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政府委員(
瀧本忠男君) それでは去る十月の十八日に、
人事院が八月二十日附で行いました
給与水準引上げの
勧告に伴いまして、これを実施するためには如何なる
法律案を作
つたらよろしいかということにつきまして、
意見の
申出でをいたしたのでごでいます。そのことにつきまして御
説明申上げたいと思います。
この
一般職の
職員の
給与に関する
法律の一部を改正する
法律の案につきましては、去る八月二十日
勧告いたしました
給与水準引上げの際にも、いろいろ
申出でいたしましたことを、
法律の条文の形にして書いただけでございまするから、取り立てて申上げることはないのでございます。ただ
勧告になか
つた点で、新らしく
法律の
意見の
申出でに
加つた点がございまするので、その点につきまして若干御
説明申上げたいというふうに考える次第であります。なお
勧告の際に申上げておいたことではつきりしなか
つた点をこの
法律の一部を改正する
法律の案におきまして、はつきりいたした点がございます。その点はどういう点かと申しまするといわゆる
現業的な職務に従事されまおりまする特殊な
職員に対しまして、特別に
俸給表を作成するということを
申出で、
勧告いたしたのでありまするが、その
俸給表の
名前を今回ははつきりといたしました。それは
企業官庁職員級別俸給表というふうにはつきりいたしたのでございます。その
趣旨は特に
企業官庁というもの
特殊性というものを十分認めまして、そうしてそういう
職員に対しまして
特別俸給表を適用いたそうという
趣旨であります。
現業という
言葉を仮に使いまするならば、
現業事務というのは非常にあいまいでございまして、いろいろの場合に
現業の
範囲を限定するような
説明が付せられておるのであります。非常に広くな
つて、各
省庁全般に及ぶようなことになる
可能性もあるのであります。我々が企図した今回の狙には、飽くまで
企業官庁の実態に即応するということが
趣旨でございまするから、
現業という
言葉を避けまして、
企業官庁職員級別俸給表というような
言葉にいたしておるわけであります。即ち
造幣庁の
工場に
勤務する
職員、
印刷庁の
工場に
勤務いたしまする
職員、林野庁の営林局に附属しておりまする
工場及び営林署に
勤務いたしまする
職員、通商産業省の
アルコール工場に
勤務する
職員、郵政省の
地方貯金局、
地方簡易保険局及び
郵便局に
勤務いたしまする
職員、
電気通信省の
地方電気通信局建設部及び
地方電気通信部の
建設工事を所管する課、並びに
地方電気通信管理所、
地方電気通信取扱局、及び
施設局資材部出張所と、こういう所に
勤務をいたしまする
職員というふうに、
範囲を明確に限定いたしたのであります。
この
企業官庁職員給別俸給表は、一級から九級までございます。併しこれはすでに御存じのように、
一般俸給表で申しまするならば、二級から十級に相当いたすわけであります
一般俸給表の十級以上の人につきましては、この
企業官庁給別俸給表というものの適用はないということになるのであります。
次に今回の
意見の
申出の中におきましては、去る五月十七日に
勧告いたしました
勤務地手当支給地域区分表というものがこの中に載
つております。
別表を御覧頂きまするならば、この中で
従前我々が
勧告いたしましたものと若干違いがあるのであります。それは如何なる理由かと申しまするならば、その中に
従前大蔵省においてこの問題を所管されておりました際に、いわゆる
官署指定ということがございました。即ち或る
特定の
地域、即ちまあどこでもよろしうございまするが、
勤務地手当のついておりまする
地域、その
地域には存在しないのでありまするけれ
ども、それから
比較的近いというような
地域におきまして、そういう
勤務地手当のついておりまする所からの
通勤者が多い、どうして市外にそういう
官署が設けられたかといいますと、それはその市、その
勤務地手当のついておりまする
地域内においては、なかなか
土地等が得られませんために、止を得ず少し離れた
地域に
官署が設けられておるという場合があるのであります。そういう際にその
官署には多くその
地域から
通勤しておる人がおる、こういう人の
生活事情というものは当然その市に
官署がある場合と同様なわけでございまするので、
官署指定という
措置が講ぜられてお
つたのでございます。
人事院はこういう
地域の
指定というような問題につきましては、
人事院に権限を残し、そうしてこの
人事院の
判断によりましてそういう
特定地境を追加するというようなことは、いたさないほうがよろしいのではなかろうか、これはすべてこの
法律の上で、
国会でおきめ願う。およそ
給与に関する問題でありまするから、そういうふうにしたほうがよろしいという
判断の下に、前回におきましては
官署指定を逐一調べ上げまして、それを皆字ということで
別表に載せたのであります。これは話を聞いて見ればよくわかることでございますけれ
ども、この表だけ単に見ますると、どうもおかしい、そういう字が入
つているのはおかしいというような感を非常に起すのであります。そのためにそういう字と
バランスをとりまして、まだまだ
地域が
指定されて然るべきではないかというような
要求が非常に多い、これは我々非常に困るところでありまして、むしろそういう
官署は一応表の上から落しまして、そうして従来
大蔵省でや
つておられたように、
官署指定とするのがいいのではなかろうか、余りどう申しまするか、こういう問題を
取扱いまする場合に、きれいなことだけとい
つていますか、
国会できめて頂くというようなことだけや
つておりますると、実際
運営に
支障がある点があるということを考えまして、今回その
官署指定の途を一部開く、即ち五月十七日に
勧告いたしました
別表から落ちておりまする
地域にあります
官署は、その
官署指定ということで、
人事院の規則によりまして
指定して行くということにいたしました次第であります。その点が違うだけであります。そのほかよく調べて見ました結果、村でなくて町であ
つた、或いは町でなくて村であ
つたとか、或は字の書き間違いがあ
つたとか、或いはこれは特別でございまするが、同じ
名前の所がございまして、間違えて
指定してお
つたものをこれを今回訂正したというような事務的な訂正はございますが、そのほかは五月十七日の
勧告通りということに一応相成
つております。
次に
奨励手当の問題でございまするが、
奨励手当は十九条の三に規定いたしております。この
奨励手当は一体どういう人々に
支給されて然るべきであるかという問題でございます。これもいろいろ
研究いたしました結果、差し当りは
企業官庁職員級別俸給表の適用を受けまする
職員、これが即ち企業の能率を挙げるという実態に尤も即応いたすわけでありまするから、そういう
職員を中心にいたしまして、この
奨励手当というものを
支給する、但し先ほ
ども申上げましたように、
企業官庁級別
俸給表と申しまするのは、
一般俸給表で申しまするならば、二級から十級に相当いたすところしかない、
従つて十一級というようなところは、これははみ出しているわけであります。
郵便局長等で十一級というかたがおられる、こういうかたがたにそれでは
企業官庁級別
俸給表の適用がないから、この
奨励手当は
支給しないというのでは余りにこれは画一過ぎるのでありまして、やはり関係が非常に深い部面に対しましては、
奨励手当は
支給されて然るべきであるというふうに考えまして、そこのところは
企業官庁職員級別俸給表の適用を受ける
職員及びこれに準ずる
職員ということで幾らか
範囲を拡げているわけであります。で、この
奨励手当の問題は、実は今後職階制に基きまする
給与準則というようなものを定めまする際には、改めて
検討し直さなければならない問題であろうというふうに考えております。即ち
奨励手当というものは、いわゆる
企業官庁とい
つたような一日に申しまするならば、
現業的な所というふうなものに
支給されるべきものである。
現業的なものと
言つてもこれはやはり独立採算制をと
つておりまするようなところに
支給するのが適当であると思うのです。然らば同じ
一般職の
国家公務員でありまして、そういう
企業官庁でないところは能率を挙げないでよろしいかということになりますと、これは困るのでありまして、そういうところもやつぱり能率を挙げなければならないわけでありますけれ
ども、それに対する報奨方法といたしましては、必ずしも
奨励手当という方法が適当であるかどうかということは問題でございます。従いまして、こういう問題は
給与準則の際に、現在の政令三百二十三号というものできめてあります特殊
勤務地手当というもの、それから特別手当というようなもの、或いは超過
勤務手当のものを今後どういうふうに
取扱つて行くかという問題と併せまして、今後きめなければならない問題である。差し当り
企業官庁職員級別俸給表の適用があるものを中心といたします
職員についてはこれは適用してもいい、併し現在の
段階におきましてはまだまだそういう
奨励手当支給の基準と申しまするか、規定と申しまするか、そういうものが整備されておりません。従いまして、今後我々はそういうことが必要であるところの官庁と折衝いたしまして、早くこれの規定を定めたいというふうに考えておるわけであります。
以上が八月二十二日に
申出いたしました
勧告の部分につきまして、主だ
つた点を申上げたのであります。その
勧告になか
つた点で、今回新らしく附加えられた部分がございます。それは二十三条に規定いたしておりまする体職者の
給与の問題であります。
職員が公務上負傷いたし又は疾病にかかりました場合には、現在どういうふうな
取扱を受けておるかと申しますと、これは
国家公務員災害補償法というのがございまして、その適用を受けるということにもなります。併しながら現実には官吏俸給令等の規定によりまして、その
職員が公務上負傷いたしました際には、それが治癒するまで現実に
給与の全額の
支給を受けておるというのが現在の
状況でありまして、併しながらそういう
職員が或るポジシヨンを占めておるというものになりますと、公務に
支障がある場合がある。
従つて休職ということで一応そのポジシヨンから離れて頂きまして、そうして十分休養して頂くということが必要な場合が起るわけであります。尤も皆これを休職にしてしまわなければならんという規定はございません。官吏俸給令は現在生きておるわけでありますから、これは短期間に回復する見込みのありますものは、何も休職にいたす必要はない。
従つてこういう方法もとり得るというようなことでこの方法を開いております。公務上負傷し、又は疾病にかかりまして、そうして必要があ
つて休職にさせられる、そういう場合におきましては、その休職の期間中、これに
給与の全額を
支給する、こういうことをいたしたいというわけであります。
次に結核性疾患によりまして休むという場合であります。現在はこれはやはり官吏俸給令の規定と、それから結核対策要綱というものによりまして、これは一年間はそういう
公務員に対しましては結核の療養をいたす間全額
支給されておる。これは休職ではございません。併しながら非常に長い期間やはり療養を要するということになりますると、これは或る場合にはポジシヨンから外に出て頂きまして、そうして十分療養して頂く必要があるので、この場合には結核対策要綱の一年間という規定でなく、従いまして官吏俸給令第三条によりまして、先ず三カ月間は、これは有給で行くわけであります。その間によく見極めをつけまして、これはその後においてそれほど長い期間かからないで治癒するということでありますれば、これは結核対策要綱というようなものによりまして、何も休職にいたさないで全額
支給で行く。併しながら相当期間療養を要するという場合には休職を命じまして、そうしてその期間中
給与の全額を
支給しよう、その期間はこれは教育
公務員特別法の例によりまして、二年間は全額を
支給しよう、そうしてあとの一年間は予算の上におきまして余裕がありますならば、満二年を超えまして、満三年に達するまで
給与の全額、これは予算の
範囲内でございますから、或いは一部になることがあるかも知れません。そういう方法で
支給したいということを考えておるわけであります。この結核というものは、大体現在はつきりした統計がございませんが、併し我我が持
つております或る種の統計によりますると、例えば発病いたして一年以内に治癒する、或いは不幸にして死亡されるかたもあるでありましようが、そういうふうにして一年以内にとにかく治癒するか或いは不幸にして死亡されるというものは約七五%ということにな
つております。満二年に達しまするものが八五%という数字になります。満三年に達しますと九七%という数字になるのであります。従いまして先ず最初の三カ月間、九十日間は、これは休職になりませんで行くわけでありまするが、その後満二年、更に予算の余裕がありますれば一年、場合によ
つては結核対策要綱の一年間というものがある場合には使われる場合があるかも知れません。大概そういうようになるわけでありまして、こういう規定を設けるならば結核対策としては万全だろうというふうに考えております。
この問題は、先頃
国家公務員災害補償法をいろいろ御審議願いました際に、結核の問題を
公務員傷病として
取扱うかどうかというふうな御議論がありまして、この点に関しましては
人事院としては十分今後
研究をするというような
申出もあるわけでございます。従いまして今回こういう
措置をとらして頂けるならば非常にいいのではないか、そういうふうに考えておる次第であります。結核以外の体の故障によりまして休職させられまする場合、これはまあ現在傷病の七五%以上は結核と言われておるのでありますから、
従つてそういう場合は多くないと思うのであります。この場合にこの休職期間が満一年に達しまするまで
給与の全額を
支給することにいたしたい。又
国家公務員法の第七十九条第二号、即ち起訴されましたような場合におきましては、これは本当に初めから有罪だということがわかるものもあるわけでございます。又実際にそうでなくて、とにかく判決があります際まで疑念を以て見られる。ところが実際に無罪になる人もあるわけであります。従いまして刑が確定いたすというときまでは新憲法の精神によりますると、これは常人として
取扱われて然るべきであるという感じがいたすのであります。従いましてそういう期間はやはり生きておるということは必要であります。ところが現在はそういう人々が休職させられまするならばこれは無給になります。無給になりまして、そうしてほかに勤めるところもない、どうにもにつちもさつちもいかないというような
状況が起るのであります。それで今回休職の期間中に
給与の百分の六十、それに扶養手当及びこれに対する
勤務地手当を
支給することができるというふうにいたしたらどうだろうか。尤も明らかに起訴されて刑がきまるというような者にまでこれはやる必要はありません。
従つてこれはできるということにいたしたいのであります。百分の六十という線をなぜ出したかと申しますと、現在生計費の中におきまして、いわゆるエンゲル係数と申しまするか、食糧費の割合は五〇%乃至六〇%というところでございます。従いまして百分の六十というのはとにかく食うだけは見よう、こういう考え方でございます。
その次に
人事院規則が定める場合と申しますのは、これは留学生等の場合でございます。留学いたしておりまする際に全然無給というとかあいそうでありまするし、又そういう人々が出張というようなことで行くということでは
取扱に又余りに有遇に過ぎるということもあるわけであります。尤も役所の用事等で非常に必要な場合でありまするならば、それは出張にいたして結構であります。併し現在アメリカなどに招聘されて留学いたしておりますような場合、こういう人は割合若い人が多いわけでありまして、主として妻帶していない独身者という人に多いわけであります。こういう人が参ります際に何も全額やる必要はない。併し全然無給というのはこれは甚だひどいわけであります。この第四項に
言つておりますように、起訴されましたような場合と同様に食うだけのことはしていいのではないかというので、そういう際には百分の六十以内、これは以内ということを特に付けました。又六〇%やる必要がないものがあるかもわからない。
従つてそういうふうなやり方にいたしておるわけであります。即ち
只今御
説明申上げましたように、休職者の
給与というものを新らしく
勧告以外に附加えたわけであります。そのほかの点につきましては、大体
勧告通りでございまするが、ただ
勧告のときに比べまして明確にいたしました点と、それから
勧告のときになか
つた部分につきまして御
説明申上げたわけであります。