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小笠原八十美君 私は、共産党を除く
各党各派を代表いたしまして、ただいま
議題と相なりました、私外二十二名
提出、無
畜農家解消に関する
決議案に関し、いささか
趣旨の
弁明を行いたいと存じます。
まず
決議案文を朗読いたします。
無
畜農家解消に関する
決議案
農家に対する
家畜の導入を促進して
食糧の増産、
農業経営の
合理化を図り、併せて
わが国民の食
生活の
改善、体位の
向上を期するは、
経済自立の達成、なかんずく数百万トンに上る
外国食糧依存の
軽減を要する
現下の事態にかんがみ、一日もゆるがせにできぬ
緊要事である。
よ
つてこの際、
政府は
全国三百万戸無
畜農家中、有畜化容易な百数十万戸を解消して、速やかに
有畜農家たらしめるべく、
国家資金の
特別融通による
対策を確立し、
次期国会においてこれが必要な
予算措置を講ずるとともに、これら
農家の
有畜営農基盤を鞏固ならしめるため必要な飼料、
改良増殖、
家畜取引等に関する
抜本的施策を講ずべきである。
右決議する。
われわれがあえてここに本
決議案を
提出いたしましたゆえんのものは、まず第一に、
現下わが国民の
食糧構成を
検討いたしまして、
栄茂の
質的向上の
必要性を強調せんがためであります。
日本国憲法第二十五條は、すべての
国民に対して健康で文化的な
最低生活を営む権利を保障しておりまするが、
現状はいかがでありましようか。標準的な
栄茂水準に対しまして、脂肪、
蛋白給源の国内産は、乳において百五十万石、肉六千万貫、卵四十億個の不足を告げ、年々増大する百三十万の
人口をかかえ、この情勢はますますはなはだしからんとしております。夫る二十三日、
わが国は国際
食糧農業機構への参加を認められることと相な
つたのであります。この機構は、世界の諸
国民の
栄茂水準の
向上について
勧告することを任務の
一つとしておりまするが、
わが国民の
栄茂水準が、脂肪、蛋白においてきわめて低位にありますることは、これすでに一個の
国民常識でありまして、ここに一々
栄茂対策審議会の
研究にかかる結論をあげてみる必要もないのであります。
この事態を
改善しまするため、ただいま
栄茂強調週間の展開せられておりますることは、端的にこの事実を証明するものでありまして、われわれは心をむなしゆうしてその原因と
対策を考えねば相なりません。国際社会での飛躍を要請せられる今後の
国民としては、飯とたくあんの世界観を脱却し、総合的な
食糧対策を講じまして、高度の合理的
栄茂水準を用意し、
国民体位の
向上をはからねばなりません。
かように
国民食糧の問題を質と
内容の面から論ずるにとどまらず、さらに「数量の面からも深刻に考えてみる必要があるのであります。年々の
主要食糧の需給におきまして、海外領土喪失の結果、二千万石内外の不足を来していることは御
承知の
通りであります。戰後、歴代
内閣の重要政策の
一つは、これらの不足
食糧を、輸入並びに国内自給によりいかにして確保するかということでありました。国内産に比べて割高の輸入
食糧を
国民に配給するために、国はすでに数千億円の国幣を費して参りました。国内
食糧の増産のためにも、肥料その他資材の増産、種苗
対策、土地
改良、病虫害防除等あらゆる
施策を講じて参りました。しかもなお一方におきましては、
人口の増大、災害、つぶれ地等、需給面にマイナスの作用があるとは申しながら、
食糧事情は遅々として
改善されない
実情にあります。
その根因は那辺に存するでありましようか。われわれの見るところでは、化学肥料の濫用による耕地の老朽化がその重大なる要因の
一つと見るのであります。世界にまれな多肥集約農業を営む
関係上、多收穫を化学肥料の増投によ
つて求めることによりまして、地方をその根底から荒廃に帰せしめつつあることは、すでに皆様の御
承知の
通りであります。この際
農業経営内に
家畜の導入を増加せしめることができまするならば、厩堆肥等の有機質肥料の増加が可能となり、数百万石の増收が約束されますと同時に、一面においては肥料生産に余裕を生じて、東南アジア等の最も望む肥料の輸出が可能となり、外米の輸入もそれだけ容易となるし、他面においては、いもち等の病害による減收も防止し得て、一石数鳥の効果を発揮することができるのであります。この妙策は、今日すでに一般の常識とな
つておりまするがいまだ
実現しないのは、これを断行するという気慨に乏しいからであります。われわれが農村を歩きまして農民諸君とひざを交えて語ります場合、その最も強い要望の
一つは、
家畜導入資金のあつせんであります。
農地改革以後、耕地の零細化が進行し、経営規模の縮小と相ま
つて、潜在失業
人口として
農家の二男、三男の問題がやかましく論ぜられるに
至つております。都市の工業がこれを吸收し得ないとすれば、この事態は、農業を高度化し、有畜営農によ
つて救済する以外に方法はないと断ぜざるを得ません。畜産の振興によ
つて農村における雇用の
機会は増大し、いわゆる不燃焼労力の活用ができ、同時に
農家收支を著しく
改善して強靱なる自作農をつくり上げ得ることは、あらゆる統計数字が雄弁にこれを証明しているのでありまして、ことさら喋々する要を認めないのであります。
以上、種々の毎度より無
畜農家の解消、畜産振興の意義を論じて参
つたのでありますが、翻
つて畜産の
現状を見まするに、
財政金融上の
措置等、これを推進する実質的な
措置は真に貧弱をきわめ、慨嘆これ久しゆうするものであります。
畜産局
予算は年にわずか十億円内外、しかもその多くがいわゆる庁費に食われ、実際に畜産振興に投下されている経費はその二割前後にすぎず、また六十億円の農林漁業長期融資において、畜産部門に投下せられる額は、設備資金として五億円に満たないというありさまであります。今日急激にその重要性を増大し、しかも最も関心の薄い畜産業に対し、この際確固たる基本政策の樹立を要望いたし、有為転変の国際政局に処して確固不動の農村を築き上げたいと存するのであります。(
拍手)
畜産局は、明年度
予算要求におきまして、
家畜導入に対する利子補給案を
提出しておるやに聞いておりまするが、この案をも
つてしては、農民の熾烈なる
要求をとうてい満足させることはできません。(「その
通り」
拍手)すなわちこの際、まず第一に、
全国三百万の無
畜農家の相当
部分を解消する。第二には、既存
有畜農家の経営規模を拡大し、その経営基礎を強化いたしまするために、十箇年程度の計画をも
つて、国家みずから低利な
家畜導入資金を貸し付け得る
措置を講ずべきであります。(
拍手)しかして、資金計画の確実なる実行を保障するためには、
法律によ
つて資金融通準則の設定並びに特別会計の設置が望ましいのであります。(
拍手)さらに、かような法令の整備、資金の準備と並行しまして、
家畜の生産、流通を確保しまするために、
政府はよろしく畜産行政を拡大強化し、
家畜の
改良増殖、飼料確保、取引
改善に思い切つた
施策を実施しなければなりません。(
拍手)
政府が二十七年度の
予算の編成にあた
つてこれらの方針の具現に必要な資金を計上せられんことを正に要望して、私の
趣旨弁明といたします。(
拍手)
なお共産党より、横田君を代表として、共産党全部これに賛成の意思表示がありました。(
拍手)