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1951-11-26 第12回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十六日(月曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長代理理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       佐瀬 昌三君    花村 四郎君       古島 義英君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       吉田  安君    梨木作次郎君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         文 部 大 臣 天野 貞祐君  委員外出席者         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         参  考  人         (京都大学学         長)      服部峻治郎君         参  考  人         (京都大学補導         部長)     田代 秀徳君         参  考  人         (東京大学厚生         部長)     斯波 義惠君         参  考  人         (奈良女子大学         学長)     落合 太郎君         参  考  人         (慶応義塾大学         学長)     潮田 江次君         参  考  人         (京都大学同学         会中央委員長) 青木  宏君         参  考  人         (京都地方検察         庁検事正)   市島 成一君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         参  考  人         (京都市警察本         部長)     永田 圭一君         参  考  人         (東京新聞論説         委員)     及川六三四君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月二十六一日  裁判所職員臨時措置法案内閣提出第四一号)  (参議院送付) の審査を本委員会に付託された。 同月二十二日  戦犯者釈放等に関する陳情書  (第八九〇号)  大阪拘置所移築計画反対に関する陳情書  (第八九一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  本日は検察行政に関する件について、京都大学事件中心として、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。本日お見えになる予定参考人は、服部京都大学学長田代京都大学補導部長潮田慶応大学学長斯波東大厚生部長市島検事正落合奈良女子大学学長永田京都警察本部長田中警視総監及び及川東京新聞論説委員青木京都大学学会中央委員長であります。  この際参考人の諸君にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、わざわざ本委員会のためにご出席くださいましたことを厚くお礼を申し上げます。特に京都より遠路御出席いただきました方々には、厚く感謝の意を表する次第であります。申すまでもなく大学は一国文化の中枢でありますから、国家は血税の中から巨費を投じて多くの国立大学維持、経営をし、同時にまた社会一般も学問の研究及び学生の教育のために、大学自治を是認いたしているのであります。ところが先般この平和な文化中心地帶に、社会国家治安を撹乱破壊するような事件が起つたのでありますも日本が近く完全な主権を回復せんとする現段階におきまして惹起したこの事件につきましては、全国民が重大な関心を持つているのであります。ここにおいて法務委員会は、京都大学事件の真相を国民の前に明白にするとともに、特にいわゆる学園の自由、大学自治と、治安維持との関連につきまして、そのあるべき姿を明確にし、もつて将来の対策に資したいと思うのであります。  以上の観点から、参考人各位におかれましては、十分忌憚のない御意見をお述べいただくことができますれば、まことに幸いと存ずる次第であります。  あらかじめ委員会運営の次第を申し上げますれば、まず京都大学事件につきまして、その実態について永田京都警察本部長市島検事正田代補導部長青木京大学会中央委員長よりそれぞれの御発言を願い、その後委員各位から京大事件実態につきまして御質疑をお願いいたしまして、次に大学自治治安対策について潮田慶応大学学長斯波東大厚生部長落合奈良女子大学学長及川東京新聞論説委員田中警視総監方々から御意見の陳述をお願いし、その後において委員各位から御質疑を行い、最後天野文部大臣及び大橋法務総裁から御意見を承ることにいたしたいと存じます。  それではこれより参考人から順次発言をお願いいたしたいと存じますが、時間の関係がありますので、大体お一人十分程度にお願いをいたし、あとは委員の御質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお念のために申し上げておきますが、御発言の前に御職業、御姓名をお述べ願いまして、発言の都度委員長許可を得られてから御発言願いたいと存じます。  それではまず京都大学事件実態につきまして、永田京都市警本部長より御発言を願います。
  3. 永田圭一

    永田参考人 それでは私から本月十二日に京都大学に起りました事件について御報告申し上げます。私はただいま御紹介を得ました京都警察本部長永田圭一でございます。まず第一に事件概要を申し上げまして、第二に京都市警一般警衛方針、第三に京都大学における警衛方針とその対策、第四に事故発生状況、第五に行幸決定後の学生動向、この順序で申し上げたいと存じます。  第一に事件概要から申し上げますが、十一月十二日午後一時二十分ごろ、天皇陛下京都大学行幸の際に、天皇制廃止等を叫び、約三十名の京都大学立命館大学、同志社大学鴨沢高等学校らの左翼学生に煽動せられました三、四百の大学生の同調者、これは必ずしも全部京都大学学生ではないのでございます。この同調者が、陛下下車両後の御料車をとりかこみまして、プラカードを掲げ、平和を守る歌や、インターナショナルの歌を高唱して、気勢をあげて示威運動を行い、そのために大学玄関前が大混乱に陷り、容易に静まらず、学内自主的警備を担当していました大学側において、その手によつて事態を牧拾することができないので、正式に警察出動要請して来たのであります。それで京都市警察本部におきましては、ただちにこれに応じて約八百名の警察吏員を即時出動せしめまして、整理に当り、ようやく陛下御出発約十分前に事なく御通路を整備して、その万全を期した次第であります。  次に京都市警一般警衛方針。今回の天皇陛下行幸に際しましては、警衛の全責任警察にあることは言をまたないところであります。しかし今回の行幸は、天皇陛下市民日常生活のありのままをごらん願うとの趣旨が根本でありますから、その意を体しまして、まず第一に天皇陛下の御身辺の御安泰と、御料車通過の安全を確保すること、第二に、天皇陛下を心からお慕い申し上げる市民には、できる限りの奉送迎上の便宜を与えること、この二点に重点を置いて警衛を行うことにしたのであります。  第三に京都大学における警衛方針とその対策でございます。特に京都大学につきましては、行幸が確定いたしましてから後に、各種の特異情報がありまして、ことに左翼学生異常動向等から、最も重要な特殊警備対象と認めまして、所轄川端警察署長をして大学当局と数回にわたつて事前の打合せを行わせました。さらに十一月六日には、市警側といたしまして、私以下警備主管幹部全員と、大学側服部学長以下の責任者数名と最後的な打合せを遂げたのであります。その内零は一、原則として大学内の秩序維持大学側が第一義的に責任を負い、大学側において処理不能の場合にはすみやかに警察出動要請する。二、警衛にあたもつて警察大学との共同責任とし、大学正門より御料車到着地点までの間に制服警察吏員十一名を配置し、御身辺警護のため約二十名の私服員を配置する。三、学内新聞記者写真記者は、学校責任において選任し、府と交渉して腕章をつける京都府でございます。四、その他必要な事項については、その都度川端警察署長と迅速に連絡して処理をする。こういうふうな内容で最後的打合せをしたのであります。その後の情報によりますと、京都大学学生のほかに、立命館大学鴨沢高校等左学生も多数参加して、京都大学の校内において何らかの事故発生可能性が非常に増大いたしまして、不祥事の発生も避けられぬように予想せられましたので、ただちに学校当局にこの情報を伝えて、一層厳重な警戒をするように連絡するとともに、かような場合に備えてあらかじめ緊急に応援することのできる部隊の編成を遂げたのであります。そして約四百名の一隊を京都大学から西約八百メートルの立命館大学並び梨木神社付近に、もう一隊を京都大学より南約二百メートル近衛中学付近に待機せしめておいたのであります。  第四、事故発生状況でございます。天皇陛下の御予定によりますと、京都大学の御着は午後一時二十分、御発は午後二時ということになつていましたが、午後零時三十分ころから表玄関車寄せ中心として、東西の線に大学の守衛、消防員補導部員等職員二百名が整然として奉迎線前列大学自主的整理員として並び、午後零時五十分ころには学生約三百名がその後方に、あるいは表門入口付近に並んで、この当時には何ら不穏な行動もなく、その兆候も見受けられなかつたのであります。ところが、午後一時ころ突然吉田分校、元の三高がございますが、その吉田分校正門の左側に「京都大学学生の一同の願い」として、「神様つたあなたの手でわれわれの先輩は戦場で殺されました。もう絶対に神様になるのはやめてください。わだつみの声を叫ばせないでください。」と大きな文字で書かれたプラカードが立てられたのであります。警察の方から学校職員にかようなものが出たと注意いたしまして、大学職員撤去命令を出しましたが、学生の方で峻拒して、とうとうそれを取下げないのでありますもそれから約五分もたつたかと思われるころ、この吉田分校内から約百名くらいの学生がぼつぼつと出て参りまして、大学表門に入つて、三々五々奉迎線前列に現われて、その最前列を占めようと割込みを企てたのであります。そのためまず表門入口西側の線がくずれ出し、次いで東側に並んでいた主として学生奉迎者がこれと呼声するかのように車寄せ並びに中央芝生一帶に流れ出して、午後一時十分ころには玄関正面築山付近が人の山となつて、まつたく数分前まで整然と並んでいた東西奉迎線が乱れて、このままではお召車通過不能の状態陷つたのであります。あらかじめ入門者交通整理に従事しておりました正服の警察職員が十一人、私服員等がすぐに大学整理員とともに協力して、必死の努力をいたしまして、午後一時十六分ごろようやく自動車御列の御通過には支障のない程度西側のところを整理確保することができたのであります。陛下予定より二分間早く午後一時十八分大学表門を御通過無事玄関に御到着になつたのでありますも服部学長の御先導によりまして陛下表玄関から本館内に入られると、すぐ午後一時二十分ごろであつたと思いますが、玄関両側から学生数十名が飛び出し、これに続いて多数のものが今御下車なつたばかりのお召車付近に押し寄せて、これをとり囲んで、インターあるいは平和の歌を高唱し始め、「天皇制反対」、「天皇行幸費育英資金にまわせ」、「戦争絶対反対」、「天皇陛下万歳と言つて死んで行つた先輩を忘れるな」などと大きく書いたプラカード四本を掲げて気勢を上げ、学長の名において職員退去命令放送車から出し、また退去勧告をたびたびいたしましたが、事態はますます混乱する状態になつたのであります。少数でありましたが、待機いたしておりました警察の正服員が懸命に制止して警告し、多数の学校職員も口々に玄関から退去せよと声をからして再三再四警告を発し、必死の制止を繰返しましたが、学生群はなかなか聞かずに、喧騒はますます激化して、このままにいたしますと、午後二時御発までには自動車御列の通路確保し得ない状態となつたのであります。この騒ぎが約十分間あまりも継続されましたが、これを見かねました大学側は、とうてい大学自身自主的整理は不可能であると見て、午後一時三十分ごろ正式に大学当局から現場において警衛事務を指揮いたしておりました私に対して、学生たち大学側職員指示制止を聞かない、とうていわれわれの手に負えないから、警察の手によつて整理をしてもらいたいという要請がありました。それであらかじめかかることがあるかもしれないと近衛中学に待機させておきました四百名の警備隊をすぐ出動させまして、表門から入れて、まず正面車寄せ付近までの通路確保に当らせたのであります。学生は品々に、「警官学内から立去れ」、「不法侵入だ」と声を張り上げて平和の歌、インター等の高唱はつづけて、いよいよ気勢を上げまして、御通路確保は相当困難視されましたが、相次いで梨木神社付近に待機させておきました部隊到着しまして、全部で八百人となつたので、午後二時の御出門予定時刻までには完全に整理することができたのであります。このときの奉迎者は約二千名くらいでありましたが、そのうち約四百名くらいまでの学生は、「天皇制反対」、「単独講和安全保障協定反対」、「警察学内侵入反対」、「天皇帰れ」、「天皇のばかやろう」などと叫んで気勢を上げていたのであります。陛下には玄関から東北約八十メートルくらいの奥まつた二階の一室内で各教授から御進講を聴取せられておりましたが、御熱心のあまり種々御質問があつて、そのために予定から約十一分間遅れた午後二時十一分にようやく御進講終つて玄関に引返され、御料車に御乗車、御発になつたのであります。そのとき警察制止線から学生たちはやはりインターを歌うておりましたが、彼らは天皇御料車に危害を加えるような不安の動向はさらに見受けられず、御視察日程混乱させて大学及び警察の両当局を窮地に陥れようとする程度の企図でなかつたかと認められます。陛下警察職員多数の護衛裡に、御無事に一般奉送者に御会釈をされて、ゆるくと表門をお出ましになつたのであります。かように陛下の御日程に何ら支障を生ぜしめずにお送りをすることができましたのは、陛下の御着が二分早く、御発が十一分遅れて、予定の四十分間を越えて、正味五十三分間大学に御滞留あそばされたこと、大学が早く見通しをつけて、正式要請をやつたこと、警察緊急応援部隊配置場所が適当であり、到着が迅速に行われたこと、不穏学生もきわめて一部分で、単にいやがらせ程度の意思であつたことなどが、そのおもな事由でないかと思うているのであります。  最後に、九月の十日ころに天皇陛下行幸決定後の学生動向についてもう少し申し上げます。このような動向行幸決定後に見られたので、特別の警備を必要とするとわれわれは考えさせられたのであります。  一、文化祭について。毎年十一月一日から四日間京都大学では同学会主催文化祭を行つておるのでありますが、何ゆえか本年に限つて行幸当日の十二日を含む十一月十日から四日間開きたいという申入れを学校にしたのであります。学校はこれを拒否いたしました。すると、「天皇来学から文化祭を守れ」、「天皇が来ても文化祭を開かせよ」というようなアジビラを配布しておつたのであります。  二といたしまして、警察官学園の立入りについてでございます。京都大学では、首脳部学園治外法権でない、治安維持責任警察にあるが、大学の要望によつて第一義的に大学自主警備に信頼されているのであるということをよく了解しておりますが、左翼学生の中耳つております同学会では、しいてこれを曲解して、大学治外法権であるかのごとくふるまい、この際天皇行幸の御警衛と称して多数の警察官学内に侵入して来るのは、学園自治を侵すものである、またこれを機会学内警官の立入りを公然許すことなるから、われわれは絶対にこれを排撃しなければならないということから、「学内秩序学生の手で守ろう」「天皇理由とする警官学内侵入反対」というアジがヒラ、壁新聞を盛んに張つてつたのであります。またこういう情勢下におきまして、所轄川端が署の警備係員大学様子を見に参りますと、左翼学生とは顔見知り合いでありますから、これら学生多数が一人の係員を取囲んで威力を示して、どんな理由大学へ来たのかと難詰する、いわゆるつるし上げを再三再四行つたのであります。非常に警察関係の者の立入りについては神経過敏でありまして、あくまでも強く排撃しようというような形が現われておつたのであります。これは川端署渡辺という巡査でありますが、常に大学へ出入りをする渡辺に関する悪口のがビラは至るところに張られております。そしてこういう妨害をいたしますので、なぜ学生がそういうことを言うか、学校管理者から大学へ入るなと言われるならともかく、学生からさようなことを言われることはないとがんばりますと、それではというので、大学補導部学生課の方へ一緒に行こうということで参ります。すると大学補導部学生課の方面でも、まあ済まぬけれども、学生がこう言うのだから帰つてくれというようなことで、管理者として大学から出てもらいたいというような口吻がありますので、学内職員にも大学自治についてこの種の誤解を持つておる人があるのではないかというふうに考えられるのであります。警察といたしましては、なるべく学生を刺激しないようにと注意はしておりますが、かような弱気を吐く人も大学の中にあつたのでございます。  第三、学長に対する申入書でございますが、十一月九日に同学会の名で、天皇陛下巡幸に際して、警官隊学内侵入を許したならば、何らかの混乱が起るであろう、それは貴下の責任であることを宣言するという申入書学長に出たのであります。学長はすぐ拒絶されましたが、大きな不満を抱いておる。  第四の情報としまして、天皇に対する公開質問状交付のあつせん方について、行幸の当日の午前十時に同学会代表者五、六名が学長室を訪れて、公開質問状天皇に手交したいので、われわれにその機会を与えてほしいと申入れましたが、拒絶せられたために非常に興奮して帰つたという情報がございます。  次に小畑哲雄逮捕について、十一月七日のデモ行進の際に、水谷長三郎代議士の宅を襲撃した犯人として、同学会執行委員である小畑哲雄を十日の午後四時ごろに検挙しました。これが相当神経を高ぶらしているという情報が入つております。  プラカードの製作について、天皇の御巡幸に際してプラカード天皇に見てもらうためであると、穏かでない大小約三十本ぐらいのプラカードが準備されて、当日午前中から吉田分校正門前、その他奉迎線後方に掲出せられておつたのであります。そのほか各人が赤い小旗を持つて、これを振りながらインター天皇を迎えようとか、プラカード学内掲示を大々的に出す、いわるるいやがらせをやつたり、天皇御料車から下車された後に、公開質問状を直接手渡しをしようというような話もあるという情報もありましたので、われわれの方といたしましては、大学が自主的にやると言うておられるが、万一の場合をおもんぱかつて、かような措置をいたしておりましたので、不幸中の幸いと申しますかさような程度陛下の御日程に何らの御支障なくお送りすることができましたので、まことに恐縮をしておるような次第であります。  一応これで私の報告を終ります。
  4. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に京都地方検察庁検事正市島成一君の御発言を願います。市島が成一君。
  5. 市島成一

    市島参考人 それでは御指名によりましていわゆる京大事件につきまして、京都地方検察庁の今日までにとりました措置概略を申上げます。  もつとも現在まで京都地方検察庁といたしましては、あまり大きな活動はいたしておりませんので、申し上げることも比較的簡単でございますが、事件発生いたしました十一月十二日の午後に、私の検察庁公安部検事から、ただいま永田市警本部長発言されましたのよりは、はるかに簡単な、ごく概略報告があつたのであります。  そこで私といたしましては、一応京都市の公安條例違反に該当する疑いがあるという見地からいたして、これが内偵を必要といたしまして、次席検事にその指命をいたしたのであります。これが十二日の夕が刻でございましたが、翌十三日、十四日の両日にわたりまして、ちようど天皇陛下丹後地方へ御巡幸になりましたので、私は十三日の朝京都を発しまして、宮津の検察庁へ参りまして、あそこで二日間待機いたしたのであります。そうして十四日の夕刻に京都へ帰つて参りまして、留守中に内偵した結果を聴取いたしましたところ、事案の大体の全貌がわかつておりまして、それはただいま市警本部長報告された通りでありまするが、あの中で、集団のうちで意識的に前進したり押し返したりして、ことさらに正常な整列を乱した行為、それからプラカード提出行為、平和を守る歌及びインターを合唱した行動、さらに天皇陛下に対する罵詈讒謗警察官に対する退去要求等を声高に発言した行動、これからの行動京都公案條例の第一條の無許可集団示威運動に該当する容疑がある、かように認めましたので、翌十五日に市都市警幹部を招致いたしまして、ここでこの事案に対しまして捜査を開始することを打合せたのであります。それにつきましては、警察検察庁がそれぞれ独自の立場で捜査をすることはやめまして、検事捜査の主体になつて警察官検事指揮下に入つて、緊密な連携のもとに捜査を進めて行くということと、それから事案の性質上非常に複雑微妙な点があるので、十分愼重を期する必要がある。それからもう一つは、ときなお陛下京都に御駐輦中でございまして、警察官警備その他の関係でからだが非常に忙しいし、また積極的な捜査活動のために陛下の御身辺を騒がして、あるいは不測の事態発生してはという懸念もございましたので、当分の間はきわめて慎重に捜査を進めて、できるだけ内偵程度をはずれないように、かりに証人を調べるといたしましても、まず内部警察官とかそういつた手近な者にとどめるように、かりに容疑が明白になつても、被疑者逮捕とかあるいは押収捜索等強権発動は極力避けるように、こういう指示をいたしまして、十五日から内面的と申しますか、内部的と申しますか、そういつた捜査を開始いたしたのであります。内々にやつて参りまして、ちようど十八日に陛下京都を御発輦になりましたので、その目からやや活発に捜査を進めて参りました。と申しましても、まだ大学当局とは、非常にお忙しい様子でありましたし、また私はこの事件は、その後社会問題にもなり、さらに政治問題化しても参りましたので、その取扱いにつきましては、できるだけ慎重を期さなければならぬという考えからいたしまして、その後も捜査内部的に極限いたしまして、まだ外部の捜査には着手いたしておりません。しかし二十日ごろになりまして、内部証人の言うところやその他の資料によりまして、大体事件輪郭がわかりましたので、私は二十一日に京都を出発いたしまして、二十二日に最高検察庁に出向し、検事総長にそのときまでの捜査事案概要捜査の結果を報告いたしたのであります。しかしそれは一応輪郭がわかつたという程度中間報告でありまして、なお総長からも、引続き捜査を続けるように、慎重にやれという御指示がありましたので、帰りましてさつそくまた捜査を続けることにしたのであります。ところがたまたま一昨夕、本院法務委員会から参考人としての出頭の御命令がありましたので、一応後事は次席検事以下に託しまして、昨日出京いたしたようなわけでございます。  捜査の結果、今日わかつておりまする範囲につきましては、申し上げたいのでありまするが、遺憾ながらまだ捜査の過程にありまするので、この際申し上げることを差控えさしていただきたいと思います。  以上、きわめて概略でございまするが、検察庁の今日までとりました処置のあらましを申し上げまして、その余は、御質問がございましたならばお答えすることにいたしたいと思います。
  6. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に京都大学補導部長田代秀徳君の御発言を願います。田代秀徳君。
  7. 田代秀徳

    田代参考人 京都大学から、本大学今回の件につきまして事実の御報告を申し上げます。  天皇陛下の本学行幸は、京都府の御巡幸予定にあつたものをお受けしたものでございます。本学では1行幸要綱――これはあとで申し上げることでおわかりくださると思いますが、行幸要綱をつくりまして、それによつてお迎えすることにいたしました。  陛下には十二日午後一時二十分、本学にお着きになりまして、表玄関から学長が御先導申し上げ、便殿と定められた学長室陛下はお入りになり、学長から本学学事一般の上奏をお聞きになられまして後に、第一会議室において、学部代表七教授から研究発表を聴取せられ、御熱心なる御下問もありまして、後説明終了は予定より約十一分間長引きまして、二時十二分、つつがなく本学より還幸せられました。行幸については授業を休止しないで奉迎する方針をとりました。当日の御警備につきましては、市の警察本部長、警邏部長並びに管轄署長らと二回にわたり協議いたしました結果、学生の良識を信頼し、大学構内は自主的に大学において警備することとして、警備要領をつくりまして、それに従つて手配をいたしました。少数の制服及び私服の警官が、主として交通整理のため、構内に配置せられました。行幸について本学全学生自治団体である同学会は関心を向けておりましたが、十一月九日配布いたしました学長あての申込書と称するビラにおいて、おおむね次のような態度をとつておりました。われわれは天皇の来学を特別に歓迎する意図も持たないけれども、また人間天皇がわれわれのありのままの姿を見るのを拒否する意図も持たない。しかしながらこの天皇の来学に際して、警官隊が多数入ることは大学自治の立場から、学内における秩序維持の立場から、絶対に拒否する。われわれは真理探求の徒としての理性を持ち、大学当局学内秩序維持に対して責任を負うのやぶさかでない。(中略)さらにわれわれは星代表も天皇と会うことのできるよう取扱われんことを切望しておる云々。十一月十日午後に至りまして、陛下へのいわゆる公開質問状と、それから陛下との面会を求めた学長への申入書陛下にお会いしたいということをしるしました学長あての申入書大学当局に提出して来ましたので、大学はこれを拒否しました。そうして十二日、当日の午前、同学会は右公開質問状ビラを非合法に配布いたしました。同日午前十一時同学会代表に対し学長から面会は不可能であり、公開質問状は取次がない旨を重ねて申し渡しました。その後奉迎の学生たちに対し同学会学生はこの拒否されたてんまつを宣伝いたしました。警備要領に従つて所定の場所に約千名の職員学生行幸をお待ち申し上げておりました。お着きになる十分前ころ、プラカード四本を掲げた約十数名の一団が警備員の制止を聞かず、東側奉迎列の背後に参りまして、またその後正門近く東側の二、三十名の一団が奉迎線から押し出て来たのを機会として、東側奉迎線全般が前に押し出て来まして混乱して参りました。このころ正門から学生数十名が構内に入つて参りまして西側奉迎線に着きました。そのために御通行の道幅を狭められましたが、陛下予定時刻に表玄関にお着きになりました。この間、前に申しましたプラカード中心とした一団の学生たちが平和を守れの歌を歌い始め、東西奉迎線の一部学生たちも出て参りまして、陛下がお入りになりました後に、からの御料車中心に人垣の輪をつくつて合唱をし出すに至りました。この中には他学校学生生徒が相当数認められました。秩序を失い、まつたく憂慮すべき事態に至りましたので、警備員も必死になつてこれを阻止するとともに、表玄関とびらを閉ざしました。混乱状態を確認した大学当局は、即時元の位置に復するよう拡声器で繰返し命令を出しましたが、その効果なく、やむを得ず現場の整理をなすために警察権の発動を要請するに至りました。右要請を受けた警察当局はただちに出動し現場の整理に当りましたが、乱闘騒ぎも逮捕される者もなく、秩序の回復した中を歯簿は御出門になつた次第であります。歯簿還幸直後約二百名余りの学生が現場において補導部長、学生課長を取囲んで警察官出動について抗議して参りまして、引続き法経第三教室においてこの問題を中心にさらに抗議が続けられました。上述のごとく陛下はつつがなく還幸せられましたが、本学行幸中一部学生に常軌を逸した言動がありました。このはなはだしく良識を欠いた学生の言動が社会を刺激し、本学の名誉をそこなうに至つたことはきわめて遺憾でありました。これに対する措置について本学は愼重協議の結果、今日までに左記のことを決定の上発表しました。第一は京都大学同学会の解散を命ずることであります。これは告示第十三号において公示せられました。それから告示第十四号によりまして、学生生徒一般に対して同学会解散に際しての注意を促すという意味における内容を持つた告示をいたしました。次に告示第十七号の公示がありまして、これによつて八名の学生、同学会において主要な地位を占め、大学秩序を乱し、学生の本分に反した八名の学生を懲戒するという懲戒処分を十一月十七日付でいたしました。その後十七日午前になりまして解散を命ぜられた同学会から、八箇條よりなる質問状を大学当局に提出して参りましたが、大学がこれを拒否いたしました。そうして十一月二十四日には本学一般に対しまして、今回の事件を機として大学の教職員学生生徒一般に対しまして、いかなる態度と措置をとるべきかということを学長名において布告いたしました。そうして本件措置のためには目下調査続行中でありまして、なお今後の教育について最善の方途を講ずべく本学補導機構の改正、学生自治会の再検討等を中心に鋭意努力中であります。  以上概略をお伝えいたしました。
  8. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に京都大学学会中央委員長青木宏君の御発言を願います。
  9. 青木宏

    青木参考人 同学会委員長青木宏です。同学会と申しまするのは、先ほど田代補導部長から申されました通り京都大学の全学自治会であります。先ほど永田京都市警本部長及び田代補導部長から申されました一部の左翼的な者の行つた行動及び計画的行動というふうなことを言われまして、しかもその一部左翼学生というのは同学会であり、しかも私たちであるという理由で、同学会が解散せられ、私たちが処分されたのであります。しかしながら私たちは一まず私のことを申しますと、私は十二日まで国に帰つておりまておりませんでした。同学会の畠委員長もそうです。また同学会幹部の中で、あすこの処分された者の中で五名の者がそれに参加していない、こういう事実がはつきりしております。で計画的行動であるがどうか。同学会がはたしてあの事件を計画したかどうかについては、そうであるかどうかを述べさしていただきたいと思うわけです。  まず天皇行幸に対して同学会のとつた態度を申しますと、同学会は人間天皇がわれわれの大学に来るのを特別歓迎もしないけれども拒否はしない。しかしながらほんとうに天皇がわれわれの象徴もてわれわれの大学を見ていたたくならば、われわれの荒廃した研究室及びわれわれの破壊した学生生活そのものを見ていただくこと、これこそが私たち民衆の幸福と平和を願われるわれわれの象徴として当然の義務であると考えたからであります。そのために同学会は、学生一般状態をお話したい、だから天皇とお話したいということを申し入れました。そしてさつき永田市警本部長が、私たちが文化祭を故意に天皇行幸のときに持つて来たと言われましたが、私たちの準備不足で準備ができなかつたために、十日から十四日までに延ばした文化祭を拒否される理由に、天皇行幸が一つの理由になつているということを聞いて、どうしても文化祭を開かしてほしい、ありのままの大学の姿を見せるならばわれわれの文化祭も開かしてほしい。また私たちのほんとうの平和と自由の意思を伝えるために、私たちは公開質問状天皇にささげて、それによつてその回答をいただきたい。もし天皇がほんとうに人類の幸福と平和を願つておられるわれわれの象徴であるならば、われわれに対してこの回答をいただけるであろう。もしそういうことに関心を持たれていないならば、われわれ国民にとつは非常な悲劇であるということを感じたからであります。  次に同学会警官学内に入れることを拒否いたしました。と申しますのは、こういう天皇行幸ということを口実に、たびたび学内警官が計画発に入られると困る。それは昨年、前進座を囲む座談会において補導部許可していながら、警官が直接学内に入つて来て、そのために非常に不幸な状態大学に引起した。またこういう事態を引起さないためにはどうしても警官を入れないでほしいということを私たちは申入れました。そこで大学当局は、十数名の制服警官交通整理のため入れるということを、同学会と申合せをしたわけです。ところが私服警官がその当日たくさん入つてつたので、ますます学生の神経を高ぶらしたわけなのであります。次に、われわれが平和の歌を歌つて天皇を迎えたということでありますが、これに対しては、私たちは君が代を歌つて天皇を迎える、あるいは平和の歌を歌つて天皇を迎えるということについては、全然拘束されない。しかも私たちは知つております。君が代を歌つて天皇陛下のために異国の山野に死かばねをさらした友達を私たちは知つております。私たちはどうして君が代を歌えましようか。むろんだれかが歌い出したに違いません、自然発生的に起つた歌声、これはだれか一人あるいは二人が歌い出したのでしよう。しかしながらこの歌はみるみる大きく擴大して行つた。時計台にこだまするくらい擴大して行つたという事実、これはみなひとしく平和を守るという現在の学生の共感、現在の学生が特に切実に希望している平和への欲求というものが発露されたのであるということを断言することができます。  それからいわゆるデモの問題についてです。これは大学当局が非常に誤解あるいは曲解されておるわけです。と申しますのは、この奉迎について大学当局学生に対して全然指示を与えていない。どこが奉迎線であつて、こういうふうに整列しなければいけないということを、前もつて全然指示していない。しかも天皇の車が西側から入るということがわかつたために、東側の前列におつた職員が、スクラムをはずしてどつと西側の方に寄つて来た。これを機会に東側の学生諸君がどつと寄つて来た。こういうことはあの場合に参加しておられた事務及長びある教授が私たちに漏らしておられます。  それから天皇の空車を取囲んだということでありますが、これもあそこはちようど平地でありまして、うしろの者が背伸びをして立つと、物理的なあれでどうしても前へ倒れるわけなんです。どつと前へ寄つたところを、どんどん前に押されて、前にのめりそうになつてずつと囲んで行つた。しかもこういう事実については決して不自然なことではない。戦後天皇が各地を行幸された際に、ほんとうに天皇の車の間近まで行つても、決して不穏な状態とか、あるいはそういうふうなことを言われたことは一度もない。しかも今度のときだけなぜそういうふうに言われるのか、われわれは君が代のかわりに平和の歌を歌いました。しかし平和の歌がどこが悪いのでしようか。  それからプラカードを持つた学生が煽動したと言つております。しかしプラカードを持つた学生はうしろの方におつたことは事実ですが、前の方に出て決して煽動してはおりませんでした。  次に学外者の問題でありますが、ほかの大学左翼学生がたくさん入つたということを言つておられます。しかしながらこれについて、大学はその目すべての門で学生証及び職員証を一々点検して京都大学学生証と職員証を持つた者以外は入れないことになります。もし入れたとしたら大学側の大きな責任だと思います。と申しますのは京都大学学生で一旦外へ出た者が、学生証を持つていないために再び中に入れなかつたという事実すらあるのであります。  次に警官隊学内に入つて来たことでありますが、これにつきましては、なるほど空車の前でうしろから半円形に集つてそこで合唱しておりました。そこへ警官隊が入つて来た。そうすると今まで傍観者的というよりも、むしろあの正門の横にガレージがあるのでありますが、そのガレージの上に乗つていた学生も、警官下れ、何しに来たということを盛んにつつ込んだわけです。大体学生の心理といたしまして、警察権力が学内に入るということは本能的に嫌悪を感じ、本能的に反抗を示すということをはつきりしているのであります。このとき同学会はどうしたかと申しますと、その場に居合せた同学会執行委員は、同学会はこの事態を拾放する、学生諸君下つてくれ、警官諸君も待機してくれ、学外に去つてくれと自主的に整理を始めました。学生はそのために下つたのであります。決して警察官が来たために下つたのではありません。学生は同学会執行委員制止したために下りました。ところが警官隊は下らない。非常にたくさんの警官隊があとあとから入つて来る。だからこそ歌声が高くなり罵詈雑言が飛ぶような次第になつたのでもります。だからあとで私たちの学生が三百名ばかり田代補導部長及び角南学生課長にいろいろなことを質問すると、田代先生は、本日の混乱を引起した原因は、確かに警官の導入あつたということを私たちの前に明言されたのであります。  次に服部学長は、天皇の車が正門を出た際に、何か事が起るかと思つたら、事なく済んでよかつたということを漏らされたということを、私はある学部長から聞きました。何も起らないのに、一体なぜこういう大きな問題になつているのか。この事実こそ、われわれに与えられる大きな問題なんです。なるほど私たちの世代あるいは私たちの先生方の世代あるいはここに集まられておる先生方の世代には、大きな開きがあります。私たちの天皇に対する態度と、私たちよりも三十年以前に生れた人たちの天皇に対する態度とに大きな開きがあるということは事実です。しかしその事実ばかりじやありません。たとえば天皇が青年二十万の血に値するという言葉が有名になつている事実。また、ニューヨーク・タイムスは、天皇国民の両條約反対を押える、あるいは天皇は、講和によつて国民にもたらされる不安を解決するために非常に重要だということも言つています。こういうことを見ても、再び天皇は政治の分野に現われて来るのじやないかということを非常におそれているの博す。だからこそ、こういうふうな一連の事実から、私たちは平和の危機、私たちの自由の危機を非常に感じているのです。この動きこそ、私たちを再びまた戦争にかり出すのじやないかという私たちの世代だけが持つ本能的な危機感をひしひしと身に感じているのであります。だから、私たちが平和の声で迎えたというのは、これは私たちのほんとうの実感であつて、また全国学生あるいは全国青年の実感ではないかと思います。具体的な事例については、いろいろなこと申したいと思いますが、御質問の際お答え申し上げることにいたします。
  10. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際京大事件実態につきまして、委員質疑の通告がありますから、これを許します。花村四郎君。
  11. 花村四郎

    ○花村委員 私は本日初めて京大事件の真相をつぶさにお聞きいたしたのでありますが、新聞その他で聞いておりまする範囲におけるよりも、より明確なる事情を御報告願いまして、まことに感謝にたえないと、申し上げたいのでありまするが、実は詳細な御報告を聞いただけでも、大いに不愉快さを増したのみならず、さらに進んでは憤激をも感じなければならないというような気持がいたしたのであります。日本の大事な国費を使つて教育のために捧げておる官位の、しかも京都大学において、この紊乱せる一面を知りまして、まことに私ども遺憾に存ずるのであります。  そこで私は服部学長に対してお聞きをいたしたいと思うのでありまするが、まず第一に常に申すことでありまするが、今日何が一番大事であるかと申し上げても、おそらく治安を確立せなければならなという問題に対して、まず一指を屈しなければならないのではなかろうか。戦後においてどこの国でも治安が乱れて、この治安確立の問題に悩まされておりますることは、世界の歴史が雄弁に物語つておる。わが国においても戦後この世界の歴史に漏れず、やはりこの治安問題に対しては相当悩み、研究もし、また施策も講じておるのでありまするけれども、これは当然過ぎるほど当然であろうと思う。住が足りましても、もし治安乱るることがありまするならば、決してわれわれ国民の生活に安定性を持つべきものではない。ここにつまりわれわれが深き関心を寄せ、治安の推移に対して心からよくながめ、これが施策に努力をせんければならないという気持が浮いて来るのであります。なかんずく最近の世相を見まするならば、ややともすれば共産主義を奉ずる者が暴力革命に移行するがごとき行動に移らんとする傾向が、あらゆる面において現われて来ておりますることは御承知の通りであります。こうした世相をながめる場合において、ことにわれわれ国民はもちろんのこと、学校の先生であろうが、あるいは学長であろうが、教育者のすべてはもちろんのこと、その他指導的立場にある世の多くの人々がこれに深き関心を持つて国民とともにこの問題を解決して参らなければ、日本再建のおぼつかないことは明瞭であります。こういう意味において、この問題に京大の学長があられる服部学長も相当深い関心を持つておられたことであり、またおられなければならないと存じまするが、この治安維持の問題に対する学長の所見を伺うと同時に、この種問題に対して教育の上において、はたまた学生補導の上において、今日までいかなる策を講じて来られたか、その歩んで来られた実績を、ひとつここで忌憚なく伺い得ればけつこうだと存じます。
  12. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。まつたく御意見と同感でありまして、これは今日われわれに課せられましたる大きな問題であります。従つて、これについて決して今日までなおざりにしておるわけではございません。各学問を教える教授方も、また学生補導を専務としておる補導関係の部員も、できるだけの力をもつて学生の補導には当つておりました。しかしながら、この機構は万全とは言えないのであります。これにはいろいろの原因がありまするが、わが国の国情として許せない点であります。その一例を申しますると、戦争後におきまして、今まで学生補導に当つておりました教官なり事務員は、あたかも戦犯者のごとき目をもつて見られ、全部これは廃止になつてしまつたのであります。それは幾分か回復しましたけれども、以前に比べますとよほど弱体であります。これは定員法とか、あるいは経費の関係でこういうふうな事情であります。しかしながら、われわれは数が少いから言つて、決してこれをなおざりにするものではありません。できるだけ精神的あるいは肉体的に努力を重ねまして、でき得るだけのことはやつて来たのでありまするが、遺憾ながらその力足りませず、一般に、と言うよりも、特定の運動に対して、これを完全に防止することができない今日の状態であります。
  13. 花村四郎

    ○花村委員 ただいまの御説明まことに抽象的で、われわれにはピンと来ないのですが、治安維持の問題の重要性については、何ら異論がないようでございます。しかし京都大学において、今日まで学生指導の上についてこういう問題に触れて、具体的に何か考えられたことはないか。もしありとするならば、そういう事実を前提としての何か学校教育の上において、あるいはまた学生補導の上において具体的に何らかの方途を講ぜられたことがあるかないか。これを抽象的でなくて、実際京大で行われたこと、あるいは実際考えられたこと、そういうことをひとつ具体的にお述べを願いたいと存じます。
  14. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。具体的のことを二、三申し上げます。まず学生補導の根本方針を決定する会を持つております。これを補導会議と称しております。これは、学長と各学部の学部長八人であります。それに分校の主事を加え、その上に補導部長、都合十名の者からなる補導会議なるものをもちまして、これで根本方策をきめます。これを補導部が実施するのであります。なお各学部及び分校におきまして――分校と申しますると、新制度による一年、二年の学生一般教養を教えておるところであります。ここの教官、こういうところでは十名、少くとも四名の補導委員なるものが、この方針にのつとりまして学生を善導しております。そのほか、実際問題といたしまして、これらが補導いたしまする一種のものさしといたしましては、諸規程をつくつております。たとえば学内の掲示規程、この掲示規程なるものにおきまして、これこれの條件以外のものは掲示はできない、こういうふうな種類のものは掲示はしていけない。一々検査をいたしまして、届出制度によつてそれをさせることにしております。それからもう一つは、学内集会規程なるものを持つております。学生学内において集会する場合には、一定の期間前に届け出、その内容を詳細に補導委員に伝えて、いろいろそこで話合いの結果、一定の線に沿うてそれ以内のものを許可するという制度を持つております。それからそのほかに、学内団体規程というものを設けております。学生自治団体といたしまして、いろいろな団体を申し出て参ります。その場合におきましては、この団体規程なるものにのつとつてその許可すべき線を明らかにし、これは不適当であると補導委員が認めた場合には、それを許可しないという態度もとつております。これが大体の具体的の事実でございます。
  15. 花村四郎

    ○花村委員 大体わかりました。次にお尋ねいたしたいことは具体的問題に入りまして、京大の本問題に関しまして、天皇陛下行幸なさるときの京都大学としての治安に関する問題を考えられたことがあるかどうか、そうしてその治安対策警備その他の計画に関する対策などはどういうものをお立てになつたか、その全貌をひとつお述べ願いたいと思います。
  16. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。先ほど補導部長が読むはずであつたかもしれませんが、行幸に対する大学警備の要綱は次のようなものを持つております。すなわち十一月十二日午後一時二十分御着、同二時御発、同日の授業並びに事務は平常通りに中止しない。本部校内の各門は左の通り措置するものとする。一、午前中は午後に備え、一般学生外のみだりに出入しないように警戒する。二、午後は各門とも一般学外者の出入りを制限する。三、裏門及び西門は特に電車通りの一般奉迎者の奉迎後の入門の留意を要する。四、御警備については、守衛のほかに消防団員及び職員が当るものとする。屋外御通路警衛としましては、御通路正門前から本部玄関前まで。奉迎者の位置は自動車通路を隔てての両側とする。職員の奉迎の位置は最前列とする。奉迎者は午後一時までに所定の場所に整列することになるので、みだりに通行しないように留意する。御警衛に当る当の位置は別に定める、と申しまして、この別に規則を設けまして警備する者には一定の場所を指定しております。屋内の御警衛に対しては、正午には左の扉を閉鎖し、特定区域の出入りを禁止する。地階一階、二階、これは御通路に近いところの不要な通路でありまして、これは扉を締める、こういうふうな状態でしておりました。
  17. 花村四郎

    ○花村委員 先ほど青木学会委員長からの説明によりますと、学校においてはこの送迎に関する、ただいま述べられたような方式を学生には知らさなかつたというようなことをさつき言われたのでありますが、ただいま申されたような事柄について、学内のすべての人に徹底するような何らかの処置を講ぜられたか、講ぜられなかつたかそれをお伺いいたします。
  18. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これは警備に当るべき者にはもちろんのこと、前日集めて詳しく説明いたしました。それから先ほど申しました補導委員方々に集まつてもらいまして、こういう方針でしますから、当日は現場において学生の方の指導を願います。こういうようなことにしておりまして、特に掲示して一般には知らさなかつたのであります。
  19. 花村四郎

    ○花村委員 一般に知らさないということが、要するに青木君の言うような学生学校の方針を知る由もなかつたというような問題が起きるのではなかろうかと思うのでありまするが、それは別といたしまして、さらに進んで先ほど市警察本部長永田さんの御説明によりますと、十二日の前にこれが警備に関し学校警察が集まつて相談をした結果、警察学校側と双方で責任を負つてこれが警備に当る、こういうお話であつたのでありまするが、この警備に対して京都大学責任を負うというのはどういう意味の責任ですか。そうしてまたその責任の内容並びにどういう場合に責任を負うかという分担をされた責任問題についてお答えを願いたいと思います。
  20. 服部峻治郎

    ○服部参考人 まず前提といたしまして、この「責任」なる言葉は、その衝に当ると御理解を願いたいのであります。もちろんわれわれといたしましては、ああいう事態が起るということは夢想だにもいたしませんでした。実を申せばあれだけの事務、消防団、教官、百数十名の者が、とにかく六十メートルの距離の両側に四尺おきに並んで、それでその奉迎の位置をさし示しておる以上は列はくずれまい、こういう信念を持つておりました。しかしながら、万一の場合をおもんばかりまして、警察の方に、外部にお願いした場合には、時を移さずに応援をお願いしますという建前をとつてつたのであります。それでも警察の方は、なお用心のために、数名の者はやはり入れておいてわれわれに協力してくださつた、こういう形であります。このもう一つの前提としましては、われわれは学生に何がしかの不穏な形勢は、前から感づかないのではありませんけれども、われわれ日本人である以上は、陛下のお近くに行つた場合には、必ずや一定の節度ある態度をとるということはかたく信じておつたのであります。それでこれだけの警備によつて万全を期し得るものと信じておりました。
  21. 花村四郎

    ○花村委員 私のお聞きしたいことはきわめて簡単なことなんです。この警備に関する責任警察側と学校側両方で負う、こういうことで警備に当られたという話ですが、そういう話合いのあつたことは、私は多分間違いがなかろうという前提のもとにお聞きをいたしておるのでありますが、その警備に関する学校側において責任を負うというのはどういう責任であるか、それをお尋ねしておるのであります。その責任というのは、要するに警備の一端をになつて何か手伝うという意味であるのか、手伝つてその結果いかなる結果が生じようとも、その結果に対する責任警察に全部背負わして学校の方では負わぬというのであるか、その生じた結果に対する責任までも負うという意味の話であつたのか、それをお尋ねしたいのです。
  22. 服部峻治郎

    ○服部参考人 少しお答えが冗漫になるかもしれませんが、この学校警察との話合いでああいうふうになりまして、お互いに協力して警備しようということになりました、もう少し先に歴史的なことがあります。それは昨年の秋に公安條例が施行せられました際に、東京都におきましては、警視庁と文部次官との間に学校内における公安條例の適用に何がしかの申合せがあつて、それを各われわれの国立学校に通達がありました。それによりましてわれわれの方で京都市の公安委員会大学とがお互いに話し合いまして、東京都において警視総監と文部次官との申合せにのつとりまして同じような申合せができたんであります。その一つの條項の中に、本学校内及び学長が管理上責任を負う地域または建物その他の施設における集会、集団行進及び集団示威運動の取締りについては、学長措置することを建前とし、要請があつた場合警察がこれに協力する。こういう申合せをしておるのでありますから、建前なれば学長が全部責任を負うべきものでありますが、警察にあらかじめ何がしかの応援を頼んでおいて、また不慮の事態が起つた場合にさらに要請をする、こういうことになつております。
  23. 花村四郎

    ○花村委員 どうもその責任の観念がはつきり上ないのですが、警備に関する責任などは学校で負うべきものじやない。また負わされてもおらない。また進んで学校が買つて出て負うべきものではない。警備に関することなどは警察の仕事で、警察がすべての責任のもとにそれぞれの治安維持の任務に当らなければならぬことはきわめて明瞭であります。一点の疑いもない。そういう問題に学校が一役買つて出て、そうしてその責任を分担しようという、その責任は一体どこから出て来ておるというのか、これを聞いているのです。ただその奉送迎の取締りに関して、学校もできるだけ協力してやろうという、軽い意味であるのか。もしそういうお手伝いをしようという意味の程度であるならば、これはまた別問題でありますが、しかし先ほど京都警察本部長永田さんの言われるのには、この取締りについては学校警察と協議の上、それぞれ両方で責任を負うという話のもとにこの御警衛が始まつたものである、こういうお話でありましたから、そうすると、警察のやる仕事までも学校が買つて出たというのか。そうでなくて仕事は警察にやつてもらつて、その足らざるところを補うというような軽い意味であるのか、それがわからないのですが、永田さんの言われるのによると、前者に解すべきものであると私はお聞きいたしましたがゆえに、しからば学校が御警衛に対して半分の責任を負うというのは、それはどこから出て来ておるのか、学校がそういうものを負うべき筋のものであるかないか、それは私はお尋ねしておるのです。
  24. 服部峻治郎

    ○服部参考人 申すまでもなく大学治外法権ではありません。今も読み上げましたように、昨年の十二月の二十七日に、京都大学京都市公安委員会との申合せによりまして、今申したように、学長が管理の責任を負うておる地域においては、そこの集会、集団行進、集団示威運動等の取締りついては、学長措置することを建前とする、こういうことを申合せしておりまして、要請があつた場合警察がこれに協力する、こういうことになつておるのを建前としまして、今度の際に警察の方と相談いたしまして、これがよかろうというので今度のような処置をとつたのであります。
  25. 花村四郎

    ○花村委員 そういう申合せをしたことはありましようけれども、そういう申合せ自体も少しおかしいように思うのでありますが、学校内部におけることは学校がすべての権限を持つてやるというようなことは、これは越権でありまして、どうもそういう申合せがいいか悪いかはよほど疑問があるのでありますが、私はその申合せを聞いておるのじやない。実際この京大事件に直面して、今論ぜられておる問題について聞いておるわけなんです。そういう申合がどうのこうのということは私のあずかり知らざるところであるので、天皇陛下が京大においでになられたときの警備に関する具体的の問題についての質問をしておるのでありますが、そういう申合せに基いて、今度の警備についてもおやりになつたと、こう言うのであるが、そういう申合せがあるならば、学園のことは学園でやつて行くという大体申合せのようでありますから、警察と何らこの問題に対して、ことさら打合せをする必要もなければ、両方で責任を分担するという相談をする必要もないのではないですか。それをことさらそういう申合せがあつてはつきりしておるにもかかわらず、この問題に対して警察学長がその前に相会して、そうして打合せをして、しかもその責任の分担まで約束されておるということですから、それで私は分担された責任のいかなるものでろるかを聞いているわけです。  それに加えて、それではさらに私はつけ加えておきますが、その申合せによつて学校内部における治安維持に関する問題は、すべて学校がやつて行くというお話でありますが、これは抽象的な質問になりますが、そうすると学校治安維持の任に当りました結果、何か問題が生じたという場合において、治安維持に関する学校責任というものはいかなるものですか。それはその申合せから責任をとるということになるのか、そうしてその責任をとる形はどういう形で行くのか、それをお尋ねしたいと思います。責任の所在です。
  26. 服部峻治郎

    ○服部参考人 学内におきましての教育補導に関連する全責任は、学長にあることは言うまでもないことであります。
  27. 花村四郎

    ○花村委員 さようなことをお聞きしておるのじやない。治安維持に関する問題なんだ。学校でそういう治安に関する問題を処理して行く権限を持つておるのかおらぬのか、持つておるとすれば、ただいま申し上げましたような申合せで持つと言われるのか、あるいは全然持つておらぬと言われるのか。それをはつきりしてもらえばいいのだ。
  28. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これはたいへん砕け過ぎたお答えになつて恐縮でありますが、たとえば個人の家にいたしましても、こころは強盗が非常にたくさんこの近所にはびこつておる。警察官が毎晩泊つてやろうかと言うておいでになる御親切に対して、われわれの家は自分らでとりあえず守るが、万一の場合はどうぞお願いします。電話番号を知らせてくださいというような態度をとつたのと違いがないのじやないかと思うのです。
  29. 花村四郎

    ○花村委員 それでは市警察本部長永田さんに今の問題をお尋ねしたいと思います。
  30. 永田圭一

    永田参考人 私の方は、警備責任は全部私どもの方にあるという建前でやつてつたのでございます。ところが今日の警察が御承知のように下から上への警察に形がかわりまして、公僕精神に基いてやらなければならぬという立場がございますので、まずそこの持主がうちでできるだけのことをするから、こういうふうに言われると、これはまことに望ましいことであるというので、一応お顔は立てておまかせはするのでありますが、そんなことを言うてもあるいはという懸念で、われわれの方としてもできるだけの手当をしておる。最後責任警察がとるということに間違いないのであります。この京都大学の具体的な場合には、実は大学の方で、自分の方で万事やるから、なるべく警察は来てもらいたくないというようなお心づもりが見えたのでありますが、それではわれわれの方の責任が困るから、一応、一般人が相当大学の中べ入るから交通整理をする必要もあるし、また陛下の御身辺警護のために、一般人の中から間違いを起してはいけない。しかし大学職員学生のそういう面についてはどうぞ大学でお引受けを願いたい。あなたの方の御家族が間違いを起すことがないように、学校で自主的にやつていただきたい。一般の面については私の方でひとつやりましようというので、先ほど申し上げたように、十人の制服の警察職員を配覆いたしまして、交通整理にまず当らせる。そうしてまた陛下がお着きになつたときには、供奉員の列の中に皇宮警察私服員もおりますし、私の方の私服もまぜて約二十人くらい御警衛に当る、こういう建前でやつたのでございまして、警備責任は私の方でとつてつた、こういうふうでございますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  31. 押谷富三

    押谷委員長代理 花村君に申し上げますが、大学自治治安関係につきましては、後刻参考人意見を聴取いたしまして、またその点についての質疑機会がありますから、ただいまは京大事件実態について御質疑を願いたいと思います。
  32. 花村四郎

    ○花村委員 私の先ほどの質問に対する服部学長のお答えは、まことに私は満足をせざるものです。個人の家の例を引かれたのですが、個人の家の考え方と、多数集合する学園治安に関する問題とを混合した考え方を持つておるというようなことが、ひいてはこういう問題を起したのじやなかろうかと思うのでありますが、たとい個人の家庭にしても、今にも強盗が入りそうだというので警察官が懸念をして、そうして行つて入らないように守つてやろうというのに、いや必要がないから帰つてくれといつて警察官を締め出すような個人の家が一体どこにありましようか。あなたの例を引けばなお不合理なんだ。しかも不穏の形勢のあるべきことは認めておられたんだ。私は始まりの言葉では、夢想だにしなかつたというお言葉を聞いたので驚いたのでありますが、その後またうすく知つておられたというような話もせられたのですが、うすうす知つおつたということであれば、なおさらそうなんだ。警察で行つて治安維持はこつちですべての責任を負つてつて上げましようと言うのに、必要がないから帰つてくれというようなことを言うて断るというこ自体が、そもそも聞違つている。またこの問題に対しましては、今委員長から後に機会を与えるということでございまするから、私の質問は後に譲りまして、事実関係はきわめて詳細にお開きをして、ほとんど疑う余地のないまでに全貌が明瞭に相なつて参りましたので、従つて私の質問は後に譲ることにいたします。
  33. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は田代補導部長にお聞きしたいのであります。お聞きの通り永田部長報告の中には、行幸確定後より各種の特異情報があり、ことに左翼学生異常動向等から最も重要な特殊警備対象と認めて、その点学校当局へも十分話をした、こういうことがありますが、さような報告なり忠告なりはありましたか。
  34. 田代秀徳

    田代参考人 警察から必要な連絡はございました。
  35. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さような連絡があつたから特殊の警備を必要であると思われたか思われなかつたか。
  36. 田代秀徳

    田代参考人 そういう連絡はありましたが、補導部としましては特殊の警備は必要がないと思いました。学生の良識を信じて、今回は間違いがないという信念をもつて対処しました。
  37. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 同じようなことだが、もつとつつ込んで、ここに書いてありますが、先ほどの報告について、不祥事の発生も避けられぬように予想せられるに至つたので、ただちに学校当局にこの情報を伝えて一層警戒を厳重にするようにはかつた、こう言つておるのでありますが、このように不祥事の発生は避けられぬと思われるほどの重大な報告があつたかどうか。あつてもあなた方はならぬと思われたか、その点をお聞きしたい。
  38. 田代秀徳

    田代参考人 不祥事がどうしても発生するという御連絡は、私は記憶しておりません。警察の方で集められましたいろいろな情報を提供せられまして、それでこういう情報が入つておるという御連絡がありました。
  39. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは重大なことなのです。ただ単に何か不穏の形勢があるということでも重大だが、ことに今報告にも言われたのですが、この通りでは「不祥事の発生も避けられぬ」ので、層やつてもらわねばならぬ、こう言われた。それをそのように聞かれたかどうか、聞かれたら、それでもあなた方は不祥事の発生がないと判断せられたかどうか、これを聞くのです。ただそんなことはありました、ではないのです。
  40. 田代秀徳

    田代参考人 不祥事が必ず起るという連絡はございません。
  41. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 必ずじやない、「避けられぬ」と予想した。私の言う通りです。必ず起るとは言うておらぬ。「避けられぬ」と予想した。それで一層警戒を要するという、こういう事実があつたかどうか。
  42. 田代秀徳

    田代参考人 「避けられぬ」という、そういうお話は私は承つておりませんでした。
  43. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは本部長に聞きますが、ここに書いてあることは間違いないですか。どつちがほんとうです。
  44. 永田圭一

    永田参考人 今日帶同いたしております警備課長に、さようなことがあつたかどうかと尋ねましたところ、川端警察署長からお畫前に電話で補導部長に、非常に険悪な空気になつておるからということを確かに伝えたと申しております。但しこういうように「不祥事の発生も避けられぬように予想せられるに至つたので」こういう言葉は使つていない。けれども、非常に空気が險惡であつてという意味のことを、十二時前に川端署長から確かに伝えておるということであります。
  45. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その程度でよろしゆうございますが、言葉はここに書いてある通りでないかもしれぬが、よほど重大なることであるという報告のあつたことは間違いないと思います。それでもあなた方は、そんなことはお前らの杞憂にすぎないのだ、そんなことはないと思われたかどうか、それとも何かはかのことで考えられたのかどうか、それを伺いたい。
  46. 田代秀徳

    田代参考人 今永田部長からおつしやつた川端署長から私に対する電話、これは確かにありました。ビラまきをしているとか、そういうような話があつたのです。それで見込みについて意見交換をしましたけれども、当時の私としましては、今までの警備要項を変更して、そして厳重警備に当るという必要も、今のところは考えられないというふうに返答したわけなのです。
  47. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そう考えられないということは、どういうところからそういう結論が出たのですか。
  48. 田代秀徳

    田代参考人 それは従来の学生動向に対する私の経験から出たのです。
  49. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もつと具体的なことをお聞きしたい。従来さような不穏なことがあつても、杞憂があつても、そういう不穏の形勢がないということですか。どういう経験から……。
  50. 田代秀徳

    田代参考人 今度の場合で言いますれば、その直前に同学会幹部学生が来まして、私どもと話合いを進めておつた、そのときの状況から察して、それであのような混乱が起るというふうなことは考えられなかつた
  51. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこであなたは、そういう判断の結果、学内のことは学校で取締りますから、警察に来てもらわぬように、こういうことをおつしやつたのですか。
  52. 田代秀徳

    田代参考人 警察官は十数名、交通整理のために入るということにきまつておりまして、ただよけい、多数の部隊を入れる必要はないとお話したのであります。
  53. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで先ほど花村委員から聞いたことに触れますが、もしそういうことを言つて警察が非常に警戒すべきものだと言うにもかかわらず、あなたの方で、いや、われわれのところでやります、そんな御心配いらぬ、入つてもらわぬでいい、かえつて入らぬ方がよろしい、こう言つて拒否された。しかるにその結果不祥事が起つたといたしますれば、その不祥事が起つた責任はだれが負うと考えますか。どうその点を……。
  54. 田代秀徳

    田代参考人 その責任は、大学において、学生を主として起つた事柄でありますから、大学自体及び学生、これが責任を考えなければいかぬと思います。
  55. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 じや責任を負うと考えておられますね。しからばどういう形で負うものとお思いになつておられますか。学生のことよりか、まずあなた方が――これは学長から承つてもよろしいが――責任を負うとおつしやるならば、どういう責任を負うのか。どういう形で責任をとられるものであるか。どう御判断になるか。その点をお聞きしたい。
  56. 田代秀徳

    田代参考人 その具体的な責任のとり方というふうなことは、目下協議中でありまして、具体的なことはこの場では申し上げられません。
  57. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私のは違うのです。あなた方は責任をとると言われるのだから、責任をとるという根拠がどこにあるかということです。警備する責任学校にあると思つておられるのか。あると思うならばとらなければならない。あると思う根拠はどこにあるか。先ほどから本部長も言われる通り、警備責任は全部警察にあると言つておる。しかるにあなた方は、われわれにあるからわれわれがとると言つておる。ここに違いがある。そこであなた方は、とるとおつしやるならば、どういう、何に基いて、どういう責任をとられるのか、これを聞いておるのです。
  58. 田代秀徳

    田代参考人 警備責任というよりは、われわれとして責任を感ずることは、教育的責任なんであります。
  59. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はそんなことを聞いておるのじやないのですよ。問題は警備の問題ですよ。警備については、学校側は、まずわれわれの方でやる、警察に入つてくれるなと言つておる。警備責任です。何も教育上の問題だとかそんな問題じやありません。陛下がおいでになるについての学内秩序です。治安ですよ。治安は、警察ではわれわれに責任があるのだと言うが、あなたの方ではわれわれの方に責任がある、だからまずもつてわれわれが治める、こう言われる。その根拠がどこにあつて、どういう責任を負われるのか。学生の教育方針や指導は、それはあた方にあるにきまつておる。私は警備のことを聞いておる。
  60. 田代秀徳

    田代参考人 警備につきましては、社会全体の警備ということは、やはり警察の任務であり、責任であるわけですから、最後責任は警任は警察にあると思います。
  61. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それならそれで、警察責任があるにもかかわらず、その責任者を除いて、あなた方が責任をとると考えられるのは、これは一体いいことですか。どういうことですか。
  62. 服部峻治郎

    ○服部参考人 なるほど最後責任は、補導部長の申し上げた通りでありまするが、これを絶対に大学警官の方の力を拒否するというようなことはあり得ないことですから、あつたとすればこれは別問題でありまするけれども、事実におきましては、話合いの上で、この程度までは大学でまずやつて行く。その際にでも、やはり警察の方の責任を持つておる大体のものは、何がしか入つてもらつておる。しかしいよいよ何かが起つた場合にはまたその方法を講じよう。万全の策は講じておつたのであります。
  63. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 こちらの問いに対して返答にならない。それは警察にあるということがおわかりになつたのなら、たいへんいい。そうしてみると、警察でどうしても必要だということになつたら、あなた方は拒否できないのじやないですか。それを拒否して、万一のことが起れば、どうだれが責任を負うんですか。
  64. 服部峻治郎

    ○服部参考人 先ほど申しました通り、これは絶対に拒否することはできないものであります。また拒否はしません。そういう非常識なことはあり得ないことであります。
  65. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 だから、前もつて言うておる。われわれの方でやれると思いますから入つてくるなと言つた。その事実に基いて問うておるのですよ。それを前提として問うのですよ。事実拒否したんじやないですか。十人の交通整理は入れたでしよう。しかしもつと厳重な警戒を要するというときに、そんなことはありません、われわれの経験上われわれでやれると思いますと補導部長が言つて拒否した。それにもかかわらず起つたら、あな方はどうするつもりだつたんですか。それを私は聞いておる。
  66. 服部峻治郎

    ○服部参考人 拒否という言葉は非常に強く響きますが、そういうことはございません。またし得ないことであります。
  67. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これ以上議論してみたつてしようがないからあとにしましよう、私もう一ぺん本部長に聞きたいのは、ここには、「所轄署の警備係員情報蒐集のため学内に行くと、左翼学生とは顔見知りであるからこれら多数の学生係員をとり囲み威力を示し「いかなる理由大学へ来たか」と難詰し、所謂「つるしあげ」を再三、再四行う等非常に警察関係者の立入について神経的で、あく迄も強く排撃しようとしていた。」これは学生のことです。その次に、学内職員中にも大学自治について、この種の考えを持つておるものがあつた、こう言われるが、これに対する具体的の事例をここでお示し願いたい。
  68. 永田圭一

    永田参考人 先ほどから問題になつておりました点について、一応申し上げておきたいと思うのでありますが、大学は決して積極的に警察の警戒を拒否したのではございません。かりに拒否しましても、われわれは拒否されずに、飛び込んで行つて警衛をしなければならぬという責任を感じております。ただ従来からとかく非常にいやがる傾向があるのでございます。これは何も京都大学に限らないですが、何か誤まつた考えで、治外法権的な一種の独特の権限が大学にあるかのごとく誤解する人が相当たくさん大学内におる。これはほんとうなんです。それでこういう間違いを学生たちが起すのだということを私は確信しております。それから今お尋ねの点でありますが、これはその一例なんです。最近にもかようなことがありますが、今までに若い巡査が何べんもつるし上げにあつておる事実がございます。先ほどもちよつと申し上げましたが、川端署の、大学を受持つておる渡邊という巡査が、多数の学生にしよつちゆう惡口を書かれたり、いじめられておるのです。大学管理者大学の中に入るなと言うならわかる。しかし学生がそういうこと言つて、われわれはしりぞくわけに行かぬ。それでは管理者のところに行こうというので、大学補導部学生課の方に参りますと、どうも学生の肩を持たれるようで、なるべく遠慮してほしい、済まぬけれども帰つて来れぬか、こういうふうに管理者の人がその代理者からそう言われると、いやがつているのに何もわざわざということで、遠慮して、十分な仕事もせずに帰つて来るというような傾向があるので困つてつたということを、文書にするとこういうふうになるわけです。
  69. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ただいまのお話は、先ほど青木君の言われたことと非常に関連があると思うのですが、青木君は、警察官学内に入るということを学生は本能的にきらう、こう言われた。さような事実は、補導部長なり学長においてお認めになつてつたかどうか。お認めになつてつたとすれば、そういう学生の考え方、そういう本能的の精神状態を肯定しておいでになりましたか、間違つておると思つておられましたか。これは重要なことですから、御両所からお答えを願いたいと思います。
  70. 田代秀徳

    田代参考人 その点につきましては、学生警官の方との間が非常に穏やかでないという事実があることは、はつきりしております。それで先ほど永田さんがおつしやられたような、警察官が入つて学生諸君に囲まれて、出て行つてもらいたいということになつて出て行かれた例もありました。しかしその場合には、学生警官とが直接に話合いまして、それで結局出て行かれおります。われわれとしましては、職権の執行のために警察官大学内に来られるということは、当然なことでありまして、学生には、警察官学内に来るということは、必ず用があつて来られるのだからということを、機会あるごとにお話しておるわけなんであります。それで無用な摩擦を避けるようにいたしております。
  71. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで明白にしておかなければならぬことは、あなたがさつき言われた学生の教育補導に関する問題と、学校の――一般のこともですけれども、治安問題とは厳格に区別してもらいたい。質問するとすぐ学生に対する教育についておつしやるが、われわれは教育のことについて言つておるのではないのです。治安に関することです。最後責任警察にあるということがわかりました以上は、その責任者である警察が、治安上必要があれば、入つて来て、それに対する任務につくことは当然だ。その場合に学生が云々する。これは学長からひとつお答え願いたい。その学生のやり方なり考え方がよろしいものとお思いになつておられたかどうか。これをまず承りたいと思います。
  72. 服部峻治郎

    ○服部参考人 それは不合理なものと思います。
  73. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 しからば、あなたの方の学校職員中に、ただいま本部長報告の通り学生もそういう考えを持つておる、職員もそういう考えを持つておるものをして、これらに対してあなた方は事実を知つておられたか、おられなかつたか。知つてつたら、学長としての、これに対するどういう処置をしておいでになりましたか。これをまず伺いたい。
  74. 服部峻治郎

    ○服部参考人 学生は確かに往々にしてそういうことは口にし、また形にも表わします。それでこれはその都度善導して、補導方面において間違いのないようにはしております。職員につきましては、私は実例をまだ知らないわけであります。
  75. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 知られないとあれば、やむを得ぬと申し上げるよりほかありませんが、外部の人でさえこれだけ明白に言うことを、学長として御存じないということになると、私はなはだ遺憾だと存じます。これ以上あなたをここで追究してもしようがないから私は一応これで打切ります。
  76. 花村四郎

    ○花村委員 ちよつと事実について、一言聞いておきたいことがあります。簡単ですから……。
  77. 押谷富三

    押谷委員長代理 花村四郎君。
  78. 花村四郎

    ○花村委員 ちよつと事実を明瞭にしておきたいのですが、先ほど学長は本件は夢想だもせなかつたと、こう言われたのですが、これはこういう問題がよもや起きようとは考えておられなかつたでしよう。しかし何か起るであろうことは予期されておつた、こう言われたのでありまするが、実は天皇陛下京都の方へお出かけになるということが決定いたしましてから、宮内庁並びに特審局の支局等において、関西方面の天皇陛下行幸に関する情勢を調べてみましたところが、どうも何だか不穏な空気が漂うているということを看取せられまして、そうしてどういうものだろうかと言つて相談をしておる。それは多分九月の末日ころだろうと思うのでありますが、さらにまた十月の二十五日ですか、特審局の支局並びに宮内庁でいろいろ詳細に調べたところが、どうも不穏の形勢があるというばかりでなくして、左翼分子が陛下の西下を機会に、再軍備の反対運動を展開しようということで、相当に異常な空気が漂うているということで、こういう事柄を多分その筋へ報告をしているわけであります。さらにまた十一月の十二日前において、この京大生のいろいろ内偵をいたしたところが、一部がプラカードやあるいは赤旗で陛下を出迎えしようというような何か相談をし、また方途を講じておる、のみならずその方法までもある程度まではつきり相談をしておるというような情報も入つてつたわけでありますが、そういうことについて、学校理事者としてお聞きになつたことがあるか、あるいはもし聞かぬとするならば、何か予感をされた何かあるだろうというような気持はあつたという総長のお話でありまするが、それは自分みずからの感じでそう感じたのか、あるいはこういうただいまのような情報は全然耳にしなかつたのか、それをひとつお尋ねしておきたい。
  79. 服部峻治郎

    ○服部参考人 お答えいたします。それは先ほど事実報告の中にも織りまぜておりましたように、そのことは文化祭において幾分かその要望が現われておりますし、また間近になりましては、私に対する申込書、引続いては陛下に対する公開質問書、面会を求めたというようなことで、事実は確かにありまするが、これは先ほどからまた先般も繰返し申しましたように、あれだけの警備でおりますれば、このあとはもう学生の良識にまつ、すなわち日本人である者が、陛下の前に行つた場合、たとい前にどういうことを口走つてつたにしても、必ずや静粛になるものであると信じておりましたし、ああいう混乱状態になろうとは夢想しなかつた、そういう意味です。
  80. 花村四郎

    ○花村委員 よろしゆうございます。
  81. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に大学の自由と治安問題について、潮田江次慶応義塾大学学長に対しては、田嶋好文君から質問の要旨を申し上げることにいたします。田嶋好文君。
  82. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 時間が大分切迫しているようでございますから、御意見を承る順序を変更いたしまして、私から質問の形でお尋ねをいたしたい。この質問は結局慶応大学学長潮田さんだけではないのでありまして、同じような関連において御質問さしていただくことにいたします。  きようここで問題になつておりますのは、大学の自由と治安確保ということでございます。この大学の自由と治安確保、これは非常にわれわれ国家にとりましては大切な問題であります。大学は申すまでもなくこれから日本を背負つて行こうとする国民の中堅層を養成するところであり、この教育を誤らば、日本国家の将来は憂うべきものでございまして、われわれはこの大学教育に対してたいへんな関心を持つものであります。それと同時に、国家治安というものは、これまた国家再建のため、国家将来のために、決してゆるがせにすることのできない問題であります。大学の自由を守るとともに治安確保を守つて行くこと、これがわれわれ国家に課せられた大きな義務でなければならぬと思つております。また特に今回の具体的な事案といたしましては、わが国の象徴でございますところの天皇に対する問題でありまして、これは大学の自由と往々にして混同せられるような考え方を持つおそれがあるので、同じような大学の自由、同じような国の治安問題を論ずるにあたりましても、国の象徴に対する大学の自由国の象徴に対する治安確保は、おのずから私は区別したものでなければならぬ、こういういうように考えるのであります。たとえば一国の元首に対しまして危害が加えられ、一国の元首に対して、とかく集団的な行動がとられるということは、その国自体の問題ではないのでありまして、その国が対外的に受ける信用、その国の対外的から生れる独立心、その国の将来に対しましては、大きなここに危惧というような問題が起る。たとえば、きようは共産党もおりますので、私はソビエトの例をとつてみたいと思うのでありますが、ソビエトのスターリン元帥に対して、もし日本の日の丸の旗を立て、君が代を歌つて集団行動をしたときに、ソビエトの国家的威信はどうなるか、これをまず考えてみると、ただちにわかる問題であります。それと同時に、ソビエトのスターリンに対して、もしも危害を加えるソビエト国民があつたとしたならば、現在のソビエトの維持している国家威信が傷つけられるか、保たれるか、将来どうなつて行くかということを考えると、おのずからそれは日本の国家としても、同様な立場において考えなければならない重大問題であるのであります。こういうような場合から考えますときは、一国の元首に対するこうした問題と、大学の自由、また他の立場から考えた治安の問題とは、まつたく別個の立場から論ぜられるものとわれわれは考えるのであります。この点に対しまして大学当局は、いかようなるお考えをお持ちになつておるのであるか。私はまず慶応の潮田学長に、御権威ある立場からお答えを願い、続いて服部京大学長、落合奈良女子大学長、このお三人からひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 潮田江次

    潮田参考人 今の御質問の要旨がよくわからなかつたのでございますが、どういうことでございますか。
  84. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 では、もう少し具体的にお尋ねいたします。  本日のお尋ねは、大学の自由と治安確保という立場に立つて意見を承りたいと思つておるのであります。私が今申しましたのは、私の見解に立ちましての大学の自由と治安確保、これを述べたわけであります。私の見解を述べたその線に沿うてのお答えを望むわけはないのでありますが、委員としてはこう考える、こういつた行き方をしなければならぬ、こう考えておるのでありますが、大学当局としては、どういうような――この考えと同じお考えでなくとも、これは一つ委員の基準察した、われわれの考えを示したのでありますが……、(「田嶋個人の考えじやないか」と呼ぶ者あり)私の基準を示したのでありまして、それに沿うてお答えを望むものであります。大学自体の自由の立場において、大学の自由と治安確保という点から御意見を聞きたい。
  85. 押谷富三

    押谷委員長代理 私からも補足いたしますが、大学には学園の自由がある、大学自治がある、これは万人の認むるところでありますが、その学園の自由、大学自治の建前から、国家社会の治安というものといかなる関連を持つているか。治安の立場から、大学の自由の点が、治外法権的な考え方になるのじやないかというようなことも一応考えられますが、要するに大学自治国家社会の治安という、この二つの関係について、潮田慶応大学学長の御意見を承りたい、こういうのが田嶋委員の御質問の要旨であります。
  86. 潮田江次

    潮田参考人 大学自治をわれわれが望んでおるのは、結局学問研究の自由ということであります。これが政治的影響から解放され、国家の権力から干渉を受けないということ、これを非常に望んでおるのであります。私初めから伺わなかつたのですが、ちよつと伺つているところだと、本能的に学生警察がきらいだというようなお話、これはもつともなことなので、これまでの歴史を見ましても、警察がただ警備ということだけでなく、治安ということだけでなくて、それ以上にスパイ的なことをやつてつた、思想警察というようなことが、学校の立場を非常に傷つけておつたということがあるので、それにわれわれは懲り懲りしておる。それで今日特に大学自治というようなことを強調するのでありますが、しかしこれは先ほど申しましたように、元々学問研究の自由ということをわれわれが欲するために言つておることなのであつて、それによつて国の治安が乱れていいなんということは、毛頭考えておらないのであります。従つてもし治安学校内において乱されるおそれがあれば、これは当然警察の力を借りて――学校自身には警察力はないのですから、警察の力を借りてでもこれを防ぐことはしなければならない。ただそれは学校として非常に気持の悪いことなのであつて、巡査を姿を見ただけでも、われわれはいい気持はしないのですから、できればそういうものの力を借りないで、学校の中だけでもつて治安を保つて行きたいという努力はしなくちやならないし、またあるいは治安が乱れるような事態に持つて行かないように、平生から学生を指導をして行かなければならない、どうしてもそれがこちらの望み通り、理想通りに行かなかつた場合に、治安が乱れるおそれがある場合は、これは私は警察の力を借りてこれを防ぐということは、当然なことだと思つて、別段それによつて大学の権威が失われるということは、私は考えない。権威を失いたくなければ、大学自身がしつかりした立場で、こういう騒ぎを起さなければいい、この点今までの歴史があつたので、われわれ警察をきらいますが、警察がほんとうの警備、ほんとうの意味の治安維持ということだけに限定して活動してくれるならば、この力を借りるということは、少しも大学を侵されるという心配なしにできることだと思つております。
  87. 押谷富三

    押谷委員長代理 御質問があれば御答弁をいただくことにいたしまして、次いで東京大学厚生部長斯波義恵君の点に対する御意見を承りたいと思います。
  88. 斯波義惠

    斯波参考人 私の申し上げますことは、ただいま潮田学長から、もう十分におつしやつていただきましたのですから、持に申し上げることはございません。しかし実際私長年学生の補導の問題に関係しておりまして、東京大学においても、とにかくさしたる問題なしにやつて来たということにつきまして、今ここにすぐに問題になるというようなことはわれわれには感じられないのであります。
  89. 押谷富三

    押谷委員長代理 続いて奈良女子大学学長落合天郎君の御意見の開陳を願います。落合天郎君。
  90. 落合太郎

    落合参考人 ごく手短かに申し上げます。  学園の自由、また大学の自由ということは、私は学問の自由ということに置きかえて考えるほかはない。これは憲法第二十三條でしたか、「学問の自由はこれを保障する」とある。これが学園の自由の最後の牙城だと思います。そのほかのいろいろの何が、慣習的に大学の自由ということは認められて来ております。講釈するわけではありませんが、ヨーロッパ中世あたりの教授と学生の組合であつたいわゆるウーニウエルシタースといつた、教授と学生だけが独立して組合をつくつていたような意味の学園の自由というものはない。でありますから、せんずるところ、学園の自由というものは、学問の自由というところに線を張つたら間違いなかろうと思う。それから先はまあ歴史的なもの、あるいは慣習的なもので考えられると思いますけれども、まずそう申すのが一番はつきりする。博それから治安でありますが、これは性質により、程度によつてつて来る。また治安と申しましても、治安という言葉を学内に持つて来て用いられるかどうか、ちよつと私にはわかりかねるのでありますが、学の内部の問題、外部に関係した問題でまた多少違つて来はしないか。すなわち性質と程度にもよりますが、もし二つにわけて考えられるならば、こういうふうに考えてみるのも一法かと思います。学内のことならば、先刻潮田さんからもお話がありましたが、大体それに盡きておると思いますが、できるだけ自分のところで手を盡す。しかし一般国民に関するもの、社会に影響を及ぼすものになりましたら、これは一大学、一学校の手に負えるものではない。これはそのときの都度の判断によつて考えるほかなかろうと思います。御質問についてはそれだけでございます。
  91. 押谷富三

    押谷委員長代理 次にこの問題につきまして、警視総監田中榮一君の御意見を承ることにいたします。田中警視総監
  92. 田中榮一

    田中参考人 先ほど東京大デモ事件に関しまして関係者からそれぞれ御説明がありまして、実は私も詳しいことは十分了承していなかつたのでありまするが、ただいまの御説明によりまして、非常によく了解いたしたのであります。  今回の事件はまことに遺憾なことでございまして、終戦以来東京におきまして、至る所何回となく行幸があつたのでありますが、いまだかつてかようなことは一回も起つておりません今回が初めてでございます。特に今回の問題で私どもが感じますることは、先ほどのお話も警衛警備の問題と、それから学内における集会、示威運動並びに示威行進の取締り、との二つの問題がございまして、この問題が若干からみあつて、いろいろお話かあつたようでございまするが、先ほど永田部長の答辞にありました通りに、学校内におきましても、たとい学校当局がいかに警備の万全を期され、責任をおとりになりましようとも、ひつきようするに最後警備上の責任は当然警察が負うべきであるということを私は考えております。ただ一次的には、ある程度の権限を大学当局におまかせしまして、警察にかわつて学校があるいは警備態勢につくといいましてもい最後責任は、当然一切の警備上の責任は、警察にあるものと確信をいたしておるのであります。従いまして、たとい学校の構内でありましようとも、警衛警備につきましては、警察意見というものが当然尊重されねばならぬのであります。と申しますのは、先ほども大学総長先生からも再々お話があり、学長からもお話がございました通りに、学園の自由、学問の殿堂における自由独立というものは、いわゆる学問の研究、真理の探求の自由でありまして、学校内においてどういう教授方法が行われ、どういう学問が教えられようとも、これは自由でありまして、何ら干渉すべきものではないのであります。またそれによつて学問の研究が行われるのでありまして、従つてこの警備上の責任によつて警察官学園内に警備上の必要によつてある程度の数を入れるということは、必ずしも学園の自由を侵害するものではない、これは全然別個な問題であります。警察官の姿が学校の構内に入つたからといつて、私は学園の自由を侵害するものでは断じてないということを確信いたしております。ただ警備上の必要によつて警察官を配置する、これはあくまで警備上の責任をとらねばならない警察意見を尊重していただいて、今後ともこうした問題が起り得ることを未然に防止するために、事いやしくも警衛警備の専門的な意見を尊重願いまして、できるだけ御協力を願いたいということをお願いする次第であります。  それから学校内の集会並びに示威運動、示威行進の取締りに関しましては、私どもの見解といたしましては、原則として学校内といえども決して治外法権的の特権を持つているという考えではないのでありまして、学校内といえどもかりに無許可の集会、無許可の示威行進、示威運動が行われました場合には、警察は当然職権をもつてこれを取締り得るという考えを持つているのであります。またこうなくては治安維持確保できないのでございます。ただ警察側といたしましては、学校の構内で行われるこれらの集会その他の運動につきましては、学校自体の行うものとかあるいは学生が行う集会等は、学校内のできごとでありまするので、このことにつきましては、学校の自主的な取締りということを一応尊重いたしまして、一次的には学校長が措置する建前となつたのであります。この点につきましては昨年東京都公安條例ができました際に、文部御当局と十分協議をいたしまして、一応学校内のこれらの集会並びに示威運動等の取締りは一次的には事前に学校長において措置する建前容あるのであります。しかしながらこれとても限度がございまして、もし事態が非常に悪化いたしまして、学校当局として収拾できぬというような場合におきましては、警察がただちに出動し得るという態勢を整えておるのであります。これにつきましては、まず学校長から警察出動要請される、あるいは学校長におかれまして構内を占拠した人々の退去命令を出される、この退去命令にどうしてもがえんじない場合におきましては、警察学校長の要請に基いて、学校内に立ち至つてその退去命令を実力行使によつてこれを行う、かような措置を従来とつておるのであります。従つてわれわれといたしましては、学校側におきまして早期に、迅速に、また勇敢に警察官要請をしていただきまして、事が擴大せぬうちにこれを治めるためには、どうしても早期に、迅速に警察要請をしていただくことを希望する次第であります。  それから学生運動に対しいする警察の考え方といたしましては、私どもも健全な学生運動に対しましては、これを期待いたしております。ただ学生運動の中にも一部の勢力に指導されて、学生の本分を逸脱いたしまして、無軌道にしかも法規を無視して、ときには不法行為に出るというような場合も往々あり得るのであります。この点につきましては、特に学校当局に行き届いた指導機関を設置せられまして――先ほども指導機関を設置するについてはいろいろさしさわりがあるという大学側のお話を承つたのでありますが、このことこそ私は今後の学生運動を健全に導くためには最も必要な設備であると考えておりますので、国家的な相当の予算をとり、人員を増加いたしまして、この指導機関を設置いたしまして、今後の学生運動を健全に、しかもほんとうに学生の利益のためになる、一部の勢力に指導されない、いわゆる曲つた政治運動でない、ほんとうの学生の利益を守るような学生運動が展開されることを、私どもとしては要望しておる次第であります。
  93. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に東京新聞論説委員及川六三四君から御意見を承りたいと思います。
  94. 及川六三四

    及川参考人 東京新聞の及川でございます。私が申し上げようと思いますことも、すでに皆様が今お話になつたところと同じであります。学園自治ということは、学問の自由と不可分の関係にあるものとかたく信じます。学問の自由のない大学の存在はおよそナンセンスであるのであります。ただこの学園の自由ということにつきましては、別に立法があるわけでもありませんので、必ずしもすべての人たちの考え方は同一ではなかろうと思いますけれども、しかし要するに学内では何をやろうと、何が起ろうと、一切他からの介入とかあるいは干渉とかを拒否するというような、いわゆる治外法権的なものであるべきではないと思います。従いましてただいま問題になつておりますような、治安に害をなすというような事態が起ります場合においては、警察がこれに対し介入し、干渉するのは当然のことでありまして、これは何も大学に限りませず、工場におきましても会社におきましても、その意味においては私は同断だと考えるのであります。しかしながらただここで私が一言つけ加えたいと思いますのは、とかく取締りとかあるいは処罰といつたようなことにとらわれる傾きがあるのであります。私が切に望みますことは、取締りあるいは処罰ということもさることながら、何とかしてこういうおもしろからざる問題を起さぬように、学内においても学外においても協力するようにやつてほしい。学内におきましては、学生諸君の良識による秩序、それから先生たちの熱に燃える信念によるところの指導といつたようなことによつて、取締りとかあるいは処罰とかいうことなからしめることをまず第一にしていただきたいものと考えるのであります。さらにまた学内とか学外とかあるいは学校当局とか学生諸君、こういうような方面にだけ問題があるわけではなくて、今日の学生運動には多かれ少かれ政治のあり方に対する批判と不満とが深く根ざしておることを私は信ずるのであります。そういう意味におきまして、ただ学生運動の動向に対してこれを批判する、あるいは処罰を考えるということもさることながら、政府あるいは国会の当局の皆さん方におかれても、今日の学生運動は政府や国会のあり方に深く根ざしているものであるということについて、もう一度あらためて御認識していただきたいと思いますたいへん失礼でありますが、さように考えるのであります。
  95. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより質疑に入るのでありますが、慶応義塾大学学長潮田江次君がお急ぎのようでありますから、潮田氏に対する質疑をまずやつていただきたいと思います。質疑は通告の順序によつてこれを許します。佐瀬昌三君。
  96. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 最近の学生運動というものが戦後において何か思想的に特色的なものがあるかどうか、まずその点を潮田学長にお伺いいたしたい。
  97. 潮田江次

    潮田参考人 思想的に特徴的なものというものはない。いつも若い者の中には左がかつた者はいるのでありまして、何も戦後特に思想的に今の学生がどうということはありません。以前もそういう思想はあつたのですし、またあつたのが外に現われずに押えられておつたということもあるのでありまして、そういう点を考えると、今日の若い学生が思想的に特別に昔と違つたというようなことはないと私は考えております。
  98. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 何か政治的意図に基いた学生運動といつたようなものは、別に見受けられないようですか、どうですか。
  99. 潮田江次

    潮田参考人 政治的意図に基いた運動というのは、皆さま御存じの通り、ずいぶん現われておると私も了解いたします。
  100. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 そういう場合に国立大学の問題はしばらくおきまして、私立大学においてはどういう程度に関心を持ち、またそれに対して何らかの対策をお持ちになつておられるのか、その点を次にお伺いしたいと思います。
  101. 潮田江次

    潮田参考人 国立大学の方は画一的になつておりますから、一概に申せますが、私立大学の方は一つ一つ特徴があるので、私立大学ではこうだというような概論的なことは申せないのでありまして、各種それぞれいろいろな対策を講じておるのであります。
  102. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 それでは具体的な例として、代表的である慶応義塾大学においていかなる対策をお持ちになつて今日に及んでおるか、できればなるべく具体的に承つておきたいと思います。
  103. 潮田江次

    潮田参考人 私の学校についてお尋ねになりましたが、幸いなことに私の学校学生はあまりそういう方の運動はしないので、特に私が手柄として申し上げるような特別な対策は行つておりません。
  104. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 大学当局としてでなくして、何か学生自治会とか何とかそういつたような団体で自主的な対策を講じておるというようなところが、少くないように聞いておるのでありますが、慶応義塾大学においてはそういう点も別にやつておられないのですか、どうですか。
  105. 潮田江次

    潮田参考人 学生自治活動ということは、これは昔から私の方では奨励しておりますから、それを特に今になつて奨励するということはないので、ありのままを申せば自由放任にしてありまして、それで学園の雰囲気を乱すような行いがあつたときに注意するくらいなもので、あとはほんとうに自由にまかせております。ただ多少これに関連があると思いますが、私が特に注意していることは、学生学校当局とが対立的な関係にならないということ、これを絶えず注意しております。卓をはさんで両方向い合うという関係のものじやないということは、これはしよつちゆう申しております。
  106. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私の潮田学長に対する質問はこれで終ります。他の方に対する質問はあとにします。
  107. 押谷富三

    押谷委員長代理 田嶋好文君。
  108. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 実は先ほど私が総括的な質問をいたしました中に、天皇の問題に触れておりますが、これは非常に重大な問題だと思いますので、権威ある潮田学長から御意見を承つておきたいと思います。一国の象徴である天皇大学行幸される、こういうような場合、大学の自由を名目として警察官治安確保のための入校を拒否するというようなことは、私はどうかという考えを持つているが、それは先ほど申し上げました。結局一国の元首に対するそうした行動、危害を加えるということは、国家の独立を妨害し、自由をかえつて阻害するものであつて、その国にとつてはゆゆしき問題であつて、学の自由とはまつたく別個の立場に立つて対処すべきものである。ソビエトの例をさつきは引きましたが、こういうような考えをわれわれは持つておる。これに対する潮田さんの御見解をちよつと承つておきたい。
  109. 潮田江次

    潮田参考人 一国の元首に対して危害を加えるおそれがあるような社会情勢だつたならば、これは当然警察の力を、しかも相当大きな力を借りてこれを防がなければならないと私は思つております。これは何も一国の元首に対する危害というようなことだけでなくて、一般治安の点からいつても、日本の学校は日本の一部なんですから、そこで治安が乱れていいということはないのですからして、治安が乱れるという可能性が相当強い場合には、しかもそれが学校の力でもつて予防できないという場合には、これは警察の力を借りるよしかたがない、一向学問の自由とか大学自治の侵害にはならないと考えております。
  110. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 もつと砕いて申しますと、私たちは元首に対してよりよい安心感を与えるために、旅をする元首に対して護衛をしなければならぬ、やるということは、これは国民の礼儀であり国家の礼儀である、やるべきことである、こういうようにとつてもいいものではないかと思いますが、こうした場合に、学校の自由とこれが衝突するものであるか、しないでも済むものでありますか。
  111. 潮田江次

    潮田参考人 護衛というものはどういう意味の……。
  112. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 護衛ということになりますと、やはり治安にも関連しましようし、警察官がその身辺に危害なからしめるとか、安全に御旅行させるとか、こういう行動であります。
  113. 潮田江次

    潮田参考人 護衛をされることは、私は陛下御自身も迷惑なことだと思つております。護衛なしで済めば、それが一番お気軽でいいと思いますので、できるだけ早く護衛なしに済むような世の中にしたいと思つておりますが、実際において世の中が護衛を必要とするような情勢であれば、これは当然護衛がついて身辺を御警戒申し上げるのが正しいと思つております。それに対して大学が、学問の自由とか大学自治をたてにとつて、そいつを拒否するというようなことはすべきことじやないと思います。ただ問題は、はたしてそういう護衛を必要とする実際の情勢にあるかどうかということ、この判断が問題だろうと思います。
  114. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 国の象徴に対する今回の京都大学の不祥事件、これをいかようにお考えになりますか。その行動、とられた大学当局措置、こうしたものは、これをいかように考えられますか。
  115. 潮田江次

    潮田参考人 これは私事実を詳細に知らないので何とも申し上げることができないのでありますが、ただ同じ大学を預かつておる一人として考えますことは、おそらく京都大学においても十分お考えになつた上で、万々間違いはないと信じられたので警察の十分な警備を求めるということをされなかつたために起つたことと思いますが、神様でない以上は、幾ら十分に考えても、そこに失態の起る可能性はあるのですからして、失態が起つた以上は、おそらく当局の方は恐縮しておられることと思います。しかしそれまでに、先ほどのお話にもありましたが、夢にも思わなかつたというようなお言葉がありましたが、おそらくその通りだろうと思つております。まさかこんなことが起るとは考えられなかつたの警備を薄くされたんじやないかと私は考えます。
  116. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 当事者でない潮田さんにこれ以上お開きするのは無理かと思いますので、その点に対しては差控えたいと思います。それとは違つたことで一、二あなたの学校。全般についてお聞きいたしたいと思います。最近全学連、反戦学連等、いろいろと学校内で催しをするというようなことをわれわれ承つておるのでありますが、こうした左翼の団体の主催または指導する集会に対しましては、現在の学校としては、許す方針をおとりになつておりますか、許さない方針をおとりになつておりますか、それがお伺いできればけつこうであります。
  117. 潮田江次

    潮田参考人 主催者がだれであるかということによつて許可、不許可の決定はしておりません。ただその集会の性質がどういうものであるか、それによつて許可をしたり禁止したりしております。
  118. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 慶応大学の場合でありますが、そうした集会をもし慶応大学許可しなかつた場合、無許可の集会が行われた。そうしてこの場合に、どうも外部から見ておつて空気が険悪なということで警察官大学許可を受けずに入つて来た、こういうようなことがあるはずなんですが、このときは、学校はこれに対してどういうようにお取扱いになりましようか。警察官独自の考えで学校べ入つて来た場合、学校当局意見をしんしやくせずに、警察官自身がどうも治安上恐るべきことが起るんじやないか、こういう判断を下すことがあると思いますが、そういう判断に基いて警察官が入つて来た、こういうときに学校としてはどういうような処置をおとりになりますか。
  119. 潮田江次

    潮田参考人 私はもしそういつた事態が險惡になつた場合には、当然学校の方から警察に来てくれろと援助を求めるはずであつて、それなしに警察の方が来るということは事実上ないことだと私は思つておりますが、万一そういうことがあつて学校では何でもないと考えておるにもかかわらず、警察の方からやつて来れば私は断ります。門の外へ追い返します。
  120. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうなると、学校というものは、国に治外法権は唱えないのだが、治外法権と実質はまつたくかわりないのですが、それでいいでしはうか。     〔「愚問々々」と呼ぶ者あり〕
  121. 潮田江次

    潮田参考人 これは警察にも学校にも常識がないと仮定した場合に起る事柄であつて、両方に常識があればこういうことは私は起らないと思います。(笑声)
  122. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 その程度で信頼いたしましよう。しかしこれは單なる危惧だとは私たちは考えておりません。こうした問題がおそらく起ることが想像されるのであります。だから危惧だとはお考えにならずにこれから育つて行く字生のために、国家のためにというようなことで、この点は真剣に御対策の御研究を願いたい。私はこれにて潮田さんに対する質問は終ります。
  123. 押谷富三

    押谷委員長 代理潮田学長はお急ぎですから簡単にやつてください。
  124. 梨木作次郎

    ○梨木委員 警察大学の中へ私服で入つて来る、こういう事態がしばしばありますと、それによつて学生のいろいろな思想動向、あるいは教授の思想動向を調べるようなことをやつた場合におきまして、学校内における学問の研究、そういうものを制限し圧迫するということになる危険性があると思いますが、あなたはどうお考えになりますか。
  125. 潮田江次

    潮田参考人 その通りだと思います。
  126. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そこで東京では、警視庁と大学との間の申合せで、学内における集会、示威行進、こういうものについては、まず大学管理者がこれを処理するということに申合せができておるのでありますが、これもやたらに警察学内に入つて来たのでは、学問、思想の自由を圧迫することになり、学問の研究のためによくない。そして過去にもそういう非常に有害な事態がたくさんちつたので、そういう歴史的な事実にかんがみてこういう申合せになつたと私は聞いている。だから警察の方は、どんどん大学許可とか了解なしに入つてつたり、治安に名をかりて入つて行きたい。しかし大学の方では過去の苦い経験があるからそれでは困る。それで大学の方でまず第一次的にやりまして、治安関係上問題があつた場合に、大学の申出によつてそういうような処理をする、こういうような、大学警察側との長い交渉の結果として申合せができたように聞いておるのでありますが、そうではありませんか、これを伺いたいと思います。
  127. 潮田江次

    潮田参考人 その点は私は自分でそういつた交渉をした経験がないので、よく存じません。
  128. 梨木作次郎

    ○梨木委員 しかし大学の自由、自治という問題については、あなたの方でも重大な関心をお持ちだろうと思いますし、これは新聞にも過去に出ているのでありますから、あなたは直接この衝に当られなかつたといたしましても、こういうことを何か大学関係者からお聞きになつたことはありませんか。
  129. 潮田江次

    潮田参考人 こういうことというのはどういうことですか。
  130. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それは大学と警視庁との先ほどの申合せ、つまり学内における集会あるいは示威行進、大学の施設内において行われるこのようなものについては、まず大学がこれを許可する。この大学の中の集会について、もし治安上いろいろな問題があつた場合にも、大学側から申出があつた場合に初めて警察が来るというような申合せができているようであります。これは警視庁側と、大学側と申しますか文部省側と申しますかと、長い問いろいろな交渉がありまして、結局こういう申合せにおちついたという事実であります。
  131. 潮田江次

    潮田参考人 長い間かどうか知りませんが、文部省と警察側ですか、この間にその交渉はもちろんあつたことと思いますし、またそれらしいことも私は聞いております。
  132. 押谷富三

    押谷委員長代理 潮田さん、たいへんありがとうございました。大体用事が済んだようでありますから、どうか……  その他の質疑を続行いたします。
  133. 花村四郎

    ○花村委員 京大の学長に、続いてお尋ねをいたしたいと存じます。先ほどからお尋ねをいたしましたように、その筋の官庁方面においては、ああした事態も起きる場合があるであろうことを、大体察知しておつたものであると認められる資料は相当あるのであります。しかるに大学としては、ひたすら学生の良識を信用して、深く考うるところがなかつたということでありまして、まことに遺憾であります。先ほど来からもいろいろお話しがありましたが、まず学園において、警察官の入ることをすこぶる忌みきらつておるという事実だけは、ここにはつきり浮び上つて来たのであります。こういうことは私どもはどうかと思うのでありますが、特に学生のうちでも左派に属する――ここに梨木君もおりますが、いわゆる共産主義を奉じておる学生のごときは、これはどうもはしにも棒にもかからぬのが多い。先ほどの青木君の話を聞きましても、第一、天皇の象徴たる意味をわきまえておらない。天皇はもう政治的の何らの権限を持つておらない、象徴というものはいかなるものであるということを、大学学生すらもわからないそういうものがこういうことをやるのでありますから、これは私はふしぎはないと思う。当然のことを当然やつたにすぎないので、ちつともふしぎには思わないのですが、こういう学生に限つてうしろ暗いことをやつておる。人前で堂々とできないこと、秘密でなければ話せないこと、とにもかくにも普通の常織で、また普通の人々が行い得ないようなことをやつておるがゆえに警察官がすこぶるおつかながる、恐れる。これは共産主義を奉じておる者が、警察官が入つて来れば、ただちにふるえ上つてこういうものを排斥するという傾向を持つておるのでありまするけれども、しからざる正々堂々とりつぱな行いをしておる学生なら、警官が入つて来たからというてそれを忌みきらうというようなことはないと申し上げていいと思うが、そういう者が京都大学におりますかどうですか。学生に刺激を与えるから警察官に入つてもらつては困ると言うて断つておる。刺激というのはいわゆる共産主義を奉じておりまする同学会あたりの学生のことを意味するのか、あるいは全学生を意味するの唇あるか。私は前者であるに違いないと思う。私のところにもこのごろ共産主義を奉じておる学生連中がやつて参りまして、條約に反対してくれと言うのでひざ詰め談判を食つたのでありますが、言うことがやはりことごとく一致しておる。この青木君の言うたようなことをやはりそのまま焼き直している。でありまするから、こういう左派の学生、うしろ暗い学生、入の前で正々堂々と行い得ない、地下へでももぐらなければ行動のできぬような者に限つて警察官を忌みきらうのだ。こういう一部の学生の態度をながめ、また彼らに制肘せられ、抗議を申し込まれて、すべての学生を推すということが間違いではなかろうかと私は思う。本件の誤りの動因は、やはりここにも根ざしておると私は思う。なるほど先ほど潮田学長も言われたが、まことにごもつともであると私は思う。けれども今帰られてまことに遺憾でありますが、しかし今日の警察のほんとうの正しい姿というものを知らないのであります。なるほど菅の警察官はそうであつたに違いない。特高的な忌みきらわれるような節のあつたこともこれは私も認める。であるがゆえに、この国家警察は廃さなければならぬ、特高的意味を含んだ警察はやめなければいかぬというのでやめたのじやありませんか。そうして新憲法は基本的人権を落しく尊重しておりまする半面において、警察の行き過ぎをためております。刑事訴訟法も根本的に改正されて、背のようにみだりやたらにちよつと来いはできない。こういう新しい警察というものに対して学園方面における人々が何らの知識を持たぬということは私はいかにも遺憾だ。国家の重大なる経費を傾けて、そして治安の任に当らせ、犯罪の防止の面を担当さしておりまするこの警察官、これを官庁にもひとしい官学が排斥するとは一体何事であるか。むしろ歓迎すべきであると思う。そうしてふらちな学生があるならば何時でもひつぱつて行くがいい。何時でも相当な処置をするのがいい。法律に根拠して正々堂々とその適用を担当する警察に樹つて、何がゆえに忌みきらう必要がありましようか。そういう時代感覚が誤つておる。警察に関する考え方が誤つておるというようなことが、ひいてこういう問題を引記しておるということにお気づきはありませんか、どうでありますか。これをまず第一にお尋ねいたします。
  134. 服部峻治郎

    ○服部参考人 私といたしましては、決して警察を忌みきらうというようなことはございません。また大学がまつた治外法権でないということもよく存じております。これがゆえに、大学警察をいやがるということはありません。但し、各個人々々によつてその考えは違いますから、これは一律に何とも言えませんが、少くとも全部がそういう考えを持つているとは言い切れないのであります。
  135. 花村四郎

    ○花村委員 警察官学園に入ると学生に大きな刺激を与えるということはどういう意味ですか。その刺激の性質、程度についてお尋ねいたしたいと思います。
  136. 服部峻治郎

    ○服部参考人 これも全部の学生ではございません。一部の学生がおそらくそれに対応して何かの反応を呈するということを意味するのであります。
  137. 花村四郎

    ○花村委員 そのある種の学生というのは、これは率直に、赤裸々に、忌憚なく、修飾なく私から申し上げまするならば、同学会に属しているような学生でしよう。そういう連中を対象としてお考えになるからこういう間違いが出て来ると申し上げていいと私は思う。そういう人々を対象とするがゆえに、なおかつ警察官を歓迎して治安維持はやはり本職の方へ一切まかせる。そうして学校学校学校らしい態度で進んで行くという、合法的と申しまするか、妥当な、そうあるべき手段方法を講じられたならば、こういう問題は起きなかつたであろう。ことに先ほど私が申し上げましたように、このことあるべきことは大体においてわかつてつたということは、これは周知の事実であります。しかも学長においてもうすうすわかつてつたということを認められている。こういう共産主義を奉じている人々の最近なした行為は何でありますか。無人電車を走らせ、あるいは汽車を転覆させ、あらゆる非社会的な集団的な兇惡犯罪を次々と重ねておるりつばな歴史を持つているではありませんか。こういう学生を対象として考えまする場合において、もつと注意深く、そうして真に学生に対する親切味を持つならば、むしろすべてを警戒し、そうしてすべての行動に対して制肘的意味をもつて監視をしてやるということこそ、これが親心であると申し上げていいと私は思う。学園の自由をあまり尊重し過ぎて放任主義的であつたというようなことが、こういう問題を起した動向になつていると申し上げていいと思う。でありますから、こういう意味から言うて、学校においても落度があつたものであると認めてよいと私は思うのでありまするが、学長においてはそうは考えられませんか、どうですか。
  138. 服部峻治郎

    ○服部参考人 思い違いであつたということは確かであります。学生を誤つて信じたという点は、今日は確かにあつたと思います。
  139. 花村四郎

    ○花村委員 もう一つお尋ねしたいことがあるのですが、これは京都大学ばかりではありません。今日警視庁におきましては、最も時代に目ざめたよりよき警察官を養成すべく念願いたしまして、そうして警察官の優秀な者を各大学に配置をして、そうして勉強をさせておるということであります。これはちようど戰争当時によくありました、軍人にして、技術を学ばしめるために工科大学へ入れ、あるいは軍医に仕立てるために医科大学へ入れたという、あの委託学生の制度があつたのでありまするが、ちようどああいつた形で大学へ入れて、そうしてりつぱな警察官を仕上げたい、指導者をつくりたいという意味で、そういう方途を講じておるという話でありまするが、官立大学、特に私は申し上げますが、国の予算を使つてつておるこの官立大学が、こういう警察官学生が来てはならぬというので締め出しておるという話を聞いておる。これがやはり、先ほど私が申し上げましたように、警察官に対して何らの理解を持たざる、りつぱな、傾向と申しまするか、気持と申しまするか、ここに露骨に現われて来た一つの事実であると見ていいと思うのであります。しかしこの事実を、われわれはただ黙つて見ておるわけに行かないのであります。そういう官庁のよりよき施策より新しき時代的なそうした方途に関して、それを受入れるということは、これは当然あるべきことなのである、それを排斥するとは一体何事であるか。何でもかんでも警察官はきらいだというような気持では、大学の教育というようなものは、これはどうにもならない。そういう教育じやまことに困つたものであるが、こういう点はどうお考えになつておりまするか、この点もひとつ東京大学のどなたかおられるならば東京大学の方と、そうして京大の学長から御回答を願いたいと思うのであります。
  140. 斯波義惠

    斯波参考人 ただいま委託学生を排斥しているというお話があつたのですが、私寡聞にしてそういうことは聞いておりません。現在委託学生制度というものはないわけであります。特に警察官なるゆえにこれを排斥するというような事実はないと思つております。
  141. 花村四郎

    ○花村委員 私は委託学生というたわけじやない。軍でやつてつた委託学生のような性格を持つたという意味の例をとつたにすぎないのでありまするが、それではこの点に関して、警視総監にそういう事実があるかないか、お尋ねいたしたいと思います。
  142. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。警視庁といたしましては、戦争前におきましては、大学出身の者が相当内務省に入りまして、それがやがて警察を見習いまして、将来警察幹部としての昇進をして、幹部としての警察活動をしていただくことになつていたのでありますが、戦争後、公務員の採用試験その他の関係からいたしまして、いわゆる優秀なる大学卒業生の方々に、警察官を志願するよういろいろお願いいたしおるのでありまするが、なかなかそれが、給与の関係その他によつて実現が不可能でありますので、やむを得ず、現在おりまする若い警察官で、頭脳の明晰な、しかも将来性のある優秀なる警察官を、相当な費用をもちまして、ただいま早稲田、慶応、明治、それから官立大学としましては国立の産業大学並びにもとの高等師範の教育大学、この五つに、委託学生といいまするか、聴講生といいまするか、そういう形式で実は教養をお願い申し上げております。これにつきましては、私どもは、警察官たる身分を忘れてしまえ、諸君は一学生になつて、そうして役所には来てはならぬ、純然たる警察官的な活動は、もちろん学校内においてはやつてはまかりならぬ、すべて学生の身分になつて、そうして学生的生活環境の中にいて学んでもらいたい、たとえば先ほどおいでになりました慶応大学に行つている学生につきましては、福澤諭吉先生の遺訓を十分に体得してもらう、それからその志望学科も、私の方からお前は法律、お前は経済と言わずに、派遣される学生の希望をとりまして、中には心理学を習いたい、よろしい、中には文学を習いたい、よろしい、中には哲学を習いたい、よろしい、何でもその希望するものを選択させまして、こちらとしましては、何々学科に入れということは言いませんで、広くあらゆる知識を吸収してもらいたい、かような考えで、まず東大の方にもお願いをいたしたのでありまするが、東大とされましては、表面的には、定員の関係でお断りしたいということでございます。ほかの学校では、定員なんか、これは必要ないのだ、いわゆる聴講生だから何人入つて来てもよろしい、ことに理科とか工科とか、一定の設備に限定されたところならば困るけれども、君の方で二人や三人ぐらいのものならば、いつでも喜んでお迎えするからというので、各学部長さん方も非常に興味を持ちまして御教養をいただいておりまして、これらの派遣学生は、ただいま警察官たる身分をまつたく離れまして、一学生としてその学校の校風になれ、その学校の教育方針に準じて、教養されている次第でございます。当初東大側におきましては、定員超過になるから困るということでございますから、私どもはそのまま引下つたのでありまするが、法科とか経済を希望して1私どもも学生の経験がございまするが、三百人の定員のところで、教授を受ける者はわずか百名、百五十名で、実はがらあきなのでありまして、二人、三人の者が行きましても、決して定員を超過することはない、いわんやこれがほんとうの学生でなくして、いわゆる聴講生として行くのであるから、たとい二人、三人聴講したところで何ら支障はないのではないかという考えを持つておりまするが、一応学校側としては、定員を超過しては困るという話でありますから、さようでございますかといつて私は引下つておるのでありますが、事実はそういうことであります。
  143. 花村四郎

    ○花村委員 もはや時間もありませんから、私はこれで打切ることにいたしますが、とにもかくにも、ただいま申し上げましたような警察官理由なくして忌みきらうというような思想が、やはりこういう問題を起すゆえんになり、またややともすれば学園の自由が、その中に共産主義的分子の跋扈、あるいは非社会的と申しまするか法律違反の行為をあえてする便宜な場所として、こういう人々の非合法的行為の温床となり得るおそれがあり、またこういう人々に利用せらるる機会も出て参ろうと思いまするので、こういう人々に対しましては、嚴重に警戒すると同時に、他の学生よりもより進んだ補導を十分にしてもらいたいものだと私は思うのであります。本日はるそれ京都からおいでになられた京都大学学長に抗議を申し込もうとか、あるいはその責任を追究しようとかいうような意思は毛頭ありません。ただわれわれひたすら願うところのものは、今後において再びどこの大学においても、かくのごとき問題を繰返さざらんことを欲し、ここにいろいろとお願いをいたし、また事実を糾明して、その責任の所在を明らかにせんとするものでございます。本問題は、先ほども田嶋委員が言われたように、たたに国内の問題にとどまらず、あるいは対外的関係における問題としてながめらるる節も相当あると見てよいのでありまして、小さいと申せば小さいようでありまするが、相当にこれは大きな問題として取扱わなければならぬと考えまする場合において、学校当局の今後における善処を心からお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  144. 押谷富三

    押谷委員長代理 ちよつとこの際お諮りいたします。質疑はまだまだ続行いたしますが、法務総裁は五時半から重要公務のためにさしつかえが生じます。そこで、その以前に京都大学事件について、治安責任者である法務総裁から政府の所見を聞きとりたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければ、この際法務総裁から、京大事件に対する意見を聴取いたします。大橋法務総裁
  146. 大橋武夫

    大橋国務大臣 京都大学事件につきましては、事件の内容はいろいろ議会に申し上げたごとくでございます。法務府といたしましては、先般この件に関しまして特に調査員を派遣いたしまして、詳細調査をいたした次第であります。その結果は、どうもこの京大の学生諸君の行動というものは、相当計画的であつたように見受けるのでございます。この計画的な行動につきましては、京都大学におきましても、事前に察知せられておつたことと想像いたしておる次第であります。しかるにもかかわりせず、ああいう事態を生じましたことは、まことに申訳ないことであり、このことは、もとより京都大学当局におかれましても、責任を免れないところと存じますが、同時にこれに協力いたしましたる警察当局といたしましても、今後こうした事態については、一段と注意をする必要があるものと考えます。  なおこの事態に伴いまする学生諸君の行動につきましての検察当局の調査の結果といたしましては、京都公安條例違反容疑が濃厚でありまするので、今後この問題につきまして、的に検挙の目的をもつて捜査を進めるかどうかということにつきまして、地元の検察庁より最高検の方へ協議をいたして参つております。ただいま最高検と法務府とが連絡をとりまして、この問題を詳細に検討をいたしておりまするので、近く何分の決定をいたしたいと思つております。しかしながら当局といたしましては、検察庁行動いかんにかかわらず、京都大学当局におかれましては、この問題につきまして、関係のある学生諸君の処分につきましては、いま少し積極的にやつていただきたいという希望を持つておる次第であります。以上私どもの見解を申し上げた次第であります。
  147. 古島義英

    ○古島委員 この間朝日新聞の報道として、市島京都地検検事正が参つて総長に面会をする前に、この事件京都市の公安條例に違反することは当然であるが、検察庁としては立件しないということが特に報道せられております。條例違反であるから、これは起訴するなり立件するのが当然だと思つたのですが、取消しもなく、その後検事総長と面会をいたしたという報道がありました。このことは私非常にふしぎに思うのでありまして、いやしくも検事正が公安條例に違反するということを認めるならば、当然立件せねばならないと思うのであります。しかも検事総長報告する前に、もう立件しないことにしたということが朝日新聞に書いてあります。これははたして検事正がそういうことを言つたのか、言わないのか、言わないのを朝日新聞がうそを書いたのか、この点を明瞭にいたしておきたいと思います
  148. 大橋武夫

    大橋国務大臣 特に事実の問題につきましては、検事正から申し上げることと存じますが、私の報告を受けておりまする事案の経過から見ますると、本件につきましては京都市公安條例の違反の容疑がある。従つて京都検事正としては本件につきましては、積極的に今後一段と捜査を進めて、もう少し事実を取調べるかどうかという問題につきまして、最高検の検事総長打合せに上京をいたしておるわけでありまして、最高検におきましても、ただいま法務府と相談をいたしまして、この問題に対しまする法務府並びに最高検の態度をいかに決定すべきかということは、現在慎重考慮中に属しておるのでございまして、まだ立件しない、あるいは捜査を打切るというような段階には相なつておらないわけでございます。新聞の記事の件につきましては、検事正からお聞きとりを願いたいと思います。
  149. 古島義英

    ○古島委員 一言申し上げておきますが、この事件があのままの事案とすれば「公安條例に違反するということは、ほとんど疑いないと思うのです。そこで検察庁が今日捜査を進めておるというのは、少くともだれがこの被疑者であるか、だれがこういうことをやつたかということについては、おそらく今後の捜査にまたねばならないことであります。あの事案が起つたということは事案自体については、少くとも公安條例に違反するということは何らの疑いがないことと思うのであります。人がだれであるかということがわからないだけであつて、おそらくは法務総裁も何人が被疑者であるか、何人がこれをやつたかということについては捜査を進めるのであるが、あの事案自体は、公安條例に違反するということを前提として、だれが被告であるか、だれが被疑者であるかということの捜査を進めることと思つております。その捜査を今後進める、今捜査中であるというのは、どの点についてあなたは仰せになるのか、その点を明瞭にしていただきたい。
  150. 大橋武夫

    大橋国務大臣 報告によりますると、事件の当時に相当な写真が写されております。この写真等によりまして、数名の人が容疑者としてあがつておるわけであります。問題は、今後これらの写真等によつて容疑者と推測せられまする人たちについて、いかなる手段によつて捜査を進めるかという点にあるわけでございます。特にこの件について問題となりましたのは、最近におきまして、御承知の通り京都市公安條例につきまして、第一審裁判所たる京都裁判所において違憲の判決をいたしております。従いまして、今後捜査を続けるということに相なりますると、当然被疑者に対しまする強制処分が必要になるかと存じまするが、かような判決をした裁判所が、逮捕あるいは勾留の要求に対していかなる態度をとられるであろうかということにつきまして、確たる見通し等をも立てる必要がありまするので、なお研究をいたしておる次第であります。
  151. 市島成一

    市島参考人 ただいまのお尋ねの中で、私が朝日新聞の記者にこの事件を立件せずというようなことを語つたということでございますが、私は実はその新聞を読んでおりませんが、私がこの事件に携わりましてから、多数の新聞記者に申し上げましたことは、ただいま法務総裁からお答えなさいました範囲から一歩も出ておりません。立件するとかしないとか申した事実は全然ございません。何かの間違いじやないかと思います。もう一度御検討願いたいと思います。
  152. 古島義英

    ○古島委員 私が申し上げたのは、断言をいたして私は申し上げたのであります。切抜きを持つておりますが、本日持つて参りませんでした。検事正はお忙しいので、明日お帰りになるのであれば、お目にかけるわけに参りませんが、もし明日おいでになるならば、お目にかけて一向さしつかえはありません。それを見た後に、検事総長に面会したという記事を見て私は驚いたのです。もし同様のことを言うに至りましては、検事正がこのことの見通しを先にして、もう立件しないと言うておいて、その後に検事総長と面会をいたして何か相談をやるということであるから、これは検事正けしからぬことをやつたというので、私は憤慨をいたして、その記事を切り抜いてある。そこでもし明日あなたがおいでならば、私が持つて参りますが、おいでにならなくんば、しかたがありませんから、日取り等を申し上げておきます。
  153. 市島成一

    市島参考人 仰せの通りだとまことにけしからぬ話だと思いますが、私は総長にお目にかかる前に、この事件につきましてのそういつた見解を発表した事実は全然ございません。その点だけは御了承願いたいと思います。
  154. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際法務総裁に対する質疑は次の機会に譲ることにいたしまして、今天野文部大臣がお見になりましたから、京大事件について、天野文部大臣から政府の意見を承りたいと思います。  それではさきに引続きまして、質疑を続行いたします。
  155. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは警規総監に承りたい。先ほどのお話の中で警察と文部省側との協定の点ですが、先ほどのあなたの御説明を聞きますと、学内における集会その他に関しては、学校から要請がなかつたら出ない、出たらその上でやることにする、こういうことだと思いますが、これが外部に対して相当の影響がある。ことにこのたびの事件のように、日本国の象徴たる天皇に対する治安の問題等に関しまする場合は、よほど学内だけで済むことと違うように思いますが、そういう場合でも、まず学校要請がなかつたら、警察治安の任務に第一番にあたらぬという協定であつたかどうか、それを聞きたい。
  156. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。実は昨年東京都公安條例が公布になりました際に、その公安條例の第一條に、公共の場所における集会その他云々ということがあるのでございます。そこでこの公共の場所における集会という文句の定義でございますが、まず学校の校内における集会は、場合によつては公共の場所における集会ということもあり得るのであります。たとえば早稻田の大隈講堂におきまして、学校以外の人が、学校から講堂の借受けをいたしまして、そこであるいは映画会、あるいはまた講演会を開催したという場合におきましては、一般の多数不特定の聽衆等も参りましてそこでいろいろ議論も、またいろいろ会議も行われる場合もありますし、また講演等が開催される場合がございます。そこでこの学校の校内における公安條例の取扱いをどうしたらいいだろうかということにつきまして、われわれもいろいろ研究いたしましたところ、まず文部省側におきましても、この問題について非常に関心を持たれまして、昨年の七月十二日付で、文部政務次官から警視総監あてに、次のような場合においては公安條例が適用されるか、次のような場合においてはどういう取扱いをされるかという公文による質問書が参つたのであります。そこで警規庁側といたしましては、大体公安條例の趣旨からして、そのお答えといたしまして、次の場合においてはこういう公安條例が適用される、次の場合においては適用しないという回答を与えたのでありますその回答を文部省側におかれましては、これを管下の学校に全部移牒せられまして別紙のようなとりきめを警規庁とした。現在各府県並びに都市の公安條例は條文、それから使用文句その他一切東京都の公安條例をモデル條例としまして、これによつて、全部條例が制定公布されておりまする関係上、大体東京都の公安條例の学校内における適用、扱いというものを、文部省から管下の官立学校、私立学校その他一切べ、大体かような方法で取扱つたらよかろう、こういうように御通牒をなされたのであります。それと同時に警察側におきましても、国警、自警協議の上で、国家地方警察本部長官から各県の隊長へ同様なものを流し、また自警連会長としての私から各都府県の代表の自警連の会長あてにこれを流しまして、大体全国同様な取扱いをいたしておるのであります。その中にこういう文句があるのであります。学校構内における集会、集団行進、集団示威運動収締りについては、当該学校長が措覆することを建前とし、要請があつた場合警察がこれに協力することとする、こういうようなことであつたのであります。これにつきましては、私どももこの学校構内における適法なる集会、適法なる集団行進、適法なる集団示威運動の取締りについては、もちろん学校の構内という特殊事情がございまするので、まずその管理者であり、またその責任者でありまする学校長がまず措置することが最も穏当な方法であろう、かような考え方からいたしまして、学校長にその自主精神によりまして、自主的な取締りを一応おまかせいたしまして、そしてそれによつてひとつ適法にこれらの集会、集団行進、集団示威運動が行われることを期待いたしておるのであります。しかしながら万一学校許可しない集会、学校許可しない集団行進、学校許可しない集団示威運動等が不法に行われた場合におきまして、しかも学校がどうしても警察出動要請しない、こういうような場合がかりにあるといたしましたならば、先ほど私から説明いたしましたごとくに、学校構内といえども、これは治外法権の所ではないのでありまして、従つて一応このとりきめをやめまして、警察自体、独自の立場におきまして、当然これは公安條例を適用いたしまして、取締りができるものと私どもは解釈し、また現にさような方針で取締りをいたしておるような次第であります。しかしながら現在までに東京都内におきまして、このような事態が悪化したというようなこととはございませんで、また幸いに学校当局から適切なるまた適時の出動要請がありますれば、警察官出動いたしまして、事態を鎮圧して行くことになつております。従いまして私の考えといたしましては、かりに学校内にをいて治安が乱れた、しかも学校長が独自の考えで、警察官出動要請をしない、しかもこれをほうつておいたならば事がきわめて重大になるというような場合におきましては、警察側の独自の立場において出動してこれを取締りたい、かように考えております。
  157. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと私の質問とお答えと合わぬようでありますが、私の言うのはその協定は学校内だけにおける集会だけのときであつて、これが外部べ影響がある集会である、さらに進んで天皇学校行幸なさるというようようなときまでも協定が及んでおらぬものだろうと思うがどうだ、こういうのであります。
  158. 田中榮一

    田中参考人 私が最初申しましたごとくに、警衛警備とこの集会とは全然別個なものでございますので、かりにさような、たとえば天皇その他国賓の方々の、警察側において、御警衛または警護をする必要があるというような場合におきましては、この條例とは全然別個に、これは警察独自の立場において警戒、警備の計画を立てまして警察官を配置いたさねばならない、かように考えております。ただ実際上の取扱いとしては、あるい事前に学校側と協議することもございましようが、独自の立場でやらなくてはならない、かように考えております。
  159. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さらにそれに続いてお聞きしたいのは、これは先ほど来の質問で明瞭になつたことでありまするが、学校が私の方で責任を負いますからとこう言うて、だからおやりくださるな、こう言つたとこるが、最後責任警察側にあることは明瞭になつたわけです。そこでかりに学校責任を負うからと言いながら問題が起つたとしますれば、学校に対して責任を追究できるものですか、あなたはその点どうお考えになつておりますか。
  160. 田中榮一

    田中参考人 かりに学校側において、その警備警衛上の責任を負うと言われましても、これは私はその学校が従来警備警衛責任を負う根拠というもはないのじやないかと思うのです。これはあくまで警察自体が負うべきものとかように考えておりますので、従つて警察側から学校にその責任を追究することはできなかろうと考えております。
  161. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この点に関して京大学長にもう一点お伺いしたい。先ほどあなたのお答えは、文部当局警察との協定に基いて、まずわれわれが責任を負う、こうおつしやつたのですが、今の警視総監のお答えから言えば、そういうことはないわけで、天皇行幸に対してさような協定は及ぶものではなかろうと私は思つたから質問したのですが、今及ばぬというお答えでしたが、あなたが相かわらずまずわれわれが責任を負うものだとお考えになつておるか、また責任を負うならば、先ほども何度も言つたのだが、どういう責任を負うか。
  162. 服部峻治郎

    ○服部参考人 この申合せ字句にある通り措置することを建前とする、これでございます。しかし一般にはただいまのような陛下がおいでになる場合には別のものであるというような建前から、われわれにもそれは幾分かはありまして、だから初めから警察の方とよく相談の上でああいう警備実態に入つたわけであります。
  163. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 吉河特審局長に承りたいのですが、先日聞いたのですが、京都大学における学生の、政治運動に対する政治団体の届出があつたように承つたのでありまするが、どういう性質のものと、どういうものがあつたかをここでひとつもう一ぺん明瞭にしていただきたい。
  164. 吉河光貞

    ○吉河説明員 京都大学におきましては、日本共産党京大細胞が届出をしております。これは困体等規正令に基く届出でありまして、最近までに本局に到着いたしました届出の構成員の数は三十二名になつております。その後変更届出が提出されたという事実は確認されておりません。なお全学連は届出団体になつておりますが、全学連につきましては、中央本部並びに各地方学連を大体価けさしておりまして、これを構成する各学校内及び府県団体は構成単位といたしまして、名前を届け出させるようにしております。京大におきましては同学会という団体の届出は、構成単位として見えておりませんが、同学会を構成する各学部の自治会が名前を列記しておりますかような状態であります。
  165. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先日服部京大学長がこちらへ出られたとさには、京都大学には共産党のそういう団体はないとおつしやつたのですが、今吉河特審局長の報告に基きますると、明瞭でありまするが、この点その後お調べになりましたか、どうでありますか。
  166. 服部峻治郎

    ○服部参考人 この前申し上げましたときには、ああいうふうな名前のものは大学における自治団体として認めておらないということを申したのであります。補導部に聞きましたら、これは学内では認めていないが、一定のところへ届を出しておる、こういうことで今聞いたと同じことであります
  167. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 明瞭なる共産党員が京大学生の中において団体をつくつておる。いわゆる共産党が政治活動をする機関を、京都大学の中で持つておるということは明瞭であります。かような事実があつても、先ほどあなたのお話の通り、この間からも何べんも繰返しておられるが、かような学生がおつても、天皇がおいでになれば、日本国民であるからさような不穏当なことがないだろうという確信をお持ちになつてつたのですが、これは重大なことだと思いまするから、あなたの御信念を承りたいと思います。
  168. 服部峻治郎

    ○服部参考人 その信念を持つていたればこそ、あの警備状態でお迎えしたわけであります。
  169. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると学長は、共産党というものは、普通一般の者と違つた思想を持つておる、普通一般の者と違つた行動を起すものである、ことに天皇に対する観念に至つては、大多数の日本国民とまつたお相反したる不逞の考えを持つておるということをあなたは御承知ないのですか、これはいかがです。
  170. 服部峻治郎

    ○服部参考人 いかなることをするかということは、私は実際まだ目撃したこともなかつたわけでありまして、予測はつきかねる次第であります。
  171. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするとあなたは、共産党とはいかなるものかを御承知ないと承るよりほかありません。これははなはだ失礼かもしれませんが、そう結論するよりほかありませんが、いかがですか。
  172. 服部峻治郎

    ○服部参考人 詳しくは存じません。
  173. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは警察側に承りたいのですが、この直接の任に当られた京都の本部長にもう一ぺんお聞きしたいのは、あなたの方から十分の警戒をし、学校当局に対しても、特に特殊警備が必要である、そういう事実が認められると御注意なさつたまではよろしいが、先ほど来議論いたしましたように、最後責任警察側にある。そのことを言うたのに対して、学校当局から、それでもわれわれの方でまずやりますから、責任を負いますから、ひとつ入らぬようにしてくれ、こう言われて入らなかつたというのですが、それで一体警察の任務は遂行でき得るとお思いになつたかどうか、これをまずひとつ承りたい。
  174. 永田圭一

    永田参考人 警察といたしましては、非常に心配をいたしまして、実を申しますと、ほかに市役所の方の職組がやはりいろいろと騒いでおりましたし、島津の工場においても騒いでおつたのでありますが、京都大学学生の方は、これは一番危険である、市役所や島津の工場の方は、口と首に関係しておるから、大いしたことはない。けれども学生の口は親が預つているのだから何をするかわからぬ、ことに若い学生で十分人格が完成しておらぬのだから、そこへ持つて来て、先ほど申し上げました通り、補導機関が非常に弱体であります、かようなことを――今回の事件京都関係のわれわれ一同が非常に恐縮している、大学の先生方も恐縮をしておられる、その際にかようなことを申すのはいかがと思いまするが、実は悩みの種は京都大学の補導機関の弱体にあつたのであります。それで先ほどからも申しましたように、たびたびいろいろの情報を提供して、ともに警戒に当ろうということを警告しておるのでありますが、これはピントの合うたのとはずれたのとの違いで、なかなかわれわれほど重大に考えておられなかつたのであります。そこでこれはどうも何か起るに違いないという懸念はございましたが、先ほどから慶応大学の塾長も、最近の警察のかわり方について、一向御承知がないと見えまして、盛んに警察というものの昔の罪悪を唱えて非常に、警察をきろうておられる、ああいうような考え方――最近の警察は先ほども申し上げましたように、前のような上から下への警察ではなくして、下から上への民主警察に脱皮して、そのために若い警察官が一生懸命になつてつておる今度の大学の騒動にいたしましても、みなから、よく若い警察官があれだけ腹も立てずに、流血の惨事も起さずに、けんかもせずによくやつてくれたというて、若い警察官に対して国会議員――京都関係の国会議員の方々がたくさん見えておりましたし、また国警の幹部の諸君もたくさん見えておりまして、よく若い警察官があれくらいトラブルも起さずに、何の事故もなしにうまくやつてくれたと言つているほど、涙ぐましくやつてくれておる。この民主警察に脱皮しようと努めておるこの若い警察官を、相かわらず昔の特高警察警察官の罪悪をそのままにかぶせて言つておられる。ずいぶん先ほどからも聞いておりまして残酷なことを言う識者の方がいられると思つて、内心憤慨しておつたのであります。そういうふうにしてわれわれは民主警察の確立ということのために、非常な努力をしておる。幸いにも京都大学の前の学長の鳥養博士も、今度の服部学長も、相当な有識の方々は非常に警察を信頼してもらいまして、決して警察は無理するんじやないのだからというふうにして、警察に対しては協調してもらつて今日まで来ておる。この大学の最高の幹部方々が、今日先ほどからずいぶんここで、言葉は悪うございますが、非常にいろいろと問責的なことをお尋ねになられておるので、お気の毒に思つておるのでありますが、今度の事件の一つの大きな原因は、この補導機関の弱体にあると私はかねてから思つてつたのであります。これについては、京都大学の前からやめられた先生方――私も京都大学出身でありますが、先生方に伺いますと、この補導機関が、先ほども服部学長がお述べになりましたように、戦後、軍事教練の手先に学生主事、生徒主事がなつたというので、全部パージにかかるようなひどい迫害を受けておられるために、補導機構に重要な人材が集まらないということであります。京都大学の補導の方は非常に歴代の学長が御心配になつて、われわれも心配しておりますが、全国の学校のうちでも優秀な補導機構であると聞いておるのであります。ところが考え方の相違か、感覚の相違か、われわれの心配しておりますことについて連絡が十分でなかつたこの点はまことに遺憾にたえないのでありますが、ただいまも吉河特審局長が申されました通り、京都大学左翼学生は三十人余りしか正式の党員はないのであります。そのほかにも秘密の党員もございましようし、京都大学でいつもデモをやりますときには、二百四、五十八くらいの学生が動員されておる。そのうちまずまず五、六十人か七、八十人くらいは、他の立命館大学その他の学生が入つておりますので、せいぜい京都大学左翼同調者は、合せましても百人から二百人くらいであろうと思うのであります。一万人の京都大学学生がおりますが、実際においては一%か二%程度左翼学生が非常によくしやべりまして、非常に押しが強い。そして補導部の方に盛んにいろいろな申入れをする。他の九八%ぐらいの学生は常に沈黙を守つております。またどうでもいいという態度を持つている。それで同学会学生――同学会は全学の学生自治体でありますが、ほとんど新入生で、同学会がいかなるものであるかということも知らない学生の一部分が会費を納めているだけであつて京都付近の高等学校から出た学生は、ほとんどああいうプラカードビラに使われる同学会の会費は納めないというような状況でありまして同学会それ自身はごく一部分の学生の団体にすぎないと言つても過言ではないと思うのであります。そしてその少数の一部の学生が……。
  175. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の聞かんとするところとちよつと話がそれたそうですが……。
  176. 永田圭一

    永田参考人 もうすぐ済みます。
  177. 押谷富三

    押谷委員長代理 では続けてください。〔梨木委員委員が聞いてもいないことをやらせることないじやないか」と呼ぶ〕
  178. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木君の発言を禁止します、     〔梨木委員「宣伝ばかりして国会の判断を誤らしちやいかぬ」と呼ぶ〕
  179. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木君に発言許可しておりません。
  180. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、こういうのです。あなたの方ではできるだけのことをおやりになつた。これは認める。それをとがめるのじやありませんが、しかし盡すだけのことを盡したか。学校では、まず御心配ありません、私の方で責任を持ちますからどうか入らないようにしてくださいと言うので、入らなかつたのでしよう。そこであなたを責めるわけには行かないけれども、学校がいくら責任を負いますと言つたつて責任を負う機関でない。責任を負う資格のないものであります。それを学校がああ言うのだからよかろうといつてやられたことに、遺憾の点がなかつたか。それを聞いておるのです。
  181. 永田圭一

    永田参考人 学校が引受けましても、先ほどからるる申し上げましたように、決して学校をたよりにはいたしておりません。ただしかし、自分のところを自分でやろうと言われるのに無理に押しつけて行くということは、民主警察の本質からまず望ましくないと思つて、遠慮しておつただけです。そのためにちやんと準備をして、学校はああ言うているけれども、たよりないから、まさかのときには出て行こうということでありましたので、大学に対する責任もとがめることもなし、私の方も盡せるだけのことは盡したと確信しておりまして、あれでよかつたとしつております。
  182. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際お諮りいたします文部大臣が六時から重要公務のためにさしつかえを生じましたので、まず順序をかえまして、文部大臣から京都大学事件についての政府の意見を承りたいと思います。
  183. 天野貞祐

    天野国務大臣 かような事件の起つたことは、まことに遺憾なことと思います。これからよく事情を研究いたしまして、そして今後こういうことのないように、善処いたしたいと考えます。
  184. 花村四郎

    ○花村委員 この京大事件はきわめて明瞭になつており、しかもその一部は学校みずからがその責任を果しておる一いうところまで進んでおりますにもかかわりませず、ただいま文部大臣の説明によりますれば、これから研究をして善処するとは、一体何事であるか。しかも本件をつぶさに考えてみます場合において、先ほど来私が京都大学学長質問をいたした、その一節で明瞭に相なつたのでございますが、要するに文部省からまわした文書が災いの種の一つになつております。ただいま警視総監の説明によりますれば、文部政務次官から東京都條例の実施に伴つて照会があつた。その照会に対して説明してやつたというその文書を、各学校に配付した。その配付された文書に基き、京都大学においては、文部省がこういう指示を与えたものであると誤信をし、そうしてなるべく学校内における問題は学校で解決する、警察の手を借りぬというような、この学園自治という観念に強く左右せられて、そうして公正なる扱いを誤つたということが、本件の導因に相なつておることはきわめて明瞭であります。こういう少くとも治安維持に関する重大問題について、ただいま警視総監が述ぶるがごときこういう文書を、いかにもしかつめらしく各学校に配付をして、これによつて指導をして行くというような誤つた文部省の観念が、こういう大きな問題を起したものである、こう私は断定せざるを得ないのであります。ここにおいてか、文部大臣はこの問題をこれから研究するところじやない。文部省のこうした誤れる、学校自治にとらわれて、警察制度を否認するがごとき、各学校で持つておりまする誤れる思想、その思想をためずして、こういう処置をしたということが、本件を起す一つの理由に相なつておるということを考えます場合において、これは学校当局ばかりではない、文部省においても大いに反省してしかるべきものがあるだろうと存じます、文部大臣はどうお考えになつておりますか。
  185. 天野貞祐

    天野国務大臣 私が研究すると言つたのは、今の補導部の力が弱いとかいうようなお話がございましたから、今後の、とはよく研究したいという考えでございます。また先ほど通牒を出したと申しますが、決して大学に命令したわけで心なくて、大学に、そういうことを参考として通牒を出したわけであります。元来大学自治とか自由というようなことは、学問に基いてのことなのであつて、こういう取締りとか、そういうふうなことはまた違つた点があると思うのです。しかし大学は何らの力を持つていないのですから、何か自分たちの手に負えないことがあれば、それは外部の警察と連絡して当然処置をしてもらうものだと私は考えております。
  186. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、これは学校当局の考えておりまする、いわゆる文部省で出した文書に対する考え方と文部省の考え方とに食い違いがあるのです。ここにつまり誤りがあるのでありますが、文部省の方は、これは参考の程度で送つたと、こう言い、学校の方では文部省の指示と信じて、金科玉條としてこの文書を守つておるということになるのですが、この点に対して京都学長はどうお考えになるのですか。今言うように、文部省がただこれを参考にまわしたにすぎないと考えたものを、あなたがこれに準拠したとこういうのですか。さつきは文部省から指示せられた文書に基いて考えたのであると、こう明瞭に言われたのですが、その辺はどうですか。
  187. 服部峻治郎

    ○服部参考人 前者であります私がさつき申しましたのは、二回ほど繰返して申しましたが、この全文は文部省からむろん来たものではありません。これは京都市の公安委員会京都大学とが申合せてこの成文を得たのであります。これは前に二回申しました。
  188. 花村四郎

    ○花村委員 文部省からまわしたものは何ですか。何をまわしたのですか。
  189. 服部峻治郎

    ○服部参考人 文部省から来ておりますのは二十五年の七月二十五日文部次官劔木氏から京都府下所在の国立及び私立大学長に来ております。これに「集団行進及び集団示威運動に関する更京都條例の学校内における解釈適用について上記について別紙写しの通り則京都内の国立、公立、私立の大学、短期大学、高等、専門学校長宛通牒しました。各地方公共団体において同種の條例が制定された場合には、同様の方針で関係公安委員会と協議措置されることが適当と思われますので、参考のため交付します」と、こういうのが来たのであります。それを参考とし工われわれの方において京都市の公安委員会と申し合せたのであります。
  190. 花村四郎

    ○花村委員 それではただいま読み上げた文書に基いたというのじやないとこうおつしやるのですか。それではさつき言われたことを取消すわけですね。そんならそれでけつこうです。あなたはさつきその文書に基いて……。
  191. 服部峻治郎

    ○服部参考人 その文書というのは、京都市の公安委員会……。
  192. 花村四郎

    ○花村委員 いや文部省とはつきり言われましたよ。文部省からまわされたとはつきり言われた。これは速記録を見ればわかる。
  193. 服部峻治郎

    ○服部参考人 そういう意味ではなかつたのです。
  194. 花村四郎

    ○花村委員 そういうことならよろしゆうございます。
  195. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 文部大臣は先ほどからのここにおける質疑応答をお聞きにならぬからですが、お聞きになつたら重大なるあなたに対する示唆があつたと思います。今花村委員から言われた点も、警視総監に問いますことと、服部学長の考えておられたことと全然違つておる。これは重大なことです。その次は学校はまず第一番に責任を負う、こう言われた。それはだんだん詰めて行くと学生に対する教育上の責任になつて来る。治安上における責任は負うべきものでもないし、負いようもないものだということなんです。しかるにこの問題に対しては、まず責任を負うものだと言つてかかつておられる。その次は、京都大学の中には明瞭なる共産党の政治活動団体が存在しておる、その事実もお知りにならなかつた。今ようやくわかつたと言われた。またこれらの学生は常に警察に対する治安に対しても、学校そのものに自由があるので、警察の入ることは学校の自由を侵害するものであると言つておる。先天的に警察をきらう考えを持つているということ、さらにそれより進んで、学校職員の中にもそういう考えを持つておる者がたくさんあるということが明瞭になつている。それに対しても学長は知らないとおつしやる。ここで明瞭になつたのです。その次に重大なことは、一体共産党とはどういうことを考えておるかということです。ことに天皇に対する考え方は、われわれとまつたく違つた不逞な考えを持つておるものかと言つたら、実はそういうことも知らなかつたとおつしやる。これはまことに重大なことだと思いますので、これはここであなたはこれから研究してとおつしやいますが、私はこれ以上は申し上げませんけれども、単なる抽象的な研究や考えておりますでは、私は済まぬことではないかと思いますので、この点十分御注意を申し上げます。
  196. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 永田京都市警本部長あるいは市島検事正から御答弁願いたいと思いますが……。
  197. 押谷富三

    押谷委員長代理 佐瀬君、文部大臣に先に……。
  198. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 それでは文部大臣に先にお伺いいたします。問題は学問の自由と警察権との調整をいかにするかということにあると考えるのであります。大学長の大学に対する管理権と、文部大臣のこれに対する監督権というような制度の上から見て、われわれは学問の自由あるいは学園の自由ということを、従来のような考え方のもとに放任しておくということが、きわめて危険ではないかという一部の危惧も勘案いたしまして、いやしくも学生運動が、いわゆる学生の本分を逸脱して政治活動というようなものに入る場合には、治安維持警察及び検察当局がこれに対して重大な関心と、また取締的な行動に出なければならぬというその立場をも顧慮いたしまして、この際これまでの制度の上から見て大学当局特に文部大臣としていかに対処されるかということを、研究というようなことでなくして、この機会にその構想を明確にされることが当法務委員会においてわれわれの満足し得ること荷ないか、かように考えますので、お忙しいようでありますけれども、明快な文部大臣の御回答を煩わしたいと思います。
  199. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは私は大学の学問に関する自由であるとか、またそれに基く自治とかいうことはどこまでも尊重して行きたいと思つております。けれども、これは大学警備と申しましようか、そういうことはまた別の問題でございますから、大学学長は管理権は持つておりますが、いつも警察と相談をして善処すべきものだと思います。ただ大学がそういうように自治ということを尊重して行かなければなりませんから、文部大臣がただ監督権は持つておりますが、その間の関係をどうするかということは、これはそう簡単に今ここで明瞭にこうだというようには、私はなかなか言えないむずかしいものを持つていると思うのです。今季での大学のやつて来たやり方もございますししますから、よく大学学長諸君と相談をして適当に考えよう、また文部省でも研究しよう、今はどうも私はそれより申し上げることはできないということを御了承いただきたいと思います。
  200. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 先ほど来警察当局との協定とか、申合せとかいうことが問題になつているようでありますが、私は学園の自由と警察権の調整ということを今後考える場合に、やはりそういう警察あるいは検察当局とも緊密な連絡のもとに具体案を確立することが焦眉の急であろうというように考えますので、文部大臣としても大学当局者と折衝されると同時に、警察、検察当局とも十分愼重に協議せられて、すみやかに具体策を確立されんことを要望いたします。
  201. 押谷富三

    押谷委員長代理 梨木委員から質疑の通告があります。これを許します。梨木作次郎君。
  202. 梨木作次郎

    ○梨木委員 文部大臣に伺いたいのでありますが、京都大学では同学会の役員であつた人々のうち八名を無期停学にしておるのであります。こういうす学のとつた措置を是認されますかどうか。
  203. 天野貞祐

    天野国務大臣 学長が十分事情をお考えになりましてなさつたのでありますから、私はこれを認めるのが当然だと考えます。
  204. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この八名の学生を処分した理由を伺いたいのであります。
  205. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは学長から十分述べられたことではないかと思います。詳しいことは学長から述べることであります。
  206. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたは学長のやつたことは何でも是認するという建前をおとりになるのですか。この学生の中には問題になつた当日、つまり十一月十二日にに全然現場におらなかつた人、当時刑務所に拘禁されておつた、そういう人々まで処分しておるのでありますが、これは一体どういう理由で処分されたかということについての報告があつたはずであります。あなたが是認される以上は、やはりこういう問題を含んで是認されるという御見解を発表になつたものと思いますが、これはどうですか。
  207. 天野貞祐

    天野国務大臣 その学生は当日はそうであつたかもしれませんが、平生からのことを考えて学長が処分されたことと私は考えます、
  208. 梨木作次郎

    ○梨木委員 平生からのどういう行動が処分に値するということになるのでございましようか。それではこの点をこういうぐあいに聞きましよう。一般に、これは大体自由党の諸君はそう宣伝しておるのでありますが、これは左翼学生の一部の煽動によるものだ、こういうことになつているわけなんです。そういうことになりますと、左翼学生だから処分したということになりますか。伺いましよう。
  209. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういうこまかいことはすべて大学自治学長にまかせてありますから、学長からこまかい事実は報告をしてもらいます。
  210. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは、こういうような問題が起つた場合の最も望ましい処分のやり方、つまり左翼学生だからということで処分するというような、さような方針はあなたとしておとりになるのかならないのか、これを伺いたい。
  211. 天野貞祐

    天野国務大臣 それは左翼学生という言葉が非常にあいまいでございますが、何も別段不都合なことのないものを処分するということはないと思つております。
  212. 梨木作次郎

    ○梨木委員 だからそこが問題なんでありまして、先ほど来この委員会の空気を見ておりましても、今問題になつているこの京都の十二日の事件、これは一部左翼学生の煽動であるとかいうようなことでこれを問題にしている。これを一掃しなければならぬという意見をさえ発表する自由党の委員がおるのでありますそれで左翼学生というものは、あなたもおつしやるように、まことにあいまいな規定であります。こういうようなことから、さらにそれをもう一ぺん直接的に言えば、共産党が云々、共産党だとか、共産主義思想を持つているとか、それをさらに擴大して、左翼学生だとか、こういうような、その人間の持つている思想そのものまでも考慮に入れて処分するというような御方針をお持ちになるのかどうか。こういうことを是認されるのかどうか。
  213. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういう考えは持つておりません。
  214. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは伺いたいのでありますが、この同学会というのは、あなたのお手元に来ておる報告では、つまり左翼学生の団体である、こういうぐあいにお考えでありますか。あるいはもう一つ、左翼学生によつて指導されるものである。こういうお考えなんでありますか、伺います。
  215. 天野貞祐

    天野国務大臣 左翼学生の、団体とは考えておりません。けれども、左翼学生もおるということは事実と思つております。
  216. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ところで左翼学生がおる、左翼学生によつて指導される団体である、そういうようにお考えでありますか。
  217. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういうことはすべて文部省としては学長の判断にまかせておることであります。そういうこまかいことに一々文部省が立ち入るということは、大学の自由ということから、大学の諸君が常々反対されておることで、おそらくあなたも反対されることではないかと思う。
  218. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それはその通りなんでありますが、これは非常に国会でも問題になつて来ておるほどの、いわば大げさに取上げられつつありますから、やはりこれは相当重大な問題として、あなたのお手元へ一切詳細な御報告が参りまして、その上で処理されているのではないかと思つたので、今参考までに伺つたのでありますが、それならばけつこうです。
  219. 押谷富三

    押谷委員長代理 質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は忌憚のない御熱心な御意見を述べられましたことについて委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  明日は午後一時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後六時十九分散会