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1951-11-06 第12回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月六日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 風早八十二君       淺利 三朗君    麻生太賀吉君       天野 公義君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    小淵 光平君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       金原 舜二君    坂田 道太君       志田 義信君    島村 一郎君       鈴木 正文君    田口長治郎君       田中不破三君    玉置  實君       坪川 信三君    永井 要造君       中村  清君    中村 幸八君       松本 一郎君    南  好雄君       宮幡  靖君    井出一太郎君       今井  耕君    金子與重郎君       川崎 秀二君    竹山祐太郎君       早川  崇君    藤田 義光君       戸叶 里子君    門司  亮君       水谷長三郎君    勝間田清一君       成田 知巳君    横田甚太郎君       小平  忠君    石野 久男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 根本龍太郎君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         労 働 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         総理府事務官         (地方財政委員         会事務局財務部         長)      武岡 憲一君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         中小企業庁長官 小笠 公韶君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十一月六日  委員江花靜君、庄司一郎君、本間俊一君、松浦  東介君、竹山祐太郎君、森山欽司君及び西村榮  一君辞任につき、その補欠として田中不破三君、  金原舜二君、坪川信三君、志田義信君、井出一  太郎君、金子與重郎君及び門司亮君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員藤田義光辞任につき、その補欠として竹  山祐太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  昨日に引続きまして質疑を継続いたします。小平忠君。小平君はおられないですか。——まだ登院しておられないようですから、それでは次に移ります。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 大蔵大臣がお見えになつておるようですから、大蔵大臣にお尋ねいたしますが、時間が非常は短い関係上、多くのことはお聞きできませんので、まず最初に年末を控えまして、中小企業の問題が非常に懸念される問題になつておると思います。特に電力事情が非常に悪くなつて来ておるために、最近では中小企業経営難が続出しているという実情になつておると思うのでございます。今回の補正予算におきましては、中小企業に対する対策等について、あるいは国民金融公庫だとか、その他のところに若干のものがあるといたしましても、しかし今の見通しでは、これを完全に救済し得るというような形も見えていないように思うのであるが、さしあたり中小企業に対しての対策、特に電力事情悪化伴つて起きて来ている零細中小企業に対する対策等についての、大臣所信をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 中小企業に対しましての金融は、私の最も力を入れておるところでございまして、今国会におきましても、信用保証協会仕事政府で保険するこことして、中小企業信用保険法の整備の法案を出す予定でございます。お話のように国民金融公庫とか農林、漁業への出資等である程度まかなえるが、何分にも本体をなす一般金融機関の方に、中小企業金融をやるように特に勧奨いたしておる次第でございます。今電力事情によつて中小企業がどうなつておるかという御質問でございまするが、個々の問題につきまして、個人々々の分についてどうするかということはなかなかやつかいな問題でございます。もしそういう問題で組合等があり、それが商工中金の方に申出るようなことがありますれば、特に商工中金金融をつける用意はいたしております。
  5. 石野久男

    石野委員 金融の面から、特に国民金融公庫あるいは商工中金等の問題が、非常にわれわれにとつて関心の点なんでありますが、国民金融公庫については、今度の予算でもそれぞれ配慮はされておることはわかるのですけれども、前に予定されております公庫に対する見返り資金等からの配慮というものが、今一応立消えのような形になつて来ておるように見えるのですが、これについてはどういうような処置をとられるのですか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金中小企業あての四十億のうち、まだ未使用の二十億が残つておりますので、これを国民金融公庫を通じて、主として不動産金融をやろうという計画のもとに、今折衝を続けておる状態でございます。まだ確答は得ていないのであります。
  7. 石野久男

    石野委員 その点については年末の金融逼迫に対処して、十分活用し得られる見通しが立つておるかどうか、現在の見通しについて……。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 これは国民金融公庫を通じて新たにやろうとしておるのでございます。既存の金融機関で貸出しをしてくれれば、何も国民金融公庫を通じてやらなくてもいいわけでありますが、私としては、今までの状態からいつて金融機関ではなかなかむずかしいからこれをやろうとしておるのであります。いつ承認があるかどうかという見通しにつきましては、これは相手のあることで、言えませんが、できるだけ早い機会にやろう——しかしそれにいたしましても、国民金融公庫の十億の出資と、預金部の二十億がございますから、この三十億を出せば相当潤うのではないかと思つております。
  9. 石野久男

    石野委員 公庫に対する見返り資金の問題についての現在のところの見通しについては、はつきりしないという大臣お話であるが、この公庫の運用については、最近とみに中小企業等において、公庫の存在が非常にはつきりと認識されるようになつて来たと考えられるのであります。ことに公庫が非常に零細企業に対して、商工中金と同様に、大きな働きをして来ておるという事実に関連して、公庫業務を一層円滑にさせるため、公庫職員公務員を排除するという点については、しばしば業務当局からの要望もあり、また実際にそれを十分に活用するためにも、その配慮が必要じやないかということが、われわれもまたみな論議をして来た点であります。この点早急に公務員を排除するということなど考えることが至当であると思われるけれども、これに対する大臣の御所見を伺います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、輸出銀行とか、あるいは日本開発銀行は公務員になつておりません。従いまして国民金融公庫職員につきましても、公務員でないことにいたしたいというので、関係方面と話をしておるのでありますが、ただいまのところ結論が出ておりません。
  11. 石野久男

    石野委員 先ほどちよつと問題にしたのでありますが、電力事情等によつて、小さな企業が非常に経営状態が悪くなり、特に最近では統計等の上には数字は出ていないのであるけれども、至るところで中小企業が倒壊している姿が出て来ている。これに対して、政府としては特にこの電力事情が普通の状態でないという意味から、何らかの対策を立ててやらなければ、中小企業の将来というものは、非常に危險でないかというふうに考えられるのであるが、これに対して蔵相の意見を伺いたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 電力不足しておりますので、できるだけ電力不足をカバーすることが第一であります。しこうして十分不足をカバーできない場合に起る金融上の問題につきましては、これは個々の問題として取扱うよりほかにございません。
  13. 石野久男

    石野委員 電力事情がこれ以上悪化して行くということになれば、おそらく中小企業もつもつと大きな範囲で、その経営難という実態を出して来るであろう、そのために中小企業経営者、あるいはまたそれに従事しておる従業員諸君が、非常に大きな社会問題としてクローズ・アツプされて来るのではないか、こういうふうに考えられる。これに対して政府としては、何らかの救済手段等配慮する考え方、そういうものを現在どういうふうに考えておられるか、これについてお伺いいたします。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう大きな問題になつて来れば、私のところへ何か具体策等についての陳情があるはずだと思いますが、寡聞にしてまだ聞いておりません。お話のように非常に大問題になつてつて、ことに中小企業金融対策を講じなければならぬほどのことはないと考えております。
  15. 石野久男

    石野委員 大臣は、自分のところにまだ陳情が来てないから、問題はそう大して大きくないというふうに言われたのであるが、これは非常に大きな認識不足だと思う。ここ一日や二日は、休電というものが、若干の降雨の事情から配慮されておりますが、現在までは、大体どこへ行きましても週に二日の休電があつて、一日に必ず二時間ないし二時間半くらいの停電が行われておる。そのために一月のうちの作業時間というものは、東京都内等ではおそらく十五日か十六日くらいの作業時間しか持たれていない実情である。そういう実情から非常に経営者経営困難という事情が出て来、また従業員に対する給料の支拂い等が困難になつて来ておる。これらの人々が今まだ蔵相のところまで陳情に来ていない、政府に対して陳情が来ていないというのはあまりにも力が弱過ぎる。それと同時に、これらの人々がいわゆる組合運動的な形で終結する力を、いろいろな面から権力がこれを押えつけておる。こういう形で、これらの人々陳情一つの団体としての行為にまでまだ移つていないのである。けれども、実際にはこれらの諸君苦痛というものは、もう目に見えて出て来ておるし、またそれらのことが、今の電力事情悪化に対処する方策を真劍に考えているものだと思うのである。従つて大蔵大臣が、自分のところまで陳情が来ていないというような、こういう考え方ではいけないのである。今ではむしろそういう人々が、どういうふうにしてこれに対処するかというので、寄り寄り協議しているという実態が、現在の実情だと思うのであります。これからあと電力事情見通しが非常に明るくあれば、現在までの苦痛はあるいは排除できるかもしれないけれども、これからあと決してそういう明るい見通しはないのであるから、これはもつと真劍に考えなければならないので、大蔵大臣の今の考え方は、下部における一般中小企業実態を把握していないもので、それではいけないと思うのであるが、もう一度所信のほどを聞かしていただきたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 電力不足産業に及ぼす影響につきましては、十分知つております。しかし、あなたのお話は、今にもたまらぬという話でございますから、まだそうまでは私は考えていない。根本策といたしましては、まず水力の不足火力で補うべく、あらゆる方法をとつて個々の人よりも、電力をたくさんにするということにつきまして万全の策を講じている。ことに関西の方におきましては、火力の方で、日に七千トン、八千トンたく炭が一日、二日分しかないというので、応急の策をとりまして、十日分あるいはそれ以上出しておるのであります。東京におきましても、石炭の手配をいたして、そうして電力不足をカバーするということが第一で、これには万全の策を講じておる。しこうしてそれでもなお今まで足りなかつたことにより、これら産業生産の落ちたことも十分知つておりますが、個々の業者が今にも倒れるようになるというようなことをおつしやるから、私はそう考えていない。自分といたしましては、そういうものにつきまして、商工中金なり、あらゆる方法をとつて手配をいたすようにしております。
  17. 石野久男

    石野委員 まず第一の方法として電力を増強するということは、ごもつともである。しかしながら実際から見ると、電力事情はこの冬を通じてそう大きくよい方向に転換するとは思われないので、従つてわれわれとしては、中小企業苦痛は、どうしてもやはり政府等において対策を考えなければならぬというふうに思うのである。ですから、大臣としてはこれに対して当然十分な配慮をしてもらわないと困る、こういうふうにわれわれは考えるのであります。いま一度、こういうような実際に電力不足伴つて起きて来ておる被害に対する対策を、この際具体的に考慮される用意があるかどうかということについての大臣所信だけをお聞かせ願いたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 これは私としては、全般的にいろいろな手を打つよりほかにないのでありまして、人によつて困りようも違います。産業の種類によつても違います。それを具体的な措置をすぐ講じろといつても、これからの電力見通し等から考えて、個々の問題について考えて行かなければならぬので、具体的に第一の問題としては、電力をふやすことだ。しこうして賃金拂い、その他の点につきましては、これは個々の問題で、電力事情悪化に伴う金融については、個々に考えるよりほかない。大蔵大臣としては、元を直すことを主にし、そうしてその足らざるところは金融をつけてやるよりほかにないと思つております。
  19. 石野久男

    石野委員 いま一度その点についてただしておきたいのですが、電力事情等によつて中小企業が非常に悪い状態なつた場合には、特別に金融措置を講ずるよりほかにないということについて、具体的に大臣としては、これからあと特に年末等の非常に金融事情等が苦しくなる実態に対しての構想を、もしここに考えておられたら、その点についても少しはつきりお示し願いたい。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 物価が動いたためのものか、電力事情のためか、いろいろな事情がございますので、こういうものは全般的に私としては金融の疎通をはかるように、全体の施策を講ずるよりほかしかたがない。しこうして個々の問題につきましては、組合を通じ、その他の事情を調べて、具体的措置をとるよりほかにないと思います。
  21. 石野久男

    石野委員 問題は別なのであるが、今專売公社裁定の問題が議会でも問題になつております。この裁定の問題については、簡單に言えば、裁定実施のために四億そこそこの金が足らない。これは公社の方でもすでに、予備金等の流用を通じて、十分に実施し得られるということの意思表示がある。この点にについていま一度蔵相としてこの問題についてのはつきりした態度を知らしてほしい。ことにこれについて四億という金は、実際に專売公社仕事としては、わずかに一日が一日半くらいの作業量のものであるので、これはなるべくやはり今日の段階としては、蔵相のゆとりのある考え方から、これを実施させるようにしてもらつた方がいい、こういうふうに考えるのですが、蔵相としてはどういうふうに考えられておるか。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび答えた問題でございまして、予算総則に四十一億円ときまつておりますので御審議願つておるのであります。もしあなた方がお出しになりたければ、国会で決議なさるのがいいと思います。私はたとい四億円であつても、そしてまたほかに予備金が何十億ありましようとも、こういうところに出すべきものではないという信念を持つております。
  23. 石野久男

    石野委員 国会が承認しなければそれは出せないということは、その通りです。だからその問題について政府及び与党諸君が、もつ労働者に対する考え方を改めなくちやならぬ、こういうふうに考える。それは今度の裁定の問題、特に給与ベースの問題については、ただひとり專売公社だけではなくして、あるいは政府職員地方公務員等についても、一般労働者についても、昨年以降の物価高伴つて生活が非常な苦しい立場に追い込まれておるということは、これは蔵相といえどもはつきりおわかりになつておると思う。だからわれわれとしては、特にこの裁定の問題が以前の数字を基礎にして考えられておるものであつて、最近における生活実態を補強するのには、もつもつとベース・アツプを考えてやらなくちやならぬ段階だと思つている。それに対する政府及び与党諸君のそういう考え方は、非常に労働者に対する不人情なやり方だ、こういうふうにわれわれは考える。これは今の段階ではどうしてもそういう問題について、もつもつと真劍な考え方をしてもらわなくちやならぬと思う。今どれだけ予備金があつても、どういうようなことがあつても、これは予算総則できまつておるのであるからと蔵相は言うのであるが、それではあまりにも政治というものを理解しないと思う。もつとわれわれは生きておる政治の問題を考えるにあたり、実態に即応して、特に一般災害等におけるところの予測せざる事情に対しては、当然政治的な考慮があるのであるから、労働者に対する対策としても、当然こういう物価高は、実際にはこれは昨年以降における吉田内閣政治の結果として出て来おると、われわれは見ておる。そういうような政治的な責任は当然政府としても持つべきだ、こういうように考えるわけでありますが、いまひとつそういうものに対する蔵相考え方を、はつきりさしていただきたい。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 よく日本財政経済事情を御検討願いたいと思います。それは專売公社の分で一万四百円にいたしまして、そうしてこれに〇・八箇月分の給与を出した場合において、国鉄との関係はどうなりますか。国鉄は年末の手当はないのであります。それで一万八百円で裁定を引下げておるじやありませんか。もし一万四百円をのみまして、しかも〇・八箇月をやつたならば、国鉄よりもうんと上になりますよ。国鉄従業員と專売の従業員との構成を比べてごらんなさい。しかも過去四、五年前の專売公社俸給が急激に上つた事実を考えて、——私は政治には公平がなければならぬと思う。そこで国鉄との関連からいつても、公務員との関係からいつても、私は補正予算で四十七億円の給与で、がまんしてもらうよりほかにないと思う。また一般公務員について上げろと言われますが、人事院の言う通り給与を上げますと、来年度は、一般会計特別会計国鉄その他を入れますと、九百何十億円にふえる。日本の農民あるいは中小企業の人が税金で非常に困つておる場合に、国家公務員だけ給与をどんどん上げるわけには行きません。そういうようにしましたらインフレになつてしまつて、結局困るのは俸給所得者が困る。で私は人事院の勧告も、一応は考えましたが、あの程度給与引上げでがまんしてもらうほかない。経済をこわして一番困るのは俸給所得者であります。それをお考え願いたい。
  25. 石野久男

    石野委員 今蔵相からの話によると、非常におかしなところから引合いが出ておる。なるほど大蔵大臣の言うように、專売公社の問題だけが考えられるのでなく、国鉄の問題もそうだけれども、こ場合にわれわれが引合いに出さなければならぬものは、ただ労働者賃金の問題だけじやなくして、一方では事変によつて厖大な、蔵相といえども予測されなかつたような利益金会社等が持つておる。こういうように会社資本蓄積の状況もよくなり、利益率も非常にふえておるという事態のもとにおける税負担国家がいろいろな仕事をするための税負担が、負担能力のあるところから十分にとられないで、ただ労働者の低賃金にしわ寄せされておるところに問題がある、こういうようにわれわれは考える。だからわれわれとしては、国鉄の問題にしても、国鉄は決して一万何ぼの金で、がまんしておるんじやないと思う。実際には国鉄従業員給与を上げなければならぬのを、無理に押えておるのが実態だと思う。だから專売公社にしても同じことである。今度の国鉄運賃値上げをするという事情等についても、国鉄の労務者は、国鉄経営がまずいために、これらの問題が生じて来たものであるとは決して思つていない。これらのことは結局政治の欠陥から来ておるのであつて、そういう問題に対する蔵相考え方は、てんでわれわれとは違うのであります。これはやはり労働者、特に戦後の日本経済自立の問題に対する労働者が負わなければならぬ任務等も考えて、もつもつ労働者が再生産できるような形に、持ちこたえて行くようにしてもらわなければ困ると思う。こういう点で、今の蔵相考え方については、これは討論じやないが反対である。  なお通産大臣が見えておるので、通産大臣に今の問題に関連して聞きたいのであるが、現在の電力事情のもとにおいては、非常に中小企業は苦しい立場に追い込まれて行つておる。この中小企業、特に零細企業が非常に困難な事態に追い込まれておるのであるが、通産大臣としては、この電力事情伴つて中小企業諸君が苦しくなつて来ておる状態に対する対策方法というものをどういうふうに考えておるか、担当大臣としての所見を聞かしていただきたい。
  26. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 お答えいたします。御承知のように電力事情で、各方面とも非情に悪い影響があるのですが、特に中小企業には、方面によりましてはいかにも深刻な影響があります。たとえば綿企業なんかは非常に困つております。小さな企業などの方も困つております。はなはだしいのは六、七〇%くらいに生産が落ちているものもあるようですが、またあまり影響を受けていない面もあります。これの対策としましては、第一に考えなくてはいけないのは、電力を多くしなければならぬことでありますが、なかなかそう増強ということもできないのですが、そういう中小企業人たちが一番希望しているのは、電力の配給が時間がきまつて、あるいは夜になつてもしようがないけれども、大体毎日一定量の電気がほしいということを非常に熱望しております。それは私ももつともなことだと思いますので、公益事業委員会へしきりに交渉しております。それからもう一つ電力補充策としましては、実情を調べますと中小企業石油発動機を持つてつて、それが動いていないものが相当あるのであります。それらに対して石油の特配をして、これら遊休機械を動かすようにいたしたいと考えております。電力が欠乏してやむを得ず深夜作業などをやつて、毎日の活動時間が減つておるというものはありますけれども、仕事を休んでおるというのは、今までの通産省の調べでは現われておりません。それから賃金拂いの例も、通産省で調べましたところでは現われておりません。ただ、労働時間が減りまして、收入が非常に減つておるというような面はあります。この中小企業への影響につきましては、私も非常に心配をいたしております。
  27. 石野久男

    石野委員 中小企業に対する対策として、先ほど大蔵大臣言つてつたが、通産大臣も同様に、電力を増強することが第一の方法であると言う。その次には、石油発動機等を持つておるものがあるから、そういう遊休機械をできる限り活用するようにするのだ、こういうふうな話でありますが、お尋ねしたいことは、この電力事情については、今年の冬に対して十分に生産を維持し得る程度にまで、電力を保持する見通しがおありになられるのかどうかということです。この点をはつきり聞きたいと思います。
  28. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 電力事情は、はつきり申しますと、今より悪くならぬように全力を盡しております。
  29. 石野久男

    石野委員 今電力については十分な見通しを持たない。だから、そういう事情のもとでは、当然何らかの形で、中小企業のそういう電力不足によつて起きる事情に対する対策を考えなければならぬと思うのであります。先ほどは、統計上には收入減によつて企業が倒れたということも出ていないし、あるいはまたそのためにいろいろと不都合になつた点は見えないのだというお話であつたけれども、これはあと一、二箇月すれば、当然はつきり出て来る点だと思うのであります。従つて電力事情の十分の見通しがないといたしますならば、何らかの処置をしなければならぬと考えるのだが、それに対する対策について、ひとつお考えを述べていただきたい。
  30. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 その点は非常にむずかしい点で、いろいろ研究をしておりますが、今に、あるいはもう一層困るような事情も起るかもしれませんので、まだその結論を得ておりません。なお企業長官に御答弁をさせます。
  31. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 お答えいたします。さしあたり、電力危機の、中小企業に対する影響につきましては、先ほど大臣からお答えいたした通りであります。私どもといたしましては、中小企業電力を、できるだけ計画的な、いわゆる利用のしやすい形において配給していただくというように、いろいろなくふうをいたしておるわけでありますが、全体的に電力自体の増強策を講じておるのと並行いたしまして、石油発動機を利用いたしますると、——現在の石油発動機生産力の現有力等から考えて、多くは期待できませんが、農業收獲期が過ぎますと、農業発動機があいて来るというようなことにもなりますので、それを借用して、そうして石油発動機によつて、できるだけ動力を補充して行きたいと思つております。これは今、石油の特配というような形で話を具体化さして、ぽつぽつ実施に移せるような段階に相なつておるわけであります。大体今年の冬の間におきましては、ごくわずかではありますが、そういうような方法で、できるだけ電力の増強をやつて行くことによつて、この困難な時期を切り抜けて行きたいというふうに考えるわけであります。
  32. 石野久男

    石野委員 企業庁長官のお話では、石油発動機で相当程度この電力不足を補えるというようなお話でありますが、実際に農業用に使つている発動機を中小企業に使うについては、机上プランでお考えになるようには、そうスムーズに適用できるとは考えられないのであります。その石油発動機で大体どのくらいの程度電力量に相当するものが補充できると考えておりますか。
  33. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 お答えいたします。石油発動機による動力につきましては、機械の装置によつてそれがかわり得るものとそうもないものとにわかれるのでありまして、電燈を使つてやる直結モーターでない限りにおいて、相当利用できるのであります。従いまして、現在ありまする発動機が全部それに行くというふうには考えていないのでありまして、私どものただいまの計算では、中小企業の所要電力の大体一割見当くらいは、これでさせたいというふうな形に考えておるのであります。これは農家の保有いたしておりまする石油発動機の数等から考えまして、ごくわずかでありますが、大きさその他の関係もありますので、こく内輪に見まして、その程度はひとつできるだけ具体化して行きたいと考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 今の話では、石油発動機を使つても、ごく僅々のものしかそれは実際に効果が出ないということが、はつきりしたように思います。従つて、当然この冬に起きるであろう電力不足に伴う中小企業の危機は、深刻なものを予想されるのであります。これに対して、特別にそれらの中小企業に対する救済策といいますか、政府の方針で具体的な構想があれば、それについての構想を述べてもらいたい。それからもしそういうものがなければ、どういうふうに今構想を練つておるかという点について、はつきりひとつ御答弁願いたい。
  35. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 お答えいたします。まず私どもの考え方といたしましては、全力をあげて電力の供給増をはかつて行くという方向で今進んでおりますので、この政策ができますると、そう心配することもないのではないか、減ることは減りまするが、相当程度のいわゆる中小企業向けの電力の配給と申しますか、配電ができると考えておるのであります。それに加えますに、今申し上げましたような、わずかでありまするが、そういう代用施設によつて電力の供給を確保して参りたい、こういうふうに考えておるのであります。従いまして動力源の不足から、さらに一層困難なる事態を予想するというふうには、私どもは考えておらぬのでありまして、まずその動力の供給によつて、この急場を切り抜けて行く、こういうふうに考えております。
  36. 石野久男

    石野委員 労働大臣の方がお急ぎだそうでありますから、労働大臣にお尋ねしますが、電力事情悪化伴つて十月十一日に龜井労働基準局長の地方労働基準局長あてに出されておる一つの通達がありますが、その通達は、非常にいろいろな点で、労働三法の精神を誤らしめるような危険がないかということが一つであります。それから、そのことによつて非常に労働基準法の精神が殺されてしまうというようなことを、われわれは心配するのであるけれども、それについ労働大臣としては、ああいう通達、特に休電によつて起きるいろいろな処置等についての考え方は、あのままでいいのかどうか、労働大臣の御所見をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  37. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。基準局長の通達のどの部分についてのことでございますか、通達の趣意は、電力不足に伴う各事業場の稼働率の低下に対して、できるだけ賃金收入減を来さないようにする措置として、あるいは休日を振りかえるとか、あるいは就業時間を変更するとかいうような方法によつて生産の減退と賃金の枚人減を、少しでも少くするように手配をとつてもらいたいという趣意の通達をいたしておると思います。その中でこの電力不足休電による休業は、使用者の責めに帰すべき事由というふうに解するか解しないか、それによりまして、休業手当とかなんとかいう問題が起りますが、従来とつております解釈では、かようなことは使用者の責めに帰すべき事由ではないという法律上の解釈で、それをいたしましたのは、実際電力が来ないために会社が休まなければならぬ、会社が休んで、そういう取扱いをどうするか、基準法上どういうふうに解釈すべきであるかという問合せが、基準局にひんぴんと参りまして、それに対する労働省の解釈をあわせて通達をいたしておる。それは従来の慣行に従い、当然の解釈を解釈として通達をいたしておる。しかしながらそういう解釈を通達したために、従来その種の場合に使用者が拂つておられたような手当を、それを口実としてやめられるというようなことは、これは思わざるもはなはだしいものでございますから、そういうことのないようにということを、念を入れて処置いたしておるわけであります。従来慣行的に手当を出していただいておる使用者に対しては、今日の場合でございますから、できるだけ従来の慣行に従つてそういう手当も出してもらうように、私もお願いいたしております。
  38. 石野久男

    石野委員 基準局長の出した通達のどこに悪い点があるかというような逆問であつたけれども、やはり全体を通じて、特に一番最後の方につけ加えられた、女子年少者に対する深夜作業はやつてはならぬということの通達、これはその通りでいいのでんが、その他のものについては、全般を通じて、やはり労働三法の考え方からしても、非常に労働省のやり方というものは、一方的に行き過ぎが多いと考えております。そうして全般を通じて、どの企業においても労働組合を持ち、労働組合との間に労働協約もみな持つているはずです。従つてその労働協約の中には、みな就業協約とかなんとかいうものを持つているはずです。そういうような建前になつている労働者に対して、一方的にこの時間に対しては手当の支拂いはしなくてもよろしい、あるいはまた年次有給休暇の操作を、経営立場からのみこれをかつてにやつてもいいというような通達の出し方は、いわゆる労働協約を建前とする労働組合のあり方についても、もう決定的に否定する立場労働省としてはとつているように考えられる。これは最近における労働三法の取扱いの問題についての考え方の問題でありますが、われわれとしては労働三法が、今後どういうように政府の意図において改正されるか、これはあとで聞かなくてはわからないのだが、その考え方の中に、最近の経営者考え方としては、労働組合法等の精神を抹消するような形で、なしくずし的に労働基準法等をくずして行つている形が出ていると思うのです。そういうようなことに、逆にこの通達が裏づけをするという点が、非常にわれわれにとつて重要な問題だ、こういうように考える。だから労働大臣としては、こういう通達の出し方をするについても経営者のみを一方的に見て、労働者立場というものを全然抹消しているような通達の出し方等は、これは考慮しなければならぬし、またそういうことでは労働法の意思というもの、考え方というものも通らない、こういうように考えるわけなのです。そのような意味で、もう一度労働大臣がこの通達を読まれるならば、その点ははつきりすることだろうと思うのです。私はやはりこの通達の出し方等については、もつ労働者立場をも真劍に考える立場がなければならぬと思う。それと同時に、この休業手当等の問題についても、一方的に支拂わなくてもいいのだということのために起きる障害というものは、案外に労働省当局が考えている以上に、今日では一方的に労働者に押しつける形が出て来ている実情もあるので、これは何らかの形において是正してやらなければ、労働者は非常に困るということを心配するわけです。その点について労働大臣考え方を聞かしていただきたい。
  39. 保利茂

    ○保利国務大臣 その通達を、何が政府が一方的に、労働者の方を少しも考えないでというように、解釈せられておるようでございますけれども、それは全然逆でございまして、何とか時間の変更とか、あるいは休日の振りかえをしてでも仕事をやつていただいて、そうして賃金收入減を幾らかでも少くするようにという思いやりから、これはその実施の方法としては公益事業委員会にも、そういうことのできるように連絡をしてお願いをしているわけです。労働者賃金がどうなつてもいいというような考えでありますれば、そんな必要は私は全然なかつたと思います。あくまで労働省から出しております通達の趣意は、労働者賃金が幾らかでも、この電力不足によつて收入減を来して来る、絶対的なことはこれはやむを得ないけれども、その中において、幾らかでも收入源が減るようにしてもらいたいという通達の趣旨でございまして、お話のような趣意では毛頭ございません。
  40. 石野久男

    石野委員 今労働大臣の言われる点、特に労働者賃金を確保するためにという、そういう意図は大体了解できる。しかしながらこの書き方、通達の出し方が、労働大臣考え方がそうであるにもかかわらず、下部では逆に悪用される危險があることを私は指摘するのであるから、その点はひとつ考慮してもらわなければならぬということを言つているのであります。なお私はこの労働三法の改正の問題等について、特に昨日の次官会議では、ポツダム政令の改廃に伴つて、この国会労働関係の法律案を出すというようなことが、きようの新聞等に出ておるのであります。それに対して労働法の改正の問題等はどういうふうになつているかということを、あとで聞かしてもらいたい。それから今度の予算で特徴的な問題として、労働関係の経費の中に、特に失業保險給付金というものが非常に減少されている事実がある。これは私どもにとつては非常に理解ができないのであつて、本年度これからあとの日本における失業の実情というものに対して、労働大臣はどういうふうに見ておるか。失業者というものは非常に減少するというような見通しの上に立つて、こういう予算が出ておるのかどうかという点を、特に私はお尋ねしたい。労働省の社会労働施設費の中で約十四億三千万円という金額が、失業保險金の給付が必要がないからというので減らされて行くのは、これはこの予算での特徴的な問題だと思うので、その点今失業の将来についての見通し等どういうふうな構想を持つておられるか、はつきり聞かしてもらいたい。
  41. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えします。二十大度の予算の基準になりました失業保險の支給月額は、昨年の八月を基準として一応予想したわけであります。昨年の八月には保險金の支給額が十四億五千二百万円という数字を示しておるわけであります。それによりまして予算をつくつたのでございます。おおむね本年度の保險金の支給総額を百六十八億というように見ておつたわけでございますが、昨年来失業情勢は——むろん国民経済全体の線からながめますと、相当深刻なものはございますけれども、八月当時に比較いたしますと、非常に緩和されて来ておるのでございまして、昨年の八月の保險金の受給者が約四十一、二万になつてつたのが、昨今は二十二、三万——二十二万二千、二十二万四千、二十二万六千というような数字を示しておりまして、保險金の支給額も十億台をこのところ推移しておるようなことでございまして、ここに失業の保險の関係から見ますと、非常に情勢は緩和されて来ておりまして、十四億何がしを減らしましても、保險支給に何らの障害が起らないのみならず、なお保險料の積立金も剰余金も百億ほど残つておりますから、そういう措置をとりました。従いましてこの状態が今後悪化しない限り、この点に対するただいまの御懸念はない、こう考えておるわけであります。なお失業保險の経済が相当余裕を示しております。そのことは一面においては失業保險料をとり過ぎておるということにもなりますから、むしろ失業保險料の軽減改訂をいたしたいという考えを持つておる次第でございます。
  42. 石野久男

    石野委員 特に失業保險金の受給者が非常に減つて来ておるという当局のお話にもかかわらず、至るところの職業安定所では、実際日雇い労務者が職にありつけないであぶれて行く実態は、非常に深刻なものがあると思うのであります。私はこの統計の中に出ている数字のからくりといいますか、そういうものについて、もつ政治的な目を見開いてもらわなければならぬのではないかと思つております。ことに失業者が減つてつておるというが、最近においては臨時工とか、あるいは非常勤勤務者というような者たちが、片方にあるわけでありまして、この臨時工あるいは非常勤の勤務者という者の増加が、最近の状況では非常に顯著なものがある。ことに人事院が出しておる本年九月二十日のいわゆる非常勤勤務者の実情などによると、驚くほど大きなものがあつて、大体において官庁関係一般の常勤者が八十数万人に対して、非常勤が四十七万人を越えるというような数字が出ておる。これに対する労働者の非常に不安定の労働條件等については、労働大臣は主管大臣として、労働者生活安定、労働條件の安定化というものに対して、どういう構想をお持ちになつておるか、これをどういうようにしたら常勤の方に切りかえることができるか、そういう点についての構想をひとつ聞かしていただきたい。
  43. 保利茂

    ○保利国務大臣 日雇いの関係は、最近の情勢は大体一日平均職業安定所に出頭せられる日雇いの方々は、約三十万内外の状態を示しております。これに対しまして一日平均の就職者は二十四、五万、おおむね失業対策事業あるいは民間の求人によつて、二十一日ないし二十二日の就職稼働をいたしております。この面におきましては、御指摘ではございますけれども、情勢は著しく緩和せられておるわけであります。ただ先ほどもお話がございましたのですが、関西方面の九月、十月の電力不足のために、なるほど日雇いでありますとか、あるいは臨時工でありますとかいう、そういう人たちの就職率が非常に悪くなつて来ておるということは事実でございます。それに対しては、大阪府、兵庫県等地方当局と連絡をとりまして、できるだけこの失業対策の事業の操作において、これを緩和して参るという処置をとつております。なおこれは臨時工をさしてのことだと思いますが、臨時工を常傭化して、そうして職業の安定をはかるべしという御意見は、これはごもつともであります。しかしこれは結局その企業が充実をして、安定をして来て、その企業の安定の中において初めて働かれる人たちの職業の安定が得られる、私はこう思つております。どこまでも産業企業の充実、安定ということによつて、その問題を解決して行く以外にはない、かように考えております。
  44. 石野久男

    石野委員 今の非常勤の問題についてでありますが、これはその企業の安定性がなければだめだということの意見に対して、たとえば人事院からは官庁労務者等について、常勤勤務者が約八十九万人に対して、非常勤勤務者が四十七万九千人おる、こういう統計が出ておる。こういうような数字の出ておることを考え、しかもこれらの人々は二箇月交替で、いわゆる雇用の更新をやつておるわけです。こういう実態があつてなおかつ最近は行政整理等による人員の整理が行われるというようなこと等ついては、非常にわれわれは矛盾を感じるわけです。ことにこれらの四十七万人の官庁労務者における非常勤勤務者あるいは一般民間産業においても、これに対比するような日雇い労務者、臨時工等があるわけでありますが、これに対するいわゆる常勤化の問題が一つと、それからいま一つは、そうういふうにして恒常的に非常勤勤務者として雇われておる諸君に対する実態があるにかかわらず、今度人員整理を行うことについての労働大臣考え方、またそういう人員整理の問題から生ずるいろいろな労働問題についての、今後の対策等についての所見を、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  45. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の行政改革に伴う人員整理の失業対策につきましては、内閣委員会でも申し上げておりますが、おおよそ実際の整理は六万人内外になるのではないかというように見ております。そのうちで再就職の希望を持たれる方がどのくらいありますか、従来の経験から見ますと、おおむね六、七割くらいが再就職の希望を持たれる方ではないか。それらの人たちに対しては、実施官庁においてまず十分ごあつせんをする。そうしていわゆる民間企業に対する再就職制限を、大幅に今回の定員法の改正法案で示しております。その処置をとり、さらにまた職業安定所を中心として求人開拓をして、再就職の機会を便ならしめますと同時に、ただいま御審議を願つております予算の中に臨時職業補導の施設を強化いたしますために、国としては四千万円の補正予算をお願いしておるわけです。何も強制するわけではありませんが、安定した職業について、将来の生活の安定を求めようと希望せられる方に対しては、やはり労働市場の状態から見まして、何を申しましても技術を持つということが第一でございますから、技術習得の便をここに臨時的に設けるために、従来もやつて来ておりますが、二十七年度の臨時措置として、少くとも一万人以上の就職ができるように、臨時補導施設のために予算をお願いしております。それによりまして労働市場と見合つた技術習得の処置を講じまして、臨時ではございますけれども、とにかく一人でも多く産業戦線に立つて行かれるという方に対して、その技術を身につけるようにいたしたい、そういうことでその処置を講じて参りたいと考えております。
  46. 石野久男

    石野委員 今臨時工、特に非常勤勤務者についての考え方について御答弁を得ましたが、もう少しはつきり聞かしていただきたい。労働大臣はこういう非常勤勤務者等の非常にたくさんおる実態を、どうふうに見ておられますか。
  47. 保利茂

    ○保利国務大臣 非常勤勤務者というのは、どういうことをおつしやるのですか。
  48. 石野久男

    石野委員 それは民間産業ではいわゆる臨時工であり、官庁関係では臨時として、いわゆる常勤者でない労働者を雇つておるわけであります。結局民間の臨時工と同じもので、しかもそれは二箇月ぐらいごとに更改して行くわけで、この数が少数ではなく、非常に多い。常勤者の半数以上に達しておるというところに問題があるわけです。こういう点についての御意見を承りたい。
  49. 保利茂

    ○保利国務大臣 むろん非常勤にいたしましても、労働法といたしましてはあまりかわりません。不安定の状態である労働者が、安定した労働條件の中に立つようにしなければならぬことは仰せの通りでございます。しかしさらばとて、それだけの経済基盤、産業基盤なしにそれを安定させるということは、これは事実不可能なことでございますから、何といたしましても産業の基盤を廣充し、安定して行くということによつて、解決して行くほかにないと考えております。
  50. 石野久男

    石野委員 まだ労働大臣からは十分満足した答えをもらえないのでありますけれども、今岡野国務相が非常に先を急いでおられるそうでありますから、二つの点だけについて簡潔にお答えを願いたいと思うのであります。平衡交付金の問題が百億ということに今度の補正予算で相なり、この平衡交付金の問題については、各地方団体において非常に大きな問題があつて、これの増額を要請して来ておるわけでありますが、特に総額がもう百億ということで、今日限られておるという問題について——時間がありませんので多くを聞くことはできないので、一つだけその点に関して伺いますが、平衡交付金の配分の問題について、地方の方で非常に問題があるように聞いておる。ことに府県、市町村との間の配分の問題について、単位費用補正係数というものには、非常に不公平があるという声を聞いておるのでありますが、これについて国務相としては平衡交付金の市町村あるいは府県、これらのものの関連性による公平性を期するために、問題になつておる単位費用補正係数というものについて、それが妥当なものであるか、あるいはそういう地方において危惧される点については、どういうふうな処置をとつて、府県市町村に対する公平性を期するようにされようとしておるか、この点について御所見を伺いたい。
  51. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。地方財政委員会でそういうようなことを規定しております地方財政委員会規則というものが、ございまして、現段階におきまして最も理想的であると点えられる方法によつて、規則をきめてやつておりますけれども、御承知の通りに一万数百あるところの地方団体は、いろいろ個々別々の特殊な事情もございましようし、そういうこともまだはつきりされていない点もありますので、御承知の通りにあの規則というものは、実は法律できめなければならないものでございますけれども、法律でやりますとわずかな欠陥を発見しましても、一々国会の御承認を願つて法律の改正をしなければならぬということになりますので、実は二十六年度はすでに法律でやらなくてはならなくなつておるにもかかわらず、そういう今まで予見し得なかつた不公平あるいは欠陥があるというようなことも、規則によつてどんどん直し得るということによつて、毎日々々その規則の改正とか改訂とかいうようなことができるような状態で、一年間法律にすることを延ばして、規則でやつておるわけであります。ただいまのところにおきましては、われわれが地方の実情に最も即応した一番いい規則であるという前提のもとに、ただいまの規則でやつておるわけでございますけれども、まだおそらく地方財政平衡交付金法を発布いたしまして一年少々にしかなりませんものですから、あるいは地方によりましては不公平だというような点がないとも限りませんが、その辺のことでもしお気づきの点がございましたら、ひとつ地方財政委員会の方へ具申くださいまして、そうしてわれわれが不在なる政治を誤まらぬようにやつて行けるように、ひとつさしていただきたいと思います。
  52. 石野久男

    石野委員 配分の不公平の問題がもしあれば、それは当局で是正するような処置を講ずるという今の所見については、これはもつと具体的に、やはり市町村等においてそういう具体的な事実が出たときに処置しようがなくて、特に町村のような零細な自治団体におきましては、意見具申とか陳情などをせよといつても、なかなか容易にできる問題でない場合が多いのでございます。ことにその配分が府県、市、町村というような一つの地方団体の中の、いろいろの組織関係の問題でありまするだけに、一挙にこれを国の問題にまで持つて来るということは、地方団体としては非常に困難な事情があると思われるので、これについてはもつもつと当局の配慮が必要じやないか、こういうふうに思うのであります。従つてこういう問題、特に単位費用補正係数というようなものなどに、非常に不公平性があるというようなことについては、あらためてやはり当局で御検討してもらわないと、実際に平衡交付金というものが地方に出ても、それが地方団体としては非常に不公平に行き渡るような場合があると考えられるので、この点はひとつ是正していただきたい。  それからいま一つ、今度の平衡交付金の配付の問題と関連して、地方公務員のベース・アツプの問題で、国家公務員のベース・アツプとの関連性を調整するというような考え方から、相当程度地方の公務員関係のべース・アツプに制約が加えられるというようなことを聞いておるのでありますけれども、それについて国務大臣はベース・アツプの問題について、地方公務員のあり方というものをどういうふうに考えておられるか承りたい。
  53. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方公共団体は自治を許しておりますから、もし財源措置が地方公共団体の単独な立場からやれるならば、いくらベース・アツプされようと一向さしつかえない、こう私は考えます。しかしながら御承知の通りに府県におきましてもその通りでございますが、市町村もその通りでございまして、平衡交付金並びに国家負担金というようなものを、どんどん中央政府から出しておる財政状態でございますから、もしベース・アツプをいたしますときにおきまして、地方はかつてにやれる立場にあるから、かつてにやれるんだけれども、しかし足りないときには、やはり平衡交付金とかなんとかいう中央の財政の資金を持つてつて、補給しなければできないという立場におります以上は、その限度におきましてはやはり中央の公務員と地方の公務員とが、つり合いをとることにしなければなりません。財政が非常に苦しくて中央からお金をもらつて、そうしてベース・アツプしなければならぬ立場にあるにかかわらず、地方は独自の立場でやつて行くのだから、高く上げてもいいといつて地方がうんと高く上げるということは、私は国家立場から見て不公平だと思いますから、もし平衡交付金で算定いたしますならば、地方の公務員は中央の公務員よりはこれだけ高いから、ベース・アツプするときは交付金の交付の額のもとにおいては、このくらいの程度に限度をきめて、これを上げたらどうだということは、われわれが考えた次第でございます。そういうようなことを私は地方に向つてお勧めしたいということを考えております。
  54. 石野久男

    石野委員 中央から財源をもらつているのだから、中央と地方とのベース・アツプの問題の調整を考えている、こういう意見はいかにもごもつともなようにも聞えるのでありますが、しかしながら実際現在その給与をもらいつつあるものに対して、今度のべース・アツプが非常に制約を受けるということについては、地方で職を持つているものにとつては、非常に生活上の苦痛がそのまま残つてしまうというようなことになつて、ちつとも給与の改善の問題になつて来ないというふうな考えであつて、これはやはり無理にそういうふうな制約を加えないで、地方地方におけるところの財源の、自主性にまかせる方がむしろいいじやないか。ことに平衡交付金で、すべての地方の金が全部まかなわれているわけでないので、地方財政の財源もまたその中にあるのであるから、それを全部中央で制約して、一つの押えをきかすというようなことは、非常に行き過ぎじやないかというように考えるけれども、その点についてはどうであるか。
  55. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の立場といたしましては、何も地方で財源があるのにそれを減らして低くしろ、こういうことをお勧めするわけではありません。平衡交付金を算定いたしますときの勘定の基礎といたしましては、このくらい地方の公務員は高いのであるから、中央の公務員が千五百円を上げるときに、これがもしかりに地方公務員が五百円高かつたとしますれば、そのときに平衡交付金としては中央から出す金は千円出して、そうしてつり合いをとる。しかしながら地方において、これは財源があるから、われわれの方はそれ以上やるおつしやれば、これは自治の立場であつて、中央政府が干渉すべき立場でないと私は考えます。
  56. 石野久男

    石野委員 一応確認しておきますが、今の観点からすると、国家公務員と地方公務員のベースの問題については、政府としてはとにかくそれは制約するというようなことをしないで、それを地方自治団体の自由裁量にまかすという考え方、そういうふうに受取つていいわけですか。
  57. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。どこまでも平衡交付金を地方に流しますところの基礎といたしましては、やはり中央の公務員と地方の公務員とがつり合いがとれた勘定の基礎のもとにおいて、平衡交付金を出す、しかしながら地方に非常に財源がおありになつて、そうして私の方ではこれだけ支給ができるのだからということになれば、それだけをお上げになつても一向さしつかえない。これが自治の本体であると私は考えます。
  58. 石野久男

    石野委員 農林大臣にお聞きしたいのでありますけれども、今農林大臣がおりませんから、関連する問題で経済安定本部長官にごく一、二の点をお聞きしたいと思います。それは公共事業関係で、特に土地改良等の問題が重要な問題になつていると思うのでありますが、この土地改良の問題で、今度の補正予算を見ますると、土地改良に出ておる事業内容の中の費目を見てみますると、費目変更というようなことで新しい作業というようなものがあまりない。それに今度の三十六億何がしの費目の中では、特に寒冷地単作地帶関係の費目だけが出ておつて、土地改良としてはそれ以外のものはほとんど持たれていないのが実態であります。これについて私は補正予算の性格からいつても、單作地帶に対する手当の必要性は、十分わかつてはおるのでありますが、寒冷地等における冬季作業というものは、これからあと下半期においてはほとんどできない、そういうときにことさらにこういう経費の計上が行われるということについては、ちよつと理解のしにくい点があるのですけれども、これについては、特にどういうような観点からこの三十六億という予算が、こういうように寒冷地帶を主として考えられるような構想で組まれておるかということについて所見を承りたいと思います。
  59. 周東英雄

    ○周東国務大臣 三十六億の中の二十億は、議会で通過いたしました積雪寒冷地帶の対策としての土地改良費であります。その他には砂防とか灌漑も入つておりますが、大体温暖地におきましては小規模の土地改良というものができる、そういう部分を考えて額がきめてあります。
  60. 石野久男

    石野委員 積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法に基いて、二十一億何がしというものが出たことは、確かにそうでありますが、土地改良の問題は、特に食糧増産の問題と関連性を持ちまして、わが国においては非常に重要な問題である。ことにこれからの主食の確保の問題等について、この土地改良が必至であることは論をまたないのであります。このときにあたつて、ひとり積雪寒冷地帶だけの問題じやなくて、もう少し温暖地帶におけるところの、いわゆる南の方に対する土地改良の問題等は非常に重要である。このときに冬の季節にあたつて言つては語弊があるかもわかりませんが、これから下半期、補正予算の内容になる事態としては、やはりもつ作業のできやすいところに、土地改良の費用を使う方がよいと考えるが、これについては何らの考慮がないのはどういうわけですか。
  61. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点ごもつともでありますが、大体二十六年度において予想し得る土地改良の経費は、すでに予算としてきまつております。追加予算補正予算というものは、御承知の通り事後に起つた予想されざる事柄に対しての補正ということが、財政法上当然の建前じやないかと思います。従いまして、これまでの議会を通りました積雪寒冷地帶における対策としての問題は、法律が通つておりますから、これに対する追加補正をするということは、あとから起つた当然の義務として考えたわけであります。従つて一般的な問題についてはお示しの通り私も賛成でありますが、これは二十七年度に対して財政の許す限り、ぜひ考慮を加えて行きたいと思つております。
  62. 石野久男

    石野委員 農林大臣の分は、あとで農林大臣が参りましたときに……。
  63. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 次に藤田君でございまするが、大蔵大臣がおりませんので、やはり地方財政を專門に御質問なさりたいようですが、大臣と一緒の方がよいでしようね。——それではそういうふうにはからいましよう。それでは岡野君は参議院の質問を二つばかり断つてここへ来ておつたのですが、やはりあなたの御便宜のために、そのようにはからうようにいたします。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時より委員会を再開して、質疑を継続することといたします。これにて暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  64. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。質疑を継続いたします。藤田義光君。
  65. 藤田義光

    藤田委員 私はこの機会に、主として地方財政問題を取上げまして、関係大臣に御質問いたしたいと思います。  まず第一にお伺いしたいのは、今後民主主義の前提たる地方自治をいかに育てて行くかということが、第一の問題でございます。終戰以来地方自治に関しましては幾多の施策が具体化されております。なかんずく大きな政策としては、シヤウプ博士の勧告でございます。このシヤウプ博士の勧告に関しましては、岡野国務大臣最も苦心されたところでございまして、この際申し上げることを控えまするが、私の率直な観点からすれば、シヤウプ博士の勧告は日本の現状に沿わずこの際全面的に再検討してみたらどうかというふうに考えております。地方税法に関しても幾多の欠陷がございます。災害復旧の全額国庫負担という勧告の線は、すでにこわれております。大蔵省の資金運用部資金のわくに関しましても、なかなかシヤウプさんの意図した線までは参つておりません。平衡交付金は、毎年これがぶんどりのために、地方自治体と政府間におもしろからぬ環境をつくつております。かかる諸般の情勢からしまして、この際シヤウプ博士の勧告を徹底的に再検討する、全然勧告を無視するという意味ではございませんが、この際冷静に再検討いたしまして、講和條約効力発生後の新しい地方自治の再出発を目ざしたら、どうであろうかというふうに考えまするが、この点に関しまして、岡野国務大臣の忌憚のない所見をお伺いしたいと存じます。
  66. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。調印はいたしましたけれども、まだ被占領下でございますから、具体的の問題については、私の思つていることを一々申し上げることは差控えます。しかしながらこれをたとえて申しますれば、敗戦によりまして天皇制から主権在民になりまして、日本政治は百八十度の転回をいたしておるのでございます。そうしてこの民主政治と申しますことは、地方の自治を確立するということであることは御承知の通りでございます。そこでこれをたとえにして申し上げますと、今私の家に昔からありましたところの桜の木があります。この桜の木は、どうも毛虫がつきやすい、またはなはだおもしろくない、そこで桜の木を切つてしまいまして、さてどんな庭木を植えようかと思いましたところが、アメリカのもみじがいいから、ひとつこれを移し植えようということにしたわけであります。ところがこの移し植えることはこれは民主政治の象徴であると考えて移し植えたのでございますが、気候風土を異にするところのアメリカから持つて来たそのもみじの木が、庭に根をおろして、ほんとうの庭木となるのには、相当の時日を要すると思います。でございますから、日本において、移し植えたその根幹は、むろん存置すべきものでありますけれども、一応は日本の気候に合い、また日本の土地からいろいろ養分をとつて成長して行くのには、枝とか葉ぶりとかいうものが、国土に合わない、庭の土に合わないというような情勢で、枯れたりまたほかの方面に新しい枝が出たり、いろいろするものと考えます。そこでわれわれといたしましては、そのもみじの根幹というものは、どこまでも尊重いたしますが、日本の土地に合つた庭木として成長させて行くためには、枝も切らなければなりませんし、葉もつまなければなりませんし、また新しく出たところの枝を尊重して行かなければならぬこういうふうに考えております。でございますからそういう意味において、今後日本がこの自治を確立して行きます上におきましては、その根幹は残して、同時に新しく日本の国情に合つたような枝ぶり葉ぶりに直して行きたい、こう考えておる次第でございます。
  67. 藤田義光

    藤田委員 去る九月十八日の閣議決定では、地方行政改革のために必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体に対し必要な勧奨を行うとございます。これに関連しまして地方制度調査会をつくろうということも、ほぼ確定的に伝えられております。この地方制度調査会の具体化の見通しとその内容に関しまして、おそらく岡野国務大臣が責任の地位にあつて立案中と思いますので、この際お伺いしておきたいと思います。地方制度調査会をつくられるに際しまして、この際いま一つお伺いしておきたいことは、地方自治体の存在というものは、それ自体固有のものであるか、あるいは法律によつて地方自治体というものは存立しているのであるかどうか、つまり地方自治体というものは、長年の古来のものであるか、法律によつて存在を認められたものであるかどうかという点でございます。もし地方自治体が古来のものであるとすれば、最近この古来の姿をむしろ歪曲するような方向に、各般の政策が移行しつつあるやに、私たちには見受けられるのでございます。なかんずく政府でつくつております政令諮問委員会の答申は、この感を深くするのでありまして、地方行政調査委員会議、いわゆる神戸委員会は、二回にわたり地方制度に関する勧告を行つておりますが、これがほとんど具体化いたしておりません。この際私は地方制度調査会の構想をお伺いするとともに、地方自治というものの本質を、岡野国務大臣にお伺いしておきたいと思います。
  68. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方自治体は今までありましたところの地方自治体の行政区域というものを基盤にしまして、やつておりますけれども、しかしこの敗戰後における地方自治体のあり方は、憲法並びに地方自治法によりまして、新しく種をまかれたものでございます。今後地方制度調査会というものをつくつて、地方自治のあり方をもう少し検討したい、またよりよくしたい、こういうことで考えておりますが、それはどこまでも新しい自治精神というものを基礎にいたしまして、そうして昔ながらの姿の府県とか、市町村とかいう地盤をいかに調整して行くかということを研究する次第でございます。ただいまお触れになりました政令諮問委員会というものは、政府の私的の機関でございまして、私どもといたしましては、今後地方行政調査会において論議いたします点は、まず中央機構の改廃ということが先行いたしますことは先行いたしますけれども、しかしながら二回にわたつてなされました神戸委員会の勧告を主体といたしまして、同時に政令諮問委員会の答申はこれを参考といたし、そうして各界の有力者を集めまして、先ほど申し上げましたような新しい日本に合つた、しかも自治精神を最も尊重して行ける制度に持つて行きたい、こういうように考えておる次第でございますから、政令諮問委員会というものは、そう大して重きをお置きになる必要はないもの、こう私は考えております。
  69. 藤田義光

    藤田委員 岡野国務大臣は地方公務員の整理に関しまして、簡素化本部の責任者になつておられますので、この際一言お伺いしておきますが、今回の地方公務員の整理は、法律で基準を定められて、いわゆる強制的にやらされるのであるか、あるいは簡素化本部の原案を地方の自治体に勧奨されるのであるかどうか、この点をお伺いしたいのであります。おそらく行政整理ということになりますれば、当然ある程度の事務の再配分ということが並行して行われるだろうと思います。そうすれば、国家公務員の減員によりまして、むしろ地方公務員は増員されるような結果になりはせぬかということも予想されます。行政整理の結果、整理者が出なくて、むしろ増員になるのではないかということも予想されますが、この点に関してお答えを願いたいと思います。
  70. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方の行政簡素化と申しまするのは、これは藤田さんも御承知でございましようが、府県あたりの仕事の分量からいたしますと、国の仕事が約八割、地方固有の事務が二割というような性格を持つているのでございます。でございますから、中央において行政を簡素化する、すなわち事務の整理をしますと、地方においてする仕事が縮減され、もしくは廃止されることになりますから、お説のような中央で行政簡素化をいたしますと、地方がそれ以上になるということは逆であります。それから私どもといたしましては、できるだけ国民が迷惑をしない程度に行政を簡素化し、同時に事務を最も簡素にしまして、行政費を省いて行こう、こういう方針で進んでいる次第でございまして、あまり地方に増員をしなければならぬような方向には、私は進めないつもりでありますし、また進まないはずでございます。それから地方の自治というものは、もうすでによく御承知の通り自治権を持つておりますので、中央でこういうことをきめたからこれをしろというような、中央からの命令的な法律をもつて、これを強制するということは一向いたしません。できるならば、地方団体においてもこういうふうにしたら事務が簡素化できるじやないか、こういうふうにしたら機構も改革できるじやないかというような案を一応つくりまして、そして地方にこれをお勧めして、できるならばやつていただきたい、こういう立場でこれに臨んでおる次第でございますから、御了承願いたいと思います。
  71. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 藤田君、本質論はたびたび闘わされておりますから。
  72. 藤田義光

    藤田委員 具体的に、お伺いしたいのでございますが、昨日社会党の川島委員の質問に対しまして、本年度の地方財政の急場を救うために、短期融資をされるという意味の御答弁があつたのであります。おそらく大臣の御答弁は、地方自治法の第二百二十七條のいわゆる短期融資だろうと思います。そうしますと、二十六年度において地方団体が財政不足を生じ、これを補うために一時借入れをしましても、本年度内に返済せねばならぬ。当面の金繰りはこれでできましても、新年度の財政不足を補填する意味の短期融資とはならぬと思います。私はこの大臣の御答弁の意味を、二十六年度内に短期融資を許しておいて、二十七年度の長期一般地方債に振りかえるというように解釈しておりますが、この点はどういうふうなお点えでありますか、伺いたいと思います。
  73. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。法律上短期融資は年度内に返さなければならぬことは、これははつきりきまつております。でございますから、その短期融資で物が運んで行けばよろしゆうございますけれども、しかし来年度まで続けて行かなければならぬようなこともありますから、そういう場合には、ただいまお説の通りの来年度の長期のものに振りかえて行くということも、一方法だと考えております。
  74. 藤田義光

    藤田委員 この金額に関しましては、大体百五十億程度というふうなことを、私は各方面から拜聽いたしておりますが、きのうの御答弁では五十億あるいは百億という意味のお答えになつておりますが、この点数字的なお見通しでけつこうであります。まだおそらく確定はしていないと思いますが、大臣のお気持の数字をお示し願いたいと思います。
  75. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはよりどころといたしましては、地方財政委員会が三百五十億要求しておるときに、平衡交付金百億並びに起債のわく百億でございますから、あと百五十億足りない、こういう数字的な、算術的な結論が出るわけでありますが、しかしながら一万数百ある各地方公共団体が、いかに財政を切盛りしておるかということは、今後十分徹底的に調べなければならぬことでありますから、一応百億の平衡交付金と百億の起債のわくを当てはめまして、そうしてまだ足りないという点をしらみつぶしに、個々の地方公共団体に当つて調べた結果、万やむを得ざる必要があるという団体に対しては、それに適当な短期融資をして行きたい、こういう考えでございますから、まず今回出しております、補正予算を、皆さん方の御審議によつて御通過くださつた後に、地方財政委員会から、各地方公共団体における実態を知らしていただきまして、その実態に相応してこれを積算してやらなければなりませんから、ただいま確実な金額は見通しもついておらぬ次第でございます。
  76. 藤田義光

    藤田委員 これは歴代の政府の通弊でもございまするが、地方財政問題に関しまして、ほとんど冷淡でございます。ところが実際、財政上における地方財政のウエートというものは、私が数字的に申し上げるまでもなく、今回の国家予算補正によりまして七千九百億になつておりますが、地方財政総額は予算にしまして約六千億でございます。この六千億に達する一万有余の地方自治体の財政を、いかに運用するかということは、大蔵大臣としても非常に重大な問題であると思います。先ほど岡野国務大臣からも御答弁がありました通り、これらの地方自治体の事務の大半は国家事務でございます。シヤウプ博士の勧告を聞くまでもなく、国家事務をやつている地方自治体が、その財源に悩んでおる以上は、国家としてその責任をとるのが当然ではないかと思いますしかるに実際上税収等は、地方自治が二千億余円に対しまして、国家は六千億という厖大な数字になつております。この際池田大蔵大臣にお伺いしたいことは、この現状からしまして、行く行くは国家事務を地方自治体に委譲するという前提に立つておられますかどうか。  それからなるべく平衡交付金等は減額いたしまして、地方自治体に固有の財源を、この際思い切つて渡したらどうか。幸い二十七年度の予算の編成期にあたつておりますのでこの際大きななたを振いまして、地方財政の禍根を一掃するというようなお考えはございませんか、お伺いしたいと思います。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 まことにごもつともな御質問で、その通りに考えております。すなわちできるだけ国の事務を整理し、そうして地方の事務もこれに従つて整理されることを期待しております。また平衡交付金も、固有の財源をできるだけ地方に与えて額を減らす方針で進みたいと思つております。従つて昭和二十七年度予算編成にあたりましては、そういう方向で仕事を進めておる次第であります。
  78. 藤田義光

    藤田委員 毎年平衡交付金の総わくに関しまして、大蔵省と自治体側の意見が、まつ正面から衝突いたしております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 これはいろいろこの制度の本質にも欠陷がございましようが、現在の平衡交付金法を改訂することによつて、一応このトラブルを減少させることができるのではないかと思います。私はこの際平衡交付金の増わくに関しまして、制度的な保障をしたらどうか。昔の還付税、配付税的な特性を取入れまして、国税たる所得税、法人税、そのほかきのう大蔵大臣の御答弁にありました酒、タバコ税等も加味しました一定のわくを平衡交付金につくることが、問題解決のために最もいい方法ではないか。そうしないと、毎年いかに国家財政金融で功績を上げられましても、地方財政面から、池田大蔵大臣の功績が全部こわれてしまうという私の老婆心からも、特にこの際この点に関する大蔵大臣の御意見を拝聴しておきたいと思います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 前の分与税的のものにしたらどうかという御意見でございまするが、分与税の制度にいたしましても、なかなかやつかいな問題があるのであります。たとえば法人税の二三・一七%とか、そのパーセンテージでまたいつも問題を起すのであります。いま少しやはり平衡交付金制度で、その制度をいかに改善するかということで行つた方が、実際に沿うのじやないかという気持を持つております。
  80. 藤田義光

    藤田委員 この際資金運用部の資金の運用に関しまして、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。今回の補正予算の説明書の三ページに、この問題に関しては一応参考書類が添付されておりますが、私は昭和二十六年度の預金部資金の運用状況を見まして、あまりに各方面に散発して出資されておる。これは何とかこの際集中的に生産事業、なかんずく電源開発等に集中することが、最も必要ではないかというふうに考えております。この点に関しましては、今回の補正予算で補正財源の約八割が出資、投資されておりまするが、この際預金部資金の運用に関しましても、思い切つた、前例を無視した新しい角度から検討されまして、日本電力資源の開発等に集中的な運用を、新たに考えられるお気持はございませんかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 資金運用部資金の運用につきましては、表にあります通りでございまして、大体根本は国債、地方債の引受けでございます。しこうしてそれ以上のものにつきましては、産業資金ということに昨年の暮れから改められたのであります。産業資金に出すということになりますと、ごらんの通り国民金融公庫にもほしいと申しますし、農林漁業特別会計もいると申します。また住宅公庫の方も住宅を建てなければならぬというので、各省からいろいろな要求がございまして、そういうふうになつて来るのであります。私は預金部資金の運用といたしましては、やはり国債、地方債、そしてまた政府の特に考えて行かなければならぬそこに載つておるようなものに使うべきだと思います。ただ御案内の通り金融債の引受け二百九十七億円というのがございますが、これがどの方面に行くかということが問題でございましよう。従つて金融債の二百九十七億円につきましては、やはり国家の重点産業に行くように、預金部がその起債を引受けておるのであります。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 それから重点産業はどうなるかと申しますると、勧銀、興銀の債券の引受けもさることながら、やはり農林中金とか、商工中金という方面にも出さなければならぬ。こういうようなことで今まで行つておりますし、私は今後もそういうことで行きたいと思つております。ただ今普通の設備資金よりも、電力の方に集中したらどうかという御意見、まことにごもつともでございまして、私は今の預金部の金を、全部そつちに持つて行くということは考えませんが、電力開発につきましては長期債券を発行してこれに向け、足らざるところを預金部で補う、こういうことでやつて行きたいと考えております。
  82. 藤田義光

    藤田委員 この際私は国家財政と地方財政の根本的な調整をするために、従来双方の政府機関並びに団体から出ております数字の食い違いというものを、根本的に調整することが必要ではないかと思つております。去る五月には地方財政委員会から、地方財政の状況報告書が出ております。引続きまして七月には大蔵省の方から地方財政の問題点についてという資料が政令諮問委員会に出ております。いずれも数字的に相当の食違いを示しておる。もし地方財政委員会ないし自治庁の資料と大蔵省の資料が、政府の一本の資料として調整されましたならば、毎年見られるような地方自治体と政府との意見の対立も、非常に緩和されるのではないかというふうに考えておりますが、この数字的な食い違いの禍根はどこにあるか、今後どうしてこの点の調整をするかということをお尋ねしておきたいと思います。特に地方財政委員会としては、昭和二十四年度を基準に、大蔵省は毎年の地方財政の規模を決定いたしておる。昭和二十四年度はシヤウプ勧告の諸般の施策を具体化する前の年である。客観情勢は激変しておるにもかかわらず、二十四年の基準を金科玉條にしておる。この頑迷さを打破しない限りは、地方財政委員会との意見は調整できぬというようなことも、われわれはしばしば拜聽するのでございます。この際池田大蔵大臣の在任中、何とかこの両政府機関の意見の調整をされることが、地方財政を向上させるためにも、ぜひとも必要なことではないかと思いますが、ひとつこの際大蔵大臣の忌憚ない御意見をお伺いしておきたいと思います。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 意見の相違に二通りございます。それは地方財政委員会は、自分のところで測定したものを、内閣あるいは国会に出すので、これははつきりわかるのでありますが、予算をきめて行きます場合に、各省の予算要求を国会へ出したら、地方財政委員会と政府との違い以上になるのであります。それはたくさん予算がほしいということと、たくさん出せないというところの、この違いが一つあります。もう一つの違いは、これは地方財政というものが、一万余りの分の集合でございまして、実態が非常に複雑多岐であります。それからまた平衡交付金の算定の基準につきましても、はなはだ困難な点がある。そこでこの違いがふえて来るのであります。従いまして私は平衡交付金自体の算定から基くもの、あるいはまた数が非常に多いために、しかもまた各市町村、府県、みな思い思いの施策でやつておられます関係上、こういう原因が加わつて、いつも違つて来ると思うのであります。
  84. 藤田義光

    藤田委員 われわれの資料では、池田大蔵大臣が先般の財政演説で申されました、国家財政に関しては、能率と安定と発展があるかもしれませんが、地方財政に関しましては、非能率と不安定と停頓があるというのが現状ではないかというふうに、私は解剖いたしております。この観点からしまして、何とかこの際、地方財政に現実のものをもつて、活を入れる必要があるのじやないかと思います。いろいろ申し上げたいことはありますが、委員長の御注意もありましたので……。  先般の災害に対する財政措置でございます。地方自治体の相当広汎な部面で、多大の被害をこうむつております。これに伴う地元の各般の負担というものは、相当の額に達するだろうと思います。岡野国務大臣の先般来の御答弁を聞いておりましても、短期融資の方法以外は、今後ほとんど絶望のようでございまするが、災害という新しい事実が起きておりますので、大蔵大臣としては、この際、この災害に伴う国庫補助、それに伴う地方の負担等も考えられまして、何とか平衡交付金の増額ということを、いま一度検討されるお気持はありませんかどうか。もし全然ないとすれば、一般地方債のわくの擴張ということが、最小限の地方自治体の要求でありますので、この際お伺いしておきたいと思います。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 先般のルース台風の善後措置についての問題だと思いまするが、災害復旧につきましては、これは国の事業としてやりますので、地方の事業としてやるものではございません。従いまして、国といたしましては、今年度の災害復旧の予備費をまず使いまして、足らざるところにおきましては、補正予算に組むか組まないかを検討しなければならぬと思う。そういう国の処置をとりました場合におきまして、地方の方はこれは起債その他でまかなうべきものでありまして、災害があつたからただちに平衡交付金をふやすという建前では、今までもなかつたのであります。
  86. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁によりまして、私はこの起債のわくの擴張に関しまして、非常に大きな光明をつかんだような気がいたしております。そういうふうに解釈してよろしゆうございますか、どうですか。あらためてお伺いしておきます。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 災害復旧のために特別に必要なものは、これは起債のわくをふやさなければいけますまい。こういうものは短期融資でやるべき性質のものではないと考えております。
  88. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの御答弁は、一般論でなくして、先般のルース台風に対する御答弁と、私は解釈いたしたいと思います  次にお伺いたしたいのは、従来地方財政の大きながんになつておりました自治警察は、一応一千十四という警察が国警に移管されまして、問題の範囲が非常に小さくなりましたが、もう一つのがんである六・三制の今後の推移に関しましては、全地方自治体が非常な関心を持つております。義務教育費、なかんずく校舎建築費は、あくまで国庫で負担すべきであるというのが、私たちの見解でございます。いまだに最低限一人当り〇・七坪の教室も確保されずに、二部教授のところも、全国に多数に上つております。しかもせつかくつくりました校舎も中身は全然できておりません、授業をやるに必要なる施設は、まつたくさんたんたる状態でございます。この点に関しまして今後六・三制の設備費は、いかにして行かれますか。二十七年度におきましても、少くとも従来の方針を堅持されますかどうか。この際お伺いしておきたいと思います。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 二十七年度におきまして、従来の方針を改めるという理由もございませんので、今までのような考え方で進んで行きたいと思います。ただ問題は、〇・七坪にいたしましても、一昨年よりは昨年、昨年よりは今年、相当ふえて参つております。今年度組んだ六・三制の経費を、そのまま二十七年度に組むという意味ではございません。
  90. 藤田義光

    藤田委員 大蔵省の見解では、市町村財政、なかんずく町村財政には余裕がありまして、府県財政が非常に困つておるということは、幾多の資料によつて実証されております。私もその一部を信頼しておりますが、この観点からしますると、今回補正予算に計上されましたる百億の配分は、当然府県中心に配分されると想像されます。しかるに先般来の全国市長会、町村長会等における地方財政委員会その他の答弁を拜聽いたしておりますると、中心はどうしても府県にあるが、相当部門を市町村に配分するということになつております。われわれの地方行政委員会におきまして、大蔵省主計局次長等の答弁を聞きますると、この配分に関しては大蔵省は全然無関心であるというようなことを言われております。財源の余裕ありなしに関して、重大な資料を提供されておる大蔵省が、決定しました予算の配分に関しては、全然無関心であるという答弁は、理路一貫しなかなくてはならぬというふうに解釈いたしております。非常に抽象的な質問ではございますが、この際地方自治体に対する池田大蔵大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 地方自治の発展はわれわれの望むところでございます。しこうしてそのための財政上の確立もいいというふうに考えております。今回せつかく増額されました百億の配分に関しまして、大蔵大臣はいかなる立場から配分されようとしておるのか、この際お伺いしておきたいと思います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 平衡交付金の算定につきましては、大蔵省は関心を持ちまして、予算の編成上考慮をいたします。また地方起債のわくも大蔵省でやつたのであります。こういうことにつきましては、大蔵省の所管でございますが、ふやされた平衡交付金は、地方財政委員会の所管であるのであります。しかしこれは所管が違うというだけで、こちらの方は全然知らぬというふうなものではございますまい、国務でございますから。相談を受ければ相談に乗る、全然関知せずというわけのものではございません。
  93. 藤田義光

    藤田委員 この際あらためてお伺いしておきたいのでございますが、池田大蔵大臣の地方自治に関する見解に関しまして、いろいろのうわさが飛んでおりますので、この際大蔵大臣は地方自治というものを、今後いかに運営しで行かれようとしておりますか。われわれの見解からすれば、民主主義の前提として、独立後はますます地方自治体を発展育成するという方向に持つて行かなくてはならぬ。それに必要な財政的な裏づけも、どんどん強化して行かなくてはならぬというふうに解釈いたしております。非常に抽象的な質問ではございますが、この際地方自治体に対する池田大蔵大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 地方自治の発展はわれわれの望むところでございます。しこうしてそのための財政上の確立もいたさなければならぬという念願を持つております。
  95. 藤田義光

    藤田委員 最初に大臣留守中でございましたので、この際あらためてお伺いしておきます。私は、シヤウプ博士の勧告というものはいい点もございましたが、なかなか日本の現状に沿わない不備、欠陥を暴露して来ておる、この際いよいよ講和条約の効力発生も日睫に迫つておりますので、何とかシヤウプ博士の勧告も、徹底的に再検討する必要がありはしないか、なかんずく税法、平衡交付金法等に関しては、根本的に再検討して是正すべきではないかというふうに考えておりますが、昨日川島委員の質問に対しまして答弁されました大蔵大臣数字によれば、国民所得と税負担のパーセント等に関しましても、日本の地方税の現状は、国際的に見ましていろいろ再検討すべき点があるやに、私は想像いたしております。いろいろな点からしまして、この際この問題に従来やや批判的な立場でありました大蔵大臣の、シヤウプ勧告を今後いかにすべきかという問題に対する忌憚のない御所見をお伺いしておきたいと思います。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ勧告につきましては、お話のような点がございますので、日本の国情に合うように再検討し、また今まででもシヤウプ勧告に反するようなことをやつております。税制におきましても、退職金課税を改めることは、シヤウプさんは賛成はしないでしよう。しかし日本実情に沿うように徐々に改めて行つております。地方財政につきましても、実情に沿うように、改むべきものは早急に改むべきだと考えております。
  97. 藤田義光

    藤田委員 もう一点大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、この大蔵省が市町村財政に余裕ありという認定をされました資料によりますと、今年は平衡交付金を昨年より七十五億ばかり減額しましても、さらに四百億近い余裕財源を見込んでおられます。この統計を出されました根拠を、この際簡單にお伺いしておきたいと思います。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得の増加または法人所得の増加等が、主なる原因であるのであります。こまかい点につきましては、主計局長より答弁いたさせます。
  99. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 平衡交付金を百億ふやす上におきまして、いろいろと試算はいたしました。もちろん平衡交付金を、市町村と府県との間にどういうふうにわけるかということで、平衡交付金の増額の分もかわつて来るわけであります。その段階におきまして、現在の千百億を三百億と八百億とにわけるような考え方もしたこともございます。しかしそれはいろいろな精算をいたします途中の段階でありまして、現在その案についてそれをピツクして考えておるわけでございます。
  100. 藤田義光

    藤田委員 大蔵大臣の先般の予算案の説明によりますると、非常な誤解を起しておるのですが、地方財政は近年膨脹の一途をたどつているということを冒頭に述べ、相当地方財政全般に冗費があるような印象を与える演説をされております。ところがこの膨脹の原因を見ますると、ほとんど全部国家の法律、政令あるいは物価の騰貴その他やむを得ざる理由に基くものが大部分でございます、この点に関しまして大蔵大臣は地方財政には相当兄費があるという認識を、いまだに持つておられますかどうか。昨年来の質問でございますが、この際あらためてお伺いしておきたいと思います。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 相当節約し得るものがあることは、私もいろいろな資料から考えておるのであります。旅費にいたしましても、また給与にいたしましても、その他事務資にいたしましても、節約し得る余地はあると考えております。
  102. 藤田義光

    藤田委員 先般全国の町村長会の調査しました七千三百九箇町村の資料を見ますると、昭和二十五年度決算から見た町村の赤字は、実に六百十七億に上つておりますこのほかに、これは二十六年四月の町村長の選挙を前にしまして、財政の健全化を誇示するために、相当無理した予算を作成いたしておりまするところからしまして、おそらくこの数字は、実際上はそれよとも多くなつておるのじやないかと思います。私たちが地方財政委員会、自治庁あるいは大蔵省主計局の各般の資料を見まして痛感いたしますことは、いずれの政府機関、団体の調査も、すべてが一部のみの調査でございます。昨年問題を起しました大蔵省の資料によりましても、わずか六十数箇町村だけを調べまして、地方財政の現状を解剖いたしております全国町村長会の資料も一部でありますから、正確とは申し上げられませんが、大体傾向として、二十五年度においてすら、町村財政は非常に赤字化の傾向を濃厚にいたしております。従いまして現在におきましては、この状態というものは飛躍的に悪化しておるだろうと思います。せつかく関係方面の勧告によりまして、地方自治を飛躍的に発展させるための諮問議決機関としての地方財政委員会ができまして、この委員会の勧告や意見書が、屡次にわたり国会にも提出され、政府にも出されておるにもかかわらず、ほとんど現実には無視されておる。厖大なる国費を使つた公正なるべき政府機関の意見や勧告というものが、全然取入れられないというような事態は、何と申しましても国家全般の大きな損失であるというふうに考えております。今後幸いに政府におきましては、行政機構の検討をやつておられるようでありますが、地方財政委員会というものを従来のままに存続させることが、大蔵大臣としては国政運営上プラスである、あるいはむしろこういうものは廃止してしまいまして、自治庁一本とした行政の運営の方が、地方自治体の発展に有利であるかどうか、この際お伺いしておくことが必要ではないかと思いますので、御意見を拜聽したいと思います。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま政府におきましては、行政機構全般にわたつて検討を加えておるのでありまして、今ここでどの行政機関をどうするということは、私として申し上げる段階には至つておりません。
  104. 藤田義光

    藤田委員 地方財政委員会は、御存じの通り大臣と同列の委員長及び大臣級の委員四名をもつて構成されておりまして、日夜全国から詳細な資料を集めて、鋭意検討いたしております。大蔵省の主計局は、終戦前の体系を大体維持いたしまして、地方自治体をながめて参つております。地方財政委員会は、関係方面の示唆に基いて発足しただけに、新しい感覚で仕事をいたしておりまして、われわれとしてはこの地方財政委員会の資料、勧告、意見というものが妥当であるというふうに、常に解釈して参つております大蔵省主計局の意見は、かつて中央集権時代の市町村に対する感覚を持つて、現在地方自治体をながめられておられるというような誤解を起すようなことがしばしばございます。これは私の誤解かもしれませんが、もしこういう観点から全国民が大蔵省の主計局をながめるというようなことになりますると、国家財政あるいは税の問題等に対する一般の認識も非常に悪化するのじやないか。なかんずく先般開かれました全国町村長大会におきましては、自分たちの事務の大部分は国家事務である。しかるに平衡交付金は全然くれない、国家事務を遂行しながら、この財政的裏づけを政府がしてくれぬならば、この際ことしから国家事務を放棄してしまうというようなことも申しておる町村長が、多数に及んでおつたやに私は拜聽いたしております。こういう点からしましても、私は先ほども申し上げましたが、この資料の一元化、特に政府の資料は地方自治体に関する資料もはつきり一本にさせまして、この資料に基いて適正なる行政措置を推進して行くということが必要ではないかと思います。今全般の行政機構の検討をやつておられますので、一つ政府機関のみを取上げて云々するわけに行かぬという大蔵大臣立場も了解しまするが、地方財政は目下火急の問題でございまして、これの最高の諮問機関である地方財政委員会の意見というものは、ほとんど政府で取上げられないというようなことになれば、むしろこの際地方財政委員会は廃止すべきではないかというふうに、私は感じておりますが、ほかの行政機関と同列に扱われまして、存廃はいずれ橋本行政管理庁長官がきめることであつて自分は関知しない、ただ仕事の面においては地方財政委員会と非常に関係があるが、整理の問題は別の所管の問題であるということで、御答弁願えないのかどうか、この際いま一度お伺いしておきたいと思います。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は御意見として承つておきまするが、今個々の行政機関をどうするということは、私から申し上げられません。
  106. 藤田義光

    藤田委員 この昭和二十二年の新しい地方自治法、あるいはその後のシヤウプ勧告に基く幾多の施策、最近の政府の施策等から勘案いたしまして、この際私はいわゆる純然たる地方自治体というものは、市町村のみに集約いたしまして、府県の性格を再検討する必要がありはしないか。もう少し具体的に申し上げますると、府県というものを、国の出先機関たる性格を多少強くしたらどうか、そうすることによつて地方自治体の運営は、現状よりも進歩するのじやないかというふうに考えております。この点に関しまして大蔵大臣は、特に地方財政に関心を持つておられますので、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 重大な問題でございまして、今意見を申し上げるわけには行きません。あなたの御意見は十分承りました。
  108. 藤田義光

    藤田委員 私はこの現実の情勢からしまして、府県を現在のままにしては、国家のためにも地方自治体の発展のためにもプラスでないという認識を持つております。この認識は大蔵大臣の部下の中にも、私とまつたく同じ認識に立たれておる方もあるということを、この機会に申し上げまして、ぜひとも今後の地方自治体の行政機構の問題その他に関連しました問題には、この点をひとつ御記憶願つて、特に府県というものの基本的な性格は、この際再検討すべきであるということを、ひとつ大蔵大臣に御承知願つておきたいと思います。  それからきのうの川島委員の質問に対する御答弁で、私によくわかりません点があるので、この機会にあらためてお伺いしておきますが、いただきました資料のうち、国民所得に対する租税負担率でございます。昨日国民所得に対する国税の負担率は一一%、一割一分程度が世界各国の通例である。それに対する日本の負担率を申されたのでございますが、現在二十六年度におきましては、国税の国民所得に対する負担率は一五%、地方税の負担率は五・六%、加えまして二〇・六%でございまするが、大蔵大臣としてはこの比率というものは、大体日本の現状、あるいは過去の実績等からしまして、この数字をどの辺でとどめておきたい所存でございますか、お伺いしておきたいと思います。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 私は川島委員の御質問に、国民所得に対しまして租税の負担が一一%と言つたことはないと思います。何かのお聞き間違いではございますまいか。  次に国民所得に対しまする税の負担率は、どのくらいであるべきかというお話でございますが、これは国民所得に対して税の負担率はできるだけ低いのがいいのであります。これはできるだけ低くするように、われわれも過去やつてつたのであります。
  110. 藤田義光

    藤田委員 私は池田大蔵大臣への質問はこれで打切ります。  次に大橋法務総裁に簡單にお伺いしたいと思います。講和後の治安問題に対しまして、簡單にお伺いいたします。現在御存じの通り国警、自治警十二万五千、予備隊七万五千、その他海上保安庁二万近く、鉄道公安官、麻薬取締官等のいわゆる警察権を持てる役人が実に九万五千、厖大な警察権を持てる役人が日本の治安を守つておりますが、この厖大な数字では国家財政上も大きな負担になりまして、永続性がないと思いますが、講和條約の効力発生後に予備隊を中心として国内治安維持を運営されまして、ああいう麻薬取締官のごとき、諸般の警察官を徹底的に整理して、少数精鋭主義で行くことが必要ではないかと思いますが、この点に関しまして法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
  111. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 特別の警察官について、講和後においてこれを一般警察に統合する考えはないかという御質問の趣旨かと存じます。現在ありまする麻薬取締りの警察官、あるいは鉄道公安官、これらはいずれもいわゆる警察権と称せられる権限を行使いたしておりますが、それぞれ專門的の立場から、それぞれの範囲を分担いたしておるわけであります。これらが相まつて国内治安を維持いたしておるわけでありますので、さしあたりこれを統合するというような計画は持つておりません。
  112. 藤田義光

    藤田委員 特審局の擴充ということが確定的になつております。これは人身攻撃になるかもしれませんが、現在共産党の検挙等に関しましては、事前に情報が筒抜けになつておる。これはどこに禍根があるかということに関しまして、世人の注目を集めております。私の仄聞するところによれば、特審局内のある最高幹部が昭和二年の新人会のメンバーであつて、正式に日本共産党に入党しておる。これがいつ脱党したか、正式な文書もなければ、具体的な証拠もないということを拜聽いたしております。これはおそらく誤解であると私は想像いたしておりまするが、もし誤解にしましても、かかる風評のある人物を、最高幹部に持てる特審局の人員の増加ということは、大きな国民負担においてこれをそのまま認めるということは、政府与党たる自由党諸君も反対ではないかと思います。この点に関しまして、おそらく大橋法務総裁もこのうわさを聞いておられやしないかと思いますので、この機会に総裁の言明をいただきたいと思います。
  113. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 特審局におきましては、御承知の通り公職追放者に対する監視並びに団体等規正令の権限を行つておるわけでございまして、お説の通り、これらの事務を実施いたしまするに際しまして、情報が漏れておるというような事実も聞いております。またそういうこともあつたろうと想像するような結果も見ておるわけでございますが、これは特審局からさような情報が出ておるということについては、私確証を持つておりません。今日まで情報が漏れたということについての確実なものといたしましては、一、二の警察において不用意のうちに新聞記者等に探知せられたということは聞いております。しかしこれとても計画的なものではないのでありまして、不用意に基く過失であつたというふうに存じております。また一裁判所におきまして逮捕状を扱いました係員が、不注意によりまして新聞記者に探知せられたというようなことも聞いております。これもまつたく悪意による、ないしはある意図を持つて漏洩せしめたものでなく、不注意によつたものである、こういうふうに相なつておるのであります。従いましてただいままでのところ、この漏洩の事実というものが、関係者の故意に基くものであるというふうには断定する資料を持つておりません。また特に御質問のございました特審局の最高幹部が、共産党員であるとかないとかいううわさがございますが、何分にも特審局においては右翼、左翼の公職追放者等に対しまして、嚴重なる監視をいたしておりますので、これらの監視を受けておる側におきまして、いろいろな批評をし、無責任なる流言をなすというようなことも、想像できることと思うのでございます。お説のごとき風評につきましては、私は根拠あるものとは考えられません。
  114. 藤田義光

    藤田委員 特審局の最高幹部の問題に関しまするが、かつて外務省の高官であつた現在の日本共産党の相当有力なメンバーが、ある法務総裁によつてこれに擬せられたことがございます。大橋法務総裁の関知されないことでございますので、この際具体的に申し上げることははばかりますが、現在の特審局のある幹部、特に疑いをかけられております幹部のために、何がゆえか今にかつての思想検事が追放解除されないでおる。このかつての思想検事が追放解除せられることによつて自分の一身上の安泰を期せられないということまで言われておりますので、この際これは質問ではございません。法務総裁に対する希望として、十分ひとつ特審局の人事の運営に関しましては、なかんずく増員等の計画に関しては、慎重を期せられたいと思います。  次に御質問いたしたいことは、警察予備隊の訓練もだんだん進んで参つております。占領中の日本の警察力は、東京、大阪に集中いたしております。講和後の警察力は、育成されたる予備隊の現状等にかんがみまして、何とか国家の力で再配置する必要があることを痛感いたしております。現在の予備隊及び国警、自警というものは偏在いたしております。講和條約効力発生後の治安の完璧を期するためには、この偏在せる現在の警察力を、国家の力で早急に再編成すべきではないかということが、一般の輿論になつておることは、あるいは大橋さんも御存じと思いまするが、この点に関しまして、この際計画がありましたならば、なるべく具体的にお伺いしておきたいと思います。東京におきましては、警察官一人に対して市民二百名でございまするが、北九州の八幡のごとく、とにかく憂慮されておる地帶におきましては、市民六百五十名に対しまして警察官一人という情勢でございますので、この点は計画がありましたならば、なるべく具体的にお示し願いたいと思います。
  115. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 特審の幹部が、検事の追放解除に関連いたしまして、何らかの作為を用いた。しかしそれは自己の個人的な立場ないしは個人的な利益に基いて何らかの作為をいたした。その結果検事の追放が解除されなかつたものがあつたような御趣旨の御発言がございましたが、この問題に関しましては、特審局長は單なる補助者の地位におつたのみでございまして、この仕事については、全責任は私が負つておるわけであります。私といたしましては、部下が、さようなる個人的な関係において、役所の仕事について態度を二、三にするというがごときことは断じて許しておりませんし、またこの問題に関する限り、断じてさようなことはなかつたということを御了解を得たいと存じます。  次に警察力の再配置の問題についての御質問でございましたが、御承知の通り、今年前回の国会におきまして、警察法の改正が行われまして、自治体警察につきましては、各自治体がその必要と、財政によりまして適宜に定員を定めることに相なつておるのでございます。これに基きまして自治体が必要とする警察官の定員を定めまするに際しましては、政府といたしましてはできるだけ援助をいたしたいと考えております。
  116. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 小平忠君。
  117. 小平忠

    小平(忠)委員 減税と税法改正につきまして、大蔵大臣にお伺いいたしますが、すでに総括的な質疑が終つておりますので、きわめて具体的な問題についてお伺いいたします。  まず最初に、農業協同組合に対しまする課税問題でありますが、かつて産業組合時代におきましては、大臣も御承知のように特別法人税という制度がございまして、営利を目的といたさない団体としての特殊な扱いをいたしておつたわけでありまするが、先年の税法改正によつて、農業協同組合も営利会社と同様に法人税を課するというようなことに相なつておるのであります。しかしながら今回のいわゆる税法改正によりまして、若干の修正を見たのでありますが、しかしこのような修正だけでは、とうてい農民の希望に沿うものでない。またただに農民だけではございません。漁村もあるいは山村も、あるいは都市の中小企業者も、協同組合経営する国民全般にとつての問題でありますが、これに対して、少くとも協同組合という営利を目的としない団体に関しましては、従来の特別法人税法のような税制を制定して、特殊な扱いをするのが妥当でないかと考えるのでありますが、大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今の方がいいと思います。所得のあるところには課税が行われることが、当然であるのでございまして、農業協同組合等は、いわゆる中間法人、営利の分もあるが非営利の分もある、こういうので、今回は特に税率を低くしたのであります。営利を目的としないものにも、今は課税するというな態勢になつておるのでございますから、この程度でがまんを願いたいと思ます。
  119. 小平忠

    小平(忠)委員 私はただいまの大蔵大臣の御答弁はきわめて不満足であります。と申しますのは、少くとも税制の合理的あるいはきわめて民主的な運用をはかるという場合において、これほど矛盾が多いものはないと思う。現に政府は、各種の協同組合に対する施策は、きわめて公平かつ妥当な方策をとつておるということを、あらゆる機会に強調されておるのでありますが、ただいまの大蔵大臣の御意見を聞きますと、現在の制度が適当である、こうおつしやるのであります。そうしたならば、今日きわめてレベルの低き生活にあつて、すべての問題に一番大きく響くのは何といつても課税であります。私は具体的な問題をここに申し上げる時間がないから申し上げませんが、少くとも協同組合に対して特殊な取扱いをしなければ、おそらくこのいわゆる重税によつて、農業協同組合は崩壊するだろう、こう考えるのであります。従いましてただいまの御意見を根本的に改めていただかなければならぬ、こう思うのであります。  次に、関連いたしまして、最近全国の農業協同組合が、大きな問題として取上げておりますのは、農民所得税徴收調書についての問題でありますが、この所得の徴收資料並びに個人別調書を作成いたします際に、最近税務署が町村の農業協同組合に対しまして、その資料の提出を求めたり、あるいは直接農業協同組合に行つて調査をした。これは税法の趣旨から見ても、このようなことはかつてにできないわけでありますが、いかなる理由によつて、そういうことを大蔵大臣はなさしめておるのであるか。現に銀行局長からの十月十六日付の通牒を見ますと、これは各銀行やその他の関係の面に対しまして、六項目にわたりまして、特に緊急必要がある、あるいは滞納がおびただしいとかというような問題に関して、そのような措置を特に銀行局長から通牒いたしておりますが、農業協同組合に対して、このように農民の個々の意思というものを、阻害するような行為に出ておることは、きわめて遺憾にたえないのであります。これに対しまして大蔵大臣所見をこの際承つておきたいと思います。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 協同組合の、課税はいかぬというお話でありますが、所得がある場合、ことに組合等におきましては、收入金から必要経費を引いた残りの所得がある場合、あの程度の課税はやむを得ない。重税のためにつぶれるというようなことはございません。経営不始末のために赤字が出て困つた場合には、政府は補助金を出しておるのであります。私はこの程度のものはやむを得ないと思います。  それから農業協同組合に対しまする税務官吏の調査でございますが、これは所得税法にやはり諮問することを得るという規定がございまして、適法にやつておると思います。ただ問題はそういう権限があるかないかという問題でなくて、預金の調査なんかを行き過ぎてやると、貯蓄増強に弊害がないかという御質問ならば、そういうことがないように国税庁長官と銀行局長と打合せをいたしまして、行き過ぎないようにしておるのであります。
  121. 小平忠

    小平(忠)委員 私の質問の要旨が十分徹底しなかつたようでありますが、それは農民に対する所得税の徴收ということに関して、いわゆる生産物の出荷あるいは預貯金、いずれの問題にも関連して来るわけです。私は本年春の予算委員会の際も大蔵大臣に、政府は貯蓄奨励をいたしておる反面に、税務官吏が農協の組合員の貯金台帳を調べたり、あるいはそれを持つてつたりするようなことに関して質問したのに対して、大蔵大臣のきわめて適切な御答弁を願つたのでありますが。そういうことはさせていない、特に貯金については秘密を保持させるということが、依然として末端には徹底されていない。従つてそのような行為は貯金の減少というようなことの原因をもたらすものでありまして、十分に考慮していただきたいと同時に、ただいま私の御質問申し上げた点は、農民の生産あるいは出荷あるいは購買、これらの取引に関して、農民の個々について調査をしなければならぬ、あるいは資料を求めなければならないものを、農協に参りまして調査するというような問題から、きわめて今日大きな問題になつております。この点について先ほど申し上げたように、銀行局長から各銀行に対する通牒のごときは、きわめて適切であろうと思う。そのような観点に立つて、同様な措置をされるのは、非常に税金が滞つておるとか、あるいは非常に緊急を要するというような、特例にしていただきたいと思うのであります。これについて再びお伺いいたします。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 預金につきまして、何も農協と銀行と区別する理由はないのでございますから、当然農協の方でも行われておると考えております。
  123. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、預金について特に限定されておるのでありますが、そうではなくして、農民に対する所得税徴收にあたつての基礎調査をする場合の方法が、直接農民個々に調書をとり、あるいは資料をまとめなければならないものを、農業協同組合によつて資料の收集あるいは調査をしているという問題について支障がある、こういう点について大蔵大臣はどのような見解を持たれるか承りたいと思います。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 所得税法第六十四條によりまして、収税官吏の諮問権が法律上認められております。従いまして、その條項によつてつていると考えております。
  125. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの御答弁によりまして明らかになつたわけであります。私はそういう点であるならば、きわめて民主的に参るものと思うのでありまして、大臣はそういう支障が全国的に発生いたしておることも十分考慮されまして、すみやかにそのような適切な通牒をされることを望む次第であります。  次に所得税に対しまする基礎控除でありますが、その基礎控除及び扶養控除が、全国一律になつておるのであります。しかし東北、北海道の寒冷地におきましては、被服、住宅あるいは光熱等の特殊な経費がかさみますために、私は全国一律という行き方は、非常に不平等ではないかと思うのであります。公務員に対しましては特に地域給といつたような制度があるのでありますが、この東北、北海道の寒冷地帶に対しましては、特に寒冷地控除というようなものを設定いたしまして、課税の適正をはかられてはいかがかと思うのでありますが、大臣の御所見を伺います。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は先年来たびたび質問のある問題でございます。手当について差等を設けておるから、所得税についても設けたらどうかというお話でございますが、私寡聞にして、一国におきまして、気候の違うことによつて所得税の課税方法をかえていることを聞いておりません。やつかいな問題でございまして、先年来検討はいたしておりますが、結論は出ておりません。
  127. 小平忠

    小平(忠)委員 結論は出ておらないとのことでありますが、すみやかに結論を出していただきたい。なぜならば、これはもう常識的に考えてみましても、雪の降る寒い所では、年間三トンないし五トンの石炭がいる。被服も相当かかる。住宅の設備も四国、九州とは全然様相が違う。こういうような状態から、非常に生活苦にあえいでいる。重税に苦しんでいるという実態を、大臣は十分に御認識いただきたい。ですからそういう問題について、私が今申し上げたような寒冷地控除というようなものが設定されるならば、きわめて合理的に行くのではないかと考えるわけであります。すみやかにこれに対する対策を確立されることを、特に要望する次第であります。これに関連いたしまして、ただいま地域給の問題を申し上げましたが、先般の人事院勧告によります地域給の問題につきまして、今回の補正予算にも、今回のベース・アツプの線に含まれておるものと思うのでありますが、しかし先般行われた人事院の勧告は、きわめて実情を無視しているような点がたくさんあるのであります。現に人事院におきましては、修正勧告の用意もされておりますし、近々出そうというようなお話も承つておるのでありますが、今回の補正予算に計上されておりまする地域給に対するベース・アップの線は、これは前回の人事院勧告の線が入つておるのか入つていないのか、あるいは今回出そうとする修正勧告の分も入れようとなさつておるのか、その点について承りたいと思います。
  128. 池田勇人

    池田国務大臣 今まで出ている分だけでございます。まだ人事院からそういう勧告が出ておりませんので、予算にはもちろん、出ていないものは含んでおりません。
  129. 小平忠

    小平(忠)委員 私がなぜこのことを強く申し上げるかといいますと、先般の人事院勧告は、先ほど申し上げましたように、非常に実情を無視しておるような市町村がたくさんある。それでかりにこれを先般の人事院勧告の線だけで参りますと、いずれ修正勧告を人事院が出されて、政府がそれを了承して出すという場合にいたしましても、明年四月一日からということになるのでありまして、その間相当開きがある。そういうことから政府原案として、予算案が提出されておりましても、そういう実情を十分考慮されて、その修正勧告も——人事院といいましても、政府部内の話合いによつて、出されるならばできないことはない。従つてだれが見ても、きわめて妥当を欠く点については修正せられて、今回の補正予算に組まれてはいかがかと思いますが、もう一ぺん大臣の御意見を承りたいと思います。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 勧告が出ていないので予算を組むわけには行きませんし、どういう勧告が出るかわかりませんので、私から進んで、こういう勧告を出せということを人事院に言うわけに参りませんので、予算には組んでおりません。今後今の分が不公平だからという勧告が出ましても、それを受入れるか受入れないかは、また別問題だと思います。
  131. 小平忠

    小平(忠)委員 大蔵大臣がさようにおつしやいまするならば、それ以上は人事院総裁にお伺いすることにいたしまして、この点はその程度にいたしておきます。  次に行政整理の問題でありますが、これは橋本行政管理庁長官もおいでになられれば、きわめて都合がいいのでありますが、私は政府の今行わんとしております行政整理の考え方またその内容につきましては、決して反対をいたすものではありません。これはかねてからの懸案事項でございますから、私はやはり英断的にやらねばならぬというふうに考えておるわけであります。しかしながら、特にそのうちで大きな問題としましては、今主食の統制撤廃をやろうということが、非常に大きな問題として取上げられておるやさきに、それと同じような方向をたどつて、農林省の食糧検査員を半減しようということが具体的に現われております。そこで私が大蔵大臣にお伺いいたしたい点は、何でもかでも行政管理庁の案をうのみにせられて、明年度の予算編成を目下進められておるのでありますが、率直に申し上げますならば、農産物検査員の五〇%減というものは、品位の向上、商取引の円滑を期する上から、食糧検査の嚴正を期する上から見て、もしこれを断行するならば、私はとうていその所期の目的を達成することはできないと思うのであります。そういう観点から、大蔵大臣は今年度の補正予算なり、明年度の予算を編成せられる際に、その点についていかようにお考えになつておるか、お伺いしたいと思います。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の行政整理の考え方につきましては、定員法の改正による線に沿つて予算を組もうと考えております。
  133. 小平忠

    小平(忠)委員 その点は、いずれ橋本行政管理庁長官が見えられましたときにお伺いすることにいたしまして、打切ります。  次に懸案の農林漁業資金増額の問題でありますが、これは大蔵大臣の特段なる御配慮によりまして、補正予算一般会計から三十億、さらに運用部資金から三十億、合して六十億の予算を補正せられておるのでありますが、これは私は特に本年度の本予算を編成せられるときも強く大臣に要請し、また全国農民の強い要望であるのであります。少くとも大臣が当初山形方面に遊説の際に、この点は強く指摘せられた点でありますが、少くとも百億程度の裏づけがなければ、せつかく政府が農林漁業に対して長期の資金を融通せられるという趣旨に反するのではないかというように考えられるのでありますが、特にその中で土地改良あるいは共同利用施設、その共同利用施設の中で、今政府は主食の統制を撤廃しようという際に、一番問題になります点は農業倉庫の資金、あるいは畜産の資金、農業倉庫はわずかに二億であります。畜産に至つては三億、全体の面で一般会計から三十億、運用部資金から三十億という線が現われておるにもかかわらず、農業倉庫についてはわずか一億であります。二億程度の資金手当では、何ら私は施すすべがないと考えるのでありますが、この点についていかようにお考えになつておるかお伺いしたいのであります。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの百億円という根拠を知りませんので、批評はいたしませんが、御承知の通り農林漁業につきまして当初六十億円出した。それでそのときもう六十億円という強い要望がありましたので、かれこれやり繰りいたしまして、私は最大限出しておる。要求通り出しておるのであります。今までは一文もこういうものはなかつたのを、今年から百二十億円出しておる。こういうことをお考えくださるならば、隴を得て蜀を望むということは少しいかがかと思います。われわれとしてはもうこれがぎりぎり一ぱいであることを申し上げます。それからなおこの使い方につきましては、少いとか多いとかいう議論はありますが、これは農林大臣が十分適当な案をつくられて御相談いたされると思います。
  135. 小平忠

    小平(忠)委員 大臣のお説のように、従来なかつたものを、本年は本予算並びに予算補正で合して百二十億というものをつけた、これは政府としても非常に最大の考慮を拂つたものであるという点は十分に認めます。しかしその中味でありますが、きわめて重点的に有効的にこれを流用されることが大切ではないかと思うのであります。幸い農林大臣も今お見えになりましたので、今回の補正の中を見ますと、農業倉庫に対してわずか二億、畜産の共同施設に対してわずか三億、この程度の融資では、本資金融資の法の制定の趣旨にはとうてい報いることはできない、かように思うのでありますが、農林大臣所見を承りたいと思います。
  136. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま農林漁業融資特別会計のわくについては了承されたが、その内訳における配分のうち、特に農業倉庫に対する融資のわくが少いということでありますが、これはわれわれももつと出したいと思つております。しかし本年計画しております各般の要請事項がありますので、本年はこの程度で間に合わし、明年度の計画においてさらにこれを擴大いたしたいと考えておる次第であります。
  137. 小平忠

    小平(忠)委員 農林大臣がお見えになりましたので、冒頭にお伺いいたしたいと思つております事項を、これからお伺いしたいと思います。それは食糧政策についてであります。政府は主食の統制を撤廃するという考え方を、いよいよ具体的にはつきり現わして来ているわけでありますが、去る一日本委員会で総理大臣に対しまする総括質問の際、根本農林大臣は、本問題についてはまだ具体的な案が決定されていないので、いずれその際に明らかにいたすということを御答弁願つたわけであります。爾来三、四日の休日も農林、大蔵、安本の三大臣は休まずに、安本長官官邸に集合せられて、この具体答を検討せられ、すでに本日はその成案が得られたということを、耳にいたしているのであります。すなわち政府が考えております主食統制撤廃に対します最も基本的な考え方といたしまして、価格の面、融資の面、本年度の供出の面、さらに現在統制を撤廃するという基本的な線といたしましては、国内の生産力をいかなる方法によつて高めようか、さらに足りない分は輸入食糧に仰がねばならぬが、しからばその輸入食糧は本年度の計画に対して、現在どの程度の輸入状況になつているか、さらに今後の見通し、これらにつきまして農林大臣、安本長官並びに大蔵大臣の具体的な御所見を私は承りたいのであります。
  138. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。主食の統制撤廃に関する措置要綱の裏づけとなるべき具体的な諸般の資料を集めて検討し、一応の結論が出ておることは事実でございます。その構想の細部にわたつては、ただいま申し上げる段階に達しておりませんが、価格の面における一つの構想は、われわれは主食の統制を撤廃することによつて、国民の生活費に著しき圧迫を与えることは避くべきである、同時にまた生産者に対しては生産を維持することができる価格を維持する。この二つが基礎要件なんであります。この観点からいたしまして、大体われわれの操作における内地米の目安といたしましては、先般も申し上げた通り実効価格を目安といたしておるのであります。この実効価格は都市並びに地方において若干の違いはありますけれども、実効価格を目ざしたということは、究極において消費者の生計費における主食の支出を、今日以上増さないという前提でございます。これによりまして、国民生活に不安を与えないという前提で考えたのであります。こういう構想からいたしますれば、結局において輸入食糧、すなわち主として小麦でございますが、これの価格を現在の対米比価よりも、低くするというふうな構想が出て参り、また米についても外米についても同様の考えが出て参るわけであります。その際における財政上の負担についても当然これは考えてよろしい、こういうふうな考え方一つあります。もう一つは、現在の麦の価格をすえ置いて、これから対米比価——逆に米の値段を算定して行く、こういう方法もありますが、     〔委員長退席、苫米地(英)委員長代理着席〕 こういう場合におきましては、若干生計費に及ぼす影響が出て来るであろう。その生計費に及ぼす影響が、所得の増その他の関係から経済上さしつかえあるかないか、こういうような問題を検討してみたのであります。このようにしていろいろな試案をつくつて、一応の結論は出ておりますが、これに基いて推進をいたしたいと思います。  それから輸入食糧の見通しにつきましては、先般も申し上げた通り麦類については何らの不安はございません。外米につきましては、絶対量が供給地においてもそう豊富でありませんので、おのずから限度がありまするが、しかし日本が必要とする程度においては問題はございません。なお統制撤廃の基礎條件ともなるべき増産についての方策いかんということでございますが、これは御承知のように現在の状況から見まするならば、年々人口の増がありまして、現在のままで行くならば、ますます輸入が増加して行き、自給度が下るという結果になりまするので、どうしても今後は増産に力を入れなければなりません。それでまず第一に土地の造成、新たにつくるということ、これには灌漑、排水の設備をして、北海道のごとき相当広大な土地については、相当大規模の開発計画を実施し、また干拓等も従前通りこれを強化したいと思つております。さらに既墾地につきましては、土地改良に基くところの反当生産量を増加せしめるということで、これは特に低位生産地あるいは秋落ち地帶に対する措置を講ずるということを考えております。それからもう一つは、非常に消極的なようで大きな効果を上げるのは、病虫害の予防駆除であります。この病虫害の予防駆除によりまして、せつかくまきつけて結実に至らんとするその前後において、收獲が減退することを防ぎ得るということになりまするならば、これは消極的ながら非常に効果のある増産措置になるので、この点についても考慮をいたしておる次第であります。いま一つ問題になりますものは、従来土地改良その他の方面において、主として水田が重点でありましたが、今後土地造成並びに改良の対象となるものに、畑地が相当多いのであります。この点につきましては、畑地灌漑等その他の措置を講じて増産をいたし、もつて国内自給度の増強をはかる、かように考えておるものでございます。これは直接的な措置でございます。  間接的と申しまするものは、この自給度の増強をやるためには、どうしても農業経済の安定が必要であり、またそれには個々の農民だけではなかなか行かない。そこで農村の生産並びに経営一つの基礎的組織体ともいうべき農業協同組合の再建整備については、十分に考慮する。そうしてこれらのものが運営され、うまく行くためには、どうしても金融措置が必要である。経費だけ政府が負担するということは困難でありますので、御承知のように農林漁業資金融特別会計の運営と、それから一時つなぎ資金においては、農林中金の資金等も、経営の改善等に使いたいと考えております。なおもう一つは、特に遅れておりましたところの寒冷單作地帶に対する特別措置によつて、特別なる振興対策を考える。以上が現在政府が考えておる大綱であります。
  139. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいま御答弁を願つたわけでありますが、もちろん具体案はまだきまつていないから、具体的な問題については、私はまだ述べる段階ではないという前提のもとに御答弁願つた。私は頭から統制撤廃を反対するものではありません。しかし統制というものは、絶対量不足という段階においては、十分に考慮しなければならないということが前提であります。従つて統制をはずすというからには、いわゆる需給のバランス、さらに生産と消費、あるいは不足分に対する輸入食糧、さらにそれが円滑に行くために資金の手当あるいは価格問題、これらがはつきり打ち出されて、これならば大丈夫という線が出されない限りにおいては、われわれは決してこの統制撤廃に賛成することはできないのであります。ですから政府が少くとも閣議において撤廃をするという方針をおきめになる際には、かくかくの具体的なすべての問題が検討せられて、方針が出されて決定されることこそ私は合法的ではないか、こういうように考えるのであります。ただいま農林大臣の御答弁を聞いておりますと、今までの本会議なり委員会においてのいわゆる御答弁から一つも進んでいないのであります。すでにもう政府はここ数日のうちにこの方針をきめて、具体的に本年度の予算補正あるいは明年度の予算編成に具体的に現わして行かなければならぬという段階に来ておると私は思います。従つて私はもつとざつくばらんに御説明を願いたいと思うのでありますが、具体的な問題として、しからば食糧の増産を高める、こうおつしやるのでありますが、資金融資あるいは寒冷地対策、いろいろの問題を取上げられておるのでありますが、これははつきり線が出されないと、なかなか農民は納得しないわけです。かりに資金の融資は農協を通じてやるのである、農林中金から農協に融資をするのである、集荷資金の融資をするのである。しかしこれはやはり今まで政府がこうする、ああすると言われたが、客観情勢の変化によつてできなかつたといつて、その公約を破ることが往々にあるのであります。従つてこれはまず需給調整はこうやるのだ、予算的裏づけはこうなのだといつて、明年度予算の上にちやんと出して来ない限りにおいては、なかなか納得し得ない。次に農協を通じてということを、自由党の政調会もまた大臣もおつしやつておられるのでありますが、現在の農業協同組合状態は、全国一律にどこの組合にも集荷資金を農林中金を通じて出すということは、非常に危険であります。というのは、終戰以来農業協同組合の育成について、もちろん現政府も相当力を入れておられることは事実であります。現に再建整備法もその一部門であります。しかし農協の育成を完全にして、そして農協が十分にこれならば扱えるという態勢がない以上、資金融資をしても非常に困難であるということが、まず言えるのでありますから、農協に対して具体的にどういう方法で融資せられるか。現に再建整備の問題も、本年大体要求をいたしております線を公平にこれを見た場合に、約一億五、六千万円の要求が出ておるわけであります。これに対して大蔵省ではお考えになつているかどうか。仄聞するところによりますと、予備金から出す考えもあるようなことも聞くのでありますけれども、補正予算の上には、現われていない。ですからこういう問題についてどうお考えになつておるか。お伺いしたいのであります。
  140. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。統制撤廃に関する金融資金その他の問題について、明確に予算措置を裏づけしてなさなければ話がわからない、その通りでございます。その意味におきまして、われわれは統制撤廃に関する具体的な措置について、関係方面との了解を得た場合に、総合的な法案並びに予算として、来年度に計上するという方針でありますので、その際あらためて御審議を願いたいと存じます。  なお融資の方法等につきましては、これも従つて一つの構想中でございますけれども、二つの問題があると思います。一つ生産資金としての融資の問題、それから集荷資金、この二つがあると考えるのであります。現在の生産資金としての農業手形は、供出を前提として、いわば供出米を担保としての手形の発行というような関係になつておりまするが、供出がなくなれば、いわゆる担保の物件が不安定である、こういう関係から、これが廃止されるのではないかという御心配があるようでありまするが、現状のままではそういう不便がありまするので、これ につきましては日銀並びに関係金融機関とも十分連絡の上、先般もごく簡單に申し上げましたように、これにつきましては生産者と協同組合との販売契約、しかもこれについては共同保証の形をとつて、それを一つの根基として農業手形の発行を続けて行く。それからまた集荷資金につきましては、これまたやはりそれと同様な裏づけのものに、系統の金融機関を通じて集荷資金を出す。その資金源については、政府の財政資金をこれに出すことによつてその資金源を確保する、こういうような構想になつておるのであります。具体的な金融措置については、まだいろいろ問題がありまするので、これはいずれ成案を得た場合に、総合的な施策として申し上げて御審議を願いたいと思います。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 農業協同組合の再建整備につきましては、先般法律を出しまして、予備金で充てるつもりでございました。今回の補正予算で出ております。五億足らずでございます。森林とか、あるいは漁業を加えますと五億五千万円になつたと思いますが、お話の、今五億で足らないところをもつとくれ、こういう要求が出ておるようでございますが、これは来年度のことにいたしたいと思います。検討した上、来年度組むか組まぬかをきめたいと思います。
  142. 小平忠

    小平(忠)委員 再建整備の問題に触れておりますから——私伺つたのは、本年度要求の査定をいたして、大体これが公平と見られるのが、農業協同組合再建整備法に基いた、法的根拠に基いた考え方のもとに行きます場合に、大体二億五千万円くらいになる。これに対してはその裏づけをされていない。補正予算に出ておりません。ですから、私はそれを伺つたのであります。
  143. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 農業協同組合再建整備に関するところの予算としては、当初四億八千七百万円を計上しておつたのであります。その後、この法律に基く対象をいろいろ調査いたしましたところ、実は規格から相当はずれているのがあるのでございます。ところが農業協同組合の団体からいたしますれば、一番下の單位組合だけができて、連合会が、ある場合においては、阪連が基準に乗つたけれども、購連が脱落するというような問題があるので、そうすると組合の運営上非常に困る。そこで奨励金をできるだけ平等にわけてもらいたいということから、今小平さんが言われたような、二億数千万円というものが出て来るのでありますが、そういうふうにいたしますと、実は再建整備にならずに、赤字を出しているのを相当カバーしてやるというだけに陷りますので、そこでやはり相当程度勉強してもらうということで、われわれ農林省で査定したものとして、実は九千万円程度でございます。これにつきましては、ただいま大蔵大臣からお話のように、予備費等で適当な方法でやつて行きたい。もしやむを得なければ、この面については農林中金で一時つなぎをしておつて、あとで明年度でも考えるかどうか、こういう点も目下検討折衝中であります。
  144. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの問題は、農林大臣の説明と大蔵大臣の説明で、九千万円は、農林省が査定し、大蔵省も了承しまして、予備金から出すということについて私は了承いたします。  先ほど伺いました点で、特に輸入食糧の今年計画に対する現在の状況、さらに今後の輸入の見通し、これは統制撤廃を行う際に最も重要な問題でありますので、今具体的な案を検討せられる際に、この数字をぜひお聞かせいただきたい。  次に、ただいま農林大臣は実効価格で行きたいということを明言されたわけでありますが、政府はパリテイ方式をおやめになるお考えのように承るのですが、その点と、もう一つは農協の育成という問題について、今大蔵大臣、農林大臣より具体的に説明がありましたが、この点も最も近い機会に具体的な方法をまずお示しいただきたい。
  145. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 輸入食糧の今日までの状況について、実は今私手元に資料を持つておりませんので、いずれ食糧庁の方から御説明させることにいたしますが、現在までの状況は、麦類、さらに外米につきましても、計画は順調に参つております。従いまして、現在におきましては何ら心配はございません。また現在までに一—三月に対する手当についても、供給地とは話が順調についております。この点については心配ございません。さらにまた、もし来年度において輸入量を増加するという場合におきましても、麦類については先ほど申した通り何らの不安ないのみならず、米につきましても、先ほど申し上げましたように、約三十万トン程度につきましては、何らの困難なく供給地から出し得るように話がつくであろう、こういう見通しを持つている次第であります。  その次に、農業協同組合再建整備については、具体的に案がまとまつたら、いずれ成案を得た場合に御説明申し上げるつもりであります。
  146. 小平忠

    小平(忠)委員 価格の問題で、特に本年の春の第十回通常国会の際に、二十六年度の米価の予定価格としての考え方を、予算書の説明においても明らかにされておりますように、その際は特別加算額一五%、これは間違いなく織り込んでおる。これは国会の承認を経た事項であります。それを政府は一片の閣議で、暫定米価をきめる際に、これを五%に引下げた。私はまずその第一の根拠を伺いたい。本年米価については、先般農林大臣が、この委員会あるいは本会議において、米価は七千三十円を堅持するのだとおつしやつた。その際の特別加算額というものは五%に考えておる。当初一五%を国会の承認を経ておきながら、いかなる理由によつて五%に変更なされたか、まずそれをお伺いいたしたい。同時に、先ほど農林大臣の御説明によりますと、撤廃をする場合に、価格は実効価格で行きたいという話でありますが、パリテイ方式をおやめになるのか、承つておきたい。     〔苫米地(英)委員長代理退席、委    員長着席〕
  147. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほどの御質問に対して答えたのは、政府が価格調整をする場合に、どの程度の価格を内地米について目安とするかということについてでありますので、これは実効価格を目安としておるということでございます。  それからパリテイ計算方式というのは、御承知のように、現在供出が続いておる場合において、あるいはまた今後政府が価格操作のために、あるいはまた需給調整の意味からしまして、農民が希望した場合において買い取る値段は、大体今の見当ではパリテイ方式をとらなければいかないのじやないか、こういうふうに考えておる次第であります。  それから二十六米穀年度における米の買上げ価格の問題については、予算的には、一応従前は一五%の特別加算ということでありましたが、御承知のように予算と米価、こういう問題は、すべて関係筋のアプルーヴアルを得た後、初めて正式にきまるのであります。これはすでに本年の麦価をきめるときに、いろいろ経過を御説明申し上げた通りでございます。パリテイ指数二五〇と想定し——これは想定でございます。それに対して特別加算額五%ということで、予算を計上しておる次第であります。しかしこれについては、最近の物価指数の変動もございまして、一時は、物価指数が二五〇にはならないだろう、二四〇台をずつと下まわるのではないだろうかという想像もありましたが、最近の指数はさらに上つて参りましたので、大体二五〇に近い線になつて来ております。政府特に農林大臣として、米価については七千三十円を堅持する方針かということでありますが、私はそういう方針を堅持しております。但しこれが最終的に決定する場合においては、関係方面との十分なる了解を得てやらなければならぬので、私はただいまも七千三十円を堅持する方針を持つて、折衝を続けておる次第でございます。
  148. 小平忠

    小平(忠)委員 その問題と関連いたしまして、これは主食の統制撤廃が表面に出て参りましてから、全国の農民が不安の念を持つて見ておりますことは、統制撤廃後価格が非常に値上りするのではなかろうかという点から、本年の供出の面にも私は相当影響があろうと思います。現に政府は、本年の供出量を幾らで押えるかという点についても、あくまで二千五百万石の線を堅持するのだ、同時に現在統制撤廃後において価格の値上りということを予想して本年の計画量についての供出は、きわめて困難ではないかという点について、政府は明らかに統制撤廃後は、かくかくであるのだという線を出すべきである。特に問題になる点は、今までどなたも質問されていない点でありますが、かりに四月一日統制撤廃後において値上りをして、現在政府が想定ているように、一升が百二十円にも三十円にもなつたという場合に、政府が買上げた供出分に対しましては、追加拂いをされるのはもう当然だろうと思うのであります。この値上り分に対する追加拂いの問題は、昨年も麦類のバツク・ペイで大きく問題になつた点でありますが、政府は統制撤廃後において、供出せしめたものの値上り分に対する追加拂いを、どういうふうにお考えになつておるか、お伺いしたいのであります。
  149. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 統制撤廃の方針が示されてから、農村において若干売惜しみという空気が出て来ておるということは、私もこれを認めております。しかし早場米並びに今日までの供出の状況から見ますと、生産地においてはそれほど著しくないということは、私も一面においてまた安心しておる点でもあります。なお現在は食管法の建前において割当てることになりますので、それにつきましては、この前も御説明申し上げましたように、收獲予想高に対して、従前の例にならい、農家保有米を差引いたものは供出していただくという前提で、二千五百万石、あるいはそれよりちよつと上まわると思いますが、そういう数字になつております。  統制撤廃が四月一日から完全に実施できるということになつた場合において、政府が供出せしめたものを、今度は配給しないで売渡しする。そうした場合における価格差の益金は、当然バツク・ペイすべきだというお話でありますが、私もそう考えております。政府の売渡しの方法については、いろいろ考えているのでありまして、現在の配給機構を通じて委託販売をするというような場合においては、ほとんど現在のマル公の消費価格とかわらないような形でやる場合があります。そういう場合にはバツク・ペイの問題は出て来ません。ところが一般物価指数が上ると同時に、消費者価格が上つて来る。そういうために今度は政府の委託販売価格が上つたという場合には、これまた当然バツク・ペイすることは明らかであります。あるいは指名入札、あるいは特殊なものに対して多量のものを売買して、それによつて得た利益がある場合には、これまたバツク・ペイする。こういうことに考えておりまして、供出したものを政府が売渡ししたために得たところの利益は、農村の供出者にバツク・ペイするという建前で考えております。
  150. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの大臣の御答弁によりまして、供出に対するところの価格差の益金を当然バツク・ペイするという御明言によつて、本日ここで現政府の主管大臣である農林大臣の言を私は信用しますが、もし将来においてこの約束が破られた場合においては、全農民の非常に大きな問題であろうと思いますから、政府はその考え方を堅持してもらいたいと思います。同時にこれまでの米麦統制撤廃の問題に関連しまして現在具体案を検討中だ検討中だとおつしやるのですが、今のバツク・ペイの問題、あるいは価格の問題、あるいは融資の資金の裏づけの問題、生産をどうして高めて行くのか、こういつたような当然こうあるべきという問題、あるいは当然なさねばならぬ、こうしなければならぬというような問題は、率直に出して行くならば、今日野党が、あるいは全国の農業団体が、反対をするようなことは私はないと思う。農民のほんとうの気持というものは、自分生産した農産物を自分の手によつて、自主的ないわゆる計画経済によつて、最も有利にこれを販売しようという考え方にかわらぬと思う。それがたまたま従来の施策において公約を裏切るようなことがあるから、その点現在政府の態度には反対の空気が強いと思うのでありますが、この反対の空気に対しては、政府は積極的にこうするのだということを示されることが必要と思うと同時に、目下明年度予算編成期でありますので、政府はすみやかに具体案を出してもらいたい。それに対してわれわれが十分検討して、いいか悪いか、われわれの意見をまとめて政府に要望し、また最も消費あるいは生産の面に混乱がないようにして行きたいと考えております。  次に、時間も大分過ぎましたので、私はあと二問お伺いしまして質問を終りたいと思います。  第一問は、農村民主化の、農村再建の、農村経済の基盤といわれる農業協同組合に対する政府の施策であります。これは各般の面において、政府に積極的な考慮を願つておることについてはわかるのでありますが、しからば具体的な問題として農業共済組合の問題であります。農業災害補償法の例の任意共済というものは、昭和二十四年の法改正で、当然農業協同組合にやらしめねばならない問題を、農業災害補償法で強制加入をしい、国の当然の補償のもとにやるところの農産物の災害、あるいは畜産の災害といつた問題をひつくるめて、家屋とか、生命共済について織り込んだところに、根本的に不合理があると私は思うのであります。ですから政府として農協育成の観点から考えますならば、農業災害補償法の例の任意共済という面を削除して、強制加入でない、自由加入をモツトーとする農協に対して、家屋あるいは生命、これらの共済に対してもつと積極的にやられる道を講じてはいかがかと思う。もちろん政府はお考えになつておると思いますが、その点について主管大臣たる農林大臣の御所見を伺いたいのであります。
  151. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。農家の建物の共済事業のために農業災害補償法を改正するということは、現在政府として考えておりません。御承知のように、建物共済の事業は任意の共済事業として共済組合でもやつていいのでありますが、この両者の活動分野の調整という具体的な問題になつて参りますと、かなり微妙な問題がありますので、もつ実情に即した調整をしたいと、今実情をいろいろ調査しております。一面において共済組合に建物の方をやらせるということは、非常に便利なようであつて、実は非常に大きな負担にもなるのであります。そうした場合に、せつかく共済組合がやつてつたのが、この事業を擴張したために、かえつて危殆に瀕してつぶれるという可能性も出て来るので、これにはやはり共済組合が、いわゆる例の基金制度がはつきり出て、相当基金が充実したときにやつたらいいではないかというような考えもありますので、この点は御趣旨に沿つて十分に検討してみたいと思つております。
  152. 小平忠

    小平(忠)委員 農林大臣の御答弁によりまして、趣旨に沿うように十分検討して行きたいということでありますが、私は当然そうあるべきだと思うわけです。農業災害補償法によるところの災害については、これは強制加入でありますから、あくまでもそういう方法で行かなければならぬと思いますが、家屋とか生命に対する共済を、強制加入を主体とする農業災害補償法による農業共済組合にやらせることは、これは根本的にその考え方が違うのであります。同時に現在は農協法と農業災害補償法と両方の法律でやることになつておりますから一元的ではありません。従つて私はこういう問題について関係の議員がくだらぬところで対立するようなことが起るのだと思います。分野を明らかにして行くならば、私はこういう問題はないと思いますから、大臣におかれては十分に善処方をお願いいたします。  次に糸価安定特別会計補正予算に、三十億計上しております。主計局から配付されました説明書によりますと、これは蚕糸業経営の安定、こういうようなことから特に組まれておるのでありますが、私はもちろん蚕糸業経営安定のためにもこのような施策が必要と思いますが、しかし一番かんじんな問題は、蚕糸業経営者よりも、養蚕業を営んでおる養蚕家であります。これに対して重点施策がない限り、私は日本の養蚕というものは、今後いろいろな面で支障があると思うわけであります。今日土地改良について全国的な問題として毎回の国会に決議案が出され、政府も本腰を入れてやると主張されておりますが、現われて来る問題はきわめてその要求に満たない。しかるにこの蚕糸に対しまして三十億という補正予算が出されておる。だからこういう問題についてその政治的な解決、そういう方面も考慮されているということも見抜いたのでありますが、私は少くとも政治的な解決という点ではなく、最も公平妥当な考え方のもとに行かねばならぬ、こう思うのであります。しかし政府の説明によりまして、この三十億の内容について妥当であるという説明、理解の行く説明があるならば了解するのでありますが、これは蚕糸業経営に対する安定という点を主体に置かれておるのであるか、あるいは養蚕業を行つておる養蚕業者に対して重点を置かれておるのであるか、御説明を承りたいと思います。
  153. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 この法律の目的は、決して製糸業だけに限つたものでもなく、これは養蚕家、さらには製糸業両方を含んだところのものでございます。御承知のように、現在世界における絹の需要は非常に多いのでありますが、これの価格が非常に変動するために、需要者においても非常に不安定なために、なかなか安定したところの購買力として現われて参つておりません。そういう観点からして、御承知のように先般のシルクの世界会議におきましても、日本の糸価を安定するということが日本の絹糸に対するところの需要を増すことである。需要を増すということが結局におきまして、日本の養蚕家がさらに擴大生産するところの一番根源になるのであります。そこでいろいろ議論が行われましたが、繭を安定させることによつて糸価を安定するという方法もあります。こういう場合においては、非常に厖大な資金を使いまして、しかも非常に変質しやすい繭を一々保管するということは、財政上重大な負担となり、しかもこの運営が非常に困難である、こういう観点からして、過去においてもいろいろの経験がありまするので、糸価の安定を通じて繭価を安定することが一番合理的にして、かつ効果的であるという結論に達したのであります。すなわち糸価の一応の買上げ価格を決定する場合において、当然その中に一番大きな要素として、繭の価格を織り込んでおるのであります。こういう観点からいたしまして、われわれは糸価の安定は同時に繭価の安定である、こういうふうに考えておるのであります。この点は関係の農林委員の方々もよく了承されております。特に養蚕家の心理的な問題として、繭については全然ほつて置くのかというような観点があるので、今政府の草案に対して修正を要求しておるのは、繭価の安定のためにも特別なる措置を講ずることができる、講ずるということを入れてくれという要請があるのであります。しかしこれは非常に抽象的な問題でありまして、実質上はもし繭価の措置をするとすれば、繭を買いとるというようなことになりますと、三十億ではとうてい措置ができないので、これはいま少し検討の上提案いたしたい、こう思つて目下大蔵省並びに関係方面とも連絡中でありますから、でき得るだけ農林委員会の御意見を尊重し、しかもその目的を達成するように、目下折衝中でございます。
  154. 小平忠

    小平(忠)委員 私はこれで質問を終りますが、与えられた時間が非常に少いために、具体的な内容についてお伺いできないことは非常に遺憾に思います。しかし今の段階において特に必要なことは、補正予算にせよ、明年度予算の編成にしろ、主食の統制撤廃は、非常に重要な関係を持つのでありまして、その重要な関係を持つ主食統制についての具体案が、現在まだ公表せられないということは、本予算案を審議する場合においても、私は非常に遺憾に思うのであります。同時に自由党は質疑を速急に打切つて、これを通そうというようなお考えがあるのでありますが、私は少くとも現在の平衡交付金の問題にしろ、今回の運賃の値上り、郵便料金の値上りで、自然的にインフレを助長するということが考えられる。こういうことを考えてみますときに、私は補正予算につきましても、相当大幅な修正を必要とするというふうに考えるわけであります。従つて最も重要な関係を持つ主食の統制撤廃についても、近々のうちにその具体案を出されるというのでありますから、具体案が出されましてから、またあらためてお伺いすることにいたしまして、私はこれで質問を終ります。
  155. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 横田甚太郎君。
  156. 横田甚太郎

    ○横田委員 自由と米をおもちやにする自由党の大臣諸君に、農業問題を伺います。大体今まで米に加えておつたところの腐敗官僚の強圧を排して、そうして米を自由にするんだ、こう思つておりました。ところが話を聞いてみるとそうではないらしい。非常に含みがあるようであつて、統制の時代にやみ米があつたように、今度の場合においては、米が安くなつたら買い入れよう、そうしてその米が高くなつたら政府が売り出そう、大体こういうような趣旨らしい。そうすると、これは民営米屋ができて、これに対して自由党がやきもちをやいて、自由党吉田ワンマン米穀店を開く結果になつてしまう。私が今考えた自由というものとは非常に違うのでありまして、少くも国民の口の中に米が自由に入るというようなことは含まれておらない。そこで大臣に伺いたいのですが、第一点は、だれのためにどのような点が自由になるのか、自由でない部分は一体どの部分か、この点を伺いたい。
  157. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは生産者に対しては、供出があつたのでございますから自由になります。それから消費者につきましては自由に買えるから自由になります。両方とも自由であります。
  158. 横田甚太郎

    ○横田委員 そんなものが何が自由になるのですか。ここにおられる池田蔵相が、ドツジ氏のところに行かれて言われたことが大体この真相らしい。朝日新聞の伝えるところによりますと、あなたは総理大臣もこじきも同じものを食えというのなら、それなら共産主義だ、こう言われているのです。米というものは人間万般の人が食うのであつて、それをだれにも食わせようとするところに統制があつた。ところが統制をはずすというのですから、それより自由に国民に米が食えるようにならなければならない。そこで伺わなければならない。大蔵大臣は非常に共産党に対しては戦闘的な答弁をしておられますが、この人は貧乏人は麦を食えと言つた。おかずはいわしでいいと言つている。金持ちは白飯を食い肉を食えと言つている。この際農林大臣大蔵大臣に聞かしていただきたいのは、違うものを食えと言われるところの趣旨は、一体大臣がどちらのものを食つて、われわれがどちらのものを食うのか、この点を具体的に聞いておきたい。
  159. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 質問は、答弁のしようがありませんが、自由でありますから、みんなすきなものを食われますから、だれが何を食えというようなことは政府は命令しておりません。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 農林大臣の答弁の通りであります。(笑声)
  161. 横田甚太郎

    ○横田委員 統制の時代にやみ米があつたということはお認めになるでしよう。自由の時代に金が米を食つてしまつて、かつてに食えるはずの人間が米を食われない、これは重要な問題なんです。日本のような拝金主義の国で、しかもこれを指導するのがアメリカなんです。こういうような金本位の国で、金が非常に不均衡に流れているような日本の国情のもとにおきましては、金のある人間は自由に食える。ところが一面におきましては、統制時代、配給時代には一体どうでしたか。日本の米は十日分しか食わしていない、そして外国の米を五日分食わしている。しかも十日分の内地米さえも確保されていない。あとはクーポン券でごまかしている。だからこういうような場合に、大臣は自由に食えると言われるが、自由に食われない例がある。汽車を見たつて一等、二等、三等があつて、二等をたくさんつないで、三等は非常に混んでいる一例を見ても、そのような事実がある。米というものは人間が食わなければならない。そうであるにもかかわらず、富が公平に分配されていないから、この米を金が食う結果になる。金のあるやつだけが食う結果になる。そこをはつきり承りたいのです。こういうような点は一体どういうように是正されるか、これを伺いたい。
  162. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 横田さんの御質問は、はつきりわかりませんので答弁のしようがありませんが、これは自由なる社会においては、いつでも起ることでありまして、あらゆる人間がみんな平等でなければならぬ、こういうようなことではないと思います。やはりおのおのその生活力と努力との結果が生活に報いられる。これが私は自由なる社会の正しい姿であると思つております。
  163. 横田甚太郎

    ○横田委員 自由々々と言われますが、自由を言われるその前に、もう一つのことがあつたでしよう。統制ということがあつて配給があつた。その統制と配給ということで、あなたが農林委員会において社会党の井上君と討議されたときに、一つの問題が出て来た。その問題は一体何であつたか。とにかく今の配給の日割、日本米を十日分食わして、外国米を五日分食わす。あとクーポン券でわけのわからないような、化物のような食糧を食わす。これは大体一つの基準でやつていると言われる。これはいかに自由であろうとも守らなければならないところの鉄則なんです。しかも日本の国民が要求しているのは、十日と五日と、あと残つた十五日のわけのわからない雑穀を食わされる、このやり方をやめてもらいたい。少くとも一箇月のうち、一日一食の米食を二食にしてもらいたい、できるなら毎日食えるようにしてもらいたい、こう言つているのだと私は思うのです。大臣がこちらの質問がわからぬというのは、日本のいわゆる一般勤労階級の感覚を失つているから、そんなばかなことを言うのです。そんな大臣が米をあずかつているから、米の配給は実にでたらめしごくです。こういうことを言つてつては時間がないのでやめますが、大体自由党の言う中間経費の問題におきましても、非常に狂いがあります。大体自由党の案によりますと、統制経済では中間経費が約三割かかり、自由経済では一割だとこんなことを言つている。しかし十月三日号の「時の法令」というのに出ておりますが、その中に稻葉秀三さんの論文があります。それによりますと、統制米の流通費用は消費者価格の一四・五%であります。これに対して戰前の流通費用は、日本学術振興会の支援のもとになされた木村和三郎、大阪商大の教授です。この人の研究によりますと二一・三%、こういうことになつている。中間経費というものは、自由党が言うように、何も統制経済のもとにおいて、よけいにいるわけではないのです。これはきのうの内閣委員会においても論議されましたが、しかもこの中間経費は、あなたたちが首切ろうとしている人たちに拂うものではないのでありまして、何もこれによつて金が浮いて来るわけではない。先にも申し上げましたように、金が米を食うのであつて、人が米を食うのではなくなるところのこのやり方によつて、非常に恐るべき結果が現われると思うのです。これも事実なんです。大会社は農家に今から手付金を打つて、統制撤廃と同時に大手を振つて現物の受渡しをしようと、青田売り的な予約買付がそろそろ行われている。また全糧連や総評や全販連など地方末端から集まつた報告によると、外国資本によつて買占めの動きもあるそうで、そのための倉庫の予約もうわさされている、こう言われているのです。われわれの胃袋の口を他国人によつて握られるとしたならば、それは容易ならざることである。これは十月二十一日付の朝日新聞に報道されたところの事実でありますが、外国映画を日本に今たくさん入れております。その映画のほとんどはアメリカの妙な人殺しばかりであります。ピストルを持つて人を殺す映画によつて日本の民心を惑乱し、パチンコをやらし、ばくちをやらしてたくさんの金をもうけて、その会社が金を持つております。この持つておる金というものは、しよつちゆう物をもうけたいという欲があり、利潤をあくなく追求する性質のものであります。従いまして、この映画社が日本によつて獲得いたしましたこの金で、日本の農村からたくさんの米を買い込んで、そうしてこれで大もうけしようとやつている。こうなつたら日本は、先にも申しましたように、新聞記事にもあるように、胃袋の口を他国の資本に押えつけられる結果になるのです。こういうような場合におきまして、こんな外資の貧欲をどういうふうに押えられるおつもりか承つておきたい。いかに自由党の内閣といえども、こういうことを御自由にやつてくださいというようなことは言えないと思うです。だから外資がこういうようなことをやる——資本というものはもうけたらいいんですから、もうけるがためには国民がたくさん食いたいところの米を買い占めて、騒動が起きる寸前まで持ち込んだら、これはもうかるのですから、そういうようにやられたときはどういうふうにされるのか、この点をはつきり伺いたい。農林大臣の今まで答えられたところによりますと、安く買い入れた米を高いときに放出すると言われた。しかし外資の跳梁に対しては、自由党は腰が弱い。特にアメリカのドルに対しては腰がむちやくちやに弱い、この跳梁に対して、どうされるかということをはつきりつておきたい。
  164. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 横田さんのはほとんど御意見ですから、ありがたく拜聽いたします。但し外国資本によつて米が非常に投機的に使われるという見通しは、われわれはそう考えおりません。御承知のように政府は、外国食糧については全面的に管理する。しかもわれわれは野放しの自由ではなく、需給調整、価格調整のために、相当の財政資金を通じてこれを操作するのでありますから、この何千億というような資金を持つておる政府と闘つて商業資本が相場で勝つということは、おそらく不可能であると考えております。
  165. 横田甚太郎

    ○横田委員 不可能であろうというようなことは常にあるのです。現在公用族ができているのです。社用族ができているのです。文部大臣が、一生懸命になつて働けとか、あるいは道徳を説いておられる間に、日本の娘さんはどんどんパンパンになるのです。こういう点ははつきりなさい。そこで自由党の大臣にもう一回承りたいのですが、大体あなた方とわれわれと考え方が根本的に違つている民族間の異分子であるということは、今までのやりとりの上に何回も現われて来たのです。考え方が根本的に違うのですから、違う点を増産の問題を通じで私は聞きたい。増産とは一体こういうことなんです。農林大臣は二言目には、日本の食糧の自給度を高めるためには、どうしても働く人には働いてもらわなければならないということを言つておる。ところが増産した結果として、この増産したものが非常につまらない結果に陥つておるのです。その一例がここにもあります。これによりますと、みかんが二十四年度には大体六千二百二十九万三千貫できたのです。そしてこのときにみかんの金として受取りましたのが七十六億です。これが二十五年度には九千二百百三十九万八千貫できているのです。これは三千十万五千貫ふえているのです。そのときに受取りました金が六十四億なんです。そういたしますと、物をたくさんつくつて、そうして結果において收入は十二億減つているのです。りんごの場合を例にとりますと、二十四年度には九千六百七十二万貫できている。それから二十五年度には一億一千六百八十六万貫できておるのです。ところが金を受取りましたのは二十四年度におきましては八十六億です。それが二十五年度には八十三億です。だから、このような事実から見ますと、農林大臣のおだてに乗りまして物をよけいつくりますと、こしらえた結果として結局金を少くもらわなければならない。現在はみかんをこしらえ、りんごをこしらえるときではないのであつて、金がものを言うときなんですから、金をもうけるためにつくつているところの生産者というものは、増産の結果として非常な生産苦に追いやられているじやないか。その結果農村で身売りが始まつているじやないか、こういうことが言われるのです。これは土地の狭いところの日本におきましては、どうしても農村の多角経営、農業の有畜化をやらなければならない、こう言つておられるのであります。ところがその結果といたしまして、中家畜である豚を例にとりますと、豚肉は農村におきましは百匁文から八十文、八十文から今は七十五文に下つております。それが町においては非常に高いのです。非常に妙な仕組みになつているのです。だから大臣が増産々々と言われますが、増産の結果は非常に生産者に金銭的には打撃を与えるような結果を招来する。これは非常に考えてもらわねばならない。農政のやり方に非常な欠陥があるのじやなかろうかと私は思うのです。この点に対するところの農林大臣の御答弁を願いたい。
  166. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私の質問に対するお答えをします。あなたはくだものの例をとられたが、ああいう腐敗性品を非常によけい、三割も増産されると値が下るのはあたりまえの話です。統制されておつた時代において、あなたも御承知の通り、腐つておろうがよかろうが全部割当てて、同じ価格で押しつけられたというような事柄を反省しなければいかぬのであります。むしろ三割の今の例を——私はそれが当つているかどうか知りませんが、例から行きますと、相当三割以上増産されておつて、時期的に腐敗性品であるということからいえば、それは値が下ります。しかしそのことがすなわち米そのものの増産にすぐ同じになるとは思わない。ああいうデユウビリテイの多い、耐久性のあるもので、保管できるものは、出来秋によけいできたときには保管して値が下らないように農家のためにしてやつた。これは農政の上からしなければならない。しかして、あなたは先ほどから非常に妙なことをおつしやるけれども、安く買つて高く売るというような考えは政府は持つていない。本来自然的に高くなるものを高くならないように数量的に調整いたしておる。これが過去の例であつて国家のためにはむしろそれが一つの行き方である。そうすれば同じものをたくさん増産しましても、すぐ値が下るということにはならない。耐久性のあるもの、すなわち非腐敗性品であるものと、耐久性のない腐敗性品とは違つておるということを、まず頭に置いて御議論をしていただきたいと思うのであります。
  167. 横田甚太郎

    ○横田委員 いくら怒られましてもお気の毒な御答弁と感ずるだけであります。はつきり言いますが、統制と言いますけれども、二十四年度と二十五年度の統計を出したのでございますよ。その点を頭の中にはつきりとお考え直しを願いたいのであります。  それからもう一つ申し上げますが、安く買つたものを高く売る。このことは政府自身の答弁にもあることであつて、米が安くなつたときにそれを買い占めて、高くなつたらこれを放出する、こう言うのです。安本長官ともあろう者がえらい粗雑な答弁をなさる。この点はこのくらいにしておきますが、大体もう少し実理に基いた御答弁を願います。  それから供米のことについて私は非常に不満を持ちます。これは竹山さんが何回も農林大臣に尋ねられましたが、今年の供米量が非常にめんどうである。あるときにはこの供米は二千五百万石もらうと言います。あるときには二千七百万石と言い、腰の弱いときには二千三百万石と言い、あとはルースが持つてつたのだなどと申します。そこで、二千七百万石から二千六百万石となり、ドツジに怒られて結局そのまん中の二千六百五十万石にしようかと言つておるのです。ところが農林大臣はこういうことを言つておられる。日本で、予想收獲高が出まして、そのうちから保有量をとりますと、あとは供出しておりますと言われる。これは日本の法規だ。農林大臣も御同感だと思う。ところがドツジが来て、こういうふうにしなければいかぬ、ああいうふうにしなければいかぬと言うたか言わないかわからないうちに、新聞記事が出る。そうすると供米量がぐらぐらかわる。それであつたら、供米量というものは日本の法規に基いておきめになるのか、あるいはドツジの忠告によつて、ドツジに気がねしておきめになるのか、一体どつちなんです。その点をはつきりしてもらいたい。こんなややこしいことで、どうして供米ができますか。その点を伺いたい。
  168. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。この問題は先ほどもお答えした通りでありまして、現在の食管法に基いて行きますれば、收獲高から農家保有米を差引いたものが、供米の量になつております。新聞紙上ではいろいろ報じておりますけれども、政府はそのたびごとにぐらついたことはございません。なお供出量の割当に際しましても、横田さんは政府担当になつたことがないからわからないかもしれませんが、予算と同様、これはちやんと向うのアプルーヴアルを得て、正式に割当てることになつていることは事実であります。
  169. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは今年の供米量は、はつきりきまつたのですかということが一点。それから今後におきめになるのですかということが一点。それから、これは自由党の人はいやがるのですが、もう一つわれわれははつきり聞きたい。アメリカのやつかいしごくな紙の上の農地解放、あれは農民から税金をとるためにむちやくちやに地主の名前を小作人に書きかえただけである。そうしてその結果できたものに対して、ドツジが参りまして、米の供出はこうだ、ああだと言つて日本の米を日本人にかつてにさせないで、あなた方三人の大臣を非常に困らせる。これは共産党の見解から言えばドツジ地主ができたのかと言いたい。こういう意味であなたにはつきりつておきますが、今年の供米量はきまつたのかきまらないのか。もしきまつておらないのならば、一体いつおきめになるのか、この点だけはつきり答えておいてください。
  170. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 供出量については、両三日中に決定の運びになろうと存じます。
  171. 横田甚太郎

    ○横田委員 大体今まで供出をとるということは非常に困難でありました。だから、総合供出だとか、裸供出だとか、あるいは事前割当だとかいろいろのことを言つて騒いだのです。ところが今度は、いまだに供出量が割当てられないような状況で、しかも新聞記事の報ずるところによりますと、どこでも売惜しみがある、あるいは買いだめがある。こういうような條件のもとで、どうして供米に対して自信を持つて二、三日中に決定の運びになるんだ、こういうのんきなことが言えるか。これはおそらく農林大臣が言われるところの、日本の食糧事情がよくなりましてという言葉に盡きるだろうと思うのですが、食糧事情のどんな内容がよくなつたのか、それをお伺いします。
  172. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 こういう問題については幾たびもお答えいたしましたから、繰返して申し上げません。
  173. 横田甚太郎

    ○横田委員 幾たびもお答なさいましたか知りませんが、一向はつきりしないので、あなたが出て来るたびに聞いている。本会議に行つてもじつくりと聞かれない状態である。食糧事情がよくなつたという内容の一点にしぼつてお伺いいたしますが、食糧事情がよくなつたとは、一体どういうことですか。
  174. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように食糧事情は、内地生産のものと輸入食糧と二つあわせて考えております。従来は小麦協定に参加できなかつた。これが小麦協定に参加することができた。それから国際的な食糧事情は、増産で非常に好転している。従つて日本が自由国家として今後世界の経済市場に結びつくことによりまして、輸入関係は順調になつて参ります。これが有利になつ一つの点でございます。もう一つは戦時中並びに終戰直後は非常に土地が荒廃しておりまして、土地の生産力はもとよりのこと、生産手段においても欠けておつたのでありますが、最近におきましては、漸次これが充実されまして好転いたしました。もとよりその土地々々における天候の作用はございまするけれども、全体として日本の農業生産は上昇の線をたどつている。こういう点からして、われわれは食糧事情が好転していると考えておるのであります。
  175. 横田甚太郎

    ○横田委員 日本の食糧事情はよくなつている、あるいは生産量がふえたと言われるが、数字の上では少しもよくなつていない。統制配給の時代にやみ米があつたのが、経済の作用で表面に浮いて来ただけである。国際小麦協定に入つたから、食糧が非常に順調に来るようになつたと言われますが、大臣もこんな記事をお読みになつたでしよう。これは二十六年十月二十日の朝日新聞の記事です。これはタスじやないから御心配のないように。「加州米の対日輸出は、戰後は政府機関の手を経て行われて来たが、今度初めて七十七万二千袋(約三万五千トン)が正規の通商手続によつて日本に仕向けられることになつた。「ここまではいい。「今年の加州米は大豊作で、対日輸出は加州米の価格を安定させるための措置といわれる。」この事実で伺いたいのは、アメリカの米が日本に売れるようになつたならば、加州米の価格が安定する、加州といえばアメリカのカリフオルニア州ではないですか。アメリカのカリフオルニア州の米を安定させるために日本の農村に混乱を起して、大臣同士三人けんかして一体何になるのですか。ここであなた方にはつきりと食糧分野における自主権をとりもどしてもらいたい。こういうわけで食糧事情がよくなつたよくなつたということは、あまり言うていただきたくないのです。日本の食糧事情がよくなつたのではないのであつて、困つておるのだということをはつきりと安本の統計にお出しになつて、それから出発されたときに初めて日本の食糧事情はよくなるのです。だからあなたの方からお出しになつたこの統計をお帰りになつたならばよく見ていただきたいが、ここにある作付反別は何もふえてはおりはしない。これはあなたのところから出した統計であるから、けちのつけようがないはずだ。何もふえてない。これは農林委員会においても特に問題になつておるが、傾斜十五度を境といたしますと、耕作可能面積は大体九百万町歩、それがときに四百万町歩になり、ときに六百万町歩になつておりますが、この四百万町歩といい、六百万町歩といい、九百万町歩という今荒れておるところに、いつごろ作物が実るのか、これに対して方策があるかということを承りたいのです。そこに実つて、そこから物が出たときに、初めて食糧事情がよくなつ日本の農産物の価格がよくなつたと言つていただきたい。アメリカが米の価格が非常に心配しておつたところが、日本に売れるようになつて安心したというようなことが新聞に出る時代においては、そんなことを言つてもらいたくない。九百万町歩、六百万町歩、四百万町歩にいつ食える物がなるのか、この点をお聞きしたい。
  176. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 土地改良、並びに干拓その他において、土地が漸次ふえておることは事実であります。またこれらの單位生産量もふえておることも事実であります。また今後造成されるものが相当ある。これについては財政状況からいつて急に行きませんので、まず現在北海道あるいは東北の單作地帶の振興に、実は重点を置いてやつておるのでございます。ただ残念ながら一面におきまして毎年の災害のために、せつかくの既耕地が荒廃して行く、こういう点が相関連して、政府の財政投資にもかかわらず、その面においてマイナスのあることはまことに残念でございます。しかし全体といたしまして、戦時中あるいは戰後の状況からすれば、生産量がふえておることは事実でございます。
  177. 横田甚太郎

    ○横田委員 ふえておるといつても、隠れておつたところの量が出ておるのです。この点に対して大臣はそうではないということは何も言つておらない。ただ数字がふえたふえたというだけである。しかしこれはいつの議会においてももめました通り、統制と配給の時代に一千万石の米麦のやみがあつた、そのやみが浮いて来ただけがふえておるのです。それ以外に何もふえておらない。この点において、ふえたというのであるならば、それはやみ米の数字が出ただけであるという私の理論に対して、間違つておればじつくりと反駁していただきたい。それから私は大体こう思うのです。今年は米の値段が七千三十円にきまつた。これでは米は出ません。これは私の統計ではなく、全国指導農協連の調査ですが、米作二十六府県の供出農家二百二十七戸から集めて来た調査によりますと、平均石当り正味八千六十円だというのです。私はもつとかかると思うのですが、この統計によるとこういうことになつておる。そういたしまして二町歩以上の農家におきましては、米をつくるところの生産費は非常に安くなりまして、六千九百二円でできる。ところが五反歩以下になりますと八千五百十四円にふえてしまう。だから米の値段を劃一的にとられると困るのです。しかもこういう形ににおいて先に申しましたところの安い価格で出して引合う日本の農家というものは二割六分にすぎない。あと七割四分というものは、七千三十円でとられたら赤字になる、こういうのが農村の実情らしいのです。これは農業朝日に出ておるのですから、お帰りになつたらじつくりとお読み願いたい。この問題の解決し得ないところに、供出時代に強権を発動しなければならなかつた事実があつたのです。今度それをあまりにやり得ないところのいろいろの條件が出てきてその條件をごまかすために米の自由販売とか、あるいは統制の撤廃とかいうような自由党にだけわかつて一般大衆にはわからないところのものを言い出したのではないか、私はこう考えるのですが、この点に対するお考えは一体どういうことでございますか。
  178. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 米価、特に統制時代における米価の決定について、いつも論争があるのでありますが、これは生産費と一概にいいましても、これは正確にいいますれば、時、場所によつて、非常に状況が違うのでございます。しかしそれを一々計算してやるというわけには参りませんので、そこで大数的な観察としては、やはりパリテイ指数が最も妥当であり、これが合理的であるということでパリテイ方式をとつているのであります。これは生産費と生活費と総合的に勘案しなければなりませんが、これが現在どれよりも妥当な方法たと思つて、それに基いてやつている次第であります。
  179. 横田甚太郎

    ○横田委員 その点はあつさり聞きます。米の統制撤廃、こういうことが問題になつて来ますと、それを大体かりに承認するとして、そういう需給操作の場合に、非常に外国の麦とか米とかが大きな度合いを占めておるということは、これは大臣自身が認めれおられますね、その場合に国際小麦協定によつて保証される小麦が非常に有利だ、こう言われるのです。そこで私は一つだけ伺つておきたいのは、米をお買いになる場合に、地球はまるいのですから、まるい地球のどこからでも安かつたらお買いになるのか、あるいはどこかを区切つて、高うても安うてもお買いになるのか、その点だけを聞いておきます。
  180. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは政府もできるだけ安く、いいものを買いたいから、有利で安いものを買う方針であります。
  181. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしますと、かりにソビエトにいたしましたところが、中国にいたしましたところが、向うからは鉄でも石炭でも、石油でも食糧でも出すと言つています。ところがこの間も、ここの議会で会談をいたしましたときに、日本からは、鉄鉱石がほしい、石油がほしい、あるいは食糧がほしいと言つておりながら、日本から出すものは、りんごであり、あるいはそれ以外のパンツにもならない短かいところのズボンだ、歯みがき粉だ。これでは困るじやないかということを言つておりますね。これで、はたして日本は安いところから物を買うような気構えがあるのだろうかどうだろうか、日本人たち——これは私の言葉じやないのですよ、ダムニツキ氏が言うのですが、アメリカから約三十ドルに近いところの石炭を買うて、そうしてソビエトの樺太から十ドルに近いところの石炭を買おうとしない、これは日本人だけにしかわからないことだ、こう言つている。だからもしソビエトや中国が、アメリカ圏よりも安いところの小麦や米を出すのであるならば、自由党の統制撤廃後におけるところの需給の非常に大きな度合いを占めるのですから、その場合お買いになるつもりがあるかないか。あるとするならばパンツにもならないところのズボンを持つてつて、これをとろうとするところの気持をおかえになるのかならないのか、そういうような点をこれは安本長官にお伺いします。
  182. 周東英雄

    ○周東国務大臣 中国におきましては、御承知の通り、外へ出すだけの食糧の余力がないということははつきりしておる。ソビエトにおいては東洋に近いところに小麦の生産地はありますまい、それはあなた御承知の通りウクライナ地方です。そうすると陸路そういうところから持つて来る運賃よりも、私は船賃の方が安いと思う。そういうことはもう少し実際に即して考えて行きたいと思います。
  183. 横田甚太郎

    ○横田委員 実際々々とよく言われますが、ソ連のことはあなたよりも私の方が專門だ、あなたたちと頭の内容が違う、はつきり言つておきます。現に満州の大豆はソビエトへ出ておるではないか、満州の食糧がインドへ出ているじやないか、インドで一千万人の餓死者が出るというときに、そこへ米を一番先に送つたのはアメリカですか。あなたのすきなアメリカでなくして、食糧が足りなくて三千万人の餓死者が出るといわれたところの、中国共産党が政治をとつている中国人民の力でやつた。それははつきり御記憶願つておきたい。満州の大豆あるいは中国地区にありますところの食糧を買うために、もう少し誠意のあるところの態度をおとりになるかならないか、こう点を承りたい。
  184. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今、日本の食糧の対策としては、米と小麦を考えております。あなたは大豆とおつしやるだろうと思つてつた。中国においては米麦とも輸出余力はありません。そういう余力のないところから、仮想的なものを考えてもだめだ。ソ連は東亜地域において小麦の生産地はない。あなたよく調べてごらんなさい。
  185. 横田甚太郎

    ○横田委員 しかしソビエトは、あなたの知らない間に大きな領土ができておる、大きな国内の変革ができておる。その点ははつきり御記憶願いたい。そこでソビエトの小麦が英国へ出たときと、あるいは中東地域に出たときとえらい違う。ダムニツキ氏に言わしたところが、はつきり言つております。欧米へ小麦を出すときと、日本へ小麦を出すときとは、違うと言つております。だから向うが出る出ないということは、あなたがお言いになる言葉ではない。日本政府は、日本の農村に米と麦が何ぼできているかもはつきりつていないで、統制撤廃後のやりくりにうろうろしておる。そんなことをあなたが大きなことを言うべき問題じやない。ただ協定時間がありますので、もう一点だけ質問しておきます。こういうような私たちにはわかり得ないことをやられます。それは米の統制撤廃ということであります。その立論の基礎になるのが、日本の食糧事情がよくなつたといわれる。それはよくなつておらない。食糧が現に多くなつたと言つているが、多くなつたのでなくして、やみ米がたくさん出ているというだけだ。そんなことをいくらやつてもしかたがない。だからわれわれといたしましては、こういうような日本の食糧事情を思いますと、はつきりと見きわめられるが、今、議会におきましては、統制撤廃後の実効価格というものがどのくらいに納まるかということが、論戦の中心になつておりますが、私はそれよりも大事なことは、現在の一箇月のうち一回しか白い日本の米が食えない人たちが、統制撤廃後は——一般ですよ、やみじやないですよ。一般がたくさん米を食えるようになるのか。おそらくならないだろう。ならないようなことで国民を騒がせ、しかも閣内をがたがたさせるようなことを、何の必要があつて、だれの利益のためにやられたのか、その点だけを伺つて、あとは農林大臣に対する質問は農林委員会に譲ります。
  186. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これはこまかいことは申しませんが、現在あなたが指摘しているように、やみ米を食つている人は、現在の富裕階級である。これは統制がはずれても米を二倍食うということはないので、依然としてかわりません。むしろ自由になつた場合に需要が増して来るのは、中堅階級じやないかと思います。従つてその意味においては、自由になれば今までやみ買いしておつた面が、さらに需要が、増すとは考えておりません。全体としてむしろ中堅の方の米に対する需要が多くなる、かように考えております。
  187. 横田甚太郎

    ○横田委員 とにかく希望だけ言つておきます。答弁はいりません。大体米というものは、あなたがお考えになるほど、日本人にはそまつなものではない。豊葦原瑞穂国ということを言つたがために、天照大神の政権ができて天皇がのさばつて、その点でわれわれはごまかされて、戦争の間にからの南に米を求めずに、日本の農村から收奪された事実を知つているから、私はその点あなたに希望條件として述べておきたいことは、やはり国民の大事な米は、よほどはつきりした成案が立たない限りにおいては、いらない御意見はお出しにならない方がお得であろう。だから今度米の統制撤廃の問題をはつきりきめて、そうして御実行になるときには、だれでもが納得するような立論をしてやつていただきたい。これだけを希望しておきます。
  188. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 先ほど竹山祐太郎君から申出がありまして、昨日の根本農林大臣との一問一答に対して、速記録を調べてという懸案があるので、その点について質問したいということでありますから、竹山祐太郎君の発言を許します。竹山祐太郎君。
  189. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 昨日農林大臣と質疑応答の際に、速記録を調べた上でということで、問題を保留しておりますが、今朝速記録を調べましたところ、前後四回にわたつて私が念を押しております点に対して、農林大臣は二千五百万石は統制撤廃を前提としない、現在の制度のもとにおいて統制撤廃とは無関係に二千五百万石はきめたということを、四回にわたつて答弁されておりますが、農林大臣はこれについてどうお考えになりますか。
  190. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私が御説明いたしましたのは、政府が本年度の供出割当についてどういうふうな考えを持つているかということに対しまして現在の食管法の建前において供出をいたすことになりますので、従いまして生産見込高と農家保有高を考えてやつておる。大体政府の方針としてはおおむね二千五百万石、こういうふうに申し上げたと思います。なおこれは先ほど横田君の質問に対して答えたのでありまするが、政府は毎年のように割当数量を一応決定して、向うとの折衝になるのでありますが、関係方面との了解を得て、初めてこれが実施できるのでございます。そういう意味におきまして、おおむね二千五百万石と言つたと記憶しております。
  191. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の伺う要点すなわち統制撤廃を前提としないという問題が、問題なのでありますが、そのことは明らかに答弁をされておりますが、これをお認めになつたのかならぬのか、念のためにもう一度伺います。
  192. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 速記録にある通りでありまするが、これは統制撤廃するといなとにかかわらず、すなわち現行の食管法においてそれを前提としてでありまするから、当然これは統制撤廃を前提としないということになります。しこうしてその額はおおむね二千五百万石、こういうふうに言つたのだと思います。
  193. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私が昨日申し上げたのもその点で、今確かに私の点をお認めになつた。そこでこの問題に関連して、きのう不明確だつたから議論を残したのでありますから、それに続いての問題をもう少しお尋ねをいたしたい。  すなわち統制撤廃を前提としないでおきめになつたとするならば、統制を撤廃すればだれが考えても、常識的に供出量は減額をしなければならぬ。すなわち農家の保有を十分に与えるくらいな政府及び与党には親切さがあることと考えますから、当然供出量は減額をすべきものだと考えますが、農林大臣はどうお考えになりますか。
  194. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは全部の構想ができないから、まだ申し上げておりませんが、たとい統制が撤廃をされましても、その場合に有るいろいろの考え方がございます。いわゆる過渡期における混乱を防止して行くという建前からいたしますならば、供出していただいたものをいわゆる現在のマル公——消費価格のような価格で、委託販売するということになりますれば、これは現実の消費者においては非常に安定する、のみならず生産者においても安定して来る、こういうことになると思います。また操作用に確保しておきましても、政府がそのために若干拂下げによつて処理をした場合には、これをバツク・ペイするということを考えた場合においても、政府がこれを操作米として持つことについては何ら支障がない、かように考えます。今のところまだ結論に達しておりませんが、われわれは供出後の自由販売ということは前から言つておりました。その場合におきましては、一定数量を確保したならば、あとは農家の保有米を自由に販売するということを認めているわけでございます。その場合におきまして、相当政治的考慮を含んで供出をするということをも考えられるわけでございますから、今それについては何らの結論を得ていない次第であります。
  195. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 たいへんどうも中間の説明が多くてよくわかりませんが、結論だけを伺いたいのは、現実の問題よりも建前論として、要するに今お話のように、供出後の自由販売さえ許してやりたいという政府与党のお考えからするならば、統制撤廃をする以上は、当然農家の保有を十分に与える意味において、供出量は統制撤廃をしないできめた数量よりも減るのが原則だと思いますが、それに対する農林大臣のお考えを伺うわけであります。
  196. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。例年の状況からいたしましても、これが現行法でやるという建前になりますれば、現行法において算定した数字を割当てるという以外に方法はないと思います。
  197. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それは統制を継続するという場合のお話であつて、統制を撤廃するという政府の方針に基いて処理をされる場合においては、もしそれが今の現行法でできないならば、法律を改めてでもやらなければならぬのが、政府の当然の処置だと考えますが、それもめんどくさいからやらないのだということでありますれば、統制を撤廃するのかしないのか、さつぱり国民にはわけがわからないことになる。私の申しているのは現行法で法律通りおやりになるというのならば、統制撤廃をしない。国会に法律を出すまでは絶対に統制は撤廃しないという前提で行くのでありますか。その点どうも不明確でありますからもう一度伺います。
  198. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 その通りでございまして、現行法がかわらない限りにおいては、現行法通りに供出をいたすことになります。
  199. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 そうすると知事会議に出される場合においては、統制撤廃はしないという方針でおやりになる数量をお出しになるのかどうか、それをひとつ念のために伺います。
  200. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 何回も申し上げたように、われわれが現行をもつて供出を命ずる場合には、現行法によつてつて行くことは当然であります。
  201. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それではもう一度念のために伺つておきますが、統制撤廃という事実は、法律によつていつ手続をされるお考えでありますか。
  202. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは具体的に法案がまとまり、関係方面との了解ができた場合に、具体案を立法いたし、それを提出いたします。
  203. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それならば今政府の折衝されておる統制撤廃の手続その他の問題と、供出数量割当の問題というものは、まつたく無関係に行われておるということでありますか、この点を伺つておきます。
  204. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 具体的な草案が提案されない限りにおいては、現行法で行くのが当然であります。
  205. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の伺つているのは、今あなたが言われる司令部に交渉をするその数量及び統制撤廃の方式というものとは、無関係なのであろうかということを伺つているのであります。
  206. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは向うの方と折衝するというのは、基本的な問題についてでございましてこれと供出量の問題とは相関連はいたしますけれども、具体的に処置する場合においては、別個に考えなければならぬ問題であります。
  207. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 問題が相関連するということが問題なのであつて、相関連をしているのかどうかということを伺つているのですが、関連をしておるのですか、もう一度念のために伺つておきます。
  208. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。非常に押し問答になりますが、御承知のように私は何回も申し上げたように、現行法でやつておりまするから、二十七米穀年度における供出については、従前通りやるということです。従いましてその限りにおきましては、現在は統制が継続するという前提のもとに、これがなされることは当然であります。そうして今度は統制撤廃に関する具体案ができ、関係方面の了承ができ、なお成案ができた場合には、そのときにあらためて提案し、それによつて起るところの措置は、その後においていたさなければならない問題であります。
  209. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それでは大いに譲りまして、まだ政府に統制撤廃の具体的な方式がきまらないということでありますから、これをきまつたとして言うこともできますまいから、それならば今最後にお話のように、統制撤廃がきまつたならば、そのときにおいて供出量というものは相当減額をするということに考えておられるかどうか。そこを伺つておきたい。
  210. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 統制撤廃の法律ができ、また通過した場合においては、当然それも考えなければならぬと思います。またその場合においては、さらには……(「供出の補正は」と呼ぶ者あり)供出の補正についても考えなければならぬと思います。
  211. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それでは原則として統制撤廃の方式が確定した上は、補正をし——補正という意味はふえる補正があるはずはないのですから、当然減る補正を行うのだということに了承をいたしましたが、もしその点に不明確があるならば、もう一度御答弁を願います。
  212. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 統制撤廃にもいろいろの方法がありまするので、その実情に応じて考えなければならぬと思います。減額補正ということも考えなければならぬ要素であると存じます。
  213. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 この問題はそれでは減額補正をするのだということに、これは有田君が何か言われても、今農林大臣が了承されたものと、どうしても思わざるを得ませんから、ここらで有田君も了承されたものとして、そこで伺いますのは、いよいよ二千五百万石を農林大臣も了承をされ、統制撤廃後は減額をするという事実すら明瞭になつておるにもかかわらず、これを二千六百万石、あるいは二千七百万石ですか、要するに増額の供出決定をしようとされておる今の政府考え方、現行法でどうしてそういう数字が出て来るのか。一旦現行法で閣議決定をされた数字が、法律は何もかわらないのにかわる、数字がふえて行くという法律上の根拠を伺いたいのであります。
  214. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 政府は二千五百万石と決定してはおりません。おおむね二千五百万石程度になるではないかということを検討したことは事実であります。二千五百万石とは政府ほどなたも言つてはおりません。先ほど申したように、これは収穫予想高と保有量を勘案し、そうして竹山さんも政府担当時代において御承知のように、この問題については向うと折衝の上、最後的にアプルーヴアルをもらつてから初めてきめる。従いましてこの点についてはわれわれは……(「方針言つたじやないか」と呼ぶ者あり)方針は総理は言いましたけれども、二千五百万石ということは言いません。
  215. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の言うのは、二千五百万石を決定したということは、そうするとこれはまた速記録を調べてみなければならぬのですが、二千五百万石を閣議で決定したということはお認めになつておられる。だからそれを百万石もふやすということをおきめになるについては、何かお話合いがあつたんだろう、だからそこを私は先ほどかたく言つたけれども、もう少しやわらかくていいですから、何かそこに理由がおありだつたら伺いたいのであります。
  216. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 政府は二千五百万石と決定したのではなく、おおむね二千五百万石程度ということを決定したことは事実でございます。それから二千五百万石と政府は決定してはおりません。天然資源局その他の方とも折衝の過程において、もう少し日本の食糧を多く出すようにしてはくれまいか、こういう要請はいたしました。その事実として実は二十三年において予想收穫高が約六千万石台のときにおいてすら、二千九百万石の米の供出をやつておる。その点からするならば、二千七百万石くらいは出やしないかという観測でありましたが、当時は御承知のように強権を発動し、かつまたこれが相当実は裸供出をやつておるわけでありまして、また当時におけるところの收穫高の見込みにつきましては、現在のように作報の機構がなかつたために、実は地方自治体からの申告の統計によるのでありまして、実際は当時においてはその予想收穫高よりは、はるかに上まわつてつた、こういう事情において二十三年において六千万石台のときにおいて二千九百万石でしたから、本年二千七百万石程度を出すべきだという考えは基礎数字において違つておる、こういうことを折衝しておりまして、現在政府が総司令部と折衝しておる数字は二千五百五十万石でございます。
  217. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の言うのはそういう折衝の問題に農林大臣が苦労をされておるということは私も想像はつきます。しかしいやしくもおおむねにしても二千五百万石をきめられたということについては、考え方があつてのはずだと思う。軽率にできる話のものではない。しかもわれわれの新聞等を通じて見聞きしておるのは、与党及び政府は一時は二千万石にきめようとすら強行をしたということを、われわれ承知しておる。ずいぶん強く主張した。そういう一貫した考え方というものから、二千五百万石にようやくおちついたということから見れば、それをそう言われたからといつて、ぐらぐらするということは、いわゆる主管大臣としての農林大臣は、一体どこをほんとうに強く考えておられるのかということは、これははなはだ怪しくなる。われわれはその点についてきわめて不安であります。お話通り、数年前までは全額アメリカから食糧をもらつてつたのでありますから、これはある意味において、何と言われようとも裸供出をしようとも、国民全体に何としてもやらなければならなかつたという情勢は、これは過去の問題であつて、ほんとうに日本の自立をして行こうという出発点において、わずか五十万石や百万石というけれども、一旦閣議で慎重審議し、与党でも決定した数量が、そのくらいのことでぐらつくようなことで、一体食糧政策に対する自主性、自分の信念というものはどこにある。(拍手)これは今までの内閣の状態とは違うのでありますから、その点に対するもつと確固たるこの問題に対する信念を持つてもらわなければあぶなくて見てはおられない。このことは要するに、(「芦田内閣は何しておつた」と呼ぶ者あり)芦田内閣のときは食糧をもらつてつた。これからわれわれは買つてつて行くんですから、農民全体のやり方というものを考えて行くべき重大な入れかわりのときでありますから、私は言う。同じような條件のときならば何もそういうことは言いません。だからそういう問題をしつかり考えておきめになつたのかどうか、それとも二千五百万石というものは大した根拠がなくおきめになつたというならば、これも問題外であります。私はいやしくも農村の諸君が一番今心配をしている問題は、政府が統制撤廃によつて農民を救おうという表看板だけはきわめてけつこうだけれども、その実非常に供出強化をすることによつて、農民を苦しめる結果になるじやないか。(拍手)それはやつてみたらわかることであつて、その事実を政府は司令部から言われたということによつて、弥縫をしようとしておることははなはだけしからぬ。だからそこをしつかり農民のことを心配しておやりになる農林大臣ならば、なぜ初めにきめた二千五百万石というものを、しつかり堅持をなさらないかという点が、私ははなはだ不本意である。その点についての今後の折衝の見通しについて、ひとつ大臣の信念を伺つておきたい。
  218. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほど申しましたように政府としましては、二千五百五十万石で折衝しております。なほ閣議において以前二千万石あるいは二千三百五十万石というような数字が出たことも事実で、これは経過的にいろいろの意見がございました。これは政府措置要綱が統制撤廃を前提としたから、そういう議論が出たのであります。しかし主管大臣といたしましては、これは御承知のように経過措置を考える場合においては、やはり相当部分内地米を持たなければ、操作並びに消費地におけるところの安定を期することができないから、おおむね二千五百万石ということを主張しております。そうして大事をとつてこういうような措置をとつたのであります。従いまして二千五百五十万石ということは、十分なる根拠のもとにわれわれは向うと折衝しておる次第でございます。
  219. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 今の問題で一言だけ伺つておきますが……。(「こういう問題については、野党構協力しなければいかぬ」と呼ぶ者あり)協力するためには、よく聞かなければ協力できない。伺いたいことは今の最後の言葉の中に重大なる問題があるので、統制撤廃をする予備のためには、相当の手持ちの内地米を持たなければならぬから、そういうことにふえて行つたのだということを、農林大臣は言われておる。それならばやはり統制撤廃と関連があるのではないか、統制撤廃と無関係ならば減るべきである。その点をもう一度念のために、大事な点ですから伺つておきたい。
  220. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 何べんも繰返して申し上げますように、現在の割当は現行法に基きますから、統制の撤廃はなくてもあつても、同じようにこれが割当をするということであります。統制の撤廃が始まつたときには、その後の措置は講ずるということを申し上げました。
  221. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それでは前の答弁を取消しておかれた方がいい。要するに保有を十分に置かなければ危険だからということを言われたじやないか。だから私は言うのであつて、そういう考え方ならば、当然統制撤廃を前提とせぜに割当てられた保有量じやない。統制撤廃の準備のために供出強化をするということを、言外にちやんと含んでおるじやないか。うもこれ以上議論も何ですから、私は今後の農林大臣の処置を見て、またそのときに機会を得で伺いたいと思います。  供出量の題問はその程度にしておきまして、昨日の質問の際に、中途半端になつてしまいました米価及び麦価の問題について、農林大臣大蔵大臣とに、最後の質問をしておきたいのは、要するに大蔵大臣は米の価格を押えるためには、麦を安くしなければならぬという点が、日ごろの御主張であられるのですから、どの程度に一体麦を安くしたらば、米の価格を、いわゆる農林大臣の言う九十四円程度に押えられる対米比率とお考えになるか。農林大蔵両大臣に伺つておきたい。
  222. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、昨日もお答えいたしましたように、われわれは、統制を撤廃するといたしましても、統制の撤廃の仕方、たとえば配給を続けて行くとか、あるいは配給は続けて行くが自由販売をやるとか、あるいはその配給の仕方でも、どういうような方法が行くかとか、いろいろな点があるのであります。そういう点を考えて、そしてまた米価、麦価をきめる場合におきましては、今平均世帯で三千二百二十円出しておりまする主食費を、増加せずにやつてつたならば、しかも米と麦とを今と同じような食い方にして行つたならば、どうなるかということになりますと、今の実効価格が百二、三十円でございまするが、それがどの点まで上るか。しこうしてこれを押えるためには、麦が今、米に対しまして七八%であるのを、どの程度まで持つてつたらいいか。六〇%に持つて行くか、五〇%に持つて行くか。また片一方の外米の九〇%であるのを七〇%にするか八〇%にするか。こういうようなことを考えて、今の主食に対する比率を絶対に動かさぬ。米麦比率も動かさぬ方法では、麦と外米の引下げをどの程度にやつたならば、米はどの程度になるという、大体の目算をつけております。しこうしてまた、米麦比率の問題で、三千二百二十円はある程度動いても、今の十キロ四百八十五円の大麦、小麦をそのままにしておいて、そうして外米を米に対して七〇にする、あるいは七五にするとした場合に、米がどの程度になるか。しこうしてそれが生計費に何パーセント及ぼすかというふうなやり方で、検討いたしております。こういう大きい問題でございますから、われわれといたしましては、このほかに補給金の問題もありますし、外貨予算の問題もありますので、実は晝一夜をわかたず検討いたしておるのであります。  なお先ほどの根本君に対しまする御質問に対して、私からお答えした方がいいと思いまするが、ただいまでも、アメリカの援助は受けておるのでございます。金額は違いますが、本年度におきましても、援助を受けておる、しかも占領下でございます。その点は御了承願いたいと思います。
  223. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 価格の操作の面につきましては、今大蔵大臣が言われた通りでございまして、これは何回も御質問がありましたが、目安をどこに置くかという場合においては、われわれは生計費に影響を及ぼさないということを前提としますから、現在の実効価格が目安であると、こういうことであります。しかも実効価格は地方によつて違います。現在特に中心として考えておるのは、東京のごとき大都市を中心として、その場合における実効価格を目安として、麦の対米比価、その他の問題を研究しております。
  224. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私は、対米比価をどのくらいに置いたらば、いわゆる農林大臣の言われる実効価格に押えられるかという、検討の内容を伺いたいと思うのでありますが、いろいろ考えられるという、最終決定はしないまでも、要するに麦を思い切つて下げなければ、米の価格を維持することは、だれが考えても不可能なんです。その点の原則については、米価格を維持するために必要な麦を下げるという原則については、農林大臣は、その基本的な考え方は了承をされるのですか。
  225. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほど大蔵大臣からも申されたように、生計費に影響を及ぼさないとすれば、そういうふうな操作をしなければならぬ。また一面におきましては、苦手生計費に及んでも、現在の麦価をすえ置くという場合におけるところの計算もいたしてみているのであります。どちらが全体の日本経済安定のために役立つかということについて、比較検討してみておる次第であります。
  226. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 何もきまつていないという三大臣に、これ以上言つてつても答弁はできますまいし、あとの諸君もありますから、私はこの問題はまた後刻に譲ります。要するにおきめになるなら早くきめなければ、供出もきまらないし、はなはだ迷惑する。これは責めるのでも何でもないので、私は念のために、先ほどの農林大臣に伺いました私の考え方を、率直に申し上げておくならば、これは今最後にお話のあつたように、生計費にも響かないのだ、麦もいいかげんに下げたつていい。ある程度下げたところでごまかしてしまう危險性が多分にあると思う。それが非常にいけないことだということを、私らは言わんがために伺つておるので、この点をはつきり農林大臣はやつておいていただきたい。要するに、何度も申すように、麦はすでに今日において農林省が調べておる通り、麦において生産費を三割切つておるということは、現在においても、もう国内の麦の増産というものを、今のような状態においては、継続、擴大はできないということを、農林大臣は御承知のはずなんです。それをだんだんと八二を六四に下げたときも、われわれは猛烈に反対をしたが、簡單に片づけた。またそのように麦を少しずつじりじり下げて行くということは、これは国内農業の危機であります。かつての農業恐慌のときの姿とまつたく同じ状態を、政府は意識的にやろうとしておる。このことが一番問題の点であつて、これでは農村政策の本体を逆転せしめるものだという点が、私の言わんとするところでありますから、この点は大蔵大臣がわずかの財政補給金をけちけちするために、日本の農村を破滅に陷れるか、あるいは手放しの自由経済で農業をほつたらかすのか、あるいは金を出してしつかり農業の保護政策をやるのかという、現政府の農業政策の基本線に触れて来る問題でありますから、その点は三大臣ともしつかりとひとつ腹をきめておやりにならないと、今日の統制撤廃の上手下手の問題じやない。その現われて来る影響というものは、数年後に一番現われて来る。農民は率直に言えば、麦が高いか安いかという問題は、まだあまり敏感に響いてはおりません。そこを政治家が無感覚に見のがしてやることが、将来国家のために非常に重大な影響を及ぼして来るということを政府に警告を申し上げて、私の質問を終ります。
  227. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 この際動議を提出いたします。すなわち補正各案に対する質疑は、この程度をもつて終局せられんことを望みます。
  228. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 ただいま尾崎末吉君より質疑終局の動議が提出せられました……。(発言する者多し)ただちに採決いたします。尾崎君の動議に……。(「採決々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然)待ちなさい、理論の立つように話すから、議席についてください。要するに今私がどういうふうにするかといえば、君たちがそう言つていきり立つて来るには、君たちの立場があるのだから、その立場が正しいかどうかをこの際明らかにして、はたしてその主張が正しければ、君たちの主張に沿うようにするし、君たちの主張が正しくないということになれば、紳士的に……。(発言する者多し)私の判断をお話しましよう。私は先ほど尾崎君かち動議の通告を受けておるのです。ですから、その動議の通告を受けて、その人が手をあげたのだから尾崎君に指名した。ところが川島君の方は、早かつたかおそかつたかという議論はあるけれども、動議を出す際には、委員長のところへ前もつて話があるのです。話があつて、それを委員長が適当と認めれば、これを許可する。ですから、この場合は当然に尾崎君の動議を採決しなければならぬのです。しかし君たちの話もあるから、話をし合つてから採決するかどうかということを納得するまで話をしているというわけだ。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  229. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 委員諸君は御着席を願います。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  230. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 ただいまの質疑打切りの動議に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  231. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 起立多数。よつて動議は採択せられました。よつて質疑は終局いたしました。  あすは討論採決に入る予定であります。次会は公報をもつて御通知申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十三分散会