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梨木委員 私は修正並びに修正部分を除く原案について、
日本共産党を代表いたしまして反対いたします。反対の
理由を申し上げます。
私
どもが
一つの
法律をつくる場合においての態度を決定するには、表面この
法律の中でうた
つていることだけで実際その
法律が行われようとする現実の社会が今どうな
つているかを
考えなければならぬ。この現状と切り離して問題を論議した場合には、まつたくそれは空疎な観念論になるのであります。そこでこの
法律を見ますと、なるほど第一條には、窮境にあるが再建の見込みある株式会社について事業の更生をはかることを目的にしているんだ、こういうようにうた
つており、またこれに賛成する
人々は、窮境にあるところの中小工業者更生のために、この
法律は効果的であると言われるのであります。
法律の表面を見れば、なるほどその
通りでありますが、しかしその
法律が今実施されようとしておるところの社会の現状はどうであるか、これを見まする場合、これは明らかに自由党、吉田内閣の政策によ
つて、
日本の中小企業のみならず、一流の企業に至るまでも、これが日米経済協力、言葉をかえて申しまするならば、アメリカの軍需産業の下請に協力しない限りは、破産、倒産の運命に陷
つておる。私はここに十月三十日の
日本経済新聞の記事を引用いたしますが、ここでは、一流企業におきましても不渡手形が激増しておるということを報道しておるのであります。まして一流企業にあらざる中小企業の困憊している現状は、これは私が喋々
説明をするまでもありません。ところでこのような軍需産業に忠実に奉仕するような企業というものは、こいつは助かる。しかしながらあくまでも平和国家の建設のためにさような軍需産業をやらないところの、
日本の平和的な発展のための企業というものは、つぶされて来ておるのであります。それではこの現状においてこの
法律を実施するならば、どういう結果になりますか。結局は軍需産業、アメリカの軍拡経済の下請にならない限りは更生できないという結果に相なるのであります。この点はきわめて重要であると思うのであります。この
法律を見ますると、結局はたくさん借金のある会社、あるいは重税にあえいでいる会社に、借金の支拂い猶予あるいは借金の棒引き、税金の実際上の支拂いを停止するというような恩典を與えようとしておるのでありますが、しかし実際このようなことを実現するためには、今の吉田内閣の日米経済協力の線に沿わない限りは、これはできないのであります。軍需産業の下請に甘んずるということ、結局は
日本がアメリカのそういう軍事的な政策の線に沿
つて企業を運営しない限りは、この
法律の恩典に浴することができないということになるのであります。これは先ほ
ども申しましたように、たとえば銀行とか、金貸しとか、こういうものがこの会社更生法を利用いたしまして、この会社は更生させなければならぬ、つまり軍需産業をやろうをしておるというようなことならば、これは助けることができるわけなんです。しかしそうでないものは、この更生
手続をやる場合には、やはり多額の費用を要しなければならぬというようなこと、それからその間におけるいろいろな資金、こういうものの援助がない限りは、これは実際できないのであります。それを一体だれがや
つてくれますか。結局は経済的な支配力を持
つておるもの、銀行、こういう
人々の援助の上にのみこれが可能になるということ、これは結局におきましては銀行資本、つまり金融資本が、
日本の軍需産業を育成し強化する、その支配をたやすくするようにするための
法律であるということに実際上は相なるのであります。さらにここで特に重要な点は、第三條におきましては、
日本の会社だけではなくて、外国の会社にまでこの
法律の適用を認めようとしておるところに、きわめて注目すべき点があると思うのであります。私はこの点について
政府に
質問をいたしました。一体窮境にあるが再建の見込みがあるかどうかということの調査にあたりましては、これはあくまでもその会社の実態が
はつきりつかめなければならないはずであります。アメリカにある会社の実態を
日本でつかむことができますか。実際上はこれはできない相談であります。にもかかわらず、このようなものにまで何ゆえに適用を広げなければならぬか。ここにこそやはり日米経済協力を根幹とするこの
法律の実際上の利用ということが
考えられるのでありまして、こうな
つて来まするならば、外国の会社が権力をたてにいたしまして、
日本の
国民の借金や税金を踏倒しにするようなこともできて来るということを想定しなければなりません。この点からも、まことにこの
法律は
日本の今後の平和的な発展のために、今吉田
政府のと
つておる政策と関連いたしまして
考えた場合に、私
どもは賛成し得ない多くの
根拠を見出すのであります。
さらに第二点といたしまして、この
法律は労働者の権利に対して非常に大きな圧迫を加える結果になるような條文が、所々方々に見受けられるのであります。たとえばこの会社更生
手続を開始する前後におきまして、裁判所の認定によりまして実際は争議行為の中止をやる。こういうことによ
つて労働者の基本的な権利に対して、圧迫あるいは
制限を加えるというようなことに相なりまするし、また長い間労働者が遅配欠配に悩んでおるところの賃金債権の保障の面におきましても、單に共益債権というようなものの中に、これをぶち込んでしま
つておるような事実の中にも、労働者の権利の軽視、圧迫、これは見のがすことができないと思うのであります。労働者は自分の労働を売
つて、それによる賃金の支拂いによ
つて生活をしているのであります。この人たちの賃金債権というものは、何をおいても最優先的に保障されなければならないにもかかわらず、共益債権の中にぶち込んでおるということも、きわめて不当であると私は思うのであります。それから労働協約の点につきましては、この
法律の適用の場合におきまして、いろいろな部分について排除するとい
つておりますが、しかし私の
質問に対しまして、個々の労働協約は、更生
手続の開始とともにこれを解除することができる、言葉をかえて申しますならば、更生
手続の開始と同時に、労働者を解雇することができるようなことにな
つておることも、まことに重大であると思うのであります。
それからこの
法律の
内容を見ますと、第三番目に不当な点は、ほとんど
法律の面では、裁判所にこの更生
手続の非常に重大な場面をまかしております。一体裁判所でこういうことができますか。現在の
日本の裁判所の裁判官の能力をも
つてするならば、実際生きた企業の更生
手続なんということは、とうていできるものではありません。そういうことを求めようとすることは、木によ
つて魚を求むるがごときことであります。しからば一体実際の運営はどうなるか。結局は裁判所が任命した管財人、あるいは
審査人、こういう
人々が実際は裁判所をロボツトに使
つて、実権を握
つて行くということになるのであります。ということになりますならば、先ほど私が冒頭に申しましたように、やはりこれは銀行から派遣された、あるいは信託会社から派遣された管財人、あるいは経済的な背景を持つたこれらの
人々が会社に派遣されて、この
人々に会社経営の支配権を握らせるということに実際上はな
つて来るのではありませんか。こういうところに、実は裁判所というような公平なものを使
つて、公正に更生
手続をやるだろうとは見せかけで、実際は経済的な権力を持つたものの会社の支配を容易ならしめるものであるということが、この
法律のねらいにな
つて来ていることは明瞭であると思うのであります。
私は大体以上の
理由によりまして、この法案は表面上はまことに中小企業の窮境を救うかのごとくうた
つておりますが、実際の運用の面においては、
日本の現状に照して、これは
日本の
国民経済を軍需産業的なものに再編させ、さらに内外独占資本に
日本の企業の支配を容易ならしめるようなことに役立つという面におきまして、反対するものであります。