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1951-11-22 第12回国会 衆議院 法務委員会 第16号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十六年十一月二十二日(木曜日) 午後三時二十八分
開議
出席委員
委員長代理
理事
押谷
富三君
理事
田嶋 好文君 鍛冶 良作君 角田 幸吉君 佐瀬 昌三君 高橋 英吉君 古島 義英君 牧野
寛索
君 松木 弘君
眞鍋
勝君 山口 好一君
梨木作次郎
君 佐竹
晴記
君
委員外
の
出席者
最高裁判所事務
総長
五鬼上堅磐君 判 事 (
最高裁判所事
務総局人事局
長)
鈴木
忠一君 専 門 員 村 教三君 専 門 員 小木 貞一君
—————————————
十一月二十二日
委員金原舜
二君及び
小野孝
君辞任につき、その
補欠
として
北川定務
君及び
吉田安
君が議長の指 名で
委員
に
選任
された。 同月同日
北川定務
君が
理事
に
補欠
当選した。
—————————————
十一月二十二日
和歌山地方法務局栗栖川出張所存置
の
請願
(世
耕弘一
君
紹介
)(第一四六九号)
和歌山地方法務局本宮出張所存置
の
請願
(
世耕
弘一
君
紹介
)(第一四七〇号)
盛岡地方法務局土沢出張所存置
の
請願
)(高田 弥市君
紹介
)(第一四八〇号)
裁判所職員
の
給与改訂
に関する
請願
(
足鹿覺
君
紹介
)(第一五一六号) 同(
稻田直道
君
紹介
)(第一五六〇号)
戦争犯罪者
の
減刑等
に関する
請願
(
足鹿覺
君紹 介)(第一五一九号) の審査を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
理事
の互選
参考人招致
の件
裁判所
の
司法行政
に関する件
—————————————
押谷富三
1
○
押谷委員長代理
会議
を開きます。 お諮りいたします。昨二十一日辞任せられ、本二十二日
委員
に
選任
せられました
北川定務
君は
理事
でありましたので、その
補欠選任
を行わなければなりませんが、その
選任
は、前例によりまして
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
押谷富三
2
○
押谷委員長代理
御
異議
がなければ、
北川定務
君を
理事
に指名いたします。
—————————————
押谷富三
3
○
押谷委員長代理
それでは
裁判所
の
司法行政
に関して
梨木委員
から
発言
の通告があります。これを許します。 なおこの際お諮りいたしますが、
国会法
第七十二条により、
最高裁判所事務総長
及び
人事局長
より出席説明いたしたいとの申出がありますから、これを許したいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
押谷富三
4
○
押谷委員長代理
御
異議
がなければ許すことにいたします。
梨木作次郎
君。
梨木作次郎
5
○
梨木委員
昨日の当
委員会
におきまして、
松川事件
と言われておるところの
福島
県における
列車転覆事件
の第一審の
裁判
をした
長尾信裁判官
に対して、
脅迫状
が頻々として出されておるという問題に関連して、
裁判
の
威信保持
の
方法
についての
委員
からの質問、またこれに対する
裁判所側
並びに法務府からの
答弁
があ
つたの
でありますが、私はこの問題について、少しばかり
最高裁判所
にお尋ねいたしたいと思うのであります。 第一にお伺いいたしたいのは、この
長尾信裁判官
が
松川事件
の
判決
を下してから、その後
名古屋高等裁判所
に
転任
にな
つて
おることは、昨日
最高裁判所
の
事務総長
から報告があ
つたの
でありますが、
転任
が決定したのはいつであるか。それからいよいよ
名古屋
の
高等裁判所
に
転任
されたのはいつであるか。これをまず伺いたいのであります。
五鬼上堅磐
6
○五鬼上
最高裁判所説明員
長尾判事
が
名古屋
へ転出されたのは、日を
ちよ
つとはつきり記憶いたしておりませんが、大体本年三月初旬であります。
梨木作次郎
7
○
梨木委員
転任
を決定したのはいつでありますか。
五鬼上堅磐
8
○五鬼上
最高裁判所説明員
発令
の日が、ただいま申し上げた三月の初旬であ
つた
と思います。
梨木作次郎
9
○
梨木委員
発令
と同時に
名古屋
へ
転任
になりましたかどうか、実際上はどうな
つて
おりますか。
五鬼上堅磐
10
○五鬼上
最高裁判所説明員
発令
と同時に着任されたか、あるいは少し遅れたかは、
ちよ
つと今
長尾判事
の具体的事実については、調査しないとわかりませんが、大体
発令
後二週間以内には、普通の場合には
転任先
に着任される
よう
にな
つて
います。
梨木作次郎
11
○
梨木委員
転任
にな
つて
から、しばらく健康を害して入院しておられたという事実はいかがですか。
五鬼上堅磐
12
○五鬼上
最高裁判所説明員
長尾判事
は
松川事件
の
判決
後、多少からだを害されまして、
名古屋
に
行つて
から入院して、約一箇月ぐらいの間療養された事実はあります。
梨木作次郎
13
○
梨木委員
それは
精神系統
の
病気
で入院されたと聞いておりますが、いかかですか。
五鬼上堅磐
14
○五鬼上
最高裁判所説明員
同
判事
の
病気
は
神経衰弱
と承
つて
おります。
梨木作次郎
15
○
梨木委員
そこでやはり入られた
病院
は
精神病院
でありますか。
五鬼上堅磐
16
○五鬼上
最高裁判所説明員
ちよ
つと今その
病院
の
名前
は判明いたしておりません。
梨木作次郎
17
○
梨木委員
いつごろから
神経衰弱
になられたのか、おわかりでありまし
よう
か。
五鬼上堅磐
18
○五鬼上
最高裁判所説明員
長尾判事
が
松川事件
を担任され、
判決
されて間もなく私がお会いしたときは、非常に元気であ
つて
、少しもからだに御
異状
かなか
つた
よう
でありました。
判決
後に同
判事
の家宅その他同
判事
に対して、いろいろな
脅迫状
とかいう
よう
なものが
相当
多く参りまして、そういう
よう
なことからかもしれませんが、
神経衰弱
にかかられた、それは大体
名古屋
に
転任
する少し前のことだ
つた
と思います。
梨木作次郎
19
○
梨木委員
これは非常に重大な問題であり、この
裁判
を受けた
被告諸君
、この点について非常な
関心
を払
つて
おるのであります。というのは、今
事務総長
のお話では、自分が
判決
後間もなく会
つた
ときは元気であ
つた
とおつしやいましたが、しかしこの
脅迫状云々
の
よう
なものが舞い込んだというのは、むしろ最近のことではないのですか。
判決
があ
つた
直後にも、すでにそういうことがあ
つた
とおつしやるのですか。
五鬼上堅磐
20
○五鬼上
最高裁判所説明員
むろんこの
事件
の係属中にも多少
脅迫状
の
よう
はものが来た事実はあ
つた
よう
でしたが、
判決
直後
相当
多数の
脅迫状
が舞い込んだ事実はあります。ことに
判決
後には、中共その他
外国
からもいろいろ
脅迫状
に類する
よう
なものが参
つて
おります。
梨木作次郎
21
○
梨木委員
これは私はもう少し詳細に伺いたい。この点については、第一
審判決
を下す当時におきまして、
裁判日
の
精神状態
が正常であ
つた
かどうかについての判断の上に重要な問題を提供すると思
つて
おるのでありますが、私どもが現地で得た
情報
によりますと
——
これは
裁判所系統
の人であります。
名前
は申し上げません。
長尾裁判日
はどうも
精神
病にな
つて
、今入院されておる、そしてそれは
判決
直後からそういう
状態
であ
つた
よう
だ、私の得た
情報
はそうな
つて
おるのでありますが、その点間違いございませんでし
よう
か。
五鬼上堅磐
22
○五鬼上
最高裁判所説明員
大体
判決
直後には、まだ別段身体の
異状
はなか
つた
よう
に思
つて
おります。先ほど来御
答弁
したことで間違いないと思います。
梨木作次郎
23
○
梨木委員
名古屋高等裁判所
へ
転任
させられる当時におきましては、
名古屋高裁
ではすでに
定員
が一ぱいにな
つて
おりまして、
定員外
であ
つた
にもかかわらず、
長尾裁判長
は
名古屋高裁
に
転任
させられておることは、私は
名古屋高等裁判所管内
の
裁判官
から聞いておるのでありますから、間違いないと思いますが、いかがですか。
五鬼上堅磐
24
○五鬼上
最高裁判所説明員
名古屋
へ
転任
されてから、一箇月くらい療養されてお
つた
と思
つて
おります。そういう
関係
から、部の
構成員
にはすぐにな
つて
いなか
つた
よう
に思います。
梨木作次郎
25
○
梨木委員
そうすると、
病気
されてお
つたの
で、当時はとにかく
定員外
であ
つた
ことはお認めですね。
五鬼上堅磐
26
○五鬼上
最高裁判所説明員
定員外
であ
つた
かどうかは、
今ちよ
つとはつきりいたしませんが、おそらく
名古屋高等裁判所
の方には、当時
相当欠員
があ
つた
と思いますから、
定員外
であ
つたの
ではなくして、
むしろ部
の
構成員
には
転任
の直後はな
つて
いなか
つた
、こう申し上げた方がよいと思います。
梨木作次郎
27
○
梨木委員
部の
構成員
にできない
よう
な、当時
病院
へ入らなければならない
よう
な
状態
の人、これをあの
日本
のみならず
世界
的にまで大きな
関心
を呼んでおる
事件
について、その後間もなく
転任
させるという
いきさつ
について私は非常に合点の行かないものがあるのでありますが、これはどういう
いきさつ
で
転任
を決定されたのでありますか。
五鬼上堅磐
28
○五鬼上
最高裁判所説明員
長尾判事
が
松川事件
の
判決
をしたのは、多分十二月だ
つた
と思います。同
判事
が
名古屋
へ
転任
したのは三月であります。これは別段特段の理由はございません。ただ
裁判所
の
人事行政
上適材適所に配置した、こういうことであります。
梨木作次郎
29
○
梨木委員
ところでそうおつしやいますが、実はこの
松川事件
をやりましてから、これを
扱つた責任者
並びにその
関係者
というものは、ほとんど
福島地方裁判所
から他に
転任
しておる。たとえば
松浦福島地方裁判所
の所長も、これもほかへ
転任
にな
つて
おるし、それからこの
事件
の
主任検事
の
山本検事
も、ほかへ
転任
にな
つて
おる。それから警察の方の
新井福島国警隊長
も、
転任
にな
つて
おる。それから
安西福島地検検事正
もこれもどこかへ
転任
にな
つて
おるという
よう
な
状態
ですが、これらの点を考慮いたしますと、どうもこの
事件
の
責任者
が全部現地からかわ
つて
おるということの中に、非常に大きな疑惑を
——
やはりこの
裁判
が
ほんとう
に神聖に公正に行われたかということについて、まずここに世間の問題を生んでおるということが私は指摘できるんじやないかと思うのであります。ところでそういう
状態
の中で、私の入手した
資料
によりますと、二十六年の八月の十九日の朝日
新聞
の第五版の四面、
宮城版
のBです。これには
田中最高裁判所長官
が十八日朝
仙台
に
寄つて
、そうして各
裁判所長
と種々
意見
の交換を
行つた
後、午後一時から
仙台高等裁判所長官室
で
記者団
に次の
よう
に
語つた
ということで
表題
はこうな
つて
おるのです。「
東北地方裁判官
に
人物
の
貧困
、田中高裁長共産党
非合法化
問題も論及」こういう見出しです。そうしてこう語
つて
おるのであります。「
東北
、
北海道
の各
裁判所
は
人物
、物的に他
地方
に比べて劣
つて
おり、これは当然近い将来に充実をはかる
考え
だ、
松川
、平両
事件
の
裁判
の運営が円滑に行かなか
つた
ことに関連して
集団暴行事件
の
処理方法
を
考え
直さねばならず」
云々
、それから「極左、極右の問題については共産党の
非合法化
は現在までの破壊的な行動から
考え
て当然考慮せねばならないが、」
云々
と、こういうことを
語つた
と報道しておるのでありますが、この事実を
事務総長
は御承知ですか、こういう
談話
を
語つた
ということを……。
五鬼上堅磐
30
○五鬼上
最高裁判所説明員
これは
新聞
の
表題
がどう出てお
つた
か、
ちよ
つと私にはわかりませんが、
田中長官
が
北海道
を巡視されて、帰りに
仙台
に寄られた事実は確かにあります。
人物
が劣
つて
おるとか、そういう
よう
なことはおそらく言
つた
ことはないと思います。その点について、私その後、ほかの人に尋ねられて、
田中長官
に聞いたところが、決してそういうことは
言つて
いないという話でした。ただ
東北地方
は
裁判所
としても、非常に
欠員
が多いものですから、その
欠員
を補充する必要があるということは、おそらくそのときに話されたことであろうと思います。それがそういう
人物払底
という言葉で
間違つて
お
つたの
ではないかと思いますが、その程度であります。
梨木作次郎
31
○
梨木委員
実は
田中最高裁判所長官
の
新聞記事
を見て、今拘禁されておる
被告諸君
は非常な衝動を感じております。これを率直に受取りますならば、
東北地方
の
裁判官
はみな無能ということである。そうしてまだ第二審の
裁判
中であります。ところが
松川事件
はすでに
集団暴行事件
として
犯罪
として認定しておる、こういう
印象
を与える、これは
最高裁
の
長官
の
談話
であります。そうして結局
最高裁
の
長官
の
考え
に合致した
裁判
をしないものはみな
貧困低能
、これはみなとりかえなければならぬという
よう
な
印象
を受ける。これは単にこの
談話
があ
つた
、なか
つた
ということだけではありません。
田中最高裁判所長官
は今年の
年頭
の辞においてこういうことを語
つて
おるのであります。 「
フアッシズム
は清算されたが、これと同じ本質の極端な
官僚主義
、
秘密恐怖政治
、人間の
奴隷化
、文化の破壊において
フアッシズム
に勝るとも劣らない
勢力
である新な形のインペリアリズムが、赤裸々なマキアヴエリズムを以て装われた暴力によ
つて民主主義
と
平和主義
の
世界
を刻々と侵蝕しつつある。
人類社会
の危機これより重大なるものはない。」
云々
。「我々は世の中に
正当原因
による
戦争
があり、これに訴えることが誠に止むを得ない場合が起り得ることを否定し得ない。」こういう趣旨のことを
言つて
、
戦争
を刺激し挑発する
よう
な
発言
をなし、さらに終りの方に行きまして、ここが重大であります。「我々が対立する
二つ
の
世界
の何れに所属すべきかは極めて明瞭である。
懐疑主義
、
日和見主義
、近視眼的な打算は新憲法の
精神
を裏切るものであり、又策としても愚の極である。自由は力を意味しなければならぬ。」
といつて
、力の支配を
最高裁判所
の
長官
が強調しておるのであります。これらの
最高裁判所長官
の言説と、この
談話
とを
考え
てみた場合、明らかに現在の
日本
の
最高裁判所
の
長官
は、対立する
二つ
の
陣営
のうちの一方の
資本主義陣営
にくみして、そうして
裁判
をしなければならぬということを部下に
訓辞
しておる。こういうもとにおきまして、この
松川事件
の
裁判
を受けた
諸君
は
裁判
の公正に対する非常な危惧の感を持つのは、私は無理もないことだと
考え
るのであります。そうして昨日この
委員会
におきまして、
松川事件
につきましては、
日本
の国内のみならず、海外からも
脅迫状
が来ていると言われるのでありますが、その
脅迫状
というのは、一体それをどうとるか、
無実
の人が
死刑
や、無期や、
重刑
に処せられ
よう
とする、その不正に対する
抗議
がこういう形にな
つて
出て来ておるのであります。これは単に
社会主義
諸
国家
、あるいは
人民民主主義
諸
国家
から、こういう
抗議
あるいは
脅迫状——自由党
の
委員
に言わせると
脅迫状
が舞い込んでおると言われますが、単にこれはきのう指摘された
よう
に、中国だとか、あるいはブルガリアだとかハンガリーだけではありません。ポーランドからも来ておりますし、
チェコスロヴアキア
からも来ておりますし、それに全
世界
の七千万の
労働者
を組織しておるところの
世界労連
からも正式な
抗議
が来ておるのであります。そうしてこれは、単にこれら
社会主義民主主義
諸
国家
のみならず、
アメリカ
からも来ております。私はこの点を指摘いたします。すなわちことしの一月、
日本
におられました
アメリカ
の神学校の教師で、
サムH
・フランクリンという方が、
日本
の
自由人権協会
の
理事長
である
海野晋吉
さんのところへ
手紙
をよこしておるのであります。その
手紙
にはこう書いておるのであります。「私は
福島事件
についてあなたの助力をお願いしたい。私のゼミナールにいた
学生井上
君は、個人的に当
事件
の
被告
の一人、
佐藤
君を知
つて
います。
井上
君は
佐藤
君と
事件
数日後話したことがあり、その会話及び
佐藤
の人となりに対する
一般
的な認識から、
佐藤
の無罪を確信しております。
井上
君はこの秋(昨年)この
事件
について議論しているときに、このことを話しました。私は
井上
君から二十名の
被告
に
重刑
が宣告された知らせを受けたが、
佐藤
は
死刑
でした。
井上
君の感じでは、
共産主義
に対する
一般
の感情が
裁判
の公平を害し、
情況証拠
に重点がおかれたもの
といつて
おり、私の理解するところでは、本件には
目撃者
はいなか
つた
と思います。
井上
君の話では、
資金不足
から
被告たち
は十分な
弁護人
を持てなか
つた
とのことです。もし本当に
正義
についての重大な誤りの
危険性
があるということが事実であるとすれば、私は
アメリカ
や
日本
の
クリスチャン
に訴えて援助したいと思うから、貴
協会
の調査をお願いします」。
といつて
、
アメリカ
の
クリスチャン
の方々も、実際
正義
と
真実
を愛する
人たち
が悲憤をも
つて
このことを感じておる。これが
世界
の
抗議
とな
つて
出て来ておるのであります。これを
脅迫
だとかという
よう
に受取りまして、そして
裁判
の
威信
を保
つた
めだと
言つて
、
名誉毀損
だとか、
脅迫罪
の名のもとにこの
事件
に
抗議
する人々を
断圧しよう
とする
よう
な形によ
つて裁判
の
威信
を保とうとしておるのであります。しかし
最高裁判所
の方に聞いていただきたいのですが
裁判
の
威信
というものは、これは一体どうして保たれるのですか。それは
ほんとう
に
真実
に合致した、
真実
を守り通す
裁判
をして、初めて
裁判
の
威信
というものが保たれるのであります。ところがこの
裁判
については、これは現在まだ第二審で進行中であります。第二審の
裁判
は、こういう
外国
からの訴えもあり、
海野晋吉自由人権協会理事長
も、今度は
佐藤
君のために
弁護
に立
つて
おります。現在
全国
からはせ参じた百三十名に上るところの
弁護人
が、これについて今
弁護
しておるのであります。ところがこの問題について今いわれていることはさ
よう
な
裁判
の
威信
を保
つた
めには第一
審裁判
を批判し、非難する人を刑事的な
処分
によ
つて
弾圧し
よう
とする
よう
な意図が、露骨に現われて来ておるということについては、
国民
は、
無実
の人が罰せられるということについて、
裁判
を批判する自由があるはずであります。しかるにこの自由までも押え
よう
とする
よう
なやり方、これを私は
慎しま
なければならぬと思うのであります。しかも
最高裁判所
の最近の
あり方
というものは、すでに
共産主義
の
思想そのもの
を罰し
よう
としておる。
一体裁判所
に
思想
を罰する事由がありますか。そういう
傾向
が現われて来ている。この
よう
な
傾向
が
裁判
の上に現われて来ますならば、
一つ
の
思想傾向
を持
つた
人は罪なくして罰せられるという
よう
な、ま
つた
く危険な
状態
を馴致するということをわれわれは指摘しなければなりません。この点について
最高裁判所
の
あり方
についてのあなたの御見解をお聞きしておきたいと思うのであります。
五鬼上堅磐
32
○五鬼上
最高裁判所説明員
いろいろ御
意見
は拝聽いたしました。ただ
日本
の
裁判官
が、他の
圧迫
によるとかあるいはその他の
勢力
によ
つて裁判
を左右するということは絶対にございません。その良心に
従つて裁判
をしているということは、これはどなたもお認めになるところであると思います。また
最高裁判所
といたしましても、さ
よう
な
裁判
に対して
圧迫
を加える、あるいは
思想
を罰せよという
よう
な取扱いなどは決していたしておりません。御安心願いたいと思います。
梨木作次郎
33
○
梨木委員
最後に一点この点について伺
つて
おきます。私は、二十六年の
年頭
の辞ということで一月一日付の
裁判所時報
に載
つて
お
つた最高裁判所長官田中耕太郎
氏の
訓辞
、並びに私は先ほど引例しませんでしたが、二十六年六月十五日付の
最高裁判所長官
の
訓辞
というものは、明らかに
最高裁判所長官
が
一つ
の是認した
思想傾向
を持
つて裁判
をするということを、
裁判官
に上から命令している
よう
にさえ受取れる字があるのであります。こういう
傾向
というものはまことに危険な
傾向
であると思うのであります。この点は今後十分慎んでもらいたいと思います。 その次に伺いたいのでありますが、
東京地方裁判所
の
総務課厚生係
の
不正事件
であります。二十五年の九月の中ごろに、
東京地方裁判所
の
天野徳重
という人、それから
事務局長
でありますか
鵜飼局長
、これらの
人たち
が
オリエンタル縫製株式会社
に対しまして、
縫製加工
の依頼をするという話をし、そうしてこの
東京地方裁判所
の
代行指定商
、そういうものに指定するということで、そのための
予納金
というものを二百五十万円予納さしているのであります。これはいわば
洋服屋
さんであります。
判事
さんや
職員
の
洋服
をこしらえる、そのために
生地
を与えてこれに加工するのであるから、その
予納金
としてこれだけの金を予納しろ
といつて
や
つたの
だそうであります。ところがその後になりまして、この
洋服
の
生地
の
割当
ができなくな
つた
。何かこれは
割当
の方がからの
切符
であ
つた
ということで、一旦
受取つた
二百五十万円をまたもどしたそうであります。ところが、その後になりましてさらに、今度は大丈夫だからということで、その
資金
とし三百四十万円を用意しろという申入れがあり、これを用意して渡すことにな
つたの
であります。ところがこの三百四十万円というのは、
オリエンタル縫製株式会社
が
銀行
の
支払い保証
のある
手形
を渡したのに、この
支払い保証
があ
つて
も、
手形
では困る、
現金
でなければならぬということで、
即座
には
現金
にならないということを申したところが、この
天野徳重
という人は、それはおれの方で
割引屋
を
紹介
するからということで、この
裁判所
の
職員
が
割引屋
を
紹介
して、ここへ
行つて
割引いたしたのであります。ところが
手形
が二通にな
つた
、その一通を
割引券
を横領してしま
つて
、今日までもこれを返さないのであります。まことに奇怪な
事件
であります。しかもそれがその後になりまして、
東京地方裁判所
のこれは
厚生係
ということにな
つて
おりまして、こういう
念書
を入れております。これは貴殿より御拝借の金員中来る二十一日午後三時迄に金百五十万円を
現金
にて御支払致しますから念の為本書を入れて置きます。 右御了承の程願います。
昭和
二十六年二月十六日
東京地方裁判所厚生係
天野
徳重
オリエンタル縫製株式会社
社長竹村忠
殿という
よう
な
念書
を入れております。ところがこれが今日まで本人に返
つて
おらないのであります。まことにこれは奇怪な
事件
であります。き
よう
も
国会
の本
会議
におきまして
綱紀粛正
の決議が議決されております。しかし
裁判所
だけは、そういう
綱紀粛正
を決議しなければならない、そういう不正の圏外にあるものと
一般国民
の
信頼
をつないでおるはずなんであります。その
裁判所
で、こういう
一般国民
に対して
保証金
をと
つて
おきながら返さない。しかもその
保証金
をさらに
現金
にかえなければならぬということで、
銀行
の
支払証
のあるものをわざわざ
職員
が
割引屋
まで
紹介
して
現金
にしておる。その金が返
つて
来てないという
状態
である。しかもこれを告訴したところが、
検事局
もこれまた問題にせず取上げ
よう
としない。こうな
つて
来ると
国民
に、これは
裁判所
と
検事局
が結托して、
裁判所
がいくら悪いことをしても
検事局
が取上げないという
印象
を与えつつあるのであります。これは非常に重大な問題であります。これはどういう
いきさつ
にな
つて
おるのか。今突然のことでありますからおわかりにならないかもしれませんが、もし今
即座
に御
答弁
できなければお調べの上、
裁判所
の
信頼
と権威のために、こういう問題は即刻処理しなければならぬ問題であると思いますが、御所見を伺いたいと思います。
五鬼上堅磐
34
○五鬼上
最高裁判所説明員
ただいま御
質疑
のあ
つた
天野徳重
という
職員
は、確かに
東京地方裁判所
におります。
全国裁判所職員組合
の
組合長
をしておるということは記憶いたしております。
厚生係
というものがあ
つて
、それにただいま御
質疑
のあ
つた
よう
な
手形事件
があ
つた
ということも私聞き及んでおります。詳細は今
資料
がありませんから十分な御
答弁
はできないと思いますが、なお
鈴本人事局長
がここに参
つて
おりますから、同君の知
つて
おる限りはお答えいたします。
鈴木忠一
35
○
鈴木最高裁判所説明員
私も実は正確に
事件
の真相をはつきり握
つて
おるというまでの知識を持
つて
おらないのですけれども、大体の輪廓を申し上げますと、
厚生係
というのはもともとスタートが
役所
としての
厚生係
ではないのです。といいますのは、終戦後の
物資
の非常に足りなか
つた
当時、
東京地方裁判所
の
総務課
に勤めている連中に、外部から
物資
を算段をして買い入れて若干安く売るということをや
つて
お
つた
、いわば私的のものであ
つて
、
役所
の事業としてや
つて
お
つたの
じやないのです。しかし当時衣料であるとか、そういう
よう
な
統制品
は、いわゆる
切符
がなければ
配給
を受けられない、そういう
よう
な
関係
にあ
つた
ものですから、
官庁
に勤めておる
職員
になら
配給
をする、こういうので、その
天野
君が
東京地方裁判所
の
厚生係
という
よう
な
名前
で
官庁がら配給
を受けてそれをや
つて
お
つた
という
よう
なことがあるわけです。その
配給品
についての
処分とい
う
よう
なことについて、おそらく今の御質問の
よう
なことが起きたのです。これは御質問の
手形
や何かだけではなくてほかにもあるのです。しかしそれについては現に民事訴訟も起
つて
おるのです。これは原告の方は又一商店ですが、国に責任がある、つまり
裁判所
が相手方だという
よう
な形で民事訴訟が起
つて
おるのです。それで私どもも、今
梨木委員
から御
発言
があ
つた
通り、
裁判所
のや
つた
ことでないにしろ、とにかく
裁判所
に勤めておる
職員
が
関係
しておる事実は、これは否定し得ない事実なんですから、どういう事実であるかということは、ぜひともはつきりしなければ、
職員
の監督上も
裁判所
の名誉としても困るわけですから、
東京地方裁判所
では調査
委員
を組織して調査をしたのです。ところが、その一方検察当局へも告訴があり、しかも結局成果が上らないほどなんですから、公権的な権力で調査をするのでない、仲間の上におる
判事
が調査をしておる程度では、実際
事件
の真相がつかめないわけなんです。調べた結果によりますと、その帳簿という
よう
なものも、書類という
よう
なものもきわめて不備で、ほとんどない。本人の言うところによ
つて
判断する以外にないというわけなんですから、実際としては、これは
裁判所
が
官庁
として
天野
にやらしたことでないことは明らかなんですけれども、民事上の責任がどこべ行くかということについては、
官庁
でや
つた
ことではないんだけれども、道義的に言えば、
裁判所
が知らぬ、存ぜない、
天野
個人がや
つた
ことだ、あるいは
職員
の利益のためにや
つた
ことだと
言つて
済まされない面が確かにあるわけなんです。あるわけなんですけれども、訴訟が起
つて
おりますから、
裁判所
としては、とにかくある程度まで事実の真相を調べてみて、その上
裁判所
として責任があるなら責任がある
よう
に処置をし
よう
ということと、一方において、いずれにしても
天野
の責任というものは、
裁判所
としては、はつきりしなければならないんだからというので、
天野
に対してどういう処置をとるか、これは民事の
事件
とは別なんですが、
天野
に対してどういう処置をとるかということは、これも現に
東京地方裁判所
でも
委員会
を組織して、大体において結論が近いうちに、はつきり出るんではないか、こう思
つて
おります。
梨木作次郎
36
○
梨木委員
私は今のお話は、なるほど何か
職員
組合の役員をや
つて
おるということは、ほのかに聞いておりましたが、どうもとの
資料
によりますと、私もこの
職員
組合、労働組合の
厚生係
で、いろいろな物品の問題を扱
つて
おるということは聞いておりまして、それではないかしらと思
つたの
でありますが、この
念書
などを見ると、はつきりと
東京地方裁判所厚生係
ということにな
つて
おりますし、またこの縫製工場の指定工場にすら、その指定書なんかを見ましても、はつきりと、
東京地方裁判所
総務課厚生係
という
名前
で、
役所
の判を、べたつと大きなのが押してある。こうな
つて
参りますと、これはだれだ
つて
地方
裁判所
がや
つて
おるのだと
考え
るのは当然であります。しかもそういうことが
相当
長期間にわた
つて
行われておるのに、これが単に私的なものであ
つた
として放置せられておるということ、そしてしかも今日非常に
国民
に迷惑をかけておるということになりますならば、これは非常に重大問題でありますし、しかもこの
厚生係
でこしらえたものを
判事
さんが着ているということになりますならば、そうしてその
裁判官
がこの
裁判
をするということになりますならば、そんな
裁判官
が公平な
裁判
をするという
信頼
がどこから出て来ますか。こういう問題につきましては、まず
裁判所
は民事的な、金銭的な処理をはつきりしておかなければなりません。この民事的な争いについて当該の
裁判所
が
裁判
の相手をしたのでは、公平な
裁判
をしてもとうてい人民の
信頼
はつなぎ得ないと思うのです。これはいかがでありますか。
鈴木忠一
37
○
鈴木最高裁判所説明員
厚生部で販売した衣料とか何とかを、ただちに
裁判官
がそれを買い入れて
洋服
にしたとかいうことばほとんどないのです。具体的に申しますと、その厚生部なるものの恩恵を
一般
職員
と
裁判官
がどの程度こうむ
つて
お
つた
かといいますと、これはそう大したものではないのです。なぜそういう
よう
な結果にな
つた
かといいますと、事業をや
つて
おる間に結局業者にだまされたらしいのです。業者にだまされて、大穴が明いた。その穴を埋め
よう
として、いろいろな彌縫策を講じてさらに業者にだまされて、だんだん穴が大きくな
つた
、こういうのが実情らしいのです。それで
裁判
のことなんですが、なるほど今おつしや
つた
よう
に、その恩恵を受けた
裁判官
に一体公正な
裁判
ができるかという
よう
な疑惑なのですけれども、これはもともと刑事部の方の
職員
の厚生部なんです。ですから民事係の方とあはまり
関係
がありませんし、そういうので訴えはとにかく東京
裁判所
に提起されたので、東京
裁判所
の民事部で
会議
でやるということにな
つて
、現在進行中なんです。
梨木作次郎
38
○
梨木委員
き
よう
はこの程度にいたしておきますが、この問題の処理についてはなお機会があ
つた
ら御報告を願いたいと思うのであります。
—————————————
押谷富三
39
○
押谷委員長代理
この際お諮りいたします。検察行政に関する件に関し京大
事件
について参考人より
意見
を聞きたいと存じますが、御
異議
はございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
押谷富三
40
○
押谷委員長代理
異議
がなければさ
よう
決定いたします。 なお参考人の人選につきましては
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
押谷富三
41
○
押谷委員長代理
異議
がなければさ
よう
決定いたします。 それでは次会は来る二十六日午後一時より開会し、参考人より
意見
を聽取することといたします。(「参考人は学生も呼ばなければだめだよ」)それは
委員長
に申し出てください。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時十五分散会