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1951-10-27 第12回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十七日(土曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 苫米地英俊君 理事 西村 久之君    理事 川島 金次君 理事 風早八十二君       天野 公義君    小淵 光平君       角田 幸吉君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    坂田 道太君       庄司 一郎君    高橋  等君       中村  清君    中村 幸八君       本間 俊一君    南  好雄君       宮幡  靖君    井出一太郎君       今井  耕君    平川 篤雄君       戸叶 里子君    水谷長三郎君       横田甚太郎君    小平  忠君       石野 久男君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         運 輸 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         宮内庁次長   宇佐美 毅君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君         中小企業庁長官 小笠 公韶君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君  委員外出席者         日本開発銀行理         事       中村 建城君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十月二十七日  委員玉置實君辞任につき、その補欠として高橋  等君が議長の指名で委員に選任された。     —————————————  本日の会議に付した件  昭和二十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十六年度政府関係機関予算補正(機第2  号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  昨日に引続きまして質疑を継続いたします。宮幡靖君。
  3. 宮幡靖

    宮幡委員 昨日財政金融政策の基本的な問題について大蔵大臣質疑中でありまして、本日もこれに継続いたしましてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まだ大蔵大臣がお見えになりません関係で、御出席通産大臣を煩わしまして、むしろ基本的な財政金融政策とは切り離したような別個の問題——もちろん経済でありますからつながりはあることと思いますけれども、なるべく切り離した問題についてお尋ねをいたし、大蔵大臣の御出席を待つて、相互関連いたしまする一般的な通商経済政策等について御所見を伺いたいと思います。  昨年来企業資本蓄積と相まちまして産業合理化が強く提唱されておる。これはあえて昨年といわず、おそらく通産省発足以来、この面に日本自立経済のために御努力を続けられたことと存じます。前任大臣もそれぞれこの方面について適切な施策を講ぜられたことと存じますが、最近ことに取上げられました問題は、産業合理化促進いたします企業合理化促進法とでも申しますものが構想されておるように承つておりますが、その内容につきまして通商産業大臣の御意見を加えて、ただいままでの経過お話いただきたいと思うのであります。
  4. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 企業合理化は御説の通り、今わが国の産業界にとつて、最も重要な問題でありまして、私ども非常にこれを重視しております。いろいろな面がありますが、私が最も痛感しておりますのは、日本設備が非常に老朽化しておる、これを何とか改善しなければいけない。現在輸出貿易の方でも日本のコストが高い、そうして入札でも競争に負けて行くというような事例がたくさんあります。それからもう一つその問題で痛感しますのは、今まではそういう面で日本の方が進んでおると思つておりました。弱小国という言葉は不適当でありますが、日本の方が機械設備などが大分近代化され、進んでおると思つてつたのに、弱小国が十年ばかりの間にぼつぼつ近代化されて、そういう国ともある面では競争がむずかしくなつておるというのが現状であります。これについてそれではどうしたらよいか。第一に先進国から新しい機械を買い入れまして近代化して行く、それを何か援助して行かなければいかぬと思うのです。現在の事態では補助金を出すということも弊害がありますので、一番考えられますのは、税金の点で考慮して行くということが一番必要だと思うのです。これはほかの国でもやつております。アメリカのごときも、今度の軍の拡充に要する新しい施設に対しては、思い切つてそういう方法をとつております。そういうものに対します減税——実質減税でありますが、減税ということも困難でありますので、そういう施設には思い切つて償却年限を短縮する、二、三年のうちにそういう施設は大部分のものを償却して行く。それが自然に減税になるというような方法を講じて行くことが一番適切だと思うのです。もう一つ私どもが考えたのは、もう一つ進んで近代化に要する資金を、まだ機械近代化する前に、そういう資金に充てられるものに対して何か減税方法を講じたいと考えておつたのですが、それはなかなか困難でありますので、とりあえず近代化した資本に対して、思い切つて償却をする、それに重点を置く法案を考えております。これは遠からず提出をいたしまして、御審議を願うことになるだろうと考えております。
  5. 宮幡靖

    宮幡委員 ちようど大蔵大臣も見えましたので、ただいま切り離して産業合理化の問題を通産大臣質問中でありましたが、これもやはり大蔵大臣質問に関連し、お伺いして、あとの足りないところを補足させていただきます。昨日の継続としまして大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。昨日の大蔵大臣の御説明によりまして独立後の日本におきましても、健全財政を堅持する、インフレは徹底的に抑圧して行くのだ、国民負担の調整もいたしたい。国際収支改善のためには輸出促進して参るが、輸出インフレにもならないように、あわせて輸入促進もいたしたい。国内的の物価体系としては、おおむね低物価政策をとるが、必ずしも物価の引下げのみに重点を置かず、物価がより以上上昇しないという、一つの安全弁的な措置を講じて参りたい。従つて資金面につきましても、必要なものはこれをどんどん供給する方針をとりたい、不要不急のものは嚴にこれを抑制して参りたい等等大綱をお伺いいたしまして、かねてなされました財政演説に対し、さらに細目的な御説明をいただいたわけでありますが、これに関連いたしまして、さらに二、三の点についてお伺いいたしたいのであります。ちようど通商産業大臣も見えておりますので、その方面と関連する問題についてお尋ねをいたすのであります。  今回の予算執行につきましては、すでにたびたび繰返されますように、貿易計画の達成ということが、予算執行を意義あらしめ、また有効ならしめる一つの要件であろうと思います。従いまして輸出インフレになりますことも、これを押えて行くという面から申せば、やはり先ほどお話のありましたように、輸入促進し、生産の拡大をいたしまして、そうして物価もさほど上らず、通貨がたとい年末に五千二、三百億円になりましても、国内は悪性のインフレなどという傾向は毛頭ない、よい意味のインフレという経済状態になる。こういうお話に関連しましてポンド増大のことについては、私はあえてお尋ねをいたさなかつたところ、大蔵大臣から進んで手持ちポンド増大羊毛等輸入時期になつて、これが順次輸入の面に転換されるから、さほど心配する向きはない、こういう積極的なお話がありましたが、最近のポンド圏貿易状況を見ますと、現在すでに四千万ポンド以上の手持ち外貨がある状況にあります。しかもポンド圏輸入というものはすこぶる振つておりません。これに対しましていかような御施策考えておるか。一端としましては羊毛輸入等、こういうお言葉をもちまして大蔵大臣から御説明がありましたが、これらについて通商産業大臣並びに大蔵大臣としてポンド手持高を積極的に——ごく簡單言葉で申せば、減らしまして物にかえるという手段につきまして、御方策を持つておられるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 四千万ポンド程度のものは日本状態からいつて、そう特に心配するほどじやないのであります。しかし輸出インフレ防止のためにも輸入促進をはからなければなりませんので、ポンド圏から入るようなもので日本輸入し得るものを探しまして、極力増進に努めたいと思います。インド方面鉄鉱石、その他のもの、またビルマの米、努力次第によりましてはポンドが急激に増加しないようにできると思つております。またそういたさなければならぬのであります。
  7. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 手持ちポンドがだんだんふえる傾向にあることは事実なのであります。これをほつておくわけにも行かない。その対策としては第一に今お言葉にもありましたように、ポンド区域からできるだけ原料資材を買うということであります。羊毛などは何でありますが、一番望ましいのは食糧などもドル区域のものをポンド区域にできるだけ転換して行くことを考えなくてはいけないのですが、なかなか容易ではないのです。せいぜい努力をして不都合がないように考えて行きたいと思います。また第三回でポンドでもドルでも話合いによつてどちらにでもできる区域もありますので、そういう国国に対する輸出は、できるだけドルでとることを奨励しておるのですが、世界中ドルが不足しておるので、これもなかなか困難なのであります。
  8. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの御答弁においてある程度の様子はわかるのでありますが、ポンド増大への対策として考えますことは、これは大蔵大臣の言われるように気にすることはない、経済は生きておつて自然の姿に置く方がかえつて有効に働くものであつて、あえて人為的な施策考えることの方が愚かもしれません。けれども当面いたしました日英支拂協定経過から考えますと、この問題は必ずしもそうではありません。ドルクローズの廃止、ただいま通産大臣が触れましたように、いわゆるイングランド銀行の行政振替措置というものを協定の中に設けてはあるが、寡聞ではありますが私の知り得ましたことはたつた一件であります。従いましてただ行政振替措置によつてポンド地域ドル地域との転換をはかるとの説明では、これは残念ながら国民が納得いたしません。そこでポンド増大への対策というものは、もつと通産省としましても、また大蔵省としましてもお考えをいただかなければならない。まず通産大蔵両方に関連いたします問題で言うならば、ポンド圏に対しまするところの貿易手形期間延長考慮に入れられておるか、ポンド圏からの輸入に対しますところの担保の比率は一%ないし五%でありますが、これを引下げるというような心構えを持つておるか、さらには信用状有効期限を延長していただくような御配慮があろうか、これらの点につきまして大蔵大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点は考えられないことではございませんが、今そういう手段に出なければならないほど、ポンドがあり余るという問題ではないのであります。来年の三、四月ごろになりましたら、私はそのときの情勢で考えたらいいのじやないかと思います。どうも従来から国会の議論を見ますと、非常に事柄を大きくお考えになつて、早く手を打たなければいかぬじやないかというような議論が二、三年前からあるのでございます。ポンドがえてしてふえやすいということに対するいろいろな施策考えなければなりません。しかしお話のように、ポンド地域への輸出を制限するとか、ポンド地域からの輸入を増進するという具体的措置政府がとる、とらぬという問題は、今のところではちよつと早いのじやないかと思います。もう少し時期的なずれ輸出入ずれを長い間に見て、どうしてもこれはいかぬということになりますと、これはお話のような措置考えなきやいかぬと思いますが、今のところそういう措置を特別にとるというところに行つていないのじやないかと思います。
  10. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大蔵大臣お話で、とにかく予算執行の大本山の大蔵大臣信念をお持ちになつておるのでありますので、われわれが取越苦労をいたしましてお尋ねをする必要もなかろうと思いますから、これはすなおに承つておきます。  由来自由主義経済の本体は、大蔵大臣のお説の通りであろうと思う。そこでいろいろな人為的な施策を講ずることの方が愚であると私は前提にも申し上げておいた通りでありますが、しかしながら日英協定の中には、あとから伺いまするポンド切下げの問題、あるいはフラン切下げの問題、国際的な通貨に対しまする建値の変更等の問題と相関連して参つておりますので、平常のときの事情のように、單に安閑としておられないということもまた考慮に加えなければならないと思うのであります。大体日英協定内容としまして、七千万ポンド限界に達しますと、日英合同審議会を開きまして、この対策を講ずることになつておる。もしポンドというものが、日本としまして手持ちが瞬間的でも、あるいは過渡的でも八千万ポンド、一億ポンドというふうに伸びて行きましても、何ら考えなくてほつておいてよいのだという状況が予想されますならば、あえて日英支拂協定の中におきまして七千万ポンドという限界考えられないのではなかろうか。これを考慮に入れたというところに、何となく介在いたします一抹の不安を私はぬぐうことができないのではなかろうかと考えます。ことにただいま大蔵大臣の御指摘になりました明年の三月現在のポンド圏輸出入状況をおおむね勘案いたしますると、どうも来年三月あたりには七千万ポンドという限界に達しそうなのであります。そこで日英合同審議会というものが開かれて、その対策を講ずることになると考えますが、御承知のように英国の総選挙の結果もおおむね発表されましたが、保守党の持つております今まで知り得ました通商政策に対しては——あるいはさしつかえがあつたならば速記から削つていただいてもけつこうでありますが、決して日本に対する最惠国待遇などは考えておらない。東南アジア地域における市場争奪戰などというものは、かなり熾烈になるであろうと考えます。関税方面についてもおそらく特惠関税などを設けまして市場抗争に乗り出すでございましよう。こういう心配があります以上、少し取越苦労ではありますが、もし現在七千万ポンドに達したという来年三月に予想されます状況が近づいて来て、日英合同審議会においてひとつ検討しよう——これはまだ仮定の事実でありますから、仮定の問題は考えないというようなお言葉もあろうかと思うのですが、そういう場合には、大蔵大臣としては、どういう施策をお考えになつておるか、通商産業大臣としてはいかなる対策をとろうとせられておるか、この二点について簡單けつこうでありますからお答えをいただきたいと思います。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 私が来年の三月と申しましたのは、ポンド地域からの輸入が、来年の二、三月ごろ非常に多くなります。その結果を見てから正常の状態考えられると思います。日英支拂協定の問題につきまして、外貨七千万ポンドというのは、そこまで行かないようにお互い努力しよう、そこまで行つてはいけないのだから……。そういうことで言つておるので、そこまでは行かないのじやないか。もしそこまで行きそうならば、先ほどお話になりましたような措置をとらざるを得ぬようになるのじやないか。イギリスにおきましても、そういうことの措置をとらなくてもいいように、お互いに話し合つて行こう、こういうことになつておりますので、私が先ほど答えたように、ポンドが余り過ぎていけないようになるということは防ぎ得る、また防がなければならぬと考えております。  巷間ポンド切下げの問題がありますが、イギリス保守党政策としては、下げるようなことはないだろう。またそこまでイギリス為替危機が来ていないし、またイギリス本国ポンドを下げても、インド、濠州、南阿がそれについて行くか行かないか、たいへんな疑問のあるところで、一昨年の九月のポンド切下げのときの状態とは、よほどポンド圏内の各連邦の状況が違つておりますので、私は今度の総選挙の結果から見て、ポンド切下げはなかなかやり得ないのじやないか、やらないだろうということを考えております。  次に関税問題その他につきまして、イギリス日本競争の立場にあります関係上、いろいろな手を打つと言われておりますが、われわれとしてこれは十分監視しなければならぬ問題だと考えております。
  12. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 日英支払協定でありますが、七千万ポンドあるいはそれを超過するような場合には、どうしてもこれは双方で話合いをしなければいけません。全体七千万ポンドということは、協定のうちには出ていない数字で、ただ非常にふえて来れば両方で誠意をもつて解決しようということになつております。元来あの協定をこしらえますとき、協定の交渉中に、むろんわれわれはドルクローズを希望したわけだ。熱心に希望したわけだが、どうしても入れられなかつた。私は今大蔵大臣が言われたように、ポンド切下げはないだろうと思うのです。私の耳にしている範囲では、アメリカ有力筋では、ポンド切下げはやらぬという見方が非常に有力なようです。ただポンド切下げのうわさが、日本だけじやなく海外にもあまりに飛んでおりますので、これが現在のポンド区域からの輸入に、少し悪い影響を来しておると思います。これはいろいろな手を盡して、それを防ぐということよりしようがないのですが、先刻の行政振りかえの点なども、ぼつぼつ起つております。これは一つでありますが、そういうことを奨励して行かなければいかぬと考えております。
  13. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまのお話で、大蔵大臣といたしまして、ポンド増大に対します対策一つ不動信念を持つているというようにお伺いいたしました。また通産大臣も同様にポンド切下げの国際的な悪い影響は流れているが、まあ、よもやポンド切下げもなかろうというお見通しである。まつたく御意見が一致しているようでありますので、この点は一応了承いたします。しかしながら、ポンド切下げという問題に話が及んで参つたのでありますが、これを巷間の浮説と考えることは少し軽卒であろうというような気もいたします。もちろん英国の総選挙の結果内閣がかわりまして、政策もかわるであろうと思いますが、現在の内閣というかさきの内閣というか、ゲイツケル蔵相の計算をちよつと見ますと、イランの石油の喪失のために、一年間に三億五千万ポンドを、他の地方からの石油輸入のために使わなければならない。また英国石炭飢饉のために、アメリカから二百万トンの石炭輸入しなければならない。その上アメリカとカナダヘ、借入金の利子と元金の一部として本年中に一億七千六百万ポンドを払わなければならない。英国政府は今年の秋のうちに、一九四八年に比べると、今でもすでに三四%も滅つているアメリカからの輸入を、さらに削減することとなるであろうし、アメリカに対して借入金元利拂いの延期を要求するかもしれないと、これは英国大蔵大臣の発表している言葉であります。これに対しまする英国の專門家の批評といたしましては、英国の憂慮している問題は、今までは原料不足物価騰貴であつたが、今は外国貿易じりの悪化がより以上注意されているというような観察が下されておりますので、容易にポンド切下げがないなどと考えることは、少し軽い気持に流れ過ぎるであろうと私は思うのであります。従いまして、これは想定でありますから、必ずしも御答弁をいただかなくてもよろしゆうございますが、万一ポンド切下げがあつて巷間伝えるように、二ドル八十セントからあるいは二ドル四十セント程度まで切下げがあつた場合、しかもポンドが現在のように四千万ポンド手持ちであつた場合、日本のこうむる損害の予想、並びにこれに対応いたします方策についてお考えがありましたら、大蔵大臣通産大臣からお答えをいただきたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 ボンドの切下げにつきまして、宮幡委員は非常に御心配になつておるようでありますが、先ほど申し上げた通りでありまして、私はそう近いうちにあろうとは考えません。しかし、もしあつた場合にはどうするかという問題であります。今ポンド圏への輸出が多くて輸入が少い、こういう状態ポンド切下げによりまして緩和される。これは大きい目で見れば、日本ドル不足間接的緩和剤になると思います。それから四千万ポンドつておる。そのポンド切下げなつたら損をするじやないか、こういうお話でございますが、日本ポンドに対しまして外債を六千百万ポンドつております。これの拂いが少くなつて来るのであります。こういうことも考えられますので、私はポンド切下げを、それだからといつて望むものでもありません、人のことでございますから取越苦労しないと同時に、とやかく申し上げられませんが、とにかく悪い影響ばかりという問題ではなく、私はポンド切下げよりも、その前にフランがどうかという問題が先に来るのじやないか。御承知通りドル三百五十フランが、今巷間伝えられるところでは四百四、五十フランくらいになるというようなことが伝えられております。フラン切下げの問題は日本に大した影響はありませんが、しかしこれがポンド切下げ導火線になるということは考えられる。私は仮定の問題にお答えをしたのでありまして、万が一やつたにしても、そう大して心配はいらぬと思います。
  15. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 別に私からつけ加えることもありませんが、ポンドが非常にふえますことは、これはもう切下げがあつてもなくても困ることで、対策といつても、要するにポンド区域からの輸入をふやすことが第一に考えられることであろうと私は存ずるのであります。ポンド切下げがなくても、あまりポンドがふえることは御同様に困ることであります。
  16. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま大蔵大臣からポンド切下げに対しまする、これは仮定の答えだと言われました。一昨日でありましたか、有田委員ちよつとこの問題に触れましたときには、それぞれ万全の対策を持つておるということで、何だか奥の院に宝物でもしまつてあるような気持をみなに與えました。今お伺いいたしましたら、大分大臣の御構想をお聞かせ願えましたが、そうなれば国民が安心をする。よい影響と悪い影響と両面ありますが、悪い影響を受けると想定されますことは、これは産業人といわず、経済人といわず、大いに心配いたしまして、これをめぐりましていろいろ問題にしておる。あとからこれもお伺いいたしますが、日本為替レートを堅持するという財政演説でありますが、為替レートが堅持できないであろう、五百十二円説、四百円説、四百二十円説等、乱れ飛ぶというほどではありませんが、かなり有力筋からこれらと関連いたしましてまあ一つの説が流れておることは、これはいなめない事実なのでありますので、そういう奥の院お話まで伺えれば私もまずもつてポンド切下げはない、お説のように金フラン危機というようなことの方が適切なお考えである、かように存ずるのであります。  少しこまかい問題でありますが、話題がこれに触れましたので、通商産業大臣大蔵大臣統制の問題で、これは私の質問しようと思う主題ではありませんが、ちよつとお伺いいたしておきます。財政演説においても、直接統制は極力これを避けると強調せられておる。おそらく現内閣のこれが不動方針であり、信念であろうと思うのでありますが、しかしその直接統制は極力避けるのだという言葉の裏には、どうも必要があれば間接統制はやらなければならないではないか、こういうような言葉の響きがある。私が少し神経衰弱に陷つておりまして、さようなふうに聞くという方がよくないかもしれませんが、どうもそういうような考え方がされて参り、しかも現在におきまして日本に対しまして、いろいろの通商貿易及び財政金融政策等につきままして、それぞれの適切なアドヴアイスをいただく方面におきましても、どうもアメリカ式の間接統制を行つたらどうだ、それがよいではないかということなど、これがうそかほんとうかは、私はその担当官に現にお目にかかつて話はしておりませんから存じませんが、日本経済団体においては、日本経済の都、大阪あたりを中心にいたしまして、毎日かような問題を検討しておるのでありますが、直接統制は極力避ける、しかし必要があれば間接統制をやるのだという私の感じが適切であるならば、これらに対しまして民間の動きと相合せまして、大蔵大臣並びに通商産業大臣の御意見を承りたいと思うのであります。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 さしむき私の所管でないのでお答えすることがいかがと思いますが、財政演説で申し上げましたように、直接統制は極力避けたい考えで進んでおります。間接統制という言葉がなかなか私了解しにくいのでありますが、これは世界的な稀少物資、こういう問題におきましては、今後日米経済協定の一環をなしまする国際的割当物資について、統制というふうなことが起り得る可能性なきにしもあらずであります。これは今でもニツケル等につきましては特殊な価格を設定いたしまして、できるだけ不要不急方面に流れないような行政的指導をいたしております。これが国際割当物資として日本に来ました場合におきましては、考えなければならぬような場合が、そういう特定の品目について起るかもわかりません。これはわれわれとして考えておかなければなりませんが、経済統制といつても、広い意味の直接統制はわれわれは考えていないのであります。
  18. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 統制撤廃ということは、自由党が掲げておる方針一つでありますし、自由党内閣方針であると思うのでありますが、党人でない私がこの問題に触れることは非常に苦しいので差控えさしていただきたいと思います。ただ今の統制という名前は、私ども民間の経済人として非常に懲りて来たことですが、非常に欠乏した物資を何か適当に指導して行くということは、やり方さえよければそう悪いことでないと私は考えております。以前の統制のやり方は、われわれ民間におつて非常に遺憾であつた点であります。
  19. 宮幡靖

    宮幡委員 通産大臣お話は、自由党の政策は批判の限りでないというふうに受取れましたが、私の質問はそうではなく、もつと通産大臣のビジネスとして伺いたかつた。ポリシイの問題としましては別の機会にお伺いすることにいたします。  それではもつと具体的に私はお伺いいたします。たとえば先ほどおつしやるように、ポンドのふえて行くようなことは、どつちにしても困ることだという軽い御説明があつたわけでありますが、ではポンド増大を防ぐ手といたしまして、ポンド圏に対する鉄鋼とか非鉄金属などの重要物資の輸出を停止する、これは具体的問題でありますが、こういうお考えをお持ちになつておるか、あるいはポンド圏から買付の行われまする羊毛でありますとか、皮革でありますとか小麦、こういうものは今割当品目になつているようでありますが、これは自動承認制に切りかえて対策を講ずる、こういう具体的問題についてお考えなつたことがありますか。
  20. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 自動承認制の品目をふやすというようなことは考えて行くつもりであります。鉄の問題でありましたが、ポンドがふえることは困るが、ポンドでも採算によつて輸出する必要があるのであります。現在まだ鉄についてそういう考えは私は持つておりません。スターリングの日英支拂協定というものが、これでやつてみていろいろな面で努力して、うまくやらなくちやいけないのですがこれはどうしても今の協定ではいけないということになれば、これはまた考えてかえて行かなければならぬ。全体の日英協定もそういう余地が存してあるわけなのであります。三箇月前でしたかの予告で中止することもできるようになつておるわけです。
  21. 宮幡靖

    宮幡委員 通産大臣の御答弁は、私のお尋ねいたしたことと必ずしもぴつたり合つていないのでありますが、こういう方に質問が割れて参りますと、どうもこまかい質問になりまして、総括的な質問の域を脱しますから、またこれは他日に譲りたいと思います。  しかし、この際一応両経済大臣がおいでになるところでお伺いいたしておきたいのは、この中共貿易のウエートという問題で、日本貿易振興のためには、中共貿易重点的に行わなければならないという、これは一部の説かもしれませんが、かなりこれに信を置いている方々もあるのであります。これに対しまして現在の貿易態勢から行きますと、ただちに中共貿易重点を置けないことも、これはもうはつきりしておるわけです。しかしながら香港、厦門等を経由いたしますところの貿易というものがある、その香港や厦門の貿易状況を見ますと、かつて戰争中に、あるいは満洲事変の直後に、あるいは支那事変の当時におきまして北支あたりにおいて日本人が大いに進出いたしまして、連銀雰、儲備券等の経済力に信頼を持つて日本の物資をもつて売買差益を得てわれ富めりと考えておりました。そういう貿易というものは現在のウエイトからはずれるわけであります。しかしながら、こういう方策につきましては、いわゆる中国人特有の機能を持つており、またこれは英仏等の外国銀行等の力も必ず加わりまして香港との中継貿易によつて——具体的に申しますが、具体的というより簡單に申しますが、日本から安い品物を買つて、中継貿易によつて差額をかせぐというような懸念が相当あるわけです。今のような香港、厦門の貿易というようなものを考えますと、そういう面が相当に考えられる。しかも香港ドルは今後日英支拂協定が廃止されまして、これはポンド圏に入つたわけです。より以上のポンド増大と合せますと、これらも心配一つの種であります。それは通産省あるいは外務省の所管かもしれません。あるいは大蔵大臣も協議に参加して御決定になることかもしれませんが、香港なり厦門等に通商事務所等を設けまして、その土地の状況や外国為替銀行の活動、日本の商人あるいは中国人の活動等をしさいに調査いたしまして、ポンド増大等、あらゆる意味におきまするポンド輸出入の問題を検討いたしますようにすることが適切だと考えております。これに対しまする御意見——もし大蔵大臣の所管でなければ大蔵大臣の御答弁はいりません。通産大臣からお答えをいただきたいと思います。
  22. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 中共貿易が現在変態的な貿易で、厦門とか香港を通すことになつているために中間で搾取されておる。これは非常に遺憾に存ずるのであります。ところが中日貿易は非常にデリケートでありまして、ようやくせんだつて繊維品の許可制を日本政府にまかされたわけでございます。それもなかなかデリケートなものでよく注意してやらぬと、またそれが取消されるおそれが非常にありますので、これを通産省で許可するのにも非常にデリケートに扱い、緊密な連絡を関係方面ととつておりますが、それが自然伸びるのに支障になつておりますけれども、これも許可するのになかなかゆだんがならないのであります。タイヤの材料になりますような繊維品は禁ぜられているのですが、どうもああいう厚い繊維品が希望される。よほどこれは嚴重にやらぬと、そういうものが出るおそれがある。中共貿易というものは、現在は政治的といいますか、こういうことで非常に縮小を受けておりますけれども、中国というようなああいう大消費地と日本のような大生産地とが隣合せて国を接しておりますのですから、これが政治的の意味でいつまでもこの間の貿易が阻害されることなく、必ずスムーズに貿易ができるようなときが来るのだ——それは何年先になるか問題でありますが、私はそう確信しております。
  23. 宮幡靖

    宮幡委員 この問題は順次解いて行きますと、際限のない問題であります。しかし時間の関係もありますので、問題を元に返しまして大蔵大臣にお伺いいたします。  昨日通貨の発行の問題と日銀の信用放出の問題とにつきましてお伺いいたしました乙種ユーザンスの廃止が日銀の貸出しに転換した面が一千百億円くらいある、従つて日銀の貸出しが現在二千四百四十億程度に伸びても、決して異常なる信用膨張ではない、こういうお話が出まして、この点につきましては私もまつたく同感であります。しかしながら昨日もくどく申しましたように、ある程度の低物価政策をとるためには、金融の引締め——これは大蔵大臣は非常に含みのある言葉で、必要な金はどんどん出す、不要不急のものはどんどん引締めるのだと言いますが、この不要不急のものが民間ではきわめて必要欠くべからざるものであるかもしれません。あるいはそういうやり方をすると、それが思惑資金であり、少くとも今はやみ市場はないでしようけれども、灰色市場を構成することになると思いますので、そういう突き進んだ議論まではいたしませんけれども、そういう方向から考えると、やはり金融に対しまして何らかの監督権の強化というようなことがなくては、池田財政の徹底した行政が行えないということがまずうかがい知られるわけであります。これに対しましては、前国会、前々国会等におきましても、機会あるごとに大蔵大臣にお願いし、かつお尋ねをしておつた。ところが一昨日の有田委員質問の中に、日銀の監理官の問題に関連しましての御答弁の中に、近ごろでは日銀総裁は始終おれのところにやつて来る。そして緊密に相談してやつておるから、御心配はないというような——これは有田委員質問とはちよつと遠ざかつておりましたが、そういうふうなお言葉がありました。そこでこの金融政策の一貫いたしました——もちろん金融統制行つておらないのでありますから、統制的な一貫という意味ではありません。しかし少くとも池田大蔵大臣考えることと日銀の考えることと、少くとも個人的に名前を申せば、一万田さんの考えることが同じであつてほしいのであります。同じでないから悪いということは一番あとで申したいのでありまして同じであつてほしい。ところがサンフランシスコからお帰りになつて、九月の十九日、二十日あたりには大蔵大臣も司令部においでになり、お話なつたことがだんだん伝わつて、日銀総裁は日銀におきまして記者会見をいたしまして、その政策的なことを発表しておる。大蔵大臣お話は、私どもの情報の收集が足りないので全部はわかりませんが、金融政策の決定権の所在を明らかにしなければならない。それがためには銀行法の改正、ことに金利決定に対する蔵相の発言権を確立しなければならない。貯蓄の増強については、貯蓄債券の発行をしたい、郵便貯金の限度の引上げもやりたいのであるという趣旨の大蔵大臣お話があつたように承つております。これに対しまして、日銀総裁の談話は、これは九月の十九日の記者会見の談として発表になつておりますが、金利体系の正常化、これは大蔵大臣の言うこととかわりはない。日銀の金利の引上げをしなければならない。日銀貸出しのいわゆる低率ということが、ある意味において資金不要不急面に流れるというようなおそれがある。あるいは思惑資金ともなり、金利体系の正常化を期すべきである。これ大体わかる。しかるに大蔵大臣の監督権強化は民主国家の行き方に通行する、質的統制を強化すればよろしいのである。これがためには市中銀行の自主性にまかせて、融資規制委員会を活用する等によつてつて行けばよいし、もし融資の自主規制がうまく行かなかつた場合だけ別の方法考えればいい。貯蓄の増強のためには、預金利子を源泉課税一本にする。貯蓄債券の発行は一時の必要に迫られ、常道を見失うもの、資金は大口の融資に片寄ることはやむを得ないと述べております。こういうような食い違いは、かりにわれわれが与党といたしましてこれを聞いておりまして納得いたしましても、おそらくわれわれの背後におります国民大衆は納得ができません。おそらくこのお話は何かの行き違いから生じたことである。すでに大蔵大臣が表明せられますように、大蔵大臣のもとに金融をまかなつております日銀、ことに日銀政策委員会なるものは、これは日銀の意思決定であつて、国家の金融政策を決定するところではないのであります。この行き過ぎになつておることを前々から警告しておりますが、しかしサンフランシスコからお帰りになりました早々のこの食い違いというものは、おそらく間違いであろうと思いますが、この機会におきまして、大蔵大臣の責任におきまして当時の状況を明らかに御説明いただきまして、国民に対します蒙を開きたい、かように考える次第であります。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀のみならず一般市中銀行につきましても、全般的の監督権を私が持つております。しこうして日銀総裁と大蔵大臣意見は、今何も違つたところはございません。今の金融統制の問題にしましても、最近金融機関が自主的に融資規制と申しますか、設備資金等の問題につきまして委員会を設けてやつておるのであります。日銀総裁もそれを認め、私もそういうふうに指導いたしておるのであります。しこうして今お読みになりました日銀総裁の言にもありますように、できるだけ自主統制でやつて行く、それが行かない場合においては考えなければならぬと言つておるのであります。それをわれわれは今検討しておる。考えなければならぬということが、そこにあつたと思いますが、それを自主統制でやつて行つて行けない場合は一体どういうふうな方策に行くかということが、かりに今銀行法の改正その他の方法考えておる主題なのであります。何もかわつたところはございません。  それから貯蓄債券、いわゆる長期資金を発行することにつきましては、一万田君はまつたく同感だと言つております。大口へ行きやすいということは、これは一万田君の言う通りに、私も大口の貸付が多過ぎるということを言つておる。これをどう改めるかという問題は別個の問題で、大口に行くという現状を一万田君は言つておるのであつて、これはやつておることはわれわれも認めておる。それをやむ得ないで、だんだん大口に行くようなことがあつてはいかぬから、指導的に大口はできるだけやめる。また銀行法の改正につきましても、そういう点を規定しようといたしておるのであります。何も金融政策につきまして、私と一万田君の意見が合わぬところはございません。意見が合わなかつたならば、私が監督権で指導いたします。
  25. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの御説明で大体納得いたしましたが、一言確かめておきます。貯蓄債券の発行は貯蓄増強を目途とするのでありますが、そういう一時の必要に迫られることは金融の常道を失するものであるという一万田さんの御発表は、これは大蔵大臣の通常お用いになつている監督権と緊密なる話合いによつて、一万田さんの御意見は解消したものと解釈してよろしゆうございますか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 貯蓄債券の発行につきまして、一万田君は何も意見を持つておりません。私に賛成を表明して来ています。ただ一万田君の言うように、この貯蓄債券的なものを政府産業資金として永久にやるということは、一万田君の言う通り考えます。常道ではないと思います。しかし目下の貯蓄の状況、また長期資金の必要性から行つて、私は二、三年ものの長期債を出すことは、これは常道、邪道という問題でなしに、ぜひ必要な施策だと考えております。日銀総裁もこれには異議はございません。
  27. 宮幡靖

    宮幡委員 その点はつきりいたしました。そこでただいま大蔵大臣の触れました御構想になつております銀行法の改正につきまして、これはあるいはこの席で今議論することは早いのかもしれませんし、あるいは事情が許さないのかもしれませんが、おさしつかえのない限りでお話していただきたいと思います。まずその主目的として、前前からわれわれも考え、特に大蔵委員会等におきましても検討を続けて参りましたが、現下の金融情勢におきましては、やはり政策としまして業務経理に関する大蔵大臣の監督権の強化はぜひ必要である。業務経理に関する面において重点的にひとつ強化してもらいたい。これが行き過ぎになりまして統制というような指彈を受けたくないのでありまして、そういう意味からも、業務経理ということに重点を置いた監督権の強化、その内容としましては、先ほど大口に片寄るのもやむを得ないということは私にもわかります。金融のほんとうの姿というものはそういうものであろうと思いますが、しかしその傾向は是正しなければならぬとお考えになつておる大蔵大臣と私も同感でございますので、同一人に対しまして、貸出しの限度は自己資本の二五%程度にとどめる、業務用の不動産は、自己資本の七〇%を越えてはならないというような制限、また株式の取得、保有については、取得については資金が五%、同一銘柄の株式は一五%以上、一会社なり一企業は一五%以上の資本を持つてはいけないというように従来考えられて参りましたので、その制限等を設ける御用意があるかどうか。銀行法の改正につきましてどの程度まで進んでおるか。ことに私が簡單に列挙いたしましたそれらの経理監督の一つのわくと申しますか、かようなものに対しましては地方銀行はそれぞれ反対の態勢をとつております。従いまして、この地方銀行に対しまして十分納得の行く一つの腹案をお持ちになつておるかどうか、との点をお伺いしたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 今お話の銀行法の率の問題は検討いたしておりますが、そういう思想で銀行法を改正いたしたいと思つて研究いたしております。一人に対しまする貸付の限度も、今自己資本の二五%と言つておられましたが、この二五%という問題もさることながら、その期間を何年置くかということが問題であります。今自己資本を越える貸出しが相当あります。また一億円以上の貸出しは、十一大銀行でほとんど平均半分くないに達しておつたような状態でありますので、そういうものも徐々に是正する意味におきまして、お話のような点を考えております。それから一般の監督権は、先ほど申し上げましたように、大蔵大臣が持つておるのでありまするが、個々の問題につきまして、どういう規定の方式にするかというやつかいな問題がありますので、総動員法的なものにならないように、また民間の意見も取入れたがいいのじやないかというふうなことも考えております。一応の草案は、銀行業者には見せて研究はさしております。これは大きい問題でございますので、当然臨時国会に出そうかと思つたのでありますが、やはりもう少し民間の意見、あるいは金融業者の意見も十分聞いて、適正な案にしたいと思いまして、今考慮中であります。
  29. 宮幡靖

    宮幡委員 次に現在日銀のお話にしろ、大蔵大臣お話はもちろん基本でありますが、金融の正常化という言葉が、一つの標語的なものになつておる。日銀の公定歩合の引上げは、たしか十月にやられておると思いますが、これが金融の正常化の一つのねらいである、こういうことに当時説明されておりました。従いまして、この方向を見ますと、いわゆる金融政策が高金利の政策に入つて行く一つの段階を示すものである、かように思つておりましたやさき、さらに日銀におましては、公定歩合を二厘程度引き上げたい——引上げると決定したわけではないようでありますが、引上げたいというような意向を持つておりまして、これに伴つて市中の方も一厘ぐらいは値上げしたらどうだというような意見がある。これは財政の基本的な線から行きますインフレの抑止の建前を貫くために、信用の膨脹を押える、こういう面から考えれば適切なる問題であり、一面において製品のコストに対しまする金利の占むる割合等を考慮に入れますと、むやみに金利の高いということも、企業的にはあまり賛成ができない。こういう面があつて、悪口のような、俗な言葉でいえば、企業が借り入れにくい状態、どうも金の借りられない状態をつくるところの高金利政策に移行するのではないかというような批評も出るような状況になつておりますが、この点に対しまする金利政策の全般について、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 私は高金利政策に行きたいとは思いません。やはり金利は低いのに越したことはないのでありまするが、だといつて今の日銀の金利政策がいいということは、だれも考えないのであります。悪いのであります。これを徐々に直して行こう、いわゆる金利の適正化という方面にまず進むべきではないかというので、先般九月の二十九日、二厘上げを発表したのであります。この発表のときにも触れておつたかと思いまするが、今後もある程度公定割引歩合は上げるつもりだ、こう言つております。これはもちろん当然だと思うのであります。世界の文明国で日銀の貸出し割合が市中金利より低いという国はないのであります。これは銀行論にも金融論にもなりません。大学の先生がどんな講義をしているかということを私は聞きたいくらいであります。こういう邪道をやつておりますので、これをだんだん是正して参らなければならぬ、こういう点で金利の調整ということを考えております。しかるところ今、お話通りに日銀から二千三百億円、貿易手形にしますと、三千、四百億円の貸出しの現状を見て、一般市中の貸出し金利よりも割引歩合が上がほんとうだからというので、一挙に上にするわけにも行きません。そこで徐々に調整して行こうと思つておるのでございます。これは割引歩合が上つたからといつて、一般市中金利が上ることは、極力押えたいと思つておるのであります。
  31. 宮幡靖

    宮幡委員 金利政策の点については、その点了承いたしました。  次に今回の補正予算を見ますと、政府出資がかなり増大しておりまして、かねがね表明されました財政経済政策を貫く線に進まれておることは、われわれも御同慶に考えるわけでありますが、そのうち考慮されます金融政策のうちに、率直な言葉で申せば上に厚いといいますか、大企業に重く、一般中小企業と申しますか、その方面に対します配慮がどうも比較的薄いように考えられる。これは私のひがみかもしれません。しかもわれわれが貧乏人育ちのために、そういうような言葉が出るのかもしれませんが、やはり大衆の批判というものは避けがたいわけであります。そこでせつかくの補正予算を通じまして、金融政策というものは、国民全般、企業といわず、あるいは私生活といわず、それらを対象として全般的なものであるということのお考えあるいは構想を、すべての国民に納得するように伝えたいと思うのであります。これはわれわれが当然なさなければならない義務であると考えておるのでありますが、そこで一、二の点につきまして今回国民金融公庫の出資を十億円追加せられた。さらに資金運用部の資金を二十億円これに注ぎ込みまして庶民金融というものを達成しようというようなお考え、この方向については、われわれは満腔の敬意を表するわけでありますが、程度の問題につきまして、あるいはいろいろ議論がありますが、これは多いにまさつたことはありませんけれども、一定の財源に支配される以上は、そのわく内で配慮する以外に方法がない。国家財政であります以上、これも現在としましては、補正予算といたしましても、これだけの配慮ができたことはけつこうであります。しかしその運用の面におきまして考えましたときに、この資金が増加いたしました国民金融公庫の業務方法について、何かひとつ適切な改善の御意図をお持ちですか。窓口業務を大分改善せられたが、あるいは貸出し限度につきましても大分改善せられたとか伝えられておりますが、これはいまだはつきりしておりません。いずれ法律案等もあるかもしれませんが、この機会におきまして大蔵大臣の御説明をお聞きしたい。特に国民金融公庫が不動産担保の比較的長期の金融、これをお取扱いになる用意があるかどうか。この点についてもあわせて御説明をいただきたいと思うのであります。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 補正予算政府の出資並びに資金運用部資金の使い方が、大企業の方に走つておるきらいがないかという御質問でございます。私はそう思いません。当初予算と今回の補正予算をお比べになつてもおわかりと思いますが、大企業へ出すというところは、開発銀行と輸出銀行であります。これも大企業に限つたことはございません。開発銀行でも中企業にも出すのであります。それに対します出資が七十億円と二十億円、九十億円でございます。一般大衆方面へ出す金というのは、お話国民金融公庫が三十億円、農林漁業特別会計が六十億円、それから住宅に六十億円、こうやつてみますと、一般大衆の金融の方にたくさん出ております。私は当初予算よりも、よほどそういう点は考慮いたしたはずでございます。また昨年に比べましても、よほど、今年、また今年よりも補正予算、こうなつておるのであります。  次に御質問国民金融公庫に対しまする業務の範囲につきましては、いずれ審議を願うことにいたしておりますが、今の国民金融公庫の三十億円——十億円の出資、運用部から二十億円の借入れ、この借入れというのは、今まで制度上国民金融公庫にはなかつたのであります。今回そういう制度を新たに設けまして、貸付の限度、それから不動産金融の方にも進んで行きたいと考えております。ただ問題がもう一つ未決で残つておるのは、宮幡さん御承知の見返り資金から出しております中小企業の融資四十億円中二十億円まだ余つておる。これは市中銀行その他を督励いたしておりまするが、なかなか出にくい。そこで国民金融公庫の方でこの二十億円を使つて、主として不動産金融、あるいは中小企業設備資金に充てたらどうかという計画で、ただいま関係方面と話をしておるのであります。この見返り資金から出る二十億円が確定いたしますれば、国民金融公庫の業務がよほど拡大いたします。それがきまつてから後に、今度出資いたします十億円並びに借入金の二十億円関連して考えたいと思いまするが、国民金融公庫は、御承知通りここ二年間に七十億円ばかりの出資をいたしまして、相当業務がふえて来ておりますから、あそこの職員の状態が今公務員になつておりますが、これを公務員からはずしたいという気持で今折衝しております。なかなかむずかしいようでありまするが、いずれにいたしましても、国民金融公庫の庶民階級の金融としての地位が拡充されていますので、その業務の方法につきましても改善を加えたいと考えて、検討を続けておる次第であります。
  33. 宮幡靖

    宮幡委員 庶民金融のために順次場面が展開されて参りますことは、まことに喜ばしいことでありまして、国民金融公庫とあわせて考えられますのは商工中金でありますが、これに対しましては、商工債券の発行五十億円を見合いといたしまして、資金運用部資金をもちまして、三十億円の引受、これは六、四の関係とでも申しましようか、市中消化が二十億円、こういう構想で五十億円の資金が調達されるのでありますが、これにつきまして、従来商工中金の運営上欠陷となつておる組合金融というものを、もつと基本的に改善する線を持つて参りたい。少くとも組合員個人の預金の受入れ、及び個人の貸付、あるいは組合員個人数人間の連帶保証による金融、かようなものを開設して参らなかつたならば、商工中金というものの業務の範囲というものが、国民金融公庫と比較いたしまして、少し劣つているような形になり、中小企業に対しまする配慮といたしましては、少くとも足らざるながら平等である、こういうような考え方からこの点をひとつ何とかしていただきたいということがわれわれの念願である。この国会におきましても、大蔵委員会といわず、通産委員会といわず、この問題については久しい間研究もいたし、関係方面にも、公式、非公式を問わず、あらゆる機会においてそのお願いをいたしておるのでありますが、この機会において、現在におきまして商工中金の業務改善と申しますか、あるいは資金運用の増大と申しますか、そういつた面におきまして大蔵大臣の御構想を伺いたいのであります。あわせて通産大臣にもお伺いいたしたいのでありますが、場合によりましては、通産大臣の御答弁は、小笠中小企業庁の長官からお願いいたします。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 国民金融公庫に次いで、商工中央金庫の問題が出ましたが、お話通りでございます。御承知通り、二年前は商工中金の貸出しは二十一、二億円であつたのでありますが、この二年間に非常な膨脹をいたしまして、今は百六、七十億円の貸出しになつております。こういう業務の発展は、他の金融機関には見られないことであります。しかしこれがなお組合への金融ということになると、なかなか実際は動きにくい。組合に貸し付けまするが、その実は組合員一人が使う場合もなきにしもあらず、これではせつかく商工中金がそういうふうに拡大強化せられても隔靴掻痒の感がありますので、私はお話のように、組合のみならず、組合員の貸付、組合員の預金も受入れられるような制度にしたいと思いまして、多分臨時国会に提案する予定であるのであります。資金運用部から出しまする金融債の共同引受という問題につきましても、努めて商工中金の方にたくさん出したいと考えておるのでありまするが、お話の市中の引受との割合の関係であります。うまく行つておりません。商工中金が、組合のみならず、組合員とのつながりを持つということになりますと、信用も相当ふえて参りまして、商工債券の市中消化も相当期待できると思います。お話のように早急に制度を改正したいというので進んでおります。
  35. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 今中金の組合に金融をしておりますのを、組合員までに範囲を拡大すべきだという御意見は、私も御同感であります。この国会に改正案を出すつもりであります。
  36. 宮幡靖

    宮幡委員 そこで、先ほど話に出ました貯蓄債券の発行であります。この内容もいずれ法律で審議する機会があろうと思いますが、この際、あらましでよろしゆうございますが、貯蓄債券の御構想、これとあわせていわゆる新種預金、無記名預金にかわります方法といたしまして、資金蓄積の一環としてお考えになつております新種預金、これの御構想等を御表明いただきたいのであります。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 貯蓄債券の問題につきましては、発行したいというので考えております。いつ発行するとか、條件につきましてはまだきまつておりません。大体の構想といたしますと、三年くらいのものにしたらどうか、それによつて金利もきまりますが、金利もあまり高いものになりますと、貸付金利が高くなる。そうしてまた貯蓄債券は小額のものでありますから、発行費用も相当かかるのであります。私はこの貯蓄債券は割増金付にしたらどうかという気持も持つて検討いたしておるのであります。そういう割増金、あるいは売出しをどこでやらせるかという問題、発行費用、金利等につきましては、まだ成案ができておりません。いずれこれは金融政策全般にも関係いたしますので、しさいに検討して結論を出したいと思つております。  それから新種預金、いわゆる無記名定期というて、よく人口に膾灸されると申しますか、この問題は、租税の公平観念というところから強硬な反対があります。無記名定期ということでなしに新種預金、特別預金でなくて、何か名前をかけてやつたらどうかという議論もありますが、これは結論に至つておりません。私といたしましても、租税の問題と資本蓄積の問題と両方の板ばさみになつているような状態でありまして、まだ結論は出ていないのであります。
  38. 宮幡靖

    宮幡委員 この機会に、関連いたしまして鉄道運賃の値上げということとは別途といたしまして、鉄道で鉄道債券の発行をいたしたい、こういう状況でありまして、このことが伝わつております。内客につきましても、正確かどうかわかりませんが、二箇年くらいというような期間をもちまして、六分程度の金利でもつて発行しよう、こういう発行條件ではたして引受ける人があるか。預金部資金でも、純財政資金のわくの中で消化できれば別問題でありますが、できるかどうか、内容にも若干の疑問があるのでありますが、さらにこれを突き進んで考えますと、現在の日本国有鉄道独立採算制と申しますか、個別の特別会計であつてもその通りでありますが、返済計画というものはどうなるか。実際に債券を発行して資金を調達して建設をやつた。数年ならずしてこの債券の弁済期が来た場合におきまして、自己の收益でもつて償還ができるという計画のもとで発行するのですか。そうでない場合には、その返還については、一般会計からの繰入れでもしなければならぬ、あるいは別途借入れをしなければならぬということになる。これは運輸大臣と関連してお伺いいたしたかつたのですが、この返済計画というものの裏づけのない債券の発行を考えておるようでありますが、これらにつきまして大蔵大臣はどういうふうなお考えを持つておりますか、ちよつとお伺いいたしたいと思います。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 特別の形態をとつて運営いたしております放送局が放送債券を発行したので、特別会計の方でもやつたらどうかというような話があるということは聞いております。国鉄が鉄道債券を出したり、あるいは電気通信の方では電気通信債券というように、いろいろの計画がありますが、大蔵大臣としてはそういうものには反対であります。
  40. 宮幡靖

    宮幡委員 このくらいはつきりした御答弁はなく、まことにけつこうであります。なお金融政策につきまして、また予算のそれぞれの項目等につきましても、お尋ねいたしたいのでありますが、漸次時間も差追つて参りましたので、少し方面をかえまして、おもな点をお尋ねいたしたいと思います。  それは大蔵大臣のことのほかの御專門の税の問題であります。これについては、他の委員からも質問があろうと思いますが、今回の税制は臨時的措置が多いのでありますが、二十七年度予算の中に大きくこの精神が一貫しておる。従つて今申しますことは、二十七年度にわたります税制を審議する——物品税等の細目の問題を別にいたしますれば、荒筋といたしましては、二十七年度に一貫する税制である、こう考えておるわけであります。これに関しますものは、何といつても租税負担の調整ということであります。よく世間では、自由党が減税を公約しておるから、どうしても減税しなければならない、これをやらなければ約束が違つた、こういうことが大きく宣伝されておりますが、私の考え方がいわゆる卑屈であるかもしれませんが、私はそう狭く考えておりません。占領下であります日本が、講和によつて独立を獲得いたしまして、日本の真の経済自立、日本の再建を達成する過程におきましては、財政規模の膨脹ということは避けがたいことなのであります。もしこれを避けまして独立ができるなら、戰争にも負けておらないはずです。従いまして、ただ税金が高いから安くなることを喜ぶ国民の心理状態はわかりますが、單に安くして参りたいという希望的意見が達成せられないからといつて政府やその関係者があえて非難をこうむるべき問題ではなかろうと思う。その意味におきまして、今回の説明書によりましても、減税四百五億円という欄が設けてありますが、私はこの言葉につきまして、少し疑問を持つのであります。別に言葉じりをとるわけではありませんが、これは負担の調整をはかるのであつて、割合軽い方はふやして、そうして重い方は下げるというような均衡的な徴收をはかる。また国民所得も、まだ安本から正確な数字を入手しておりませんし、大蔵省から配付も受けておりませんが、国民所得の全体に対しまして、おおむね租税負担は二〇・三%くらいであります。これは財政演説にもありますように、先進国と申しますか、英、米、仏等の租税負担額に比べますと、決して重いとは考えません。それぞれの国の内容、全体の生活水準の問題、あるいは飲食物費と生計費の構成等の問題、これらをしさいに検討して参らなかつたならば、ただちに安いというふうな断定は下したくないのでありますが、全般的に考えまして、敗戰国日本の租税負担は、英、米、仏などよりも決して高いなどと考えられないことは事実だと思います。ことに終戰後の実態を見ますと、日本は高い税を順次——たとえその額においては、国民の納得の行かない点がありましても、三回、四回にわたりまして減税を断行して参つた。そうしてこれに反しまして、戰勝国であるアメリカの租税負担はどうであるか。朝鮮事変の起きます以前の状況を見ましても、すでに国民の租税負担は三倍を越えておるというようなことが伝わつておる勝た国の税金がふえて、負けけた国の税金が安くなるということは、今まで世界のいずれにも現われて参らなかつた情勢ではなかろうか。従いまして現在の政府というものは、税負担の調整ということには重点を置いてお考えくださることもとよりでありますが、何でも減税をしなければならぬ、特にこれが税法上の減税であるとか、実質上の減税であるとか議論するに至りましては、私ははなはだ残念に思う一人であります。でありまするから、どうか説明書にありますように減税四百五億円などと掲げないで、これは租税負担の調整をいたしました差額がここに出たのだという程度で、今後の租税の見方をとつていただきたいと思うのであります。なお租税負担のでこぼこがあります。このでこぼこの調整こそ、来るべき二十七年度、あるいはその中間過程における補正等におきまして十分御考慮を願いたい。これが私どもの希望であります。しかして今回の中間臨時措置の改正を見ますると、法人に対しては朝鮮事変以来、非常に企業收益が多いから税率をかえるということで、三五%が五二%になつておる。しかしこれは負担しきれないものであると私は考えません。自然増收の形で入つて来るか、正常なる予算の中に盛られました数字で入つて来るか、とにかく千五百億円以上の自然増收というものが出て来るという大蔵省の基本的計算には、間違いないものと私どもはかたく信じておる。ただしかしながら、社会政策的見地から考えて参りますと、金が大企業に集中することはやみがたい問題であるということを金融政策の中で言つておる。中小企業にはなかなか資金はまわりにくいというのも実際の問題である。こういうような企業の立地條件におきまして、必ずしも対等でない中小企業と大企業とを、同じ四二%の課税率によつて徴税することは、私は均衡徴税をはかる上において遺憾があり、あるいは言葉をかえていうならば、先ほど申しましたように、社会政策的な見地からも一考を要する問題であろうと思う。具体的に申せば四二%とあるものを——まあ、資本金の算定等困難な技術面はありますが、かような程度資本金、たとえば一千万円以下の会社の收益に対しては四〇%の課税に軽減する。それもただちに軽減しなくてもよろしい。その利益を留保して蓄積した分につきましてはこれを特に免除する。たとえば退職手当の見返りに引当預金をした額に見合いましての非課税をいたすというような適切なる措置と同じようにお考えくださつたらどうかと考えます。これが負担の調整という問題を中心として考えますと、わずかに今回の臨時改正について、われわれが不満に考えるところでありますが、この点についてのお考えをいただきたいと思う。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点は私にもよくわかるのであります。小法人につきまして軽減措置をするというのは、これはアメリカでもやつております。アメリカでは小法人というのではなしに、所得が二万五千ドル以下の場合においてはこういう税率、それを越えた場合はこうだということになつております。日本におきましても、昔は臨時利得税につきましては、特別の軽減税率を使つてつたのであります。しかし税率の区分は、非常に税金が高いときにはぜひ行わなければなりませんが、税率において世界でまれに見るように低い日本の法人税におきましては、私はその必要はないのではないかと思う。たとえばアメリカのように、臨時利得税を置いて、フラツトの普通所得には四八%課税する、そしてその上に臨時利得税を課税するという場合におきましては、お話のような特別のいろいろな手を打つことが必要だと思いますが、まだ四二%では、小法人について特別措置をするほどの負担でもないと考えて、今回は行わなかつたのであります。
  42. 宮幡靖

    宮幡委員 小法人について軽減の措置が必要であるほど税金の負担が高くない、こういう御説明でありますが、その点は私も納得いたします。しかしながら、国民大衆の気持というものは必ずしもそうではありません。そこで税負担の安い中におきまして、特に企業の立地條件が違い、あるいは生活の水準の違う方々について、特段の配慮をいたすととができ得るならば、より以上すぐれた税務行政であり、税の政策であろうと思うのであります。従いまして、私は高いから負けろというよりも、しかくして中小企業の育成ということ、中小企業の振興ということに馬力をかけて、拍車をかけて指導すべき立場から、この税の軽減をはかるべきこと、しかもこれは一定の留保によりまして、社外流出はいたさない方法によりましていたしたい、かような念願でありますので、これは私はあえて自由党と申しまするが、党の意見を背景といたしましてひとつ今後とも大蔵大臣の御再考を煩わしたい切実な希望を持つておることを御承知おきいただきたいのであります。  さてそれに関連いたしまして、今回の四二%に税率を引上げる、こういう問題の一つの対応策といたしまして、見合いといたしまして、価額変動準備金制度をやりたい、これは正式の発表かどうか知りませんが、かなり公然の事実として伝わつております。償却資産並びに有価証券に対しまする一定率、一〇%程度の損金の準備積立を認めよう、こういう御構想でありますが、この点はすでに提案されております租税の改正諸法案におきましても、何ら触れておりませんが、大蔵大臣は現段階において、この問題の実現につきましてどの程度まで御熱意を持ち、あるいは他の方法によりまして実現されようとせられておるか、この実際の状態をお示しいただきたいと思います。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 小法人につきましての率を低くするという点につきましては、議論があると思います。これは今中小企業と即断せられましたが、今法人組織にしておりまする中小企業と、法人組織にしておりません中小企業との負担のことも考えなければなりません。従つて小法人を軽減することが即中小企業というわけでもないのであります。最近は国税、地方税を通じて法人の税率が安いために、非常に法人になつておるのであります。法人にあらざる個人企業との関係をやはり考慮し、なければなりませんので、先ほどのお答えをしたわけであります。  次に、価格変動準備金という問題は、昔流動資産の評価減というのでやつておりましたが、シヤウプ博士の税制改正がありまして、後入先出方法等が税法に盛り込まれまして、理論的にはいかぬということに相なつてつたのでありますが、私は今の経済状況を見まして、価格変動準備金を一割程度——これはものによつて違いますが、一割程度認めたらどうか、しかもその一割を一度に認めますと、歳入にも影響いたしますので、二年間くらい、すなわち半年ごとの事業計画で、明年度から四期くらいで二・五%くらいずつやつて行つたらいいじやないかという考えを持つて、ただいま関係方面に折衝いたしておりますが、結論がまだ出ません。しかし私の考えといたしましても、ぜひともそういたしたいという気持をもつて進んでおるのであります。本国会に間に合うか、間に合わぬかわかりませんが、いずれはその方法で進んで行きたいと思つております。
  44. 宮幡靖

    宮幡委員 価額変動準備金制度はぜひ実現するようこの上とも御努力をいただきたいのであります。なお大蔵大臣の心情はよくわかるのでありますが、個人と法人の負担の不均衡というようなことがよく事務当局から、特に平田主税局長あたりから強調されておりますが、戰争前満洲の税法に、たしか所得三万円未満、資本金五万円未満の法人は、これを個人企業と同一に税務署で取扱つておつた法制がありました。われわれは満州に行つてこれを取扱つてみましたが、まことに都合がよい。もし軽減すれば個人と法人とのつり合いが悪いというようなことでありますならば、さような課税方法もひとつ考慮に入れて、今後とも御研究を願いたいと思うのであります。  話題を広げますとまとまりませんし、時間もありませんので、切り上げたいと思うのでありますが、為替レートの問題、この変更の問題は、すでに幾度も最終的な言明をいただいておりますので、総括質問としては省略いたします。  次に先ほどちよつと触れました日銀政策委員会の存廃の問題につきまして、銀行法改正とともに御考慮になつているかどうか、この点おさしつかえがあれば、あえて御言明を賜わらなくてもけつこうであります。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 金融制度全般につきまして検討いたしております。その中の一つの課題になつております。
  46. 宮幡靖

    宮幡委員 次に外国為替管理委員会の存廃の問題も、国会休会中かなり議論されて参つておつたようでありまする特に為替の委員長の木内さんと大蔵省の舟山次官との間に、俗に申せば権限争いと申されるような状況でこの廃止論や移管論がありました。またこれに通産省も介在いたしまして、また安本も入りまして、三つどもえ、四つどもえで事務的な折衝を続けて参りましたが、その結論はどうなつたのか。特に外貨の管理権が日本に委譲されました今日におきましては、外国為替管理委員会の、そのボードの性格、その運用につきましても、一つ考慮を加うべきに時期に来ていることは事実だと思います。この点についての大蔵大臣通商産業大臣の御意見を承りたいと思います。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 外国為替管理委員会の問題につきましては、昨年来いろいろな議論があつたのでありますが、ただいまのところ、やはり外国為替管理委員会を存続させます。そうしてその運用につきましては、大蔵大臣のもとに日銀、為替管理委員委員長がつきまして、大蔵大臣の指導のもとに運営するということに相なつております。将来の問題といたしましてはやはり検討しなければなりませんが、あれは技術的な面が多くて、専門的知識を要しまする関係上、今のように内閣につきますかどこにつきますかわかりませんが、ああいう制度自体はどこへつけましても置いておくのが今の実際に合うのではないか。しかし運用にあたりましては大蔵大臣のもとに日銀、管理委員会の委員長が参りまして協議の上に運営することになつております。
  48. 宮幡靖

    宮幡委員 時間の関係がありますので最後に一点お伺いいたします。これは平和條約の特別委員会においても話題に上らない問題のようでありますから、この席を借りまして、必ずしも予算委員会で伺うことではありませんが、一言お伺いいたしまして私の質問は本日のところは終りにいたしたいと思うのであります。  それは国際決済銀行の株式の返還の問題でありますが、これは捕虜の補償に充てる、いわゆる赤十字国際委員会に引渡しをしないでもよい財産になつているように聞いております。これは金額は一千二百三十五万六千金フラン、米ドル換算四百三十三万ドル、円換算十四億五千三百二十四万円くらいの程度であります。この返還の時期、方法、評価、従来年六分の配当をいたしておりますが、この配当金等の処理はどういうふうなお話になつておりますか、もしさしつかえがあれば、速記をつけなくてけつこうでありますが、お聞きをしておきたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題につきましては、今後におきまして、各方面と話をつけて行きたいと思います。
  50. 宮幡靖

    宮幡委員 終ります。
  51. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  52. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。庄司一郎君。
  53. 庄司一郎

    ○庄司委員 宮内庁の御当局に、直接予算面に関連しておる問題について、一、二お尋ねしてみたいと思うのであります。  ただいま議題になつておる本補正予算の中には、宮内庁関係の補正はただの一銭も上程されておらないようでありますが、各省及び各政府機関においては、それぞれ職員のベース・アツプその他、物価高騰等に伴いまして、予算の追加を要求され、それが大蔵大臣にいれられ、閣議決定を見てここに提案されておりますが、ひとり宮内庁関係の補正予算に関する限りは、びた一銭の御要請もなかつたものであると了解するよりほか、ただいまの予算面を瞥見してはあり得ないのであります。そこでお伺い申し上げたいのは、宮内庁におかれても相当の補正要求が必要であられたと本委員は想像するのでありますが、その必要が絶対になかつたのでありましようか。もしそれなかつたとするならば、いかなる理由のもとに追加の御要請の必要がなかつたのであるか。既決予算の範囲内において、流用、運用そのよろしき得て、まかなつて行きたいというお考えのためであつたかどうか、その点を最初宮内庁の宇佐美次長にお伺い申し上げ、もし必要があれば大蔵大臣にも御答弁を願いたいと思いますが、まず宮内庁政府委員の御説明をお願い申し上げます。
  54. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 お答え申し上げます。宮内庁の関係といたしまして、今回補正予算をお願いいたしておりますのは、やはりベース改訂に伴いまして、約四千万円のベース改訂の経費を計上しておるはずでございます。その他につきましては、御説の通り計上いたしておらないのでございます。もとよりわれわれといたしましても、今後お願いすべきことがあるかと思いますが、今回の補正予算におきましては特にお願いする段取りに至つていなかつたのでございます。
  55. 庄司一郎

    ○庄司委員 そこでさらにお伺い申し上げたいのは、全国都道府県の農山漁村等より、多数の、特に青年男女あるいは婦人会、そういう国民の中において深い関心を持たれておる御諸君が、皇居内においていわゆる宮城の奉仕作業を喜んでやつておられる、そういう諸君が各町村に帰つて来られて、いろいろな会合における報告会等において何を語るかというと、天皇陛下のお住まいになつておるところの皇居そのものの造営物が、あまりにもさんたんたるところのお住居である。よつて政府においても、天皇の御一家のお住まいなさるところの皇居に関しては、すみやかにこれを再建すべきものである。また講和條約に伴いまして、この後は世界各国の代表的な要人各位が来朝され、天皇を訪問される場合が戰前同様に多くなるであろうことは、想象にかたくないのであります。かような場合に、外国の代表的なお客様方を陛下が謁見され、あるいは陪食を賜わるというような場合において、戰災前であれば正殿であるとか、あるいは豊明殿であるとか、われわれ国会議員も年一回御招待をいただいた、ああいう輪奐の美をきわめたところのいわゆる玉楼があられたのであるが、ただいまのところは、外国の代表者等に十分な快感を與えるような、さような造営物は見あたらない。それにつけても皇居は一日もすみやかにこれを再建してあげなければならないのである。かようなことを宮城奉仕に来られた奉仕員の諸君が、部落に帰り、村に帰つて、報告されておるのであります。そこで宮内庁としては、また大きくいえば政府としては、天皇の皇居をすみやかに再建さるるところの御意図があるかないか。願わくはこの講和條約を記念として天皇の皇居をすみやかに再建いたしまして、日本の皇室の威嚴といいましてはどうかと思いますけれども、天皇御一家にふさわしいところの、憲法の上におけるわれわれのあこがれの象徴のその天皇のお住居を、ひとつ国民の力において再建してあげたい。かような信念でございまするが、さしあたり宮内当局におかれてはどういうお考えでございますか。特にこの後国連等に加盟のあかつきは、国連関係の大会議、大協議会、そういうものも持たれる場合があり得ると考えられまするが、皇居の再建について、宮内当局はただいまどういう御計画をお持ちであるか、それをお伺いしたいのであります。
  56. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 ただいま皇居の再建に関しまして、御熱心な御意見を拜聽いたしましてまことに感佩いたしたのでございます。国民の各方面からもいろいろな御意見が出て参つておりますことは、御承知通りでございます。戰火によりまして全部烏有に帰しました宮殿を再建しなければならないということは、これはもとより議論のないところでございますが、これを再建いたしますためには、相当巨額の経費を要するものと考えるのでございます。現今のわが国の国民生活の状況いよいよ多端を思わせまする国家財政の状況から考えまして、宮内庁の当局といたしましては、まだその時期ではないという考え方をいたしておるのでございます。しかしながら現状は宮内庁の庁舎の一部、きわめて狭い部分を宮殿に使用いたしておりますので、国交の回復のあかつきにおきまして、スペースとしても不足をいたす点がございますので、現在の宮内庁の庁舎の一部を宮殿様式にいたしまして、しばらくの間それで済まして参りたいと考えまして、今計画立案中でございます。おそらくは明年度の予算にお願いをいたしまして、来年四月からはスタートのできるように検討を進めておる次第でございます。  以上のような状況でありまして、今ただちに巨額の費用をもつて宮殿を再建するということにつきましては、もう少し時期を拜借して見て行きたい、かように考えておる次第であります。
  57. 庄司一郎

    ○庄司委員 巨額の経費を要するがゆえに、ここしばらくは宮内庁の既設の古庁舎を補修改善して間に合せるという御当局のお心持はよくわかります。おそらく天皇陛下のお考えは、戰災によつて燒失した国民の住宅、また住宅難の折から、国民すべての住宅の問題が解決せられざる以上、天皇は御自身の皇居建立のことをお許しにはなりますまい。あなたの今の側近者としての御答弁の片鱗からも、陛下の御意思を漏れ承ることができると本員は考えます。しかしながら冒頭に申し上げましたように、今や平和回復、講和批准後において、外国の大使も、あるいはそれ以上の使臣も迎えねばならないわが国が、宮内庁の古庁舎の一部を修理補修して間に合せるというようなことは、これは一を知つて二を知らざるものである。皇室の尊嚴といえば語弊がありまして、やや封建的なきらいもおりまするが、われわれ国民のあこがれの象徴、天皇の皇居を、願わくは国民の総力において再建してあげなければならない。陛下が御辞退になればなるほど、われわれ国民はその信念をもつて当らなければなわません。ところでこういう運動が各町村に起つて参りました。それは先ほど申し上げた宮城奉仕に来られた青年の諸君、婦人会の諸君が主として責任者となられて、国民一人一箇年一円、向う五箇年計画、皇居再建献納会、さような名前で国民一人当り一円を五箇年間積んで、元金の五円、それに多少の利子がつくことでありましようが、かような赤誠込めた零細な金をもつて、やがて相当りつぱな皇居を再建してあげたいという、会則、目的をもつて、献納運動が始まつております。おそらく宮内庁において、今回衆議院の公報に出ているところの皇居再建に関する請願というものを御一読くださるならば、その趣旨のあるところがよくわかると思うのであります。巨額の経費がかかるがゆえに、国民の税金をもつて皇居を再建することは、もとよりわれわれも再考慮しなければなりませんけれども、税金よりはもつともつとうるわしい、皇室、天皇に対する愛情のこもつた国民一円献金という五箇年計画の金がある一定程度まとまつた場合、宮内庁はこれを善処され、天皇陛下の御快諾を得られて、かようなまことに純真な国民精神の結果である浄金をもつて、皇居再建に充てられる御意思があるかないか。願わくは天皇陛下の御快諾を得て、国民の盛り上つたさようなうるわしい浄金によつて、わが皇室の皇居をりつぱに再建したい、かように念願しておりますが、さような寄付願い等に対しましては、宮内庁はどういうようなお考えを持つておりますか、念のためにお伺いいたしたいのであります。
  58. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 ただいま、勤労奉仕せられました若い方々の熱誠あふるる御計画を、私は実は初めて承つたのでありますが、その他におきましても、各地にいろいろな形式においてそういう運動が起りつつあるように、私も伺うのでございます。これは国民の熱誠から出るところでございまして、われわれといたしましても、それを伺つてまことに感激をいたすわけでありますが、各地に起つておりますこういう運動をどう取扱うかということは、相当愼重に考えてみたいと思うのでございます。実はかりにこれを受けるといたしましても、現在の皇室経済法その他から考えまして、法律的に相当考究を要する点がございます。こういう点もあわせ検討いたしまして、将来の問題として研究をいたしたいと考える次第でございまして、ただここで私一個におきまして、ただちに全部皇室として寄付をお受けになるというふうにはお答えいたしかねるのを、遺憾とするものであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代   理着席〕
  59. 庄司一郎

    ○庄司委員 国民の清らかなる、しかもとうとい献金を受けらるる受入れ体制においては、皇室経済法その他いろいろな法律、法令もありましようが、これは国民の良識において、全国一万二千の町村にほうはいとしてかようになつて参りました場合——ただいま地域的に申し上げると、宮城県を初めとして東北地方においてこの運動が開始されておるのでありますが、これがほうはいとして全国的な運動となり、あるいは国民一人一円献納ではなく、十円の献納も、百円の献納も現われて来るであろうと思う。あるいは材木の献納も行われるであろうと思うのでありますが、かような場合においていたずらに法規の末梢にとらわれて云々することなく、国民のおおらかな、かような信念の上に立つ献納などは、釈然としてお受けくださることができるように、今より宮内庁当局においてはよく研究され調査されて、対策を願つておいていただきたいと思うのであります。なお宇佐美さんにおかれては、どうか本国会に現われている国民の赤誠あふるる皇居再建に対する請願等はよくごらんいただいて、その請願がある特定の委員会にかかりました場合、真劍に御答弁くださるように、ただいまより御用意を願いたいと思うのであります。  さらにもう一点。本年の夏に、本予算委員会で委員長外各位の国内出張の際に、正倉院宝物の保管状況等の視察の場合、この国宝的なお宝物を直接取扱われておるきわめて下級な公務員の諸君が、ほんとうに誠心誠意真心込めてやつておる。しかも労働基準法も何もあつたものじやない。真劍に生命をささげてやつておる。趣味といえば趣味でありますけれども、実に熱心になつてつておられる。そういう御諸君は出張もなければそのほか何もない、まことにみじめな報酬で甘んじておるというのであります。しかもそういう方々は何十年と勤続して、この国宝的なお宝物のお取扱いに働いている。しかもまことに惠まれない報酬の関係にあるということを現地において調査して参りました。そこで宮内庁所管だそうでありますが、あなたの方でこういう面の縁の下の力持ちといいましようか、黙々として、埋もれ木のごとく働いておる諸君に対して、特にべース・アツプの場合に、これに関連して予算等をおとりになり、かような惠まれない諸君に、多少なりとも生活の安定を與えてやるという御配慮、お考えはないでしようか、これを伺つておきたい。
  60. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 ただいま御同情ある御質問をいただきましたが、われわれといたしましても、黙々として働いておる諸君のために、できるだけの措置をいたしたい、かように考えます。もとより公務員としての一般制限に該当するわけでございますので、特別の措置を行うことはいろいろむずかしい点もございますが、御趣旨によりまして今後十分考えて参りたいと存じます。
  61. 庄司一郎

    ○庄司委員 宮内庁に対するお伺いはこれでやめますが、国民の盛り上るとうとい献金による皇居の再建については、国会においてかような下意上達の熱意ある話があつた、国民がさような信念を持つておる、そういう請願がたくさん今度の国会に出ておるというようなことを、ときあらば天皇陛下によくお伝えください。国民のそういう盛り上る信念の上に立つた献納、献金については、陛下もさぞやお喜びなさることであろうと思うのであります。宮内庁に対する質疑と希望をこれで終ります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長   着席〕  大蔵大臣にこの際一言だけ伺つておきたい。今回の補正予算の中には、あるいは住宅公庫に対するところの、あるいは国民金融公庫に対しての増額、その他所得税において、特に源泉課税関係の勤務所得税においての軽減、あるいは社会保障的方面において、戰争犠牲者のために何らか国家が責任ある態度をとるために、一応調査費用としての一億円、そういう面を見まして、大蔵大臣におかれても、大にして政府全体としても、相当社会保障的な、あるいは高度なる社会政策的な面を取入れた補正予算であるということを——私は與党であるがゆえに、決してこのことであなたにおべつかを言うのでも何でもない——多分にこれを感じとることができ得るのであります。こういうことにおいて、この補正予算について大蔵大臣に敬意を表したいと思う。ただ一点お伺いしたいことは、最近よく新聞雑誌——けさもまた何かの新聞にありましたが、大蔵大臣は、財産家は米を食え、貧乏人は麦を食らえというような放言を行つたということが報道されておる。私はこのことを信じません。いやしくも一国の大蔵大臣が、貧乏人を差別待遇的にさげすむような意図においてのかような発言というものは、いかなる政党内閣においてもあり得るものじやない。これは全然本員は信じない、さような意図のあることを信じません。従いまして、さような放言がいつ何時どこで現われたか、私は信じません、信じたくもない。しかしながらまことしやかに報道されている。昨年か一昨年か、大蔵大臣は税金の問題が中小商工業の問題かにおいて、若干名犠牲になつて死ぬ人があつてもしかたがないという放言をしたという——これもされないのであるけれども、さような放送が、特に在野党方面、反政府方面より宣伝をされて、われわれ政府與党としては非常な迷惑を感じたのであります。今回もそうです。富める人は米を食え、貧乏人は麦食えと。しかし私は農家に生れて、子供のときから今日六十になつても、麦飯を喜んで食べております。また麦飯のきらいな人がある、特に最近東京都内においては、麦の配給を断る人が非常に多い。これは麦の搗精が悪いからである。麦の搗精がよくて、米の飯に七分三分くらいに麦を入れて、塩ざけかみそづけでお茶づけをさらさらやるときの麦飯の味わいたるや天下一品である。むしろ富豪階級の味わい得ざるところの麦飯の真味である。私はこの麦飯のために六十になりましても、いまだ内科の病、外科の病を知らざるはむろんのこと、かくのごとき剛健なる肉体に育つている。私は何も大蔵大臣に、與党なるがゆえにやおちよう的に、あなたに弁明の機会、釈明の機会を與えんがためにこのことを聞くのではありません。大蔵大臣は麦食奨励の趣旨の上より、近時国民が非常にぜいたくになつて、麦の配給権利を還付するものが多く出たために、一般的に国民諸君に麦食を奨励する意味においてさようなお話があられたかどうか。またどういう機会にかそれに似寄つたことを、意図は全然違うけれども、やや相似たような言葉をもつて表現されたことがあつたかどうか。私はこのことを真劍に承りたい。ひとり大蔵大臣、あなたの名誉回復のみでありません。われわれ與党の名誉をも回復しなければならぬのである、かような意味において真劍にこのことをお尋ねいたします。願わくば良心的な御答弁を願いたい。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 その前にちよつと委員長からお諮りいたします。ただいま庄司委員から皇居の再建につきましてきわめて妥当な御意見があつたのでありまするが、本委員会といたしましても、委員の有志を募りまして、実地を拜見してその再建の方途を考えたいと考えるのでありますが、いかがでありましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御異議ございませんければ、その実行方法等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御異議がなければさよう決定いたします。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 私に対しての御質問ではありませんが、皇室再建の問題が起りましたので、大蔵大臣としても関係のあるとでございますから一言申し上げておきたいと思います。  平和回復後におきまするわが皇室と外国との関係は非常に密接になつてお話のように外国使臣の謁見その他のことがあるのであります。私は前から考えておりましたが、幸いに先般、二週間ほど前に、陛下に大蔵省関係、ことに予算等の関係を言上いたします機会に、侍従長と会いまして、たまたまこの問題に触れたのであります。侍従長の意見では、先ほど宮内庁次長の言つておられるようなことを申し述べられましたが、私は今宮内庁の考えられておりまする今の宮内庁の改造に対しまして御検討を願いたい。また国会も関係がございますが、東宮御所が今国会図書館に使われております。あれを改造することはできないか御検討願いたい、こういう問題に触れたのであります。たまたま庄司委員お話がございまして、私も非常に感激するところがあります。また、ただいま委員長よりこの問題につきまして、調査をなさるということを聞きましたので、大蔵大臣といたしましても、十分庄司委員のお考えを頭に置きまして、今後善処いたしたいと考えております。  次に、貧乏人は麦を食え、金持ちは米を食え、こういう言葉で表現せられておりまするが、そういうことは言つたことはございません。しからばどこからそれが出たかと申しますると、昨年の暮れでございましたか、参議院の予算委員会におきまして、木村禧八郎委員より、米、麦の価格につきまして質問があつたのであります。御承知通り予算上従来米に対しまして外米は一〇〇%、麦は九五%あるいは九〇%の比率で行つてつたのであります。それを昭和二十六年度から、米と麦との比率をかえまして、米に対しまして麦を安くいたしたのであります。これは米、麦を統制しております間におきましても、私は国民の嗜好その他消費の状況から考えまして、米と麦との差を多くすることが必要であると考えておるのであります。私がそのとき申しましたのは、自由主義経済になりまして米、麦の統制を撤廃した場合において、国民生活におきまする主食費の増高を極力防止しようとするならば、米の値が上つた場合に麦の値は下げなければならない。こういう場合におきまして所得の多い人は高い米が食えましよう。所得の少い人は安い麦でがまんしてもらわなければならぬ。これは米、麦の統制を撤廃したときの経済の原則であるのであります。もちろん麦がからだによくて米が悪いとか、こういう栄養上の問題は別といたしましてわが国におきましては、昔から米が不足でございまして、戰前におきましては、朝鮮、台湾から千数百万石を輸入いたしておつたのであります。しかるところ終戰後は、内地米と同じ品質の朝鮮、台湾米が参りません関係——日本人の嗜好として、日本の内地米に執着があるのはやむを得ません。従いまして統制撤廃後におきしましては、内地米が相当上りましよう。そこで内地米が上つた場合におきしましては、国民の主食に対する出費を少くするためには麦を安くしなければならぬ。みんながみんな同じような所得ではないのでありますから、高い米は所得の多い人が食べられるし、所得の少い人は麦でがまんして、だんだん所得を多くして米にするということにする。これは経済の原則でございまして、だれから言われても誤りはない。ことに統制撤廃、自由主義の建前をとつております自由党の党員といたしましては当然のことであつて、何と言われてもこの説は改める気持はございません。私はそういう気持で答えたのであります。米と麦とを国民全部が同様に食わなければならぬということは社会主義経済のもとにおきましてもやり得ないことであります。今のように米と麦とを統制しておりましても、東京都の方々は十五日米、十五日麦、半半であります。米の産地の新潟県等に、おきましては、二十五日米の配給があつて、その他は五日であります。こういう状態がいいか悪いかは別問題といたしまして、私は自由主義経済、主食統制撤廃後におきましては、高いものは所得の多い人が食べる上、所得の少いものは安いものを食べて行くということが、当然の経済原則であると信じておるのであります。米を食うことがいいか、麦を食うことがいいかどうかという問題は、一般的にいえば、世界の一等国民は麦を食べるのを原則としておる。アメリカにいたしましても、イギリスにいたしましても麦が主食であります。フランスもそうである。ドイツは麦や米ではありません。じやがいもが主食であります。貧乏人は麦ということは言つたことはございません。所得の多い人、少い人。——麦を食いますにしてもおのずから食い方がある。アメリカなんかにおきましては、小麦の消費は、人間が食うのは二割でございまして、八割は鶏や豚や牛が食つております。そして麦を食つた牛や豚や鶏を人間が食べておる。私は今の世界の情勢から申しまして、日本人も麦と蛋白質の牛肉や卵が食えるようになりたいものだと思うのであります。しかしこれは長い歴史から申しまして、なかなか困難であります。経済原則といたしましては、主食統制撤廃後は安いものは所得の少い者が食い、所得の多い人はうまいものを食うということは原則であります。どこかの講演会でこの話が出ましたとき、私は所得の多い人が米、所得の少い人は安い麦ということがもし誤つておるとすれば、汽車の一等、二等、三等が走るのはいけない、全部一等にしなければならない、これは理想でありまするが、そうは行かないということを述べたことがあります。私は決して階級闘争的な気持でそういうことを言つたのではなくて、経済の原則を言つたのであります。繰返して申しますが麦と蛋白質が世界一等国民の常食であると考えておるのであります。経過的にはいろいろな問題がありますが、私も庄司さんと同じように子供のときは麦で育つておりまして、今日こういうからだになつておるのであります。
  66. 庄司一郎

    ○庄司委員 大蔵大臣の原則論はよくわかりました。それでけつこうです。そこで橋本さんは、厚生委員会の方であなたをお待ちになつておるそうでありますから、ごく簡單に厚生大臣にお伺いいたします。  ただいま議題となつておりまする補正予算の中に、戰争犠牲者のためにまず今明年度は調査期間と申しますか、その調査のために一億円の予算を要求されておる。そこでこの一億円の金を最も有効適切に戰争犠牲者の遺族、家族等の調査あるいは戰病死の実態調査あるいは遺家族の生活の実態調査、そういう方面にお用いになることは、これはお伺いするまでもありませんが、どんな方法で百パーセント完全に近い調査をなさる御意図であるか、地方の市町村あるいは都道府県等にこの金を分配して、委託調査をなさるお考えであるか、その調査の方法あるいは期間、調査計画、それらを最初にお伺い申し上げたい。  その次は、よく新聞には、陸軍大将も一兵卒も平等なるところの一つの弔慰金的な交付金を與えたいという御意図である旨のあなたのお説が載つておりますが、大体昭和二十七年度においては、この一億円の金ではたして完全に調査ができて、しかる上において、この弔慰金といいましようか、遺族家族に交付する金の名称、あるいは大体の御見当の一人当りの金額、そういう点を第二にはお尋ね申し上げたい。  第三には、今回のベース・アツプに伴いまして、全国三十幾万の気の毒な祖国日本に帰りたくとも帰ることのあたわない抑留同胞、この抑留同胞は、軍人軍属であつた場合においては、未帰還者給與法によつて現行は一千円、留守家族がちようだいしております。そこで今回のこの臨時国会に対しても、全国より多数の、未帰還者の俸給を適当な程度に上げてもらいたい、なるべく多く上げてもらいたい、そういうような請願も現われておる。私も紹介議員となつております。そこで、未帰還者給與法を改正して、現行の一千円を三千円とかあるいは二千円とか、一般公務員のベースの引上げと同時に、これに対応して上げてやりたいという御意図を、援護庁を主管されておる厚生大臣としてお持ちではございませんでしようか。願わくはあつてほしい、かような意味において第三のお伺いを立てた次第であります。  詳細にいろいろお尋ねしたい点はありまするが、厚生委員会がせつかく厚生大臣をお待ちのようでありますので、ごく簡單に、きようのところは以上の三点だけをお尋ねして、お答えつておきたいと思います。
  67. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 お答え申し上げます。一億円の調査費に関しましては、まずこれをどういう方法で調査するかというお話でありますが、調査の内容は、ただいま御指摘のありました通り、遺族等の実態調査に使いまして本格的な予算がとれ、援護法ができましたときに、ただちにその権利者が確定できるようにするわけであります。やはりこれを漏れなく、かつ公平に調査いたしまするためには、府県市町村を通ずる方がよろしいと考えまして、大体そういう方式で調査をいたすつもりでございます。なお調査の範囲等に関しましては、実体的な規定の範囲とからみ合いまするので、具体的なところは目下検討中でございます。  なおこの遺族等の援護の方式なり、金額なりの問題でございますが、これに関しましては、ぜひひとつ終戰以来極東委員会の指令その他の関係で、非常に困難な地位で御苦労なすつた遺族や傷痍者の方々に、できるだけの手当をいたしたいと考えまして、大体一種の年金の支給等を考えておるのでございまするが、この具体的な対象の範囲でありまするとか支給の方法については、諸般の関連でよほど考えなけれどならないことがございまするので、先般閣議決定をもちまして、戰傷病者及び戰歿者遺族等の処遇に関する連絡打合会をつくりまして、関係官庁が集りまして検討中でございます。必要に応じて官庁外の人々にも来てもらうつもりでおりまするが、できるだけ急速に具体案を立てたいと思つておる次第であります。いまだ内容を具体的に申し上げる時期に至りませんのをはなはだ残念に思つております。  なお第三に、抑留者の家に関する手当の問題でございまするが、これに関しては庄司委員お話の問題はよく私どもも承知をいたしております。むしろ今までのように、戰争犠牲者の方々に対する援護対策というものを、従来の立方で将来も行かなければならぬ。つまり遺族に対しては何の手当もできない、また傷痍軍人に対してもごくわずか、未復員者に対してはああいつたような形という方式を続けなければならないわけでございましたならば、庄司委員お話のように、金額を増額するということは当然であろうと思います。今日ではむしろ遺族、傷痍軍人等の援護対策が問題になりまして、その対象の範囲といたしまして、戰傷病者の遺族や戰傷病者だけに限るか、あるいはまたさらにその範囲をもう少し拡大して、同じ援護方策措置をするかということ自身が問題になつておりまするので、御指摘の問題も、趣旨はくんで目的を達するようにはいたしたいと思いまするけれども、ただちに未復員者給與法を改正してその増額でやるかどうかということは、戰争犠性者の救済問題の一環として、からみ合せてきめるようにしたいと考えております。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際質疑に関連いたしまして、高橋委員より質疑の申出がありますから、この際これを許します。高橋等君。
  69. 高橋等

    高橋(等)委員 庄司さんのただいまの御質問に関連いたしまして遺族、傷痍者に対しまする補償の問題につきまして、厚生大臣及び大蔵大臣に御質問を申し上げたいと存じます。  まず厚生大臣にお伺いをいたしますが、戰争に参りまして、国のため戰死をいたされました人々、また傷を受けられました人々に関しまする国家の補償と申しますものは、申すまでもなく、その戰争の結果がどうであつたかということと関係がないということは、当然でございます。理論的にはそうでございますが、政府においても、従来いろいろと御努力をお願いいたしておるように承つておるのでありますが、終戰以来六年以上経過いたしました今日、まだこれらの関係の人々に対しまして補償を国家がいたすことができないということは、まことに残念なことでありまするし、これらの人々に対しまして申訳のないことであると私は考えます。ただいま御説明によりますると、本補正予算に調査費を計上せられまして、これが補償実施の準備をお進めくださることになりましたことは、まことに一つの進歩として、喜ばしいのでありますが、遺族のうち、あるいは傷痍者のうち生活が相当困窮した人々がありましてこうした人々は特にその援護、補償の一日も早いことを非常に念願して期待いたしておるのであります。先般来国会における厚生委員会等におきまして、黒川前厚生大臣、あるいはまた橋本厚生大臣から、急速に補償を実現するために、いろいろと努力中であるというお話を聞いただけで、非常に全国のこうした人々は喜びをもつて希望しておつたのであります。しかるにこのたびの補正予算におきまして、具体的な補償費の計上を見ておりません。政府としましても、いろいろの御努力をなさつておられることは承つておりますが、この際その計上に至らなかつた理由につきまして、厚生大臣から御説明をお願いいたしたいと存じます。
  70. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 遺族、傷痍軍人の方々に対して、何らかの援護をできるだけ早くする必要がございますることは、ただいま高橋委員の御指摘の通りでありまして、政府といたしましてもまつたく同じような考えでおるのであります。お説の通り、いくさに勝つたか負けたかということは、何の関係もないことでございまして、敗戰はいたしましたけれども、ごめんどうは十分見たいと思つておりました。ところが御承知のように、極東委員会から指令が出まして、遺族の扶助料は全然拂うことは相ならない、また傷痍軍人に対しましても、国内における同種の制度の最低のものだけを許すということになりまして、厚生年金と同じだけの水準で、わずかに今日まで手当を差上げて参つたというのが実情でございます。これに対しましては、なるべく早い機会に援護措置を講じたいと思つて、実は表には出ませんでしたけれども、政府としてはずつと総司令部とも話をいたし、また内部的に案も練つてつたのであります。ことに昨年の秋以来、講和條約の問題が進み出しまして、今年の初めごろから、この遺族、傷痍軍人の援護は、ぜひしなければならぬという決意を内部的に固めまして、前任の黒川厚生大臣が閣議で三月ごろに一応案を具して相談されたこともあるやに聞いておるのであります。私はそのあとを受けまして、黒川前厚生大臣のつくられた骨子を実現すべく骨を折つて参りました。今回の補正予算にも、願わくは計上したいと思つたのでございますけれども、何分にも問題自体が、やつと連合軍との関係においても、表に取上げ得るように、講和会議後初めて相なりましたような次第でありまして、いかなる援護措置を講ずるか、従つてそれで予算を積算すると幾らになるかということがきめられないわけであります。つまり援護の方法なり、範囲、金額なりという実体法を今日なお検討中でございまして、従つて予算を積算することができませんでした。また手続的に申しましてもたとい実体法規の関係を、あるいは半月、一月の間につくりましても、何分にも終戰以来特に遺族に対しては何らの手当をいたしておりませんので、遺族はどういう状態にあるか、何という人の遺族に何という人がおるか、それがどこにいるか、というようなことが確定をいたしておりませんので、かりに実体法規が今日できておりましても、やはり支給の対象をはつきりさせるためには、相当な日時を要して、遺族の実態調査が必要なわけでございます。そういうわけで、今回の補正予算には一億円の金額を計上いたしまして、具体案を練りつつ、片方で対象の実態調査をいたしまして、二十七年度の初頭からこれが実施のできるように、法案及び予算案を別途準備をいたしたいと考えておる次第でございます。  なお高橋委員から国の補償というお話がございましたが、われわれといたしましては、この援護に対する考え方としては、いろいろなことを考えなければならないと考えまするが、国としてそういう方々に報いるという気持と、また総体的にいろいろな点を考慮しなければなりませんので、やはり気持としてはそういつた方々に国として報いるという気持だけのほかに、やはり実質的に困つておられる方々に、できるだけ手厚くできるような生活の保護的、援護的な考え方も相当織り込んで、立てて行かなければならないと考えておる次第であります。
  71. 高橋等

    高橋(等)委員 次に遺族、傷痍者の問題を処理します上においての考え方につきまして、一、二お伺いいたしたいと思います。  この遺族、傷痍者の補償をやるということは、再軍備をなすための手段としてこれを実行するのではないかというようなことが、巷間流布されておるのであります。もちろん現在国の再建は非常な国民の愛国心を要求しておることは当然であります。また愛国心を発揮してなくなりました英霊、あるいは傷つきました人々の措置は、まだ何もなされておらない、こういうことは、たいへん矛盾を感ずることは当然ではありまするが、私は遺族、傷痍者の補償というものは、国が当然なすべきことをやるのであつて、ほかにそうした目的を持つべきではないと考えておりますが、この点については、政府の確認をお求めいたしたいと思います。
  72. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 高橋委員の御指摘のように、再軍備といつたようなことは毛頭考えておりません。再軍備問題というものは、別途将来も問題にされることがあるかもしれませんし、現実に、今日国会内においても、さような議論があるわけでありまするけれども、私ども政府といたしましては、戰傷病者及び遺族に対する援護というものは、人道上の見地からいいましても、あるいはまた国が過去において国のためにこうした災厄を受けられた方々に報いるという考え方からいたしましても、これはもう当然のことでありまして日本がかりに今後未来永劫、新憲法の精神によつて再軍備をしないにいたしましても、遺族、傷痍軍人の援護というものは、できるだけ急速にやるべきものであると考えております。
  73. 高橋等

    高橋(等)委員 遺族、傷痍者中の困窮者に対する援護につきましては、先ほど大臣のお考えを承つたのでありますが、その困窮の原因が、戰争または一家の生計の中心である主たる維持者の戰死に原因をいたしておるのでありまするから、特別の立法措置を講ずる、すなわち生活保護法を適用するにいたしましても、それ以前に特別立法による援護を與える方法をとるのが当然と考えますが、この点につきまして厚生大臣の御見解を承わりたいと思います。
  74. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 御意見通りでございます。單に生活保護法によつて生活を立てる道があるから、それでよろしいということを決して考えておりません。戰死によりまして働き手のなくなりました遺族といつたような方々につきましては、本来生活が困難であるといなとにかかわらず、国として何らか報いる道があつてしかるべきものだと考えておりますが、そのほかにやはりおのずから特に困つている方々にはめんどうを見るつもりでおります。この場合にも、それは單なる生活保護法の適用とは異なりまして、あくまでも遺族援護という建前から考えて参りたいと思います。
  75. 高橋等

    高橋(等)委員 遺族の援護の内容につきましては、まだ固まつておらないそうでありますが、少くとも遺族扶助料を復活するという観念のもとに、年金を支給する、または特に先ほど御発言の生活困窮者についての特別の措置をするとともに、子女の育英につきまして、特に考慮を拂わねばならないと考えるのでありますが、所信を伺いたいと思います。
  76. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 遺族扶助料の復活と申しますると、ちよつと旧恩給法をそのまま生かして適用するような感じがいたしますが、私どもは遺族、傷痍軍人の援護にあたりまして、必ずしも従来の恩給法をそのままの形で復活するのがいいかどうかということは、なお研究をいたしたいと思つておるのであります。ただいずれにいたしましても、遺族に対しまして、実質的に扶助料に相当するような年金の形のものをやはり中心にして考えて参りたいと思つております。まだ具体的に固まつたわけではありませんが、大体そういう意味で考えておるのでございます。なおその場合に、本来国が戰死者の遺族に報いるという観点からいいましたならば、その人々が金があろうとなかろうと同じだという考え方もございましようけれども、今日の状態からいつて、非常に一般的に高い手当を出すということも財政的には困難があると思いますので、おのずから生活に困難されている方々には手厚くいたしたいと考えておりまするし、またその間においてなお勉強中の子供を持つている遺族に対して、その育英の面からいつて、できるだけごめんどうを見れるような措置を、援護法の仕組みとして織り込んで行くことは、十分に頭に置いて研究をいたしたいと思つております。
  77. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 関連質問ですから、あまり長くなりますと悪例を残しますので、またの機会にひとつお願いいたします。
  78. 高橋等

    高橋(等)委員 しかし、この問題は非常に大切な問題ですから、もうちよつと時間をいただけませんか。もう五分ばかり、それともまたの機会にいたしますか。中途半端になつてしまいますので……。
  79. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 最初関連質問という申出であつたものですから、関連質問というのは、従来の関連によりますと、大体一問に限つております。まあ例外として、もう一問にお願いいたします。
  80. 高橋等

    高橋(等)委員 それじやもう二つお願いいたします。
  81. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 それではひとつ簡潔に願います。
  82. 高橋等

    高橋(等)委員 傷痍者は現に生存いたしておるものでありまして、その生活保障というものは急を要し、また大切なことでございます。これに対しまして、いかなる措置をなされようとしておるか。それからまた物的補償のほかに、精神的援護ということが非常に大切でございます。英霊に対しまする国家の手による合同慰霊の行事の施行、あるいは遺家族の日常生活の世話をする組織であるとか、傷痍軍人の援護、授産または就業に関しまする制度等について、種々考えられますが、物的補償と並行して実現せねばならぬと思います。政府の所信を承りたいと思います。
  83. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 ただいまのお話の傷痍者の方々に対しましては、先ほど申し上げました通り、現在の昭和二十一年勅令第六十八号によりまするわずかな恩給というものは、まことに不十分でございまするので、今日戰傷病者及び戰没者遺族等の処遇に関する連絡打合会で、具体的な方策を目下考究しておるところでございまして、現在までに比べまして援護が十分になると考えておるのでございますが、具体的にどの程度どうするかということは、もう少しお待ちを願いたいと考えるのであります。なおこの遺族、傷痍者等のいろいろな相談に応ずる窓口は現在もあるのでございますが、政府といたしまして、今後におきましても、遺族、傷痍者の精神的な援護という方面につきましても、できるだけの措置を講じたいと思つて、将来のくふうをいたしておるのであります。
  84. 高橋等

    高橋(等)委員 最後に大蔵大臣にお伺いをいたしたいのであります。遺族、傷痍者対策費は、犠牲者も非常に多数に上りますために、きわめて多額を要します。遺族扶助料、傷痍者の恩給を復活して、もしこれをかりに現在の物価に引直して支給するといたしますると、九百億円くらいに達すると考えられます。現下の財政状況からいたしまして、こういう多額のものを支出し得ないということは、まことに残念でありますが、しかたがありません。しかし遺族、傷痍者の補償は姑息な方法と金額ではならないと考えます。政府は最善の予算を組んで善処しなければならないのでありますが、大蔵大臣はいかなる程度を来年度予算考えておられるか、もし金額を明示できないとしますれば、いかなる構想を持つておられるか、その点をお伺いいたしておきたいと存じます。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げますが、傷痍軍人並びに軍人遺家族の援護の問題と、また軍人恩給の問題は、つながりあつたり、また別々々のこともあるのであります。これをどういうふうに考えますか、軍人の恩給だけでも今までの制度をそのままやつて行きますと、今のペースで七、八百億円いるのではないかという推算も立つのであります。しかしこれは概算でございます。終戰後軍人並びに軍人遺家族、傷痍軍人等の状況がはつきりしておりませんので、実態を一億円の調査費で早急に調べまして、そしていろいろな点を考慮いたしまして、財政の状況等をもにらみ合せて考えたいと思います。今どれだけの金額になるかということは、実態がまだ把握されておりませんので、今後十分調査して善処いたしたいと思います。
  86. 庄司一郎

    ○庄司委員 日本開発銀行関係のことを、簡單に二点ほど伺つておきたいと思います。  日本開発銀行は、国民の多大なる関心を待望のもとにその営業を開始されて、まだ半歳になるか、ならぬかの日数しか持つておりません。開業早々の開発銀行でございますが、参考資料としてすでにちようだいしておりますので、開業以来融資された業種別及び件数、金額等については、あらためて承る必要はございません。そこでお伺いしたい第一点は、ただいま議題になつておる七十億円でございますか、これらを加えて最初の資本金、それから復金関係の回收金をただちに右、左にこれを融資に向ける、かような合計において、ただいま議題となつておるこの補正の開発銀行政府出資がきまれば、総計どの程度の金額を本年度内に融資される意図であるかどうか。  それから第二点は、復金を合同あるいは合併といいましようか、そういう御計画を持つておられるそうでありますが、その併合あるいは統合の目標というものは、一体いつの日に合併が成就するのであるか、その時日の問題。それから現在は開業早々でありますから、多くを望むわけに行かぬでしようが、開発銀行の本店は中央部にあり、各都道府県には他の勧銀や興銀のような支店とか、あるいは分店とかいうものがございませんので、融資を受けんと希望する者は非常な困難を来しておる。そこで復金の統合後においては、少くとも全国七ブロツクの主要なる都市等に支店を設けられることが望ましいことである、願わしいことであると考えておるのでありますが、支店の増設、あるいはでき得るならば各都道府県にそのブランチを設けるということが望ましいのであるが、どういう御意図を持たれておるか。願わくは、せつかく国土総合開発とタイアツプしてでき上つたところの開発銀行でありますから、この銀行の融資が適正にまた敏速果敢に行われて、わが国の産業復興のために寄與するところ大ならしめんとするところの意図のもとに、このお伺いをしてみたいと思うのでありますが、最初開発銀行当局のお答えをお願い、これらに関しまして監督者である大蔵大臣の御答弁もお願い申し上げたいと思うのであります。  委員長、私はこれで終りでありますが、あとの法務、文部、建設は後日に留保してこれで終ります。
  87. 中村建城

    中村説明員 ただいまの庄司さんの御質問に対してお答えを申し上げます。  第一の資金額の点でございまするが、これは当初見返り資金から百億円御出資いただくことになつておりまして、ただいままで三回にわかちまして、七十五億円出資を実行していただいております。あと二十五億円が未拂いになつております。それから復興金融金庫が解散いたしますると、その権利義務一切が開発銀行に承継されます。そうしまして復興金融金庫が元金並びに利子を回收いたしましたうちで、百二十億円という額を本年度予算として政府に繰入れることになつております。それを超過いたしましたものは、開発銀行において使えるという建前になつておりまして、当初はそれを六十億円と見ておりました。出資の百億円、復金の六十億円、合計百六十億円の計画をしておつたのでありますが、その後復金の回收も非常に順調に進みまして、その余剰額が二十億円ばかりふえて、八十億円くらいになるのじやないかと思つております。その上に今回ただいま御審議中でありますが、補正予算の七十億円を追加御出資いただきまして、それで当初の百億円、復金の回收超過金の八十億円、新しく御出資の七十億円、合せて二百五十億円というものが使い得る資金になるのであります。  また第二の問題は、合併の日というお話でございますが、これは法律上は本年度中政令の定める日において合併するとなつておりまするが、実際問題といたしまして、ただいまは復金の予算がございます。また開発銀行は当初の小さな予算がございまするが、これが一緒になりましたときに活動に要する経費の予算がないのであります。そこでただいま政府におかれまして、この予算委員会に補正予算を出しておるのでございますが、この御決議を願いましたならば、その後におきましてなるべく早く合併をいたしたい、かように考えておる次第であります。  第三に支所の問題でございますが、御承知かと思いますが、ただいま復金におきましては、北から数えまして、札幌、仙台、福島、新潟、富山、名古屋、大阪、神戸、高松、広島、福岡と十一箇所に支所が置いてございます。開発銀行は、発足当時地方に支店を置くことも考えたのでありますが、現に復金の支所がございます。そこへ乏しい人数でまた店舗を構えることも不経済でありまして、復金と一緒になつたころに、復金の事務所をこちらの事務所として使おう、かように思いましたので、いずれ復金が解散いたしまして、開発銀行がその権利義務を承継いたしましたあかつきには、これらの支所をば開発銀行の支所として使う計画でございます。但し現在は、大阪には相当の人数がおりますが、他の支所は非常に手不足でございます。これはなかなか所要人員を得がたいので、適当の人を養成いたしまして、できるだけ早く人員を充実しまして、支店としての機能を発揮させたいと思つておりますが、まだいつごろ、どこをという、具体的な計画はきまつておらないのであります。以上御答弁いたします。
  88. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明後二十九日は午前十時委員会を開会いたしまして、参考人の諸君より意見を聽取することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十八分散会