、若しあの予算総則の後ろのほうに今度の補正予算で直されまして、四十八億出る、特別の事情あるときは四、五十億出してよろしい。こういう一カ條さえ加えて頂ければ、あとの予算の内容には一言半句触れなくて私は解決できるのじやないか、かようにも実は存じている次第であります。特に従来はこういう特別会計、まだ公社にならない特別会計の時代におきまして、古い時代には専売も国鉄もその予算の流用等につきまして、かなりやかましい規定がございました、国会にいちいち御承認が必要であつたのでありますが、戦後こういつた企業体の本質に鑑みまして、全体の予算専売で申しますれば千八百億の予算全体が、これは尤も収入のほうでありますが、予算全体が、とにかく国会としては全体を一本として承認なさる。こういつた仕組に変つたのであります。いわんやそれが公共企業体なつた以上は、いま少し公社というものにもう少し大幅な臨時運用の途を開らかれるほうが却つて能率を挙げるゆえんではなかろうか。勿論国会といたしましても、国民に変つての監督のお立場がございますから、従つて原価は幾らでやれとか、或いは収益はこれだけ挙げろと、こういつた意味の命令をお出しになることは当然でありましようが、併しながらその運用方法につきましては、或いは物件費を余計使つて人を減らすという場合もあれば、或いは又反対の場合もある、こういつた運用こそむしろ公社に任せられるほうが却つて能率を挙げるゆえんでもあり、又国民経済的にも、国民の負担にも寄与するゆえんではなかろうか。その意味におきまして、あの給与総額の予算総則の一條文は私率直に申上げまして、適当でないのみならず、事実上賃金に関する問題はすべて国会に行かなければきまらない、こういつた仕組みは変えられるのが当然だと、こう理解しております。
  58. 千葉信

    千葉信君 いろいろ今井さんには御質問申上げたいことがございます。大体現在の公務員賃金の中で六千三百七円に切替えられるときに、賃金ベースから平均賃金の恰好に切替えられて行かれた立役者でございますから、私はこの点については相当不服も持つておりますし、御質問申上げたいことも持つておりますけれども、今日は併し時間もかかつておりますので、そういう点については次の機会に御質問申上げることにして、ただ一点だけ今度の仲裁裁定の問題に関する裁定の内容について先ほど証言の中で、今度の一万四百円を結論として出す場合に、現在の専売職員賃金が大体七千九百円であるけれども、昨年十二月実施された年末手当の分を月別に計算して見て三百円というものを考慮した、そうしてその上に立つて今度の一万四百円というものを出されたという、こういうお話でございましたが、私は決してこの際国鉄の諸君であるとか、或いは一般職の職員の場合と平均をとらなきやならないとか、或いは均衡というような問題を問題にするつもりは毛頭ありませんけれども、ただそういう只今のような形で年末手当の三百円というものを含んで一万四百円という裁定が出されたということになりますと、私は将来に問題が残るのじやないか。これは御承知通り、大体一般職の職員の場合は、今年は一応の見通しとしてはまだ決定はしませんけれども、〇・八カ月分というものが見込まれております。ところが専売の場合には一万四百円の仲裁裁定も現在こういう段階にありますし、而もその中でこの中には年末手当の分が一応計算されているということになりますと、専売職員の場合の年末手当が又ぞろ問題になつて来るのじやないか、この点について明確なお考えなり、それから又仲裁をおやりになる場合にこの問題に対してどういう考えを持つておられるか、この点を承わりたい。
  59. 今井一男

    参考人今井一男君) 一万四百円と申しますのは、組合側要求、又問題の提起の仕方に従いまして、本俸と勤務地手当と扶養手当とこの三つだけのあれでありまして、年末手当はこの中には全然入つておりません。七千九百円を前にきめましたときに、本来行くならば我々の計算によると八千二百円になるべきところであつたけれども、併しながら年末手当というものが新たに加わつた。年末手当は解し方によつては基準賃金の繰り延べ、あと払いと解し得る。従つてそれが約四千円ばかり、一月分に十二で割りまして三百円ばかりのものは引き去るほうが妥当だ、こういつた見解で前の七千九百円のときには引き去つたのであります。八千二百円となるべきところを七千九百円にきめられたのであります。ところがその後資料が段々わかつて参りますと、民間のほうが臨時的な給与が非常に殖えた。あれを引き去つたことは、その当時にわかつた資料としては間違つたことではなかつたけれども、あとで判明したその後の資料によると、引き過ぎでありましたことがはつきりいたしましたので、従つて七千九百円に上昇率をかけませんで、八千二百円に上昇率をかけた、その結果こうなつたわけであります。
  60. 千葉信

    千葉信君 そうしますと、一万四百円には年末手当分は全然考慮されておらない。従つて年末手当の問題が今後仮に残るとすれば、これは今度の仲裁裁定金額以外に考慮される、こういうことに了解して差支えございませんか。
  61. 今井一男

    参考人今井一男君) 私どもは本年度の年末手当については、両者から別に問題が起りませんので、問題の起らないことには意見を言わないことにしております。
  62. 千葉信

    千葉信君 わかりました。
  63. 吉田法晴

    吉田法晴君 最後になりましたようですから、私からちよつと今井委員長に二、三点お伺いをしたいのでありますが、先ほど平林委員長から、公務員に比べてこれは一般産業の場合を一〇〇として、公務員を八三・三、専売公社が七三・三、或いは今年の一月で一般産業を一〇〇として公務員が九〇・一、専売が七五・四、こういう数字を挙げられましたが、こういう点については認めておられますのかどうか。  それから、それに対する裁定の場合の意図と申しますか、言い換えますと、委員会としてはどういう態度でこれを解決しようとされましたのか、それが一つ。  それから委員会の使命が、これは私ども申上げるまでもなく、公務員の場合の、罷業権を奪われた公務員人事院の勧告によつて仲裁をされてるように、公社職員の場合に調停仲裁ということが加えられた。従つて仲裁裁定協約と同一の効力を持ちますのは勿論、その仲裁裁定が実施せられるように期待されることが委員会としてのこれは使命だと思うのであります。人事委員会の場合にも、勧告はしたが、そのあとのことは自分の責任ではない、これは仲裁委員会の場合の証言と申しますか、御陳述を伺つておりますと、裁定を下したのだからあとは我々の問題ではないというように言つておられるのであります。そこで裁定の実施について委員会としてとられる態度から申しますならば、四億の補正を更にしなければ裁定が実施できないといたしますならば、これは政府に対し、或いは国会に対して四億の追加をなさるべきである、こういう意見に若しここでお話になるとすれば当然なるべきであると考えますが、それについて委員長としてどういう工合にお考えになりますか、はつきり伺いたいと思います。
  64. 今井一男

    参考人今井一男君) 平林君の申上げました数字自身は、資料を確認いたしませんというと、その数字そのままで当つているのかどうか、すぐさまにはお答えできませんけれども、併し大体論といたしまして、従来専売が相当……従来と申しますか、二十四年、三年ということを含めてでありますが、非常に低かつた。公務員と比べて、又一般民間給与と比べて低かつたということはこれは事実でございます。併しながら一体どのくらいの賃金にいたしますというとバランスがとれるものかということは、これは極めてむずかしい問題であります。又それが簡単に誰も納得するような数字が出ましたら、賃金問題は殆んど議論がなくなるくらいでありまして、非常にむずかしい問題でありますが、併しながら私ども一年に一回はそういつたことについて両者側に、又仲裁に出て参りました場合には両者側に意見を闘わした上で、その両者側の意見の合致しない部分につきましては、我々検討して独自の意見を述べる建前とつておりまするが、併しながら今回の裁定は冒頭申上げましたごとく、二十六年度基準賃金からすでに七千九百円ということがきまつている、使用者側も現在それを履行しているのでありまして、その七千九百円はその後経済事情が変つたならば変えよう、こういう約束をしたものであつて、その約束の線に従いまして、どれだけ経済事情が変つたか、或いは変る見込みか、こういつたことだけを要素に取り入れて、いわば技術的にはじき出したものが一万四百円で、前に幾らであつたとか、どうとかいうことは直接の資料にはなつておりません。  それから裁定そのものに対する仲裁委員会考え方といたしまして、私どもも勿論限られた時間で限られた人員でやる仕事でありまするから、決して完璧なものと、そう絶対的なものとしてうぬぼれるわけでもございませんが、併しながらこの与えられた條件下におきましては、ベストを尽したという確信は持つておるのであります従いまして、これがそのまま国会において尊重され、履行実現を見るということにつきましては、決してその熱望の程度においては人後に落ちるものではないのでありまして、特に裁定の理由書の中に私ども見解をはつきり書いておいたのでございますが、約四億程度にしか過ぎないのであり、これは予備費等からも考えられようし、又今後の収益の増加等にも期待される。又民間企業であるならば、実質的に九十億も殖えた以上は多少常識的に申しまして、組合にお裾分けすることも勿論当然じやないか。併し特殊な官庁会計でありますために、それが利益として一応形式的には上りませんけれども、普通の民間会社であれば、問題なく利益に上る分が国庫納付金のほか四十五億以上もある、こういつた意味におきまして、少くとも賃金三原則等から考えましても、企業の支払能力から考えましても、この点は又少し強いかも知れませんが、一点の疑いないと、こう申上げてよろしいのじやないかと思います。又公務員との権衡等も、私公務員が如何なる理由で如何なる根拠で千五百円となつたのか知りません。そういつたことにつきまして、私どもも納得できる説明は伺つておりませんが、少くとも公共企業体というものは政府から独立させまして、公共企業体の枠内で独立採算制をとりました以上は、ときによりましてこちらが高かつたりあちらが高かつたり、それもそういう何千という差でありませんし、これくらいの差でありますから、むしろ私どもとして技術的にはじきました数字はすぐ実現できるし、又実現能力があるし、又是非実現して頂きたい。かように存じておる次第でございます。
  65. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 先ほどからほかの方が質問されると思つて途中で遠慮したのですが、最後にお伺いしたいのは、今予算総則の問題について今井さんが何回も繰返して述べられましたけれども、一体この予算総則で国鉄と専売公社をああいうふうな給与総額に縛りつけたのは、実はこの十六條の対抗手段として池田大蔵大臣が考えて、大蔵省としてこれを付けて来たやつなのであります。従つて国鉄裁定が十六條によつて資金上、予算上可能であるかどうかということがあの第一次の国鉄裁定で両院で問題になりましたときに、相当当時の末弘委員長など、あなたらが、これは可能であるという御証言をされ、政府を窮地に追い込み、これが対抗手段がなくなつたために止むを得ず予算総則に十六條の対抗手段としてああいう枠をはめたというふうに了解を願わなければならんと思うのであります。情熱はそういうものである。従つて今後公共企業体仲裁委員会はこういう枠がはまつた上に、さてどういうふうに処置して行くかということも御考慮願わなければならんと思いますので、この点どういうふうな御考慮がなされているか、払われているのかということについて先ず第一にお伺いしたいと思います。  それから第二には、先ほど今井さんが、仲裁委員会の設置というものはストライキを禁止した完全な裏付じやないとおつしやつた意味でございますが、今あなたのおつしやるのは、ストライキをやつておつたならばもつと高く取れたであろう。又逆に言いますと、この労働運動の歴史というものは労働者の惨敗ということも考えなければならない。又逆に、労働組合のほうより交社の強い場合はこれに押し切られてしまつて惨敗を喫し、みずから多大の犠牲を出さなければならない場合がございます。従いまして、どちらに出るかということは、これはむしろあなたがたがやらないでも、即ち公正に適当にこの程度にきめましたならば、どちらにも傷がつかず納まるという確信を持つてお出しになつた。従いましてお出しになつ裁定は、先ほど人事院勧告の点について言われましたが、人事院の勧告は飽くまでも公務員法の定めるところに従つて国会政府に対してこれは勧告されるのであります。従いまして、その内容についてはこれは国会において審議するところの権限が当然あると思います。併しあなたがたは最終的の裁定を決定されたのであるから、その内容について国会が、それは勿論個人的に批判することは、例えばとんでもないものを出したと言う人もあれば、なかなかいいのが出たという人もありましよう。又ちよつと工合が悪いと首をかしげる人もありましよう。これは批判は自由でありましようが、その内容はあなたがたの持つておる権限を尊重して、出したものは当然両方とも納得しよう、そういう慣行を打立てて行く。先ほど千葉君がイギリスの労働運動の慣行を例に引いて申されましたけれども、この労働法の親許となるところにおきましては、飽くまでも仲裁委員会というものはそういうものであるということを前提として、これは当事者双方に十分に指導して来たわけであります。而もその指導に従つて組合も交社も運営して行かなければならない。その設けられたときにそれではやつて行こうといつて、国会におけるところの審議も当然……審議の速記を引出して見るとよくわかると思いますが、当時の提案者たる労働大臣が十分そのことを説明しておるはずであります。従いまして、今のように自由党が仮に多数を占めておるから、而も今こそそういう多数の状態であるけれども、いつこんな政治の情勢は変るかわからない。又経済の情勢もそうであると思うのであります。秋山さんは先ほどちよつと下るということはないとおつしやいましたけれども、やはり物価もだんだん下つて来るということになりますと、公社側から今度は要求されまして、下げてもらいたいという要求をされなければならん。又いつもこう上るばかりじやありません。戦争が終つてから賃金ベースというものはどんどん上つて天井なしでありましようが、いずれ安定しました場合は徐々にやはりこれは下つて来まして、今の百円札が千円札のような値打が出て来るようにならなければならんと思います。そうなつて参りますと、当然あなのほうから下げろという要求をされ、組合はそう下げられないと対抗しましよう。そのときでもやはり裁定を仰いだ場合には組合も服する、或いはあなたのほうも服する、こういう慣行を今から打立てておかなければ駄目だと思います。この点につきまして、その内容についての審議権は私は国会にはない。今人事院勧告と趣きを異にするという見解を持つておるのですが、今井さんはこの点についてちよつとぼやかしておるが、どうお考えになつておりますか、十六條の対抗手段として大蔵官僚が考えて予算総則において給与総額を縛るということにしてしまつた。そうなつて参りますと、今後の賃金問題の仲裁は極めて困難と思います。これをどう理処されるか、どう考えておるかということが一つ。第二点は先ほどの裁定を、内容の審議を国会においてやるべきでない。これは飽くまで予算上、資金上の面から検討すべきであると我々は考えるが、この点のお考えを承わりたい。
  66. 今井一男

    参考人今井一男君) 予算総則の問題につきましては、総則問題についての私の見解は申上げた通りでありますが、これをどうするかと申しましても、極力国会で、政府に対する命令という形でおきめになつておるのですから、成るべく我々の命令を一つ弾力性のあるものにお直し願いたいと申上げるだけであります。ただそれだけで問題が片付くかどうかという点については先ほど木下委員に申上げましたように、私は法律上大きな疑問を持つております。こういつたような国会の行政府に対する拘束的な命令だけを以て外部の債権者に恐らく対抗できないのではなかろうか、従つて仲裁裁定労働協約と同一に考えるならば、結局裁判所に出た場合にこれは大したむずかしい困つた問題が起るのではないか、かように考えるものであります。それからなお裁定に対する国会の審議でございますが、私も菊川委員の御意見通り十六條の二項該当として国会に提出したゆえんのものは、この裁判の問題を、丁度あと予算関係があるから国会に御審議願うようなものでございまして、従いましていわゆる予算上可能か不可能か、こういつたものに対して果して公社の支払能力が本当にあると認められるかどうか、適当であるかどうか、こういつた点を御審議願うのが本筋でありまして、仲裁裁定のうまいまずいというふうなことは、この十六條二項の審議としては私は埓外だと思います。その点は菊川委員の御意見通りです。併しながら国会は別の立場におきまして、国権の最高機関としてあらゆる日本の行政を通じまして、監査監督なさる権能をお持ちであります。我我も一個の行政機関であります。我々のやつたことにつきまして、まずいなりうまいなり、或いはこういうふうな注意が必要だとか何とかいうふうな、一般行政監督としてのお立場で発言なさるということは又別であると思うのです。この十六條二項の趣旨はそこにはない。従つてこれは私ども立場から申せば切り離して、実は一緒にされないで、願わくば切り離して御審議を頂くなら非常に好都合ではなかろうかと、かように存ずるのであります。
  67. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 最後に、今のあなたの言われた切り離せというのは、やつぱり私は第二十九條の問題として、能力はあるかないかということで、国会としてそういうとんでもなくまずい裁定をいつも出すということであるならば、これは内閣総理大臣に対して罷免の要求というような議決もできることはできるだろうと思います。従つてその面で二十九條というこれの活用を政府要求するというふうに行かなければならんと思う。従いまして、あなたのおつしやるように十六條の審議として、内容に亘つて、今CPSがどうだとかこうだとかいうことは参考としてお聞きしておきます。これは当然我々は考えなければならんと思いますけれども、これを審議するという対象にはならん、こういうふうに考えますが、幸いに意見一致しましたので、今後とも一つその線に沿つてやりたいと思います。衆議院へ参られましても、そのように御証言を願いまして、実現のために御努力お願いします。
  68. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) 本日の連合委員会はこれを以て散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんですか。
  69. 大矢半次郎

    委員長代理大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。  これを以て散会いたします。    午後四時五十二分散会