○
門司亮君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする
地方財政平衡交付金の
増額に関する
決議案に対しまして
賛成の意を表するのであります。
地方財政の窮迫せる
実情は、すでに
提案者でありまする
塚田君あるいは
藤田君等から申し上げられておりまするので、私はこの点の重複は避けたいと思うのであります。問題は、
かくのごとき
決議案を、しかも従来に見ざる
財政問題に対して、
衆議院各派が
全会一致をも
つてここに提案しなければならなか
つたということが、いかに
大蔵当局の、並びに
自由党内閣の
失政であるかということを、
はつきりと
知つてもらいたいと思うのであります。(
拍手)私は、この問題がこういう形で出て来たところに、
大蔵省の
地方財政に対しまするきわめて不
認識な
状態を遺憾なく暴露したものであるということを、また言わなければならないのであります。
すなわち、われわれは、先ほど
塚田議員から申されましたように、
地財委の
勧告案、
地方の
公共団体から
提出されました
資料と
大蔵省の
資料との間にきわめて大きな食い違いがあ
つて、このどれを取捨することが正しいかというような、きわめてあいまいなお話がございましたが、そもそも
かくのごとき
状態を来すということは、この
地方財政平衡交付金自体にも問題があるのであります。
塚田君は、先ほど、前の
配付税法にかわる
法案であるということを申しておりましたが、その
通りであります。われわれは、
地方配付税法を制定いたしまして、
法人税と
所得税の三三・一四は必ず
地方財政に寄與するために
拂いもどさなければならないという
法律を制定いたしました。
地方財政の全きを期するために努力して参
つたのであります。しかるに、
自由党が
内閣を組織されまするや、ただちに三三・一四を一夜にして一六・二九に半減されたという事実、さらにその次の
国会において、この
配付税法が
地方財政平衡交付金という形にかわ
つて出て来たところに今日この問題が起
つたということを、
はつきりと
認識していただきたいと思うのであります。われわれは、
地方財政の全きを期するためには、
地方の
住民の納めた税額の中から、当然
国家はこれを
地方の
負担能力に応じて
拂いもどすという
法律を制定いたしました。この
地方財源の確保に努めたことを破壊されたということは、重ねて申し上げまするが、
自由党の大きな
失政であ
つたということを、私は
はつきり申し上げておきたいと思うのであります。(
拍手)
こうした観点に立
つて、この
決議案の
内容を少しく説明をいたしておきたいと思うのであります。それは、
地方財政委員会の
勧告に対しまする
——大蔵省の
地方財政に対する
認識の誤りであります。すなわち、先ほど
塚田君も言いましたように、
地財委では四百三十八億余の
赤字があると
言つておるときに、
大蔵省が七十七億の黒字があると
言つております。この
原因であります。どこにこういう大きな
原因があるかということを、まずわれわれは究明しなければならない。
案の
内容に上りますると、これは
地財委から出されました
勧告案の
内容でありまするが、これによりますと、
既定財政規模において、
地財委は四千五百八十一億円余の
財源を必要とすると
言つておる。
大蔵省は四千四百十二億で足りるとして、ここで差引百六十八億の減を主張いたしておるのであります。さらに重要なる問題は、
昭和二十六
年度の新規
財政需要額において、
地方財政委員会が千四百六十六億を要求しておりますときに、
内閣は千九十九億でいいと申しておるのであります。二の差額は三百六十七億にな
つておる。
今日の
日本の
地方自治体というものは、アメリカの
地方自治体とは非常に大きな開きを持
つておる。アメリカの
地方自治体は、御
承知のように完成された都市計画、完成された上下水道というように、すべての設備が完成いたしております関係から、その
地方財政に要求いたしております額は、これらの完成した部分を差引いて、残りの、将来の
発展と、さらに
住民の利福のためにのみこれが計上されておりまするので、非常に小さく見えるようではありますが、すべてがドツジ氏のさしずによ
つて行われておりまする今日の
大蔵省の行き方は、ここに大きな誤認をしておるのではないかと私は思うのであります。
すなわち、今日の
地方財政の新規需要額と申しましても、
日本の百数十の都市は、戰災によ
つてま
つたくその施設をすべて破壊されておる。破壊されておりません
地方の
公共団体にいたしましても、戰争の間は
住民の負託にこたえることができないで、すべての事業というものが戰争の犠牲として放置されてお
つたということは事実であります。従いまして、戰後における
地方自治体の仕事というものは、これらの復旧事業、あるいは
住民の負託にこたえる新規事業というものが当然なければならぬはずであります。しかるに、この新規事業の
財政需要額を三百六十七億も削るというようなところに、今日の
地方行政に対しまする
大蔵省のきわめて大きな誤認があ
つたということを、
はつきりわれわれは指摘しなければならないのであります。(
拍手)
次に問題にな
つて参りますものは、すなわち
物価騰貴によりまする一般物件費の
増額であります。これは
地財委が二百億を計上しておりますときに、
内閣はま
つたくこれを認めていないのであります。今日、皆さんも御
承知のように、
物価の
騰貴というものは、主食その他を中心といたしまする生活費の一八%、あるいは工事その他に使いまする資材は、卸
物価において五割ないし六割、小売
物価において三割ないし四割も
騰貴しておるということは万人の認めるところであり、
大蔵当局もまたこれを認めておるのであります。しかるにその
物価騰貴による一般物件費の増は、
物価の
騰貴は認めるが、
大蔵省の方針はこれ々認めない方針であるということだけで、これが片づけられて参
つておるのであります。(
拍手)
地方の自治体は、
中央の官庁と違
つて、單なる机の上における仕事でないのであります。現業庁として、いろいろな事業、工事をなさなければならないという
一つの性格を持
つておる。この性格の上に立
つて地方庁を考えて参りますならば、この物件費の
騰貴というものは、きわめて大きな役割を
財政の上に及ぼすものであります。しかるに、これが一銭も認められていないというところに、また大きな
大蔵省の考え違いがあると思うのであります。
具体的に申し上げまするならば、
地方の官庁が、
政府の意向は官庁の工事あるいは事業の中で物件費の値上りは認めていないからというだけで、はたして資材がそれだけ安く購入できるでございましようか。おそらく商人には、
政府の方針がいかに物件費の増は認めないとい
つても、
物価の上
つただけは必ず支拂わなければならないと私は考えるものであります。
従つて、これらのものをわれわれ十分に考えなければ、今日の
地方財政というものはや
つて行けないと思うのであります。しかるに、これらのものを
大蔵省は認めておらない。ここに私は、今日のこうした問題が起る最も大きな
原因があるということを考えなければならない。
その次に問題にな
つて参りまするものは
地方公務員の
給與の問題でありまするが、これにつきましては、先ほど
趣旨の弁明、あるいは
藤田君等から申されたのでありますが、
都道府県の一般職員の
給與が四百六十二円、あるいは教員の
給與が三百七十五円、
市町村の一般職員の
給與が五百七十六円、
中央の
国家公務員よりも高いから、今度のベース・アツプのときに、これだけ引下げなければならないということが、また
大蔵省の
意見であります。今日の
地方自治体の情勢は——従来
地方の
公共団体において優秀な人を求めようといたしまするならば、その権限の大きさ、あるいは文化の施設の点等を考えまして、どうしても
財政的に多額の
給與を拂わなければ、
地方の
公共団体においては優秀な技能を持つ人が雇えなか
つたということは、諸君もお認めになると思うのであります。こうした経緯と
実情を無視して、しかも
給與の安い方に右へならえするというような、ま
つたく働く者のことを考えない、べらぼうなものの
考え方が
大蔵省にあ
つたということを、われわれは指摘せざるを得ないのであります。(
拍手)
こういう観点からわれわれが考て参りまするときに、この
平衡交付金の
総額が非常に減
つておるという
一つの大きな
原因——この
地財委の
意見と
大蔵省の
意見との食い違いは一体どこにあるかということである。
地方財政委員会といえ
ども、
大蔵当局の
言つておりますように、
地方の
財政がきわめて放漫であ
つて、きわめてむだ使いをしておるというようなことに対して、
地方財政平衡交付金の観点とこれをからみ合せて考えておりまするが、しかも
地財委から出しておりまするところのあの
内容を見まするときに、
地財委みずからも、また
地方公共団体みずからも、その経費の中で八十八億有余というものは
予算の中から
節約するということが、
地財委の要求書の中に
はつきり書いてあるのであります。このように自粛した
地財委の要求であり、しかもこの自粛した
地財委の要求に対して、なおかつ二百億の物件費の値上りを
内閣が認めないとするならば、
地方の
公共団体は、みずから
節約いたしまする八十八億と、
政府の認めない二百億と、二百八十八億の歳出の
節約をしなければならないでございましよう。今日、
地方かの
公共団体が、みずから
節約するものは
節約し、この自粛した態度に出ておりまするときに、なおかつ物件費二百億を削
つて、これに追討ちをかけようとする
内閣の態度は、私はどう考えても了解に苦しむのであります。もしこういうことが、そのままの姿において
地方にかぶせられて参りまするならば、おそらく
地方財政は破綻いたしまするか、あるいは
地方の
公共団体は
住民の負託にこたえることができなくて、何らの事業もなすことができ得ないであろうということを、私
どもは
はつきり言い得るのであります。こういう
状態にな
つて参りまするならば、
塚田君が冒頭に申し上げましたように、
日本の民主化、
日本の文化は
地方公共団体の自主的自立性にあるといいながら、実際は自主的自立性が崩壊させられて、
日本の文化というものはま
つたく発達する
余地を失うであろうということを、私は非常に憂慮するものであります。
われわれは、こういう
意味から、今回提案されておりまする
決議案の
内容、
決議案の主文に対しましては、先ほど
藤田君も言いましたように、きわめてなまぬるいと思うのであります。われわれは、この
決議案の中に、どうしても公平に見て、
地財委の要求する百億だけはぜひ
大蔵省に出させるというかたい決意のもとに百億の
数字を明記いたしまして、これを
政府に要求すべきであ
つたと思います。しかるに、これが
全会一致になることのために、
自由党の諸君の気持も十分われわれは参酌いたしまして本案に
賛成をいたしておるのであります。ことに大蔵大臣は、先ほど
藤田君の演説の中にありましたように、
池田財政が健在である限りにおいては
地方財政は疲弊するであろうというような、その汚名をそそがれる
意味におきましても、どうかこの
決議案の
趣旨を十分に体得せられまして、この実現方に最大の努力を携われますることをお願い申し上げ、本案に対する
賛成の
意見を終りたいと思うのであります。(
拍手)