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1951-10-17 第12回国会 参議院 厚生委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十七日(水曜日)    午前十一時五十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員堂森芳夫君辞任につき、その 補欠として河崎ナツ君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅津 錦一君    理 事            長島 銀藏君            井上なつゑ君            有馬 英二君    委 員            大谷 瑩潤君            中山 壽彦君            河崎 ナツ君            藤原 道子君            山下 義信君            常岡 一郎君            藤森 眞治君            谷口弥三郎君            松原 一彦君   国務大臣    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君   政府委員    厚生事務次官    (引揚援護庁長    官事務取扱)  宮崎 太一君    引揚援護庁援護    局長      田邊 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国務大臣出席に関する件 ○小委員長報告証人喚問に関する件 ○社会保障制度に関する調査の件  (傷い元軍人援護に関する件)  (BCG有害無害に関する件)   —————————————
  2. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) これより厚生委員会を開きます。  本日の議題は傷い元軍人援護に関する対策について一件、なお結核対策小委員長報告がその後にございます。その前にちよつと申上げておきたいのですが、昨日厚生委員会を一時からここに開くことで皆さんのお集まりを頂いたわけですが、大臣の御都合が悪くして、遂に昨日の委員会は所期の目的を達することができなかつたことを皆さんと共に非常に遺憾に思つたのであります。昨日の委員会決議によりまして、直ちに成規の手続を済まして、本日の運営委員会議題になつたわけでありますが、幸い厚生大臣出席をされまして、昨日の出席不可能の理由をつぶさに説明されたのでありますが、運営委員会におきましては、不可能の理由の点は了承したのでありますが、事務当局委員部連絡並びに厚生大臣の所管である連絡員との連絡は十分になされたということが確認されたわけであります。併しながら委員部連絡厚生省連絡員との連絡上において食い違いがあつたのであります。それは大臣出席ができないというような意向を洩したことに対して、暫らく待つて下さいと、出席できますというようなことで我々は待つてつたのでありますが、委員部のほうにおいてはその通り出席できるものと考えておつたわけであります。大臣のほうの連絡員からは、出席できないのを出席できるように勘違いしたか、或いはそのように了解したか、いずれか存じませんけれども、そうした食い違いのために遂にできなかつたのであります。運営委員会はその間の事情を聴取いたしまして、大臣の今後における出席は努めて満足の行くようなふうにすると、岡崎官房長官もいろいろ政府としては忙しいけれども、最大の努力をして出席すると、出席できない場合においては、出席できない旨を明瞭にお伝えするから、政府の意のあるところを了承してもらいたい、こういうことにおいて運営委員会は了承したわけであります。厚生大臣はそういう意味において政府部内における幾つかの手落ちに対しまして遺憾の意を表されたのであります。そういうことにおきまして、委員会了解の上に散会いたしました。当委員会といたしましては、昨日すでに一時から二時十分に至る間の数回の連絡がことごとく大臣出席が可能であるという連絡の下に待つてつたのであります。なお午後におきまする正式な議長としての出席要求に対しましては、これは了解したが、併しながら午後一時から二時十分に至る一時間十分のこのことに対しては、当委員会におきましては、昨日の決議通り大臣に対しまして、以後かかることのないように十分に御勉強いたされたいということを、こういうことを申入れまして大臣の御答弁を頂きたいと、こう思うわけであります、簡単でよろしうございますから。知らない人があるのです、運営委員会に行つておりませんので……。
  3. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 昨日皆さんに大変御迷惑をかけましたことを心からお詑び申上げます。率直に申しまして私及び私の部下に手落ちがなかつたとは言えないのであります。お詑びを申上げます。先ほど運営委員会事情お話申上げましたが、なお簡単に事情を御説明申上げたいと思います。  当委員会が昨日の午後一時から開かれることにつきましては、一昨日何時頃でありましたか、通告を受けました。その際メモで社会保障の問題に関しましての調査というか、傷痍軍人援護問題について調べたいことがあるから来てくれというお話でありまして、私実は出るつもりでおりました。ただ衆議院の本会議が一時から開かれると困るなと思いましたが、その間何とか都合をつけようと実は思つてつたのであります。ところが昨日午前九時から閣議がありまして、私が別途行政管理庁長官として所管いたしております行政管理庁定員法の一部を改正する法律案が、閣議で若干の修正をしました上で一応了承されたのであります。で、これに関しましては私実は中間の連絡もいたしておつて極めて簡単に関係方面了解も得られると思つておりましたが、私の予想したよりも時日がかかりそうなんで、成るべく早くこれを了解を得る方法を講じなければならないのでその打合せ処理等を急速にする必要があつたわけであります。ところが参議院の本会議が開かれますので、定員法改正あとにかかりました重要な閣議案件につきましては、衆議院の本会議散会後直ちに閣議を開くということにいたしまして、私の仕事は昼の間に処理することにいたしたのであります。そこで参議院の本会議は一時前に散会しましたが、これはどうも都合が悪い、どうしても昼の間に処理しておかなければならない仕事があるので、私祕書の者に、私は今日はどうしても都合が悪い、昼の間に急速に打合せをしなければならない問題があるし、又衆議院の本会議につきましては、鈴木義男君、それから農民協同党代表質問者から私に対する質問要求が出ておりましたし、その後は閣議が開かれるからということで、厚生委員長のほうに今日はどうも都合が悪いのだがということをお伝えしてくれということを申しました。実はそれで御了解を得たものと自分としては思ひながら、閣僚室の奥の部屋で打合せをしておつたのであります。で、私奥におりましたので、祕書官が連絡に入つて来るのを遠慮しておつたと思いますが、衆議院会議が開かれる直前になりまして、私が出る仕度をしておりましたら、御了解を得られないでずつと待つておられて、非常にお怒りであるということを聞きましたので、困つたなと思いながら、振鈴が鳴りましたので本会議に出たような次第であります。その後の状況につきましては、三時四、五十分頃衆議院が済みまして、直ちに閣議が開かれて、実は議長を通じての正式の御要望を受けましたが、私どうしても外せない重要な閣議でございまして、官房長官と相談の上、今の閣議は外されると困るから、その御挨拶をするようにしようと言つて、その理由を申上げて、閣議は六時半までかかつたような次第であります。私昼の間にはもつと私としても事情を確かめもし、又昼の連絡につきましても、もつと間違いのない方法をとる余地があつたと思いますし、皆さんに申訳ないと実は思つております。傷痍軍人の問題について私かねがね自分としても心懸けて参つた事柄でありますだけに、殊にこうした問題で厚生委員会に御迷惑をかけ、参議院議院運営委員会にまで御迷惑をかけたことは、私としては誠に遺憾に存じております。さような事情でございましたので、今後次の通常国会行政機構の改革に関する各省設置法が出ましたり、又いよいよ傷痍軍人援護法が出ましたりした場合の仕事の差繰りに私自身として非常に心配な点がございまするが、それだけに余計時間ぐりなり、その連絡なりについては私といたしまして十分配慮いたして、こういうことのないようにいたしたいと考えております。   —————————————
  4. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それではここで結核予防に関する小委員長の御報告をお願いいたします。
  5. 藤森眞治

    藤森眞治君 結核予防に関する小委員会報告を申上げます。  本月の十五日と十六日の二日に亘りまして第一回に懇談会、次に小委員会を開きまして、結核予防に関する問題、特に最近問題になりまして新聞紙上に取上げられて、国民に多大の不安を抱かせておりまするBCGの問題に関連いたします事項についていろいろ協議いたしますと同時に、公衆衛生局長からその間の事情をいろいろ聞いたのでございます。小委員会におきましては、日本学術会議有志によつて厚生大臣宛に出されました「BCG強制接種に関する件」という、何と申しますか申入れがございます。この内容について検討しているのでございますが、この申入書の中の文意その他につきましては余り具体的なことがございませんし、又資料或いは研究成績等について的確なものがございません。併しこの意見書の発表によりまして、国民に非常な不安を起したのみならず、十四日の厚生大臣談として二、三の新聞学術会議学者からの意見書が出されたので、結核予防法の一部一時停止、即ちBCG予防接種を一時停止するやも知れぬ、又有害であれば法の一部改正を考慮するというような意味新聞記事が発表されました。これによつてますます国民の不安が増大して参りまして、現にいろいろの地方から問合せがあつたり、又聞きますところによりますと、BCGを送り返して来ておる所があるようにも承わりまして、非常にこの結核予防法の実施に大きな不安を投じたのでございます。これによりまして今後の結核予防法の上には非常な暗影が投げられたのじやないかというように感じられるのでございます。御承知通りにこの結核予防法は第十国会において通過いたしました。そうしてBCGに関しては先ず現在の段階においてはこれを行なつて差支えないという結論を得まして、本委員会においても慎重に審議した結果成立したものでございます。然るにこの学術会議有志のかたからの申入れに端を発して、そうして厚生大臣新聞紙上ではありまするが、国民に非常に大きな不安を与えるような言動をされたということにつきましては、我々は非常に遺憾の意を表さなければならんのでございます。我々はここで勿論我々の審議が誤つてつたというような考え方はございませんが、なお国民のこの不安並びに疑惑に報いるために、なお一層慎重にこの問題について研究しなければならないということに小委員会意見は一致いたしました。それにつきまして、これの関係各位、又一方にはこれを研究しておられる学者、こういう人たちを本委員会証人の形で呼んで頂いて、そうして具体的に各般のことを調査したい、こういうふうに小委員会決議いたしました次第でございます。  なおそれにつきまして、どういう人を来てもらつたらいいかということを研究いたしましたが、いろんな地理的な関係その他もございますので、次のようなかたがたがよかろうということに一応案を立てたのでございます。日本学術会議の会員いわゆる第七部会、その有志の中で、厚生大臣申入れをしておられますかたがたの中から、その七部会の部長でありまする塩田廣重氏、児玉桂三氏、大森憲太氏、寺田正中氏、内村祐之氏、阿部勝馬氏、比企能達氏、それから小池敬事氏、戸田忠雄氏、これを学術会議のほうから、それから専門家の中から、これは文部省の綜合研究課の中の結核予防、殊にBCGについて研究されておりまするかたがたの中から、海老名敏明氏、堂野前維摩郷氏、西野忠次郎氏、坂ロ康藏氏、河盛勇造氏、染谷四郎氏、柳澤謙氏、岡治道氏、なおそのほかに予防接種法制定当時の予防局長でありました濱野規矩雄氏、このかたがた合計十八名のかたを呼んで頂いて、日にちはできますなれば成るべく早くと存じまするが、いろいろ資料関係その他の点も考慮いたしまして、本月の二十四日と二十五日、この二日に証人としておいで願つて意見を聞くということを、小委員会では昨日決議いたしましたので、本委員会にこれを提案する次第でございます。この小委員会の提案に御賛成あらんことをお願いする次第でございます。
  6. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 以上御報告ありましたが、報告にかねて証人に対する了解が求められましたが、御異議ございませんか。
  7. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 御異議ないものと認めまして決定いたします。その他何か小委員長のほうへ御質問ございますか。ちよつとこのままで速記をとめて下さい。
  8. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記をお願いします。
  9. 藤森眞治

    藤森眞治君 只今申上げました証人喚問の予定を少し変更いたしまして、二十日に戸田氏と濱野氏と御召喚を願いたい。そうしてあとのほうの十四名は、先ほど申上げた通り、二十四日、五日、この両日に亘つて召喚してもらう、かように訂正いたします。
  10. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 以上の通りで御異議ございませんか。
  11. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それではそういたします。速記を中止して下さい。
  12. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それでは速記を始めて下さい。引続いて傷い元軍人援護に関する件を議題といたします。
  13. 山下義信

    山下義信君 傷痍元軍人援護に関して私は厚生大臣質疑をいたしたいと思うのであります。大臣にお願いをいたしておきますことは、どうか御誠意のある、御熱意のある御答弁を頂きたいと思うのであります。私は橋本厚相には期待をいたしておりまする一人でございまして、厚生大臣に対しましては世上とかくの批評を試みる者がありますが、併し私は久振りに気骨のある厚生大臣を迎えたような気持をいたしておりまして、大臣期待をいたしておる一人でございますが、且つ又大臣のお体の悪いそういう関係から身体傷害者に対して十二分の御理解のおあリになることもよく熟知いたしておりますので、私の質疑に対しまする大臣の御答弁には期待をいたしておるのでございます。  私は二つ伺いたいと思います。一つは、差当つて傷痍軍人人たちが、御承知のごとく、十三日の土曜日の夕景から数寄屋橋橋畔におきまして悲惨なるハンストをいたしておりまするこの現状に対しまして、大臣はどうお考えになるかということでございます。第二は、彼らが要求いたしておりまする十一カ条の事項、これはかねてから傷痍軍人に対しまする援護対策として問題になつておる諸点でございまするが、彼らに代りまして、私は伺いたいと思いまするので、それに対する大臣責任のある御答弁を得たい、かように考えるのでございます。厚生委員会遺族援護に関する小委員会は、十五日に小委員会を開きまして一応の審議は遂げたのでございまするが、誠意のある答弁を得たいと考えて、昨日からこの委員会を持ちましたわけでございます。関係者国会におきまする大臣の御答弁を我々同様に鶴首、期待をいたして待つておるわけでございまするが、そこで第一の、只今の現に行われておりまする彼らのこのハンストのことでございますが、これに対しまして厚生大臣はどうお考えになりまするか、且つ又如何なる対策考えおいでになりますかということでございます。多くを申上げませんが、およそ今日の国民の中におきまして、不幸、悲惨なる者彼ら傷痍軍人に如くものはないのでございます。長い間の療養生活、その苦痛、社会の激変、生活の途を失い、再起の万策が尽きたる彼ら、加えて世間の冷たい眼、今世間では街頭に立つ白衣の姿を見て傷々しいというよりはむしろにがにがしいとさえ思う者が少くない有様でございます。諸般の情勢の然らしむるとは言いながら、政府責任の重大なるものがあることは言うまでもございません。身体傷害者福祉法も彼らの窮状を救うに十分ではございません。ただ僅かに今後実現せんとする遺家族、傷病者等の強力なる援護対策に一縷の望みを繋ぎつつある現状でございます。国会政府と共に協力いたしまして、一日も早く彼らの援護に万全を期したいと思うものでありますが、併しながら今日彼らがハンストの挙に出ておるということにつきましては、涙なくしてこれを默過することはできないのでございます。およそ世間ハンストの例少くありません。併し両眼なき者、松葉杖を突いておりまする者、一団の白衣の人人がハンストをなすという、天下かくのごとき悲惨事が又とあるでありましようか。私どもは如何なる者がこれを煽動し、如何なる者がその背後にあるがごときことありといたしましても、彼ら傷痍軍人に対する施策の貧困について、世間もこれについて同情、同調いたす素地があること、国民感情の存することを無視することはできないと思うのでございます。彼らの中には国立療養施設に現に収容中の者もおります。身体障害者としても、傷痍軍人といたしましても、これが保護責任厚生大臣にあると考えるのでございます。今や寸時もこれを放置することはできません。従いまして私はこの問題につきまして、厚生大臣は一刻も速かに事態収拾のために御尽力相成るお考えがあるのかないのか。又如何なる方策によつて彼らのハンストを中止せしめるという親心をお持ちになるかどうかという点につきまして、先ず承わりたいと存ずるのでございます。
  14. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 山下委員只今お話一々誠に御尤もであります。で、私も傷痍軍人の問題に関しましては、前々から実は非常に心懸けて参りまして、古い話でございまするが、実は私が主計局で若手の事務官をいたしておりました時分に、当時の厚生省の堀田君が私の相手でありまして、今度の戦争に関してはもうどんなことがあつても昔の癈兵問題といつたようなものを起すまいということで二人で話合いまして、傷兵保護院を作るときの仕事を私実はいたしたのであります。その後こうした敗戦に至りまして、折角考えておつたことがすつかり駄目になつてしまつたことを今日まで非常にもう残念だと思つておるわけであります。そこで何とか早く傷痍軍人に対してできるだけの処置をいたしたいと思つて、幸いに今日大体のめどがつきつつあるという状態であります。そこで今回のハンストでありまするが、私実は傷痍軍人かたがたのお気持ちが実に尤もであると思いますると同時に、こういう事態になつてしまつたことは私は非常に残念に思つております。私たまたまいろいろ用務がありまして、月曜日の朝まで十分の連絡をとることができませんでしたが、一体厚生省に私なり或いは次官なり援護局長なりお訪ね頂いて、お話ができれば少くとももう今日の段階ではそこまでのことなしに行つたのじやないかと実は思いまして、調べましたところが、土曜日の午後でありましたために、いろいろな連絡ができず、十分な御答弁はできずに要求書だけを厚生省事務の下の者が頂戴したという状態であつたのであります。私は傷痍軍人援護問題についても、将来に対する目算が大体立ちましたし、むしろ具体措置を固めるべき時期でありまして、先般補正予算閣議決定の際に、今度の補正予算には調査費だけしか挙げてありませんが、それの趣旨を新聞にもその当時発表いたしましたので、相当の程度に御理解を願えたかと実は思つてつたのでありますが、なおこれが不十分であつたのは残念であります。成るべく早く、今日ハンストをやつておられるかたがたに、我々の意図と将来に対する見込というものを御理解願つて、これが御要求に対して十分に万全であるかどうかはこれは別問題として、これはまあ今日の現状として万全でなくてもこれは御辛抱願わなければなりませんが、本筋の点が御了解を願えれば、これは一つ安心してハンストをやめて将来を見ようという気持になつて頂けるものと実は思つておるのであります。私今日まででも、国会も開かれましたし、本会議においてもはつきり答弁をいたしておりまするので、こういうふうなものが伝わることによつて必ず或る程度満足を頂けると考えております。ハンストをやつておるのだから、この締めくくりについては、締めくくりを付けるにふさわしいだけの措置が要るかと思いまするが、これはもう根本的に膳立ができた上での企画の作り方の問題でありまするが、これはなお次官等とも相談して善処いたしたいと思つております。或いは国会のほうでも御意見がございまして、こういうふうにしたならばというお話がありましたらば、私も率直に承わりたいと思います。
  15. 山下義信

    山下義信君 私の伺つているところにまだお答えが足りないように思うのでありますが、私は厚生大臣は、今のハンストをすぐにやめさせるというお考えはないか、やめてもらいたいというお考えはないか。それについて又やめさせなければならない、普通のハンストとは違う、ただでさえ傷々しいあの人たちに、ああいうことを続けさせるということは、人道上どうもこれは見るに忍びません。でありますからすぐにそれに対しての手をお打ち願わなければなりません。日曜日はいろいろ御連絡ができなかつたか知れませんけれども、すでに月曜、火曜と正日が二日も続いております。大臣は何らか人を派しまして、直接に代表者に会うというような、この温いお気持でもお示しになりましたですか。日曜日は官庁が休みで大臣もお差支えで、下級の事務員しかいなかつたかわかりませんけれども、今日は大臣会つて、彼らの代表者から気持を聞き、あなたの気持も話して、一日も早くストをやめさせようというお考えがあればできないこともないはずであります。このストに対して、これを直ちにやめさせるということについて大臣は何かお考えはないかということを伺つておるのでありますが、その点を改めてお気持をお聞かせ願いたいと思います。
  16. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私はもう一刻も早くハンストをやめるように、やめさせるようにしたいと思つております。で、私も実は今回のハンストについて、何かやはり相互の連絡が不十分なような感じがいたすのであります。つまり私はもう今日考えておりますることは、傷痍軍人の問題については、引揚の問題についてはまあ実に不幸に八月の初めにはああいう騒ぎが起りましたけれども、先ず傷痍軍人遺族の問題については、今日まあ具体策はある程度期待して待つて頂ける事態になつた思つて、よもやこういうことが起るとは思いませんでしたので意外な感がいたしておるのであります。それだけに成るべく早く、とにかく具体策は進行しつつあるんだし、はつきりした決意もでき、なお占領下ではありますが、向う側にも了解を得ておることでありますので、これが徹底して一刻も早くやめることができるように実はいたしたいと考えております。
  17. 山下義信

    山下義信君 よくわかりました。一刻も早くハンストをやめることについて御努力下さるということであります。それでありますると、私どもはこの席で国会といたして政府お話をしておるのでありますが、彼らの代表者と正当な手続きによつてお会い下さつて、十二分にあなたのお心持をお話下さるというお考えがありますかどうか、この席で伺つておきたいと思います。
  18. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私傷痍軍人代表者にお目にかかつて、私の気持なり、現在の進行しつつある具体事情についてお話を申上げる機会がむしろあることを大変希望しております。
  19. 山下義信

    山下義信君 了承いたしました。次にこの彼らのやつておりまするハンストに対しまして、厚生当局はどういう心尽しをして下さつたか、どういう或いは手配をして下さつたか、例えば相模原療養所に入つております患者としますれば、相模原療養所国立であります。これを放任しておくことはできません。何かと心尽し下さつたことであると思いますが、その点承わつておきたいと存じます。
  20. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実はハンストにつきましては私、とにかくハンストが起つておりますが、この身体の危険があつてはいけませんので、日赤のほうへとにかく十分面倒見るようにということで、ハンストにつきましては御当人たちのお気持満足できんと終らんと思います。とにかく日赤で十分面倒を見るようにという手配をいたしておきました。
  21. 宮崎太一

    政府委員(宮崎太一君) 土曜日のハンストにつきましては、私のほうも知りませんで、日曜日の朝新聞によつてわかつたことでありますが、それから私といたしまして、大臣は御不在でございますので、社会局の所管でございますが、社会局長も鹿児島の方へ社会福祉の民生委員、児童委員の大会に行つておりましたので、厚生課のほうを呼び出しました。厚生課の職員に現場へ行つて事情をよく調べて来るようにということをいたしましたところ、厚生課の職員は日曜日出掛けまして晩までかかりましてストライキをやつておる人たちにお会いして、いろいろ話をいたしました。そして厚生省でもいろいろ考えておるのであるから、ハンストはやめてもらいたいという話をしたのでありますが、我々はどうしてもやめられないという話であつたそうであります。そこで今困つておられることはないかということを承わりまして、赤十字の方へ連絡をいたしましたところが、赤十字の方で進んでテントを貸しておる、或いは毛布を出すとか、或いは診療班を出すとかいうような点について、続けて赤十字が世話の御好意を払つておられるようであります。
  22. 山下義信

    山下義信君 私は大臣への質疑が十一カ条の要項を掲げておりますが、この事項につきまして大臣の御所見を伺いたいと思いますので、このハンストに対しまする措置等につきましての質疑は多くを重ねたくないと思いますが、重ねることを避けますが、御承知のごとく十四日の日曜日、十五日の月曜日にかけましては、台風の襲来の最中でございます。その中にありまして、あの雨露にたたかれながらでございます、この実情に対しまして、これに対する適切なる措置を講じますということは、私は厚生省責任であろうかと思うのであります。国会は、衆議院の諸君は委員長以下いろいろ御尽力に相成り、参議院の方でも多数の議員諸公が現揚に行かれていろいろな尽力をいたしたのであります。ひとり厚生省だけが首脳部の諸君が何らの手をお尽しに相成らんというがごときは、私は将来御考慮を願いたいと思う。ただあの数寄屋橋でやつておるハンストの十名内外の人、或いは東京都内の身体傷害者、元傷痍軍人人たちの問題ではありません。これが全国十数万の傷痍軍人、或いは元の在郷軍人等の問題へ波及して行くようになりますれば由々しき社会問題でございます。どうぞ十分御反省を願つて今後も、今日といえども直ちに御善処を願いたいと私は思うのであります。  次は要求条項でございますが、これは御承知であろうと思いますから、御覧にも相成つたろうと思いますから、全般を通じて伺いますが、この要求条項は私どもが見まして大体において無理からん問題であると思うのであります。これはやらなければならん問題がありますこの中に……。今日まではいろいろな事情でやれなかつたけれども、やろうと思えばやれる問題が大部分でございます。大体厚生大臣はこれらの、彼らの要求いたしておりまするこの十一項目に亘りまする問題につきましてどうお考えになりますか。お呑み下さるか。これを即時全面的にお呑み下さる肚があるか、或いは又速かに御実施下さるお考えがあるかどうかという点を先ず私承わりたいと思います。
  23. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) この要求書は拝見いたしました。これを即時全面的に必ず呑むかということは困難であります。内容につきましては、基本的な考え方は、これはもう問題のないところでありまして、傷痍軍人に対しては、遺族扶助料の復活と同じく傷痍軍人に対する援護を十分にするために是非措置を講じなければならないと実は考えております。そこでこの具体的なやり方についての検討を、これはいろいろな関連があつてよほど検討を要しまするしいたしまするので、昭和二十六年度の補正予算には、具体的な措置がきまり次第すぐ発動できるように、遺族及び傷痍者に関する主として権利者の調査でありますが、それをはつきり十分にしておきたいと思いまして、調査費を一億円計上いたしております。なお昨日閣議で決定をいたしまして、私が主体になつて関係者を寄せ、又要すれば民間のかたにもお出ましを願つて、今日ここに要求として出ておりまするような諸般の項目について、どの程度までどういうことをやるかという具体策を、大体これは黒川厚生大臣の時代に政府としても外には出さないけれども、やる決意をして一案を三月に閣議に諮つてつたのであります。それがありますが、それを基にしてずつとなお検討をいたし、大体昭和二十七年度の本予算が来月から再来月にかけてきまりまするので、それにはつきり金額を確定して計上し得るように、基礎作業を完了いたしたいと思つております。繰返して申しますが、基本的な問題、つまり傷痍者の恩給を復活するというラインにおいて、ただ昔のままの姿ではなくて、これを合理化した援護法の形にすると、そうして相当の程度生活も保障し、又国としての傷痍軍人に対する労り、謝意というものも表明し得るような措置を講ずるという基本の方針ははつきり確定をいたしておるのであります。具体的な十一までの項目につきましては、なお内容を検討させて頂きたいと思います。
  24. 山下義信

    山下義信君 大分御誠意のある御答弁を得まして了承いたしました。実は大臣只今黒川前厚相時代から研究しているのだということをおつしやいまして、私はそのことも御承知ないことと存じておりましたが、大変御勉強下さいまして有難うございました。実はこの十一項目の問題は、これは御承知のごとく今日の問題ではないのでありまして、すでに国会におきましても、三月の十六日に同僚片岡議員からいたしまして文書を以て内閣に質問書が出ております。それに対しまして、同月、三月の十八日に政府から書面で以て詳細なる答弁がありました。いずれも研究いたす、いずれも考えて見るという御答弁であります。すでに今日まで七カ月以上経過しております。これをどうか一ついつまでも放擲いたさないで、直ちにこの具体的な問題につきましても御善処願いたい。基本的な問題としては、只今厚生大臣の御答弁で私は力強く思つております。元の恩給の程度まで復活するのだ、その基本線は私どもも賛成、又その御決意は多といたします。当面措置を要しまするような問題は、すでに三月に政府考えて見るとおつしやつたのですから、七カ月もたつた今日におきましては肚をきめて頂かなければなりません。そこで基本的な問題は今の線で出ましたから、多くございますが、あなたの肚を私は聞いて置きたいと思いますのは、この十一項目を分けて見ますると、傷痍恩給の問題、まあいろいろありますが、極く大雑把に分けますと、傷痍恩給の問題と家族扶助料の問題と、国立病院並びに療養所における処遇の問題と生活保護法等との関係の問題、大体それらの問題に分れると思う。で、恩給関係の基本的なことはこれからおやり下さつてよろしゆうございますが、併しながら当面措置を要しまするような、何と申しますか、小さい技術的な問題は、もう解決をして下さつてもいい頃じやないかと思う。そこで基本的な問題につきましても、私は大臣にこの席で伺いたいと思うのですが、お肚はきまつていると思いますから、この技術的な点はお答え下さらんでもよろしいのでありますが、傷痍恩給の問題につきましては相当増額をして頂けますかどうか、これが第一点であります。それから恩給を、現在の恩給の程度まで復活して下さるというお考えでありますが、階級別の撤廃をなさるか。ああいう昔の階級別によらないで、生活保障の考えでの階級別の撤廃をして下さるかどうか、又一般軍属というものにもこの傷痍恩給を及ぼして下さるかどうか、先ずこの三点につきまして大臣のお肚を聞きたいと存じます。
  25. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 大体の肚は、恩給を目指して行きたいと思つております。そこでその場合に階級別はもう私は撤廃する方針であります。内部的にもいろいろな意見がありましたが、大体そういう方向に行くと実は考えております。それから軍属の問題についても、同じように扱いたいと思つております。
  26. 山下義信

    山下義信君 大変嬉しい答弁を頂きまして感謝いたします。私どももその線を考えておりますが、是非御成功を祈りたいと存じます。  次は家族扶助料の問題でございますが、これは是非やつて頂いていいことです。二等症以上の重傷者、この身体の不自由な重傷者の妻に対しましては扶助料が出ております。ところがそれは終戦前に妻帯した妻でなけらねば扶助料が出ておりません。これは実情に副いません。病気や怪我をなさつて若干でも正常の状態になつて、それから介添役の妻を持つ、当然のことでございます。そのあとから持ちました、介添役になつてくれた妻に今扶助料がないというのは、私は不合理と思います。これは即刻実施ができると思いますが、お考えは如何でございましよう。
  27. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) 現在傷痍軍人に対しましては恩給法特例によつて定額の恩給が支給されております。その中に家族に関する扶養手当の規定があるわけであります。その規定によりますると、扶養手当を受け得る家族の範囲が現在の妻子にはございませんで、怪我をした当時の妻子ということに相成つていると思います。これはまあ今日恩給局の所管として実施されておりまする恩給法の特例による現在の取扱でございます。なお将来の問題といたしましては、目下いろいろ意見がございまするが、只今山下委員からの御希望もあり、又傷痍軍人からの希望もございますので、十分この点を考慮して研究を進めて行きたいと、かように思つております。
  28. 山下義信

    山下義信君 次は大臣にお聞きしたいのでございますが、国立病院並びに療養所にいて療養中の元傷痍軍人等の患者に対しまして、まあ何と申しますか、ベットの回転を急ぐという、これは一面には理由があると思いますが、もう治つたから出て行け、出て行け、もうお前には恩給があるのだから当然医療費は支払え、支払えと言つて請求書を突き付ける、つまり強制退院のような態度に出る。或いは悲惨な彼らに対しまして、医療費の支払を厳しく請求するというがごとき事態に対しましては、どうか実情を御調査を下さいまして、苛酷の処置のないように、然るべく御命令が出して頂けますかどうか、この点伺いたいと思います。
  29. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御説の通り調査いたしまして、できるだけ善処したいと思います。
  30. 山下義信

    山下義信君 次はいろいろな要求がございますが、まとめますというと、生活保護法等の、つまり福祉関係の問題が多々あると思うのであります。生活保護法との関係におきまして、この傷病恩給等の併給の問題でありますとか、或いは傷痍軍人生活困窮の家庭には、生活保護法の運用について余り厳しい扱い方をしないように、できるだけ弾力のある大幅な適用をしてもらいたいとか、或いは住宅等の問題につきましてもできるだけ公営住宅等につきましては、十分優先的な利用の方法を講じてもらいたいとか、更生資金の貸与についてもできるだけ十分なる取扱を願いたいとかいうような諸点がございまするが、これらは私どもは当然な要求でありまして、而も即刻実施を要するような問題であると思います。例えば公営住宅の優先的貸与ということを彼らが要求条項の一つに挙げておりまするが、この問題につきましては、政府は三月十八日の答弁書におきまして、よし、やろう、昭和二十六年度の予算には公営住宅……いろいろそういう考え方で予算を組んでいるから十分希望に副うように努めようという答弁もあるのであります。全面的に、優先的に云々というようなことも数少ない公営住宅計画では不可能かも存じませんけれども、将来彼らのために住宅問題の解決ということは当然であろうと存ずるのであります。これらの点につきまして、大臣は十分お考え下される肚がありますかどうかという点を、承わつておきたいと思うのであります。
  31. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 総体的な問題についてはできるだけ善処をいたしたいと思つております。そして公営住宅の問題についてはもう御尤も千万だと思います。私もそういたしたいと思います。建設大臣の所管関係仕事でありまして、私のほうが協議を受けることになつているようでありますが、私、実は七月に就任いたしましてから、この問題について余り私自身も気付きませんでしたし、話を受けませんでした。早速調べて見たいと思つております。
  32. 山下義信

    山下義信君 私は、最後に彼らの要求条項の中の身体障害者の雇用の問題でありますが、これは厚生省もいろいろこれまで準備的に、この提案につきましては尽力されておりますが、まだ十分でございませんので、お互いに努力を要するわけでございますが、これを労働省だけに任しておくというようなことでなくいたしまして、遺家族の援護、傷病者の援護という今後の対策の上には、どうしても就職斡旋の問題というものが大きく取上げられて来なければならんと考えるのでございます。先進国におきまして、強制雇用をいたしておりますことは、大臣承知通りでございます。直ちにその通りのことが、我が国に行われるかどうかは別といたしまして、この身体障害者の雇用の問題につきましても、十分統一いたしたい。厚生省、労働省の間にばらばらにならないような統一した政策をお取り願わなければならんのでございますが、殊に特別立法などを、遺家族援護の立法などをお考えでございますから、その中にお取入れになりますことは、極めて適当ではないかと考えるのでございまするが、これらの身体障害者の雇用の問題につきまして、将来御尽力下さいまするお考えがありますかどうか、承わつておきたいと思います。
  33. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) この問題、私実はこの機会に初めて御報告申上げるのでありますが、実は身体障害者の強制雇用法を私は作りたいと思いまして、厚生省内でも研究いたしましたし、約二カ月ほど前に私閣議にも話を出したことがあるのであります。結論だけを申上げますると、いろいろこれには問題のあることでありまして、何でもフランスが比較的よく行つておるという話でありますが、ドイツはやつて見たけれども、工合が悪くてやめたという話も聞いておりますし、閣議で一応話をした結論は、とにかく非常に大掛りで、民間機関に対して強制雇用を命ずる法律を作る前に、政府自身が第一に官庁公務員、それから地方団体に地方公務員があり、それからいろいろの公社があり、鉄道でいえば弘済会のような外郭団体があり、何か政府部内において政府関係職員に身体障害者を何とか取入れるといつたような、法律を作らないでできる措置を、先ず第一に考えて見ようじやないかという大体結論になりまして、私に任されておる恰好であります。省内でいろいろ検討をいたしておるのでありまするが、これもただ看板を挙げて実効が挙らないというのでは、誠に申訳ないし、残念だと思います。実効果の挙る方法考えて行きますと、まあ一面行政整理をやつておるような段階でもありまするし、いろいろな方面で問題があるわけであります。殊に障害者と申しましても、手のない人、足のない人、或いは胸の弱い人とか、或いは眼の悪い人とか、いろいろな方面で問題がありますが、社会局長を主管にして研究を命じております。
  34. 山下義信

    山下義信君 私は最後の身体障害者の就職の問題は、大臣の御指摘の通り非常に重大と思います。松本更生課長も先般アメリカに行つて見て来たと思うのでありますが、非常にアメリカあたりでも努力しております。フラスンのことも若干承わつておるのでありまするが、是非私は我が国におきましても組織的にしつかりしたものをお考え願いたい。国営工場の考え方と申しますか、或いは半官半民の一つのそういつたようなものを作りますか、大臣のお考えのように先ず政府機関の諸部面に、いろいろそういうふうな採用の方法を講じて御覧になりまして、漸次民間模範工場等の御奨励、或いはそれに対する御施策もあろうと存ずるのであります。是非これは御促進を願いたいと期待を申上げておくのでございます。  以上で、私が伺いたいと思いますハンストにつきましての大臣のお肚、又彼らの要求いたしておりまする十一項目につきましての大体の大臣のお考えは承わつたのであります。私は了承いたしました。相当誠意をお持ちであります。且つ又この十一カ条の要求条項につきましては、かなりはつきりした考えも持つておいでになりまして、又お話合いによりましては即時できるものもあるようであります。将来実現のできる見込みも十分あると本員は承わつたのであります。必ず彼らは当局と会見いたしまして、なお、つぶさにお考えを承わるならば、本問題は相当円満な解決に向くのではないかと期待を持つものでございます。本員は、本席以外におきましても若干の努力をいたしたい、又その間の斡旋もいたしたいと存ずるのでございますが、先ほど大臣がおつしやいましたように、民主的に彼らの代表者と機会がありましたならば、打解けて只今の我々にお答え下さいましたそのお心持を十分にお話下さいまして、かのハンストが一刻も速かに終了するよう御尽力下さらんことを重ねてお願い申上げまして、本員の質疑を打切る次第でございます。
  35. 松原一彦

    ○松原一彦君 傷痍軍人の悲惨な姿は、今日まで国民感情として見るに堪えなかつたのでありますが、今日の大臣の御言明で以て非常に意を強うするものがあります。遅れたりといえどもでき得る限りお急ぎを願いたいのでありますが、私に一つの不安がある。それは今日まで国民感情としては、ああしておいてはならないということに一致いたしておるのであります。それは今日までできなかつたのは、一にかかつて関係国の政策によつて、その方針が旧軍人には一切の栄典を与えてはならないという手厳しい圧力があつた。それが障害となつて政府も口を緘して語らず、国民もどうにも手が付けられないということであつたのであります。今や、講和は成立しようとしておる、批准もすでに行われようとしておるのでありますが、その以前において、これが明るく論議せられるようになりましたことは非常に仕合せでありますが、それにしましても傷痍軍人の恩給の復活というような意味においての、今後のお取扱或いはその他の栄典的なお取扱につきまして当局との、占領軍当局との間に果してどこまで御了解ができておるのでありましようか。それは私は一抹の不安を持つ。若し批准が延びればこれは行われないのであるかどうか、批准が延びてもすでに政府は予算に計上して調査を始めておるのでありますからして、断行し得るだけの御用意があるのであるかどうか、この点について所見をお伺いいたしたい。
  36. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) お答え申上げます。断行できると確信をいたしております。と申しまするのは、実は進駐軍の当局で今日もなお日本の行政面について一番監督と申しまするよりも、強い関心を持つておりますのはむしろ財政関係の面であります。これは当然の話でありまするが、むしろ丁度イギリスがマーシヤル・プランを受けた場合に、その援護を受けた関係からいつて連絡のために、アメリカの駐在官がおりますのと同じような意味で、日本も借款その他の問題等にからみまして、向う側も金を借りたいというなら、金の使い途を、どうしているかということを見たいというのは、これは当然の話だと思いますので、今日もなお財政面については向うがいろんな言い分を強く言つておる部面であります。それで従いまして今度の二十六年度の補正予算に遺族傷痍軍人調査費を挙げますときに当りましても、先行きどうするのだということをはつきり申さなければ、これは到底通らなかつたのであります。ここで大蔵大臣に折衝経緯を聞きましたが、はつきり話をして、そうして向う側もそれを了解して、もうこうなつたらむしろこれはまあ……。
  37. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記をとめて。
  38. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記を始めて。
  39. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) そういつたような経緯から見まして、これから大体一両月の間に具体的な法律案及び予算案を確定いたしまして、それはやはり向うの承認を得なければなりませんが、これは必ず承認が得られまするし、批准の如何にかかわらず、きまり次第国会の御審議を願い得るものと確信をいたしております。
  40. 松原一彦

    ○松原一彦君 今の御意見を承わつて非常に意を強ういたします。実は人道を重んずる自由主義諸国の間において、この公務によつて、個人の恣意でなく戦争に立つた人々のそのあと始末をつけないという法は、たとえ敗戦国としてもあり得ないことであります。それが今日まで荏苒延びに延びて我々を泣かし、全国民がこれを見るに忍びないものとして参りました苦しさ、それが、すでにその障害が取除かれて、むしろ鞭撻が加わつたということになりますというと、これは一日も緩がせにできない問題でありまして、かねて御調査があつて置かねばならなかつたのであります。そういう調査が今になつてぼそぼそと行われるようなことは非常に時期を逸しておるのであります。併し今更言つても還りませんからして、どうか一日もお急ぎになりまして、できる限り速かに、この不幸なる公務によつて障害を受けた人々の将来を全うするようにお取計らい頂きたい。一方においては国家公務員の障害保障の法もできておる、新らしい恩給法も制定せられようとしておる、その物差に比べまして余りにも一方的にアンバランスがあり過ぎるのであります。悲惨なるアンバランスであります。これはここに一つのロが空きます。一番急ぐのは傷痍軍人でありますから、この傷痍軍人の恩給というものは普通の公務員の恩給とは私は違うと思う。階級を取除く、又最終の俸給を基準にせずして、一つの単行法による定額制によつてもよろしいし、或いは当然病傷の重軽に応じてそこに差が生じなければならんこともあります。そうなければなりませんけれども、これは別個の意味において単なる生活の保障じやないと私は考えて頂きたい。生活保護ということから拘泥しまするというと、貧乏人にはやるけれどもが、金持にはやらんでもよろしいということになるのであります。そこに今傷痍者その他の遺族等が非常な不安を持つておる。これは恩給である以上は、本人の生活が不自由であるとか、不足であるとかということは関係はないのであります。その本人が障害を受けた身についたところの一つの栄典である、こう考えてよろしいのであります。この点につきましてははつきりとこれを明らかにしてお考えを頂きたい。只今厚生大臣お話の中には私はその意味が十二分に含まれておると思うのであります。同時に関連事項としましては、ここに一つの端を発すれば当然遺族の扶助が問題となつて来る。これは延いて遺族の援護ということにすでに御用意があると思いますことは一億円の調査費によつても明らかでありますから、私は同様にこれが急いで行わるるものと了解いたしますが、よろしうございますか。
  41. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) そう御了解つて結構だと思います。
  42. 藤森眞治

    藤森眞治君 私は今日大臣おいでになつたこの機会に、結核予防法に関するBCGについて……。
  43. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 まだこの問題について伺いたいのでございますが。
  44. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 先に解決したいと思います。藤原さんが先でしたから。
  45. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はすでに山下委員、松原委員から御質疑がございましたので、大体それで意は尽されておるとは存じますが、なお私から一言御質疑を申上げて、大臣にお願いしたい点もあるのでございます。それはこの悲痛なる叫びの一つとして、強制退院絶対反対、退所命令ですね、病院からのこれがあるのでございます。これは誠に尤もの点が多々ございますので、以前には、義手や義足を付けた場合には、訓練期間というものが病院にちやんとあつた。義手義足を付けて、社会人として復帰するまでの期間がある。ところがそれが今日ではございません。或いは結核が快癒したとはいつても、社会人としては十分働き得ない状態のままに放り出されておるというところに随分問題があると存じますので、この点をどうかお考えになつて頂きたいことが一つと、それに又関連いたしまして、住宅問題が大きくここに取上げられると思うのでございます。で、公営住宅というものが今度できたのでございますけれども、これは僅かに本年度におきましては五千戸なんです。全国で五千戸、而もこれが傷痍軍人に全部充てたといたしましても、微々たるものでございますので、これにはあらゆる人々が予定されておりますので、どうか大臣は、不要不急な建築物がどんどんできておりながら、傷痍軍人にしても、或いは又母子家族にいたしましても、生活困窮者にいたしましても、住宅がない、そうしてまだ防空壕にさえ住んでおる人もまだある。こういう点も是非ともお考えになつて頂きまして、不要不急な建築物は一切ストップしても、是非とも社会不安の根源をなしておる、犯罪の根源をなしておるとさえ言われますところの住宅問題の解決をお急ぎになつて頂きますと同時に、お気の毒な傷痍軍人に優先的にこの住宅の保障がなされるようにお考えを願いたいということと、それから今一つ、私ここに心からお願い申上げたいことは、それは、恩給法によつてはさような規定はないと言われれば言われるが、この前も田邊さんからお話がございましたけれども、すべて新らしく日本は出発しようといたしておるのであります。従いまして、この際殊にこの要求書に記載されておりますのは、非常な重症者に限つてここに要求が提出されておりますところの、怪我をした当時を基準にするということは、私は何としても不合理だと存じます。年若くして不具になられた人たち、そうして、その傷が癒えたときには、もう社会へ出ようとしても、やはりその手引となり、足引となる人がいなければやつて行けないことはわかりきつたことでございますので、どうかこれらの人人が、或いは妻帯者ならその妻君に、子供が生まれましたならばその子供に、是非とも温かい思い遣りを持つて、一つ扶助料の規定をお考えになつて頂きたいことを私は心からお願い申上げてやまないのでございます。どうか古い規則に囚われることなく、階級別を撤廃して欲しい。同時に、今私からお願い申上げた点は、私は決して無理な註文ではないと存じますので、この点を十分御考慮頂きたいということを、私は心から大臣に訴えてやまないものでございますが、大臣は果してこれに対して本当に誠意を以てお尽し頂けるでございましようかということを一つ伺いたい。  それからいま一つは、先ほど山下委員からできるだけ早い機会にというお言葉でございましたが、直ちに私は今ハンストをやつておられる人々の代表者と御面会下さいまして、大臣気持も話し、又あの人たち気持もどうか温かい気持で聞いてやつて欲しい、その点について一つ。
  46. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御趣旨について、十分に努力をいたすつもりでございます。なおハンストをやつておられるかたにつきましては、この前夏の抑留者家族のかたにも代表のかたにおいでを願つて、じつくりお話をいたしましたけれどもハンストをやつておるかたもお疲れでございましようし、むしろこれは代表的な意味でやつておられると思いますので、何と言いますか、もうやめてもいいのだということを、団体の内部に伝え得るような立場にある代表者のかたがおられれば、私も国会中で院内を離れることはなかなか辛ろうございますから、お手引があればいつでも成るべく早くお目にかかりたいと思つております。
  47. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 先ほどから議員の皆様からいろいろ御質問がございまして、厚生大臣から大変有難い御答弁を頂いておりますから、私から申上げることもございませんけれども、こういうような施策をなさるためには、先ず厚生大臣お始めになるには、御覧になつたと思いますが、箱根の療養所におります脊髄損傷の患者を見て頂きたいと思います。今日ハンストに出たくても脊髄損傷の患者でございますから。あすこは九十何名でございますが、全国に散らばつて、本当に悲惨な家庭を持つておられる者が多々ございます。軍属でありました者が、一時金千円をもらつてあとの待遇が悪いために褥瘡ができて、それが本当の重なつた併発症となつて、本当に家族の者に迷惑をかけ、苦しんでおる者が多々あることをお考え願いまして、こうした施策を頂きますならば、そうしたことを御覧になつて頂いて早急に始めて頂きたい。このことをお願い申上げて置きます。  もう一つ念を押したいことは、只今答弁の一番初めに、ハンストをやつておる者に赤十字からこれを看護させておるというお話でございましたが、この赤十字の看護婦の待遇については、御存じかも知れませんが、若しお知りでないと困りますので、念を押して置きたいと思います。赤十字の看護婦、医師、薬剤師は、戦争中は軍のお手伝いをいたしましたが、軍属というような待遇でお手伝いをいたしましたのでございますが、一旦戦争が終りますと、あれは軍属でない、ああいうような団体は幾つもあつたのだ、それだからああいう人のための補償金はないというようなことで、非常に困つたのでございます。いろいろと厚生当局にも研究して頂きました結果、未復員者給与法によりまして、特別の計らいで助けられておるのでございますが、この際赤十字のああした人たちを軍属の中にお入れになる御意思がおありになるかどうか、明確な御答弁が頂きたいと思います。
  48. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実は軍属の問題に関しましては、この頃援護法を具体的にやつております間にも、いろいろな問題がありまして、徴用工員の問題でありますとか、いろいろありますので、少し研究をさして頂きたいと思つております。
  49. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 只今厚生大臣から研究をさして頂きたいという御答弁を頂きましたのでございますが、過去何年間もこの問題は研究されておると存ずるのでございます。いろいろな点で研究をされておるのでございますから、御承知でもございましようが、未復員者は只今三百数十名もまだ未復員の者がございます。只今遺家族の者に対しましての手当も本年からやつと未復員者給与法の一部を適用さして頂くようになつたばかりでございます。非常に問題は小さい問題のようではございますが、非常に大きな問題となるのでございますので、即刻御研究を頂きまして、よい施策を願いとうございます。
  50. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 承知いたしました。
  51. 河崎ナツ

    河崎ナツ君 大臣に一言私の見て参りましたことで御参考に申上げまして、私の感じましたことを是非御実行願いたいと思うものでございます。先ほど来山下委員から縷々申上げました最後のところに、この十一カ条の中には取上げられておりません事柄で、傷痍軍人かたがたの就職の斡旋につきましての問題は、大臣のお言葉にも研究して、先ず政府関係のほうでそういうことをやつてみたいというお言葉でございましたが、そのことにつきまして、私はこの間、少しほかを旅行して参りましたときに、フランスだの、イギリスなんかで、それが実に十分に取上げられておりまして、そして私は、安心してそういうかたがた仕事に就き、先ず公の、国家経営の官庁及びいろいろな博物館とか、そういう所ばかりでなしに、又次に私の工場にも何割、何%というようなことになつておりましたが、そのことは今日申しませんで、そのかたがたがそれぞれ自分の何に応じて、一方には生活の安定が保障されておりますけれども、一方には又人間の生きている一つの現実の生活といたしましてそれぞれの職場で自分の体力を以ちまして、社会人としての一つの役に立つているという、そういう明るい生活をしていることを見まして、飜つて日本の様子を見まして、実は暗然たらざるを得なかつたわけでありまして、これはどうか本当に力を入れて御実行を速かにお願いいたしたいと思うのでございます。  それからもう一つ、住宅の問題につきましては、これは傷痍軍人のかたばかりでなしに、今日勤労者、庶民の生活の一番最後の、而も安定せしむる一つの施策といたしまして、住宅の問題を今各国が力を入れて取上げておつたようでございますが、私はそれを見せて頂きまして、各勤労者の家庭の中におきまして、この傷痍軍人かたがたが又安定して、そういう住宅で明るい生活をしておいでになりました姿を、至る所で見たのでございますが、勤労者の、殊に傷痍軍人かたがた及び遺家族のかたがた、私どもは又子供を抱えた未亡人の、今日の生活におきまして非常に困窮の状態におきましての一つの問題といたしまして、住宅におきまして特に困窮いたしておりますことを日本で見ております者といたしまして、先ほども藤原委員からお話ございましたが、ほかの国々ではそういう問題につきまして至る所で私は見ました中に、傷痍軍人かたがたの安定した住宅においての保障がございましたことをも、ここに附け加えさして頂きまして、その問題につきましては、藤原委員からもお話ございましたが、強くお取上げ下さいますことをお願い申上げたいと思うものでございます。
  52. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 承知いたしました。
  53. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 大臣は一時半という最初のお約束がございまして、すでにその時間に丁度なりましたので、この程度大臣に対する質問を打切りたいと思いますが、御異議ございませんか。
  54. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 連関事項ですか、傷痍軍人に関する件ですか。
  55. 松原一彦

    ○松原一彦君 一言約束だけしておいて下さい。
  56. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 傷痍軍人の点ですか、それ以外の点ですか。
  57. 藤森眞治

    藤森眞治君 ちよつと速記をとめて下さい。
  58. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記をとめて。
  59. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 速記を始めて下さい。
  60. 藤森眞治

    藤森眞治君 社会保障制度の勧告が昨年出ましてから、この社会保障制度についての進行は非常に遅々としておりますが、併しながらその間で結核対策ということだけが勧告の線に副つて比較的よく進んでおるということで、私どもは陰ながら喜んでおるわけであります。而も今年になりましてから、結核の死亡率が減つたという明るいことも出ておりますが、たまたま先般学術会議有志の諸君から厚生大臣BCG予防接種に対する申入れがありましたそうであります。それ以来かなりいろいろな予防接種に対する不安がありましたところが、たまたま先般の新聞紙上厚生大臣予防接種に対する御意見の発表がございました。非常な今混乱をしております地方においては、聞きますところによりますと、BCGを返して来るところがあるとか、或いはどう処置していいかということで、地方から伺いに来るということがあるように聞いておりまして、むしろこれは厚生大臣のほうがよく御承知と思いますが、折角法律を作つて現在これを施行しつつあるときに、厚生大臣がこういうふうな御発言をされたということが、予防接種の上に又結核の予防の上に非常に暗い影を投げたような感じがいたしましたので、どういう御心境でこういう御発表をされましたかということを伺いたいのと、現在この法律は実施されておりますので、そこに万一学者申入れがあるといたしましても、この予防接種法を続行しておいでになるつもりであるか、或いはここで中止をされるか、この二点を……。
  61. 松原一彦

    ○松原一彦君 これは重大問題だ、一つしつかり……。
  62. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 只今の問題について答弁をいたします。私もこれは極めて重大な問題だと思つております。実はこのBCGの問題に関しましては、新聞紙上等にもときどきBCGの接種によつて結核が誘発されたのじやないかというような虞れ等も、この春以来ぽつぽつありまして、いろいろ心配されておるような向もあつたようであります。先般、日本学術会議有志の先生がたから、私に対して十月の四日附で書面を頂戴をいたしました。文面ははつきり覚えておりませんが、要するに結核予防法は実施をされておるけれども、これについてはなおいろいろ疑惑もあるし、疑点もあるし、なお研究を要すると思うので、厚生大臣においては慎重に善処せられたいといつたような意味の文句でありました。それには塩田先生であるとか、或いは東大の児玉医学部長、慶応の阿部医学部長、日本大学の医学部長、京大の医学部長といつたようなかたがた十数名の御署名があつたのでありますが、私もこれは極めて重大なことと考えまして、とにかく書面の趣旨を伺わなければいかんということで連絡をとりました。塩田さんの旅行等がありまして、遅くなつて、十二日の金曜日の夕方お目にかかることを得たのであります。そこでいろいろお話を伺いましたが、要するにかい摘まんでの結論というのは、こういうことでありました。要するにBCGの強制接種という法律ができたんだが、併しこれはなお研究の余地があると思う。その研究の余地ということは、一つには大体有益であるにしても、本当に全く無害であるかどうか、つまり有害な場合があり得るように思われるということが一点でございます。それからもう一つは有効であるか、それほど有効でないかということについても、なお疑念があると思うという趣旨でありました。いずれにいたしましてもとにかく研究を要する、なお研究を要するという段階において、法的強制をやるということは問題であると思うから、一応法的な強制を中止したらどうだろうという趣旨で、その間に学術的検討を重ねるという趣旨だというお話であります。そこで私はこう申しておきました。これについてはとにかく余ほど研究をしなければならないと思いますが、いずれにしても我我は現行の、できておる法律に対して執行の責任がある。勿論現行法律につきましても、法律の文面は、検診をやつて陰性のときにはしなければならないと書いてあつて、それに罰則を強行しないという点に、又強制のような、任意のような形で運用にもいろいろな味はあると思いますが、今日ではとにかく皆やらなければいかんという建前で実施いたしております。そういう法律の執行の責任がある。従つて我々としてはつまり、その有害な場合が本当に一つもないかどうかというふうな面の学術的結論が出るということよりも、むしろ当面とにかく完全に無害であるかどうかについて、なお研究を要するということだけで、我々としてはやはり法的強制というものを考えなければならんと思うので、学術的な最後の結論が出るよりも、むしろなお研究を要する段階にあるということ自身が、非常に大きな問題だということを、私は執行の責任者として良心的に感じます。従つて学術会議においてなお研究を要するのだという意見を出されたということは、私は極めて重大だと思う。併し十二日におられた諸先生が言われる通り、なお研究を要するということであるならば、やはり法的強制を一時ストツプしたらどうだろうという結論に、私は当然なると思います。そのこと自身が非常に重要だ、なお研究を要するとの結論を出されたことの根拠は、その日は五時頃からお目にかかつたので遅くなつたが、今日は遅くなつたけれども、例えば国内における諸般の実質的なことであるとか、或いは学術論文であるとか、或いは外国の学者の論文であるとか、或いは又、外国における取扱、法制についてのつまり考え方といつたようなものだとか、そういうふうなものが、諸般のやはり研究を要するのじやないかという判断の基になつております。そういうものを頂戴をしたいということの要求をいたしておきました。そうしましたら、いずれそういうものは整えて出すという話でありました。そこでとにかくほかの問題と違いまして、人の生命なり、健康なりに影響のある問題は、これは疑問が出るということだけで、私は大変な問題だと実は思つておりまするし、良心的に考えることが、自分が執行の責任者として、万一にも私の在任中にあの結核予防法を行う責任者として執行をして、それによつてBCGの害を誘発するというようなことがあつたら何と不幸なことだろう、事実そういうなお研究調査を要するならば、私は非常な不安な感じがすると考えております。恐らくはどなたが責任者になられても私は同じ考え方だと思います。それでとにかく現政府の提案した法律でもありますし、私は極めて重大であると思いまするので、私ほかにも用事がありまして総理から呼ばれて箱根に参りました際に、これは極めて重大な問題だと思うが、こうこうという申入れを受けておる。私はとにかくなお研究を要するという段階であるとすれば、研究の結果がどうなるかを待つよりも……、私はなおやつぱり研究調査を要することが万一にも有害な場合があり得るかも知れないが、それを執行しておるのは非常に問題だと思う。その意味ストップしたらどうかという意見を受けた。併し政府としても極めて責任のある問題である、これはもつともつと私の手許で検討してみなければならんけれども、あらかじめその肚を決定しておきたいという打合せをいたしました結果、その結果、総理は現内閣が出したものである、とにかく終戦以来今までだんだんに国内も落着いて来ておるので、今日いろいろな面で終戦以来出した法制を検討して参る段階にもあるのだし、検討することについて司令部の了承も得ておるのだから、又学問的に疑念が出ておるならば、我々としてもその疑点を完全に晴らすまでの間、一時やめるという結論になつてもそれは止むを得ん。いずれにしても重大な問題であるから、どういう結論が出るかということについては、主管大臣として十分検討してくれ、こういう話だつた。私は実はこういう問題というものは、手を染めるからには、出て来る結論において或る程度肚をきめておかなければならない、出した法律について打合せをいたしたわけであります。私自身今日なお検討を事務当局にも学術会議からの資料をもらうように、事務当局で与えられた資料でできるだけ検討をし、なお国内的に、文句が出ておる投書等もあるようだし、そういうものは検討しておけというふうに話をしておる段階でございます。
  63. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 時間が大分過ぎましたから一つ……。
  64. 松原一彦

    ○松原一彦君 結核対策は、日本民族の生きるか死ぬかの大きな境の問題であります。而も大きな治績を上げておる、八十何億の国帑を費しておる、そうして実際においては今日十万以内の死亡者のところまで行つておる。この際に、現にここにお出しになつておる予算の中にもBCGに関する予算は相当多額に上つておる。一方においては予算の要求をせられながら、一方においてはまだ疑いがあるというだけに問題である、大臣がこれは中止するかも知れんのだということを新聞の上に発表せられるということは、私は軽卒だと思う。非常に国民を惑わすこういう問題については、恐らくはまだ伏せてお置きになつてよろしいと思う。大臣が御発表になるのは早過ぎる、それではもう第一線の人たちは非常に迷うのであります。現に町村等ではみずから金を出してBCGを買つてつているが、恐らくこれでやらんもののほうが遙かに多くなるだろうと思う。効果のはつきりしない前に、こういう法律を出されたという責任もありましようが、一方におきましては国民を迷わせる罪が非常に大きいのでありますから、大臣の御発言については今後十二分に御慎重に願いたい。私は警告しておきます。
  65. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 十分に私も承わりまして考えるようにいたしたいと思います。ただ私は先に申上げましたように、こういつた問題、つまり国民の生命や健康に関する問題というものは、私は結論がどうなるかということよりも、疑いのある段階において我々は実行していいのだろうかどうだろうかということが、少くとも私の良心から言うと非常に大きな問題なんです。学問的に見てとにかく判断が出ていない。とにかく生の菌が殖えるわけでありますから、学問的に見て判断が出ていないということでありますから、実行をしているとするならば、私はどういたそうかと思つて今も良心的に苦慮いたしておりますが、あの法律自身にも、しなければならないと書いておきながら、罰則を付けてないといつたようなことは、恐らく扱いについても、いろいろな含みを以て、国会もお通し下さつたものであつて、罰則附きの法律と罰則のないこういう法律とはおのずから、例えばBCGに危惧を持つて自分はやるのはいやだという人に必ずやらなければならないということを言うか言わんかという問題については、相当デリケートな意味があるのではないかと思うのであります。私自身も結論が、無効、有効とかいうような問題よりも、今日なお研究を要する段階にあるのだという意見が出ておるということに、私は非常に……、私自身として、毎日々々こうしておつても接種が行われておるわけですから、良心的に苦悶を感じておつて、それに対する早急な措置を何らか私は講じたいと思つております。これは研究問題とは別に、私の良心の問題ですが、疑いは疑いとしながら默つてつてしまうかどうか、これはほかの経済政策のことなどはまあいいのですが、私自身が相当心配しておるということは、良心の問題として御了察願いたいと思います。
  66. 有馬英二

    ○有馬英二君 時間も切迫しておりますから、私はただ一言だけ申上げておきます。私はBCGの研究を昭和十三年以来十数年やつておるものであります。今、大臣BCGの有害ということを特に強く言われましたが、恐らくこれはBCGのことについて研究をしない人の意見であると思う。私は不幸にして、大臣がそういう人の言を聞かれて、そうしてそれを一方的に何だかお信じになつておるように私は感じた。これは先ほど松原委員も言われたように、少しどうも軽卒であると私は断ぜざるを得ないのであります。私は学術振興会議が始まりますと同時に、特に私は人よりも卒先して人体実験をやつた第一人者であります。そうして数年の間これを実行いたしまして、有害でないということを認めたればこそ、これを国策として進言し、そうして政府はこれを取上げて実行に移されたと思うのであります。そういうようなことについては最早これは実験済みである。大臣のところに書面を出された人たちを見まするというと、この中で私どもと共に昭和十三年以来手を連ねて研究をした人が一人ある。それは福岡の細菌学教授である戸田君であります。戸田君がなぜそれに署名したかということについては私は非常に不満を感じた。と同時に、戸田君の軽卒を、昨夜も会いまして戸田君によく話をした。そういうことを長くお話いたしますと、時間が過ぎますから申上げませんが、併しいずれ小委員会或いはこの委員会でこの問題を取上げまして……、私どもつていられない。こういうことを言つて大臣を迷わせるということは、これは学者としても甚だどうも軽卒の至りであると私は思う。例えばこれは学術会議の人であつて、非常に日本の学界において重きをなしておる人たちでありますけれども、この十三名のうちBCGを本当に取扱つた人は、戸田君と細菌学者の寺田君の二人だけであります。あとは解剖学者であるとか、化学者であるとか、或いは精神病学者である。殊にこの中の発起人の代表である塩田さんは外科の医者で、そういうことは何も知らない医者である。そういう人の言を一方的に大臣がお聞きになつて、そうして他の人の言を少しもお聞きにならなかつたということは誠に不幸の至りであります。もう少しこのBCGの研究者の言をよくお聞き願いたいと思います。特にBCG委員会というのができておりまして、昭和十三年以来今日まで続いてBCGの研究をしております。それで十分の成績を挙げまして、又政府に進言いたしまして、これを実行に移すだけの根拠を持つておるのであります。そういうことを十分大臣はお聞きになりまして、そうして御判断願いたいと思います。御不安を持つておるということは、私は当局者として決して非難すべきではないと思いますけれども、もう少し慎重にやつて頂きたい。これは重大な問題でありますから、どうぞその点、御熟考願いたいと思います。
  67. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 松原委員の御発言で終ります。
  68. 松原一彦

    ○松原一彦君 それでは厚生大臣に伺いますが、厚生大臣はこの行き詰つた予算のうちに、昭和二十七年度に結核予防会に委託しておるところのこの六千二百万円、又予防接種費一億七千万円、こういう厖大な金がここに載つておるのでありますが、そういう不安を持つて、なお且つ、この予算を御要求になつたのでしようか、それならば由由しいことである。実に私はけしからんことだと思う。BCGにつきましては、国会では証人を呼んでやつたのでありまして、武見君のごときは否認者でありました。熊谷博士もおいでになりましたが、この席上で武見君は敗れておるのであります。専門家の諸君でない若干の者の進言によつて、これは国民を非常に迷わせるもので、殊に日本では大臣というものを非常に高く買つておる。従つて大臣が言つたとなれば、地方ではもう非常に動揺する。かくのごとき大きな予算を一方に計上し、そうして十数年やつて来ておるところの……、このBCGの問題はさように簡単に取扱うべきものでない。私は、どこまでも大臣がさように軽卒に御判断になつたことに対して警告します。
  69. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 松原先生の御意見、よくわかります。実は予算の要求は八月に要求いたしました問題でありますし、今日の問題について、私は必ずしも取消す必要はないと思つております。と申しますのはこういうわけであります。つまり大体ワクチンや接種に関する各国の法令を見ましても、一体文明国の法制としてはいろいろな施設をして進めてはおるが、法律的に強制するというものは、むしろ大体において例が非常に少いようであります。私が考えております一番いい例は、実は公衆衛生局長にも聞いたのでありますが、狂犬予防の接種のワクチン、これは明瞭に、やつた人の何百人のうち一人の儀牲者が出るということは、今日むしろ医学的に立証されておるようでありますが、それでも事実狂犬病の発病を避けるためにこれをやるより仕方がないということで、これはつまり法的強制という形でなくてやつておるし、やるためのサービスを国が提供しておるわけであります。私も今日、BCGというものは学術振興会議の結論から見ましても、私はこれは有効なものであると実は思つております。私自身もやりましたし、子供たちにも奨めております。私が考えておりますのは、今結論を出しておるわけではありませんが、仮になお研究を要するという段階にある場合において、それであるからこれを全部やめてしまうということに私は結論はならない。私は国がサービスを提供してやるということと、要するに法律で強制しなければならないということとは、相当に話が違うのではないかと考えておるわけであります。まあイギリスなど、従来からずつとワクチンを強制しておらないようであります。アメリカもそのようですし、大体普通の国が皆そのようであります。私が考えておりますのもそのことでありまして、たまたま予算を要求したのは日本学術会議が……、私は日本学術会議というものは、今日学界の最高権威を網羅したものだというふうに考えておるのでありますが、この日本学術会議から意見書をもらいましたのは、この四日のことであります。具体的な説明を聞いたのは十二日のことでありまして、予算の要求をしたのは八月のことでありまするから、時間的なズレも相当にあるし、私はこれから先の話を仮になお研究を要する段階だから法的強制をやめてみたらどうだということを考えるかどうかは別問題で、私は結論を出していませんが、仮にそういう段階におきましても、国がそれではBCGに対するサービスを全然やめてしまうかということは、そんなことはないので、過去においても十数年の間、国はBCGに対していろいろ骨を折つて、或る程度国費を使つてつて来たし、その話と、要するに法的強制問題とは、私の執行者としての責任感から言つても全然別問題になると考えております。
  70. 藤森眞治

    藤森眞治君 ちよつと今のに関連して、一言だけ……。
  71. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 成るべく短かくお願いします。
  72. 藤森眞治

    藤森眞治君 今厚生大臣から、英国とかアメリカあたりでは強制をしていないと言われたことについては御尤もなんで、その通りであります。この法律を我々審議しますときにも、成るべくならば強制はしたくない。併しながら、結核がうんと減つた国でこそ強制する必要がないわけで、日本の現在の結核の蔓延状況から見たときに法律によるよりほかに仕方がないのじやないかということが法律に見えておりまするので、日本の結核がうんと減りました場合には、勿論法律に触れるものではないということで、我々は審議を進めておるわけであります。
  73. 藤原道子

    ○藤原道子君 この問題については、私は絶対に納得できない。国会できめたものを、大臣が一個の考えで、思い付きで左右することは怪しからん。それから法が規定したところの審議会もある。そこのまだ結論を聞かないで、大臣が総理と相談したことで、思い付きで発表したということは断じて了承できない。この問題は事重大であるから、この席上で論議してもいたし方がないと思うので、本委員会では二十日、二十四日、二十五日に証人喚問をいたしまして、十分徹底的に審議することに相成つておりますので、私は今日の委員会はこれを以つて散会いたしたいということを主張いたします。
  74. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) 只今散会の動議がございましたが……。
  75. 梅津錦一

    委員長梅津錦一君) それでは、今日、委員の差しかえがございましたので御報告を申上げます。堂森芳夫君の辞任に対して河崎ナツ君が新任されましたことを御報告いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三分散会