○石野久男君 私は、労働者農民党を代表して、ただいま
上程されておりまする
国有鉄道運賃法の一部を
改正する
法律案に
反対の意思を表明するものでございます。
今回の
運賃改正に伴う直接の原因は、
国鉄経営の中に約五百三十三億の
赤字が出た、その
赤字をどのようにして埋めるかということから発しております。しかも、これに対しては、
国鉄及び運輸省の当局においてもそれぞれ頭をひねつた後に、百七十二億がどうしても処理できない。そこで、
運賃値上げとしての
旅客二割五分、
貨物三割の
値上げにな
つて来たのであります。この問題を私たちが処理するにあた
つて、ここに出ておる
赤字を、はたして
国民大衆が責任をも
つてカバーすべきものであるかどうかということが、第一に問題になるのであまりす。
われわれは、この
赤字が出ることについての直接の当局である
国鉄そのものについて考えをいたさなければいけません。
日本国有鉄道公社が発足したときに、すでに
国有鉄道それ自体の性格が非常にゆがめられました。そうして、
鉄道の持つ公共性と営利性の問題が矛盾するままに今日の公社
制度に移行したのでございます。この矛盾する性格の中から、
赤字の克服の方策がどうしてもまかえないものが出て来たとわれわれは見るのであります。山崎運輸大臣の言葉をかりていえば、今日の
国有鉄道のあり方というものは、ちようど中二階の暮しのようなものだ、こういう発言をされております。まさにその通りの性格をも
つて今日の
国有鉄道が運営されているのでございます。
われわれは、この問題を解決するためには、どうして
国鉄の持つ公共性をもつと率直に認めなければいけない。そうして、今日ある
国有鉄道法の
改正が、根本的にコーポレーシヨンの性格から国営への形に移行されなければならぬと考えるのでございます。この公共性を積極的に推進することによ
つて、私たちはこの
赤字克服の問題を考えて行く。
津田局長が、今回の
運賃値上げの
法案の提出にあたりましての
説明に、このようなことを言
つておる。貨車の輸送効率においても、石炭の消費量においても、あるいはまた
職員数においても、それぞれ
国鉄内部においては
合理化が行われた、それは戰前のそれに匹敵するまでに
合理化が行われておる、しかるに、この
合理化でもまかない切れないものが
朝鮮事変以後の
資材の騰貴とな
つて現われ、そしてこれが今日のこの
運賃値上げの要因であるということを
説明しておるのであります。私どもは、この
運賃値上げの問題の直接の要因である
朝鮮事変そのものは決して
日本の
国民大衆の責任であるとは考えていない。この問題こそ、われわれは
政府がとる施策の中から出て来た大きなあやまちの結果であると信じておるのであります。
従つて、われわれは、この
運賃値上げの問題を考えるにあた
つても、さきに言つたように、
国鉄の持つ公共性の問題と、しかもそれの直接の要因である
朝鮮事変とからみ合せても、この
赤字の補填は、今日
生活に苦しんでおる
国民大衆の責任に帰すべきものではない。それはすべて
政府の責任において行うべきである。これは明らかに一般会計の責任において処理すべきものであるということを断ずるものであります。
昭和二十六
年度の
補正予算を見ると、その中には、
財政法の二十五條に基く翌
年度繰越しの
財源がいろいろと組まれておる。警察予備隊の金として三百十億、あるいは平和回復善後処理費としての百億、その他等々数百億の金が、あるいはインヴエントリーフアイナンスとなり、その他いろいろとして残
つておるのでございます。私どもは、今日のこの
国鉄の
赤字を補填するための
運賃値上げということについては、ただいま申し上げました、一般会計の中に腰だめされておる、もつと端的に言えば翌
年度繰越しとな
つておりまする数百億の金、
池田大蔵大臣がそのポケツトに握
つておるこれらの金が、率直に言
つて、この
赤字補填のために使用されてしかるべきものであると信ずるものでございます。(
拍手)
今日われわれは、このような苦しい中から、
国民経済に圧迫を加え、しかも
国民の
生活に非常な苦しみを與えるような
値上げに対しては
反対せざるを得ない。津田局長は、
国鉄運賃の
改正というこのパンフレツトの中において、われわれに対し、
日本の現在の
国民生活の中においては、これだけの
運賃値上げをカバーするだけの
負担能力を持
つておるとい
つておる。しかし
諸君、はたして
国民生活の中にそれだけの
負担能力を持つだけの
国民の実態があるか。今日至るところに餓死者が出、至るところに失業者がたむろしておる。この実態の中から、はたしてこの
運賃を背負
つて行くだけの力が出て来るのであるか。その力を持つ者こそ、
朝鮮事変によ
つてもうけをなした人々よりほかにはないのである。われわれは、このような
国民生活に圧迫を加える
運賃値上げに対しては
反対するものである。
また輸送
内容の
改善が行われたということを、しばしば当局は言
つておるのでございます。しかしながら、輸送
内容が
改善されていながらも、今日なお二百数十万トンに及ぶところの
滞貨が
日本の国内にたむろしておるのである。
諸君はこれを何と見るか。
国鉄経営の中におけるところの
改善合理化、そしてこの輸送
内容の
改善は、いずこの面において行われたかということを、もう一ぺんしつかり考えなければならない。われわれは、この
改善こそ軍需輸送のためにのみ
改善されていると信じているのである。
諸君は、二百数十万トンの
滞貨が今各地にあるという実態を知
つているはずである。この
滞貨は民需品の面においてあるのだ。そして
改善されたのは、ただ單に進駐軍
列車としてのみ
改善されておるだけである。われわれは、今日出ている
赤字はすべからくこうした非常に大きく利用されておる面において背負わされるものであると信じております。これはすべて
政府が行える政治の結果として出て来ているものでございます。
私どもは、この
滞貨の実態が、
日本の
国民生活の上に、
国民経済の上に與えている
影響と、そしてそのことが、今日の
日本の
生活、
国民の
生活を圧迫しているという事実に基いて、この
運賃の
値上げの
負担をすべき責任は、すべて
政府と、その
列車を利用するその部門においてのみ持たるべきものであると信じております。しかるに、われわれは軍需輸送についての多くの資料を要求したけれども、
政府当局は、占領下においてであるから、その事情を公表することができないと言
つております。私どもは、このような事態の中において、すべてその
負担を、
負担すべき者の中からとることなく、
国民大衆の中からとるやり方については絶対に
反対するものであります(
拍手)
いずれにいたしましても、今日行われようとするこの
運賃の
値上げは、
日本におけるところの多くの働く大衆を圧迫し、しかもこれによ
つて日本の
国民経済に非常に悪い
影響をもたらすものであると信じております。三木
経理局長の話によれば、この
運賃値上げによ
つておのずから他の企業にも
影響する、私鉄
運賃はどうなるか、おそらく
旅客においては三〇%以上の
値上げを必至とするであろうということを言
つております。
国鉄におけるところの二割五分が、私鉄においては三割以上の
値上げにな
つて行くという事実こそ、
国民の足を奪うものである。われわれは、このような
影響の中から、今日以後におけるところの
日本の
物価が一層強く悪い
方面に発展して行くことを信ずるのである。しかも、そのことがわれわれの
生活を圧迫する。私どもは、このような
理由によ
つて、絶対にこれに
賛成することはできない。この
運賃の
値上げは、すべからく
政府の責任において、一般会計の中から、その責をも
つて処理せらるべきものであると信じております。
労働者農民党は、以上のような
理由によ
つて、今日
上程されておりまするこの
運賃の
値上げに対しては絶対に
反対するものであります。(
拍手)