○
永岡参考人 御
紹介をいただきました全
逓信従業員組合中央執行委員長の
永岡光治でございます。
郵便料金値上げに伴う
郵便法の
改正につきまして、直接に
郵便事業に携わ
つておる
従業員の
立場から、この問題について
意見を申し述べたいと
考えます。
まず
料金の問題であります。私
どもは
郵便事業の
公共性はあらゆる面から痛感しておりますし、またその使命の重要性も感じておりますので、
料金は低
料金であ
つてしかるべきだし、もし赤字が出れば
一般会計から補填するというのが最も理想的な形態であるし、望ましい形であると思
つておるのであります。ただ残念ながら、それがはたして現在やられておるかどうかということに問題があるわけであります。
一般会計からの繰入れの問題については、なるほどりくつとしては成り立つのであります。また私
どもそのことを願
つて当局の方にも要望しておるのでありますが、容易にそれがいれられない。これは
一つの折衝の形を
考えて見ても理解できる問題であろうと思うのでありますが、このために
従業員にとりまして幾つかの不利な事態ができておるということが私
どもの問題にしたいところであります。それはたとえば、同じ
局舎の中に電通、郵政という二つの職場があるのでありますが、一方は黒字だということで手当が比較的多く出る。それは現在の生活状態から
考えれば、とても及びもつかないわずかな
金額でありますが、それにしても郵政に比較すれば、莫大な率に及ぶものであります。そういうものが同じ職場の中にありますので、
従業員として、また組合の責任者として私
どもは悩み続けて来ておる問題であります。なぜこれが解決できないのか、両者の間において仕事の量を比較し、労働
条件を見た場合に、
郵便事業に携わる者がなまけて楽をしておる、こういうことは絶対にあり得ないのであります。むしろ地方におきましては、特に降雪期、雨季における、あるいは山間僻地における
郵便配達
従業員の労働
条件を見た場合には、むしろそれ以上に苦しい労働
条件をしいられておるのではないか。にもかかわらず、
郵政事業が赤字であるという
理由で、いろいろな手当が葬り去られておるのが現在の状況であります。そこでこれを
一般会計から繰入れてくれということが私
どもの強い念願であります。現在までにそれがいれられていないというところに問題があるわけであります。この問題については、私は実は
郵政事業の将来というものを
考えた場合に、非常に恐ろしい感じがするのであります。
郵便事業は
公共性の強い
事業であるし、文化
国家としてこれを伸ばさなければならぬ。だから山間僻地といえ
ども、損をしてもこの
事業は
政府の方でや
つて行かなければならぬ。そういう
意味で新聞その他につきましても安い
料金で、政策
料金としてやるんだということが、口ではしきりに言われており、その
事業の発展強化は盛んに主張されておりますけれ
ども、今までの
政府や、これは失礼に当るかもしれませんが、現在の
国民の代表の
方々が、どこまでこの
郵政事業というものを真剣に
考えておるのかということについて、多分の疑問を抱かざるを得ないのであります。たとえば同じ公共
事業の中でも、電気
事業にいたしましても、
国鉄の
事業にいたしましても、専売
事業にいたしましても、あるいはガス
事業等にいたしましても、これは
国民の生活には非常に重要な産業であります。しかし、その面はどんどんと
料金が引上げられて行く。
国会の承認なしにどんどん引上げられて行く
事業があるにもかかわらず、重要だと口に言う
郵政事業については、その点が何ら慎重に考慮されていないのではないか。むしろ恐れることは、閣議の中で、いろいろ
料金が上げられるけれ
ども、世の中には何か
一つ安い
料金があ
つてもいいのではないかというような
意味で、この
事業に
料金の
値上げを適用されない、犠牲をしわ寄せられるおそれがありはしないかということであります。もしそうであるとすれば、この
事業にと
つて将来大きな危機を感ずるのでありまして、いわば
郵政事業を軽んずる傾向が、
郵便料金の
値上げ反対ということにな
つて現われるのではないかということを非常におそれておるのであります。こういう面から、私
どもとしては
郵政事業を重視するという方向に持
つて行くように、
国会の議員の
方々も御努力を願いたいと思うわけであります。
もう
一つは、先ほ
ども触れましたけれ
ども、
従業員の間に、この
料金値上げの問題について最近どういう空気が出ておるかということであります。先ほど申しましたように、生活費の中でわずかの分野を占める
郵便料金については、
法律によ
つて、
国会の議決によ
つてそれぞれきめられるのでありますが、生活費に大きな分野を占める電気
料金であるとか、ガス
料金であるとか、あるいは新聞
料金等のごときが、か
つてに
値上げされ、それに携わる
従業員は、
郵便事業に携わる
従業員よりは非常に恵まれた生活
条件である、高い賃金をもら
つておる。こういうことで、実は最近
従業員の中から大きな不満の声が出ておるということであります。私は
郵便事業の尊い使命、その持つところの
公共性からして、特に戦後における破壊された
郵政事業の立て直しということにつきまして、真剣に
従業員に訴えて参りました。
従業員も、組合もその気持にな
つて、何とかして
郵政事業を立て直したいということで、日夜奮闘されております。現在では、超過勤務手当をもらわぬでも、とにかく
事業を守
つて行こうではないかというところまでの決意も固めてもら
つて、
事業の復旧に努めて参
つておるのであります。待遇
条件の改善について私
どもが
当局と交渉する際、
当局の答弁は、
郵政事業の赤字からそれができないというようなことを言われて、それが組合員に普及して参り、遂に
従業員としては、もはや適正なる
料金の
改訂については、やむを得ないではないかというような空気が出て参りました。私は押えに押えて参りましたけれ
ども、もはやその勇気を失うような段階にまで現在来ておるわけであります。従
つてこの面からして、私
どもは適正
料金設定という
意味で、
料金の
改訂を認めざるを得ないのであります。しかしながら、
従業員の
立場として認めるには、赤字下あるから待遇の改善ができないのだというようなことでなしに、この
料金の
改訂をしたならば、ぜひ待遇の改善の方向に持
つて行
つていただきたいことを切にお願いする次第であります。
もう
一つは、この
改訂につきましての
金額の開きでありますが、第一種が十二円、第二種が四円、第三種が
一円にな
つております。これは直接事務をあずかる者といたしまして、労働
条件と非常に関連がある問題でありますので、皆さんにお聞き願いたいのであります。先ほ
ども進藤先生から
ちよつと
お話がありましたが、四円という
金額、十二円という
金額は、窓口
関係の取扱者にとりまして非常に不便なのであります。これは余分な仕事をさせられるのであります。しかも、この端数のために夜おそくまで居残りして締めなければならぬり端数のために
計算が合いにくいのであります、しかも先ほど申したように、手当のもらえない超勤を夜おそくまでしなければならないという運命にあります。これは
原価計算の上から申しましても、やはり区切りのよいものが望ましいし、現実に私
どもが毎日窓口で聞く公衆の声からいたしましても、端数はなるべくつけてもらいたくないというのが、公衆の偽らざる声だと私
ども受取
つております。そういう点で、これはぜひ五円にしてもらいたい。それから第一種の
料金でありますが、これは実は先生方からお聞きしたのでありますが、事務
当局の資料を見ましても、
原価計算によりますと、第二種は五円をオーバーしておりますし、第一種が約七円近くにな
つておるのでありますが、第一種をその約倍の十二円にいたしまして、第二種の方を四円にして、その欠損をこれで補おうとしておる。もう
一つは第三種について、
原価は六円三十四銭と出ておりますが、これを
一円にしかしないというと、わずかに二十銭の
値上げであります。いろいろ輿論機関等の
関係で考慮された点はわかるのでありますが、直接事務に当る
郵便配達の声を聞いて見ますと、山の奥まで行く。最近は特に配達料が高くな
つておりますので、ほとんどの新聞というものは
郵便によ
つて参ります。毎日のように山奥まで
郵便をかついで行かなければなりません。私は実はせんだ
つて四国に参りましたが、四国の高い山に雪がたくさんあります。ここへ、普通ならば
郵便がないところを、新聞があるために行かなければならぬという状態にな
つておりますし、北海道や九州の状態を見ても、この第三種、新聞のためにどれだけ人が苦労しておるか、そしてその荷物がどれだけかさんでおるかは言語に絶する
程度でありますが、そういう
意味からして、それをわずか
一円にするということはどうも了解に苦しむのであります。そしてそういう欠損を第一種で全部補
つて行こう、そのために第一種
料金が約二倍になる、これはおそらく了解しない
金額であろうと私は思うのであります。のみならず、これは利用の状況がらいたしまして、事務
当局で
考えられておる収入の予定が、このままで行けばおそらく第二種がより一層ふえて、第一種が減
つて欠損の分が、より数がふえることによ
つてますます欠損にな
つて、結局は収支が償わないということになる。これは私
ども実際に事務を担当しておる者の見解で、間違いないということが断言できるのであります。そういう
意味からして、私
どもは第一種を十円として、能率も上げてもらうし、
一般公衆の気持もこれでくんでやる、こうしなければならぬと思うのであります。先ほど申し上げましたように、第三種についてはもう少し検討の余地があると私
どもは
考えております。
いろいろ申し上げましたが、最近私は国際
郵便電信電話労働組合連合の国際
会議に参りまして、ヨーロッパ各国の
郵便事業の状況を視察して来る機会を得たのでありますが、先生方に
参考になればと思いますので、今提案されている問題と多少関連もありますから御報告申し上げたいと
考えておるのであります。
まず向うへ行
つて感じますことは、
日本の
国民の
郵便というものに対する感じ方と、ヨーロッパ
国民の
郵便というものに対する
考え方とには大きな開きがある。非常に
郵便事業というものを権威づけておりますし、従
つてその
従業員に対する待遇も、
一般公務員よりは一グレード必ず高い、これは欧州各国共通した問題であります。そういうふうに高く認めておるということが第一点であります。それから
郵政事業というものは、
日本の場合はたまたま飛脚という制度から発達した歴史のために、
一般国民から軽んぜられるという結果を来しておるのではないかと思うのでありますが、ヨーロツパ諸国でぽ、大体がメイル・コーチから発達しております。
郵便局というもの中心主義をと
つておる。たとえばスエーデンのごときにおきましても、
郵政省があらゆる仕事をや
つている。各官庁の物品調達、それから印刷——通訳の聞き違いがないとするならば、造幣もたしか
郵政省でや
つておるわけであります。それほど
事業をや
つております。スイスの例を見ましても、
郵便局がバスの
経営をしておる。それから小包等においてもなべが出る、かまが出る、自転車が出る等で、聞いてみると目方の制限が五十
キロばかりあるのだそうでありますが、形は全然制限がないということにな
つておる。しかも駅の隣のホーム続きに必ず
郵便局がある。そのためにお客は小包を駅に出さずに
郵便局に行く。
郵便局員が配達する。なるほど家まで配達してくれるのでありますから、別段苦労はないのであります。そういう
意味で、
郵便局というものの持つ使命というものは非常に大きく、また広い分野があるわけであります。それで私、
考えるわけでありますが、全国一万三千に及ぶところの局数を持
つており、しかも山の奥まである
郵便局を
考えるときに、もう少し
国家としてこれを活用する方途はないものかどうか。これは私
ども考えさせられるのであります。たとえば、もし
日本の方向として社会主義政策、社会保障制度の方向に行くということをだれもが了解できるとするならば、その福利厚生
関係のセンターとしてこれを十分活用できる分野もあるでありましようし、その他
考えればいろいろ知恵も出て来ると思うのでありますが、この際
事業の縮小ということではなしに、
郵便局というものはもう少し広い分野において、
国民生活の中に入り込むような政策をぜひ講じてもらいたいと思うわけであります。
それから
料金関係でありますが、ヨーロツパ各国では、
法律でその都度きめられるというものはほとんどありません。全部が全部とい
つていいぐらい委任命令にな
つております。従
つてスエーデンのごときにおきましても、いまだか
つて赤字を見たことがないという話でありますが、実はそれほど
郵便料金というものが、
国民の生活の中に占める分野はごく微々たるものであるという証明にもなるのであります。そういう事態を見て参りました。
それからもう
一つは
はがきと
封書の開きでありますが、どこの国とい
つてもいいぐらい、大体せいぜい二割から三割
程度の開きであります。
日本みたいに二倍というような開きは絶対ありませんし、今度の三倍のごときは、世界の笑いものになるのではないかと私は
考えておるのであります。そういう
意味から非常に
参考になる分野がたくさんあることを申し添えておきたいと思うのであります。
いずれにいたしましても、私
どもとしては、
料金の
改訂というものは適正
料金の設定という
意味であります。しかもそれが、痛めつけられた現在の
従業員の
立場において、やむなく
改訂を認めざるを得ないという段階に立至
つておりますので、その気持を十分くんで御
審議を願うとともに、さらにこうしたことにいたしましても、おそらく
郵便事業というものについては、まだまだ赤字が出るであろう。このことだけは言えるのでありまして、その際にはぜひ
一般会計から繰入れというものを——はつきり償うだけのものは必ず補償する、赤字が出る分は必ず補償するという制度をこの際ぜひ私は確立してもらいたいことを重ねて要望いたしまして、私の
参考意見を終る次第であります。