○国務大臣(
山崎猛君) お答えいたします。只今のお尋ねは全面的に、私どもが特に
地方支線に対して感じておるそのままの御感想であ
つて、全然御同感であります、それで今更講釈がましく申上げるまでもありませんが、現在の国鉄の場合においてはサービスの向上ということを一口に申しますけれども、向上というよりも、どうすれば足りないながらも現在のサービスを特に支線の場合において維持ができるが、ややともすれば維持の線を下廻
つて行くようなサービスになりそうである、殊に又御指摘のような即日試験の結果廃車しなければならないというような腐朽、老朽の車がある、私も運輸大臣として非常に心配に堪えないのは、日日心配に堪えないのはサービスどころじやない、事故の発生というようなことがどこかで起
つても重大な問題であるということを日々憂えておるような実情であります。これは御指摘のように運賃の怖る怖る行
なつた値上げというような
程度のもので救われない国鉄全体の現在の
状況ではなかろうかと、私自身もこう考えておるような次第であります。然るに一方においては、
国有鉄道公社という形で発足をして、独立採算制、公共企業性を十分に発揮して行かなければならないような縛しめを受けつつこういう現在の
鉄道に対して行かなければならない。これは日本の
鉄道が、今日から顧れば戰争を通じて十年近い間酷使して使い放しで、車もレールもその他の
施設も使い放しで、戰時中十分なる補修もできずに、改廃もできずに来たのが累積して現れた今日の
一つの姿だと思うのであります。一面においては
国有鉄道、即ち国民の
鉄道として国民から新らしい線の新設とか、電化とか、たくさんの要求があるのでありますが、顧みて国鉄の現状を見れば、相当危険に頻した
施設がどうやら間に合わされて運転されておるようなことで、いずれが先かと言えば、新線の建設も無論戰後の社会情勢、国際情勢から急を要するものには相違ありませんけれども、今走
つておるものを何とか安全な状態まで取り戻し得るように、中央線、
地方線のサービスの違いが甚だしくないように取り戻すということも又放
つて置くことのできない急を要することであろうと、こう思うのであります。これらにつきましては、結局は事業資金の問題が出て来るのでありまして、
簡單に言えば、金さえあればできるのでありまして、どうしてその金を捻出するかということに帰着すると思うのであります。勿論申上げるまでもなく
国有鉄道でありますから、国費を以てこれに補給をして行くという
方法もありますけれども、今日の
国有鉄道公社として独立採算制で、一本建で行かれるという建前から申せば、そう無限に国によることもできず、国も又財政許さざるところもあるのであります。借入金をするとしても国から利払いその他の裏付がなくして借入れもできないというような窮境にあるのが現状であります。丁度極めて最近に閣議のほうは一応決裁を経ることに相成りましたのが、
鉄道債券の発行というようなことを、法文を
整備いたしたような次第なのであります。
簡單に言えば
鉄道事業公債であります。勿論これは現在の日本の経済界の情勢等の関連がありまして、直ちにこれが立法化されてもこれを実施するということはできないような種々な
関係に置かれてはありますけれども、一応この法文だけは
整備して置いて、そういう事情が許すような時期が来たならばいち早く
一つこれを
活動させる。
民間資金を得るようにする。勿論これに対しては非常な高い利子は
鉄道の公共性に鑑みまして払うこともできませんけれども、何とか
地方の人たちの納得し得るような利払いでありまして、若し箪笥預金というものがありますならば、そういうものをここに
一つ集めてこれを事業化し、これを交通機関のほうに働かせて持
つて行くというようなことを考えているような次第なのであります。
今後、
国有鉄道公社のあり方については、この公社の出発して以来二年余り運営実績でありますけれども、これはひとり外部ばかりでなしに、内部から考えて見ましても、
国有鉄道公社の姿は結構に相違ないのですけれども、これができましたときの事情等から考えて、どうやら日本の国情、民情、いろんな点にぴ
つたりせざるところがあるようであります。殊に全面的ではありません、部分的においてそういう点があるようであります。すでに二年の歳月、これを体験した以上は、この辺のところで一応立ち止ま
つて振返
つて見て、これに改正を加えて行
つたならば、一層いいものになるのではないかというふうなことが考えられている次第であります。この点につきましては、国鉄の新総裁も深く考えるところがあるようであります。すでに五月のリッジウエイ司令官の命令にもありましたようなわけで、さような場合には国情に適したように変えて行
つてよろしいというような心持が十分に表明されている。
政府の行政改革というようなものもこの線に沿うて行過ぎを正して行くというような方針でいるのでありまして、国鉄の場合においてもやはり同じ線に沿うて、こういうことを考えるべきだということを長崎新総裁もみずから申しているようなわけでありまして、私も運輸大臣として誠に結構な考えと
思つて賛成いたしているようなわけであります。これはただ考えるだけでなしに、何らかの機関を設けて衆智を集めて、よりよき
国有鉄道のあり方に持
つて行くというような
方法を余り遠からざる機会に実際的に進めて行こうというようなことを話
合つているわけであります。
只今御指摘になりましたようなことの現れて来るのも、又これらを改善、
改良をいたして行く上にも、そういうふうな工夫が必要ではないかと思います。資金と併せて組織機構の上における改廃等も必要ではないか、こういうふうに考えているような次第であります。
大体お尋ねの御趣意、私も十分に納得の行くところでありまして、心持ちをお述べしてお尋ねに答える次第であります。