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1951-11-01 第12回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月一日(木曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 風早八十二君       淺利 三朗君    麻生太賀吉君       天野 公義君    江花  靜君      岡村利右衞門君    尾崎 末吉君       小淵 光平君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    上林山榮吉君       北澤 直吉君    坂田 道太君       島村 一郎君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    玉置  實君       永井 要造君    本間 俊一君       松本 一郎君    南  好雄君       宮幡  靖君    井出一太郎君       今井  耕君    川崎 秀二君       竹山祐太郎君    早川  崇君       平川 篤雄君    藤田 義光君       戸叶 里子君    西村 榮一君       横田甚太郎君    勝間田清一君       成田 知巳君    小平  忠君       石野 久男君    小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十一月一日  委員竹山祐太郎君及び稻村順三君辞任につき、  その補欠として川崎秀二君及び成田知巳君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2  号)
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  総理大臣に対する質疑に入ります。早川崇君。
  3. 早川崇

    早川委員 私は国民民主党を代表いたしまして、主として総理大臣総理大臣お答えできない場合には大蔵大臣でもけつこうでありますが、一般的問題に関して御質問いたしたいと思うのであります。  第一点は、今後の日本国内政治は、従来より以上に密接に国際情勢と直結することになろうかと思うのであります。そこで私は第一に、講和後の日本政治考える場合に、どうしても国際情勢に対する総理見通しを伺わなければならないのであります。特に平和維持に対する考え方でございまするが、今までの、第二次大戰までと違いまして、力の自由陣営の絶対優位ということを確保することによつて、平和を維持するという平和維持政策が、アメリカ初め、各国基本方針になつておるかと思うのであります。講和條約に調印したわが国として、今後平和を維持して行くためには、自由諸国ソ連陣営に対する軍事力の絶対優位ということを確保することによつて、初めて平和が維持されるという、こういう面におけるわが国協力をどうするか、その平和維持に対する総理の御見解、かかる平和維持方式に対する御所見、並びにわが国自由国家群に対して、こういう面についていかなる協力をして行くか、私はお伺いしたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 自由国家群に対する協力について、軍事力の優位というお話でありますが、これは軍事力以外においても協力の面もあるでありましようし、また共産主義自由国家との間における関係が、單に兵力のみによつてきまるとは考えられないと思うのであります。すなわち、世界政治もやはり輿論政治でありますから、各国輿論の趨向、傾向も考えに入れて行かなければならぬと思います。日本としてはあくまでも民主主義政治を確立して、世界の平和を守るということに協力して行く。また国民もそういう気持になつて行くということが肝要ではないかと考えます。
  5. 早川崇

    早川委員 ただいま吉田総理大臣は、單に自由諸国家の共産主義陣営に対する軍事力の優位に協力するという以外に協力の道がある、かように言われました。吉田総理大臣はかつて第三回政令諮問委員会の席上で、かような発言をしておられるのであります。ダレス氏が第二次会談のときに首相に対して、再軍備を行うことによつて自由主義国家群への協力を求めた。しかし私はそれに対して、わが国はその経済的負担能力なしとして反対した。そこでダレス氏とともにマ元帥を訪問して、マ元帥意見をたたいたところ、自分の意見に同調されて、日本は再軍備によらずとも、その潜在的経済力の発揚により、十分自由主義国家のために寄与し得るという旨を強調した。かように第三回政令諮問委員会におきまして声明されておるのであります。そこで私はかかる考え方は、先般の芦田氏の質問に対する御回答にも、現在は再軍備をして自由諸国間の平和に対する防衛努力に対して協力する余裕はないが、経済的協力の面においてということを一貫主張されておるのであります。そこで私は総理大臣にお伺いしたい。軍事力によつて平和防衛への努力協力することは、いま少し待つてくれ、但し潜在的経済力によつて自由国家群協力する、という意味は、いかなることを意味するか、言いかえれば、軍需生産協力をするか、その他いかなる方法でこの平和維持に対する努力協力するか、その方式を具体的にお聞かせ願いたいということが私の質問であります。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 私とダレス氏及びマツカーサー元帥との間に、どういう話合いがあつたかということに対しては、私はお答えする責任をとりません。  さて、日本と米国との経済協力については、これはしばしば申しておりますが、できるだけ協力いたしたい。その協力方式はと申しても、これはこういう方式とかああいう方式とかいうような方式が、具体的にあるわけではなくて、精神として協力する、こう考えております。
  7. 早川崇

    早川委員 そこが問題であります。單に口先だけの潜在経済力による自由国家群への寄与というだけでは、世界情勢が許さなくなつて来ているということを私は申したいのであります。というわけは、すでに欧州諸国においては、マーシヤル・プランからアイゼンハウアー・プランへ転換しております。私は経済力による平和への努力への協力という実際の効果が、全然上つていないということを非常に申したいのであります。具体的に申し上げますと、日米経済協力あるいは東南アジア開発を通じて、自由国家群協力するといいますけれども、何ら具体的に進んでないのであります。そこが問題なんです。しからばそういう面において、なぜ進まないかという根本原因を探究してみますると、世界国際情勢に合わない日本国内政治あるいはまた日本経済政策、これを言いかえれば、世界はすでにそういう面において、計画経済化方向に態勢が進んでおるのでありますけれどもひとりわが国のみが、そういうテンポに合わない自由放任経済政策の方に進んでおるというこのギヤツプです。このギヤツプに、この日米経済協力東南アジア開発に対する協力が進まない根本原因がある。私はその点に対する政府所見を伺いたいのであります。
  8. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたします。早川さんの御意見でありますが、わが政府におきましては、決して自由放任主義というような形で進めてはおりませんので、基本的にいえば、各企業自主性というものを尊重するということが建前であります。しかもそのことによつて、過去二三箇年間における日本経済復興の目ざましい跡を見得るのであります。私は本会議でも申し上げましように、抽象的議論でなくして、事実をもつて証明しておるのであつて個人企業それ自体の自由を尊重するということが、いかに経済復興を増進したかということを示して余りあるものと思います。しかし今後の問題についてどうなるか。基本的原則はあくまでやはりそこに置いております。しかしそれかといつて、あなたのお話のように、自由放任無計画でなくして、今後における日本経済というものに対して、総合的な企画のもとに、造船計画はどう、あるいは貿易計画はどう、その裏づけをなすべき石炭、鋼鉄、そういうものの総体的な生産計画をどの面に置き、それに必要なる原材料をどの方面から輸入を確保するか、ということについての総合的企画はあるわけであります。その線にのつとつて、あなたも御承知のように、今日外貨予算を組み、その外貨予算の、どのものをどういうふうに輸入するかということの許可を行つておる次第でありまして、そこに一つの国としての全体的な調和ある総合計画はあるわけであります。この点は御承知を願つておきたいと思います。従つてその計画のもとに、東南アジア開発あるいは日米経済協力の線は進んでおるのでありまして、ただどの程度に何をということについては部分的にはやつておりますが、総体的にまだきまつておらない部分があることは事実であります。しかし東南アジア開発につきましても、品物により、部分的においてはすでに進んでいるということを申し上げておきます。
  9. 早川崇

    早川委員 私は日米経済協力東南アジア計画が進んでおれば、何もこううい質問をするのでないのです。進んでおらないから質問する。先般経団連の席上でモロー氏が、結局は政府政策転換がすでにおそきに失しておる、世界の大勢はすでに重要物資、たとえばアメリカで例をとると二十五トン以上の鋼材を使う建築制限され、禁止されておる、さらに五千ドル以上の建築制限も行われておると言つている。あるいはニツケルの例をとつても、こちらから原材料を出しても、日本からこれが時計の製品になつてもどつて来る、ここにアメリカ国民日本に対する反感の原因があるということを、先般関西におけるこれまた経団連の会合において陸軍省リード博士指摘しておるのであります。かような状況である。こういう国際平和維持努力のために、片方では非常なきゆうくつな計画化重要物資統制化という方向に進んでおるにもかかわらず、こちらは反対の方向に行つておるというところに問題がある。周東安本長官は、そういう面が進んでおると言う。おるのならば問題はない。私はその点に対して根本的な政府政策というものが国際情勢のピントに合わない。なるほど終戰後今までは矛盾なく、こういつたものが一応この自由経済によつて発展する余地が出て来たけれども、現段階至つて、私はそういう方式では、とうてい原料獲得の面でもあるいは日米経済協力の面でも行き詰まりを生じたがゆえに、この際この現実を根本的に認識して出直すということが必要なのだ、にもかかわらずあらゆる面において、たとえば食糧制限撤廃の面においてしかり、ドツジさんに池田さんがおこられるのも無理はない、あたりまえのことなのだ。この認識において、はたして政府はどういうお考えを持つているか、総理大臣に聞きたい。
  10. 周東英雄

    周東国務大臣 早川さんはよく御勉強になつておりますから、事情を御承知と思います。私は根拠のないことは申しません。あなたの例示されたニツケルについて、お答え申し上げます。ニツケルについては一部使用制限を行つております。これは世界的に稀少物資でありまするがゆえに、割当を受けるそういうものについて、やはり順次必要に応じて使用制限を行つておる。内地におけるメツキ等についてはこれを使わせないということになつておる。あなたは何でもかんでもそういうことをやれとおつしやいますが、そういう面からいつてこれを全部使用禁止したら、日本中小企業におけるニツケル・メツキ企業は全部つぶれてしまいます。大部分輸出になつておりまするがゆえに、政府は苦しい中にも了解を求めつつ、輸出製品については使用制限しないようにやつて来たのであります。あなたの方は禁止せよと言つてけつこうでありますけれども、いつでもあなたの御主張になりまする中小企業は、ほとんど全部つぶれてしまいます。そういう面につきましては順次転換させる方法考えつつ、必要な場合において使用制限の挙に出ることは私も考えております。順次段階的に考えませんといけません。関係方面とも連絡をいたしまして、ニツケルのほかにコバルト、銅等についてはすでにその運びに行こうとしておる、ニツケル等の問題につきましても、関係方面相談のときも、アメリカはすでにやつておる、しかし日本には日本事情があろうから、順次よく考えてやろうという話をしておるのであつて、決して私どもは、今お話のように何もかも放任しておるわけではございません。すでにD・〇・レーテイング物資その他についてもよく話合いを進めて、日本段階において必要な場合におきましては、それ相応に処置をとつて行くことは考えている。たびたび今までも話を申し上げている点であります。
  11. 早川崇

    早川委員 今周東さんは私の言いましたことを、非常に幅を広めてすべて統制しなければならぬ、私はそういうことを言つているのではないのです。ほんとうOIT物資のうちで重要なものというものが、もう少し計画的に統制されなければ、日本講和後の経済再建に必要なドル不足の解消もできないじやないか、援助物資は、ガリオア資金はなくなる、そうすると勢い東南アジア開発日米経済協力方法以外にない。これをはばんでおるのが今言つたこのテンポに合わない一つ経済政策にあるのだ、そういう問題を考えなければならない、こういうことを言つておるのであります。今D・〇・レーテイング・システムに入るというが、ほんとうに入るのか、その点を聞きたい。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 大体今話合いをしております。必要な段階に進めばそれに参加することも必要な方法だと思つております。
  13. 早川崇

    早川委員 さて、しからばそういうD・〇・レーテイング・システムというようなものに入つて、一方日米経済協力を推進されるという御意見でございます。そこで私がお聞きしたいのは、今後講和後の日本経済方向をながめた場合に、どうしてもこういう方向に進まなければならぬということはわかつております。しかも現状はなかなか進まない。しかし政府が一歩前進しようとする場合に、どうしても問題になるのは価額の面であります。資金の面であります。資本蓄積の面であります。そういう面において今までの経済政策で、そういう要請に応じて進んで行けるかどうかということが、私は問題であろうと思うのであります。まず物価問題について、国際価格よりも五割方上昇しておる物価状況において、そういう物価政策のもとにおいて、はたして安本長官が言われるような、そういう方向が一歩前進するかどうか、その点の具体策を私はお伺いしたいと思うのでございます。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 あなたも御承知のように、日本生産に関して相当部分原材料が、外国から輸入されなければならぬという現状のもとにおいて、生産それ自体において、コスト関係において、非常に技術的に立場が悪いということは御承知通りだと思います。その間において輸出増進のために価格問題を考えるときに、相当の困難があるということは私も考えます。しかしだからといつて、これはそのまま捨てておくわけに行かぬ問題であります。その大きな点について思い切つた施策をやつて行こうと思つております。その一つは、やはり原材料の面に一つの問題がある。これをできるだけ運賃等の安い近くに切りかえることが必要である。その面からして、大きく現在及び将来東南アジア地区を通じて、これを入れるということについての開発の問題があります。これにつきましてはアメリカの方とも連絡をして、開発について地域の調査、具体的な物資というものについて交渉を始めていることは事実であります。  第二の点は、原材料近間にできるだけ切りかえるにしても、日本企業内部にある非能率な点は、できるだけ早く切りかえることが必要であると思うと話をいたしまして、たとえば鋼鉄等につきましても、むしろ運賃等の値上りが占むるコスト高の割合よりも、企業内部にある非能率な点がもつと大きいということであります。これは御承知通り、戰争中及び戰後における設備の置きかえられざりしことが、非常に大きな点をなしていることはあなたも御承知である。何としても企業合理化ということに重きを置かなければならぬと思う。これによつてコストを切り下げなければならぬ。決して昔のように労働ダンピングはできません。これはむしろ企業施設の改善に深く考えを集中してコストを引下げる、そして国際的に対抗して行く、こういうことでなければならぬと思います。こういう一、二例をあげてお答えにかえます。
  15. 早川崇

    早川委員 運賃を下げよというのであれば、これはこの委員会における一つ答弁としてのごまかしなのである。日本船によつて今後輸送して行つたら安くなるだろう、こういうことを御主張になりますけれども実際は第七次造船に対してすら要求額の半分より資金は出さない、その矛盾はどうなるのですか。この委員会においてそういうことを言われるのはけつこうでありますけれども、実際の面において施策が伴つておらない。  さらにもう一つ伺いたいのは、鉄鋼価格の問題でありますけれども、そういつた運賃の割高に見合う補給金の問題はどうするか、こういう面をひとつお聞きしたいと思う。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 早川さんは私の答弁をお取違えになつておる。私はむしろ運賃というものよりも、合理化の問題が先に行かなければならぬと思う。それから原料近間獲得ということが大きな問題である。私は今のお答え運賃は触れなかつたのです。しかし御指摘の点でありますから申し上げますが、もちろん運賃の引下げについては、これができればなおけつこうであります。それは国際的な関係において、あまり日本だけがダンピング的な安い運賃をとることも困難でありますが、しかし自国船によつて原料を運ぶということにいたしますれば、ドル支拂いを節約する面において大きな力があると私は思う。そういう面において船の問題はまことにごもつともでありますが政府は何も七次造船の後期の問題を切つたとか、切らぬとかいう問題だけにとらわれておりませんので、これについては今関係大臣相談中でありますが、私ども日本国内における造船だけの問題でなくて、買船ということもある。今日必要なのは自国船の増強であつて、それは日本国内における造船だけでなく買船によつてもできるのである。このことは御承知通り終戰後六十万トン前後しかなかつた外航船が、最近においては百二十万トン近くなる。本年度末、来年三月末日までには今のまま推進いたしましても、百七十四、五万総トンになる計画で、その相当部分というものは買船によつておる。これも一つの行き方である。買船計画については、今ただちにこれを相当量実行できたら、その方にも金が出て行くということを御承知願いたい。
  17. 小坂善太郎

    小坂委員長 ちよつと早川君に申し上げますが、きようは総理に対する質問で、総理が出て来なければという質問だけ延ばしておつたわけですけれども、この程度のことでしたら、きのうも大蔵大臣安本長官も出ておつたので、総理でなければ答えられぬような質問だけに限つておやり願いたいと思います。
  18. 早川崇

    早川委員 それでは詳細な問題は、大蔵大臣安本長官にお伺いしたい点は後にまわしまして、総理にお伺いしたい問題は、賠償問題であります。  講和後の日本再建考えた場合に今国民が、講和が調印されたけれども、なお日本晴れのような愉快な気持になれないという問題の重要な第一点は、この賠償に関する見通しが非常に暗い、わからないということが、私は原因だろうと思うのであります。そこで今まで新聞紙上に発表せられた内容を見ますると、和解信頼講和というスローガンにもかかわらず、あるいはフイリピン、あるいはビルマ、あるいはヴエトナムあるいはインドネシアという国々、今後われわれが東南アジア開発によつて密接な関係を持たなければならない、かようなアジア諸国日本に対する賠償要求というものが、二百三十億ドルという多きに達しておるのであります。これは昨年の日本輸出実績に対して二十数倍に上る額であります。かつてドイツに対する賠償額をとつてみましても、ドイツ賠償はそのときの輸出実績に対して三十三倍程度であつた。ほとんどドイツに対する賠償とかわらない要求が来ておる。私はかような現実を前にいたしまして、政府はこの和解信頼講和精神にのつとつて、戰前の国民生活水準資本蓄積犠牲にしないで、この賠償問題に対処されたいと思うのでありますけれども政府賠償問題に対して、生活水準を下げてもある程度やむを得ないというようなお考えなのかどうか、これはわれわれとして聞きたい一点であります。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、今日いまだ賠償額については何らの具体的な要求が出ておりません。従つて指摘の二百何千億とかいうような賠償要求は、まだ具体的には出ておりません。今後どうなるかわかりませんが、しかし、それにしても日本経済を破壊しないという原則のもとに、制限のもとに行うのであつて、御心配のような点はないと思います。
  20. 早川崇

    早川委員 今の御意見は、国民生活水準を現在より引下げないで、資本蓄積をも犠牲にしないで、という意味に解してよろしうございますか。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございまして、国民生活を切り下げて賠償するということは、條約の十四條にもあります通りに、現在できないことを前提にして規定いたしております。
  22. 早川崇

    早川委員 では大体役務技術提供というものは——イタリアの場合を見ましても、イタリアスフオルツア外相の有能な手腕によつてガリオア援助資金は打切られましたが、大体三億六千万ドル程度賠償で片がついたのであります。さらにそれが七年間の支拂い期限になつておる。むろん、イタリア日本の場合においこは、その事情が違いますけれども、われわれが賠償問題を考える場合の一つ目途として、ポーレーストライク、さらにジヨンストンという賠償使節団が来ておりまして、ポーレー案なんかは厖大であつたけれどもストライク案、さらにジヨンストン報告によると、大体四億二千万ドルというところまで下つておるのであります。日本国民生活維持独立というぎりぎりの線が四億二千万ドル、むろん役務技術提供であります。池田大蔵大臣は、本会議の荒木君の質問に対して、マネーによる賠償はまつぴらごめんだと大膽に言い切られましたけれども、いずれにしても金と見合つた賠償にならざるを得ない。大体われわれといたしまして、国民生活を下げないというジヨンストン報告を最低の線というふうに一応の目途をつけて考えておる、イタリアの場合と比べて……。そういう点に対するお考えはいかがかお伺いいたします。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、イタリアとは事情が違いますので、日本日本としての連合国に与えました損害を考えて、できるだけ誠意をもつてやる、これよりほかにお答えは今のところ不可能であります。
  24. 早川崇

    早川委員 賠償の最取終決定をする原因は、賠償要求並びに賠償を支拂おうとするその国の政府の、それに対する主張客観性にあります。客親性がある以上、たといこの賠償厖大要求があろうとも、結局きめるのはそれであります。私はジヨンストン報告の四億二千万ドルというような線は、かなり客観性のある線だと思う。池田大蔵大臣は、賠償に対して何らの方針も持たない、あるいは目途も持たない、数字的な見解も持たない。そこに、国民講和を結んでおりながら、非常に曇天のように暗い、晴れないという原因がある。そういう点に対する一つ方針をあらためて伺いたいのであります。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 十四條にはつきり規定しておりますので、十四條を誠意をもつて履行する。これよりほかにはございません。
  26. 早川崇

    早川委員 総理大臣にお伺いしますが、この賠償問題は、むろん金額をどうこうせよというのではありません。私の政府要求したいのは、ただ賠償が苛酷だから受けられぬとか、あるいは自立せぬから受けられぬというだけでなくて、わが国にとつて賠償支拂いに対する主張客観性がほしいのであります。こういう自立計画、債務はこうだ、国民生活は、先ほどのお話では現状より下げない。しからば、そういう面において日本はどれだけの賠償をし得る能力があるか。こういう一つのだれが見てもこれ以上は無理だという客観的な計画を作成されて、それによつてこの問題に対処することが必要だろうと思うのであります。ただ、今、日本経済能力がない、そういう面では世界を納得さすこともできない。賠償に対してこういう一つ計画がある、これでは自立を害するのだということを世界に納得させ得る一つの資料を御作成になることをお勧めしたいのでありますが、そういう面に対する首相のお考えを伺いたいと思うのであります。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の債務は賠償ばかりではございません。外債の支拂いその他の債務がございますので、いろいろな点を考えまして善処したいと考えておるのであります。
  28. 早川崇

    早川委員 それでは、総理は抽象的なもの以外にはお答えにならぬようでありますから、少し話題をかえて御質問いたしたいと思うのであります。  私は今後の日本政策考えた場合に、特に二十七年度以降の財政経済全般を考えた場合に、大蔵大臣の言明は非常に楽観的であります。八千億円以内にとどめ得るるというような御主張でございまするが、私は総理に対してお聞きしたいのは、たとえば日米防衛分担金あたりが出て参ります。さらに連合国の財産の返還、外債の支拂い、さらには戰争犠牲者の問題、あるいは賠償ガリオア資金の債務というような問題を考えた場合においては、とうてい池田さんの言われるような楽観的な気分を私は持ち得ないのであります。むしろ現在の八千億円に加うるに、一千億円以上の支出増が予想されるとさえ私は思つておるのであります。というわけは、世界各国国民所得、さらにはまた国防支出、こういうものを総合して考えますと、大体国民所得に対して国防費の占める率は一割であります。日本にもしそれを適用すれば、四千三百億円に上る。さらにまたわれわれとして考えなければならないのは、ドイツイタリア、フランス、イギリス全部ひつくるめまして、国防費の占める率は一〇%、しかしながら支出に対しては、全部ひつくるめまして大体三割、三分の一程度が国防支出に充てられるというのが、大体の世界の大勢でございます。こういう観点から、日本の財政あるいは二十七年度の見通しその他を考えた場合に、少くとも国民所得の一〇%という比率は別にいたしましても、国家財政支出の三分の一、百分の三十ないし三十三—もし国防軍をつくらない、自衛軍をつくらないというならば、その自衛措置をも含めて、賠償、外債支拂い、あるいはまたその他防衛分担金、全部ひつくるめて、その程度の支出というものは、われわれ日本としても当然考えなければならないはめに来ることはわかつておる。その総額は、日本の予算から考えた場合に、大体二千四百億円から二千七百億円になる。池田さんのお考えになつておるのは、千七百億円あるいはせいぜい二千億円以内にとどめたいというのであるが、私はそういうことはとうていできまいと思う。先ほど申し上げました日米経済協力その他の問題をひつくるめまして、そういう面に対する御認識も少し政府は甘過ぎるのではないか。世界全体の……。(「再軍備はしないんだ」と呼ぶ者あり)再軍備しないのであれば、いわゆる賠償その他のものがそれによつてひつくるめてやれる、そういう点に対する認識、これまた世界各国から比べて少し甘過ぎると私は思うのでありますが、こういう点に対する首相の御所見を伺いたいと思うのであります。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 早川君は前提がちよつと違つておると思います。私は八千億円にとどめるとは言つたことはございません。財政演説をお読みくださいますればわかるように、本年七千九百三十七億円ですか、これと大差ないと言つておるのであります。また他の機会では、八千億円台にとどめたい、こう言つておるのであります。何も八千億円以下と言つた覚えはございません。それから国防費の国民所得に対する割合を一〇%とお押えになるのは、少し早断でございます。今では英米仏はもつと高くなつております。それからドイツがどうこうというお話でございますが、あなたのようなお話がありますから、われわれは早急に再軍備はできない、またそういうお話がありますから、賠償の額なんかもきめられない、こう言つておるのであります。
  30. 早川崇

    早川委員 再軍備じやなくて、講和後に生ずる諸経費、その他防衛を含めて、支出の三分の一くらいは、国際情勢から当然かかつて来るということに対する認識いかんということを総理に私は伺つておる。ひとつ総理からお答え願いたいと思うのであります。そういう面が少し甘過ぎる。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 甘いとか、辛いとかいうことは、見方でございますが、われわれは、日本現状から申しまして、歳出はやはり八千億円台でとどめたい、こういうのが国民生活水準を維持し、そうして誠意をもつて賠償を拂う、外債も適当な方法によつて支拂う、こういうところから割出しておるのであります。何も甘いことはないのであります。われわれは努力してそういうところで行こう、こういうのであります。
  32. 早川崇

    早川委員 総理に聞いているのです。
  33. 吉田茂

  34. 早川崇

    早川委員 まことに政府は楽観的なお見通しである。私は実は驚いたのであります。先ほど申し上げましたように、世界各国経済政策が非常に計画化に転換され、ほんとうに平和を守るという努力に国力を集中しておる。この面においても非常に大きいずれがある。さらに財政支出の面においても、世界各国は国防費が少くとも財政支出の三分の一以上になつておる。しかも日本は、再軍備しなくても、警察力その他防衛分担金、あるいは賠償、あるいは外債の支拂いという面において、少くとも三分の一くらいの国家支出が要請される段階に来ておる。そういう面において、これまた世界各国の大勢とまことにずれておる。私は決して多きを望みません。首相に対して申したいのは、決して多きを望みませんが、われわれは国際政治と直結している以上、そういうことができるかどうか。言いかえれば、平和を守るための各国の非常に苦しい努力犠牲において、日本が安易な、手放しの自由経済なり、あるいはまた消費的な面における経済態勢というものが許されるかどうか。それにこだわればこだわるほど、問題がこじれて来る。孤立して日本が存在するのではありません。そこを私は伺いたい。そういうことに対してひとつ首相から私は聞きたい。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の財政経済状況からいつて、あなたのおつしやるように再軍備をしたり、賠償をうんと拂つたり、外債を支拂つたり、そういう力はないのであります。われわれは日本経済力によつて予算もつくり、財政の運営をして行きたいと考えておるのであります。
  36. 早川崇

    早川委員 それでは次に総理大臣に対して個々の問題を若干取上げてお尋ねいたしたいのであります。財政問題あるいはまた金融問題その他は首相はお答えにならないようでありますから、私はその他一般的な問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。  第一に私は首相にお聞きしたいのは、治安立法の問題でございます。伝えられるところによりますと、占領治上における、あるいは団体等規正令その他追放令その他の関係が消滅する結果、新たに国家公安保障法なるものの、制定を政府考えておられると私は聞いておるのであります。しかしこれが一歩誤れば、かつての治安維持法的な、言論抑圧、憲法上の結社の自由あるいはその他いろいろな基本人権に関係する重要問題であります。私はかような立法がはたして総括的に講和後——占領治下においては、占領軍違反行為その他の名目において、むしろやむを得ざるものとして認めて参つたのでありますけれども、少くとも講和後より多くの自由をこの面において見出して行こうという段階において、かような法律を政府が立案されようとする意図を了解するに私は苦しむのであります。私は総理に対して治安立法に関する所見をまず伺いたい。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 治安に関しては今日政府としては考えておりますが、しかしながらまだ成案を得ませんから、成案を得まして、国会に提出したときにお答えいたします。  早川委員 それでは総理にお伺いいたしますか、治安立法を考えてはおるが、まだ出てないというお話でありますが、現に大橋法務総裁はどんどんその立法化を発表しておるのであります。そこで私はかようなものを提出するには、よほど慎重でなければならないと思うのであります。ところがその内容を見ますと、非常に危險な要素を含んでおります。そこで私は首相に法案を離れてお伺いしたいのは、民主主義を破壊するものに対してこれを禁止するということは、たとえば共産党の問題をとつてみましても、共産党の非合法化ということと同じような内容を持つものだと私は思うのであります。首相にお伺いしたいのは、そういつた共産党あるいはまた今後起るべき右翼的な、ファシズム的な政治運動に対して、これを非合法化する意思があるかどうか、これを一ぺんお伺いしたいと思うのであります。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま研究中であります。
  39. 早川崇

    早川委員 さらにもう一つお伺いしたいのは、不正第三国人の強制送還の問題であります。終戰後敗戰国としてのいろいろな不利な條件のもとに、この面においていろいろな問題が起つておるようです。この問題に対してはどういうお考えでしようか。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは今後交渉の問題の内容をなすものでありますから、お答えいたしません。
  41. 早川崇

    早川委員 さらに次に総理大臣に伺いたいのは、政令改廃問題であります。諸外国が最も注視しておる問題は、講和後の日本政治の反動化という問題であります。ところが政令諮問委員会に出て来るいろいろな案は、われわれから見ますと、非常に復古的な、反動的な色彩の強い案すら見受けられるのであります。たとえば労働三法に対する改正意見が出ております。私はこの世界政治あるいは経済につながるこういつた問題に対して、労働三法は変更すべからず、かような意見を持つております。首相の所見はいかがでしようか。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 占領中に制定されたいろいろな法令等は、事情の変化に伴つて改変すべきものであり、従つて改変の必要のあるものは改変したいと考えております。しかしながら、いかなる法律をどう改正するかということは、まだ成案を得ておりませんが、これも自然国会にその都度提出することになりますから、そのときにお答えいたします。  早川委員 伝えられるところによりますと、公益事業委員会は憲法上いろいろ疑義がある、小坂委員長みずからがそのことを指摘されております。私はかなり聞くべきものがあろうと思うのでありますが、公益事業委員会廃止の問題はいかがお考えになりますか。新聞でいろいろ誤解を招いておる問題でありますから、伺いたい。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 目下研究中であります。(笑声)
  44. 早川崇

    早川委員 次にお伺いしたいのは、戰争犠牲者の援護問題であります。私は実はこの問題については、補正予算ですでに本年度から実施されるものと期待しておつたのであります。昨年の三月にここにおられる岡崎官房長官は、ラジオ討論会か何かと思いますが、補正予算には必ず出すという御意見を天下にはつきり発表されております。ところがこのたびの予算を見ましても、今から調査しようというまことに不見識な政府政策であります。ドイツにおいてはすでに昨年の暮れから二千七百億円に上る厖大な予算をもつてこの戰争犠牲者援護に関する法律を制定し、すでに実行に移しておるのであります。なぜ日本だけが、すでに講和條約も終つて政府方針も補正予算からやろうという段階に来ておりながら、なおかつ戰争犠牲者の援護を明年度まで延ばすのであるか、私はその理由に苦しむのです。首相の所見を伺いたいと思います。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 戰争犠牲者に対します処置が今日まで延びたことは、さきの国会等で政府から申し上げておるのであります。しかし、いつまでもほうつておくわけには行きませんので、補正予算に調査費を組んでおるのであります。御承知通り厖大な人数になります。またこれに対しますやり方は財政上相当な問題になつて来ますので、まず十分な調査をして、来年度から適当な措置を講じようとしておるのであります。
  46. 早川崇

    早川委員 衆議院の厚生委員会においてはすでに全部調査が完了し、何千何人まで出ておるのであります。調査ができないという理由は私は解せないのです。それは委員会における言いのがれにすぎないと思うのですが、どうですか。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 何千何人という調査はできておりますが、その実情がはつきり把握できておりますか。生活状態その他の状況、こういうことを調べてでないと、大切な国の金を使うのでありますから、よほど十分な調査で慎重にやらなければならぬ問題であると思います。
  48. 早川崇

    早川委員 私は戰争犠牲者に対してはまことに遺憾な言明だと思うのです。すでに終戰以来常に問題になつておる戰争犠牲者のいろいろな実態調査が政府としていまだにできておらない、私はまことにその点を遺憾に思うのであります。しからば、来年度は一体どれくらい、これに予算を組もうとされるのでありますか。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 実情を調査いたしまして、財政事情を見ながら考えたいと思います。
  50. 早川崇

    早川委員 次に総理にお伺いしたい問題は、現社会情勢におきまして非常に憂えておる問題の一つに、官紀の弛緩の問題があるのであります。毎日の新聞に載るところによりますと、官吏の汚職問題の載らない日がないというほど、われわれはそれを新聞紙上に見るのであります。あるいは天狗橋の事件にいたしましてもしかり、とうとうとして官紀の腐敗堕落——われわれがせつかく血税による予算を審議する場合に、厖大な浪費がなされておるという現状に対して、政府はこの官紀粛正に対してもつと真劍に、いかなる対策、いかなる方式をもつて臨まんとするのであるか、私は国民としてぜひとも聞きたい一点でございます。首相の答弁をお願いしたいと思います。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 もし汚職行為その他がある場合には、政府としては嚴然たる態度でこれまで処理いたしております。今後もその考えでおります。
  52. 早川崇

    早川委員 さらにお伺いしたい。私は官紀の粛正の問題に思いをいたすときに、そういつたことだけではとてもできないと思う。一方において給与の改善、官吏に対する十分なる生活の保障が必要であります。他方こういうとうとうたる状況において、あるいは收賄事件、官吏の汚職関係に対して、思い切つてこの際刑法を改正し、重罰主義をもつて臨む方針までお考えになつてしかるべきものと思うのでありますが、こういつた面はいかがお考えになりますか。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 すべての方法で官紀の粛正を常に考えております。
  54. 早川崇

    早川委員 次に、これは政府全般の問題でございまするから、首相からお答え願いたいと思うのであります。問題は米の統制撤廃の問題でございます。政府は米の統制撤廃問題に対して、あらゆる反対、あるいはドツジ氏の意見もございますが、これほどまで物議をかもして参つた米の統制撤廃を、あくまで強行されるのですか、私は総理意見を聞きたい。
  55. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。     〔「委員長、農林大臣ではない、総理大臣答弁だ」と呼び、その他発言するもの多し〕
  56. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  57. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。この点におきましては、しばしば本会議並びに委員会において御説明申し上げた通り、万般の準備を整え、しかる後関係の法案を出しまして御審議を願ひたいと思います。目下検討中でございます。     〔発言する者多し〕
  58. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。  総理大臣よろしゆございますか。—御承知のように、内閣は連帯で、国会に対して責任を持つているのでございまして、総理大臣は今の農林大臣の答弁に承認を与えておるのだからそれでいかがですか。
  59. 早川崇

    早川委員 総理大臣の責任ある答弁を願います。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 農林大臣の意見は、すなわち内閣の責任ある答弁であります。
  61. 小坂善太郎

    小坂委員長 早川崇君、質問を続けてください。
  62. 早川崇

    早川委員 それでは、自由党の自由主義経済の最後の統制撤廃であるといわれる食糧統制撤廃を、もしあくまで強行するという意見でありまするならば、諸般の情勢からこれができなくなつたときには、農林大臣その他責任をとるのですか、(「総辞職だ」と呼ぶ者あり)総辞職する意思ありや。
  63. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 それは仮定の問題でありまするので、今お答えするわけに行きません。
  64. 早川崇

    早川委員 ただいままことに無責任な御答弁であります。それ以上答弁ができないというのならやむを得ない。しかしこの問題は、單に米の統制撤廃の問題だけではない。今までるる述べて来た通り、金持は米を食え貧乏人は麦を食えというような政府の自由主義的な、放任経済一つの氷山の露頭にすぎない。そういう意味において、私はこういうことが、問題だと思う。この食糧統制撤廃によつて国氏の混乱が起らなければよろしい。私は自信が持てないのだ。まず来年の三月まで、今の配給を保持し続ける自信があるのですか、農林大臣に……。
  65. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御心配御無用であります。     〔「なに」と呼び、その他の発言する者多く(笑声)〕
  66. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  67. 早川崇

    早川委員 その理由を示していただきたい。その根拠は……。どれだけの手持ちがあるから配給が続けられるか、それを示していただきたい。
  68. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように、早場米の供出も順調に参つております。なお輸入食糧も計画通りあるいはそれ以上に入つておりまして、現行においては需給関係は御心配ございません。
  69. 小坂善太郎

    小坂委員長 早川君、総理に対する質問ですから、なるべく総理にお願いいたします。
  70. 早川崇

    早川委員 千二百万石の手持ちということで配給米を見ておるということでありますけれども、一体それは産地にあるということなのか。そこで私は農林大臣の根拠を聞きたい。どういう点でその配給ができるか。千二百万石あるので、われわれは自身を持つてあなたのお話を聞けない。産地にあるものか、消費地まで持つて来ての千二百万石なのか、それをまず聞きたい。
  71. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 政府手持米の配置の詳細の状況は、食糧長官から御説明いたさせまするが、現在輸送の関係もおおむね順調でございまして、大消費地についすもどんどん回送いたしておりまするので、現在不安ないものと思つております。
  72. 小坂善太郎

    小坂委員長 早川君、総理に対して特に質問がなければ、あとの機会がいくらでもありますから、総理質問を続けていただきたいと思います。なければ他に譲りたいと思います。総理に対する質問をお願いいたします。
  73. 早川崇

    早川委員 次に私は総理にお伺いしたいのでありますが、すでに統制撤廃に伴う定員法が出ております。一体そういう面から考えますと、今度の予算はこういうふうに片方ではどんどん法律でやつておる。ところが米の統制撤廃問題は決定を見ない。こういうまことに矛盾だらけの、しかも司令部の了解も得ないで、根本農林大臣はこの国民代表の予算国会に、まことに権威のない、ずさんな予算を御提出になつておるのでありますが、食糧統制撤廃がもし政府の言う通りできなかつたならば、私はその責任は重大だと思います。あくまでこの食糧問題は押し通すのかどうか、総理の御意見をお聞きしたい。予算の問題、外貨の問題等あらゆる問題にひつかかつて来るので、私は重ねて伺いたいのであります。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 本年度の御審議願つております補正予算につきましては、何ら支障はございません。
  75. 早川崇

    早川委員 私は次に内閣全般の問題としてお聞きしたいのは、給与引上げ問題であります。人事院勧告が出ておりますし、さらにまた專売裁定が出ております。ところが千五百円給与引上げでは、專売裁定も無視する予算になつております。私は、人事院をつくり、公労法による裁定機関をつくり、さらにまた国鉄の場合もしかりでありますが、あらゆる問題を踏みにじつて、給与改訂を千五百円にとどめるという政府の意図が、了解しかねるのであります。片方ではインヴエントリーその他かなりのリザーヴ資金を持ちながら、勤労者に対して、人事院勧告あるいは專売裁定を無視する予算になつておりますが、私はこの点に対して政府所見を伺いたいと思います。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは人事院の勧告はできるだけ尊重いたしております。従いまして今回の給与引上げによりまして、本年度において二百六十億円、平年度において四百二十億円の給与増でございます。もし人事院の言う通りにいたしましたら、どれだけふえるとお思いになりますか。これは本年度において二百六十億円が、もう二百数十億円ふえるのであります。四百七、八十億円になります。平年度においては九百何十億円ふえるのであります。国民の負担の状況からいつて、この重税に苦しんでおるときに、私は人事院の言いなり放題に給与を上げるわけには参りません。それだけでがまんしていただくほかないのであります。  專売裁定の問題についてお答えいたしますと、專売裁決は一万四百何十円と出ております。しこうしてこれに十二月の〇・八箇月の給与を出すことになつておるのであります。国鉄裁定は〇・八箇月の給与なしに一万八百円になつておるのであります。国鉄と專売とが非常に給与の開きがあるということは、私はとらないところであります。
  77. 早川崇

    早川委員 次に総理にお伺いしたいのでありますが、オリンピツクの参加問題に関しまして、首相は参議院の委員会において、これか協力を拒否されるような印象を受ける言明があつたのであります。これはきわめて重大な問題である。この予算委員会の席上で——従来オリンピツクというものは、スポーツだけではない、国際親善その他を兼ねた意味で、政府はこれが派遣に対して協力しておつたのであります。その点に対して総理の御所見を伺いたいと思います。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 参議院において私が申したことは、外貨はなるべくこれを節約いたさなければならない。従つてオリンピツクその他——オリンピツクばかりではありません。政府のすべての外貨に関することは節約して考えなければならぬ。ことにオリンピツクは百何人とかいうのを出すので、それが厖大な外貨の支拂いになりますから、これは政府としては考えなければならぬという意味であります。
  79. 早川崇

    早川委員 しからばほんとうに必要な限度における派遣に対しては、政府協力を惜しまないと理解してよろしゆうございますか。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 今まででも国際競技には参加いたしております。アジアの競技大会におきましても、またヘルシンキのスケート等の大会におきましても、要求通りの人員は出せませんが、できるだけの人を出しております。従いまして総理大臣の御答弁にありますように、オリンピツクに選手は派遣いたしますが、百数十人というようなものはなるべくがまんしていただきたい、こういうお気持であろうと思うのであります。
  81. 川崎秀二

    川崎委員 今の百数十名という数は、現在の競技水準からいつて、私は妥当な数だと思つている。三百名ないし四百名の選手団派遣をするなどというようなことは、これはベルリン大会当時と日本事情は違つておりますので、十分関係団体は考えておると思うのであります。ただでき得るならば、この機会に、スポーツを通じて国際文化親善の本義を発揚したいということは、日本国民多くの人々の考えておるところだろうと私は思います。これはアメリカを除く諸外国では積極的に政府協力をしておるのであります。この点について十分の御考慮を煩わしたいと思います。総理大臣の御趣旨は、外貨節約の建前からなるべくじみな派遣団を送りたい、こういう意味であろうかと思いますが、いま一度この意味についての御答弁を願いたいと思います。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 総理も大体そういうお気持でありますことは、さきの御答弁通りであります。
  83. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは大体時間でありますから、お急ぎ願います。
  84. 早川崇

    早川委員 私はあまり時間がありませんので、項目別に若干質問いたしてみたいと思います。文教政策についてであります。文教政策の根本は今後の日本再建にとつてきわめて重要な問題と考えます。その点に関して、文部大臣が参議院でございましたか、日本国民の道徳の中心は天皇でなければならない、天皇を中心として日本再建をはかることが、日本再建の近道であるという、一つの教育大臣としての立場から、言明された。これはたいへんなことである。これがさらに予備隊の精神というようなものになることをおそれますと、不測の誤解と、かつての反動勢力に利用される危險をはらむのであります。あなたが信頼される所管大臣からかくのごとき意見が——個人であるならばよろしい。責任ある大臣が、かような立場で今後の教育政策考えるということは、まことに危險であります。首相の御意見を伺いたいと思います。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 文部大臣がいかに言われたかということを調べた上で、お答えいたします。
  86. 早川崇

    早川委員 私はそういつた考え方に対する総理考え方を聞いておるのであります。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 そういう考え方がどういう考えであるかということを、よく調べた上で、お答えいたします。
  88. 早川崇

    早川委員 行政整理の問題について、一点お伺いしたいと思います。定員法によりまして、十二万数千名に及ぶ首切り行政整理が実施されようとしております。これは私は逆だろうと思う。機構の改革あるいは行政事務の配分の簡素化というものを、先に国会に出して、首切りはむしろ従にすべきものである。私はそういう面において非常な手続上の誤りを感ずるのであります。この点に対して首相は機構の根本的改革をお考えになつておられるようでありますが、これを見合つた定員法の改正であるのかどうかお尋ねします。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はいずれにしても機構は——行政整理もともかくでありまするが、減税に持つて行くためには、政府の機構はあくまでも縮小せしめなければいけない。現在の状態においても減員ができるところは減員さす。さらに進んで機構の改革まで行きたい、こう考えております。
  90. 早川崇

    早川委員 最後にそれでは一点だけ首相に御所見を伺いたいと思います。それはあらゆる講和後の問題の根本であります人口問題であります。毎日わが国は日に四千人ないし五千人、今日われわれがこの委員会で審議している間においてふえておるのであります。私はこの問題に対する政府ほんとう所見を聞きたい。結局日本経済政策政治政策の根本は、この増大する人口に対する対策なくして一歩も前進しないのであります。フランスにおいては妊娠中絶を公認し、産兒制限という方向にどんどん進んでおります。あるいは日本においては堕胎その他いろいろな問題が、法規上は禁じられておりながらも、一般国民に非常な勢いで普及しておるという状況です。これはただ傍観しでおるだけで放置しておくという問題では私はなかろうと思うのであります。一体総理大臣は、今後の十年、二十年あるいは百年の問題を決するこの人口問題に対して、どういう考えを持つて施策を進めておられるのか、私は首相の率直な御意見を伺いたいと存ずるのであります。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 人口問題は、お話によつてみても重大な問題であろうと思います。簡單にこうする、ああするということはお答えのできる問題ではありません。のみならず、結局は貿易の伸張とかあるいは役務とかいう問題になりましようが、これは独立した後に具体的な方法考えるべきである。今日こうする、ああすると申したところで、結局机上の空論たるにすぎないと思いますから、お答えいたしません。
  92. 早川崇

    早川委員 それでは時間も参りましたから、詳細、具体的な質問は、関係大臣に後刻伺うことにいたしまして、一応首相に対する質問は、これで打切りたいと思います。
  93. 小坂善太郎

    小坂委員長 川島金次君、
  94. 川島金次

    ○川島委員 私は午前中の時間がすでに少くなつておりますので、午後にも総理大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。さしあたつて午前中の時間の許す範囲におきまして、当面の重要な問題について二、三点だけ総理大臣にこの際お尋ねをしておきたいと思うのであります。  私ども総理が御承知のように、全面講和を建前といたしまして、極力その実現に努力し、また国民的念願としてこれが実現を期待いたして参つて来たのでありますが、不幸にして今次の講和会議におきましては、ソ連、中共、その他若干国の講和條約不参加国を見るに至つたことは、まことにわれわれ日本といたしましても、国民といたしましても、衷心から遺憾に感ずるものであります。しかしながら、われわれは民族独立、日本国家の自主権回復への一ステツプといたしまして、わが党は全面講和政策を堅持いたしつつも、講和世界的な現実の問題に、具体的な処理をいたしまする見地に立つて、先般の本会議においても講和條約批准に涙をのんで賛成をいたしたのであります。しかし、問題はそれによつて決して解決はいたしたものではなくして、この未調印国を残しました日本講和が、その後において世界の中において、特にアジアの中において、日本の置かれます立場というものが、きわめて深刻にして、かつ微妙な立場に置かれるようになつておるということは、これは総理といえども否定するものではないと、私は確信をいたすものであります。従つて日本国民は、やがて成立を見るであろう講和條約並びに安保條約の後において、日本がはたしてアジアにおいて、一見今日においては孤立したような形に立たされておる、そこから来る日本への平和の脅威というものを国民がひとしく皮膚に感じておるのではないかと私は信ずるのであります。そこで総理大臣は、この両條約の成立によつて日本が独立の一歩を踏み出しました後において、この日本国民がひしひしと感じておりまする深刻微妙な感じに対して、いかにこれに対処し、そうしてあまねく国民に安心感を与えるという方策が、私は当面きわめて重要な事柄ではないかと信じておりますので、この問題に対する総理の構想あるいは具体的な方策等がお持合せでありますれば、この機会に国民の前に明白にお示しを願い、そして国民がひとしく胸の底にわだかまつております、この疑念と不安といささかの脅威等に対する明白な解決を与えてやるべきではないかと思うのでありまして、その点の御見解を表明していただきたいと思うのであります。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 サンフランシスコの講和会議に集まつた五十一箇国のうち、わずかに三箇国だけが講和條約に調印しなかつた。その余の四十八箇国が調印したということだけによつて見ても、日本に対する友好的な精神は、つまり世界の多くは日本と友好関係、平和関係に入ろうとしておるのであつて、にもかかわらず不安があるということは、私は了解ができない。かりに不安があるとして、この日本の独立は安全保障條約によつて保障せられる、こう考えておるのであります。しかもなお不安といえば、これは不安に対する説明はよほどむずかしいと思います。なお不安を感ずる人に対して安心の行くような説明は、いかなる人といえどもできないと考えます。
  96. 川島金次

    ○川島委員 総理お答えは、若干まじめさがかけているように、今の言葉を私は聞いたのであります。この問題は、言うまでもなく総理大臣がサンフランシスコの講和会議の調印の直後において、安全保障條約を倉皇の間に調印されたというこの一事実をとりましても、総理みずからも講和條約調印後における日本の立場が、何らかのアジアにおいての脅威を感じておればこそ、倉皇としての安全保障條約の調印となつたのではないかとわれわれは信じておるのであります。しかるに今の総理の言葉では、世界連合国の多数が、あげて講和條約に調印されたのであるから、しかむその多数の国が、日本との友好関係に入ろうという熱意を示されたのであるから、何らそこには不安はないじやないかという言葉には、われわれは満足ができないのであります。  そこで私はさらに一歩話を進めまして、総理大臣にお伺いをいたしたいのであります。やがておそくとも明年の三月ないし四月には国民の期待するところによると、日本講和が成立する、そうして国民の大半の念願としておりました民族独立、国家主権回復への一歩を形づくることになるのでありますが、その機会において、日本は少くとも未調印国に対し、あるいはまたかりに調印をいたしました国の中でも、ことに太平洋戰争において、わが国が不当なる迫害をいたしました若干の東南アジア諸国において、いまなお調印をいたしたとはいうものの、その当該国内における国民の対日感情というものは、必ずしもわれわれが満足するような状態に立ち至つておらないということは、総理もよく御存じのごとくであります。そこで私どもは、この独立の直後において、政府は極力この未調印国はもちろん、かりに調印された締結国でありましても、ことにアジア諸国の対日感情のきわめて悪いこれらの諸国に対する友好理解の関係を、一層深めるという具体的の政策をもつて、これらの諸国に接するという積極的な努力と熱意とを示すべきではないかと私は感じておるのでありますが、そのようなことに対して総理大臣は、何らかの腹案を今日有しておるかどうか、そのことについての所見を承つておきたいと思います。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障條約は、にわかにつくつたようなお話でありますが、しばしば申す通り、今年の二月ダレス氏が来られてからの話合いであつて講和條約調印の翌日に即製にこしらえたものではなないことは、しばしば申した通りであります。またアジアの各国に対して善隣関係を重んじたいと考えればこそ賠償をする。誠意をもつて賠償に当るということもはつきり條約に規定しており、この條約に調印いたしたのであります。善隣関係はむろん重んじます、また未調印国がその国が調印しないというものを、ぜひとも調印しろといつて迫ることはできない。おもむろに日本に対する関係の善化することを待つよりかいたし方ない、多少時がかかるでありましようが、これはいたし方ない。
  98. 川島金次

    ○川島委員 そうすると未調印国に対するわが国の今後の、ことに政府方針としては、こちらから積極的な熱意を披瀝しつつ、その国交の調整と理解に当るのでなくして先方にわが国に対する友好関係が発生するまで、これを消極的に待つという方針で進まれるということに理解してよろしいのでございましようか。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申すことを曲解せられないようにお願いいたしたい。私は消極的と申したのではありません。時がかかる。しかしながらこちらがいくら積極的に出ても、向うが調印しないというのではいたし方ない話であります。
  100. 川島金次

    ○川島委員 この問題で進めますことは、いたずらに押問答に終りそうですから、終つておきます。  ただ後段の、私が先ほどお尋ねをいたしました調印国中、ことに対日感情の必ずしも今もつて満足でない若干の国々がありますることは、何人も否定いたされないところであります。この若干の国々に対して、私は賠償その他のことだけで誠意を示せば事足りるとは考えられないのであります。賠償のことに対して、日本ができるだけ誠意を示すということは、もとより必須の要件ではございまするが、それとあわせて政治的に、あるいは文化的に何らか政府が具体的な熱意ある方策をもつて、これら東南アジアの対日感情のいまなお悪化しております諸国に対しての理解を深め、そうしてさらに一層の友好を深める具体的な、積極的な熱意ある態度に出るべきではないかと思うのでありまして、その事柄に対する、何か政府は具体的な方策を、今日すでに用意されておるのかどうか。また独立後においてそういう熱意ある積極的な態度を、国民とともに私は示すべきではないか。ことに東南アジア開発等の問題もございますので、そのことがきわめて必要な用件ではないかと私は信じておりますので、その点を重ねてお尋ねしたいと思います。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 善隣の外交の主義の一環として、賠償問題を誠意をもつて取上げておることを、一つの例として申したのであります。すなわち善隣外交を将来進めることは当然のことでありますが、しからばどういう具体案があるか。夜店ではありませんから、一々品物を見せてごらんに入れるわけに行かぬ。(笑声、発言する者あり)
  102. 小坂善太郎

    小坂委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたしますが、時間は特に嚴守せられますようお願いいたします。  これにて暫時休憩いたします。   正午休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  103. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  この際委員長より申し上げることがあります。すなわち先ほどの総理の御答弁中、速記録を拝見いたしますると、「すなわち善隣外交を将来進めることは当然のことでありますが、しからばどういう具体案があるか。夜店ではありませんから、一々品物を見せてごらんに入れるわけに行かぬ。(笑声)」こう書いてあるのです。この「夜店ではありませんから、」とおつしやつた総理の言辞につきまして、野党側から、これは国会の権威保持上ゆゆしき問題である、総理の取消しと釈明を要求するというお話がありました。委員長はただちに理事会を招集いたしまして、その後いろいろ話をいたしたのでございまするが、与党側の委員の申しますることには、これは非常に巧妙なるユーモアであると言うのであります。そんな問題ではない。またある与党委員に言わせますると、夜店というものは適法に開店いたしておる正規のものである、そこに品物の多いことも周知のことである、ですからこれは好個の事例である、こういう話もあるのでございます。しかしながら、こういう話をお互いに議論しておりまして、並行線のままに推移いたしますることは、貴重な時間をいたずらに空費することにもなり、もつとわれわれとして審議を進むべき重要問題についてその時間を失うことになりまするので、ここに委員長からひとつ総理にこの夜店云々ということの真意は、いかがなことであつたろうかということをお伺いをして、それによつて答弁を伺いたいと思います。
  104. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の真意は、いろいろ政策を並べたところが無益ではないかという趣意であります。
  105. 小坂善太郎

    小坂委員長 川島君、お聞きの通りでございますが、ひとつ御納得の上御審議をお進め願います。
  106. 川島金次

    ○川島委員 今せつかく委員長のとりはからいによりまして、先ほどの私に対する総理大臣の最後の答弁に対しての釈明方の申出がありましで、それに対する首相の釈明があつたのでありますけれども、いろいろの政策を並べても無益であるという言葉のようであります。これは聞きようによつてまことに重大なことだと私は思う。われわれ国民は、この日本の戰後の最も歴史的にも民族的にも重大な当面の講和を迎えて、その後における東南アジア諸国との善隣友好を積極的に熱意をもつて深める方針を立て、それにのつとつて積極的な外交を展開することが、私は東南アジアを中心とする文化経済の発展、ひいては平和の確保の上にも重大な事柄であるというのでお尋ねをしているのであります。しかるにただいま総理はいろいろ政策を並べても無益であると言う。この言葉にはわれわれは国民の立場から納得がいたしかねます。(「その通り」)そこでもう一度くどいようでございますけれども、何でいろいろの政策を並べても無益であるというお言葉をもつて表現されたのであるかどうか。この点は私は納得がいたしかねますのでもう一ぺん総理の真意をただしてみたいと思います。
  107. 吉田茂

    吉田国務大臣 まだ独立もいたさない前にいろいろこういうことをする、ああいうことをするということを申したところが、問題は実行ですから、実行しないことを今あらかじめ申しても無益ではないか、こういうような趣意であります。
  108. 川島金次

    ○川島委員 独立後のことであるから今こういうことをやる、ああいうことをやると言つても無益だというお話でありますが、ここに私どもが納得行かないものがある。少くとも首相みずからも当初においては、全面講和が最も望ましい形におけるものである、国民とともに念願しているということを天下に公言されて来ました。しかし種々の国際情勢の條件においてそれがやむなく不可能になつた。そうして望ましからざるものであるけれども、最小限度において一歩日本の独立を求めますために講和條約が遂に締結された。従つてそういう形において締結された後における日本の東亜における立場、広くは世界の中における立場というものが、全面講和がかりにできたときとはおよそ違つた立場に置かれるのでございますから、その違つた立場において、政府講和の後においていかに世界に処し、いかに東南アジア、ことに対日感情のあまり好ましくない諸国に対して、その対日感情の積極的な打開に努めるかということは、最も必要な現実の問題ではないかと私ども考えておるのであります。従つて少くとも総理大臣としては、この講和を結び、しかも現実においては、東南アジアの諸国においてわれわれに対して好ましくない感情が流れ、空気があるということを百も承知の上であるからには、それに対する熱意ある積極的な対策というものが、今からすでになければならないと私は感じており、国民もそれを要望し、そして講和後において、吉田政府は東南アジアの諸国に対して、いかなる積極的な熱意ある外交を展開するかということについて注目を集めておるのであります。でありまするから、私はあえてただいまのことをお尋ねしておるのであります。その点、まことに繰返して恐縮でありますが、もう一度もつと総理の率直な、謙虚な立場においての所信の表明を望みたいと思うのであります。
  109. 吉田茂

    吉田国務大臣 今日は、外交権のない今日でありますから、いろいろ考えてみたところが、活動する自由がないのであります、活動の自由のないときにこういうことをする、ああいうことをすると申したところが、結局無益であろう、こういうことを申し上げておるのであります。
  110. 川島金次

    ○川島委員 今日の日本において外交権のないことは、総理から言われるまでもなく、われわれもすでに承知しておるところであります。ただ問題は、繰返して申し上げまするが、先ほども申し上げましたごとくに、日本経済的立場、文化的立場においても、言うまでもなくアジアとともにでなければ、日本の繁栄、日本経済的な発展というものを望むことは、遺憾ながらきわめて困難であるという実情にあると私どもは信じております。従つていかに講和條約が締結されましても、そしてまたその條約に伴うところの賠償等の問題について、誠意をできるだけ示すことにいたしましても——私はその賠償問題だけに対して誠意を示すことが、一切の問題の解決にはならないという考え方から、その賠償に対する誠意を示すとともに、あわせて国民とともに、これら東南アジア諸国に対する日本人としての、日本としての立場を一層よく理解を深め、一日も早く善隣友好の積極的な姿を形づくるということの必要は、何人も否定のできないことであろうと私は思うのであります。そういう事柄についての構想なり具体的な対策というものは、当然政府はすでに持たなければならぬと私どもは信じますので、これを繰返してお尋ねをいたしておるのでありまして、今から言つたから無益だ、有益だという問題をわれわれは言つておるのではない。そういうことの必要をわれわれは痛感しておりますし、さだめし政府においても、そういう事柄についてのいろいろの対策が、目下準備されているのではないかと、当然に予想をいたしますので、それに対する具体的な方針あるいは見解ということを、私はこの機会にぜひとも表明してもらうことが、国民の注目をいたしております事柄であるだけに、重要なことであると思うので、繰返して尋ねておるわけであります。
  111. 吉田茂

    吉田国務大臣 善隣外交をいたすことは政府方針であります。機会のあるごとにこの外交、この趣意を実現いたします。
  112. 川島金次

    ○川島委員 吉田総理にしては、私の感じでは、近来にないわれわれ野党に対する不親切な、誠意のない答弁だと感じます。しかしこの問題については、これ以上押し問答していることは、それこそ無益のような感がございますので、他にお尋ねを申し上げたいと思います。  講和條約締結後における日本の国連への加盟は、政府国民もともにあげての願望であることは、総理もよく御承知通りであり、総理もまたその国連への加盟について、あらゆる努力を惜しまざる旨が、あらゆる機会において表明されておりますることも、われわれは承知いたしておるのでありますが、現実の問題といたしましては、この国連加盟の件は、遺憾ながら早急な実現が困難な状態ではなかろうかと、われわれは想像をいたしておるのであります。そこで政府にお尋ねいたしますが、われわれ日本講和条約を締決いたしました後において、一日も早く国連への加盟が最も望ましいと思いますが、それが困難でありといたしました場合に、せめて国連加盟への糸口として、オブザーヴアー的な立場において、日本が国連へ参加できるような見込みが今日のところあるかないか。きわめてこれまた国民の聞かんと欲するところであろうと思いますので、この点に対する総理のお見通しなどについて、率直にお聞かせを願いたいと思うのであります。
  113. 吉田茂

    吉田国務大臣 もし万一そういう場合になりますれば、国連加入のむずかしい場合には、オブザーヴアーという問題は起ることでありますし、またその希望は許されるものと思います。
  114. 川島金次

    ○川島委員 そのオブザーヴアーとしての加盟が許されるというお話でありますが、総理がサンフランシスコに滞在の間に、この問題について、国連筋もしくはアメリカ側等から、何か具体的なお話があつたかどうか、これについてお尋ねを申し上げたい。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはかりにあつたといたしましても、その内容はここに申し上げることはできません。
  116. 川島金次

    ○川島委員 ただいま総理は、この問題について話があつたように言われたのでありまして、私は非常に重大な事柄であり、しかもまことに耳ざわりのよい話があつたと、今の話で承つたのでありますが、すでに講和條約の成立も目前に控えておりまして、国連の正式加盟ができなくても、オブザーヴアーという立場で、日本が加盟できるような状態になつたということを、今日かりに総理が御発表になりましても、さほど世界的な影響というものは、懸念がないのではないかと私どもは感じておるのでありますが、もし総理にして、さしつかえない限りにおいて、このオブザーヴアーの参加の問題についてお話ができますれば、それについてもうちよつと具体的にこの席でお話が願いたいと思うのでありますが、いかがですか。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 今の表現以上に私は申し上げる理由がないからお断りいたします。     〔「もう時間がない、予算のことを聞け」と呼ぶ者あり〕
  118. 川島金次

    ○川島委員 これも予算と重大な関係があるのです。
  119. 小坂善太郎

    小坂委員長 質問をお続け願います。
  120. 川島金次

    ○川島委員 それでは次に観点をかえて、もう一、二お尋ねしたいと思うのであります。  先ほど私は、日本の今後の東南アジアにおけるところの外交問題が、きわめて重要性を帯びているという観点に立つてお尋ねをしたのでございますが、さらにこの機会に率直に総理の御見解を伺つておきたいのであります。それは日本と韓国との関係であります。これは私の感じございますが、講和條約の締結を前後といたしまして、にわかに日本と韓国、もつと率直に申し上げますれば、日本と朝鮮人間との関係において、ややもすれば好ましくない雰囲気が釀成されつつあるように私は感ずるのであります。しかもその零囲気に乗じて、一部の団体が、日鮮融合に対する離反の言動や策謀をすらもするようなけはいが、あるやにもわれわれは感ずるのであります。今日の朝鮮は旧来の朝鮮と違い、日本と韓国との間、かつ将来朝鮮が統一されるということを念頭に予想をいたしつつ考えた場合に、日鮮の融合ということは、アジアの文化的、経済的、また軍事的にも平和的にも、一つの重大な礎石になる問題ではないかとわれわれは考えております。しかるにややもすれば、先般政府が政令で発しました外国人出入国管理令を中心といたし、あれを口火といたしまして、ことさらに日鮮融合に間隙を入れようとするような動きがあり、言論もあるやうにわれわれは仄聞いたしておるのではあります。少くともただいま申し上げましたように、日本の今後におきましては、まず最も近い一衣帯水の地域にある、しかも歴史的にも密接な——よしあしは別として——関係を持つて参りました日鮮融合、そして友好協力という事柄は、日本経済的な自立の上にも、東亜の安定の上にも、きわめて重要な事柄であると私は信ずるのでありますが、これに対して吉田総理は、どのような見解で今後日鮮の融合協力の態勢をつくつて行くような御見解を持たれておるか、それについて率直な所見を伺わしてもらいたとい思うのであります。
  121. 吉田茂

    吉田国務大臣 現在韓国との間において何らの憂うべきような零囲気はございません。また今後の交渉も円満に参るというつもりでおります。
  122. 川島金次

    ○川島委員 まことに総理大臣は楽観的な言辞をもつて答弁とされておりますが、私は、できますならば総理の御答弁のような姿であることを願つておる一人であります。しかしながら、事態は遺憾ながらそのような事態ではない方向へ持つて行かれるのではないかという懸念が私どもはいたしておりますので、これをお尋ねいたしておるのでおりますがこれもまた見解の相違と言つてしまえば押し問答になるので、これ以上のお尋ねをとりやめておきます。  そこで次にお尋ねを申し上げたいのでありますが、先ほどこの問題は民主党の早川君からもお尋ねがありまして、総理からも若干御答弁があつたのでありますが、日本の年々増大いたしまする人口問題に対する政府としての対策であります。もちろんこの人口問題に対する対策の一つとしては、産兒制限、あるいは移民の問題、あるいは国内におけるところの産業を盛んにいたしまして、就業人口の積極的な増大をはかる等々の事柄が、具体策としてはあることは言うまでもございません。そこで総理にお尋ねするのですが、この年々増大いたしまする人口に対処いたしまして、いまさら二階から目薬のような少数の移民問題を今日の場合論ずるといたしましても、容易にこの問題の根本的な解決にはなりません。また日本の今日置かれておりますところの産業経済情勢の條件のもとにおいて、明日ただちに完全就業の態勢に移して、厖大な失業人口の就職の機会を開き、あわせてこの増大する人口問題の根本的な解決を望むことも、また困難であるということもわれわれは承知いたしております。そこで当面の問題として、人口問題に対する対策の一つとして、産兒制限問題が今日ようやく国民の間に、大きな問題として登場をいたしておるのであります。しかるに政府の、ことに厚生省あたりでとつておりまする産兒調節といいますか、制限といいますか、その一連の対策に対しまして、必ずしも積極的な熱意のある具体的な態度を示しておるとは受取れない点が多々あるのであります。ことに産兒の人工流産等を必要とする階層が国内的には、ことに勤労階層の中に多数を占めておるのでありますが、その多数の人工産兒調節を経済的にもいたさなければならないという立場に置かれているところの、一面において同情すべき階層の方々が、たとえば人工流産等をいたしまする場合に、従来の政府のとつておりまする対策案では、金がなければその事柄が簡單に実行できないという実情であることは、おそらく総理も御承知だと思うのであります。この当面の日本の特有の増大人口問題について、その人口問題に対するところの対策の一つであり、重要な案件であるところの産兒制限の問題について、政府はもつと積極的な対策を講じて、その問題の解決に当るべきではないかと私は思つておるのでありますが、今日の人口問題に対して総理はいかなる見解を持たれておるか、その事柄を率直に表明してもらいたいと思うのであります。
  123. 周東英雄

    周東国務大臣 私からお答えいたします。  今日の日本の置かれている地位、経済上の状態から見まして、産兒制限ということについて、人口問題について、非常に重大な関心を拂われていることについては私も同感であります。政府といたしましてもまつたく同感であります。しかしながら、積極的に産兒制限をして、何人以上生むべからずというようなことを法制的にきめるということは、これはよほど考えなければならぬ問題であります。御指摘のように妊娠中絶というような方法をとるのも一つ方法でありますが、むしろその前に受胎調節の問題について有効適切でかつ無害な方法について真劍に研究をし、その実行を勧めたく考えまして、厚生省においては真劍にこれを取上げて今研究いたしております。なお人工中絶の場合におきましても、御指摘のように貧困にして養育にたえざるもの、あるいは精神病とかの問題につきましては、特に民生委員でありましたかの証明のもとに、これを調節することの道は開いております。その点に対しまして、川島君の御指摘のように、現在悪徳医者等がありまして、非常に高くとつてやりにくいというようなことにつきましては、適切に、これが安くそうして便宜に行くように、できるだけの処置を講じたいと考えておる次第であります。
  124. 小坂善太郎

    小坂委員長 川島君、大体時間ですから、あと一問ぐらいにしておいてください。
  125. 川島金次

    ○川島委員 それでは時間が過ぎたようでありますので、一ぺんに総理大臣に二点だけお伺いして、私の総理に対する質問を終りたいと思います。ほかにまだあるのですが、時間がありませんから省略いたします。  それは選挙法の改正の問題であります。承るところによると、選挙管理委員会方面あるいは選挙法改正審議会方面では、選挙に関する諸種の弊害を認めまして、それに対する改正が審議されておりますが、その中で最もわれわれが注目いたしておりますのは、その改正案中特に論議されております中で、選挙区の根本的な改正案が具体的に議論に上つておることであります。率直に申し上げますれば、選挙区は一区一人制という問題が具体的に上つております。仄聞するところによれば、吉田総理も、この案に対して積極的な支持をされておるということでございますが、この一区一人制の選挙法改正について、総理大臣は、総理として、また自由党の総裁としてもきわめて密接な、あなた自身にも関係がある事柄でございますので、この一区一人制に対する総理見解をお尋ねしたいということと、もう一つ、時間がありませんから一ぺんにお尋ねいたしますが、総理は、先般来の委員会もしくは本会議において、わが党その他からの質問に答えて、当分の間解散はいたさないということをしばしば繰返されておりますが、その解散をしないという事柄はしばし別といたしまして、この機会に私は、総理大臣としての明白な見解を承つておきたいことが一つございます。と申しますのは、衆議院の解散は、先般行われました解散の当時における、やや一致いたしました見解によりますれば、衆議院において、政府に対する信任案が否決され、不信任案が可決された場合にのみ初めて、総理大臣は天皇に助言をして、衆議院の解散ができるのだという一つ見解がまとまつたのは、総理大臣も御記憶に新しいことと思うのであります。また最近においては、ことに憲法立案当時に参画した諸般の有力なる学者あるいはその他の人たちから、解散はその六十九條の憲法の規定だけにとどまらなくて、総理大臣が衆議院の解散を必要と認め、しかもその上に立つて天皇に助言をいたしますならば、いわゆる憲法第七條と記憶いたしますが、その七條の規定に基いて衆議院は解散ができるのだという一つの説を強く主張いたしますところの有力なる学者、評論家も出ておるような実情でありまして、今日これに対する見解が動揺をいたしておることも、総理はお認めではないかと思うのでありますが、その問題について、政府といたしまして、総理大臣は、今日のところいかなる見解に立たれておりますか。これは国論がやがて沸騰いたし、政府が好むと好まざるにかかわらず、衆議院の解散問題が明年の春以後においては相当な力となつて台頭するのではないかという、われわれは予想を持つておりまする立場からも、きわめて重大な事柄であろうと存じますので、この機会に以上の二点をお尋ね申し上げまして、私の総理に対する質問を終りたいと思います。
  126. 吉田茂

    吉田国務大臣 第一の御質問の、選挙法の改正の問題は、いまだ結論に達しておりません。  また解散はいたしません。従つて、解散の場合における議論は、解散が具体的になつたときにお答えいたします。
  127. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早八十二君。
  128. 風早八十二

    ○風早委員 最近、いろいろ奇怪なことが多いのでありますが、その一つは、ドツジ氏の来朝とその言動であります。今サンフランシスコ講和條約がまさに衆議院を通過して、参議院にもうすでにかかつておる。しかも政府や与党の言い分によれば、この條約は日本の独立を完全に保障するものであるという話である。そのときにあたりましてドツジ氏が来朝する。一体何しに今ごろのこのこと来られたのか。しかも減税はいけない、あるいは米の統制撤廃はいけない、その他、インフレは、今日の日本の状態がまさにインフレだ、いろいろさまざま、日本の明らかな内政に対して重大な発言をしておる。われわれはもちろん、自由党のいわゆる減税案なるものが、実は水増し増税にほかならない、インチキなものであるということはよくわかつておる。しかしこれはわれわれが国会内において、お互いの立場として議論すべき問題であります。米の統制撤廃にしても、もちろんわれわれはこの統制撤廃には反対でありますが、さりとてこのドツジ氏のいわゆるこれに対する干渉に、われわれは絶対にくみするものではない。現にこのドツジ氏の言動によつて政府部内においても多大の動揺を来しておるではないか。減税についても、すでに吉武政調会長は、これは減税ではなくて調整だ。また米の統制撤廃についても、はなはだ雲行きが怪しくなつた。現に本会議においてはつきり、総理はこの統制撤廃を声明せられ、しかも今日の御答弁では、目下研究調査中だ。この通りに影響を与えておる。私は総理にお尋ねしたいのでありますが、このドツジ氏の来朝は、一体何のためであるか。さらに、このドツジ氏の言動に対して、総理は、日本総理としての立場から、これを取締る意思があるかどうか、(笑声)この点に関して、まず総理所見をただします。
  129. 周東英雄

    周東国務大臣 お話でありますけれども、それこそ人権を害するものでありまして……。
  130. 風早八十二

    ○風早委員 待つてください。私は総理に聞いておるのです。君に聞いてやしない。
  131. 小坂善太郎

    小坂委員長 委員長は発言を許しております。
  132. 風早八十二

    ○風早委員 許してもらつては困る。
  133. 小坂善太郎

    小坂委員長 総理安本長官をして答弁せしめております。
  134. 風早八十二

    ○風早委員 私は総理に聞いておる。委員長は当然総理にまずその答弁を求めらるべきではないか。
  135. 小坂善太郎

    小坂委員長 質問を続けてください。
  136. 風早八十二

    ○風早委員 総理にごあいさつを求めます。——そういう調子だから、先ほどのような問題が出て来る。私は総理に一番大事な問題を聞いておるのです。
  137. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府委員をして、かわつて発言させます。政府委員意見は、すなわち私の意見とお考えを請う。
  138. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君、ちよつと待つてください。あなたは私が発言を許可した範囲においてやつていただきたいと思いますあなたがそこにいつまで立つて、いろんなことを言つていたのでは話が進まない。
  139. 風早八十二

    ○風早委員 けさほどからの問題は一体どこにあるかといえば、夜店のたたき売りじやないから、そう一々品物は出せないというような発言の問題じやない。けさから一貫してとられた総理の態度自身に問題がある。今日総理が来られる、それで正々堂々と総理に対して質問し、総理がこれに懇切に答えられるというのが今日の趣旨であつたはずである。他の閣僚が言うことが、これすなわち総理の言うことであるというなら、総理はここに来られる必要はない。一体総理は何のためにここに来ておられるか。委員長としては当然総理に対して発言を求められるべきである。
  140. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君、委員長に対して質問をしておられるのでありますか、内閣に対して御質問でありますか。
  141. 風早八十二

    ○風早委員 総理質問しております。総理に答えさせてください。
  142. 小坂善太郎

    小坂委員長 今委員長総理に発言を求めましたところが、総理大臣は、内閣の閣僚をして答弁せしめるということでありました。法学者であります風早君に申し上げるまでもないと思いますが、内閣は連帯して国会に責任を負うので、総理が指名すれば、総理が言つたことと同様になります。
  143. 風早八十二

    ○風早委員 私は委員長に一言発言します。一体きようは、理事会の決定で、総理にわざわざ来ていただいて、われわれは総理答弁を期待して来ておる。こんなばかな話はない。総理が一言も答えられないで、閣僚の答弁が、すなわち首相の答弁であるというならば、首相なんかはいりやしない。何のためにここに出て来ておられるか、ここはひな壇じやない。
  144. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君に申し上げますが、先ほどからあなたは非常に総理の言動についてどうこう言われますが、あなた自身の言動もお慎み願いたい。ばかな話だとかなんとかいうことは、それこそ国会の権威のためにお使いになつていただきたくないです。あなた自身の言葉を慎んで、ひとつ質問を続けていただきたいと思います。
  145. 風早八十二

    ○風早委員 総理が今のような態度をとつておられることが、一体何を意味しておるか、これがすなわちこの講和條約がまつたくインチキである、言われるところの日本の主権の独立は、まつたくインチキであるということを明らかに証明しておることになるのではないか。もはや批准も終ろうとしておるそのときに、ドツジ氏の来朝とその言動に対しては全国民は非常な憤激を持つておる。戰後六箇年にわたつて、ことに吉田内閣になつてドツジ氏がやつて来られ、あらゆる政策、ことに金詰まりというようなことによつてどれくらい国民は迷惑しておるわからない。自由党の諸君だつてそれは言つておる。しかるに今またドツジ氏がやつて来て、今の政府を動揺させ、また国会の予算の審議に対して大きな影響を与える、これは明らかに内政干渉だ。私どもはこのドツジ氏の言動に対しては、総理日本総理であるならば、当然取締る立場にあると思う。これができなければ、結局この講和がいかにもインチキである。表看板は独立、実際は相もかわらず他国の属国であるということを意味しておると思う。私は総理お答えがないのでありますから第二問に移ります。  この二つの條約から生れて参りました実に莫大な国民負担、特に軍事費負担でありますが、これについて総理はいかなる考えを持つておられるか、またどの程度まで実際責任を持つてこの財政負担に応じようとせられるのであるか、この條約に対する国民の関心はこれなんです。もちろんこの條約が日本の完全な独立を回復するものであるか、あるいはまた相もかわらず、またまた属国にして行くものであるか、あるいはまた戰争へ持つて行くものであるか、平和を保障するものであるか、こういうことは関心事であります。しかしながら最も深く直接関心を持つておるのは、この條約がはたしてわれわれの国民生活をもつとよくしてくれるのか、あるいはもつと苦しくするものであるか、この点が一番問題である。総理はこの問題につきまして、すでに今までの御答弁の中では、この費用の分担はきまつてはいないが、日本が頼んで軍隊を置いてもらうのだから、できるだけ費用を負担するのが当然であるが、財政上の制限のあることもやむを得ぬことである、こういうお話であつた。これがそもそもこの莫大なる財政負担を背負い込まなければならなくなつた一つの根本的な問題であります。日本側が米軍の駐留を頼んだということから、こういう形式になつておる。つまり両條約とも日本が希望して、アメリカはその希望を聞き入れたにすぎないのだ、こういう形になつておる。この日本側が希望したということは、これは一つの法律上の擬制にすぎないのですが、これくらい日本国民を侮辱した言葉はない。(「侮辱ではない」と呼ぶ者あり)侮辱だ。日本国民のだれが希望したか。もちろん希望した者はあります。それは政府と自由党が希望しておる。しかしながらその希望したという形式が盛られたことがどれくらいひどいことになつたかということは、これから逐次ただして行きたいと思います。この形式はむろん保護條約の形式でありまして、今までこの委員会あるいは平和條約委員会におきまして、日満の協定あるいはまた日韓の協定になぞられておる。しかし私はこれは條約ではないと思う。この二つの條約というのは、実は形式は條約であつても條約ではない。私に言わせれば、これは女郎の身売り証文とそつくりである。これは事実である。その証拠を私はあげてみせる。この女郎の身売り証文というのは、ここにあります。この形式は実に今回の両條約に似ておるのだからしかたがない。「此むめと申す女子当年拾七才に相成候処、我等の実の娘に御座候、年々不如意に付難儀仕候、然るところ貴殿前々より御懇意の好身に付、先般相頼み候処早速御承知下され御世話を以て舘売下女奉公相済せ前借金御依頼申入候処身代金正拾参両慥に受取申候然る上はむめの一身については如何様なりとも貴殿の御随意たるは勿論横合より故障申す者は一人も御座なく候、若しとやかく申すもの有之候はば我等何方迄も罷出で、きつと埒明かせ、貴殿へは少しも御苦労相掛申間敷候」 これは單にこの両條約の本質を現わすだけではなく、戰後六箇年、占領下において歴代内閣、特に吉田内閣がやつて来たその政策、あの外資導入政策にしてもそうです。どうかお願いいたします、どうか頼みます、金を貸してください。金を借りる。そのかわり何でもあなたの申入れに応じます。この形でもつて次々に積み重ねて来たその結果がこれである。この身売り証文とどこが違う。われわれはこのような奴隷條約、このような売国條約に対しては、むろん絶対反対して来たものであるけれども、問題は、こういう売国條約を結ばれたその結果、いかに莫大なる国民負担を増大させたかということである。  そこで私は総理にお尋ねします。この條約から出て来る莫大なる財政負担について、一体どの程度これを見積つておられるのか、またこれに対してどういう責任を持つてこれを支拂おうとしておられるのか。この点吉田総理の責任のある御答弁を求めたいと思います。
  146. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君に申しますが、あなたは先ほどから総理の言辞に対していろいろおつしやつたのでありまして、学者としての風早君と思つておりましたもので、あなたのおつしやることに敬意を表して聞いておりました。ところがあなたの言辞は、女郎の身売り証文云々に至つて、まことに国会の権威にかかわるような言辞であります。そういうことは嚴にお慎み願いたいと思います。
  147. 風早八十二

    ○風早委員 私それにお答えします。委員長はわれわれと同学、実は同じ大学を出ておるのであります。われわれは大学におきまして、小坂委員長もよく御存じの、中田薫博士あるいは穗積重遠博士、こういう人たちからあなた方は何を習いましたか……。
  148. 小坂善太郎

    小坂委員長 もう少し本筋を……。
  149. 風早八十二

    ○風早委員 これは法制史において、重大なる日本封建制の問題として出ておる。われわれはこれを引用しておる。何が学者でないか。(「取消せ」と呼び、その他発言する者多し)私はあらためて総理にお尋ねします。身請証文のこの結果として、一体どのくらい莫大な国民負担が出て来たかということ、この点をぜひ総理に答えていただきたい。
  150. 小坂善太郎

    小坂委員長 本に出ているかどうか聞いたことはないけれども、そういう話がこの場合に不適当である。先ほどあなたは夜店云々ということを非常に問題にされたのですが、これは天地霄壤の差であつて、あなたの言辞としてはまことに不適当だと思います。私しいて取消せとは言いませんが、あなたの良心に訴えます。大体時間が来ておりますので、政府からお答え願います。
  151. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。いろいろと引例をされてお尋ねですが、そういう引例は、この際に当てはまらぬ例であります。政府といたしましては、賠償その他の負担については、條約の定めたところによつて、生存権を害せざる範囲においてこれを交渉いたしまして、すべての負担を考えるつもりでありますから、あなたは一方的に負担の増加を来したとおつしやいますが、そうは考えません。今後われわれは友好的にできた條約の本旨に沿うて、友好善隣の交際を続けるために、あくまで誠意をもつて負担は拂いますが、しかしそれはあくまでも生存権を害せない範囲においてそのことを考えて行きたいと存じております。
  152. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君。大体時間でありますから……。
  153. 風早八十二

    ○風早委員 まだ時間は来ない。そういう了解にはなつていない。
  154. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは一言だけ。最後の結論を願いたいと思います。
  155. 風早八十二

    ○風早委員 安本長官お答えでありますが、数字はすでに相当出ておるはずである。少くともこの中で八千百億円という、今までの日本の援助資金、これは油田大蔵大臣によれば、はつきり債務であるとされておるのであります。これを考えてみても、どれくらい莫大なものであるかがわかる。さらにこの軍事負担でありますが、これは再軍備はやらないとかなんとか言われますが、そういうことは世界に通用しない。すでにもうやられておる。この再軍備費として大体アメリカは西欧諸国に対してはその基準を示しておる。これはその国民所得に対して少くとも一〇%を軍事費として計上しなければ、軍事援助は出さないと言つておる。このことを日本に当てはめたらどうなるか。今年度の国民所得はすでに四兆五千億と政府が踏んでおる。もちろん水増しである。しかしとんでもないところに水増しがはね返つて来て、その一〇%すなわち四千五百億はとられる危險性が十分にある。こういう無責任な結果を来すところの、この條約にあなた方は賛成した。それだけはつきりしておる問題であります。  私は最後に、今後の中国並びにソビエトに対する日本の国交の調整について、特に吉田総理の御所見をぜひ承つておきたい。これはすでに今までも若干の御答弁は他の箇所であつたように考えますが、私はここでわが党を代表して、特にこの重大なる問題について首相の御所見を伺いたいと思います。
  156. 吉田茂

    吉田国務大臣 その点は前言の通り。しばしば申しております。
  157. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君、あなたは質問の前の演説が長過ぎますから、結論を簡單に願います。
  158. 風早八十二

    ○風早委員 この中日あるいは日ソの問題につきましては、それでは、首相の先般の御答弁を私はここに引例いたしますが、それによれば、中ソが望めばこれにやつてやる。これは一体何という身のほどを知らない答弁であるか。一体中国やソ同盟が、今日いかなる発展をしておるか。昔の、戰前の中国のことを首相は考えておる。それ以外には御存じないらしい。だからこういう失敬千万な答弁が出て来る。今日中国は日本に対しても無限の市場になつておる。この中国と日本がもう実に願つたりかなつたりで、何とかこれに対して国交を調整し、そうして貿易を回復しなければならない。これは全国民が要望しておる。自由党の諸君も要望しておる。なぜ吉田政府はこれに対して誠意を示さないか。向うが望めばやるというようなそういう御答弁には私はまつたく反対でありますから、あらためて吉田総理の御答弁を願いたいと思います。
  159. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の意見は前言の通り、これに加える何ものもない。
  160. 小坂善太郎

  161. 勝間田清一

    ○勝間田委員 吉田総理大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今国会を通じて、講和条約並びに安全保障條約について、非常な審議をいたしたわけでありまするけれども、その間において、吉田総理の決意をまだ一つお尋ねしておかなければならぬ問題があろうかと思うのであります。それは吉田総理としてはきわめて立場上困難かも存じませんけれども、しかしわれわれ国民として冷静に考えてみた場合に、今日占領治下におけるきびしい状態という、その事実から生れて来ておるところの日本の主権の完全なる独立という問題、同時にわれわれがほんとう日本の安全を守るために必要なるわれわれの発言権という問題、こういう問題は今後日本民族にかなり長い間残つて来る問題であると私は思うのであります。この問題をどう解決して行くかということが、少くとも今後における日本民族全体のこれは責任でもあり、また悩みでもあると思うのであります。私は今後あるいは條約の改正の問題が起るとも存じまするし、いろいろの主権の回復の問題が起ると実は考えるのでありまして、私は今後の日本が完全なる世界の対等の国として成り立つて行く上において、政府なりわれわれ国民なりがその持つべき態度というものが残つて来るのではないだろうかと思うのであります。この問題に対する吉田総理所見を私はこの際承つておきたいと思います。
  162. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御趣意がよくわからないのですが、主権が回復されていないということですか。
  163. 勝間田清一

    ○勝間田委員 主権の回復ということが非常な低い水準だと私は思うのでありまして、そういう問題をどう解決して、日本の独立と自由を回復して行かれるのであるかということであります。
  164. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御趣意がよくわかりませんが、とにかくこのたびの條約は主権の回復、平等の立場において主権を回復する、この趣意で結ばれたのであつて、しかしながらいずれの国の主権といえども、條約の中でもつていろいろな束縛を受けていますが、その点においては日本にはやはり同様の束縛はありましようが、他の国の主権と違う、あるいはこのたびの條約において主権上に束縛を受けた点はないはずであります。そうわれわれは解釈しております。
  165. 勝間田清一

    ○勝間田委員 かなり吉田総理としては立場の問題があられるかと実は考えるのでありますけれども、しかしこの問題は今日においてはあまり拘泥する必要がないのではないかと私は考えております。たとえば今日まで論議された中で、第六條の但書の駐屯規定とか、それに基いて来る外国軍隊の駐屯であるとか、その駐屯兵が内乱騒擾に対してもこれが鎮圧解決に当るとか、あるいはその他万般の面を考えてみますると、あなたがおつしやつたように、この敗戰国たるの事実は、これはのがれるわけには参らないという言葉の中にこの問題は入つておると実は考えるのであります。それらの問題を今後解決して行くというところに、今後に残されたわれわれの問題があろうと私は考えるのでありまして、その問題を解決せずして、ただ私は現在対等な主権を回復したと思つておるから、それでいいのだということにはならないということを、私は考えるのでありまして、再度の御答弁をお願いしたいと思います。
  166. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障條約がこれが不対等の條約と言われればそれまででありますけれども、われわれは不対等の條約と考えておらないのであります。また米国の駐留権といいますか、駐兵権にしても、これは終期がちやんとついておるのでありまして、第四條でありますか、第三條でありますか、この條約はこういう事態に日本の国力が回復するか、あるいは日本の安全が確保せられるというときには、これは解消するということが書いてあるのであつて、私は安全保障條約においても、これは対等な條約であり、従つてこれに対して主権が回復せられないとは解釈いたしません。
  167. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その問題について、なるほど総理はそうおつしやるようでありますが、私はそれを裏づける條項がない。たとえば駐屯規定の場合においても、それに対する期限が今日まで示されておらない。また先般来お話があつた小笠原、琉球の問題についても、これは口約束であるということになつている。対等な立場で結んだはずであるが、しかしそれがやがて、たとえば安全保障條約が終るならばこれが解消するということになつて参るにしても、それを裏づけるものが今日ないのではないか。日本の一方的な希望だけでは、これはわれわれはあまり安心ができないのである。そこにわれわれは不安を持つのであります。今日における安全保障條約にいたしましても、講和條約にいたしましても、何々を期待する、あるいは何々を希望する、こういう文章がきわめて多い。しかし実際上期待され、実際上希望されたことが、事実となつてわれわれをを束縛して参る。ここに非常に巧妙な條約になつていると私は考える。そういう場合においては、どうしてもその日本の主権回復を裏づけるはつきりした根拠というものがない限りにおいて、私ども今日の日本の状態の立場から行けば、主権を回復することはなかなか困難であるという感じがいたすのであります。その意味において、私どもはこの問題を今後の問題として残るように考えておりますので、吉田総理に特にお願いをいたしたわけであります。
  168. 吉田茂

    吉田国務大臣 国が存在して、そうして條約関係には、問題は始終残り、また将来ますます発展するでありましようが、それをただ裏づけがないとか言つてつたのでは、私は少し了解できない。それからまた安全保障條約には終期がないと申しますけれども、いつ幾日という終期はなくても、終了の條項はちやんと規定されておるのであります。私はあなたの趣意を了解しないのかもしれませんけれども、私としては、何ら不安がないのであります。
  169. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安全保障條約の中に、終期と思われる分についての條項としては、御承知通り日本が再軍備してみずから防衛する態勢が整つたという場合、あるいは国際連合が一定の方式を確立した場合、あるいは特定の條約によつてそういうことが不安がなくなつた場合という三つの條項が、今日残されておると私は思う。日本の安全保障條項というものが、そういう意味で終るということをわれわれは希望するのでありますが、その場合に吉田総理は、その三点の中のどこに基点を置かれて今後考えて行かれますか、その点をお尋ねいたします。
  170. 吉田茂

    吉田国務大臣 それにしても私は少しわからないのでありますが、とにかくいつ幾日という日にちがなければ心配であるというのと、條約の規定の力でこういう事態が起れば終了するのであると書いてあるのと、どちらが安全かということは、私は日にちでもつて何月何日と限られるよりも、ある事態が生ずればその事態に応じてこの條約を終了せしむると書いた方が、むしろ日本の利益かと私は思うのであります。この点は見解の相違であるかもしれませんが、そう考えます。
  171. 勝間田清一

    ○勝間田委員 終了する——そのかかる事態の場合が御存じの通り條約の中に三つ書いてあるわけでございますが、そのいずれをあなたは御期待なさつておられますか。
  172. 吉田茂

    吉田国務大臣 條約に書いてある事態が生じたとき、すなわちそれが終了の時期であります。
  173. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから私は、これは吉田総理が前に、條約の締結のときに、なるべく講和條約、安保條約等についての国民輿論あるいは発言というようなものを自由に許して行きたい、こういう態度に出られたことは、私は総理の賢明な処置であると考えるのであります。今後の講和條約の改正とかあるいは安保條約に対するいろいろな非難、これは国民の中に相当つて来るだろうと私考えるのですが、こういう国民輿論に対しても、あなたは自由な国民意見の発表というものを許して行かれるお考えでありましようか。その点の御発言を願いたい。
  174. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん許して行くつもりであります。
  175. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次の点についてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、これは午前中川島金次君も質問された点でありますが、まだ納得行かない点が数箇所ありますから、その点をお尋ね申したいと思います。それは言うまでもないのでありますが、アジア諸国家との外交を、これからどう進めて行かれるかという問題で、たいへん議論が吉田総理との間にあつたわけでありますが、私は具体的にお尋ねしたいと思うのであります。インドが講和條約の効力発生後日本と無條件講和を締結したいということをすでに表明せられておるわけでありますが、このインドとのあるいはビルマとの国交回復を、いかなる形で行くと現在予定されておりますか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  176. 吉田茂

    吉田国務大臣 インドはすでに講和條約を結びたいという意思を通告しております。ビルマもその意味合いのことを——インドと同じ言葉であつたかどうかは知りませんが、とにかく通告しております。
  177. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その場合に起つて来る問題といたしましては、インドは私どもの了解するところによりますれば、戰争状態をただちに終息する、それから自由なる通商関係を回復する、同時に正常なる外交関係を回復する、こういう形で單独の講和を締結したいということをインドは希望しているように私は理解をいたしておるのであります。その問題とサンフランシスコ会議できまつたこの條約との関係において、今後幾多の矛盾が出て来るのではなかろうかと考えるのでありますが、この点は矛盾があるとお考えになりますか、その点を伺いたい。
  178. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは條約にもちやんと書いてある通りに、平和條約を基準としてそれ以上のよい条件で結ばないと書いてありますが、文字はとにかくとして、サンフランシスコにおいて調印された條約を基準として、日本政府はそれと同じ條約であるならば調印するか締結する義務がある、こう書いてあるのであります。その線で参るつもりであります。
  179. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今総理からそういう御発言がございましたから、もうちよつと私お尋ねしたいと思うのは、当時の條約の改正のときにも当然質問があつたと存じますけれども、あの文章は相手国に対して有利な條件を日本国が与えてはならない、すなわち最恵国の意味において相手に対して差別をつけない、特別な国に有利な條件を与えたならば、その條件を他の諸国家に対しても与えなければならない、こういうように私は文字通り実は解釈いたしたのであります。日本が有利な條件で締結する場合においては、私は日本の自由があると実は考えるのでありますが、この点は吉田総理はいかにお考えになりますか。
  180. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは同じことだろうと思います。日本がほかの国よりも有利な平和條約を結ぶということは、この條約の考えておらないところである、こう解すべきだと思います。
  181. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかしインドは、小笠原、琉球等に対する領土権を主張されて、これは日本に返却すべきであるということを要求されております。また賠償は一切要求しないということも明白に言つておるのであります。また台湾については御存知の通り、いろいろ中共へこれをやるべきであるというようなことを言つておりますが、そこに見解の相違が出て来ておるわけであります。こういう状態でありまするから、日本に有利な状態というものは当然出て来る。またインドはそれを希望しておる、私はそう考えるのであります。その意味におきましては、サンフランシスコ会議の米原案に対して反対をして、別個にインドが日本と單独講和を締結しようとする気持というものが、明らかに現われておると私は考えるのであります。こういう問題が今後私はビルマ等においても起つて来るであろうと考えるのであります。従つてそこに私どもの二十六條に対する解釈という問題は、日本に対する明らかに有利な條件で出て来る、こういう場合がありますので、これは当然われわれはその意見を尊重して行きたいという考え方を持つております。総理はいかにお考えになりますか。
  182. 吉田茂

    吉田国務大臣 あなたの質問は少し趣旨を理解いたしかねますが、お答えいたします。その場合には日本としてはそういう條約には参加しない、こう言わざるを得ないと思います。
  183. 勝間田清一

    ○勝間田委員 日本に有利な状態が他から出て来ても、それには参加しないという御答弁でございます。  それから次に私はお尋ねいたしたいと思うのでありますが、吉田総理が善隣友好ということをお話になつておることは、先ほどからしばしば聞いてた問題であります。ただ私たちが一番深憂いたす問題は、今度の講和が少くとも中国に与えた影響というものは非常に大きい。これをどう解釈すべきかという問題は、單に善隣友好という問題だけではないように私は考えるのであります。たとえば日本に対する軍事同盟の締結が新になる宣戰布告である、こう中共の者は言つておるわけであります。そういう状態でありますから、單に善隣友好というだけでなくて、この講和條約そのものを大きく改正することなくしては、これとの間の真の提携はできないという心配をわれわれ持つものでありまして、今後この問題がある以上、相当長くこれら諸国家との友好が回復できないという心配を実は持つのであります。吉田総理所見をひとつ承りたいと思います。
  184. 吉田茂

    吉田国務大臣 かりにこの條約があるために中国との関係ができないというのですが、すでに四十八箇国と日本との間には講和條約ができておるのでありますから、その基礎においてその條約がいけないといつたところが、かりに中国との関係が回復できなくともいたし方ないと考えます。
  185. 小坂善太郎

    小坂委員長 勝間田君、大体結論をお急ぎ願いたいと思います。
  186. 勝間田清一

    ○勝間田委員 はい。もう一つ吉田総理がこれまでの答弁において多分私の記憶するところによると、二回ほどでありますが、一回は講和條約の効力が発生すれば、日本は完全なる外交の自主権を得られるのであるから、中共との貿易もひとつ自由に自分はやつてみたいという点を一度お話になられまして、それが外国、特にアメリカ輿論に対して相当影響を与えたようであります。それからこれも最近の外国の状況を見ておると、たとえばあなたが上海に在外事務所を置くという問題について、これまたアメリカ相当の影響を与えたように、新聞では報道せられておるようであります。私はこれは日本の外交主権が回復するという意味で、吉田総理の立場は正しいと考えるのでありますが、吉田総理はもし中共その他について正常なる講和ができないとしても、現在のたとえば平和的な貿易というようなものは、やはり日本の自由にこれを行い得られる、日本の外交主権によつて、十分これは行使し得る、こういうようにお考えになつておるものと了解してよろしゆうございますが、この点を伺わせていただきたいと思う。
  187. 吉田茂

    吉田国務大臣 私が中共と自主権回復の後に自由に貿易がしたいということを言つたことは記憶にないのでありますが、いずれにしても、それはとにかく、中共の方が第一に日本と貿易をいたさないであろうと思います。何となれば、管理貿易になつておるから……。できればけつこうでありますが、できないと思います。  それからもう一つ、上海の問題についてでありますが、これは新聞電報が間違えて伝えたのであつて、これは昨日参議院の委員会において訂正しておきましたが、台湾に在外事務所を設ける。これは設けてくれというから設けるのであり、またこれは正常の事態にあるのではないのだ、商売の意味なんだ、貿易増進のためであるのだ、在外事務所の趣意とするところは貿易通商にのあるである。であるから、かりに中共からもし招待されて、そして置いてくれと言つた考えてもいい。但しそのために、それが何と言つたか忘れましたが、かりに在外事務所を上海に置いて、同時に中共が日本に在外事務所を設けるというようなことがあつて、そこが宣伝の中心になるということがあつたら、これは置けない。が、いずれにしても、現在上海に置くという考えはないのだ。何も話はないのだ。ただ台湾の在外事務所なるものの性質を説明する意味でもつて申したのだということは、きのう参議院でもつて訂正といいますか、とにかく趣意をはりきりしておきました。
  188. 小坂善太郎

    小坂委員長 勝間田君、最後に一つ願います。
  189. 勝間田清一

    ○勝間田委員 はい。それからもう一つは、割当物資というようなものは、これは日本は供給を受けておる立場もございましよう。それからまた逆に申しますれば、国際連合が、善悪は別といたしまして、中国は侵略的行為であつた、こう決定をいたしておる。従つて吉田総理の立場から申しますれば、それらとの貿易ということはなかなか困難な問題もあると私は思います。これは私はあなたの立場から考えての考え方でおりますが、しかし現在のソ連というものをどう考えて行くか。このソ連も現在日本と貿易を希望されておる。明らかに車両であるとか、その他の物をいろいろ希望されておる。そこで私どもはやはりソ連との貿易の道というものも残されておるのではないだろうか、またこれは開くべきではないだろうか、こういうように実は考えるのでありますが、今申しましたあなたの立場のいろいろな制限の中でも、私は広げる余地がある、こう理解するのでありますが、吉田総理はソ連貿易についてどう考えておりますかお尋ねしたいと思います。
  190. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは中共と同じことであつて、通商問題ばかりを考えられないのであります。国と国の全般の利益から考えなければならぬのでありますから、中国にしても同じことであります。貿易のしたいことは日本も同じことでありますが、しかし貿易だけを決定したがために、今の宣伝関係ができたり、いろいろなことができないとも限りません。そういう危險もありますから、いろいろな全般の関係考えないというと、かりに貿易問題を持ち出されても、また現に條約関係がなくて、一種の不安な状態にあるときに、商売だけ進めて行くということもむずかしいことだろうと思います。結局できないことであろうと思います。
  191. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平忠君。
  192. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は国防と治安維持並びに食糧政策に対する基本方針につきまして、吉田内閣総理大臣にお尋ねいたします。  国民待望の講和会議も終りまして、主権の回復、日本の独立、こういう輝かしい第一歩を踏み出しましたことは、まことに欣快にたえません。しかしながら世界現状は、二つの陣営がはげしく対立いたし、国際情勢はきわめて緊迫せる現状であります。特に隣邦朝鮮におきましては、昨年六月動乱が勃発いたしまして、約一年有半になろうといたしておりますが、その見通しはいまだつかないという現状であります。この朝鮮動乱の見通しというものは、今後わが国の国防あるいは治安維持、こういつた点に重大なる影響をもたらすものであると思うのであります。総理大臣は、国際情勢の分析あるいは判断について、今日まで概して的確なる態度なり、あるいは声明を出されておるのでありますが、特にこの際お伺いいたしたいことは、われわれ全国民が、いな全世界の人類が偉大なる関心を持つておりますところの朝鮮動乱の見通しについて、総理大臣はいかなるお考えを持つておられるか、この際承つておきたいと思います。
  193. 吉田茂

    吉田国務大臣 他国の状態について、特に隣国の朝鮮の状態については、私は何らここに説明なりあるいはお話する資料を持つておりませんから、お答えいたしません。
  194. 小平忠

    ○小平委員 総理お話もわかると思うのでありますが、しかし特に日本国民としては、今回の両條約ということから関連いたしまして、朝鮮問題についての関心を持つことは当然だと思うのです。しかしこれに関連いたしまして、私は今回の、特に平和條約、あるいは日米安全保障條約等につきましてのわれわれの考え方は、当初あくまでも全面講和を支持して参りましたが、今日の国際情勢の動き、あるいは現在の事態、これらを十分に考えました結果、端的に申し上げますならば、全面講和、なしくずし講和といつたような観点のもとに、安保條約につきましてもわが党は賛成をいたしたのでありますが、しかしこの両條約に対しましてわれわれが賛成をし、これを承認するという底には、私は他党のことを批判するわけではありませんが、社会党において平和條約賛成、安保條約反対という考え方、これにつきましても、私は多分の疑義があろうと思うのであります。そのことは全面講和がなし得てこそ安保條約のごときものがいらないのでありまして、今日遺憾ながらソ連並びに中共、その他共産主義陣営の條約参加を見なかつたという事実に対しまして、あえて日本が平和條約に調印をするという態度をきめた瞬間に、考え方によりましては、まさにソ連、中共に宣戰を布告したのも同然であるというような見方をとるものさえあるのであります。従いまして当然この平和條約に関連いたしまして、安保條約の締結等も考えられるのでありますが、その際私は日米安全保障條約に基きまして、日本の主権が回復された條約発効後においても、国連軍の駐屯を認めねばならぬという現状につきましても了とするのでありますが、その際わが国は、はたして国連軍の駐屯だけをもつてして、日本の国防あるいは治安維持が完全になし得るかどうかという点につきましては、多分に疑義があろうと思うのであります。すなわち総理大臣にお伺いいたしたい点は、單に国連軍だけに依存してよいのかどうかという点をお伺いしておきたいのであります。
  195. 吉田茂

    吉田国務大臣 さしあたりのところ、これでよろしいと考えます。
  196. 小平忠

    ○小平(忠)委員 しからばもう一歩掘り下げて、私はお伺いしたいのでありますが、たびたび北辺の問題について、北海道の問題が論議せられるのであります。最近の北海道の現状というものは、総理大臣も十分御認識されておるものと思うのであります。今年春ごろから北海道において、特に米国州兵の上陸以来、激烈なる機動演習が行われ、あるいは現に警察予備隊におきましても、まつたく軍隊と同然の訓練をいたしておる。特に昨日は、目下来朝中のコリンズ参謀総長及びリツジウエイ司令官が、うちそろつて千歳の基地に行かれておるのであります。こういつたようなことと相前後いたしまして、根室の突端、いわゆる千島列島南端の現在ソ連が進駐をいたしておりまする地域におきまして、連日のごとく大規模の演習を行つているというようなことから、北海道におりまする道民は、これに対して非常なる緊張と不安の念を抱いておる者が多いのでございます。こういうようなことから、やはり少くとも日本がこの国際情勢の動きに対処して、敢然と日本は独立の一歩を印して行くのだという腹構えをなすと同時に、私は総理大臣におかれましても、国民に一点の不安なからしむるところの考え方を御批瀝されることが、適切でないかと思うのでありますが、特に北海道の現状を十分御認識のはずである総理大臣におかれまして、この北海道の現状について、いかようにお考えになつておるか、お聞かせ願いたい。
  197. 吉田茂

    吉田国務大臣 法務総裁をして説明いたさせます。
  198. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私から便宜お答え申し上げます。北海道につきましては、今日の段階におきまして特に治安上注意を要するという事態はないと考えておりますが、しかし何分にも広大なる地域でございまするし、また地理的條件から考えましても、外国勢力ときわめて近接をいたしておるのでございまするから、これが警備につきましては特に重視しなければならない、かように政府といたしましても考えておる次第でございます。ただいま占領軍の司令部におかれましても、部隊の配置その他につきましては、特段の配慮を加えられておることと信じておるのでありますが、政府みずからといたしましても、警備機関の配置につきましては、特に意を用いておるわけでございます。すなわち警察予備隊におきましても、特に北海道に管区総監部を置いておるというわけでございますが、また国家地方警察といたしましても、今回の警察法の改正に伴いまして、ただいま予算の御審議をいただいておりまする増員、純粹なる増員は今回二千六百名にすぎないわけでございますが、特にこれが実現のあかつきにおきましては、そのうち一千名を北海道のためにさきたい、公安委員会といたしましても、かような構想を持つておるような状況であります。
  199. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平君、大体時間ですから、結論をこの次あたりでまとめていただきたい。
  200. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間がありませんようですから、簡單に申し上げますがただいま大橋法務総裁から警察予備隊の問題について触れられたのであります。私はあえて総理大臣にお伺いいたしたいことは、総理大臣は、再軍備考えは目下のところ持つていない、あるいは警察予備隊についてもこれを軍隊化するという考え方は持つていないとおつしやる理由につきましては、結局日本の現在の国家財政から見て、強引に軍隊をつくるということは、魂の入らない軍隊をつくつても、そんなものは、何にも使いものにならない、簡單に申しますれば、そういうことをおつしやつておられるのであります。私も同感であります。もちろん緊迫せる国際情勢に対処して、やがては独立後に再軍備考えられるだろうが、それはやはります第一に、今回の戰争犠牲者に対するところの生活保障、あるいは国民の最も苦しい生活現状にある農山漁村、中小企業、炭鉱、工場の労働者、これに対する生活の保障、こういう施策をとつて日本という国はよい国であるというような結論から、愛国心の発露がここにわき出て、日本の国を守ろうという形によつてこそ、軍隊ができる形が望ましいと思う。しかしそうは言うものの、こういう緊迫せる周辺の情勢から見ても、單に国連軍だけに依存してはいけないから、特に一朝有事の際に——あるいは最近における共産党の地下工作、あるいは煽動、特に北鮮系のいわゆる在日朝鮮人、これらの動きについても、われわれはいろいろな情報を耳にするのであります。こういう点について、政府は一朝有事の際にいかなる措置をなされるのか、これについて承りたいのであります。
  201. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまさしあたりまして、非常な特殊の事態が発展するというような予想は、政府といたしましては全然持つておらないわけでございます。しかしながらいつまでもさような事態が絶対にないということは、むろんわが国の実情から見まして、何人も確言し得ないと存じまするので、政府といたしましては、御指摘のような問題につきましては、絶えず研究を続けておりまして、必要なる場合には必要なる措置をとるように心がけておる次第でございます。
  202. 小平忠

    ○小平(忠)委員 現在問題になつております主食の統制撤廃、これは国民生活上きわめて重要な問題であります。この主食の統制撤廃という問題と関連いたしまして、総理大臣は食糧政策の基本的考え方を、輸入食糧に重点を置こうとされるのか、あるいは国内生産力を高めて、すなわち自給度を高めて、いわゆる輸入食糧をなるべくこれを抑制して、生産力を高めるという政策に重点を置こうとされるのか、この点をまず第一点として伺いたいのであります。  同時に時間がありませんから、ひつくるめてまとめて申し上げますが、統制撤廃という問題については、総理大臣あるいは農林大臣、大蔵大臣安本長官等、断行するということをはつきり明言されておるわけであります。しかしこの問題についても、特に自由党の吉武政務調査会長は、これに対する具体的な措置を検討中であり、特にこの問題については農民協同党の意見も聞きたいという申入れがありましたので、われわれ吉武政調会長とお会いいたしまして、いろいろ御意見も聞き、またわれわれの考え方も申し上げておるのであります。しかしこの問題について、われわれはあえて統制を頭から反対しようとは考えておりませんが、しかし統制方式というものは、絶対量不足という場合になさねばならぬものであつて、私は現状においては、これは簡單に統制をはずすべきでないという考え方を持つておるのであります。すなわちこれに対する裏づけ、あるいは価格であり、あるいは資金の裏づけであり、需給の操作関係でありますが、これが国民が納得し得る、生産者は生産費を償う価格で販売し、消費者は少しでも安い価格でこれを買うことができる、こういう態勢がはつきりできない限りにおきましては、軽々しく統制撤廃の問題は論ずべきでない。昨日も農林大臣が本委員会において、あるいは大蔵大臣が本委員会において論議されましたが、私はあの結論では確固たる態度は出ていないと思います。少くとも閣議においてその方針をきめるからには、具体的にこうだからという線を出してこそ、私は国民に訴え国会に訴えて、それを持つて行くことができると思うわけです。それについてもう少し基本的な考え方総理大臣にお伺いし、さらにその具体的な、こういう考え方だから統制をはずしてもいいのであるという考え方を、どうかひとつこの機会に——われわれ農民の政党として最もいちずに国会においても努力いたておりますし、われわれの考え方について、どうか納得の行く御答弁をこの機会にお願いしたいのでおります。
  203. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。食糧政策基本方針は、増産による自給度の向上か、あるいは輸入食糧に依存するかということでありますが、これは総理大臣並びに私が本会議場において、その他の委員会において明確にお答えいたしておるところでありまして、これは増産に基く自給度を高めるということが、一番の基本方策であります。しかし当分の間この増産に基く自給度を高めるにしても限度があり、人口と食糧の関係からいたしまして、当分輸入にも依存しなければならないという関係で、第二次的には輸入の円滑なる促進ということを考えておる次第であります。  次に統制撤廃に関する具体的構想を述べよということでございまするが、これもすでに本会議における小平委員その他各議員の質問に答えまして、構想はすでに申し上げましたが、その構想に基く具体的な諸條件の検討を今続けておるのであります。いずれ成案ができました場合におきましては、提案の上、御審議を願いたいと思います。
  204. 小坂善太郎

    小坂委員長 石野久男君。
  205. 石野久男

    ○石野委員 総理大臣にお尋ねします。われわれは今回締結された講和条約及び安保條約に対しては、日本の独立と平和のために、いろいろな観点から、これはその平和の確立にはならないという考え方で反対をしました。私たちの平和に対する希望は、これは何といつて世界の平和であり、アジアの平和でなければならぬと、こういうふうに考えて来ていたのであります。吉田総理は今回の講和條約の締結によつて日本の独立が確保される、こういうような所信で来ておるわけでございますが、先ほど同僚勝間田委員質問に対しまして、アジアにおける、特に中共、ソ連等に対する考え方について、それは国の全体の利益の観点からして、たとい貿易の上でいい條件があつても、思うように行かないだろうというような御答弁でございました。私はこの点について、いま一度総理にお尋ねしたいのでございますが、私どもとしては、日本の将来の平和——特に経済的な観点からいたしますると、どうしてもお隣の新中国との間に貿易を結んで行かなければ、日本の平和というものが確保できない、経済の自立化というものが確係できないという考え方を持つておりますけれども総理はどういうふうなお考えであるか、お尋ねいたします。
  206. 吉田茂

    吉田国務大臣 貿易はけつこうでありますが、その基本條件である講和関係ができておらなければ、希望はしますけれども、貿易もできないという結論に到達せざるを得ないのであります。
  207. 石野久男

    ○石野委員 そういう観点で、日本経済自立化がはたして達せられるかどうかということについて、非常に疑問を持つのであります。この点について、いま一度総理所見を承りたい。
  208. 周東英雄

    周東国務大臣 経済の自立に関しましては、ソ連、中共の貿易というものがなくとも、それにかわる地域における貿易の推進に努めておるのであります。従つて、ただちにソ連、中共の貿易がなければ、経済の自立ができないということに、私どもは結論づけておりません。
  209. 石野久男

    ○石野委員 これは非常に国民にとつては重大な問題であると思います。時間の関係があるので、それはまた他日論ずることにしまして、今回の講和條約に伴つて安保條約がつくられた。それに伴う行政協定が今進められているはずでありますが、この行政協定に伴つてわが国の受ける国の予算的な負担というものは、どの程度になるというふうにお考えになつておるか、またそれをどの程度まで受けられるという所存で総理はこの安保條約に調印をして来たか、当時の総理の心境、考え方を承りたいと思います。
  210. 周東英雄

    周東国務大臣 安保條約による負担がどうなるか、受けられるかどうかということであります。そのことは私は逆のことではないかと思います。日本講和條約後における空白を埋めるために必要であつて、この安保條約を結んでおるのでありますが、しかしながら安保條約のみならず、賠償その他わが国に課せられるべき負担については、條約の締結に基いて今日わが国の可能な限度においてすべての賠償をするわけであります。一足飛びに不可能なことをすぐやるわけではありませんで、その点はそういう財政と見合つてすべてのことをして行く考えであります。
  211. 石野久男

    ○石野委員 総理大臣は去る九月の八日に、サンフランシスコで安保條約について国を代表してこの條約に調印をしております。そのときアチソン氏との間に文書の交換をしておる。その交換文書の中に、アチソン氏の要望にこたえて、これは全部読むと時間をとりますが、日本の施設及び役務使用に伴う費用が、現在通りにまたは日本国と当該国際連合加盟国との間で相互に合意される通りに負担されることを確認する光栄を有します。こういうように言つておられる。その場合総理は国を代表してみずから一応のそこに考え方を持つておられたものと存ずるのでございます。この日本の施設及び役務使用に伴う経費というものが、日本にどれだけの負担になり、そうしてまたそれが役務提供によつて、どれだけの收入となつて日本の予算の上に、国家財政の上に影響を持つて来るかということ、これはわれわれにとつて非常に重大な問題であります。総理はその当時どういうような考え方でこの條約に調印され、またこういう文書交換をなさつたか。総理のその当時の所信を承りたい。
  212. 周東英雄

    周東国務大臣 これは総理のその当時の所見を私どもは閣議で承つております。当然に今後における安保條約行政協定の内容に及んでそれがきまることであります。
  213. 石野久男

    ○石野委員 これはただいま安本長官からお話がありましたが、なお重ねてお尋ねいたしたいのでございますが、この問題は非常に日本の将来の特にこの予算委員会において予算を審議する上に大きな問題だと思うのでございます。ことにこの経費が賠償の問題とはどういうふうな関係を持つているかというふうなことについて総理の御所見を承りたい。
  214. 周東英雄

    周東国務大臣 これらの経費は先ほど申しましたように、賠償、安保條約に基く日米間の負担の問題その他すべて新しき負担となるべき行為については、常にわが国経済の可能な限度においてきめるということであります。それはすべての生産の向上、その他国民所得の増強というようなことを考えつつ常にきめられるのであつて、まだ確定しておりません。今後の問題になります。
  215. 石野久男

    ○石野委員 いま一度お尋ねしますが、このアチソン氏との交換文書に盛られておるわが国が負担すべきことを確認した総理気持というものは、非常に條約の効果の上に影響があると存じまするので、私はいま一度重ねて聞きたいのでございますが、将来の問題ではなくして、現にこれはすでに発生しつつある問題である。すでに進駐軍ではない、駐留軍としての軍隊がおることは政府承知のはずであります。従つてこれらの問題に対する経費分担の問題がすでに発生しているものであろうと私は存ずる。従つてこの問題の分担や、今後日本賠償を支拂うについてどういう関係があるかということは、はつきりしておくべき問題であろうと思うのであります。また総理はそのことについては、当然十分の考慮を拂つた上、この文書の交換をなさつておると思いまするので、総理所見をいま一度承りたい。
  216. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいますでに駐留軍についての経費を持つておるじやないかということでありますが、これは従来の終戰処理費の関係においてであります。條約のごとき、新しき安保條約に基く負担の問題は駐留軍ができてからの問題であります。これははつきり区別をしてお考えを願いたいと思います。しこうして今後の安保條約に基く負担の問題については、先ほど申しましたように、合意によつて今後きめられるのであつて、合意は一方的に押しつけられるものではないのであります。十分わが国経済状態を勘案してきめられるべきものと考えております。
  217. 小坂善太郎

    小坂委員長 石野君、大体結論を急いでください。
  218. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねいたします。総理はしばしば軍備の問題について、日本経済的な力がついたならば軍備をするということを言つておられる。われわれはこの軍備の問題については、経済力があるなしにかかわらず、もう戰争というものはいやだ。ことに太平洋戰争におけるあの悲惨な状態を再び繰返したくないという、そういう考え方でいるのであり、また八千万の国民もすべてそうであることを信じております。だからこそ吉田総理はサンフランシスコにおいて演説をした際にも、世界のどこにも、将来の世代の人々を戰争の惨害から救うために全力を盡そうとする決意が日本以上に強いものはないのであるという、こういうはつきりした所信の表明をされたものと思うのでございます。しかもわれわれは今日なお原子爆彈の被害があちらこちらに出ておることを知らなければいけない。私はここに小冊子を持つておる。「原爆の子」というこの中に、こういうことが小学校の子供の作文としてつづられておる。「半年前(昭和二十六年一月)に、十になる女の子が急に原子病にかかつて、頭のかみの毛がすつかりぬけて、ぼうずあたまになつてしまい、日赤の先生がひつ死になつて手当てをしましたが、血をはいて二十日ほどで、とうとう死んでしまいました。戰争がすんでからもう六年目だというのに、まだこうして、」云々こういうように書いてあるのであります。それからまた「広島県安芸郡のある村の青年が話しに来た。聞けばこの青年の父は当時広島にいたが、その後元気に田畑で働いていた。それが今年の七月中旬になつて原因不明で寢込んでしまい、医師の診察を乞うたところ、白血球が極度に減少して、原子爆彈症の症状を呈している」云々ということが言われておる。われわれはこの原子爆彈の被害を受けた日本人なればこそ、世界に対して平和を強く叫ぶことができる資格を持つておるのだ、こういうふうに考えておる。しかるに今次補正予算に組まれておるところの予算の内容を見ると、むしろわれわれは戰争の脅威をそこに感ずるような内容が盛られておると感ずるのでございます。しかもその反面においては、原子爆彈の影響を研究する費用が相当多額に削られているという実体を見るのであります。私はここに総理にはつきりお尋ねしたいのでございますが、総理は今回の予算の編成あるいは今後の日本の国政の運営にあたつて、戰争というものに対してどういう考えを持つておるか、特に国家に力ができたならば、再軍備をするのだという所信、その国家に力ができたというときはどういうようなことを言うのか、総理のはつきりした所信を承つておきたいと思います。
  219. 吉田茂

    吉田国務大臣 再軍備考えておりません。
  220. 小坂善太郎

    小坂委員長 小林進君。
  221. 小林進

    小林(進)委員 では総理大臣に御質問いたします。  賠償の問題についてお伺いいたしたいのでありますが、これはしばしば繰返されておりまするので、大体了承したものとお考えになつておるかもしれませんが、私どもまだ不明の点が多いので、この点ひとつ納得の行くように御説明願いたいと思うのであります。このたびの條約の規定によりますれば、一般の連合国は在外財産の処分によつて満足をされる、あるいはまた特殊な侵害を受けた連合国は、これはまた特殊な役務賠償によつて満足せられる、捕虜虐待は今度は中立国や枢軸国の日本財産の処分で満足される、全世界におけるわが国の財産が、それぞれの方法で全部取上げられるのでありまするが、さてその具体的な問題に入りますと、いわば十四條の(a)の1の問題でありますが、特殊な連合国はなるべくひとつ日本から役務賠償をとりたいという気持でありましようし、また政府といたしましてはなるべく拂いたくない、いわゆる正当な要求は拂うが、不当な要求は応ぜられない、あるいは條約に基いてこれを支拂うということが説明されておりますが、なるべく最小限度にとどめたいという御意向であろうと私は推察するのであります。そういう観点に立ちまして十四條のこの賠償の規定でありますが、それによりますと、いわば役務賠償といわれるものに、生産加工によるところの方式と、それから沈船の引揚げによるところの方式と、その他の方法、三つの方法でわれわれが役務賠償をすることになつておるのでありますが、その條件として、他の連合国に追加の負担をかけてはならない、それから原材料は当該連合国が供給しなければならない、それから外国為替上の負担を日本に課してはならないという三つの條件が付せられておるようであります。これがわれわれにとりましては、救いの神様と申しますか、條件になるわけでありますが、私はこの外国為替上の負担を日本に課せないというこの條件、但書がどの程度に一体活用せられるのかということを実は第一問でお伺いしたいのであります。この外国為替上の負担を日本に課してはならないという解釈を——原材料だけを連合国より供給されましても、これを製品にするためには電気もいるし、動力もいります。また油も必要とするのであります。こうした電力や動力や油などというものは、これはみないわゆる外貨獲得に非常に影響して来るものであります。いわゆる外貨の負担に非常に影響を及ぼして来るのであります。労力の問題もこれもまた考えようによりましては、これをいわば製品加工の賠償の方に向けないで、ほかの外貨獲得の方に労力を注入すれば、さらにわが国は貿易を進展し、外貨を獲得することができるという立論も成り立つわけでありまして、この外国為替上の負担を日本に課せない程度で、生産加工の賠償をするということは、一体どういうことなのですか。原材料だけは日本にいわゆる外国為替の負担をかけないで、関係国から持つて来る。それ以外の間接的ないわば副材料、私は副原材料と申し上げますが、副原材料は、やはり外国為替に影響があろうとも、日本に負担せしめるというのか。副原材料までも、ことごとく外国為替に影響するものは、これは日本に責任をとらせないという、寛大なる解釈をもつて臨んでいいのか。この点をひとつ私はお伺いいたしたいと思うのであります。
  222. 周東英雄

    周東国務大臣 なるほどあの條約の項目から見ますと、細目について疑義のある点はあります。お話のように、大体役務賠償そのものでありましても、あるいは技術を持つてつて、現地で原材料を加工してただちに拂う場合は、この條約で簡單に行くと思います。しかしながら、日本原材料を使つてやるというような場合に、いろいろ御指摘のような場合が想像されますが、いずれにいたしましても、條約の精神に基いて、具体的な場合々々にどういうぐあいにやつて行くかということは、今後相談されるべき問題であります。幸いにそういう條約の精神をくんで、私どもはできるだけ日本の存立可能な範囲内で、しかも誠意を持つて拂うということに努力したい、こういうことであります。
  223. 小林進

    小林(進)委員 私は、願わくは政府当局が今後の交渉において、そうした副材料や、間接材料の面を、ことごとく外国為替に影響を及ぼすものは、日本が負担しないという一つの信念を持つて賠償の任に当つていただきたいという希望を述べまして、次に移りたいと思うのであります。  同じく十四條の沈船の引揚げに関する方式の問題でありまするが、これも私どものずさんな調査ではありまするが、現在フイリピンに三百四十七隻が沈没しており、百五十五万総トン、インドネシア近海に百二十九隻、三十八万総トンが沈んでいる。これに対しまして、これを日本が全部役務賠償の形で引揚げるといたしますならば、日本の引揚げ能力は一年間で三十万総トンしかない。フルに動かしても六年間かかりますが、まず順調な作業で行けば、十年も十五年も二十年も、この沈船引揚げの賠償をやつていらくちやならないという勘定が、船の沈んでいる数からも出て来るのであります。なおこれを引揚げるだけにも、今申し上げるようにロープとか、油とか、あるいは輸送費とかいうような、外国為替の負担に関するような費用もあつて相当影響して参りますので、この沈船引揚げの問題についても、政府は一体どんな構想をお持ちになつておりますか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  224. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 先刻の第一の御質問にまずお答えいたします。原材料の供給を受けます場合に、それを日本で加工いたしますために、副材料を必要とする場合がございます。御指摘通りでございます。一例をとりますと、ある国から鉄鉱を日本に持つて来て、これを鉄製品としてその国に渡す場合を考えます。そうしますと、日本は製鉄のために粘結炭を外国から購入しなければいけません。これは為替の負担を伴います。ですからそういう場合には、原材料を供給する国が、外国為替を必要とする副材料も提供しなければならないという趣旨が、條約の文言に明らかにされておりますので、御指摘のような懸念は防がれておるのでございます。  第二の沈船引揚げの問題については、御指摘のように十四條の規定によりまして、賠償交渉に入る可能性のある国の海域に、船舶が沈んでいることは事実でございます。それを引揚げてやる場合に、御指摘通り、外貨の負担を必要とするような場合には、むろんその面は、要請国の方で負担すべきものであることは、十四條の賠償條項の趣旨でございます。この十四條による賠償を実施するために、外国為替上の負担を日本に課さないということは、同條に含まれた一つのわくでございます。その点は御安心を願いたいと思います。なお御指摘のように多数の船舶が沈んでおりますけれども、沈んでおる場所の状況などによりまして、全部が全部引揚げ可能だとは考えません。また引揚げて得た鉄その他の価値に比べて、費用がかかり過ぎるような場合には、問題になりませんので、合理的に沈船を引揚げることによりまして、相手国も利益を受け、日本も不当な負担をこうむらない範囲内でやるために、具体的交渉の場合に話合いをすることになると存じます。
  225. 小林進

    小林(進)委員 答弁の時間はあまり長くしないようにしていただくよう、あらかじめ御了承願つておきます。(笑声)今の沈船の問題でありますが、私は浅学にしてあまり国際法は知りませんが、何か近海と公海との区別がありまして、そこに沈みました船にも、私は日本の船も相当多量にあると思うのでありますが、これが今の沈船引揚げと、その船の所属原権といいますか、そういうものについてひとつ御見解をお示し願いたいと思うのであります。
  226. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 たいへんむずかしい問題でございます。大体領海内に沈んでおる船につきましては、日本の所有権を主張することは、今日の場合むずかしかろうと考えております。海域領有国の財産といいますか、そういう国の管轄のもとにあるものというふうに見るべきであろうかと考えております。従来一、二の例によりますと、領海所有国の許可を得て引揚げ、それを買いとる形式をとつておるように記憶します。公海に沈没しているものにつきましては、日本の所有権と主張すればともかくとして、常識的には無主物のごときものと考えればよろしかろうかと思います。非常にむずかしい問題でありますので、確信はございません。
  227. 小林進

    小林(進)委員 次に私は、同じく第十四條の在外資産の賠償の問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、連合国は、次に掲げるすべての財産、権利及び利益を差押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を持つとあるこの規定は、むしろ私は考えようによりましたら、わが日本にとりまして一番苛酷な條約の條文ではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。ヴエルサイエ條約、イタリア條約にも、若干これに似たことがあるふうに聞いておりますけれども日本ほどこれほど広汎に、これほど残酷にやられた規定はない、こう私は思うのでありまして、これは財産を処分する権利を持つというのでありますから、連合国が情をもつてその権利を行使して来なければ、非常に日本も助かるのでありますけれども、徹底的にこの権利を行使されても、われわれはもはや異議を申し立てても、交渉の余地もないことになるのでありまするが、まずこの問題について私が第一にお聞きいたしたいのは、この連合国内における、いわば処分の対象となる日本国並びに日本人の財産が、一体総額どれくらいと推定せられるか。終戰前の、何か日銀の調査によりますれば、大体二十兆億というようなことを聞いております。これも私は正確な自信があるわけじやありませんが、これは時価に見積れば莫大なものになる。これだけでも、ひとつ政府が腰をすえてかかつてくれれば、貿易などとおつしやるこの貿易も、原材料の十数倍、この財産を日本に持つて来るだけでも、十数倍に上るのじやないか。たちまちにして富裕なる日本を建設することができるのではないかと思うのでありまするが、これを全部取上げる。私はどうもふに落ちない。特にこの中には、終戰直前ちよつと戰争の仲間入りをしただけで、あの莫大な財産を持ち去つたソビエト、このソビエトのごときは、今私が申し上げる連合国の中に一体入るか入らぬか。これは平和條約の條文によれば、調印をしない限りは、連合国とは言い得ないはずであります。しからば、将来この持ち去つた財産に対する請求権が、日本にあるのかどうか。この財産をどうすべきかという問題が一つ。  それから第二番目は、私はおそらく連合国にある財産といいますれば、ラテン・アメリカ、あるいはペルーだとか、ブラジル、あるいはアルゼンチン、このような国々は、これは日本に宣戰の布告をした連合国ではございましようけれども、国交断絶等に基く若干の間接的な損害はあつたかもしれませんが、戰争それ自体に対する被害というものは、ほとんど受けていない。ところがわれわれの、この日本国並びに日本国人の海外移民に基いた、血と涙と汗の財産が一番多いのは、このラテン・アメリカの国々であります。これらの地域において得た数十年働き抜いたこのわれわれの在外の人達の財産を取り上げる……。(「取上げないよ」「例外に書いてある」「連合国じやない」と呼び、その他発言する者あり)連合国じやないか。こういうちやりが入つておりますけれども、これは質問時間に入りませんよ。こういう問題は一体いかように政府は処分される意向であるか。これらに対する政府の確固たる信念を、首相に承りたいと思うのであります。
  228. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 かわつて答弁申し上げます。  第一点は、終戰後スキヤツプと日本政府と協同いたしまして、調査をやつたことがございます。その調査の結果は、国有財産と会社財産につきましては、ある程度自信のある推定ができております。しかし一番関心の的になつております個人財産につきましては、何分範囲が広いのと、資料の入手が困難でありますので、自信のある推定ができない状態でございます。従つて終戰後行われました調査の結果は、自信が持てないものでございますので、今日まで発表になつておりません。  第二点は、ソ連の領域内にある日本人の財産の処分の問題でございましたが、むろん御説の通り、ソ連はこの條約に参加いたしておりませんから、第十四條によつて日本の財産を留置清算する権能は持たないわけでございます。将来どうなるかは、一にかかつて日ソの間に平和條約二十六條の規定によりまして、この條約と同じ趣旨の條約ができるかできないかにかかりますし、三年後は、日ソ間における国交回復が、いかなる方途によつて行われるかにかかることでございます。今日確たる御返事はいたしかねます。  第三の、中南米諸国における日本財産の処理の問題でございます。この点につきましては、日本政府といたしましては、條約交渉中、御指摘のような、戰争によつて実害をこうむらなかつた連合国にある日本財産が、留置清算の目的とならないように、情を盡して要請いたした次第でございます。しかしそういうことを條約文に書くことにすれば、一部の強硬なる賠償要請諸国の方から、そういう財産があるから、この財産を賠償資源に充当すべしとの提案が出るに違いないから、これは條約に規定しないがよろしいということで、現在の條約の規定のようになつた次第でございます。條約によれば、連合国は留置清算をする権利を取得するだけでございますので、国交回復後におきましては、外交手段によるなど、実害のない国におきます日本人財産が、留置清算されないように努力いたす道はあると思います。サンフランシスコ会議におきましても、サルヴアドルの代表は自分らの国は、自国にある日本の財産を清算する意思はないと声明したのであります。また平和條約の規定によりましても、五つの例外の場合がございますので、その例外規定によりまして、中南米における邦人の財産は相当救われるものと考えております。
  229. 小坂善太郎

    小坂委員長 これにて総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にとどめまして、明二日午前十時より委員会を開会して、一般質疑を継続することといたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会