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1951-10-27 第12回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十七日(土曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長代理 理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    大西 正男君       石井 繁丸君    田万 廣文君       梨木作次郎君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人東京         銀行協会常務理         事)      難波 勝二君         参  考  人         (株式会社東京         試験機製作所取         締役社長)   斎藤 英攝君         参  考  人         (弁護人)   大島 正義君         参  考  人         (東京家庭裁判         所判事)    恒田 文次君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君 十月二十六日  委員山口好一辞任につき、その補欠として森  下孝君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員森下孝辞任につき、その補欠として山口  好一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十月二十五日  神戸地方法務局家島出張所存置請願木下榮  君紹介)(第二二五号)  福島地方法務局本宮出張所存置請願大内一  郎君紹介)(第二二六号)  戦争犯罪者の釈放に関する請願藤枝泉介君紹  介)(第二五一号)  同(増田甲子七君外一名紹介)(第二五二号)  浦和地方法務局菖蒲出張所存置請願佐瀬昌  三君紹介)(第二八二号)  津地方法務局尾呂志出張所存置請願中村清  君紹介)(第二八三号)  津地方法務局萩原出張所存置請願中村清君  紹介)(第二八四号)  津地方法務局城田出張所存置請願中村清君  紹介)(第二八五号) 同月二十六日  千葉地方法務局二川出張所存置請願竹尾弌  君紹介)(第四一一号)  千葉地方法務局中川出張所存置請願小高熹  郎君紹介)(第四一二号)  千葉地方法務局佐貫出張所存置請願小高熹  郎君紹介)(第四一三号)  宇都宮地方法務局岩舟出張所存置請願(小平  久雄君紹介)(第四一四号)  鹿児島地方法務局佐多出張所存置請願(前田  郁君紹介)(第四一五号)  仙台法務局村田出張所存置請願庄司一郎君  紹介)(第四一六号)  千葉地方法務局八街出張所存置請願竹尾弌  君紹介)(第四一七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  会社更生法案内閣提出、第十回国会閣法第一  三九号)     —————————————
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  本日は会社更生法案について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。本日御出席参考人難波勝二君、斎藤英攝君大島正義君、恒田文次君の四名であります。  この際参考人の諸君にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、わざわざ本委員会のために御出席くださいましたことを、厚くお礼申し上げます。申し上げるまでもなく、本法案は種々の問題を有しておりますので、参考人各位の忌憚のない御意見を承りますことができますれば、本委員会といたしましてまことに幸いに存ずるのであります。時間の関係もございますので、お一人大体十五分程度の御意見を御開陳願いまして、そのあと委員より御質疑があれば、御質疑にお答えをお願いいたしたいと存ずるのであります。なお御意見発表の順序を念のために申し上げますと、難波勝二君、斎藤英攝君大島正義君、恒田文次君の順でお願いいたしたいと存じます。それではこれより順次御意見の開陳をお願いいたします。御意見発表の前に、御職業、御姓名をお述べ願いたいと存じます。それではまず全国銀行協会連合会推薦難波勝二君にお願いいたします。
  3. 難波勝二

    難波参考人 全国銀行協会連合会東京銀行協会常務理事難波勝二でございます。本法律案趣旨は首肯し得られるのでありますけれども、現在のわが国の経済事情からいたしますと、ただちにこれを実行するには時期尚早であると考えるものであります。たとえば本手続は、更生債権者、特に担保権者の譲歩によりまして会社更生をはかるものでありますから、これを金融機関の立場から見ましたならば、資金の貸出しに当りましては、当然慎重にやらなければならないわけであります。特に経済情勢の変転のはげしい現状におきましては、どういたしましても、一層慎重になるものと考えるのでありまして、このことは、金融を一段と不円滑にするものと見なければならないということであります。  それから更生手続は、申すまでもなく裁判所監督のもとに行われるのでありますが、この実行に当りまして判断を下すに当つては、法律的な知識ばかりでなく、企業の将来性であるとか、その他いろいろな、かつ広汎な経済的な見識を要するのでありまして、さらにまた経済変動に即応する迅速な処理を望まれるものでありますから、どうしても円滑なる運営を期するためには、特に裁判所の機能の強化ということが必要であるというふうに考えられるからであります。さらにまた、更生手続実施に当りましては、事実上管財人の手腕なり力量なりによるものでありまして、自然管財人適任者を得なければ円滑なる運営が望まれないので、これまた現状におきましては、そのような適任者を得るということは相当むずかしいのではないかと思うからでございます。  ただいま申し上げましたような理由から、本法案実施は、趣旨はけつこうでありますけれども、ただいま申し上げましたような事情が改善された後にされることが望ましい、こう考える次第でございます。  以上をもちまして私の参考意見を終ります。
  4. 押谷富三

  5. 斎藤英攝

    斎藤参考人 東京試験機製作所取締役社長斎藤であります。私は、他の産業界大同小異でありますが、特に機械工業を中心としまして意見を申し述べさしていただきたいと思うのであります。  日本機械工業は、昭和四、五年ごろの国産品奨励時代と申しますか、いわゆる国産品を奨励するような時代と、その後に満州事変勃発によりまして、工作機械製造事業法による助成、それから引続いて戦時態勢に入りまして、国家総動員法に基く各種産業助成時代、いわゆる国家が国の産業助成するというような、一貫した大きな国家的な政策による助成時代という一つ時代があつたのであります。それからその助成時代を過ぎまして、成長の一路をどんどんたどりまして、そしてまさに量的にも質的にも世界水準に達するような時代に達したのが、昭和二十年前後でありました。それが二十年の八月十五日、あの歴史的な何によりまして、一応破壊時代に入つたのであります。それから後は、今度は破壊後における混乱期に入つてつたのであります。そこで現在はどうかと申しますと、要するに奨励時代、それから成長育成して世界水準に達した時代破壊時代、それを経過いたしまして、縮小して再整備の上に再生産をするというような時代が、現在の機械工業もそうでありますが、ほかの産業もほとんど大同小異で共通だろうと思うのであります。そういうようなことによりまして、たまたま昭和二十三年にお見えになりましたいわゆるドツジ・プランの行政面における実施昭和二十四年ごろからありまして、各産業、特に私の申し上げます機械工業なんというものは、ばたばた倒れて行つたのであります。そして残つたものもほんとうに虫の息で、その後どうやらこうやらやつているというようなわけで、給与の遅配とか、賃金の遅配というのが、一つ社会の常識化されるような悪い時代に来ておるのであります。大体われわれ事業家が戦前におきまして従業員給料を払えないということは、どんな貧乏会社でも考えたこともないし、またさような事業は成り立ちもしませんし、みずからつぶれて行つたのでありますが、現在は一流会社ですら、給料を払つておるか、払つておる、それでは優秀なものだというふうで、給料を払つておること自身、優秀な方に入つておるという状態に追い込まれておるのであります。そこでたまたま昨年の五月に、いわゆる朝鮮戦争おかげ特需云々の景気が出まして、一部の会社はなるほど殷賑をきわめたのでありますが、これもほんとうの特定の数会社にとどまるのであります。たとえば機械工業に例をとりますと、自動車工業であるとか、あるいは汽車機関車をこしらえる車両工業、こういう方面くらいなのでありまして、その他の機械工業というものは、やつぱり依然として、先ほども申し上げましたと同様な苦境に追い込まれておるのであります。  そこでただいまお話申し上げます私自身にしましても、昭和八年に学校を出ましてから、幸い機械工場資本金一万二千円から会社にして始めまして、そして先ほど申し上げたような波にどんどん乗つて行つて、いわゆる国家助成時代にその助成の余沢を受けまして、そして昭和二十年には四、五百名の工員が働くだけの機械工場でありましたのですが、この文字通りの破壊期におきましては、完全に破壊され、その後現在は文字通りの縮小再生産整理時代に私自身も追い込まれておるのであります。そこでたまたま先ほども申し上げましたような給料遅配の問題が、私どもの小さい会社でも影響されまして、昨年は給料遅配が三箇月に及んで、それを契機といたしまして労働争議が勃発し、それがだんだん引きまして、今度はそうなると勢い税金たまつて来る、そのほかに借入金もたまつて来るというように、借金は一ぱいあるということになりました。につちもさつちも行きませんので、そこでこうなると、破産でもして行くよりしようがないだろう、よそなみに頭を下げてつぶしてしまうよりしようがないと考えたのでありますが、その後にたまたま新聞に、会社更生法という正式の名前ではなかつたのですが、そういう趣旨の記事が出たのであります。これはなかなかよろしいというわけで、実はこれは去年の十一月前後のことでありまして、いずれ近いうちにこれが通れば、これにぜひひとつ乗せて行くというつもりで、実は心待ちに待つていたわけであります。それで今年の四月ごろでございましたか、もうたいていはこの法律案も通過しているだろうから、ひとつ東京行つて、それぞれの方面で情報をとつて勉強して来ようというわけで、実は私機械技術者でございますので、よくわかりませんものですから、法律のことなら裁判所へ行けばわかるだろうと思いまして、裁判所へ行きましたら、裁判所ではわからぬというので、それではこれは産業に関することであるから通産省だろうというわけで、通産省へ行きましたり、しまいにようよう法務法制意見第四局というところへたどりついたのであります。そこへ着きまして、どうなりましたかと申しましたら、実は今議会で審議中で、いずれ継続審議をするということで、近く通るかもわからぬが、今のところはまだ審議中だというお話で、実はがつかりした。それでいよいよどうしてもかぶとを脱いでしつぽを巻くよりしかたがないと決心したのでありますが、たまたまそこにおられた事務官の方が、その前にもう一つ手があるのだというわけで、そこで金融整理というのが商法の第四章七節にあるということを教えてもらいましたので、さつそく帰りに、生れて初めて六法全書を買いまして、そしてそういうことを説明している本を一冊買いまして、汽車の中でさつそく読みまして、何したわけであります。そうしまして本年の五月末に東京地方裁判所整理申立てをいたしまして、この間の九月二十八日付をもつて整理開始命令が出たのであります。そうしてどうやらおかげさんで、実は普通の民間における借金に一応モラトリアムをしかれまして、借金とりから少し解放されまして、経営者経営の面に少し従事するようになつておりますが、遺憾ながらこれにあたつてみますと、これは一番大きな問題である国税徴収法には対抗できないのであります。そういうわけで、今のところ借金関係の方は、一応整理が完了するまで待つてくれということで、これは裁判所命令によつてとまつているからいいのでありますが、国税徴収法の方はなかなかこれは動きがつかない。目下それを実はかようかような情勢であるからというので、もつぱら国税徴収法関係の方にわたりをつけておるわけなのであります。三拝九拝頭を下げて、とにかく何とかするからというので、今その方を頼み込んでおるわけであります。とにかく私の感じからしますれば、会社整理商法第四章七節に基くこれでは、帯に短かしたすきに長しのような感じがするのであります。  私はこの会社更生法案を一通りさつと目を通しておりますが、大会社は四苦八苦しながらでも何とかなつて行きます。たとえば対社会的な信用とか、そう申してはどうかと思いますが、政治力とか、たとえば金融技術的なそういう面によりまして、とにかく大きな会社は何とかなつて行くのであります。しかし中小企業で、技術が優秀で、長年の歴史と伝統を持ちながら、特にまじめな会社が、現在はばたばた倒れて行くような状態でありまして、これは私は国にしましても実に惜しいことだと思うのであります。それでも私みたいに通産省法務府へたどりついて、そういう勉強でもするような人間は、まだ何とかかんとかやつて行くのでありますが、中小企業にはそういう人は案外少いのでありまして、これはどうしても何とかしなければならぬと思うのであります。しかしながら皆さん御承知の通り、日本産業構成を見ました場合に、大企業中小企業の占める割合というのは、工場の数におきましては中小企業が九四%でございまして、つまり百軒の会社の中で九十四社までが中小企業が占めておる。なおまたその生産量についてはどうかと申しますと、全国生産の大体六五%というものは中小企業が占めている。三割五分前後を大企業がやつておるわけであります。そうして、もしも大きな会社が一社倒れるようなことがあると、われわれが見ていますと、何とかかんとかいつて救済の手が伸びるのであります。具体的な会社の社名は申し上げられませんが、たとえば最近の輸出滞貨の問題につきましても、とにかく数社困つておるというと、失礼ですが、日銀の一万田さんに飛びつけば、何とか救済方法も打てたようであります。しかしながら、これに数倍するものがどんどん倒れて行くのだが、それが一つ一つにすると量的に小さいものだから、ソーシヤル・インフルエンスを与えないような会社がどんどん参つて行くのでありまして、私から見まするならば、こういうような法律はどうしてももつと早く出るべきであつて、すでに現在では時期がおそい。しかしおそいながらも、現在生き残つた連中はどうしても救済しなければならぬので、こういう法案はおそいながらも私は速急に通過させてもらわなければならぬというふうに考えます。そこで通過させてもらつてぜひ実施しなければなりませんのですが、それについては私は希望があるのであります。その希望と申しますのは、私自身経験した関係からも、ぜひこれだけは入れていただかなければならぬということが一つ、もう一つはできればやつていただきたいという二つの種類にわけて申し上げたいと思うのであります。  それで、ぜひ入れていただきたい方の一つは、先ほどもちよつと触れましたように、国税徴収法関係であります。たいていの会社がつぶれるという場合、これは大企業は別でありますが、中小企業のつぶれる場合のたいていの理由というものは、国税徴収法関係、言いかえれば税金高利貸しの借金であります。たいていこの二つでつぶれて行くのでありまして、その問題をここでがつちりと押えなければならぬと思う。その具体的な方法といたしましては、たとえば更生法案の第六十七条で国税徴収滞納処分は六箇月間中止する。あと三箇月間は徴収官の同意があればというようになつていますが、あとの三箇月はおそらく同意しないでしよう。結局六箇月でありますが、改正国税徴収法第十二条の、滞納処分執行停止、この適用を受けますと、二箇年間はいわゆる執行停止になるのであります。従つて更生会社のこの手続に乗せる場合は、この六箇月は、少くともこの以前の二箇年は最小限度つていただきたいというのが一つであります。  それから次にお願いしたいことは、やはり税金の問題もからむのでありますが、滞納の場合延滞金加算税をとられるのであります。この延滞金加算税は、普通の金利的な考えではなくて、要するに罰金のような性格を帯びていると私は思うのであります。金利的な考え方から見るならば、延滞金法文では八銭以上の割合となつておりますが、実際は日歩二十銭もとつておるのでありま歩。これで行くと年七割二、三分になるのでありまして、これは金利的な見地から見るとたいへんな高利になりまして、政府自身貸金業云々によりまして高利貸を取締りながら、税金の面におきまして、延滞金なり加算税をとる場合、完全な高利貸の利子をとつている。更生会社になりまして、裁判所監督のもとにガラス張りでやつておる会社に対しましては、ぜひ延滞金加算税を免除してもらうような方法を講じませんと、とにかく一年に七割何分ですから、二年もまごまごしておりますと、元より利息の方が高くなつてしまうということになる。どうかこれはぜひとも入れていただかなければならぬ。  ぜひしていただきたい方の項目で次にお願いしたいことは、これも自分の体験でございまするが、整理の方に入つている会社につきまして、この更生手続への乗り移りを簡単にしていただきたい。それから簡単に乗り移りができるようにすると同時に、整理の場合もそうでありますが、予納金を納めますが、この整理のときに納めました予納金を、そのまま更生手続の方の予納金に肩がわりさせてやつていただきたい。予納金整理のたび、更生のたびに何回も納めるような会社なら、整理なり更正手続の方に載せなくてもいいのでありまして、一日そつちに納めましたものは、横すべりさせていただくようにお願いしたい。それからもう一つ、これも自分経験で重大だと思いますことは、こういう更生会社なり整理会社になつておりますのは、今まで厖大な損失をしているわけでありまして、会社貸借対照表の面から申しますと、繰越損金でありますが、この繰越損金の穴埋めは、現在の国税徴収法法人税で申し上げますと、今までの繰越損金について一箇年間は法人税の対象から除外されます。言いかえれば、今まで欠損した会社は、たいていの株式会社は年二回の決算でありますから、二回まではいい。これは要するに一年間は利益からそつちを埋めて行つていいということになるのでありまするが、この会社更生法に乗せるなり、会社整理法に乗せるような会社でありますれば、そう一年くらいで今までの繰越欠損を埋めて行くということはできないのであります。それでそのあとの私益で埋めて行く場合の法人税は、今度の改正で四五%くらいになるわけでありますが、百万円の利益を計上しますと、四十五万円の現金を納めますから、あとの六十五万円で決算処分においで今までの損金を穴埋めして行かなければならぬということになる。大体生産会社は、失礼ですが、銀行と違いまして、勘定足つて銭足らずであります。利益は何百万円と計上したが、金を出すとなると出せぬのが生産工場であります。それで現金は出せないのであります。そういうわけで、どうしても更生会社につきましては、三箇年間くらいの最高期限を設けて、その間に一年半でこの繰越損金を取返してしまえばそれでいい。とにかく最高三箇年間にして、その三箇年間以内におきまする、繰越損金利益金から補填する分は、法人税からこれを免除してもらいたい、要するに税金だけは、今までの損金を埋める間は法人税をとらないでくださいということをぜひ申し上げたいのであります。これが私の希望としましてぜひともという点であります。  その次に、できればということの方につきましては、できるだけひとつどもこの更生法に盛つていただきたいことは、この法律では株式社会だけを指定しておりますが、これは一応社会政策的な見地から申しましても、なるほど日本産業の大部分は株式会社によつて運営されておりますが、しかし中小企業のうちには相当いろいろな、要するに有限株式とか、有限会社とか、合資会社とかいろいろございますので、これはやはり社会政策的な見地からも、同様に各種会社を指定すべきじやないかというように考えるのであります。これはぜひともというわけではありませんが、できれば社会政策的なセンスから申しましても、そうするのがほんとうじやなかろうかと思います。  それからもう一つ、できればお願いしたいことは、更生手続開始後における事務簡素化でございます。私らは長年生産をやつておりまして、一つ法律が出まして、その法律適用を受けますと、実に報告なり何なりが煩雑であります。この法文を見ても大分報告とかいろいろなものをたくさん出さなければならぬようでありますが、われわれ国家の恩典を受けながらそういうことを拒否するわけではありませんが、どうかできるだけひとつ簡素化するような方法をとつていただきたい、かように考えるわけであります。これを普及するという見地から申しましても、予納金について、現在の法案では、裁判所が適当と認めるということになつておりますが、これは申し渡される側から申しますと、裁判所で何ぼ申し渡されるのか、どのくらいとられるのかというような実は疑心暗鬼なわけであります。これはどうか、できれば最高限度をきめて、その限度の範囲内において裁判所がしかるべくきめる。そうすればこつちでは最高どれくらいだから、まあこれくらいだろうというようなわけであります。その具体的な方法の一例を申し上げれば、貸借対照表合計帳尻残高において千分の二なら千分の二、それ以内におきまして、裁判所がこれをしかるべくきめるとかいうような方法がよくはなかろうかというふうに考えるのであります。私自身も実は最近会社整理申立てをしまして、最初から頭にこびりついておるのは予納金の問題でありますが、予納金が高いからまけてくださいとも言えませんし、商品の売買でもないから幾らというわけにも行きませんし、そこはデリケートなことがありますから、この新法が出ます時分には今後普及の点から申しましても、都合がいいのではないかというふうに考えるのであります。それからもう一つは、この会社更生法の第三十七条の手続の中止の命令のことでありますが、これは私も実はそういう経験を持つておりますが、いわゆる会社更生手続裁判所に申し立てると、債権者の中で気の早いものは先に競売をやつてしまうことがある。最近私自身が実は東京地方裁判所会社整理申立てをしておる間に、国税徴収関係でありますが、東京地方裁判所に電話を地方からかけまして、地方裁判所はそこはまだ予納金は納めていないし、開始命令が出ていないから効力を発していないということだから、すぐトラック何台と警察を動員しましてやつて来たのであります。たまたま私がその日会社におつたものですから、その方の責任者にお願いして頭を下げてその日はかんべんしてもらつたのでありますが、だんだん話を聞いてみたら、君のところは整理申立てをやつておるのだそうだが、そうすると命令が出る前にやつてしまうつもりで実は来たというようなこともありますので、この三十七条のこれは申立てのあつた際に、現在のこれは、裁判所がこれを認めなければということになつておりますが、そうではなくて、申立てになつて一応受付になつたら最小限度それを裁判所が適当と認むるということでなしに、即座に前に申し述べた強制手段を中止させ、あとで話はゆつくりつける。それで乱暴なことをするようなことは押えるような方法をとつていただきたい。  それから次の問題は第十三条だと思いますが、新聞や何かに盛んに公告することになつておりまするが、新聞に公告なんかしますと、結局関係のない方面まで刺激しまして、むしろ会社更生に私は悪い影響を来すように思いますので、これは債権者、債務者相対で話をする筋合いのものであり、かつまた裁判所監督のもとに債権者と債務者との関係なのであるから、その範囲内に限るべきであつて、それを新聞公告にすると、知らない第三者にまであそこの会社更生手続になつているから品物を入れないということになつても、かえつて更生の迅速を遅らせるような結果になると思います。これはこまかい問題ですが、やはり資本主義社会における信用という問題の重大さから申しましても、そういう関係のない方面を刺激する必要はないのであるから、その当事者に十分わかるような告示法をとつていただきたいというように考えるのであります。  これからが私はできればひとつお願いしたいという方でありますが、先ほど銀行協会の方々も金融の不円滑の問題とかいろいろお話がありましたけれども、これは私の立場から申しますと、むしろ更生会社に乗せなければならぬような会社、私の会社の例をとりますと、日本興業銀行が私の会社の最大の債権者でございますが、私は銀行の方に、むしろ銀行の債権擁護のためにもなるから了解をしていただきたいというわけで、金融機関とはぴつたり連絡をとりつつやつておるのであります。こういう問題が起るのは、大体町の高利貸とかその他の変なところからくずれて来るのでありまして、むしろ健全な公正な債権者の債権を擁護する意味から申しましても、言いかえれば金融機関のそういう債権を擁護する意味から申しましても、これは連絡を密にとればむしろ不円滑ではなくて、かえつて円滑にさせております。現在も興業銀行のほかに商工中金あたりもお世話になつておりますが、全部打明けまして、この辺の変な連中が競売なんかやると困るから、むしろあなた方の債権を確保すると同時に、そこらの町の変な連中の借金を一応たな上げする、ゆつくり話合いでお互いがきめるのだからということで了解を得て、経営者金融機関とのやり方で十分円滑に行くと思うのであります。  そのほか私に言わせれば、現在の事情が、こういう法律はもうすでに去年の話でありまして、今年はまさにあと二箇月くらいで暮れんとしていますから、早く実施しなければならぬと考えるのであります。  種々のことを申し上げましたけれども、大体この程度にしておきます。
  6. 押谷富三

    押谷委員長代理 ただいま陳述を願いました斎藤君は東京商工会議所推薦にかかります参考人であります。次に日本弁護士連合会推薦の大島正義君にお願いをいたします。
  7. 大島正義

    大島参考人 私はただいま御紹介にあずかりました日本弁護士連合会の推薦にかかる大島正義であります。日本弁護士連合会の会社更生法の制定に対する意見といたしましては、絶対反対であります。その理由を説明いたします。  わが国における株式会社現状は、その大多数が、その組織の面、経理の面その他すべての面において、あまりにも便宜主義に堕しており、全然合理主義を確定していない実情にあるのであります。かかる状況下に本法案実施するにおいては、いたずらに悪徳債務者に悪用せられるおそれ多くして、ただちに会社更生をはからんとするものがこれを利用する機会は甚少であると観察せざるを得ないのであります。換言すれば、本法案実施により、得る利益よりも、生ずる弊害の方がはるかに甚大であり、従つてその組織運営等につき幾多の改正改善指導を施すにあらざる限り、本法案はさしあたり実施すべき切実なる必要を認めないのであります。  およそ会社整理については、アメリカにおいては銀行破産法、イギリスにおいては会社法中にそれぞれ規定が設けられております。わが国においても、商法会社編中に会社整理手続及び特殊清算手続の規定があり、また和議法には和議手続の規定があります。いずれもその手続開始の原因と対象とまた手続との間には、広狭、任意、強制、緩厳等の差こそあれ、一般的には会社整理を目的とする点においては、その軌を一にするところであります。ゆえに現在わが国で一般に行われている会社整理の実情より考察いたしますれば、いわゆる会社債権者集会を合法化、制度化することによつて、大体自治的に会社整理の目的を達し得られるものであります。従つて新たに本法案のごとき複雑多岐なる手続実施しなくとも、会社法の一部を改正し、第七節、会社整理中に各債権者集会に関する規定を設けることによつて、本法案の目的とするところはおおむね達し得られると思料せられるのであります。  しかるにこれら諸手続の整備統合を考えることなく、また商法会社編中、会社整理に関する規定を削除し、清算に関する規定、破産法及び和議法等を整備することなく、これら諸手続の上に漫然と本法案のような単一法を制定実施する必要はないと思われるのであります。会社整理事件にしても、和議事件にしても、その統計が示すように、事件数としましてはきわめて僅少であります。後者においてわずかに昭和初年の金融パニツク当時の五年間引続き年間新旧事件数は合せて二百件を越えたにすぎないのであります。この実績に照し合せて、本法案を新たに独立して制定することは、かえつて屋上屋を架せられる結果となり、手続の混乱を来すのみであると思われます。しかも本法案株式会社のみを対象として、大資本の会社のみを保護し、合名会社合資会社及び有限会社等はこれを顧みていないが、かかる中小資本の会社をも更生せしめ、保護すべきであると思考するのであります。アメリカ連邦破産法中の会社整理規定の対象となる事業主体は、会社のみに限らず、一定の組合、株式会社、法人格なき会社及び社団その他の特定の事業団体をも包含しているのであります。会社その他の事業団体の特殊性に従つて、特別規定を要する場合、これを置きさえすれば事足りる問題でありまして、対象を株式会社に限るの理由とはならないのであります。  これを要するに、本法案はそれ自体によつて類似手続の煩を来すにすぎない。従つて実際の運用をも期待することができないと思うのであります。これが日本弁護士連合会があえて本案に反対するゆえんであります。
  8. 押谷富三

    押谷委員長代理 東京家庭裁判所の判事恒田文次君がお見えになるはずでありますが、まだ到着をいたしておられませんので、この際今述べられました参考人二君に対して質疑がありましたならば、御質疑をお願いいたしたいと思います。質疑はございませんか。
  9. 松木弘

    ○松木委員 ただいま大島さんから御意見がありましたうちに、弊害があるというようなことをお述べになつたようですが、どういう弊害があるか、その例がお示し願えるならお示し願います。
  10. 大島正義

    大島参考人 ただいま御質問の、本法案を施行することによつてかえつて弊害があるという点は、申すまでもなくこの手続の上におきまして、すでに法文が明らかに示しておりますように、非常に複雑多岐な手続を経なければならないのであります。従つてこの手続によつて進行するといたしますれば、少くとも半年または一年を要することと思うのであります。その間における工員の問題を果してどうするか、また金融の問題を果してどうするか、そうして債権者がはたしてそれに対してどういうふうに向つて来るか。こういうことは破産法、和議法の事例によつてきわめて明らかに立証されております。従つて現在会社整理の問題につきましても、いろいろその点について弊害がありますので、この点も改正をしなければならぬと私どもは常に研究中であります。ましていわんや本法案のごとき複雑多岐な手続によつてやるということになれば、その弊害は一層増大することと確信してやまないのであります。
  11. 押谷富三

    押谷委員長代理 私から難波君にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、会社更生法銀行その他の金融機関がなします金融関係でありますが、会社更生法に基いて整理をいたすことになりますれば、勢い銀行その他金融会社が持つておりまする債権債務の整理も、相当決済が遅れるということも想像できますし、また担保権者としてその担保にある種の制肘が加えられるというような関係から、金融貸出しが躊躇されるというようなことが一応想像もできるのであります。また考え方によりましては、債権債務の整理会議方式によつて適切妥当になされるから、心配なしに、かえつて金融は助長されるというような考え方もできるのでありますが、会社更生法金融に及ぼす影響というようなことについて、どういうお考えをお持ちになつておりますか、伺いたいと思います。
  12. 難波勝二

    難波参考人 会社更生法につきましては目下なお研究中でございまして、銀行界全体のまとまつた意見というようなものを私は申し上げる段階ではないのでございますが、一応私見を申し上げますならば、ただいま委員長からお話になりました前段の理由でございまして、会社更生法適用されるということになりますと、最初に申し上げました通り、どうしても担保権者利益を害されるという懸念が多くなりますから、たださえ今日の資金状態が必ずしも円滑に行つていないという状態のもとにおいて、このような法律適用される場合には、さらに金融機関としては一層融資をなす場合に慎重を期して貸し出さなければならない、こういう状態におのずからなつて参ると思われますから、金融の状況というものは現在よりも一層不円滑になる、かように考える次第でございます。
  13. 押谷富三

    押谷委員長代理 ほかにどなたか御質問はございませんか。
  14. 山口好一

    山口(好)委員 大島さんにお尋ねをいたしますが、大島さんの先ほどの御意見では、社会情勢もまだ定まらず、複雑しておる、そういう際にこういう法律を出すということは不適当である。また他に破産法の規定、和議法の規定などもつて、屋上さらに屋を架することに相なるというような御説明でありましたが、かかる経済情勢の複雑な場合におきましては、特に財政が窮乏して、まさに破産直前というような会社も相当多く出ておりますので、それをできるだけ倒さずに何とか更生させて、その事業者も救い、さらにその債権者も救つて行こうというのがこの法のねらいであることは明らかでありますので、これを破産法の改正、あるいは商法改正、あるいは清算に関します規定などの一小部分のことで行つたのでは、かえつて複雑になり、不明確なものを生ずるので、やはりこうした単行法できちつとしたものをつくるということが、弊害をなくすることになるのではないかというふうにもわれわれは考えておるのですが、その点はいかがですか。
  15. 大島正義

    大島参考人 ただいまの御質問一応ごもつとものように考えられますが、本案の会社更生法と、会社整理に関する件及び和議破産に関する法律を対照していただきますれば、この商法の第七節、会社整理に関する件、これによつて一部を改正すれば大体本案の問題は解決し得られるのであります。また和議法におきましても、和議法の一部を改正してこれを強化しますれば、従つてこの問題は解決し得られるのであります。かえつて本案のごときものを置くがために、ますます手続も複雑となり、しかもこの法案そのものは大資本の会社を保護するというのが主たる目的でありまして、それよりももつと中小企業会社を保護すべきではないか、こう思うのであります。いずれにいたしましても、この法案を施行するということにつきましては、手続上においてもはなはだ不便を感ずるのであります。従つて会社整理の規定及び和議破産の規定を改正しますれば、十分目的は達し得るのでありまして、まつたくこれは屋上屋を重ねる悪法だと私は信ずるのであります。
  16. 山口好一

    山口(好)委員 議論してもいたし方がありませんので、御意見として承つておきます。  それから斎藤さんにお尋ねしたいのでありますが、先ほど申された中小企業者の中でも、現在二千万円ぐらいの債務を背負つておるものが相当数あると思うのであります。斎藤さんの御意見の中にもありましたが、要はこの更生法をうまく運用して行く——本法の成否のほどは一にかかつて管財人にあると思われるのでありますが、実際に会社更生させるのに管財人はどんな人を選んだらよろしいか、御意見を伺いたいと思います。
  17. 斎藤英攝

    斎藤参考人 実は管財人の問題と二千万円負債の問題でありますが、これに対し私は意見があつたのですが、話が長くなりますし、大したことはないと思いましたので先ほど省略しましたが、要するに二千万円というとほんとうの町工場であります。御承知の通り、資本金五百万円の会社でありますと、大体三千万円から五、六千万円貸借対照表で動いておるわけであります。総資産と総負債の差額を引いたものであれば、二千万円といえば相当の借金になるのでありますが、普通、株式会社で二千万円の貸借対照表というと、資本金二百万円で十倍といたしますと二千万円の帳じりが持てますので、実はこの二千万円という限度はとつてしまつたがいいということと、それからその中で管財人云々ということが出ておりますが、これは裁判所管財人の必要を認めた場合に、管財人を置く。要するに二千万円のリミツトをとつてしまつて、その管財人は、現在の人間をもつてしては管財の実を十分上げ得る見込みがないと認めた場合に管財人を置くことを認めたい。実際問題として中小企業あたりで、たとえば今の趣旨では、お前らは現在の経営は適当じやない、お前らを除いて入れかえるというのですが、これはたとえばある特定のAランクの会社であれば、今の社長以下重役陣を追いやつて次の社長、重役を入れて運営する。実際問題として中小企業におきましては、その経営者の人格なり人物が大部分ものをいうのでありまして、いわゆるワン・マン・コンパニーであります。またこれがしつかりしないようなところは大部分参つてしまうのであります。私に言わせるならば、要するにその事業体に何人かよそから人間を持つて来なければ十分やつて行けぬような会社であれば、むしろそのような会社はつぶしてしまえばいいというふうに考えておるのでありまして、この管財人は、現在の経営者陣に管財の責を負わした場合に、十分な実を上げる見込みがないとみなした場合、裁判所命令で置くというふうにした方がいいのではないかと考えるのであります。  それから二千万円云々の原則も、これは先ほど法曹界の代表のお話もありましたが、要するに実際にこの法が運用されますと、どつちが恩典をこうむるかというと中小企業だと思います。大企業はこれに乗せなくても、先ほど申し上げましたように何とでも立つて行く方法があるのであります。そういう意味から申しましても、管財人はその負債の限度を中心に必ず置くというのではなくて、現在の経営者をどこまでも主体にやらしてみて、それでなお見込みがない場合に管財人を置くというふうにしたらいいのではないかと思います。
  18. 田万廣文

    ○田万委員 弁護士代表の大島さんにお伺いしたいと思います。先ほどの御意見、私どもは非常によくわかる点があるのですが、お尋ねしたいのは、この会社更生法によつて労働者の賃金債権、これが非常に危機に見舞われて来るのではないかと思われるのであります。この点に対して御研究なさつておることを承りたいと思います。
  19. 大島正義

    大島参考人 先ほど申し述べましたように、この法案実施されるということになりますと、手続がまことに複雑であります。従つてこの手続の上におきましても、少くとも半歳や一年以上要するものと思います。そうするとそこに当然起つて来るのは労働関係の問題だと思うのであります。この問題をどうするかということは、先ほど私が申しました一つの問題であります。この点につきまして、弁護士会においてもいろいろと研究はして参りましたが、とにかく手続が長く延びれば延びるほど、工員はそのまま遊ばしておかなければならぬ。かりに事業経営したとしても、破産の事件における管財人の手によつて事業経営するというくらいのことしかできない。そうすると労働関係につきましては、相当の問題が引起つて来るということは、当然のことだと思うのです。この点をいかに解決するかということにつきまして、日本全国から集まりましたいろいろな意見を総合いたしましても、結局この法案のもとにおいてこれを解決するということは容易ではない。かえつてそれがために労働争議を惹起するというおそれがあるから、この法案はいけないということに結論づけられております。
  20. 田万廣文

    ○田万委員 よくわかりましたが、こういう御意見は弁護士会の方にはございませんか、この会社更生法における労働者の賃金債権という問題よりも、さらにわくを広げて、現在の労働者の賃金債権というものは先取特権のうちに記載されておるように見えますが、賃金債権というものは生活を守るただ一つのかてです。ところが法律の上からいうならば、抵当権という権利がありますが、抵当権よりはさらに遅れた権利に指定されておる、間違つておるかもしらないけれども、私どもはそう理解しておる。だから会社なら会社に債務があつて、抵当権を実行せられた場合においては、賃金債権というものは、いかに労働者にありましても、抵当権だけで一ぱいの場合は踏みにじられてしまう。生活を守るための賃金というものが一銭も得られない重大な問題がここに起つて来るのではないかということを考えておるわけです。しかもこれは一般的な話でありますが、この会社更生法案においての労働者の地位というものは、さらにそれに拍車をかけて行くような状態に陥つて行くのではないかという懸念を私どもつておるわけです。お尋ねしたいのは、ただいま申し上げたように、賃金債権の確保ということ、労働者の生活を安定さすためには、弁護士会としてどういうような法制的な措置を研究なさつておるか、しておらなければともかく、おられるとすればその御意見を承りたい。
  21. 大島正義

    大島参考人 ただいまの問題につきましては、結局今仰せの通りでありまして、優先関係から行きますと、抵当権者が優先します。従つて労働賃金を確保するということになりますれば、結局民法を改正しなければならぬという根本問題にさかのぼらなければならぬということになります。そこでそれまでに行くということは重大な問題であるから、それは不可能だ、こういう程度にとどまつております。
  22. 田万廣文

    ○田万委員 現在の状態においては法律改正は不可能だという御意見でありますけれども、公平正義を守るという弁護士会におかれましては、やはり弱者の立場に立つて、労働者の賃金、しかもそれが生活をささえる唯一のかての賃金であるということになれば、良心的にお考えになられるのが至当ではないかと思う。ただいまのお言葉では不可能だということでございましたが、不可能というのはどういう意味でございますか。
  23. 大島正義

    大島参考人 ただいまの質問でありますが、民法では抵当権が優先するということが規定されております。その現行法が現存しております以上は、この抵当権に先んじて労働賃金を確保するということは不可能だ、こういう趣旨を申し上げたのであります。従つて弁護士会といたしましては、かかる問題も、また登記法に関する問題等につきましても、民法改正の問題が多々ありまして、この点は別に研究している問題であります。本案の問題につきましてはその程度にとどまつて、それ以上研究しておりません。
  24. 石井繁丸

    ○石井委員 大島さん伺います。われわれ立法をいたしまして実際に実行してみると、立法したときからかわつたような実情が出るのであります。先ほど大島さんから、この手続実施されるとやはり非常に手続期間が長引いて、その間煩雑なことが生じてなかなか目的が達せられない、こういう御意見が出ましたが、大島さんが実際この法律会社更生問題を扱つた場合において、今まで破産事件や何かにあつたようなちよつとしたもつれがあつたときには、どれくらい期間がかかるとお思いになりますか、過去の経験等に徴して御意見を承りたい。
  25. 大島正義

    大島参考人 本法案はまだ実施されておりませんから、これはわかりませんが、和議法、破産法等によつて大体検討いたしますと、まず訴訟等の問題が起らなくとも、少くとも半年以上かかることは当然のことであります。これに訴訟事件がからまると三年や五年は当然かかるのであります。従つてこの問題につきましても、債権者との間の関係及びその他の関係が、もしうまく行かなかつたというような場合には相当期間を要することと思います。
  26. 石井繁丸

    ○石井委員 難波さんに金融方面のことで伺いたいのでありますが、実際問題としてこの会社更生法でねらつているように、何とか更生の脈があるというような場合においては、今銀行としては実際はめんどうを見ておるでしようか。この会社更生法の手にかかるようになつたのでは銀行はもうさじを投げざるを得ない、こんなような銀行の実際上の取扱いになつておるのですか。その債務が少し過多で経営が困難になつ会社に対する銀行の融資扱い上の実情をお尋ね、たいと思います。
  27. 難波勝二

    難波参考人 ただいまの御質問は、個々の銀行の実際の状況に従つてつて来る問題でございますから、抽象的に申し上げにくいのでありますが、先ほど来申し上げております通り、今日の金融状況から見ますと、積極的に、たとえば中小企業の育成を強化して行く、中小企業をもつて円滑に運営できるように金融の道をつけて行くということさえも、世間でいろいろ申されております通り、十分に行つてない現状でございますから、ただいま御質問のような点は、それぞれの銀行において可能な範囲においてやつておることであるということは申し上げられますけれども、そう十分に行き得るような金融の実情にはないと考えております。
  28. 石井繁丸

    ○石井委員 しかし銀行で何とか骨を折つたならば脈がある、こういうような実情であるならば、銀行としては実際問題としてはめんどうをみて、債権確保よりまず会社更生、こういうことに重点を入れておるような傾向でしようか、それとも整理を急いでおるような傾向でありましようか、その点をひとつ承りたいと思います。
  29. 難波勝二

    難波参考人 見込みのあるものについてはできるだけ考慮しておる、こういう状態であります。
  30. 石井繁丸

    ○石井委員 会社経営をやつておる斎藤さんに伺いたいと思います。われわれがこの法律で一番心配しておるのは適当なる管財人があるかどうか、これは弁護士会でもそう思つているのであります。現在、この法律実施された場合において、業界の実情から、そういうような方々が具体的にあるだろうかというふうな点につきまして、いろいろの御経験から忌憚のない御意見を承りたいと思います。
  31. 斎藤英攝

    斎藤参考人 私は、先ほどもちよつと申し述べましたように、二千万円以上の負債のある会社については、管財人を設けなければならぬというのはやめまして、とにかく従来の経営者を中心にやつて行くべきだという考え方であります。実際おつしやる通りに、貧乏会社にしてしまつたあとにだれが来ても、そう右から左へおなかがすいたときに御飯を食べるように回復させることはできないわけであります。何といつても、今まで何しておつた人たちが事情に通じ——ちようど病気のようなもので、病気は医者より病人がよく知つている。自分たちが経営の責任に当つて、その苦境に陥つた原因も、それに対する対策も、当事者が一番よく知つておるわけであります。そういう人たちによつて、国の法律の保護によつてあとは、要するにひよろひよろしているときに助けて、マラソンで走つて行けるようにしなければならない。お前はだめだと言つてこつちへ入れてみたつてぐあいが悪いと思います。ですから、管財人の点は法案の中で義務づけないで、従来の人間でやつて行くというのを建前といたしまして、ただそういう人が裁判所監督のもとに、適当でない場合においてのみ管財人を設けるというような方法にしませんと、ある限度から上は必ず管財人を置けということになるとかえつて息を吹いて生きるやつを、へたやると次の管財人が来てつぶしてしまうというようなかつこうになる、この点は私さように考えておるわけであります。
  32. 石井繁丸

    ○石井委員 ただいま田万委員の方から労働者の債権の問題が出たのでありますが、労働者としても、会社更生できるならば協力したいというのが、実際の問題であろうと思うのであります。自分たちの債権を優先的にいたして、会社はつぶれてもかまわないというのではなく、労働者としては、会社更生ということにまず協力することになろうと思うのでありますが、実際は債権者同士の会社に対する協力、こういうことをさつき大島さんにも質問したのでありますが、これは円滑に更生を進められるかどうかの分岐点だ、こう思うのであります。担保権者があつたりあるいは一般の担保権のない債権者があつたり、あるいは労働組合の人の賃金の未払いがあつた、こういうふうな複雑な場合において、債権者同士の話合いがうまくつくような実情でしようか。今まで取扱つた実情からそういう点についてお話を願いたいと思います。
  33. 斎藤英攝

    斎藤参考人 今の御質問は未払い賃金の問題、それから債権者のいわゆる協調の問題のように考えられるのであります。なるほど従業員は、私も実際の経験を持つておりますが、会社がどうせぶつつぶれるならばほかの借金取りにとられるより何とかして自分たちが持つて行こうということになります。しかし、今度こういうわけで更生するということになれば、とにかく今までは苦しくてもがまんしたのだから、これから先頼むということで完全に協力してくれると思います。具体的な例を申しますならば、たとえば、今までの未払い給料はたな上げにして会社に預金したつもりでおるが、これからの分を毎月確保できるかどうかというところにポイントがかかると思います。これは私自身実際の経験を持つて、実は今まで約二箇月近いたな上げをさして、そのかわり去年の十一月以降今日に至るまで、とにかく今後働く分に対しては絶対遅配はさせぬから、あとはひとつおれにまかしてくれということでやつているわけであります。そうした場合、遅配給料や何かにつきまして、少しずつ勢いがつきますと、今月はこれは特配だということでやりますと喜んでいるので、そういう点は協調が行くのであります。ただどうせつぶれるということになりますれば、会社の商品でも製品でも現物でも何でもよいからくれということになりますが、更生の見込みさえ立つならば、現在の労働組合の趨勢から申しましても、私自身の体験からしてもさしつかえないと思います。  それから債権者の問題でありますが、債権者の一番大きな問題は銀行であります。失礼ですが、銀行は紳士であります。だから銀行の債権を行使することで会社をぶつつぶすということはこれはありません。特に私は、日本の国策的性格を持つている銀行にお世話になつているせいかもしれませんが、そういうことはまずなかろうと思います。私の知る範囲の銀行で、銀行借金が返せないから銀行会社をつぶしたという例はあまり見ないのであります。どういう場合につぶれるかというと、先ほど申しました税金高利貸であります。要するに、せつかく盛り上げて行こうと思つても、第二、第三の町の債権者がいわゆる強権を発動して合法的に持つて行つてしまう。そうすると、銀行のような紳士的な債権者も、どうせだめなら担保権設定の強権を発動してぶつつぶすほかないということになる。そうでなくて、こういう法律がしかれまして、裁判所更生手続の必要を認めることになれば、銀行の方も利権が確保されるということで、金融の問題につきましてもなまじつかなかけひきをしないで、あるだけのものを全部ぶちまけて、こうこうこういうわけで更生するのだということも納得してもらい、かつ毎月の生産実績なり、金融のありのままを金融機関に見せて頼むならば、金融機関もめんどうを見ると確信しております。ですから債権者の協調の問題は一向さしつかえないと思います。私の経験で、現在不備である会社整理のあれに乗せてすら、それくらいの恩典をこうむつているのでありますから、この更生法が多少の希望条件をいれて実施されるならば、私は画期的な法律だと思つておりますので、ぜひともお願いいたします。
  34. 押谷富三

    押谷委員長代理 ただいま東京家庭裁判所判事恒田文次君がお見えになりましたから御意見の御開陳をお願いいたしたいと存じます。
  35. 恒田文次

    恒田参考人 前に一言御了承願いたいことは、十時半にお呼び願いましたが、ちようど事件をやつておりまして、ずいぶん急いだのでありますが、ただいままで遅れましたことをおわび申し上げます。  会社更生法につきまして私から申し上げますことは、実は破産事件を東京地方裁判所で三年ほどいたしまして、その後二年ほど会社事件の部を担当いたしまして、ちようど五年間この法案関係した仕事をしておりますし、現在家庭裁判所で仕事をしておりますので、そういう意味におきまして意見を申し述べさせていただきますことを一言御記憶願います。そこでこの法律ができた方がいいかどうかということの御意見を申し上げるのが、まず最初と思いますが、破産事件、和議事件、整理事件、特別和議事件、従来裁判所はこの四種の法律でこういう事件をやつてつたのでありますが、破産事件をやりました感じでは、どうしても事業が死滅するという結果になるので、何とか破産の宣告を避けたい、これは申立人としましても、債権の回収の面が統計上一割しかないので、むしろ宣告よりも示談的の解決を希望する、結局破産宣告をすべき事件が、宣告でないような片づき方をしておる、こういう実例が多いのでありまして、債権取立ての便法というような面にむしろ利用されておる。これははなはだ残念に思つてつたのであります。  次に和議の法律でありますが、これも取扱いました感じから申しまして、執行力がないという点で非常に残念に思つております。それは借金踏倒し法というような悪口を言われたこともありまして、支払いの猶余を得ましたり、あるいは分割払いということに納得しましても、執行力を持たないという点で非常に弱い法律と感ぜられております。  次に整理でありますが、これも二、三取扱いました感じでは、債権者全員の同意という点でどうしてもうまく行かない。それからもう一つもし整理ができませんければ、当然破産の宣告を受ける。この点で非常に実務家としては不便な法律感じておりました。  なお最後の特別和議法でございますが、これは例の戦時補償打切りによる事件だけでありまして、法律自体は非常によろしくできておるように感じておりましたが、実際やります上では、戦時補償打切りという点で、ほかの事件に利用できないので、これも残念に思つてつたのであります。  そこで今回の会社更生法を拝見いたしまして、率直に申し上げまして、ぜひこの法律を施行するようにしていただきたい、こういう結論でございます。それは先ほど申し述べました破産、和議、整理、特別和議、この四つの種類の法律を取扱いました場合の欠点が、今度の更生法ではすべで修正されておる。寒務家の私として不便を感じておつた点が、大体において修正されておるという点で、この更生法を歓迎するわけであります。ただ前の参考人の皆様のお話を伺つておりませんので、また裁判所という狭い見地からの意見を申し上げるので、どの程度意見を申し上げていいかちよつと苦しむのでありまするが、裁判所の現在の立場として、この法律をすぐ受入れられるかという御質問があると仮定いたしますると、御承知のように裁判官は手不足でございまして、人数がふえるということもむちろん希望はいたしておりまするが、この法律を拝見いたしますと、いろいろ補助機関ができておるようであります。たとえば管財人、調査委員、審査人、整理委員法律顧問、こういう方のお手伝いが願えるようでありまするから、そうすれば裁判官も相当手数がはぶける。手数がはぶけると申します趣旨は、この方々に実際上いろいろお願いして、法律的の意見裁判所が持てば、そうすぐに人員を増さないでもこなせるのではないか、こういう感じがいたします。  それから施設の点でありまするが、東京だけのことを申しましても、相当狭い庁舎でありまして、ここに出ております関係人集会、たとえば債権者とか、株主の集会に相当大きな場所を必要とするのではないかと懸念を一応持ちましたが、従来の体験によりますると、破産の集会にしましても大体は委任状で、二千人ぐらいの債権者の場合でも、わずか五、六名の方が出席されて集会をやつておられる経験がございますので、これもそう大した施設の拡張ということもなしに行けるのではないか、こう考えております。  それからいろいろ費用の予納、あるいは報酬の問題でございますが、これは従来破産事件、あるいは整理事件なんかで出しておりまする報酬の基準がございますから、それによつて、行けば、さほど多額なものでなしに行けるのではないか、たとえば管財人の例で申しますると、弁護士の方は、これは相当過去の経験上の数字が出ておりますし、弁護士以外の方であるならば、整理の場合に、たとえば会社の重役あるいは営業部長として受けられる報酬を基準にいたしまして算出する、これもさほど多額なものではなくてよろしいのじやないか、ことに法的の立場に立たれる仕事になりまするから、そう費用がよけいなくてもいいのではなかろうか。また予納を会社の方で相当別に、つまり開始後に会社の方で費用を予納していただけば、その財力に応じた報酬なり費用を支出して行くという面で円滑に行くのではなかろうかと感じられます。それから今までありませんでした調査委員あるいは審査人というような職務がふえておりまするが、これもやはり従来の破産管財人あるいは整理委員、こういう今までの仕事と大同小異であろうと思いますので、職種が新しくつくられますが、裁判所としてはさほど実施上困難はないと思います。問題はこの管財人でありまするが、従来の破産管財人は弁護士の方がほとんどなつておられます。これは例の否認の訴えを提出いたします関係で、法律素養が十分ないど、理想的な破産管財はできなかつた関係でありましたが、今回の法律管財人は、法律の、たとえば否認の訴えというふうな問題ばかりでなしに、会社運営ということを相当担当されるのでありまして、今までの破産管財人あるいは会社整理委員とは多少方向が違うということが当然予想されます。アメリカの例をちよつと伺つたのでありますが、実業者のクラブと申しまするか、そういうクラブ組織がありまして、裁判所の諮問があれば適当な方が選出されるというふうに伺つておりまするが、将来日本でも必ずそういう一つのグループができるのではなかろうか、またできていただいたならば、裁判所は非常に便利であろうと思われます。これは決して弁護士の方がいけないというのではありませんで、弁護士の方が実業をかねておられるならば、これが一番理想ではありまするが、現在の状況では弁護士の方が全部実業を経験しておられませんので、そういう時期の参りますまでは、弁護士の方で経験のある方あるいはその当該事業経験があつて引退されている方、要するに公平に仕事をやつていただく方ならば、現在ある事業をやつていらつしやつてもけつこうと思いますが、そういう方を選出するという点、これが裁判所としては一番むずかしい問題とは思いますが、しかしできないことではないと感じます。たとえば商工会議所というふうなところに御照会して適当な方を御推薦願うという方法も考えられますし、この点は何とか円満に行くものではないかとこう感じております。  それから整理にどのくらいの時間がかかるかという点でありますが、訴訟促進が叫ばれまして、現在裁判所が非常に事件の解決に拍車をかけておりますが、ことにこの種の事件でありますと、従来の経験上ほかの事件をおいてもまず片づけるという方法をとつております。たとえば整理事件なんかも取扱いましたが、毎日でも、夜おそくまででも、十二月の三十一日までやつた経験もございますし、普通の事件とは非常に違つた頭で裁判所は処理されるはずでありまするから、そう期間が長くかかることはないかと思われます。期間の点についてでありまするが、可決の期間が二月とされておることであります。もしも延ばす場合には一月伸長できる、こうございますが、私の体験上、和議事件でありまするが、二月という期間が非常に短かいのでありまして、四分の三の同意を得るのにどうしても二月では得られなかつた経験が二、三ございます。今度の法律ですと一月伸長となつておりまするが、欲を申せば一月よりも長いことを希望いたしまするが、あまり遅れるということも、また欠点になりますので、一月でもよいかと思いまするが、この点は整理委員になられたような方、管財人のような方に、前後三月では相当御勉強願わなければならぬではないかという感じを持つております。  それから国税徴収法による滞納処分の中止、あるいは税務署等の同意を得て減税あるいは徴収猶予という条項がございまするが、これは非常に賛成をいたされるところであります。と申しますのは、和議事件でありましたが、ほとんど円満な妥結ができる瞬間に、滞納税金のためにその工場の原料を全部処分されましたために、こちらから税務署に一応御相談したのでありまするが、徴収処分は断行されまして、せつかくできかかつた和議がこわれたという苦い経験を持つております。今度の法律ですと、そういう場合に税務署に裁判所から御連絡をして、しばらく待つていただけば相当円満な解決がはかれるという面で、非常によい法であろうと存ぜられます。  次に担保債権の制限というのがございます。これは従来の担保債権の絶対性という立場から行きますと、いろいろ御意見もあると思いますが、実務家として扱いました場合に、担保債権がほとんどの財産を占めておる場合には、他の一般の債権者が非常な不利益を受ける。極端に申しますならば、担保債権者だけが全部弁済を得まして、他の債権者は全部一銭の配当にもありつけないという経験がたびたびありましたので、そういう機会に感ぜられましたのは、多少とも担保債権の方に遠慮をしてもらえるならば、一般債権者にも余得が及ぶというふうな感じを持つておりまして、この担保債権の多少の制限、これはもちろん裁判所もそうひどい制限をしないと思われますので、この点につきましても、賛意を表したい、こう考えております。裁判所の立場として申し上げますので、ほかにいろいろ条項もございますが、一応この程度で意見を終らせていただきまして、また御質問によつて意見を申し上げたいと思います。
  36. 押谷富三

    押谷委員長代理 恒田君に対し御質問ございませんか。
  37. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はここへおそく来ましたので、前の参考人の御意見を聞かなかつた点はおわびしておきますが、同様の御意見もあつたろうと思いますが、今恒田さんの御意見を聞きまして、特に感じますことは、なるほど破産法、和議法、整理法、及び特別清算等に不備な点があつたことは、われわれは認めますが、その不備な点があつたら、その不備な点を直すということが、私は先決問題じやないかと思います。それをやらないでこの法律が特に必要である、こういう理由がわれわれにはまだ頭に来ないのです。ことに私はこの法律を通読いたしまして、私は法律は忘れてはおりますが、ある程度破産法その他の観念がありますから、ようやくわかるようなものの、これはおそらく一般の人が読んだら何のことかかんのことか五里霧中だろうと思う。かようなむずかしい法律をここでやるということは、今日の時代においてもたいへん私は時代に相応しないように考えます。  そこでその前に規定の法律改正することにおいてこの目的は達せられないか、それとも今の法律はみなすべていかぬのだから、どうしてもこれはやらなければならぬことであるか、これをまずお聞きいたしたいと思うのであります。
  38. 恒田文次

    恒田参考人 先ほど申し述べた四つの法律の欠点と申し上げましたのは、もちろん全部が悪いと申し上げる趣旨ではございませんで、事件の解決上に不備な点があるという点を申し上げたのでありまして、現在の法律改正すべき点はもちろん私どもとしても相当意見を持つております。今度の法案で今までの法律の修正で足りない点という御質問でございましたが、私が理解いたしますところでは、株式会社整理更生という面におきましては、従来の破産法、和議法あるいは会社整理等の法律では、親切さが足りておらぬではないかという感じなのであります。それならば従来の破産法、和議法、整理法にその親切さを加味すればよいではないかという御質問と思われますが、整理法は非訟事件の性格を持つておりますし、破産法、和議法は訴訟事件の性格を持つておりまして、多少専門的でこだわるようにお聞きかもしれませんが、今度の更生法は和議的な性格の強いものと私は拝見いたしましたので、それに会社整理の条文をマツチさせるということが相当錯雑に考えられます。むしろ会社整理の制度は廃止されましても、会社更生法の方へ持つて行かれる方がよろしいのではないか。と申しますのは、会社整理は非常に簡単な法律でありまするし、手続も非常に簡単にできておりまするが、今度の更生法でありますと、プランを立てますについても、非常に親切な規定ができておるようでありまして、なるほど条文の数はたくさんございまするが、ほとんど破産法、和議法あるいは非訟事件手続法、これと重複して書かれておる面が相当ございまして、専門家がごらんになれば、ほんとうに問題になる条文というのはおそらく三、四十条ではないかと感じられます。新しくできましたという意味では、条文の数は少いのでございまして、ほかの準用を避けて表現しておられるので、非常に大きな条文になつておることは御同感なんでありまするが、ただ究極の目的が、株式会社整理という面におきましては、従来の破産法、和議法、あるいは会社法の整理の修正では、なかなか統制がとりにくいではないかという感じを持つたのであります。
  39. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ごもつともの点もありまするが、私ら経験上から見ますると、たとえば、特別清算というのがありますが、これもやはりなるべく破産にしないようにやろうという趣旨でありますが、こういうのはほとんどどれほどあつたか知らぬが、実際において活用していなかつたように思われます。会社整理法もあまり活用されておらぬようであります。そこでこういうものはどうもおもしろくないから、今度ひとつ新しくこしらえるのだ、こういうことになるので、おもしろくないからこしらえて、それはいかぬからまた新しいものをこしらえるということでは、法律は山のごとくなつて、われわれ専門家自身も、これを勉強することにまつたく面くらうようなわけであります。そういうような観念がないでしようか。われわれにすれば、こういうものはいらぬから、これをひとつ統合して、こういうものをこしらえるのだ、これなら私はわかる。ところが前のものをどんどんおいて、今言う通り、和議法、破産法などを生写しにしてここに入れる。それじや非常に複雑になる。こういう点は、これはあなたに聞くよりは、立案者に聞く方がよいのかもしれないが、そういう感じをお持ちにならぬか。また今非私からこういうことを申し上げると、どうお感じになるかを承りたい。
  40. 恒田文次

    恒田参考人 破産法と和議法は個人と会社と両方が含まれておりますので、会社だけの破産、会社だけの和議と申しますと、結局また——ことに商法改正になりましたので、改正と申しましても、相当大改正になるのではないかという感じを持つのであります。それから特別清算においても、整理の事件がたくさんなかつたとおつしやいましたが、これは確かにそうでありましたが、先ほどちよつと申し述べましたように、たとえば整理ですと、全員の同意がありませんと、当然破産の宣告になりますのと、会社事件というものが、普通の一般債権者の事件と非常に異なつた性格を持つておりまして、率直に意見を申し上げますると、今までごたごたしておりました法律が、会社関係については、今度の法律一つの殿堂ができ上るというふうな感じが持たれるのであります。そこで従来の破産法、和議法はもちろん廃止するようにという意見ではございません。修正してやはり残していただいてけつこうと思います。ただ会社整理の方は、私個人の意見ですが、将来なくなつてもいいのではないかという感じを持つております。特別清算につきましては、まだ今度の整理とは多少趣を違えておると思いますので、これは残されてもいいのではないか。結局会社更生という面におきまして、従来の諸立法と違つた面が盛られておりますので、問題になる条文は三、四十条と申し上げましたが、内容的には新しい仕組みが相当ありますようです。御理解願えましたかどうか、ただいま私の意見としてはその程度でございます。
  41. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の申し上げたい根本は、いわゆる法律の民主化といいますときに、次から次に新しい法律ができて、われわれ専門家自身でもそれを解釈するだけの能力を持たないわけです。一般の者にはとうていわかるものじやない。法律はできるだけ周知せしめて、国民がこれに従うように簡易なものにしてもらうことが、ほんとうの民主化じやないかと思う。その大前提から出ておるのでありますが、これ以上その点は伺いません。  もう一つ聞きたいのは、なるほど会社が行き詰まつて整理をする上においては、こういうこともいいというふうに考えられるのでありますが、こんなものをこしらえたがために、かえつて会社の行き詰まりを生ずる原因になるということになつたらたいへんだ、こう思うのです。これはいろいろありますが、先ほど斎藤さんからも議論がありましたが、管財人ができて会社経営をやる、こういうこよになる。これはどうも今までやつておつた者でさえ困つておるものを、よその人が入つて来てその会社が更正できるとは、われわれには考え及びません。それから先ほど何か商工会議所などに相談して、いい人をよこすというような話でしたが、よその会社のいい人が来てその会社を盛り立てるということができればけつこうですが、われわれは実際それは望み得ないと思う。実際にそういうりつばな経営の手腕を持つた見識のある人が出て来るくらいなら、管財人で出て来てもらうより、その人に入つてもらつて、そして資本なり何なり用意してもらうならよろしいが、管財人になつて来たり、整理人になつて来ても、私はやれるものじやないと思う。そういうことでは経営自身に、私は非常に心配を一般に持たせるということを感ずる。もう一つ痛切に感じたのは、いわゆる担保債権をある程度制限するということでありますが、それは整理の上ではけつこうですが、会社経営で一番困るのは金融の問題で、どうかひとつ金融をうまくやつて会社事業をつながして行こう。仕事をいいようにしようと一生懸命経営をやるときに、今の整理に入つたら、担保債権が引込まされるかもしれないということになつたら、担保でもつて金を貸す者はなくなる、これは重大な点だと思います。担保さえついておれば金を貸してくれると思つたが、いよいよ更生が申し立てられたら、担保権が引込むということになるかもしれないということになつたら、担保では金を貸さないかもしれない。従つて整理どころじやない。会社経営そのものに重大な影響を及ぼすことが考えられると思われるのですが、この点は私の間違いでありましようか、それともそうお考えになりますか、その点を承りたい。
  42. 恒田文次

    恒田参考人 担保債権の制限と申しましたが、この条文には、たしか第一次の配当と申しますか、であつたように拝見いたしましたので、その点を裁判所でもそうむちやなことをしないじやないかという建前で申し上げたのであります。担保債権者を保護すべきであるということは、もちろん御同感でありますが、場合によつては多少の制限をするという程度の趣旨と私は理解したのでありますから、賛成申し上げたのでありまして、もちろん御意見の通り金融が梗塞いたしますと、事業はできませんので、大制限ということはほとんど考えられないと思うのであります。  それから管財人の人選でございますが……。
  43. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 人選というより、かわつて経営する……。
  44. 恒田文次

    恒田参考人 それは会社が二千万円未満の場合には、管財人は置かなくてもいいという規定がございますようですし、二千万円以上の場合でありますると管財人が一人でなくてもいいようでありまするから、おそらく数名つけられるのではなかろうか。その中には利害関係のある者が入つてもよろしいという規定がございますので、もちろん会社の営業部長とか、そういう方がプランに参画される、管財人に入られるのではないか。私の経験では整理事件なんかを扱いましたが、その場合にも御説の通り整理委員とか代理の方ではほとんどわかりませんので、実務上として営業部長、経理部長、そういう方に盛んに懇請いたしまして説明をしていただいたりいたしました経験を持つておりますので、実際この法の運用になりますると、管財人と申しますより、むしろ会社の実務をやつていらつしやる方、また場合によつては労働組合の方にも相当お目にかかりましたが、ただいまの裁判所のやり方は必ずしも法律通りでございません。そこはいろいろ実情に即しまして会社の実務の方とお会いしておりますので、おそらくそれと同じ方法をとることになると思いましたので、賛成申し上げたのであります。
  45. 斎藤英攝

    斎藤参考人 管財人の問題は、実は今の御質問の趣旨にわれわれもすつかり同感であります。要するにその会社が貧乏になつたからといつて、別な手にかえてみたところで、これは先ほどから繰返して申し上げておりますように、ある特定のAランクの会社にはそういうことが通ります。たとえば社名は申し上げませんが、最近にそういう例があるわけであります。この法案の根本的なねらいは、要するに先ほどちよつと大企業云々という話がありましたが、実質これの保護を受けるものは、どつちかというとパーセンテージにしてもあるいは実際の面からも、私は中小企業の場合が多いと思うのであります。そういう場合には何といつても従来の経営者を主体にしてやつて行くべきであつて、従つて管財人の方は二千万円以上の負債のリミツトはとつてしまう。それからただいま恒田参考人から二千万円云々という話がありましたが、借金の二千万円というといかにも多いようでありますが、これは貸借対照表の帳じりの残高でありますから、二千万円の借金はほんのわずかであります。資本金二億円の会社で大体平均二千万円の債務は残るわけであります。ですからこれは二千万円のリミツトはとつてしまつて管財人裁判所が特定にこれらの連中ではどうもあぶなくてしようがないと認めた場合に限るということにして、とにかくなんぼ以上は管財人を置くというこのリミツトは、先ほどから申し上げますようになくしてしまうというように、この管財人については考えております。  それから担保権者の問題が今ちよつと出ましたが、これは法律的な問題でありますが、実際問題としまして、たとえば更生しよう、また更生の可能性があるというようなものは、銀行から借りたにしても、あるいは税金にしても元金だけは間違いなく——今すぐには返せないが、二年三年働けば返せるという見込みがあればともかく、そうでないものは更生でなくて破産にかけてつぶしてしまうべきで、少くともここは技術も優秀であり、また事業的に先々の何を見ましても、ここしばらく借金取りを追い払つて少し保護してやれば、ゆうゆうとやつて行けるというようなものがこれに乗ると思います。こうなると勢い担保権の場合でも、要するに担保権は、実際問題として利息とか金利とか、あるいは先ほど申し上げました国税徴収法による罰則的な高利貸に相当する延滞料加算税、こういうようなものをまけてもらつて、今すぐは納められないが、税金ですから国民の義務として元金だけは納め、銀行から借りた元金だけは返す。もう一つ銀行の利息にしても年一割で事業から見れば微々たるものである。ところが債権者ということを申されましたが、町の連中になると一箇月一割なんでございます。こういうような者をこの法律によつてぴしやつと締めれば、そういう連中がこの線に乗つて行くべきであつて、理論的にいえばこれによつて一つ更生会社の線、ランクというものが自然きまつて来ると思うのです。そういう意味で、担保権の方まで元金が食い込むようなものは頭から破産にひつかかるべきであります。やはり更生には裁判所理由ありと認めて、検討してこれを認めるわけでありますから、そこはやはり裁判所が実務的にやると思いますので、借りた金を元金まで倒そう、また倒さなければ生きないようなものはこれはシヤツポを脱がした方がよいので、実際の面に動かした場合には乗らないというふうに私は考えておるのであります。
  46. 押谷富三

    押谷委員長代理 大分時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にいたしたいと存じます。参考人の方々には御多用中たいへん長時間にわたりまして、きわめて御熱心に、かつ有益なる御意見を御開陳くださいまして、今後の法案審議の上に参考になることがたいへん多かつたと存じます。どうもありがとうございました。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時五十六分散会