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1951-10-16 第12回国会 参議院 建設委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十六日(火曜日)    午後二時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            田中  一君            赤木 正雄君            小川 久義君    委員            石川 榮一君            島津 忠彦君            深水 六郎君            東   隆君   国務大臣    建 設 大 臣 野田 卯一君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君    常任委員会専門    員       菊地 璋三君   説明員    人事院給与局職    階課長    尾之内由紀夫君    建設省河川局長 目黒 清雄君    経済安定本部建    設交通局長   小沢久太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○河川、道路、都市及び建築等各種事  業並びに国土その他諸計画に関する  調査の件(電源開発河川との関係  に関する件)  (ルース台風被害状況に関する  件)  (建設技術者職階制に関する件)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは只今から建設委員会を開会いたします。  本臨時国会中におきまして当委員会調査事項のことにつきまして、昨日理事打合会がございました結果、お手許に配りましたスケジュールに基きままして調査を進めて行きたいと思います。本日は先ずその中の河川電源開発関連性につきまして調査を進めて行きたいと思います。
  3. 石川榮一

    石川榮一君 河川電源開発という題目で今日は調査を願うことになつておりますが、河川全国における荒廃状況並びに国土保全重要性に鑑みまして、河川を中心とする、いわゆる利水計画、その一環に浮んで参ります電源開発、これらは不可分の関係にあると思うのです。ところが最近電力が非常な危機に陥つて参りまして、ややもすると電源開発にのみ走るような輿論傾向が強くなつて参りました。これに順応して各党派の有力な政治家諸君は、電源開発至上命令としてこれにのみ没頭するかのような状況になつておりますのは、ややもいたしますると河川改修を第二義的に考えまして、電源を取ることを、電源開発にのみ重点を置くような政治措置が行われますと、あとでこの国土荒廃を防がんとする河川改修にいろいろな支障を来たすのではないか、かように考える次第であります。殊更に今日はこの河川総合開発一環としての電源開発ということに対して御研究を願いまして、そうして必要があればどちらも緊急性があるのでありますが、必要があるならばこれに対する政府の御意向によりましては、成るべく早い機会にこの不可分性を強調して河川改修一環としての電源開発を第一義に取上げるべきものだ、こういう観点に立つて法律案なり、或いは機構総合性なりを御検討願う施策をしてもらいたい、かように考える次第であります。この点に関して幸い今日は建設大臣もお見えになつておりますが、この点に関する御意見を一応伺いまして更に御質問を申上げたいと思うのであります。
  4. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 河川の問題につきましては、この河川の水を利用する面と、この水をコントロールする、治める面と両様あると思います。我々は現在におきましては河川を治める方法といたしましては、どうしても上流部におきましてダム建設する。ダム建設いたしまして洪水調節する。このことが当然に半面におきまして利水を伴うのでありまして、溜つた水を利用いたしまして電源開発と申しますか、発電をいたす。又更にはこの水を利用いたしまして、灌漑に利する、或いは飲用水工業用水供給をいたすというふうにこのダム多目的の働きというものを予定しておるのであります。従いまして電源開発治水の問題が今日におきましてはからみ合つておるのでありまして、ただ電源を利用するだけ、電源開発だけのダムを作る、或いは利水だけのダムを作るということは極めて少くなるという私たちは見通しを持つておるのであります。この両者十分相関連をさして考えるべきであります。こういうふうに考えております。
  5. 石川榮一

    石川榮一君 只今大臣の御答弁に私どもも満足するものでありますが、今電源を火急に開発したいという声が輿論化して参つております。恐らくその動向から察しますれば、我々が考えておる今大臣のおつしやるような河川改修にからんでの電源開発ということに着想を置きませんで、主として電力開発するためのダム建設に進むのではないかと、かように考えるのであります。そうなりますと、お互いここで考えておりましたことが政治の面におきましてはズレが出て参りまして、あとで後悔をすることが多くなる。殊に河川の災害は緊急欠くべからざる問題でありまして、あらゆる重要産業が全部荒廃し切つておることは御承知通りであります。ややもしますと、日本政治はそのときそのときに気まぐれな気持が持上りまして大綱を失するような政治動向もあり得ると思うのでありまして、こういう点から、この際電源開発の声が上りましたときを機会といたしまして、重要河川総合開発、この面においてどの程度電源開発できるか、いわゆる河川総合開発から見たところの日本における潜在電源はどのくらいあるかというような面についても、恐らく建設省におかれましては、成る程度調査が進んでおると思うのであります。参考のためにその調査ができておりましたらば御披露願いたい。要は河川改修電源開発をこの際くつつけ合せまして、そうして電源開発費用そのもの河川改修に大きな役割を演ずるものでございますから、河川改修費電源開発費を合せまして、急いで総合開発の線が進められるように施策をしてもらいたい、こう思うのであります。全国における主なる河川で結構ですが、河川改修の面から見た電源の潜在し得る発電量はどのくらいありますか。又重要河川だけでも結構ですが、その量等がおよそわかつておりましたらば私ども伺つておきたいと思います。
  6. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 未開発電源は大体千五百万キロワットと見積られております。これがどの河川でどのくらい起るか、その見込があるかということにつきましては、いずれ資料で以て後ほど、大きな資料があるのでございますが、資料を差上げますから、一々読み上げるのも何でございますから資料を差上げることにいたします。なお最近の電力危機にからみまして電源開発がやかましく唱えられております。又その一つ方法といたしまして、国策会社作つて電源開発を大大的に行なつては如何かという案も現われて来ておるのでありますが、これらの水力電源開発の問題につきましては、我々といたしましては、建設省といたしましては、大体三点を強く強調いたしておるのでありまして、その第一点は、電源開発をやる場合には、必ずダム式でやる。いわゆる水路式でやるということはもう今日におきましては時代遅れでありますので、どうしてもダム式を用うべきである。要するに水を一〇〇%に活用するという意味におきまして、ダム式をとらなければならんという見解を持つておるのであります。それから第二点は、このダムは必ず多目的に使われるようにいたさなければならん。電源としてのみ、即ち水力発電をするのみに若しこれを使いますと、あとでいろいろと困難な問題が起つて参るのでありまして、治水、即ちフラツド・コントロール洪水調整のために使おうといたしましても、それはできない。然らばこういう大きなダムを作る場合には、必ず多目的ということを考えて将来に悔を残さんように、河川洪水調節を合せたダムを必ず作つてもらうようにする。第三点におきましては、このダムコントロールしますが、ダム管理し、統制する権限は政府においてこれを保有するということにいたしたい。ダム目的が、只今申しましたように、多目的になるのでありますから、これを電力会社に任せるということでは、洪水調節、或いは灌漑その他に支障を来たす虞れがあり、又従来の例からいたしましても、この虞れがありますので、この多目的ダムコントロール、即ち管理権というようなものは飽くまで政府においてこれを持ちまして、このダムの総合的な活用を図るということを我々としては強く主張いたしたい、こういうように考えておる次第であります。
  7. 石川榮一

    石川榮一君 しつこいようでありますが、もう少し伺います。いずれ本臨時国会中に浮び上つて来るのではないかと思いますが、電源開発の問題は、閣議等におかれまして、この電源開発に関する懇談会と言いますか、協議会と言いますか、何かそういうことが最近にありましたかどうか。若し将来それがあるといたした場合には、建設省が主体となりまして、そうして多目的ダム建設には勿論建設省が当ると思うのでありますが、これらの点につきましても、画然と大臣の主張をきめて頂きまして貫いてもらいたい。電源開発の急を要するということでありますれば、勿論河川改修一環をなすダムでありまするから、全国的に急いでやるのでありましたならば、ダムだけでも切離して、早く建設省ダム建設用地を予定し、又でき得るならば調査費を要求いたしまして、そうしてどの川にはどことどことどこにダムを作るということを一応早く調査を済まして、資料を整えて頂きまして、閣議において御推進を願いまして、そうして電源開発に伴う洪水調整ダムが速かに各重要河川にできますように御尽力を願いたい。これに対する御意見を伺いたいと思います。
  8. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 電力危機に対するために、電源開発の問題を閣議においても問題になつております。その方法といたしまして、現在工事中のダム発電所等があるのでありますが、水力発電所でありますが、こういうものにつきましても、これを全部調べ上げまして、これをスピード・アツプするというか、この竣工期を早める、場合によりましては、突貫工事を実行いたしましてダム建設発電所の完成を急ぐ、この方向に行きたいという考えを持ちまして、只今関係各省の者が集まりまして、それを詳しく調査いたしまして、優先順位というものをつけまして、これを強行しようというふうに考えております。  なお計画中のものにつきましてもできるだけ電源開発に役立つものを取上げまして、すぐにこれを工事に著手するというような方向に持つて行きたいというふうに目下準備をいたしつつある次第であります。
  9. 小林英三

    委員長小林英三君) なおこの問題に関連しまして、安定本部小澤建設交通局長も見えておられますので……。
  10. 田中一

    田中一君  今大臣のお話を伺つて大体方針はわかりましたが、先般私宇治川に参りまして、宇治川がまだ滋賀県と京都の間に話合いがつかない、決定されないのに、今御説明のように促進する、計画を促進し、突貫工事で進むという御意見でしたが、宇治川のような、現在すぐにかかれば、水力相当ありますし、いいように考えられる、ところがどういうようなネツクで計画が浮び上つて来ないのか、どなたか、若しおわかりでございますならば、河川局長にでも伺いたいと思います。
  11. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 琵琶湖の水を利用いたしまして、あすこに大規模発電をしたいということにつきましては、前々から研究をいたしておりまして、現在では、大きく分けますと、二つ案があるのであります。一つは、建設省出先で作りました案であります。もう一つの案は、滋賀県で作りました案、この二つがあるのでありまして、この二つの案の相違点は、建設省出先で作りました案は、宇治に非常に大きなダムを一カ所作る、そういたしまして、そこで最大限の発電をしよう、二十万キロと見積られております。それに対しまして、滋賀県のほうの案は、ダムを何段階か、三段階かと記憶しておりますが、三段階に作りまして、そうして発電しよう。それから発電力については、建設省出先の案より三万キロぐらい少い。この二つの案が対立しておりまして、このどちらをとるかということが今問題になつております。技術的に申しますと、事実私の聞いている範囲では、技術重点を置く人はこの地方建設局の案のほうがいいのじやないかというような見解を漏らしておるのでありますが、滋賀県のほうでは県民全体の総意といたしまして、この大きな発電所滋賀県の県の県域外に作られるということは非常に不安である。従つてこの滋賀県の中にもダム作つて発電所を起す、又その下流にも作る、そういうふうに持つてつてもらいたい。又地方建設局の案によりますと、大石村という村が一村水没するわけになるのであります。これは滋賀県の村であります。これに対しまして、滋賀県案によりますと、大石村の水没は免がれないというようなことになりますので、滋賀県といたしましては是非とも何段階か、三つダムを作るこの案を採用してもらいたいということを、強く県民意思として主張しておられるというような事情がありまして、この両者を目下比較検討いたしまして、その間に何か適当な調節を図れないかということで、目下研究をいたしておる次第であります。
  12. 田中一

    田中一君 先ほども大臣の口からちよつと漏れたのですが、建設省が、国が電源開発をするというような意向はおありなんでございますか、又はそれが閣議でもそういう点について問題になり、又具体化するような方向に進んでおるでしようか。  もう一つ開発会社ですね、国策による開発会社です。こういうものの計画が進んでおるのか、その状態を一つ伺いたいと思うのですが……。
  13. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 水力電気開発の形式につきましては、いろいろあるのでありまして、建設省といたしましては、国もこの水力発電ができるようなふうにいたしたいというわけで、目下予算並びにまあ必要があれば特別会計みたいなものを作りまして、国みずからがダムを利用いたしまして、発電ができるようにいたしたいと、こういうふうに考えておるのでありまして、これは発電を全部国でやりたいという意味じやございません。先ほど申しましたように治水にからみまして、各所で大きなダム建設中でありまして、現在でも全国に数カ所のダムを直営で以て建設しておるのでありまして、その中にはもう今年中にはほぼでき上るというようなダムもあるわけであります。従いましてそのダムの上手から発電所の水の取入口を取付けなければならない、これをダムの完成する前に取付けなければならないという技術的な必要があるわけであります。そういたしますと、この発電を誰がやるかということで迷つておりましてはダムそのもの建設が遅れるというようなこともありますので、そういう場合におきましては技術的な関係もあり、国みずから発電所建設ができる、こういうふうにいたしたほうがいいという考えを持つております。なお国策会社の点につきましては、現在御承知のようにいろいろな大きな工業会社インダストリー工業会社におきまして或いは、マイニング会社等におきまして、自家発電をやろうという計画はありますが、これにつきましては開発銀行からの資金を融通して自家発電をさせよう、これを推進しようということで進んでおるのであります。  それから又御承知のごとく九つ電力会社、これにつきましては、政府といたしましては見返資金から金を出すと、或いは一般金融市場、或いは会社自己資金というようなもので以て電源開発させようという考えでおる。併しそれでもなかなか足りません。大規模の只見川であるとか、熊野川というような、こういうような大規模発電でありますと、これに要する資金も莫大な金額に上りまして、九つの各会社、その他のものでなかなかできないのじやないかという懸念がありますので、そういうものにつきましては、政府相当まとまつた大きな財政資金を出しまして、それでこの開発を推進する必要があるのじやないか、こういう意見があるのでありまして、その線に沿つて研究を進めたいと思つておるわけであります。
  14. 田中一

    田中一君 実は不思議なことを聞くのですが、先般来、昨年から、電力会社分割案については相当けんけんごうごう国を挙げて騒いでおるような問題があつたのです。併しこれの自発という一つ会社があつて、全部の開発をする、送電に対する調整を今までやつてつたが、今度改めて又その開発目的とするところの国策会社を作るということは、やはり日発のような機構配電会社というものは、曾つて配電会社でやつてつたが、結局自発のような機構ができるとお考えになつておるか。いわゆる従来の考え方を修正されて、或いはG・H・Qのほうの命令でああいう分割案になつたのかも知れませんが、少くともこの政府の責任としては政策の変更ということがあり得ると解釈していいかどうか。
  15. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは具体的の事実の必要から起つて来るものと考えるのでありまして、この国策会社を単一の会社にするか、或いは幾つかの会社にするかということは、まだ具体案はできておりません。ただ九つ電力会社もそれぞれ発電所作つて大いに電力開発するのでありますが、それでもなかなか及ばない所がありますので、そういうものにつきましては、国家資本を注入いたしまして開発を促進いたしたい、こういう考え方であります。
  16. 田中一

    田中一君 この先ほど電源開発の原則として、三点挙げられた、そのうちの三のうちの管理は、国がしようという御意思があるように伺いましたのですが、又昨年から騒いだところの分割問題についても、これは当然一本にしたほうがいいということはもう我々は…社会党ですが、社会党も強く主張しておつたのです。併し今度又現実の問題からやはり国がやり、又国策会社作つてまとめて行こうと……。それは御承知のように一つではない、三つか四つか幾つかわからないということも、一応この一本にするというものと、今度違うという線を持たすかも知れませんが、併しながらどこまでも曾つて日発のような形のものが生れて来るように理解されるのです。こういう点については現実に即してそう考えたという考え方ではなく、現在の電力会社機構そのものに……。これは建設大臣所管かどうかはつきりしませんけれども、国としてはそういう手を着けて、あれをもう一遍現状に即した形に持つて行くというような考え方がおありになるかならないかお伺いします。
  17. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) これは先ほど申上げましたが、ちよつと誤解があるようですが、一つ私の申上げましたダムコントロールは、政府で持ちたいというのは、洪水調節、或いは灌漑飲料用水工業用水、或いは電力といろいろな目的に使われる、そういうもののコントロールは、これは政府のほうでいたしたいということでありまして、電力の支配を政府が持つということではございません。これはちよつとお断りしておきたい。なお御承知のように自発につきましては、全国発電日発一社で以て独占をしましてやつてつたのでありますが、それが解体されまして、それぞれ九つ会社に戻つたわけであります。戻つたというか、それぞれ又九つ会社がこれを分けて開発するようになつたのですが、そのほか先ほど申上げましたように、民間のマイニングとか、インダストリー工業会社自家発電をする、水力発電ですが、これを認めて、それを資金的に援助して行こうという方策もとり、又九つ電力会社がそれぞれ自分の水利権を持つておるので、それの発電所を作るということ、これも援助して行こう、それでも足りないからやはり一つ財政資金相当出すところの機関を作つてつて行こうということであつて、前のように自発一つでやつて、ほかのものを抑えて行くような独占的なああいうものとは性質が大分違うのであります。これは私の個人的の意見でありますが、そう考えております。
  18. 石川榮一

    石川榮一君 国土総合開発法建前から河川総合開発をやらなくちやならないということになつておるようですが、従いまして、経済安定本部にもこの河川と、電源開発に関する御意見があろうと、これが先ほどの多目的ダムを作るということ、並びに政府管理をするということ、又ダムダム式でなくちやいかんということの基本方針等伺つておりますと、この工事をいたす場合、主管官庁はどこでおやりになるか、私どもから考えますると、ややもすると公益事業委員会の仕事にも見える、又建設面から考えますれば、洪水調節を伴いますから建設省のなすべきことも相当多い、又経済安定本部のいわゆる経済安定の線から行きますとあらゆる経済のほうから考え経済安定本部がこれを管掌してもいいのだというふうにも考えられるのですが、これらがややもすると、今の行政機構では統一したところの総合的な案を立てるのに非常にややこしくなり、スムースに行かない点もあると思いますが、これらに対して経済安定本部建設局ではどう考えていらつしやいますか。河川改修河川総合開発電源開発並びにこの所管事務はどこでやるか、こういうふうなことはもう差迫つてつて来ておるんですから、これはどこでおやりになるかということを伺いたいと思います。
  19. 小沢久太郎

    説明員小沢久太郎君) 河川改修と、それから電源開発の問題でございますけれども、これは昔も河川河川として改修する、それから電源開発電源開発として開発する、それから例えば灌漑にいたしましても灌漑だけで開発して行くというような建前がとられたのでございますけれども、資源を有効的に使うということ、換言いたしますれば建設コストを安くするというような問題、そういう問題から総合的にやるということになつたわけでございまして、各地方におきまして、或いは電源治水関係、或いは電源農業水利関係、或いはこれらを合せた計画ができておるわけでございまして、一応昔の単一式開発方式から多目的開発方式に進んで来たということは、これは公共事業と言いますか、建設事業が一段と飛躍したと思うのでございます。それでそういうふうな段階でやつて参りますと、電源開発の問題にいたしましても次第にそういう方式開発して行きますとそこにやはり隘路と言いますか、どうしたらいいかという問題が起ると思うのでありまして、実は私どもといたしまして電源開発をするためにはどうしたらいいかということを現在研究中でございます。これまでの問題といたしましては、例えば建設省洪水調節のためにダムを作る、それは公共事業費から或る部分は出す、それから電気事業の分担によるものは他の融資から出すというような形でありまして、先ず建設省ダムを作る、それから電気事業者がこれを、電気を起すというふうにやつて来たのでございますけれども、その間にだんだんとやつて行きますと矛盾を生ずるということがありまして、今後どうしたらよいかという問題につきまして只今安本といたしまして、電力緊急開発にからみましてどういう機構をとつたらよろしいかということを研究中でございまして、只今ここでどういう機構だということは申上げかねますので、最近のうちに是非結論を出したい、そういうふうに考えます。
  20. 赤木正雄

    赤木正雄君  ちよつと中座いたしましたが、電源開発のために堰堤を作る、これは誠に結構なお考えと思います。併し最近の電力事情を見ましても渇水のために十分の発電ができないのだ、それで渇水さえ防げば、或いは十分ほかから水を供給上得るならば、現在の発電施設でも相当発電ができると思いますが、これに対して、つまり水を常に保つということが一番大事だと思うのであります。水を常に保つということと、新らしく開発する電気のために、これは二つ目的が違いますが、水を常に保つて現在の発電施設をフルに動かし得るようなことについては第一にお考えになるべきが当然で、これは或いは今日としては公益事業委員会か、或いは通産省のほうか知りませんが、それに対して建設省としてはどういうふうなお考えをお持ちになつておるのでしようか。
  21. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 御質問の趣旨を十分解しない御答弁になるかも知れませんが、現在ありますところの発電所、それが水がなくなつて、それがため十分な効果を挙げることができない、こういうことにつきましては何といたしましても山のほうが荒れているというふうな点がありますので、山を治める、いわゆる山に植林をするなり、或いは砂防をいたすなり、そういう方向に力を注ぎまして保水力と申しますか、山の中に水を保つ力を増大をいたしまして、この発電所が十分いつもできるだけコンスタントに電力を発生し得るようにするということは当然やらなければならないというふうに考えております。
  22. 赤木正雄

    赤木正雄君 私の質問がまずかつたために多少大臣のほうで誤解の点もあるようでありますが、私の申しますのは、数年前でありますが、新井さんともよく話したことがあるんです。新井さんはその当時、今日は相当発電施設もあるのだ、これはフルに動かし得るようにするならばすべての事業に対してそう支障を来たさない、併し水がないために支障を来たすのだ。新らしい発電計画、それよりもむしろ常に水を供給し得るようなつまり溜池、それを作ることが第一の問題だ、こういう意見なんです。それに対してどういうふうにお考えでしよう
  23. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 御説御尤もなんでございまして、我々は先ほどから申しておりますように、山の元を治めるということもその一つでありますか、上流に堰堤を作る、その他の方法によりましてできるだけ水を下に流してしまわない、できるだけそれを上流地方に温存と言いますか、温存をいたしましてそれをコンスタントに流さなければならない、こういうふうにしなければならないというとはお説の通りなんであります。
  24. 赤木正雄

    赤木正雄君 それについて建設省といたしましても各河川について、新らしく洪水調節の意義は別でありますが、仮に電源開発という観点からいたしまして、単に電源開発するというよりも現在の発電施設を十分活用し得るために池を作る、そういうふうな御計画を以て調査されていますかどうかお聞きしたい。
  25. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 今のは私たちのほうでやつていますことは、上流地点に水を溜めるということをいたすために洪水調節用の溜池、貯水池を作る、こういうことをやつているんですが、その水をコンスタントに流して発電をする、そうして又下のほうにダムを作りまして、それを溜めて又流すというようにして行く、こういうふうな形式をとつております。そういうことでございます。
  26. 赤木正雄

    赤木正雄君 それからこれは堰堤を作る、この堰堤と申しますのは、申すまでもなしに水路式ではなしに堰堤式によつて発電をしよう、そういう御計西と思いますが、今まで作つた堰堤ですでに埋没して十分の機能を発揮しない、又機能を年々減少しつつあるものがたくさんあります。従つてこのダム作つてそういう計画をなさる前には、先ず以て今まで作つてある多くの堰堤の機能をどういうふうに減殺したか、これを根本的に調査なさる、そうして新らしい計画の基礎とするのは当然な仕事と思います。これについて建設省といたしましても今までの堰堤についてどれほど埋まつているかどうかということを御調査なさつているでしようかどうでしようか。
  27. 目黒清雄

    説明員(目黒清雄君) 御承知通りに、最近多くのダムが上流の荒廃のために埋まつて参りました。我々もこれには十分関心を持つてその地点におきます埋没の状況調査資料はありますが、ただ問題はこの土砂の移動の状況を如何に科学的に調べるかということが一番根本的な問題であります。その調査方法が今なお十分なる点までは行つておりませんで、新らしくダム建設する地点につきましては必ずその調査をやるべしという方針ではおりまするが、国全体として今の流出土砂量の正確なる資料がまだまとまつておりません。我々としてはこれを成るべく早い機会にこれらの基礎を積みたいと考えております。ただ現在のダムが如何なる経過によつて埋まつたかという資料は整えております。
  28. 赤木正雄

    赤木正雄君 そういう資料がおありでしたら御提出願いますが、各堰堤についてどれほど堰堤が埋まつているか、詳しい資料を今日でなくてもいいですから配付願いたい。それからなお一体このダムが埋まる、そういうことは今まで会社ダムを作つた場合にはむしろこれを成るべく公にしない。折角大きな堰堤を巨額の工費をかけて作りましても、それが埋まつたために十分の能力を発揮しないような状態になりますと、その会社としては非常に不利を招きますからこれを公にしない。現に私はこの問題について北大の中谷博士と少し研究しかけております。そういうふうの特別の研究所をいよいよこれを発足しよう、先ず以て只見川についてこれをしよう、根本的に研究しよう。いよいよちよつと研究しようということになりますと会社のほうでその研究はやめてくれ、これが会社の実体なんです。むしろ土砂が埋まつてその堰堤の能力が減る、これが世間に発表されたならばあらゆる部面に影響しますから成るべくこれを秘しておきたい。むしろ国民にこういう重大なことを知らせないで発電計画を作る、ダムを作るというのが今までの会社のやり方なんです。併しこのことを十分にしておかなくてはいかん。国民は今後発電のために大きなダムを作り、大きなダムを作りましたらそれが十年も二十年も三十年も土砂が埋まらないで効果を永久に発揮する、こう思いますが、なかなかそうじやなしに、日本で先ず一番土砂が埋まらんダムと言えば、あの長野県の三浦ダムが私は一番いいと思います。あのダムでも昨年の暮に私調査に行きましたらやはり一年に一%埋まつて行きます。あのダムは完全に水をあけますからしてどれだけ土砂が埋まつたかはつきりわかる。もとの御料林の中にありまして、それこそ森林状態はあれほどいいところはない。そういう所でさえも一〇〇%、つまり百年たてば埋まる、こういう状態でありますからして、少くとも建設省で今後の洪水調節、それを兼用して或いは発電計画をする。或いは灌漑になさるという場合には、今私の申す点は地味のようでも、それがない以上は本当はできない。最近アメリカで大きな問題にしているのはやはりこの問題なんです。折角作つた堰堤が何年寿命があるか、これは一番大きな問題だと思います。折角この発電計画しよう。そういう誠に立派な御構想の下に大臣は発足なさるんですからして、このなさつた仕事は永久に効果を挙げるように、或いは永久に効果を挙げるようにするために、少くともその上流の状態をもつともつと根本的に調査なさらないといけないと私は思います。併しこのことはむしろ端的に申しますと、今日の建設省では余りお試みになつていないんじやないかと私は思います。やはり河川重点主義になつて、上流のほうとは別になされはしないか、こういうように私も思います。わざわざ例を挙げませんが、そういうことは大臣は私はくれぐれ申しませんが、つまり国家百年の計を立てなければならん場合でありますから、この点を特に重視しておやりにならんと、折角巨費を投じておやりになりましてもその効果が拳らんということは今まで各所の例ではつきりしておりますから、特にこれに対する大臣の御意見を伺いたいと思います。
  29. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私は今の赤木委員の御意見に全く同感であります。今のお話で従来建設省は川のほうを余計重視して砂防のほうを多少怠つておるんじやないかという御指摘がありましたが、若しそういう点がありますれば、これから匡正いたしまして、ダムを作る以上はどうしても砂防をやらなければ駄目でありまして、それは各地のダムの実況を見て歩きますと痛切に感じます。でありますから私はダムと言うときは即砂防というふうに、もう不可分の関係にものを考えて行かなければならん。こういうふうに考えておりまして、今後そういうふうに努力いたしたいと思います。
  30. 赤木正雄

    赤木正雄君 次に安定本部の局長さんにちよつとお伺いしたい。先ほどダムのことを以て多目的のために各省でいろいろなことをする、これは誠に今日の行政機構の結果止むを得んと思います。併し目的によりましても、やはり主とする目的と副とする目的とあろうと思います。その一つのいい現われは本年の水害の、例のあの京都の例だと思います。あれは御承知通りに昭和二十二年の東北及び関東地方の災害に鑑みまして、あの当時新聞紙上におきましても、災害を防ぐ一つの途はほうぼうに堰堤を作るんだ、そうして水を、或いは土砂を防ぐんだ、そういうことをやかましく新聞で申しました。それにヒントを得て農林省は初めて防災堰堤というものを二十二年に作つて、それが二十五年に竣工した。その後本年に破壊して百三人の誠に哀れむべき犠牲を出した。私はあの堰堤を見るときに、この主目的がどこにあるか、これは或いは防災のためというかも知れないが、やはりちよつと見たところでは普通の溜池のところに大きな目的があつたのじやないかと思います。そういうことを見ますと、併しああいう場所にああいうふうな堰堤を許可したことがいいか悪いか、これは非常に疑問があります。現にこの前の前の国会で防災堰堤は二十六年からは新規なものに対しては全然安定本部は許可しないということを我々の委員会で局長さんは言明なさつて、そのことは速記録にはつきり載つております。併し無論ちよつとそのことに附加えますが、今まで許可しておるものについてはこれは止むを得ん、そういう話がありました。併し私の手許で調査したところによりますと、いわゆる二十六年にたくさん防災堰堤を新らしくやつておるのがありますが、つまりこの前我々の委員会であなたのおつしやつたことと実際とは非常にかけ離れております。私はどの防災堰堤も立派な目的を達するように念願しておりますが、あの京都の例を見ましてもこれは非常に考慮すべき点がありはせんか、こういうふうに思いますからして、やはり仕事を今まで主としてどういう役所がやつて来たか、これはくれぐれ申さなくてもあなたのよく御承知のことと思います。そういう事業の重点において或いは公共事業費を按分なさるのもいいんじやないかと思います。そういう点についてどういうふうにお考えでありましようか。
  31. 小沢久太郎

    説明員小沢久太郎君) 防災溜池につきましてこの前の委員会でございましたか、そのときに防災的なものはこれは農林省でなくていいということは言明したことは私は承知しております。その後農林省と建設省の間でそういう種類の溜池をどういうふうに処理するかという問題でいろいろ討議を重ねまして、結論といたしましては防災だけのものはこれは建設省でやるけれども、防災とそれから灌漑、そういうようなものについてはこれは農林省でやる、そのどこをやるということは両省よく相談しまして、お互いに両方の、何と言いますか、分界点というふうになりますか、よく相談してやる、そういうことになつている次第でございます。
  32. 赤木正雄

    赤木正雄君 ちよつと聞きそこねましたが、防災と灌漑は農林省でやるのですか。
  33. 小沢久太郎

    説明員小沢久太郎君) 防災とそれから灌漑と、そういうものを兼ねる溜池につきましては農林省でやる。併しそれについても建設省とよく相談してやるということであります。
  34. 赤木正雄

    赤木正雄君 これは非常にむずかしいところで、そこでどつちの省にするかということが分れるのでありますが、例えて申しますと、あの平和池について、局長は或いはその防災の堰堤とお考えになりましようか、或いは灌漑の堰堤とお考になりましようか。これによつてすべてのことがはつきりいたします。
  35. 小沢久太郎

    説明員小沢久太郎君) あれは実は昔作つたのでございまして、実は私のほうも技術的にいろいろ検討しているわけでございまして、その検討の結果を待ちまして、それから来年度よく研究したいと、そういうふうに思つている次第でございます。
  36. 赤木正雄

    赤木正雄君 この問題は今日は質問いたしません。
  37. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の電源開発の問題で、河川との関連性について御質問のおありのかたは……。
  38. 小川久義

    ○小川久義君 ダムの直営で御計画になつている所がわかりましたら説明を承わりたいと思います。
  39. 目黒清雄

    説明員(目黒清雄君) 只今資料を差上げますが、現在やつておりますものを申上げますと、御承知通り北上川に二ヵ所、石淵、猿ヶ石。それから鬼怒川には五十里。それから物部川に永瀬。それから石狩川は北海道総合開発であります。計五カ所であります。今資料を差上げますが、これが直営で国が直轄でやつております。それからついでに申上げておきますが、府県に補助を出してやつておりますものが相当あります。銅山川、三面川、旭川、那賀川、十津川、木屋川、赤川、小丸川、それから山形の野川、それから香川の香東川、綾川、計十一ヵ所であります。これらができます。すると丁度三十数万キロワットばかりになりますので、現在工事中の九会社がやつているのと大体相似たる電力でございます。
  40. 小川久義

    ○小川久義君 直営で御計画されていることは至極結構なことなんですが、石狩にしましても、猿ケ石にしましても、私は昨年見て来たダムでありますが、先日電力事情調査に岩手へ参りましてその後の様子を聞いて見ますと、金がないために工事が捗らないというのが実態らしい。従いまして国の直営のものも五カ所も六カ所もやる、国が補助して県のやるものも十何カ所もやるということよりも、全国電気事情を見て、足らん所に先やる。そうあつちこつちと拡げないで、電気の不足する所ははつきりわかつているはずであります。北海道、九州は石炭の入手が極めて容易である。又火力の設備もある。関西にいたしましても百十万キロの火力能力を持つておる。その火力のない所、水のみに頼る所を重点的にお進め願いたい。僕は今年の電力不足から考えて見ても、東北、北陸、中国、これがどうにもならん不足である。火力の設備が殆んどない。東北は全然ない。そういう状態でありますから、工事を多く手を拡げないで、電力不足の実情に即したような所に重点的にお進め願いたいと思う。先ほど申上げました通り、岩手北上川の流域に二つ作るとおつしやいますが、二つつたために五年かかるものは一つにまとめて、一つを完成すれば二年半でできるはずである。そういうふうに計画を御変更になつて、そうして電力不足の実態に即したように今後工事をお進めになり、一日も早く完成するというお考えがあるかないか承わりたい。
  41. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 御趣旨御尤もと存じますので、成るべく重点的に進めて行きたいと思います。   —————————————
  42. 小林英三

    委員長小林英三君) 次はルース台風の被害の状況についを御報告を承わりたいと思います。
  43. 目黒清雄

    説明員(目黒清雄君) 一応御報告いたします。十月八日に南方に起きましたルース台風ですが、これが九州を横断しまして日本海に出て、能登半島附近で二つに分裂しまして、副台風は石巻東方に抜けまして、主力は更に太平洋に抜けたというコースをとつております。現在まで九州方面は通信がまだ回復しておりませんので、正確なる情報が入りませんが、大体の推定を申しますと、九州方面には相当降雨の量が多かつたようでありますが、中国を横断しましてからあとは比較的量が少く、風が強かつた。こういう状態でありまして、被害も従つて風による被害のほうが多いのでありまして、それから九州方面は風と雨が降つたための被害がありました。こういうふうに大別することができるわけであります。その中で、我々に情報が入りましたうちで一番ひどいのは山口の五十億であります。これは丁度二十年に山口が大水害に会いましたが、そのときと同じコースを低気圧が通つておりますので、山口の東半分がひどいのであります。従つて錦川の氾濫がひどいという情報が入つております。それから勿論九州はひどいようでありますが、鹿児島、宮崎はまだ正確な資料がつかめません。ただ大分がやはり相当な被害をこうむつておりますところから察しますると、恐らく鹿児島と宮崎は相当なものであろうと想定をしております。只今までに揃いましたのは百三十二億四千九百万円という被害額であります。なお先にその表として差上げておりまするのは、百四億四千五百万円でございますが、その表を作りましたあとに入りました情報から見ますと、百三十二億四千九百万円になつております。簡単でありますが以上御報告申上げます。
  44. 小林英三

    委員長小林英三君) これに対して何か御質問ございませんか。
  45. 赤木正雄

    赤木正雄君  百三十二億というのは、まあ相当大きな被害でありますが、災害が済みまして、一昨日の災害ですが、それの資料でありますが、この官報は一体どれから……各県から来たのでしようが、県はどういうものによつてこの数字を出しておるのでしようか。
  46. 目黒清雄

    説明員(目黒清雄君) これは大体推定だと我々は信じておる。と言いますのは、災害が起きまして、まだ現場は混沌としておりますので、どうせそこまで細かく調査ができるとは信じておりません。一応の被害報告だと考えております。
  47. 小川久義

    ○小川久義君 災害の様子はこれ以上僕はわからんと思いますが、これはもう暫らく時期を待つて、又詳しく御報告を受けるということにして他の議事を進行して頂きたいと思います。
  48. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは災害の問題につきましては、後日又詳しい調査が集まりましたときに御報告願うことにいたしまして、次の調査に移りたいと思います。
  49. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は建設技術者職階制の問題につきましての調査を議題といたします。
  50. 赤木正雄

    赤木正雄君 この問題は主に人事院に関する問題でありますが、大臣において若しもお暇がおありでしたらお聞き願いたいのです、別に御答弁要りませんから。この問題は、私が聞きたいのは、申すまでもなく今後技術者の技術の向上ということは非常に大事なことで、これは建設省といたしましても誠に重大なことだと考えております。それに対して職階制技術が向上し得るようになつているかどうか、これが根本のものでありますから、先ず人事院からして今日の職階制はどういうふうになつているか、一応の御説明を願いたい。
  51. 尾之内由紀夫

    説明員(尾之内由紀夫君) それでは職階制の問題の状況を簡単に御報告いたします。  職階制の制定に基きまして、全公務員、一般職に属する公務員の職階制をすでに二年有余に亘つてつております。只今大体全公務員に亘る仕事の種類、私どものほうでは職種と言つておりますが、職種の分類と、それからそのうちにいろいろ仕事の困難性の段階がございます。その困難制の段階に応じまして分けておりますところの職級、一つの職種に平均四つくらいの職級に分れております。そういうような職級を殆んど決定し終つた状況でございます。詳しい資料はすべて官報に公示されておりまして、この職種の全総数がおよそ四百余になつております。それからそのうちに含まれておりますところの職級の数がおよそ千八百ほどになつておりますので、御指摘の建設関係技術者の職種につきましては、主として土木工学、勿論これに類似の建築は、或いは電気工学関係のものはたくさんございますが、土木工学関係の職種と、それから土木工学の補助職、補助の職種、この二つが主要なものであります。土木工学職種は全体で六つの職級に分れております。一級から六級まで分けられております。それから補助につきましては現在一つでございますが、これは近く改訂いたしまして、補助と専門と言いますか、土木工学を一本にいたしたい、こういうふうに考えております。大体主要な職種は只今申上げました土木工学になつております。  土木工学の職種はこれは単に現場の建設技術者のみならず、本省系統におきまして、いわゆる土木行政を担当しておりますところの公務員、本省の建設省における河川或いは道路局等の系統の官職、それから現場におきまして地方建設局の本局に属する技術系統の官職、それから現場にありまするところの工事事務所なり出張所、或いは見張り、これに一系列存在しておりますところの大部分の建設技術者、これらがそれらの職種に入り、それぞれその責任の度合に応じまして三級、四級、五級、六級、こういうふうに分けられているわけであります。只今そういうふうに官報によつて公示されましたところの職種を、職級に従いましていろいろな格、あらゆる官職職員がやつております仕事を調べまして、特にこの仕事は何級であるというようなことをやつております。これを格付と申しております。この職種、職級を決定し終りまして、専ら格付の仕事をやつております。こういう段階にあります。それから一方こういつた職種が、或いは職級が決定されました段階において、具体的にはこれらが給与の上において、新らしい形をとつて給与法を形成して行くわけであります。これは給与準則という形で、法律で決定することになつております。従来の給与の体系はすでに御承知と思いますが、全体を一級から十五級に分けております。一番上は次官の十五級、一番下は給仕の一級、こういうふうに十五級の構成をしております。職階制に基く新らしい給与体系は、現在なお法律案の一歩前にありまして、検討いたしておりますが、大体構想はこの十五が約半分、八つぐらいに整理されることになつております。従つて土木工学職におきましても、一級から六級に相当するものが、その八つの中のいずれかに入つて行くわけであります。現在の案でございますと、一級の土木工当職が一番上の等級に属しておるのであります。それから以下二、三、四、五、六と順次下りまして、現在の土木工学職では七等級、七番目の段階、或いは八番目の段階というものがございます。併し先ほど申しましたように補助職を一緒にするという予定でありますので、これを一緒にいたしますと六級、七級、八級というものがそこに加わつて来る、こういうふうに考えております。大体そういうような状況でありまして、給与決定の少し前の段階にある、こういうような状況であります。
  52. 赤木正雄

    赤木正雄君 この組織はアメリカの組織によつてされたものでありますか、或いは日本独特の組織によつて考えられたものでありますか、或いはヨーロツパでもこういうふうな組織になつておりますか。ヨーロツパでやつておればどこがこういう組織になつておりますか。
  53. 尾之内由紀夫

    説明員(尾之内由紀夫君) これは土木がこういうふうに分けてあるというのは、別にアメリカがこの通りに分けておるのでございません。職階制考え方はこれは終戦後司令部のほうの方針によつて、国家公務員法並びに職階法というものができまして、それに基いてやつておるのでございます。ただそのやり方は決してアメリカと同じようではありません。これはアメリカにおける建設技術者の体系が、日本の場合と同じではないということを考えましても、決して向うと結果が同じでいいというふうには考えられません。現在日本にありますところの官職の実体、或いは仕事を遂行する形態というようなものを勘案調査いたしました上決定したものでございます。具体的に例を申上げますと、アメリカのほうでは職種を、只今土木工学と申しましたが、土木工学に相当するものを、更にもつと職種について言えば細かく分けております。例えば道路工学、水路工学、水道工学、或いは交通工学であるというふうに、それらを八つ或いは十ぐらいに分けております。それから横のランク、分け方も向うは大体現在下から上まで、先ほど私は八つと申しましたが、アメリカでは十八に分れております。そのように、向うのように日本の官職の実体はそれほど専門化されておりませんし、又責任の段階、困難性の段階というものが組織上或いは実質上においてもそれほど細かく分れておりませんので、只今申しましたように、日本の実情というものに基いて分けたものでございます。それからヨーロッパのほうにおきましては職階制を採用しているところ、採用してないところがございますが、例えばイギリス等におきましてはこれはちよつとやり方が変つておりまして、本省系統の、いわゆる向うでいつております大蔵職階というものがございます。これは比較的大ざつぱな分類をしております。大体行政官の分類であります。それは四つぐらいにしか分けてございません。併し専門職は相当やはり細かく分れておるというふうに聞いております。詳しい資料私持合せてございませんが、そういうような状況であります。
  54. 赤木正雄

    赤木正雄君 大体わかりました。私がお尋ねしたのは部長の御承知通りに、仮に河川について申しましよう。以前も大学を出まして二つ河川改修したらもうその人の一生は終る、こういうふうに我々は内務省に入つたときには言われておりました。と申しますのは、河川はどの河川も一々その河川の性質が違つております。従つてその河川の性質をよく研究するのには少くとも十年かかる、それから又はかの河川を十年かかる、つまりその一生の間に二つ河川を持つたら大体内務技師の一生の職は終る。それほど河川にはその河川々々について長い経験と特にその河川の性質を知つている、これを知らない以上は本当の河川改修はできないとされたものと私は考えております。又実際それが必要なことはドイツにおきましてもフランスにおきましてもエステルライヒにおきましても同じ傾向になつております。つまり河川は十分その河川の性質を知つて初めてはつきりした計画もでき実行もできます。今日本でこういうふうに新らしい職階制を採用されまして、特に仮に利根川の例をとりましても利根川の今事務所長と申しますか、事務所長が一生懸命にその利根川の自分の受持の河川の性質を研究して、その性質に適当するような方法考えて施行する、そのためには五年も六年も、或いは十年或いは二十年もかかりましよう。併しその人が利根川の改修においてそのためにどれほど国家に益するかわかりません。併し一つ河川に終始するために、局長の地位も得られん。そういうふうの考えでその人は給料は上らん。これが今日の職階制の大きな欠点ではないかと思います。それに対してはどういうふうになりましようか。
  55. 尾之内由紀夫

    説明員(尾之内由紀夫君) 確かにおつしやる通りだと思います。私どもは決してそういうことが今後行われてはいけないというふうに、一つの枠を作つてしまう、それによつてつて行こうという考えでは毛頭ございません。特に研究所であるとか、或いは現場のいろいろ相当経験を要するというような仕事、そういう仕事については確かにそこにおられるところの人、職員の技倆なり経験なりというものによつてそこの仕事の内容、価値というものが変つて来る、こういうふうに考えてよかろうと思います。例えば典型的な例といたしましては、研究所においては非常にむずかしい研究をしておりますと、これは別に研究所長にならなくても、部長にならなくても、所長なり部長に相当する俸給が払われて然るべきだと思います。現在そういうふうになるようにやはり職階制考えております。でありますから、決してそういつた厳しい枠をはめて、以後それ以上には出られないというふうに職階制というものは拘束的なものではございません。従いまして成る現場の事務所におきまして長年、十年或いは二十年勤続されまして、そこの内容を十分研究され、そこの仕事の業績が非常に上るというような場合には、むしろ只今申しました研究者としての価値と申しますか、そういう評価がなされて行くべきだろうと思います。併しながら一方現在のように相当工事事務所というものが或る単位ごとに限定されて作られております。昔のように、利根川を殆んど一人で持つておられるというようなことはなくなつております。つまり現在の人の配置の仕方が、これは或いは制度のためにそういうことになるかもわかりませんが、比較的昔に比べますと頻繁に変られる。又世間の工事事務所の、例えば所長というものに対する見方がやはりそこにおける工事技術の内容のみならず、更にそこにおけるところの被害、災害の起つた場合の責任をとるべき度合であるとか、殊にそこで使用する労務者の数、従つてそれは工事量、そういうものであるとか、やはりそういうことによつてもそこの所長の評価というものはされるだろうと思います。従いまして単に研究面だけで評価してはやはり不完全である。そこで当然工事事務所の社会的な重要性というものを、一般の評価というものはそれについての評価というものによつてきめられて来るであろうと思います。丁度工事事務所がそういう研究機関であり、或いは一つの行政機関的な性格の中間、両方の要素を持つておるというふうに私ども考えております。そういう意味において、今後研究的なそういう色彩が非常に強くなり、只今申しましたように、別に所長にならなくても、或いは小さい工事事務所であつても、そういうところの所長を高く評価するということについては、何らやぶさかではないのであります。ただ現在の状況調査いたしまして、その結果出て来た結論が現在の状況ではそうであつたということに過ぎないわけでありまして、今後たとえどういうようなふうに一つ工事事務所が評価されましても、次の年、或いは数年後において、それらの仕事の内容が変り、或いはこれに相応する所長が配置されるならば、又従つて当然格付というものは変つて来るべきである、そういうふうに考えております。何もない場合よりも確かに感じとしては職階制というものが或る窮屈感を與えますが、制度そのものは決して或る粋を設定し、更に将来まで固定しようというものではございません。その点は一つ御理解願いたいと思います。
  56. 赤木正雄

    赤木正雄君 今現場のことを申しましたが、仮にこの内容においても同じことだと思います。今幸いに、幸か、不幸か存じませんが、とにかく建設省では技術者の人が多い。併しこれは局長になれば同様の給料が、局長にならなければ殆んどその給料は取れないというのが今日の情勢であります。仮に枝術者が一生懸命やつても、課長、局長にならなければ相当の給料がもらえない、これがために枝術者としての本当の力が発揮できない、発揮させようと思つても変な職階制によつて先に伸びることをつんでいらつしやる、こういうふうに言つてもいいのです。これは国家経済に誠に損なことです。技術者は職階制のため局長にならない以上、相当の給料がもらえない、こういう不合理になつておりますから、それを是正するお考えがありましようか。
  57. 尾之内由紀夫

    説明員(尾之内由紀夫君) 局長や課長の問題でございますが、例をとつて補足的に申しますと、局長や課長はこれもいろいろな性格がございますが、大体中央官庁におきまして、行政組織法なり、或いは各省設置法によつて設けられました局である、課であるというものの性格は、一般的に評価しますときは、やはり国がこれは局に相当するものである、課に相当するものであるという一つの評価をおいて組織を作つた、こういうふうに考えられると思います。特に日本のようにこの法律によつて比較的行政組織ががつちりでき上つておるところにおいては、それが常識であろうと思います。そういうような場合において、若し局長である、或いは課長であるというポジシヨンが、そういう地位が、その専門家でない、専門行政と言いますか、行政、勿論行政でございますが、いわゆるその道の専門家でない、併し行政官としては非常に能力がある、こういうふうな人員配置をやつておる場合、こういう場合には、その部課の課員、或いは係員以下において優秀なる技術者がおかれまして、その優秀なる技術者の能力というものを十分生かし、当然それに従つてこの優秀なる枝術者をそれ相応に評価するという形がとられなければならんと思います。併しながら一般的に申しますと、只今申しましたこの局長、課長というのは、むしろ組織上一つの内部の行政運営の一つの単位といたしまして、それぞれ成る順序を持つた評価をされておると見るのが妥当であろうと思います。現在建設省におきましても、そういうような意味において局長、或いは課長等に技術者出身のかたがなられておりますが、そういうような場合においては、大体只今御指摘になるような優秀なる技術者というかたは、その多くが課長に、或いは局長に栄進して行かれる道を辿つておるのです。これは又一つの常識だろうと思います。併しながらそういう場合にもなお且つ課長補佐である、或いは係長のうちにその課長になれない、或いは局長になれないかたができて来るのは、これは事実だろうと思います。そういうようなかたを十分それ相応に生かすということは、国家行政の立場から言つても極めて必要なことであるということに対して、私ども何ら異存はございませんが、ただそういうような場合一体どういう人をそれ相応に見ていいかという問題を具体的にきめることは非常にむずかしいわけであります。例えば或る課長が、河川なら河川技術を十数年やつた、それと同じ経験を持つたものを課長と見ていいかどうかという点は極めて重要な問題だろうと思います。  単に経験が同じであるから同等に見ていいということになりかねない。若しそうだとすれば、課長になる人は又これはその役についただけの余分の責任なり、当然責任が加わつて来るわけです。又いろいろ対外折衝の面において困難さが加わつて来るのです。具体的に課長補佐の中でどのポジシヨンを課長と同等に、或いは局長と同等に見るかという問題がなかなか実はきめるのにむずかしいわけです。若しそういうかたがあつて、これは当然技術者が我が国において、或いは国際的に見て非常に優秀な技術者であるという場合には、勿論そういうかたをそこに止めておくために、必要な給与上、勿論職階上の措置をしなければならないと思います。考え方といたしましては、御指摘になつたようなことができないというふうに職階制を窮屈には考えておりません。ただ若しこれを何ら枠もなく、制限なくいたしますと、誰でも只今申しましたように、十年たてば十年たつたところに、十五年ぶらぶらしておつても、十五年たつたならば、課長になつたの相当するところの俸給に達し得るということであつては、やはりこれは一つの士気向上のためには却つてマイナスの効果も生ずるわけであります。でありますから、この問題については、職階制の立場は決してそういう措置をしてはいけないということではないのでありまして、現にそういうような見方をしておるポジシヨンもあるわけであります。併し建設省の例につきましては、具体的にこの職員のやつておる仕事が、これが課長級の仕事である、或いは局長級の仕事であるというふうに判定することが非常にむずかしかつたというふうにまあ現在認識しておるわけであります。今後そういうものがあれば、これは又いろいろ建設省の幹部のかたがたと御相談いたしまして、又いろいろ有識者のかたがたの御意見をも伺いまして、そういう手段、そういう評価をすることが至当であろうと思います。
  58. 赤木正雄

    赤木正雄君 もう一つ現場のほうにおきましても、或いは大きな河川に従事しておる人が相当上の級まで上る、併し河川の大小によつて級を変えて行く、階を変えるとか、そういうふうなお考えもお持ちになつておるんですか。
  59. 尾之内由紀夫

    説明員(尾之内由紀夫君) 現在は一応その評価の内容といたしまして、先ほども申しました研究的な面と、それから行政的な責任と、こういう面と二つございますが、結果といたしましても、行政的責任、勿論技術行政的な責任でございますが、そういう面で評価されておる状況であります。従つて非常に大きなところは、やはり何か事故があつた場合の責任というものは、当然その所長にかかつて来る、勿論内部を管理する上においても、同様小さなものよりはより困難である、又扱う予算上、或いは仕事の内容上におきましも、やはり大きなものになればなるほど工事規模は大きくなる、又その専門の種類も多くなる、いわゆる複雑さも増して来るということで、大きなものは大きいなりに評価いたしております。従つて極端に小さいもの、或いは非常に外れて大きいものは、それ相応やはり工事事務所の性格という形において把握いたしまして、従つて所長の場合には、そういう性格で格付けされておるという形になつております。若しそうでなくて、小さい事務所においては、そういう技術行政的な責任が小さい、これは事実だろうと思います。それを若し何か専門さにおいてちよつと他に代るものがない、代替性がないということになりますと、これは別の意味において別の要素において、即ち専門性の深さなり、或いは研究度の、研究の深さなり、そういうことによつて評価しなければならないと思いますが、現在のところでは、小さいもので、同時にそれが小さいということを通り越して、大きなものに匹敵できない困難さを持つておる、こういうふうに評価されたもの、これも現在のところ例はないわけであります。現在の状況はそういうふうになつております。
  60. 赤木正雄

    赤木正雄君 この問題はまあ人事院としてもお考えになつておるのでありますから、その結果を見て又お伺いをいたします。今日はこれでよろしうございます。
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) ほかに……。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会