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国務大臣(
橋本龍伍君)
只今の問題について
答弁をいたします。私もこれは極めて重大な問題だと
思つております。実はこの
BCGの問題に関しましては、
新聞紙上等にもときどき
BCGの接種によ
つて結核が誘発されたのじやないかというような虞れ等も、この春以来ぽつぽつありまして、いろいろ心配されておるような向もあ
つたようであります。先般、
日本学術会議の
有志の先生がたから、私に対して十月の四日附で書面を頂戴をいたしました。文面ははつきり覚えておりませんが、要するに
結核予防法は実施をされておるけれ
ども、これについてはなおいろいろ疑惑もあるし、疑点もあるし、なお研究を要すると思うので、
厚生大臣においては慎重に善処せられたいとい
つたような
意味の文句でありました。それには塩田先生であるとか、或いは東大の児玉医学部長、慶応の阿部医学部長、日本大学の医学部長、京大の医学部長とい
つたような
かたがた十数名の御署名があ
つたのでありますが、私もこれは極めて重大なことと
考えまして、とにかく書面の趣旨を伺わなければいかんということで
連絡をとりました。塩田さんの旅行等がありまして、遅くな
つて、十二日の金曜日の夕方お目にかかることを得たのであります。そこでいろいろ
お話を伺いましたが、要するにかい摘まんでの結論というのは、こういうことでありました。要するに
BCGの強制接種という法律ができたんだが、併しこれはなお研究の余地があると思う。その研究の余地ということは、一つには大体有益であるにしても、本当に全く無害であるかどうか、つまり有害な場合があり得るように思われるということが一点でございます。それからもう一つは有効であるか、それほど有効でないかということについても、なお疑念があると思うという趣旨でありました。いずれにいたしましてもとにかく研究を要する、なお研究を要するという
段階において、法的強制をやるということは問題であると思うから、一応法的な強制を中止したらどうだろうという趣旨で、その間に学術的検討を重ねるという趣旨だという
お話であります。そこで私はこう申しておきました。これについてはとにかく余ほど研究をしなければならないと思いますが、いずれにしても我我は現行の、できておる法律に対して執行の
責任がある。勿論現行法律につきましても、法律の文面は、検診をや
つて陰性のときにはしなければならないと書いてあ
つて、それに罰則を強行しないという点に、又強制のような、任意のような形で運用にもいろいろな味はあると思いますが、今日ではとにかく皆やらなければいかんという建前で実施いたしております。そういう法律の執行の
責任がある。従
つて我々としてはつまり、その有害な場合が本当に一つもないかどうかというふうな面の学術的結論が出るということよりも、むしろ当面とにかく完全に無害であるかどうかについて、なお研究を要するということだけで、我々としてはやはり法的強制というものを
考えなければならんと思うので、学術的な最後の結論が出るよりも、むしろなお研究を要する
段階にあるということ自身が、非常に大きな問題だということを、私は執行の
責任者として良心的に感じます。従
つて、
学術会議においてなお研究を要するのだという
意見を出されたということは、私は極めて重大だと思う。併し十二日におられた諸先生が言われる
通り、なお研究を要するということであるならば、やはり法的強制を一時
ストツプしたらどうだろうという結論に、私は当然なると思います。そのこと自身が非常に重要だ、なお研究を要するとの結論を出されたことの根拠は、その日は五時頃からお目にかか
つたので遅くな
つたが、今日は遅くな
つたけれ
ども、例えば国内における諸般の実質的なことであるとか、或いは学術論文であるとか、或いは外国の
学者の論文であるとか、或いは又、外国における取扱、法制についてのつまり
考え方とい
つたようなものだとか、そういうふうなものが、諸般のやはり研究を要するのじやないかという判断の基にな
つております。そういうものを頂戴をしたいということの
要求をいたしておきました。そうしましたら、いずれそういうものは整えて出すという話でありました。そこでとにかくほかの問題と違いまして、人の生命なり、健康なりに影響のある問題は、これは疑問が出るということだけで、私は大変な問題だと実は
思つておりまするし、良心的に
考えることが、
自分が執行の
責任者として、万一にも私の在任中にあの
結核予防法を行う
責任者として執行をして、それによ
つてBCGの害を誘発するというようなことがあ
つたら何と不幸なことだろう、事実そういうなお研究
調査を要するならば、私は非常な不安な感じがすると
考えております。恐らくはどなたが
責任者になられても私は同じ
考え方だと思います。それでとにかく現
政府の提案した法律でもありますし、私は極めて重大であると思いまするので、私ほかにも用事がありまして総理から呼ばれて箱根に参りました際に、これは極めて重大な問題だと思うが、こうこうという
申入れを受けておる。私はとにかくなお研究を要するという
段階であるとすれば、研究の結果がどうなるかを待つよりも……、私はなおやつぱり研究
調査を要することが万一にも有害な場合があり得るかも知れないが、それを執行しておるのは非常に問題だと思う。その
意味で
ストップしたらどうかという
意見を受けた。併し
政府としても極めて
責任のある問題である、これはもつともつと私の手許で検討してみなければならんけれ
ども、あらかじめその肚を決定しておきたいという
打合せをいたしました結果、その結果、総理は現内閣が出したものである、とにかく終戦以来今までだんだんに国内も落着いて来ておるので、今日いろいろな面で終戦以来出した法制を検討して参る
段階にもあるのだし、検討することについて司令部の了承も得ておるのだから、又学問的に疑念が出ておるならば、我々としてもその疑点を完全に晴らすまでの間、一時やめるという結論にな
つてもそれは止むを得ん。いずれにしても重大な問題であるから、どういう結論が出るかということについては、主管
大臣として十分検討してくれ、こういう話だ
つた。私は実はこういう問題というものは、手を染めるからには、出て来る結論において或る
程度肚をきめておかなければならない、出した法律について
打合せをいたしたわけであります。私自身今日なお検討を
事務当局にも
学術会議からの
資料をもらうように、
事務当局で与えられた
資料でできるだけ検討をし、なお国内的に、文句が出ておる投書等もあるようだし、そういうものは検討しておけというふうに話をしておる
段階でございます。