運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-10-18 第12回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十八日(木曜日)     午後一時五十八分開議  出席委員    委員長代理理事 押谷 富三君    理事 北川 定務君 理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    牧野 寛索君       眞鍋  勝君    山口 好一君       大西 正男君    石井 繁丸君       田万 廣文君    梨木作次郎君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君  委員外出席者         議     員 木村  榮君         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         検事         (検務局長)  岡原 昌男君         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君         検     事         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十月十八日  揖斐町に簡易裁判所設置請願武藤嘉一君紹  介第)(一九号)  大聖寺町に簡易裁判所設置請願坂田英一君  外一名紹介)(第二〇号)  田尻登記所存置請願庄司一郎紹介)(第  五六号)  仙台法務局小野出張所存置請願庄司一郎君  紹介)(第五七号)  仙台法務局広瀬出張所廃止反対請願庄司一  郎君紹介)(第五八号)  仙台法務局大川出張所存置請願庄司一郎君  紹介)(第五九号)  七ケ宿登記所存置請願庄司一郎紹介)(  第六〇号)  仙台法務局金田出張所存置請願庄司一郎君  紹介)(第六一号)  金田登記所存置請願庄司一郎紹介)(第  六二号)  石川町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願(  圓谷光衞紹介)(第六三号) の審査を本委員会に付託された。 同日  横川町に簡易裁判所並びに検察庁設置に関する  陳情書  (第二五号)  暴力者根絶に関する陳情書  (第三二号)  司法事務改善に関する陳情書  (第四八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  法制に関する件  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 押谷富三

    押谷委員長代理 これより会議を開きます。  まずポツダム政令等の問題につきまして、鍛冶委員より発言の通告がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ポツダム政令に関しましては、しばしば当委員会において、政府所見を承りましたので、ほぼ了解はしておるのでありまするが、今までは、大体の見当であつたが、今日は政府意見は確定しておると考えまするので、確定しておりまする意見を聞き、さらにまた、あとから出まする質問に対する前提条件ともなりまするので、一応前からのことを繰返すようでありまするが、ポツダム政令なるものは、われわれの考えでは、占領政策上のために出されたものでありまするがゆえに、講和条約が成立いたしまして、占領政策がなくなりますれば、実質上においてその効力を失うものじやないかと考えるのであります。そこではたして失うものであるか、また失わないものであるか、これに対する所見をまず承りたいと思います。
  4. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのお尋ねは、純理的のお尋ねと拝承いたしまして、純粋のりくつの方の面を一応申し上げさせてただきたいと思います。先月この委員会におきましても、この政令関係の御質問がありましたが、その際には純理的にはいろいろ考え方があるというようなことで、割合深入りしないで終つたのであります。今日は特にそれを取立ててのお尋ねでありますから、私として考えているところを、簡単に申し上げておきたいと存じます。  純粋の理論としては、前会申しましたように考え方はいろいろありましようが、このポツダム政令というものは法律でありません。緊急勅令五四二号、これはまつた法律と同一のものでございますが、その正当なる事件に基きましてすでに有効に成立して一本立ちをしておるものであります。従いましてこれは今日における他の事情の変化にかかわらず、すなわちかりに占領終つた講和条約効力を発生した後におきましても、当然にはその効力は失わないというふうにりくつの上では考えておるのであります。ただいま占領政策との関連についてのお話がございましたけれども、確かに実際上の関連といたしましては占領軍最高司令官要求ということが動機になつておりまして、その内容占領政策関係のあつたことは、これは実際問題として否定できないところであります。しかしながら占領政策に基いて今日まで出ております法制を広く眺めてみますと、たとえば農地の、すなわち自作農特別措置関係、それから独占禁止法関係国家公務員法、その他たくさんの法律がございますが、この法律を見ましても、ものによつてはただいま申しましたもののように、占領政策から出発して制定されたところの覚書なり、その他の要求があつて制定された法律もあるのであります。従いましてそれらの点については、いわゆるポツダム政令の場合たると、独禁法その他の法律の場合たると同じでありましてわれわれが純理論的にこれを眺めますならば、これは占領政策云々ということは発せられたときの動機ではありましたけれども、正式に独禁法という法律として制定され、あるいは正式に五四二号という緊急勅令に基いて正当なる事件に基いて政令として成立しておるというのは、もはやその間の法律的な因果関係、すなわち占領政策との関係における因果関係というものは中断されておるのであります。その点から申しましても、先ほど最初に申しましたように占領政策が打切られたということから申しましても、当然消滅するというところまでは言い切れないのではないかというふうにりくつとしては考えております。しかしこの間も触れましたように、その考え方に対してはあるいは違つた考え方もあり得ることであります。そういうことのために裁判所を煩わし、あるいは国民の各位に不明確な点を残すということは、立法としては不親切でありますから、そこで立法的な手当をしようというふうに考えておるわけであります。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはあと部類をわけて承りますが、今おつしやつた立法的の手当ということに対して総括的にどういうことをお考えになつておるか、まず前提として承りたいと思います。
  6. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今日ほぼわれわれ確定的に考えております手当の方法は、大きくわけて二通りになると思います。と申しますのは、ポ政令の中には存続を必要としない、当然廃止せらるべきものと考えられるものがございます。それから占領終止後の状態に即応して中味を改めなければならないものがございます。第三は放置してそのままの内容で役に立つものというふうになります。そこで廃止いたしますものと改正を要するもの、これは今国会法律案を提出いたしまして、一々法律をもつてこれこれの政令廃止する、これこれの政令の中のこういう部分は改めるという手当をとりたいと思つております。そこでさらにこれを小わけして申しますれば、廃止部分は簡単でございますが、改正の分にはその改正の中身によつて非常に大幅に改正を加えなければならないというものと、簡単な、たとえば連合国人というのをこれこれの国の人と改めれば足りるようなものもございます。そこでたとえば団体等規正法案というような形のものでは、前からも説明に出ておりますが、団体等規正令のごとき大幅に改正を要するものは、団体等規正法案というような一本建の法案として御審議をお願いするというように考えでおります。その他それ以外にも若干ございますが、そういうものが一つございます。  それから先ほど申しました単純なる字句の改正でとどまるというものは、各省所管別にたくさんの政令がございますから、たとえば通産省関係政令ということになりますならば、通産省関係ポツダム政令処置に関する法律案というようなふうに、各省所管別にとにかく一本ずつに所管をわけまして、その中で先ほど最初に触れました通産省所管の中で廃止するものは次のものは廃止する、その次にこれこれの政令はこれこれに改めるというようなふうに、各省にわたつて改正を一本に盛り込んで、各省別に提案したいと考えております。  それからもう一つ最後に残ります問題は、その根本の基礎になつておりますところの例の緊急勅令の五四二号の処置については、これは一本法律的手当をいたします。これは占領軍司令官がいなくなれば将来発動することはあり得ないことは明瞭でありますけれども、この際はつきりこれを廃止しようという廃止のための法律案を一本考えなければならない。しこうして先ほど触れましたように、別に他の法律によつて廃止されないその他の政令につきましては、なおその効力を存続するものであるということをその法律の中で念のためにうたつておきたい、かように思いまして、一応すべてのポ政令ポ省令関係の育成は法律的にはつきりできるというふうな考えで、各省手わけをいたしまして、目下その準備を進めておる次第でございます。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこで部類をわけて承りたいのであります。まず承りたいのは、元来当然廃止になるべき法律でありまするが、これは相当多数のものであろうと思いまするから、全部を指摘していただかなくても、大体どういうものが廃止になるのか、それをまず承りたいと思います。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知のごとく、ポツダム政令とそれから各省令関係を合せますと、総数が百五、六十件あるわけであります。その中で廃止をするものとして政府考えておるものにどれくらいあるだろうかと思つて、一応各省から調べをとつたところを見ますと、大体各省の希望は九十件ぐらいはどうもあるように思います。ただこれは相手仕事でありますから、全部がその通り行くかどうか、各省の間の意見が一致しないものもありますから、最後のところはわかりませんが、現在のところ私の勘としては九十件ぐらいは廃止になる候補者になつております。九十件でありますからなかなかたいへんでありますが、私がちよつと手控えを書いてみたものによりますと、これは当然のことでありますが、当然不必要なものとして、占領軍財産所持禁止令というようなもの、それから占領目的阻害行為処罰令、これは占領軍がいなくなれば将来にわたつては発動しない。その他たとえば会社の証券の保有制限に関するものとか、財閥の商標に関するものとか、漁業の罰則の特例に関するものというようなものなどは、私ちよつとしるしをつけましたが、廃止になるもののおもなるものであります。これらのものについては必要な経過規定は付しますけれども、要するに廃止したらよかろうというふうに考えておるものであります。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に承りたいのは、これを改正して、あらためて国内法としようとせられるものでありますが、これは相当重要なものがあると考えますので、現在のところどれとどれとをやられるつもりであるか、これをひとつできるだけ詳細に承りたい。
  10. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これも、まだ最後的のものとしては申し上げかねますが、その含みで準備しておるものといたしましては、御承知団体等規正令の書き直し、そのほかに法務関係では、婦女に売淫をさせた者等処罰に関する勅令というものがありますが、これも現在のところでは、法律に書き直すつもりでおります。それから外務省関係では、現在旅券関係のことがポ政令できまつておりますが、これは今後重要な立法として必要なものでありますから、旅券法として書き直して提案いたします。それから自作農創設関係法律、それから農地調整法、その適用を受けるべき土地の譲り渡しに関する政令というものがありますが、これを今度政府の方では、農地関係法律を一本にした農地法案というようなものを考えておりますが、その方へ抱き込もうという方向で考えております。それから航空関係では、国内航空運送事業会というものと、外国人国際航空運送事業に関する政令というのとございますが、これはあたかもちようど平和条約関係からも航空法案というようなものが必要になつて参りますから、それと一本に合せて措置をとろうというふうに考えております。その他二、三あるかもしれませんが、今度の国会に出したいと思つて鋭意やつておるのはそれであります。その他、次の通常国会にできれば出したいというものも、今検討をいたしております。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしますると、第三に承りたいのは、ただいま御指摘になつた以外のものは、現在の命令のままで国内法として存置せられるものと心得るよりほかないと思いまするが、それでよろしゆうございますか。
  12. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 言葉が足りませんでしたが、ただいま申し上げたのは、一本建の法律案として、一つ一つ、たとえば団体等規正法案というような形で御提案申し上げる準備をしておるものということで申し上げたのであります。その以外におきましては、先ほどもちよつと触れましたように、たとえば連合国人商標戦後措置令というようなものがあつて、「連合国人」というような文字が中にある。これは、連合国というものは、条約が実施せられればなくなると考えますから、その文字を直すといつたような、あるいはその他多少は実質的に触れても小さな改正をしようというものはたくさんございます。三十数件くらいになると思います。それは先ほど申し上げましたような、小さな手直しで済むものは、各省別に一括して一本の法案としてお願いしよう、そういうふうに考えております。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それらのことは、改正といいましても、ほとんどそのままと言つてもよいくらいだろうと思いますが、そこでまずこの点に対して重要だと考えます点を申し上げてみますと、先ほど意見長官の御意見によりますと、五百四十二号ですか、これは当然なくなるものだということを表明される。してみますと、この法律に基いてすべて出ているものでありますから、その基本であるものがなくなつた以上は、他の法律も、形の上ではそれは残つておりますから、一応あると見るべきものであろうが、実質上においては効力を失うものだと考える。それゆえに、この勅令廃止するけれども、今後これを国内法としてやる、こういうことで出されるものだと考えるわけであります。そういうことになりますると、前のものはこの勅令でよろしいというていいか悪いかは、相当疑問のものがあつた。ことにわれわれとして今日深く考えなければならぬのは、この勅令のうちには、国民権利義務に関する、また経済上その他に関しましても重大なる関係のあるものがあるわけであります。これは勅令として出たがゆえに、議会において審議はできなかつたのでありますが、もしこれを法律として出しますならば、国会において十分検討せなければならないものが多々あると心得るのであります。従いまして、今度その基本失つて今日日本の法律として残るのだといえば、元へもどつて勅令にあらざるものなるがゆえに、これをひとつ国会にかけて、国民意思を十分忖度して法律に改むべきものでないかと考えるのでありますが、この点に関しましてどういうお取扱いをせられるおつもりであるかをお聞きしたい。
  14. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ごもつともに拝承いたしますが、議会の御審議関係から申しますと、実はポ政令について議会審議権というものを、占領下における現在の関係考えますと、確かにある種の拘束といいますか、そう自由に行かぬ部分があつたことはわかります。但し、今回の平和条約効力を発生いたしました後は、わが国の完全なる自主権のもとに立つて処置し得るのでありますから、講和条約発効後の問題として、議会が自由に御審議になりますことは、これはりくつから申しまして当然のことであろうかと存じます。従いまして、現在政令で出ておりますものにつきましても、講和条約発効後における措置について法律案を御提案になるというような措置は、これは普通の占領継続中における改正よりも、よほど楽ではないかと思うのであります。ところで、それは別といたしましても、私が先ほど申しました法案の組み方から申しますと、それを考慮して実はそういうことを考えたのでありますが、各所管省別に、廃止するもの、改正するものを編纂して御提案申し上げるということは、この間ちようど九月のこの委員会でも御要望があつたのでありますが、その御要望が実は私の頭にあつたものですからそれを考えついたので、その御要望従つてちようど所管省別に編纂して提案すれば、各所管委員会で、廃止されるもの、それから一部改正されるもの、これは法案そのものに出ております。それ以外におきましても、委員会所管の諸法律について、これはどうなるというような御審議のチャンスがはつきりそこに出て来るというようなことで、十分に御検討いただいて、そうして政府に対して督励なさるなり、あるいは議会委員会の方で進んで御立法なさるなり、そういう機会は私は非常に大きく確保されるのであろうと考えております。実は昔の話になりますけれども、明治憲法からこの新しい憲法にかわりますときに、明治憲法のもとでは非常に命令制定権が広く認められておつたのでありますから、新憲法であれば法律を要するような事項をきめた命令がたくさんあつた。その命令が、一体新憲法に入つてからどういう運命になるか、同じような問題がありました。そのときも政府としては、ほつておいても、とにかく正当なる基礎に基いて発せられたものであるから、当然には死なない。しかし、もちろん法律と同格のものとして新憲法に入つて来るのであるから、将来それを直したり、廃止したりするときは、法律をもつてやらなければ、当然には死なないというりくつを考えたのであります。しかし、それはやはり疑いを避けるために、法律七十二号という法律を出しまして、そういう命令は存続する、効力を有するものとするということをうたつて提案したのであります。そのときは改正前の最初法律は、ただそれだけのことでありまして、何ら手がかりがなかつた。従いまして、私の経験から申しますと、たしか当時の法務委員会に当るもの、あるいは両院法規委員会でしたか、ただ一ところの委員会で御審議をいただいて、そのときに、それでは何があるかというというリストを私どもガリ版で刷りまして御検討を願つたことがあります。それから考えますと今度私の申し上げておるその考え方、やり方は、よほど御審議のためには御便宜になつておるということで、実は少し自慢に考えておるわけであります。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大分明白になりましたが、そうしますると残るものは何十あるかわかりませんが、そのうちで法務委員会関係で残る法律法務委員会にかける、通産委員会関係で残るものは通産委員会にかける、こういう御意見でありますか。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の申しますのは、残るものの全部ではございません。先ほど最初に申しましたように、一部改正をするものがおのずから法案に出て、全然改正せずにそのまま残り得るものは法案の表面には出て参りません。出て参りませんが、そのときに、その法案をごらんになつて、各委員会ではこのほかに何があるかということで御審議が十分なされるであろう、また黙つて——黙つてといいますか、手つかずに、すなわち改正なしに、残るものとしては何があるかという御審議がこの機会になされるであろう、そういうことであります。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の心配しまするのは、今長官から言われたように、旧憲法から新憲法に移るときに、法律一本で暫定法として全部目録は別につけてこれは残る、こうやられた。これはあのときと今とはよほど事情が違うと思うのです。というのは、あのときはかつては旧憲法ではありまするが、国会において審議の上でいわゆる国民意思を十分現わして法律になつて出ておつたものである。その後それがただ新憲法にかわつたのだから、ある程度はよかつたが、今度は勅令として出ましたがゆえに、われわれは審議したくてもしようがなかつた。出て来たらうのみにして黙つてこれをのんでおつた。ところが今度やろうというのだから、今度こそわれわれはひとつ大いにわれわれの意思を明らかにし、この法律の上に盛らなければならぬと考えますので、あれとはよほど違うと思う。そこで私はあらためて聞きますが、何十を一本にして目録をつけないで、少くともこれは法務委員会関係法律であるから法務委員会の方でこれこれは残す、通産委員会関係のものはこれこれ、建設委員会関係のものはこれこれを建設委員会の方で残そう、こう書かれるであろうと思います。先ほどの御答弁でそうだろうと思いますが、念のためにそれを聞きたいのですがいかがですか。
  18. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その大前提の方は、私が法律七十二号などとよけいなことを申しましたから、ちよつと御心配をかけましたが、あの七十二号というのは元の帝国議会審議した法律のことではないので、警察命令、たとえば男女混浴禁止とかいう警察命令、いわゆる内務省令勅令一本でやつてつた、そういう命令処置ですから、この場合とまつたく実は同じなんです。ただ先ほど目録と言いましたけれども、あれはガリ版刷り便宜お目にかけたので、法案の中には出ておりませんでした、こういうことであります。もう一ぺんはつきり申しますと、たとえば文部省関係ポ政令処置に関する法律名前はまだはつきりしませんが、そういうものを考えておるわけであります。そこで第一条として、次の政令省令廃止するとやつて、不必要の政令名前は何々令、何々令だとやります。それから第二条として、存続すべきもので直す必要のある命令を引いて、何々令の一部を次のように改めるといつて連合国軍を何々と改めるというようなことでやります。またその次の条文で、またほかの政令を引いて何々令の一部を次のように改めるとやつて同じように直す。それでおしまいでありますから、手つかずに存続するというものは実はその法律には顔は出ません。出ませんけれども文部委員会でそれを御審議になるならば、文部省関係にはたとえば学校施設確保に関する政令というものがありますが、これは今度われわれの考えでは、全然手つかずにそのまま利用できると思つております。従つて文部委員会に出て来た法案の中には、名前はそのままには出ておらぬわけであります。そうすると文部委員会の方では学校施設確保に関する政令は一体どうなるかというような質問がある、あるいはまたそういう御質問でなくても、これ以外に手つかずに残るものはどういう政令があるかというお尋ねが必ずある。そのときに十分御審議になつて、これは改める必要がある、あるいは新しい一個の法律にする必要があるということでありますれば、政府に対してその際御要望になるなり、文部委員会御みずからが起案されて法律案を御提出になるチヤンスが十分にある、ということを申し上げたのであります。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどの御答弁でわかつたようなわからぬようなのですが、そのまま手つかずに残すつもりのものでも、文部委員会関係のあるものは文部委員会にかける、こういうことだろうと思いますが、それをひとつぜひ明確にしていただきたい。
  20. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 最初に申しましたように何ら改正する必要もなく、廃止もしないでそのまま利用できる政令がかりにある、今の例で申しますと、学校施設確保に関する政令とか警察予備隊令などは今のところ手つかずにそのまま役に立つ。そういうものを、たとえば警察予備隊令でいえば、これは総理府関係の問題ですから、あるいはそちらの委員会になるか、あるいはどこの委員会になるかわかりませんが、それを受持つ委員会があるわけでありますが、その委員会に出て来るものには警察予備隊令という形のものは出ませんと申し上げたのであります。といいますのは、総理府関係ポ政令の処理については、法律案は出ます。その関係政令の処理案が法律案に出まして、その法律案の中にどういうことが書き込まれておるかと申しますと、今の不必要になつた政令廃止するということ、それから一部直さなければなりませんものは次の政令のこれこれを直すということが出て来る。それ以外の手つかずに済むものは、これは私がさつきから申しましたりくつから申しましても、また今までの先例から申しましても何も一々うたう必要はない。その方は五百四十二号という親を殺す方の法律で念のためにうたつておけばそれで済むという考え方であります。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうなると大分考えが違つて来ます。今警察予備隊令の話が出ましたのでそれを例にとりますと、警察予備隊令は内閣委員会にかかるものだと私は考えております。そうするとこれは消滅する、これこれは効力をなくする、これは改める、改めるものは独立して出ると思いますが、こういう改正法律案として——改正というか、新しい法律というか、これは議論がありまするが、あなたの方で出される。そのときに五百四十二号で廃止するかこれは効力が残る、こういうことでそれを指摘して内閣委員会にかけるんじやないですか。かけなかつたら先ほどの議論からいうと、五百四十二号が効力を失うからほんとうはそれも失うべきものだ、しかし五百四十二号で失うかわりにこれを国内法にするんだ、こういう政府の取扱いということがないように思いますがいかがでしよう。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ちよつと話がこまかいことでたいへん恐縮でありますが、今おつしやいました五百四十二号の関係は、私の最初に申しました純理論の方から申しますと、五百四十二号は廃止されても、それに基いて正当に存立しておる政令、すなわち委任に基く政令は、親が死んでも当然には死なないと学理的には思われます。しかしそれはいろいろな考え方もありましようから、念のためにはつきりさせる意味で親を殺す法律の中でうたつておこう、すなわち親が死んでも、これに基いて発せられた命令は特に廃止されない限りは効力を有するものとする。それが元の法律七十二号の先例でありやり方であります。そういうことであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうするともう一ぺんさかのぼつて聞きましよう。五百四十二号を廃止するが、それによつて出ておるものは効力はある、こういうものを出されるときは、それはどの委員会にかけるか、それを聞いてかかればよくわかると思います。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは終局には運営委員会でおきめになることと思いますが、私どもの外部からの感じでは、その法律はおそらく法務委員会にかかるのじやないかと思います。五百四十二号を廃止する法律案は本委員会ではないかと考えておるわけであります。但しこれは運営委員会でおきめになることでしようから、外部から即断することはできません。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしますと、法務委員会でこれができるとして、それから廃止するものは廃止する、残るものは残る、それもみな一緒になるわけですね。ただかわつて出るものだけは各委員会へ出る、こう解釈してよろしゆうございますか。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ですから法務委員会について申しますれば、五百四十二号の処置に関する法律案、それから法務関係の諸政令処置に関する法律案というのと、二つ出て来ると思います。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私一番聞きたいのは、これは仮定ですけれども、そのまま効力を残そうと思われるものを法務委員会へかけるとすれば、法務委員会で、これだけ残るのだ、こう言えばあとはどこへもかけぬつもりなのか。それとも各委員会へ分離して、五百四十二号を廃止するがこれは残るのだということをかけられるのか、一番聞きたいのはこれなのです。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 手つかずに残るものはそのまま放つておいても有効なのでありますけれども、念のために一括して、それは効力を存続するものであるということを、どこかの法律で一本うたつてくれれば話はすべてわかるわけなのであります。従いましてどの法律でそれをうたうかということは、各省所管法律で一々うたうということも考えられますし、今の五百四十二号を廃止する法律案の中で、はつきりうたうことも考えられる。そのどつちかでうたつてくれればはつきりするわけであります。私どもの立法技術の方の考え方としては、五百四十二号、すなわち親を殺す法案の中で、一括してそれをうたつておけば、それで万事問題はないという考え方なのであります。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これでようやく明瞭になりましたが、そこで私御考慮を願いたいと思いますが、これは今警察予備隊令をご指摘であるが、われわれとして、今日なお重大に考えておりますのは、電気事業再編成令及び公益委員会令です。かくのごときものは勅令で出ましたがゆえ、われわれは涙をのんでただのんだ、というよりか、屈服しておるわけであります。こういうものを法律で出されるからには、国会にかけて十分国民意思を聞かれて、その上でなかつたらこれほど重大な法律はできぬものだと思う。ただ何ゆえに今日法律でなくてしたかというと、五百四十二号があるからです。五百四十二号がなかつた国会へかけて十分国民意思を聞かなければならなかつたという大原則をもとにしまするならば、この際これを残すがどうだ、こう言つて各専門の人々に審議させることが当然ではないかと思う。これは私は法務委員だから、法務委員会にかかつて来れば私もそれは審議していいか知らぬが、電気の例をとりますれば、これは通産委員会において審議すべきものである。その通産委員会審議させないで、法務委員会で十ぱ一からげに残つておると言つても、通産委員会では知る由もありません。それは見ればわかります。法規を一々めくつてみればわかるかもしれませんが、それでは私は法律審議というものに対して忠実にあらざるものでないかと考えますが、あまり議論にわたらぬ程度で御意見を伺いたいと思います。
  30. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それがこの間、さきに例に引きました法律七十二号式で行けば非常に不親切ということになります。法律七十二号はとにかく法務委員会かどこかに一箇所しかかかりませんから、ほかの委員会は全然関連を持ち得ない立場にあつたと思います。ところが今度われわれの考えております処置で行きますれば、とにかく各委員会所管関係で、議論をなさる種が法案の形で出て参ります。従いまして先ほど触れましたように、それでは電力再編成のポ政令はここに出ておらぬがどうなのかとお尋ねになることもできましようし、あるいは手つかずにこの委員会で残るものは何があるかと思います。しかしてこの五百四十二号に基く政令なるがゆえに、国会審議権が全然なかつたかどうかということにつきましては、りくつの上では私はポ政令といえども普通の委任政令であります。この間申し上げた通りに考えておりますから、ポ政令を変更する法律案といとうものを御提案になることは、理論としては自由であると申し上げてあるわけであります。しかし実際上は先ほど申し上げた通り、いろいろな関係で折衝したりして、やりにくい。ことにポ政令関係はやりにくいという事情がありました。ところが今度のことについてはそういう外部的な事情は緩和され、従来ほどにはないと思いますから、国会において法律案として御提案になることは昔ほどきゆうくつでないと考えます。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これ以上は議論になりますから私の意見だけを申し上げて、次の節の質問に譲ることにいたしますが、今おつしやつたように、なるほど調べてみればわかるかもしれませんが、電気事業再編成会をとつてみますれば、少くとも通産委員会へ行つて、これは五百四十二号を廃止したがこのままで残しておくべきものだということを、あなた方の方から出して、この際御意見があるならば十分御審議を願いたい——願いたいたいということはどうか知らぬが、そうさるべきが私は親切というよりか、当然でないかと考えます。これはこれ以上は議論になりますから申しませんが、なお今後こういうことに対しては——ことごとくとは申しませんが、少くとも国民権利義務、経済上に対する重大なる関係のあるものは、まつた勅令なるがゆえにこれはやむを得ず屈服させられておつたので、ここでひとつあなた方の意見を聞いて、そしてあなた方の意思のあるような法律にしてもらいたいという態度に出られるのが当然だと思います。これは今新しく出すとすれば当然こうならなければならぬのですから、少くともこの法律はこのまま残そうと思うと言つて、その専門の委員会にかけて、十分審議する機会を与えらるべきものと私は考えます。この点は長官によく私の意見として申し上げておきますから、もう一度御協議の上で次の機会に御答弁を願いたいと考えます。  それからついでだから申しますが、この一両日、新聞で非常にやかましく言われておりますところの、公益事業委員会に対して、廃止するとか廃止しないとかいう議論があります。私は廃止する線を聞くのでありますが、公共事業令に対して何か特にここで考えておられますか、それともこのまま残すつもりでおいでになるか、きようさしつかえなかつたら御意見を聞かしていただきたい。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の立場としては、お答えすべき事柄でもございませんが私の承知しております限りにおきましては、例の、名前はありませんが、いわゆる政令諮問委員会といわれておるもので、行政機構の改革問題を先般取上げて一応結論が出たのであります。その結論から申しますと、極力委員会制度は廃止するという建前になつておりますから、そういう答申からいえば、公益事業委員会廃止してしかるべしという意見が一つの中身となつておるということであります。従いまして、行政機構改革の問題として政府がそれを立案するについて、今の答申を参考にして研究しておるということは、これは事実であります。それがいついかなる形で実現になるかということは、まだ私どものタツチすべきところまでは参つておりません。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 公共事業令が改正になりますと、当然これと不離一体の関係にあります電気事業再編成令も改正になるものと思います。そうなれば、これはいやでも独立の法案として出るのでありますから、今私の申しますような、国会において審議をする十分な機会が与えられるので、まことにけつこうだと思います。万一そういうことがなくても、少くともこれだけは十分やられぬと、国民承知しないものであると私は考えますから、十分ひとつ御協議の上で、いずれあらためて御質問申し上げることにして、きようの質問は打切ります。
  34. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に家宅捜査に関する問題につきまして、梨木委員から発言の通告がありましたから、これを許します。梨木作次郎君。
  35. 梨木作次郎

    ○梨木委員 実は法務総裁に聞きたいと思つてつたのでありますが、法務総裁が見えておりませんから、検務局長に伺いたいと思います。九月四日の日本共産党員に対する逮捕並びに家宅捜索があつて以来、非常に大がかりな家宅捜索が全国的に行われておるのであります。われわれの調査したところによりますと、一体何の嫌疑で、これら家宅捜索が行われておるのか、まつたく了解に苦しむような乱暴な家宅捜索というものが行われておるのであります。同僚の私の方の党の議員木村榮君もその被害者として実はここに見えておるのでありまして、私が総括的に質問したあとで、なお足りない点は同僚委員の御了解を得て、委員以外の発言をお許しを願いたいと思つておるのでありますが、まず最初に聞きたいと思いますのは、たとえば十月の九日に全国八百五十一箇所にわたつて家宅捜索が行われております。それからそれだけではなく、その後頻々として何十箇所という家宅捜索が行われておるのであります。そこで九月四日以後、日本共産党に関連したいろいろな容疑事実で家宅捜索をいたした内容、幾日にはどこをどういうぐあいにやつて、その結果どのような結果が得られておるのか、これを具体的に詳細にまず御説明を願いたいと思うのであります。
  36. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま梨木委員から御質問の点でございますが、たいへん申訳ない次第でございますが、きようは質問の通告が私の方に届いておりませんので、詳細な数字あるいは事実等につきまして、資料を実は持ち合せませんので、もしよろしゆうございましたら、後到またとりまとめまして、できる範囲でお答えいたしたいと思います。
  37. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それではもう少し私の質問を明確にいたしておきますから、御調査の上御報告を願いたいと思うのであります。九月四日以後日本共産党に関連したいろいろな容疑事実で全国的に家宅捜索というものが行われております。まず九月四日以後今日まで行つた家宅捜索、これはどこをどれだけやつたかということ、これがまず第一。第二は家宅捜索の容疑事実、どういうふうな容疑で家宅捜索をした結果はどういうようになつているか。これは日と場所と氏名、これを明確にしてもらいたいと思います。私どもは新聞を通じ、あるいはこの被疑者から聞いた事実によりまする、まつたく何にも出ておらない。そういうようなところがたくさんあります。ここに参つている同僚木村榮君のところのごときも捜査をいたしまして、押収して行つたものはその後坑議によりまして全部返しておる。実際はまつたく合法的に出版されておる印刷物を持つてつている。これは全部要求したところが返しておる。これは何のために家宅捜索をしておるのかさつぱりわかりません。しかも国会中に、国会議員の家を家宅捜索するということは、これは一面から申しますならば、国会開会中におけるところの国会議員の不逮捕特権というものが憲法によつて保障されている建前からいたしましても、これは政治的に非常な慎重な考慮を払わなければならぬ問題であります、一方国会議員の家宅捜索にあたりましては、これが職務上の秘密に属することの申立がありますならば、押収することができないという現規定が刑事訴訟法に規定されておる。ところが国会議員の立会いがなくしてやつておる、こういうことが一つ。それからこの具体的な点については木村榮君からあとで皆さんの御同意を得て委員外発言を許してもらいたいと思うのですが、同僚のさらに苅田アサノ議員の方も家宅捜索を受けておるのであります。ところが苅田君のところは、これは調査してもらいたいと思うのでありますが、場所はあとで申し上げますが、とにかく岡山市の苅田アサノ議員の住居であります。これは家宅捜索を受けた人からの苅田アサノ議員までの通知でありますから、詳細な点はわかりませんが、家宅捜索に来たのは苅田アサノ議員の泊つておる、借りておる家に対する家宅捜索の令状らしいのであります。ところが苅田議員の部屋までも家宅捜索をしております。これはまことに不当なことであります。しかも苅田議員が国会議員だということが十分捜索官憲において知つておりながら、かかる不当な家宅捜索をやつておる。これらのことはまつたく不当な人権の侵害として許すことができないと思うのであります。だからこの点につきましても、苅田アサノ議員の岡山におけるところの家宅捜索の令状、これはだれに対する家宅捜索の令状で、しかも苅田アサノ議員の住居を捜索しておる事実がありますから、この点を詳細に調べて報告を願いたいと思うのであります。きようはこの点をお願いいたしまして、実は同僚の木村榮君が見えておるので、ひとつお願いいたしたいのは、委員外発言で、この家宅捜索を受けた実情をざらに訴えて、それに関する御報告をさらに詳細にお願いしたい関係上、発言を許していただきたいと思います。
  38. 押谷富三

    押谷委員長代理 この際お諮りいたします。議員木村榮君からこの問題に関しまして委員外発言の申出があります。これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければこれを許します。木村榮君。
  40. 木村榮

    ○木村榮君 貴重な時間だと思いますので、要点だけを簡単に御質問したいと思います。最初に申し上げたいことは、私の家は大体常時五名くらいの警察官が家の前後に立番をいたしておりまして、まつたくさんさんたる状態でございます。そこで私がこの議会が始まりますので、十月の七日の日に私の故郷の松江の駅を出発いたしまして東京へ出ました。そうして私の家内は所用のために八日の午後私の家を出ておつたわけなんです。そういたしますと、突如として九日の朝、私の家へ家宅捜索に参つた。そこで急遽連絡がございましたので、この間帰つて、けさ私は実情を調査して参つたわけでございますが、正式な令状を持つて来たか来ないかいうのは、私たち夫婦が出ましたあとの、正規の留守番というのは七十歳になる私の老婆だけで——弟がございますが、これは会社に勤務いたしておりますので、常時私の家におるとは限つておりません。幸いにその朝は弟がいましたので立会つたということになつておりますが、何分たくさんな人間がどやどや来ましたので、まつたく転倒して令状の内容とかその他のことがわからなかつた、こういうことを言つております。これは私の方の手落ちでございますからやむを得ませんが、そういうわけで、ここに持つて来ましたが、まつたくナンセンスのようなものを押収品として持つてつておる。事件関係は中尾佐太郎と称する者に関係してということになつておりますので、私は検察庁の方へ参つて、検事正に会うて、その状態をお話いたしましたところが、検事正が言うのには、実はあなたのお宅の家宅捜索をやつたというのは、やつてしまつた翌日になつて自分も知つた。これはたいへんなことをやつてくれたというので、実は目下実情を調査しておる。こういう話だつたわけです。そう言われますと、検事正の言うことはほんとうらしゆうございますので、その上私としては検事正に抗議を申し込むこともできませんので、そういうわけならば——自分も知らなかつた、こういうわけなんですからやむを得ぬ、押収品目はこういうものだが、これには町の書店にも売つておるようなものがあるのだが、何のためにこういうものを私の家から持つて行かれたのかということを抗弁いたしましたが、それはさつそく地検に関係ないものと認めまして、関係の検察官と相談して返しますから待つてくれというので、しばらく待つておりましたところが、全部返してくれました。ところが驚くべきことには、この私の事件をめぐつて、ある特定の一新聞社が——私の町には全国関係の大阪朝日新聞、毎日新聞などたくさんの新聞社の支局並びに私の町を中心に本社を置く新聞社もございますが、それらはほとんど書いておりません。ただ特定の一社だけが、しかも三日も経過してから三段抜きという大見出しをつけて、木村代議士宅家宅捜索さるということを大々的に報道しておる。そのことを検事正に話しましたらば、検事正がいわくには、自分が知つたのはあなたのお宅の家宅捜索を受けた翌日であつたが、これは地検の方ではあまり知らないからまず安心だと思つていた。ところが三日も経つてからこれを新聞に書いたので、まつたく私の立場上困つた、これは私が、これは政治的な陰謀ではないかと抗議をしましたが、そう言われても何とも返事ができないような状況であるということを、はつきり言つておるのです。これは川上とい弁護士を帯同して行きましたから、ただ私だけの問題ではありません。弁護士も立会いの上で、私はこのことを尋ねたわけです。こういうことであつて、どうも摩訶ふしぎなことが横行しているわけなんです。そこで議会の開会は十日からでございますから、九日は開会中ではございませんが、——これはうそだと言えばうそかもわかりませんが、わざわざ留守担当者である私の家内のおらぬときをねらつて家宅捜索をして、しかも捜索をした結果は何も得ることができなかつた。しかも弟の話を聞くと、あなたがそういうものを持つてお帰りになるのなら、兄貴が持つておる蔵書全部は大体こういうものだから、ついでだから全部持つてお帰りになつたらどうですかと言つたら、そういうわけにはいかぬ、頼むからこれだけ貸してくれ、兄さんがお帰りになつたら、借りて帰つたということを言つてくれ、こういうことを言つておる。これは明らかなんです。私が神戸に行つたら責任者として来た原田という一事務官が、実は困つた、何か持つて帰らぬと行つたことにならないので、何か持つて帰らなければいかぬと思つたけれども何も持つて帰るものがない。やむ得ずそこら辺にあつたものを持つてつた、こういうことでございますから、悪く思わないでくれ、こういうことをほんとうに言つておられたわけです。こういうことは私の町の検事正も知らない。こういう状態でどんどんやられるというのは、東京のあなた方の本家本元の方から直接木村代議士の宅をやれという指令が実際出ておるのかどうか、このことを承つておきたいと思います。
  41. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま御質問の具体的の事案につきましては、先ほどちよつと申し上げました通り、私予期しておらなかつたものでございますから、資料を全然見て参りませんでした。正確なことを申し上げかねますので、調査の上いずれ御返事申し上げることにいたしたいと思います。
  42. 木村榮

    ○木村榮君 詳細の点については御調査の上でさしつかえございませんが、その担当いたします検察庁の検事正さえも知らないということが捜査されるということになれば、これはまつたくたいへんなことだと思います。そういうことは私は法律家でございませんからよくわからぬのですが、その所管の検察庁の検事正さえも知らない間に家宅捜索をやるということになると、これは何か特殊な方法だと常識的に私がしろうと考え考えますとなるわけですが、そういうこともやつてさしつかえないわけであるし、またあり得ることだと御判定なさるかどうか。こういう点なのです。内容のこまかい点はあとで御調査くださればわかることです。これはきようは聞きますまい。ただこういう方法はやつてもさしつかえないことか、またあり得ることかいなかという点だけ御見解を承つておきたいと思います。
  43. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま突然伺いましたそのお話を法律的にちよつと判断いたしてみますと、検事正も知らないうちに身分のある方の家宅が捜査されているということは大体においてはないのが建前になつております。ただ想像いたしますのに、考えられる一つの場合といたしましては、非常に事案が複雑あるいは錯綜いたしておりまして、多数の捜査令状等が発付される場合に、たまたま氏名が羅列してあるために、つい身分ある方の分も看過されて通るというふうなこともなきにしもあらずで、これは想像でございますが考えられるのです。もう一つは、現在の訴訟法の建前で押収捜査令状の発付を求めるにつきましても、必ずしも検察庁を通さぬ場合もあり得るのでございます。さような二つの場合が想像されるのでございますが、これはいずれも私の今ちよつと考えついたことでございます。なお調査の上御返事いたしたいと思います。
  44. 木村榮

    ○木村榮君 もう一点だけ——そこで大体御答弁つて明瞭になつたわけでございますが、ただこの際もう一つ申し上げたい点は、この場合は検事正は知らなかつたが、この捜査の最高責任者として指揮をとつたのは武部と一いう公安係の検事ということになつております。だから武部という公安係の検事はそのことを知つてつたわけです。そういたしますと、たとい公安係であろうが何であろうが、これは同じ検察庁の一検事なのでございますが、これが自分の監督の立場にある検事正の方へ報告あるいはまたその他のことを時間的にやる余裕はあつたと私は思うわけなのです。その点は検事正もいささか私の前でございますから直接的な不平は漏らしませんでしたが、不可解な言葉を実は漏らしておりました。だからその同じ検察庁の中の検事は、私の家宅捜索をやることを知つてつた、しかし監督の立場にある検事正は知らなかつたということは、しろうと考え考えましても、常識的に考えた場合にちよつとおかしい。こうなつて来ますと、もはや検事正なんというものを通り越して、そういうものをまつたく問題外にして、東京の方から強力に指示してその職務を執行させるという何か特殊な、力関係と申しましようか、そういつたものが動いておるといつたふうに見ても見られぬことはないと考えたわけでありますが、この点もよく御調査願つて、これは武部検事の悪口を言うのじやございませんが、武部検事なんというもののやり方は、言語道断と申しましようか、まつたくなつていない。しかも私の方の島根県の特審局の森田という男は、おれは島根県の共産党をふるえさせておる森田という男だ、こういうあいさつをして、のこのこと家宅捜査に入つているわけで、特に島根県におきまして、そういつたふうな恐怖警察政治と申しましようか、まつたく恐怖状態におけるようなことになつておる。たまたまそういう状況の中で、私の家が家宅捜査され、しかも特定の一新聞だけ、ほかは一つも書かないで、特定の一新聞だけが大々的に報道しておる。しかも引き上げたものは、ごらんになればわかるように、まつたくナンセンスのようなものを引き上げた。返せと言つたらさつそく返す、こういう状態である。この点はひとつ厳重に御調査を願いたいと思う。
  45. 岡原昌男

    ○岡原説明員 承知いたしました。
  46. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それではさらにこの問題について調査をするに当つてお願いしておきたいのは、木村榮君のところの押収目録交付書というもので判断するのでありますが、中尾佐太郎というものに対する政令三百二十五号違反容疑事件ということで、かような家宅捜査がなされておるのであります。そこで中尾佐太郎という者に対する政令三百二十五号違反容疑事件というものの内容はどういうものなのか、これはさしつかえない限り発表してもらいたい、でないというと、こういうような大規模な家宅捜索をなすことが、真に人権の擁遊の立場を、人権を尊重する立場というものと、それからこの捜査をなすについてのけじめの公正を判断する上において非常に必要でありますから、この点を御報告願いたいと思うのであります。これが一つ。  それから先ほど申しました苅田アサノ議員のところの家宅捜索を受けたところは、岡山市上伊福絵図町三百七十五深見芳子方であります。この深見芳子さん方の家宅捜索の令状は一体どこを家宅捜索する令状になつてつたのか、この点を調査してもらいたいと思うのであります。で先ほども申しましたように全国的に八百五十一箇所を家宅捜索する、最近はきのうかおとといも四谷区内を三十何箇所か家宅捜索をしたというような新聞の記事が出ております。その中で徳田球一さんの弟さんの家も家宅捜索されたが、何にも出て来ておらないというような実情、これはもう少しわれわれ今調査を進めておりますが、この家宅捜索のやり方を見ておりますと、まつたく共産党員とおぼしき者あるいはその同調者とおぼしき者のところへ、でたらめに家宅捜索をして、何か共産党を弾圧する資料を捜索するかのごときやり方をやつておる。これは明らかに人権の蹂躙であります。こういうようなことがもし許されますといたしますならばまつたく日本の人民の基本的な人権というものが無視されたことになります。これは重大なる問題であると思うのであります。このためには、民主党の区会議員のところまでも、家宅捜索を受けて民主党の区会議員が非常に憤慨しておるという事実もあるのであります。従いまして今回なされている家宅捜索というものは、一体どういう嫌疑でなされておるかということを、詳細に岡原検務局長において御調査の上御答弁を願いたいと思うのであります。これが検務局長に対するお願いであります。
  47. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま梨木委員か、ら御要望がございましたが、御質問の趣旨よく了解いたしました。いずれ帰りました上詳細調査いたしまして、適当なる機会に御返事をいたしたいと思うのであります。
  48. 梨木作次郎

    ○梨木委員 さらにこの問題について、人権擁護局長もお見えになつておりますから、この点につきまして、九月四日以後に行われているところの、おそらく政令三百二十五号違反の容疑についての家宅捜索であろうと思うのでありますが、これは非常な不当な人権の蹂躪であると思うのでありまして、この九月四日以後に行われたところの家宅捜索の実情、これはやはり人権擁護局の立場からお調べになつて、その間におけるところの人権蹂躙の事実を御調査の上、当委員会に御報告を願いたいと思うのであります。
  49. 戸田正直

    ○戸田説明員 私の方は、まだ詳細いかなる必要から捜査されておりますか、詳しい事情はわかりません。ただ人権擁護局の立場としては、憲法の精神、あるいは刑事訴訟法の精神からして、できる限り人権を尊重してもらわなければならぬという立場に立つております。人権擁護局で捜査できます範囲で、御調査いたしたいと思います。     —————————————
  50. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に大阪拘置所問題につきまして、花村委員から発言の通告があります。これを許します。花村君。
  51. 花村四郎

    ○花村委員 今回大阪拘置所が、大阪北区の錦町にあります天満予定地に移転をするということに相なつておるという話でありまするが、大阪拘置所の移転すべきことについてはわれわれが何らの異論をさしはさむわけではありません。しかしながら移転先が天満予定地であるという意味において、大阪市民、なかんずく同地方の市民が全面的に反対をいたしておるのでありまするが、しかし市民が反対するからというてとやかく言うわけではありませんけれども、われわれが公平なる立場に立つて考えてみまする場合において、この天満予定地はきわめて不適当であるということはおそらく衆目の認めてもつて疑わざるところであろうと思うのであります。こういう場所にいかなる理由をもつて拘置所を移転しようというのであるか、これをお尋ねいたしたいのであります。言うまでもなく天満予定地と称しまする場所は、天満駅のすぐ前にある敷地でありまして、かつては工場敷地であつたという話でありまするが、この天満駅のホームよりただちに目の前に見下し得る場所である。しかも天満駅は近来非常に乗降客が多くなりまして、大阪市内における省線のうちでもその数において非常に多い駅であると称せられておるのであります。しかもその敷地の隣には天満市場がある。そうして朝早くよりこの市場が開かれて大きな声でせり売りをやつておる。さらにまたその附近には小学校もあり、中学校もある。それのみならずこの北区の錦町といいますか、その敷地に接近をいたしまして、東京の浅草にも比すべき繁華街がありまして、非常に人の交通量が多い。かような関係からいたしまして、この天満駅の乗降客の多いということもまたうなずくことができるのであります。こういう場所に移転することがはたしていいか悪いか、その天満予定地よりわずか半町余り離れて天満駅を越えた向う側には、かつて堀川という刑務所があつたそうであります。こういう繁華街の中心に、刑務所を置くことは不適当であるという意味合いからいたしまして、これを古くから他に移転をしてすでに何年かたつておる今日、なおかつその近くに拘置所をもつて行かなければならないという必要が一体どこにあるのか、まことにわれわれはいかなる観点から見ても了解に苦しむのであります。要するに拘置所というような特殊な建物は、やはりあらゆる観点から考究いたしまして、最も適当なる地へ持つて行くということが望ましいことかと思う。もちろん昔のように悪いことをしたから、それに対して自由を束縛して苦痛を与えようというような意味は毛頭ありませんけれども、しかしある意味においては社会と隔離してその性行を是正し、あるいは人格を高むる等、一面においては、教育をしてりつぱな人をつくり上げる。すなわち改過遷善の実を上げるというような意味が多分に含まれておるというような、こういう科刑の本質、使命等から考えましても、この場所の不適当でありますることは、きわめて明瞭である。大阪市民の多くが、またその地方の多くの人々がすべてをあげてこの移転に反対をいたしておるゆえんは、まことにしかるべきものでありまして、われわれも当然過ぎるほど当然であろうと思う。こういう場所にこういう市民の反対を押し切つて、しかも最も拘置所として不適当なこういう場所、ここに何がゆえんに移転をせんければならぬか、その理由をひとつ当局にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  52. 古橋浦四郎

    ○古橋説明員 拘置所は刑務所と違いまして、その性質上裁判所、検察庁あるいは弁護士会等になるべく近接している地を適当といたしまするし、なお家族その他の連絡のためにも交通の便のよい所を適当とするのでございます。従いましてこの施設につきましては、人里離れたさびしい所に拘置所が建てられておる事例はまつたくないのでございます。しかしまた他面社会のこの種の建物に対する感情というものもございまするので、その敷地を選定するにつきましては、かれこれいろいろの点を十分考慮いたしまして、最も適当な地を選定することに努めておるのでございます。大阪拘置所の今回の移転先につきましても、当局といたしましては出先の官庁に依頼いたしまして、かような点をいろいろ調査いたしまして、ある程度の調査の上に、今日許されておる限度におきまして、最もよい土地として、天満の土地を選定したような次第であります。しかしながら最初に申し上げましたようないろいろな利害相反する立場がございますので、その一面から考えれば反面に対して非常に不都合な点が現われて来るわけでございまして、私ども当局といたしましては、十分現地の方の立場にもなつて、この土地の選定をいたさなければならぬということは承知しておるのでございます。ただいまの候補地を選定いたしました方針は、以上のような考えのもとに、ただいまのところ最適の土地として選んだ次第でございます。しかしながら最近におきまして、いろいろ法務委員会の他のお言葉もございまするので、その点につきましては、さらに十分研究いたしたいと考えておるのでございます。
  53. 花村四郎

    ○花村委員 拘置所が刑務所と違うことは、これはもう申すまでもなく字を見ても明らかなのであります。明らかではありますけれども、しかし拘置所のごときは刑務所に近い性格を持つておる建物でありますることは、おそらく争いのないところであろうと思います。しかるに今局長の言葉によりますと、裁判所へ行く便、あるいは面会人、弁護士等が拘置所へ参りまする便宜の点を主として見ておられるようでありまするが、これはもつてのほかである。囚人が刑務所に行く、あるいは面会人や弁護士が面会に行く、そういう交通の便がいいか悪いかというようなことを第一義的の理由に見て、刑務所、拘置所の場所を決定するというようなことは、われわれは根本から反対なんだ。もちろん交通の不便であります山の中や、あるいは遠く離れた場所に持つて行かなければならぬというものでもありませんけれども、便利のいいに越したことはないのでありますが、しかし拘置所でありましても、やはり御承知のように相当長くつながれておる者もある。また拘置所の中には既決の囚人も相当入つておる。でありますからこういう人々の立場というものをやはりよく考えてやらなければならない。やはり少くとも拘置所中においても改過遷善の実が暗黙のうちにあげられて行き得るような設備において、あるいはまた指導において、あるいはまた教育において、すべてがやはりその方向に向つて行かなければならぬことは当然であります。面会人などの便宜がいいか悪いかなどということは、これは枝葉末節のことなんだ。そういう考えでやるとするならば、いかなる繁華街であろうとも、いかなる場所であろうとも、裁判所のそばへ持つて来ればいいということになる。裁判所と一緒に並べて建てておけばいいということになる。しかしながらおそらくそういうことは許されないでありましようし、また今日までもそういうことは一般に認められておらない、常識になつておらないのだ。そういう考えを局長が持つておるから、あの天満の予定地のごとき、ああいうとにろへ持つてつた。あんなところを適当であるとだれが考えましようか。おそらくこれは局長も考えておらぬでありましよう。見に行つたか行かないか知りませんが、見に行けば必ずわれわれに賛成するに違いない。見ずに、報告を聞いて私は説明をしておるのではないかと思うのでありますが、要するに大阪の拘置所の役人だけだと思うのだ。ほかの人は何人も反対するということは、多く言わずとも明瞭であると申し上げてよろしいと思う。でありますから局長もひとつ大阪へ行かれて、つぶさにあの予定地を見られて、われわれの主張が是であるか否であるかを判断してもらいたいということをくれぐれもお願いいたしておく次第であります。
  54. 押谷富三

    押谷委員長代理 この機会にただいま花村委員から言われました問題に関連いたしまして、私からも一言発言をいたしたいと思いますが、花村委員は大阪拘置所の移転設置の予定地であります北区錦町のあの用地は、拘置所の設置場所としては絶対不適当であるという結論を言われたのであります。あの結論を出されましたのは、当委員会においてさきにこの問題を取上げまして、委員会の申合せによつて花村調査団長を初めとして、数名の委員が現地へ参りまして、これがはたして拘置所の敷地として適しているかどうかという調査をいたしたのであります。現地で調査をいたしました結果、ただいま言われましたような結論に到達をしたのでありますが、同時に大阪の高等裁判所会議室において、大阪市、大阪府、裁判所、検察庁、拘置所関係、弁護士あるいは地元の人々、こういうような人に広くお集りを願つて懇談会を開きました結果も、ただいま花村委員から申されましたように、この用地は絶対不適当であるという結論に到達をしたのであります。またこの考え方は単に当法務委員会のみならず、参議院の法務委員会におきましても伊藤団長を初めとして、数名の現地調査団が大阪に参られまして、現地の調査を遂げられました結果、これまた今花村委員が言われましたよう諸点をあげられてあの場所は拘置所の設置場所としては絶対好もしからざる場所である、適当ではないという結論に到達をしたのであります。こうして両院の法務委員会におきましては、完全にこの場所はよろしからざる場所である、拘置所としては不適当であるという結論に到達をいたしているのでありますから、先ほど古橋矯正保護局長があの場所は最適の場所と考えて選んだごとく言われましたが、その考え方につきましては、この両院の現地調査団の意見を尊重せられまして、花村委員の言われましたように、不適当という結論が出ました今日においては、ぜひこの意見を尊重せられまして、大阪拘置所移転設置の計画につきましては再検討を加えられて、私どもの要請いたしますこの意見にひとつ御賛成をいただきまして変更せられるように、お願いをいたしたいと思います。
  55. 古橋浦四郎

    ○古橋説明員 花村委員からの御報告の御趣旨でございますが、なお私どもの方も十分研究いたしたいと思います。     —————————————
  56. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に大森事件その他につきまして猪俣委員より発言の通告がありますから、これを許します。  その前にお諮りをいたしたいことがあります。本件に関しまして田中警視総監を参考人といたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 押谷富三

    押谷委員長代理 御異議がなければさよう決定をいたします。それでは猪俣浩三君。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 たいへんお待たせいたしまして申訳ありません。田中警視総監にお尋ねいたします前に、第十国会におきまして問題に相なりました新宿の粛正問題が田中総監の適切熱心なる措置によりまして非常に効果をあげ、私たちの心配が薄らいで来たことに対しまして深く田中警視総監に敬意を表します。なおこれは継続的にやらなければ、また元のもくあみに相なるのでございますがゆえに、引続き新宿に限らず、各盛り場におきまする風紀その他につきまして、十二分なる御監督と粛正とを続行されたいとお願いいたします。これは田中警視総監の責任問題でも何でもないと思うのでありますが、ただ近ごろ新聞面にちよちよい大森事件というようなことが現われて参りました。なおこれはわれわれはなはだ驚いたことでありますけれども、茨城県下に起りましたる殺人事件の容疑者として第一審の裁判におきましても、第二審におきましても、無期懲役を言い渡された者が服役後三年たつてから真犯人が出て来て、その原因は警察において拷問を受けて自白したのであるということが明らかにされて来ておるのであります。警察及び検察庁における失態もそうであるし、裁判官におきましてもはなはだ審理不尽のそしりを免れないと存じまするけれども、その元がこの拷問に端を発し、自白を強要したということで、こともあろうに二人の人間が殺人犯で無期懲役、しかも服役をやつておる。これは実に世界にも私は例が少い事件じやないかと考えられるのであります。さような際でございますので、この人権擁護の立場から私ども事重大に考えるのであります。先般新聞の伝うるところによれば、大森警察署の警視庁警部補半谷政人と申す人間が、窃盗犯の嫌疑でつかまえましたる横塚仙吉なる者に対しまして手錠をはめたまま取調べ、取調べの途中自白を強要してなぐり、なおその上に自分の吸つているタバコの火でもつて火傷を負わす、十八日間の傷害を與えたというようなことが起りまして、今起訴され、裁判されておるということは、われわれの心を寒うするものであります。この事案につきましての真相について、当委員会に警視総監のお考えをお漏らし願いたいと思うのであります。
  59. 田中榮一

    ○田中参考人 猪俣委員からの御質問の大森署の半谷警部補の事件につきまして、私からかいつまんで事件の成行き及びその本庁といたしましてとつた措置につきまして御報告を申し上げたいと思います。  半谷警部補は大森警察署の少年防犯主任を勤務いたしておりまして、勤務につきましてはきわめて熱心で、その勤務上の成績もきわめて優秀な警察官であつたのでありまするが、非常に事に熱中すると申しまするか、非常に熱心に物事をやるというような気質の男でございます。たまたま窃盗容疑現行犯として大竹四郎こと横塚仙吉及び黒沢某という二人の容疑者を七月中旬に逮捕いたしまして、もつぱら半谷警部補が主任で取調べをいたしておつたのであります。ところがいわゆる共犯者でありまする黒沢某は、取締べに対しまして容易にその犯行の事実の一切を自供いたしたのであります。ところが主犯である大竹四郎こと横塚仙吉は頑としてその犯行事実を否認いたしまして、いかに主任が取調べをいたしましても絶対にその事実を自供いたさないのであります。たまたま七月二十三日の午後二時ごろでありましたか、引続き半谷警部補が横塚仙吉を取調べをいたしておつたのでありますが、その際にたまたま半谷警部補がタバコをのんでおりまして、そのタバコを両腕につけたことは事実でございます。これもまあ軽い意味で、お前あまりがんこに否認せずにもう共犯が自供しているんだから、どうせ否認のまま送つても証拠があがつているんだからもういいかげんで自供したらどうかという意味で、軽い意味でタバコの火を軽く——別に悪意というほどでもないのでありまして、これは本人ももちろん拷問する意思とかそういう意思は毛頭なかつたようでございます。軽くタバコをちよつとまあつけたのであります。ところが、つけたことは事実でありますので、これはまことに申訳ないことであります。で、帰りましてから同房の者に今主任からわしはタバコの火を手につけられて拷問されたというようなことを言つてつたのであります。そこでその当時それを聞いておりました看守巡査もそれを聞いておりまして、いわゆる下の方では主任がこういうことをしたということは知つてつたようでありますが、それが署長の耳まで入るのに相当期間がたつたのであります。本人は検察庁の調べがいずれあるからして、その際に自分は検事にこのことを自供して、警察官がこういう拷問行為をやつたということをひとつ報告したいということを同室の者に言つてつたそうであります。早く署長がこういうことを知りましたならば何とか措置もあつたと思うのでありますが、たまたま中間にいる者のきわめて怠慢のためにそれが署長の耳におそく達したのであります。その後検察庁において横塚仙吉が検事に対してそのことを申し立てましたので、検事からただちに署長の方に右の事実の報告があつたのであります。それに基きまして、署長も非常にびつくりいたしまして、本庁にもそれをただちに報告し、私の耳にも入つたのであります。さらに半谷警部補並びに署の関係者全部を第二方面本部長の手元において厳重に調査をいたしましたところ、半谷警部補が容疑者取調べ中にタバコの火を、別に拷問の意思というのは毛頭ないのでありますが、軽くこれをつけたということが事実が判明いたしまして、かりに軽くつけたにいたしましてもそういうことをやることは、司法警察吏員としてまつたくあるまじき行為でありまして、警察の威信を失墜することもおびただしい、かような関係から本庁といたしましては当人の半谷警部補以下関係者全員を処分するということに方針を決定いたしたのであります。その後半谷警部補は八月の、日付はちよつと覚えておりませんが、六日と心得ておりますが、まことに本人には気の毒だと思いましたが、よく本人にその趣旨を理解させて、本人をただちに懲戒免職の処分に付したのであります。そのほか署長以下関係警察官全員に対しまして、それぞれ譴責、訓告その他の処分を実施いたしたのであります。その後さらにこういう事実が発覚いたしたのであります。たまたまその日に、横塚仙吉の両腕のところに軽く蚊に食われたほどの赤くなつた傷があつたわけですが、署の運動場における喫煙の際に、これは、一定の時間留置人に毎日運動をさせることに相なつておりまして、その運動中に必ずタバコを一本ずつ与えて喫煙を許しておるのでありますが、その喫煙の際に、みずから喫煙したタバコを両手でかわるがわる傷あとにこれをなすりつけて、そうしてこの傷痕を大きくいたしました。そうしないと、検事の取調べを受けるまでにこの傷が消えてしまうと何にもならぬ。証拠がなくなつてしまうからというので、みずからタバコを腕につけておつた。そういう事実を目撃した他の容疑者がございました。いずれこの半谷警部補の件につきましては、検事局におきまして、本人について取調べをして、さらに起訴せられることになつたのであります。そうして近く公判においてこのことがいろいろ論議されるものと考えておりまするが、この容疑者がまた非常に悪質の男でありまして、さような工作までやつてつた事実が判明いたしました。これについては、半谷警部補側の弁護人から、半谷警部補に対する証人として召喚を申請いたしまして、法廷においてこの事実を十分に陳述させることになつております。しかしながら、いずれにいたしましても、司法警察吏員が容疑者の身体に対して、かりにいささかであろうとも外傷を与えるような行為をやつたことは、まことに警察官として不適当な行為であり、また司法警察吏員として不適当な行為でございまするので、私といたしましては、人権擁護の立場から、かかる措置をとることが当然正しいと考えまして、本人を一応懲戒免職にいたしまして、その他の関係者もそれぞれ処分いたしたような次第でございます。こうしたことを惹起いたしましたことは、一般警察官の威信を失墜することであり、まことに遺憾にたえない次第でありまして、また私といたしましても、まことに申訳ない次第でございます。  以上簡単でございまするが、事実の概要だけについて一応御報告を申し上げた次第であります。
  60. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 大体了承いたしました。ただこれは読売新聞か何かの論説に出ておつたのですが、どうもなぐる、けるというようなことが行われているらしい。本件は、たまたまタバコの火でもつてやけどをつくつて、証拠が残つたために問題になつたのであるが、ただなぐつただけじやほとんど取上げられなかつたであろうというような論説も書いてありました。きよう日人権尊重の叫ばれているときにおきまして、いやしくも黙否権さえ認められておる今日におきまして、なぐりつけて自白せしめるなんということは厳に戒めていただきたいと思うのであります。なおかような、警察官が取調べ中において暴力を振うというような事件は、全国的に見てどの程度でありますか。ちようど人権擁護局長も見えておられまするので承りたいと存じます。
  61. 戸田正直

    ○戸田説明員 ただいまの猪俣委員の御質問に対してお答えいたします。その前にただいまの事件でございますが、実は私の方も、この事実を知りましたのは、十月三日の朝日新聞、十月四日の読売新聞の記事によつて初めてこの事件を認知いたしたのであります。こうした民主主義の時代に、民主警察でなければならぬ特別公務員の警察官がかような暴力を振う。こういう事案が跡を絶つていないということは、人権擁護上ゆゆしい問題であり、はなはだ遺憾なことであると考えております。御質問の御趣旨とは多少離れますが、私の方でこの事実を認知いたしましたときには、すでに検察庁において取上げて起訴をいたしておつたのであります。またその警察官も懲戒免官になつておりましたので、直接調査はいたしておりませんでした。もちろん裁判がございませんとこの事実がどの程度であつたかということは、私の方としてもはつきり申し上げられないのでございますが、その後の情勢を見ておりますと、拷問いたしました警察官自体も自供いたしておるようでありますし、また、起訴せられておる事実、懲戒免官になつておるような事情からして、こういう事件が大体行われたであろうということはほぼ想像されるのであります。先ほど申し上げましたように、民主主義になりました今日でも、まだこういう事案が跡を絶つていないのでありますが、大体私の方でわかりました統計を便宜上月を区切つて御説明申し上げたいと思います。  昭和二十五年の六月から二十六年の五月まで、この一箇年間に人権擁護局で申告を受けました事件、あるいは情報認知、あるいは他の役所から移送された事件、とにかく受理しました事件が一万四百七十八件であります。ただいまのような問題になつております特別公務員による侵犯事件、これが一年間に三百八十七件であります。もちろんこの特別公務員の侵犯事件の中には、それを分類いたしますと、特別公務員の職権濫用事件——不当逮捕であるとか、逮捕状の濫用のような事案が二百八十三件、今度のような暴行凌辱というような事件が九十七件、それから特別公務員の致傷致死事件、これは主としてピストルの暴発によるような事件でありまして、これが七件、こういうような実情が統計になつておりますが、今度の大森の事件のような事件は、実は私の方で聞きました範囲でもきわめて例の少い事件であります。これはタバコの火をつけたという痕跡がありましたし、また他にも証拠がございましたし、本人も自供いたしておりますのではつきりした事案です。もちろんこういういろいろの事件の中には、あるいは、単になぐつたというような、特別公務員の暴行凌辱とかあるいは傷害の申告がございますが、今申し上げた三百八十七件がことごとくそうだとは申し上げられないのであります。御承知の新刑事訴訟法のもとにおいては、証拠によりませんとこれは断定することができません。また中には、人権擁護局を利用して、やられもせぬのにやられたと言つて申告する。あるいは尾にひれをつけて誇大に、針小棒大に申告して来るというようなものもございます。実際に人権蹂躙事件として私の方で処理する事件というものは、受理しました事件の中からは、そうたくさんはございません。私の方で大体処理しました事件の数を申し上げますと、処分勧告をいたしたのが三十七件、それから示談をいたしたのが六件、これは大体事実のあるものと見てよろしいと思います。それから不問処理しましたのが七十五件、これはちようど検察庁でいう起訴猶予というようなもので、事実はあるが、さほど大きなものでない、軽微な事件、あるいは非常に改悛の情顕著であつて事件としてもそう訴追するほどまでのものじやないのじやないかというようなこと、あるいはあるのではなかろうかと思うが、どうもはつきりしたきめ手がないというようなことで、これは不問にしなければならぬだろうというようなものが七十五件であります。特別公務員の人権侵犯事件というようなものは、今申し上げたような数字になつております。たいへん申訳ないのですが、きようはそのうち、いわゆる暴行、拷問によつたものが何件あるかということについては、実は調査して参りませんでしたので、今一括して申し上げたのでございますけれども、御了承願いたいと思います。私の方で調べましたのが、大体そのようになつておりまして、先ほども申し上げましたように、公務員がどうかすると行き過ぎて、こうした人権を侵害しておる事件がまだ跡を絶つておらないことは、それは公務員の性質上重大な問題だと思います。御承知のように、司法警察官は、一面国民の人権を擁護しなければならぬ職責を持つものであります。にもかかわらず反面こうした事件がなお跡を絶つておらないことははなはだ遺憾だと思つております。人権擁護局としましても、従来こうした事件の根絶に啓蒙宣伝等によつて努力はいたしておりますが、今後ともにこうした面も十分監視して、こういう事件が起きないようにいたしたいと思います。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実は私きよう新聞の切抜きを忘れて来まして、なお警視総監の方へ質問の通告をしていないので、あるいは御即答いただけないかもしれませんが、もし御存じならばお教え願いたい。これは今の拷問事件とは関係ないのでありますが、立川でありましたか、やつぱり刑事巡査が酔つばらつて自転車か何かを盗んで逃げた。それを自転車のおやじと友達と二人が追つかけて行つたところが、ピストルで射殺して自分も自殺したという事件、これは私は読売、朝日、毎日三つ見たんだが、三紙三様で、その原因や何かの報告が違つておる。そこでどうも何が何やらさつぱりわからぬのでありますけれども、現職の警官が二人の人間を射殺即死せしめて自分もまた自殺したということは、これは容易ならざる事件だと思うのであります。その原因その他につきまして、御存じでありましたならば、御報告願いたいと思うのであります。
  63. 田中榮一

    ○田中参考人 私も新聞で拝見した程度でございまして、このことにつきましては、立川市は自治体警察になつておりますので、自警連会長という立場におきまして、さつそく立川自警から報告をとりまして、適当な機会にまた御報告申し上げます。
  64. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからこれも二、三日前あるいは四、五日前になりますか、傷痍軍人が当国会へも参りまして、厚生省その他へ陳情に参りたい。私はちようど他に約束がありまして参られませんで、同僚石井委員が彼らを案内して、他の政党の方々も一緒に厚生省や何かに陳情に行つたのでありますが、その政府の態度がはなはだ冷淡であつたという原因もありまして、数寄屋橋のあの付近でありますが、断食をすべく集合した。人数は五十名くらいというのであります。実は大学へ行つております私の長男が、たまたま数寄屋橋へ通りかかりましたところが、黒山の人だかりであつてちようど武装警官隊が三百名ばかり来て、これを取囲んだ。そうしてこん棒で頭をなぐつて顔から血を出しておる。そうして手足の不自由な人間を検束しておる。そこで民衆が非常に気の毒がつて、何ということをするのかというて、民衆が不穏の形勢を示したところが、MPがはせつけた。そうするとその警戒の巡査が、そら今度はMPが来て、MPがやるんだぞ、まだお前らそこにいるかと言つたら、それで群衆は散つたというのであります。その後わが党の委員がこの慰問に参りましたところが、相当の負傷をしておるというのであります。厚生委員の福田委員が、築地警察署へたずねて署長に会つたのでありますが、築地警察署ではあまりタッチしておらなかつたのじやないか、丸の内警察署じやないかと思われるのでありますが、さような事態につきまして警視総監は報告を受けておられるか、その実際の問題はどうか。これは私の長男が現認して来て私に報告したのでありまして、私自身は見ておらぬのであります。しかし新聞にも、出てはおりましたが、あまり詳しくその実況は出ておらぬ。ことにMPが出て来たということも出ておらぬ。けれども現認いたしましたる私の長男は、非常に憤慨をいたしまして何としてもぼくは飛びついて組打ちしたいと思つたけれども、がまんして来たと言つております。相手は手足の不自由な傷病兵である。これが大衆の目に触れるところに、五十人の人に三百人も繰出してこういう乱闘をやつたということは、これは警察の威信から見てもゆゆしい問題だと思う。これについていかなる報告を受けておられるか、お知らせ願いたいと思います。
  65. 田中榮一

    ○田中参考人 傷痍者のデモ及びハンストの状況につきまして、簡単に御報告申し上げます。  十月十三日午前十一時ごろ衆議院面会所に集合いたしました傷痍者団体中央連合会の委員長高橋清剛以下約六十名の団体が、各党代議士に陳情いたしましたのちに、国会の南通用門外から厚生省に陳情のために参りまして、一時五十分ごろ厚生省を出発して、数寄屋橋公園に向つたのであります。二時十分ごろ、日比谷公園内から縦四尺横六尺ぐらいの幕に「断食をもつて政府に抗議する云々」と記載いたしましたプラカードを先頭に、「戦争犠牲者団結せよ」その他いろいろ標語を書きましたプラカード約十数本を掲げてデモ行進を開始いたしたのであります。そこで所轄丸の内署では、堺警部以下二十一名が出動しまして高橋執行委員長に対して、無許可デモは条例違反になるから注意してもらいたい、個々に三々五々交通してもらいたいということを警告いたしたのでありますが、なかなか聞き入れないのであります。高橋委員長は、警察官はかまうな、つつ走れというような命令を出しまして、あの日比谷の交叉点を警察官の制止を振り切つてそのままデモ隊が行進いたしたのであります。警察側といたしましても、このデモ隊が片手、片足のない不具者その他のいわゆる元の傷痍軍人の方々でありますので、もちろん実力行使をすることは極力避けまして、できるだけ納得ずくによつてできたらみずから解散するような措置をいろいろと手を尽し、言葉を尽して慫慂いたしたのでありますが、なかなか解散をいたさないのであります。そのうちに、さらにデモ隊は警察官の制止を振り切りまして、強硬なる態度で数寄屋橋公園までデモを敢行しようといたしましたので、やむを得ず、これは実力行使ではないのでありますが、数名の警察官がそのデモ隊の進行する方向に手をあげて、ここでもう帰つてもらいたい、ぜひ解散してほしいということを申したのであります。もちろん署長からは、出動の警察官は傷痍軍人であるから、いかなることがあつても絶対に手出しをしてはいかぬということを言われまして、なるべく無抵抗主義によつて、情理を尽してこれを解散させるべく努力をいたしたのであります。ところがこの制止した警察官に対しまして、一巡査部長はプラカードで頭部を殴打され、また一巡査部長はこれらの傷痍軍人のために手をかみつかれ、一巡査は頭部を殴打され、いずれも軽傷を負つております。しかしながら警察官としましては、かりにかような暴行を受けても、相手が傷痍軍人であるから、絶対にこれに対して手出しをせぬようにということで、相当隠忍自重いたしまして、制止をいたしたのであります。ところが、これらの一行は数寄屋橋公園に至りまして、公園の中に入りまして、さつそく演説を始めたのであります。その演説をやつている男は傷痍軍人の服装をしておりませんで、労働者風の服装をしておる男が盛んにアジ演説をやつておるのであります。そこで取締りの警察官が、あの地区は築地警察署の管内になつておりますので、築地の署員が取締りに当つたのでありますが、あのアジ演説をやつておる人は傷痍軍人でありますかという質問に対しまして、デモ隊の連中はあれは傷痍軍人ではありません。あれはわれわれの者ではありません。こういうはつきりした言質を得ましたので、この男は傷痍軍人ではないのでありますから、それがアジ演説をやつていることはこれは条例違反の行為でありますので、その男を一応警察としましては検挙する方針を決定いたしまして、この男をその壇上からおろさせるべく実力行使をいたしたのであります。その際にこの男を保護するために何名かの傷痍軍人の人々が警察官の手を押えたり、あるいはこれを制止したような行為がありましたが、警察はこれを振り切つて、ついにその男を数寄屋橋の交番に検挙いたしたのであります。そうこうしているうちに、相当多数の群衆——数番屋橋方面、あの付近を通行する群衆が集まりまして、群衆の中には、また警察が不当な取締りをしているというようなことをアジるような者も相当出て、参りまして、事態が相当険悪になつて参りましたので、とりあえず第一方面予備隊に築地警察から一箇中隊約六十名でありますが、六十名ほどの予備隊の出動を要請して参つたのであります。そこで予備隊はただちに六十名出動いたしまして群衆の整理並びにこれらの人々の解散をはかつたのでありまするが、なかなか解散をいたさないのであります。そこでやむを得ず安達原築地警察署長がみずから単身これらの人々の中に割つて入りまして、高橋委員長と面談をいたしまして、かくのごとき行為は公安条例の規定からまつたく違法行為である。警察としてはかかる状態をこのままにしておくわけには行かない。やむを得なければこれを検挙しなくちやならぬと思うが、諸君としてもこうした違法行為をされることはおもしろくないと思うから、この際ひとつこの場を解散してほしい、ただ諸君の要望するところはどういうことであるかということを聞いたところが、ここでハンストをしたいのだということであります。ハンストをしたければしたいで、それぞれ手続もあろうが、これはごく少数のハンストを署長の腹として容認しよう。そのかわりその他の者は全部この場をただちに解散、退去せよということを言いました。ところが、代表者はその旨を了承いたしまして、六名のハンストをやる傷痍者を残しまして、そうしてそれに介抱する付添数名を留置いたしまして、署長の命ずるままにただちに解散をいたしたような次第でございます。現在なお六名の者があの場所においてハンストを続行いたしております。かかるハンストを行うことそれ自体はまことに不適当なものでございまして、われわれといたしましても、いろいろな点から、交通取締りの上から、また社会風紀の上から、こうしたハンストが一日も早く解散されることを警察側としては願つておる次第でございます。  なおお話にございましたこれらの傷痍者に警察官が暴力によつて傷害を与えたというようなことは絶対にありません。むしろ逆に、警察官の氏名もはつきりいたしておりまするが、数名の者は逆に傷害を受けておりまして、これは丸の内署長並びに築地署長が適切にその部下に訓示を与えまして、いかなることがあつても絶対に警察官は手荒なことをしてはいかぬ、相手がいかなる行動に出ても、無抵抗主義で、これを納得ずくで行けという適切なる命令をいたしました。警察側としては、あるいは取締りの態度が今から考えて弱かつたかも存じませんが、相手がかような気の毒な不具者でありますので、警察側といたしましては、多少手ぬるかつた点はあるかも存じませんが、さような措置をとつたことについて御了承願いたいと思います。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 了承いたしました。それからこれは実は思いつきのような質問であれでありますが、警視総監お見えになつておりますから、御意見を承りたいことは、前に新聞にもたびたび出ましたが、何か共産党のシンパみたような、映画とか演劇に関係しているような組合の連中とか何とかいうものが中心になつて、女子供をまじえて、高尾山とかどこかへ懇親会みたようなことをやり、あるいは盆踊り大会をやるというようなことがあつたようでありますが、それにたとえば五百人くらいのそういう女子供をまじえたものが集まるというところに警察官が千名以上もそれを取巻くようなことがあつたようであります。私どもは何の必要があつてさようなことをしなければならぬのであるか。まあ具体的の事情を聞いてみなければわかりませんけれども、常識上から考えまして、一体女子供を交えたそんな人数の人間が、そういう盆踊りをやつてどういう危険があるのか。彼らがそういう盆踊りを名義にして、共産党の何か秘密な相談でもしてはならぬというのならば、これまた査察はしなければならないでありましようが、それこそ私服刑事なりその他の人たちが情報をとりに行つておればいいわけである。しかるにそういう二倍も三倍もの武装警官を配置するということになると、彼ら自身が何かそこに暴動を起すのじやないかという予感からおやりになると考えるのでありますけれども、これは私どもどうも常識に当てはまらぬのであります。女子供を交えました、そんな五百人ばかりの者が一体どういう暴動を起して、何をするか、それを追つとり刀で取巻くということが必要であろうかどうか。どのくらい経費を使うか知りませんが、たいへんな経費がいるのじやないか。千何百人のお巡りさんがそこへ張番に行つて、そこで盆踊りをやつたり、余興をやつているのを一日ぽかんとながめているという始末である。何の意味があるのであるか。私は今でも解せないのであります。一体どういう必要があつて、さような警戒をやらなければならぬのであるか。まあそのついでに警察官にものんびりさせようという趣旨ならまだ意味がわかるのでありますけれども、こんなピクニックの連中をまるで警察官が取巻くようなことをやる必要が一体どこにあるのか、それを承りたい。
  67. 田中榮一

    ○田中参考人 先般のことは、実は警視庁の管内でもございませんし、これは国警管内のことでございますので、私からお答えするのは不適当であるかと存じますが、但しこうしたことにつきまして、私どもの考えておることだけを申し上げまして、答弁にかえたいと思います。  もちろん共産党であろうが、どういうものでありましようが、純然たる、いわゆる厚生運動といいますかレクリエーシヨンのために、男女老弱の者が相集まつて楽しく行動をする、いろいろ運動をしたり、あるいは娯楽をやつたり、そうして心身の休養をとるということにつきましては、何ら警察がこれに対して関与する必要のないことは、はつきりした事実でございます。但し私の考えるところでは、少くとも国警があれだけの動員をかけまして、その集会を監視したにつきましては、それ相当な理由があつてのことであろうと私は考えております。最近の情報によりまするといろいろとこのレクリエーシヨン運動に名をかりまして、警戒手薄の地方に多数の者が集合いたしまして、そこである団体的の行動をとる。しかしそれが女子供であろうが、ある政治的の意図をもつてかかる団体的の行動をとるということは、われわれから言いますると、いわゆる一歩手前の革命運動の訓練ではないかと一応考えられるのも、これは警察側の見方としては私は無理ないと考えるのであります。従いまして今回のあの御岳山方面のレクリエーシヨン運動がほんとうにレクリエーシヨン運動であつたか、あるいは政治的行動、政治的目的のもとになされたレクリエーシヨン運動であつたかどうかは私は存じませんけれども、少くとも国警があれだけの経費と人員を使つて警戒された点につきましては、相当確実なる政治的の目的のもとに集合された一つのレクリエーシヨン運動であろう。しかもその集会そのものが、かりに老弱男女の区別のいかんを問わず、かかる政治的目的のもとに集合したとすれば、警察としてこれを警戒するのは、私は警察の当然の任務であろう、かように考えております。これは単に私の私見でありまして、また事実につきましては、ひとつ国警長官からお聞きとり願いたいと思います。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは国警側のやつたことだそうでありますから、いずれ国警側の方々の御説明を聞きたいと思います。まあ田中さんの御意見でありますが、どうも私どもは少しそういう御意見がおかしいと思うのであります。四、五百人の男女が集まつて革命の予行運動をやるというような認定のもとにやるということでありますが、現在の警察の整いました今日、終戦直後であつたらいざ知らず、なお進駐軍もM・Pもいます今日、そういうものが一体ほんとうに治安を害するような、そこに実際的な活動ができるとは考えない。何か予行運動をやるようなことに対して妨害をしたいならば、これはまたいろいろ方法があると思うのであります。何倍かの千人、二千人の警察官を繰り出して、まるで彼らに翻弄されるようなことを数回やつておる。そのたびにおびただしい費用を使つておるだろうと思う。しかしこれは警視総監が言われたように、またそこに底のある原因があるかも存じませんから、今ここで論じてもしかたがありませんから、これは打切ります。  私の警察側に対しまする質問は、これで終ります。
  69. 押谷富三

    押谷委員長代理 次に警察予備隊汚職事件に関しまして、猪俣君より発言の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はまつたく意味の違うことを二つお尋ねしたいと思うのであります。一つは、今新聞に出ておりまするところの警察予備隊に関しまするいわゆる涜職の事件、これは警察予備隊本部の総隊総監部の二等警察正と申しますか、この大沢雅雄という人物、こういう者に関係いたしまする涜職事件の真相は一体どういうことでありますか、それをひとつ承りたい。
  71. 江口見登留

    ○江口説明員 新聞で、元二等警察正大沢雅雄に関しまする汚職の容疑が記載されております。こういう容疑を受けますることははなはだ申訳ない次第でございます。今年の一月ごろに、新聞にも書かれておりますように、腕章を注文するということになつたのであります。その際この大沢元二等警察正は補給課のそういう係の主任をいたしておりました。この大沢係長に対しましてその腕章を必要とする検務課という、その仕事を実際にやつております総隊総監部の課がございますが、その課の方から腕章の注文をしてもらいたいという要請をいたしたのであります。ところでこの補給課の大沢二等警察正は、まずそれを注文するためには、いろいろな資料をつくらなければならない、どういう形式で、どういう厚さで、どういう幅のものにしてということで、それを注文しようとしておりましたところ、ある業者がそれを聞きまして、事実上自分のところでかつてに見本をつくつたのであります。その見本を大沢二正のところへ持つて参りまして、これでひとつ私の方の会社に注文してもらいたいという申出があつたようであります。しかしもちろんその実際の調達はその補給課でやるのではないのであります。別に管理部という部がありましてそこへ補給課から調達要求をさらにするのであります。その管理部の方では今年の一月から三月にかけましてきわめて多忙に、いろんな物資の調達をやらなければならぬ事情がありました関係上、その管理部においてそれを取上げて注文をすることが非常に遅れたのであります。ところがその間に、それは中川メリヤス——新聞にも出ておりますが、そこの業者がすでに見本以上に進んで実際の腕章をつくつてしまつたのであります。ところがその管理部の方ではいまだ発注する手続がとれない間におりまするときに、だんだん年度末も近づいて参りまするし、三月中に計画のまとまつたもの三十数億の発注をいたしたのでありますが、やはりその一つの部門としてそれでは腕章も取上げることにしようということで、腕章の注文にかかろうとしました。ところがすでに実は中川メリヤスの方でその腕章を二千本つくつておる。これを今からあらためて業者を集めて見積りをとつて注文に渡したのでは遅くなるからそれではそのでき上つておるのを買おうかということになりまして、値段も調べてみましたところ、それほど不都合な値段ではないということがわかつたので、その中川メリヤスでつくつておりました腕章を随意契約の形において購入いたしたのであります。その際いろいろ部内からもどうもいかがわしいことがありはせぬかということが隊員の間にも口の端に上るようになりましたので、総隊総監部の監察課におきましていろいろと調べてみたのでありまするが、その大沢雅雄がその業者を通じて収賄しておるというような事実はないかどうかも調べてみましたが、大沢二正はもちろんその収賄事実を否認しておりました。しかしながらこの中川メリヤスの東京における代弁者である中西順子という女と数回にわたつて飲食を共にしておりまするし、かなり深入りしておるという事情がわかりましたので、九月三十日付をもつて同人を免職にいたしたのであります。その後新聞に出ておるようなことになりまして、ただいま検察庁の方で取調べ中でありますので、どの程度犯罪容疑が出て参りますか、私どもとしてはそれを今つまびらかにしていない次第であります。
  72. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 どうも巷間この予備隊の事件は実は非常に上層部までに及んでおるということを言われておるのであります。この中西順子なるものが警察へ護送の途中で——毎日新聞の記者に話しましたことで、真偽のほどはわかりませんが、驚くべきことを言うておる。「予備隊の物資納入には女性が非常な活躍をしているが……」といつたら「その通りだ。普通の官庁では指定業者を選ぶのに一応書類を慎重審査するが、予備隊のは違う。各業者が封筒に必要書類を入れて係官に提出しておく。するといつの間にか隊員が開封して入札の一番安値をそつと教えてくれる。そうなると何とかあいさつせざるを得なくなるのが人情だ」こう中西という女が言つておる。「すると業者は一体どのらくいの金を使つているか」、答えとして「最低百万円くらい。最高は二、三千万円くらいばらまいている。そのお礼としてその会社は一億円ほどもうけている。大きな会社になるとみな予備隊工作係が数名いて饗応は毎晩のようです」「あなたが利用した場所は」と聞いたら「赤坂、柳橋、築地、どこへでも行つてますよ」こういうふうに答えております。これは新聞記事でありまするから、われわれこれを信ずるわけではありませんけれども、話半分としてもたいへんなものである。今私のお尋ねいたしたいことは、この予備隊の被服の関係でありますが、これは一体どういう手続で購入なさつておられるのでありますか。
  73. 江口見登留

    ○江口説明員 被服の注文が非常に多いのでありまして、新らしい役所でありまするので、どういう調達形式をとつたらいいかということについて非常に慎重に協議をいたしました結果、通産省あるいは安本あるいは司令部関係、いろいろと連絡をとりまして、今年の初めだつたと思いまするが、非常にたくさんな業者がありまするので、その中から非常に確実な業者だけを選んで、それらの者をいわゆる指定商人にして、それらに競争させて請負わせたらどうだろうということになりまして、今年の初めには約百数十社の繊維関係の業者を指定したのであります。その指定の仕方は、資本金がいくらであるとか、税金をどのくらい納めているとか、ミシン台数がどのくらいあるとか、実績がどのくらいつくれるとか、労働者が何人おるとか、非常に細かい表をつくりまして、それを点数制にしてはじき出して、上の方のランクから百数十社を選んだのであります。ところがそれはもともと役所の物の購入という点から申しますると、ほんとうは適当な措置ではないのでありまして、ただでも入札に加わる者がおりますならば、一般競争入札に付してやるのが当然ではあつたのでありまするが、当初はそういう不安がありましたので、インチキな業者が入つてあとをしり切れとんぼにするというようなことがあつては困りますので、そういう指定商制度をとつたのであります。それで今年の九月半ばごろまでこの制度をとつて参りましたところが、やはり草々の間にこれだけの業者を指定したのでありますために、その指定から漏れた業者で非常に有力な確実な業者があるにかかわらず、それが落ちておる。それからまたこの指定業者に請負わしたところが、その中にはなはだおもしろくない、つまり納期を非常に遅らしたり、地質を見本より非常に落したりするような不都合なものもありましたし、これではやはり一般競争入札にした方がいいのかなというようなことも考えられまして、今年の九月半ばころからの繊維類の発注につきましては、その指定商制度を取消しまして、一般競争入札でやりました。その一般競争入札でやりました結果は、今のところまだそれに伴う弊害は現われておりません。むしろ予算よりも安く買えるという利点だけはただいま出ておるのであります。将来どういう制度で行くかということにつきましては、そういう指定商制度もとつてみ、あるいは一般競争入札制度にもよつても見、いろいろ彼此勘案いたしました結果、また適当な方法があれば、鉄道その他国警あたりでやつておりまするような方法に持つて行きまするかどうか、そういう点について、将来のことはまだ研究中でございまするが、今振りかわつて一般競争入札をやつておりまする現在では、まあまあこの程度ならばけつこうではないかというように考えております。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今九月になつてからとその前とは違つたやり方でやられたようでありますが、その最初のやり方はいつごろから始まつたわけですか。
  75. 江口見登留

    ○江口説明員 今年の一月から始まつたのであります。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 一月から九月ごろまではその百十数社を指定してやつた。今日は一般入札になつた
  77. 江口見登留

    ○江口説明員 そういうことでございます。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 江口次長は非常に厳重にそういうことに対してやつておられることは、私ども聞いて信頼をいたしておるのでありまするが、この一月から九月までに百十数社指定した、その際においてどうもいろいろなことがあつたのじやないかと疑われることが実は耳に入るのであります。どうか次長におかれましては、私はこれ以上申しません、まだこれは裁判中でもありまするし、私どもの方でも的確な材料をもつてあなたに質問するわけに参りませんが、どうも少しもやもやしている点があるので、これは江口さんの手におきまして、徹底的に調査して粛正していただきたいことを注文いたしまして、この問題はこれで打切りたいと思います。  それから第二といたしましては、今も実は講和条約の特別委員会で、芦田均氏が吉田総理に質問いたしておつたのでありますが、警察予備隊は軍隊になつたのではないかというのであります。私は新潟県の高田が自分の選挙の地盤でありまして、私の事務所があるのでありますが、とにかく予備隊が行進するときは、例のラツパを吹いて行進なさる。それはいいのでありますが、先般、お耳に入つているかもしれませんけれども、射的場があるのです。二師団がおりましたところの射的場で何か射的の練習をなさつておる。そこに不発弾があつて、それを夜陰に親子四人連れが行つて盗み出して、それが爆発して四人一ぺんに死んだという事件があつた。それがバズーカ砲の不発弾だということがわかつた。そうすると、そこでそのバズーカ砲なるものの練習をやつてつたのです。ところが高田におりまする中頸城の県庁の出張所長が私にこぼしまして、元あの関山附近に連隊の大砲の実弾射撃場があつた。それが全部開放されまして、今開拓団が二百三十世帯ばかり入つておる。それを予備隊がまた貸してくれと言つて来た。ここを大砲の演習場にしなければならぬから、ぜひ立ちのいて貸してくれということで今悶着が起つております。そうすると、一体バズーカ砲を持ち、大砲を打つて練習をする警察というものがあり得るだろうか。それでも警察なんだろうか。それが警察であるならば、一体この警察予備隊の教育はいかなることを目標にし、どういう教育をなさつておるのかということを私は承りたいと思う。実は軍隊でありながら、これを警察だと称することは脱法行為であります。越権行為であります。憲法違反の行動だと思う。さようなことが許されるということは、容易ならざることであります。憲法の尊厳を害するものであると思うのであります。でありまするから、警察であろうとは思いますけれども、警察にしてはあまりにやることがどうも私どもふに落ちない。そこで現在の警察はそんな大砲の練習までしなければならぬものかどうか。部隊の組織の中に大砲の練習をするような警察というものが世界にありましようか。そういうことをひとつ承りたい。
  79. 江口見登留

    ○江口説明員 警察予備隊はただいまのところあくまで警察だという考えで進んでおります。ただこの目的が国警、自治警の手に負えないような内乱、暴動というようなものが起つた際に、それを鎮圧するということが目的でありまするので、数は少うございまするが、装備は相当今の警察よりも高度のものを備えなければならぬということは、どなたもおわかりではなかろうかと思うのであります。ただいまのお話の中に大砲を使う警察というものがあるだろうかというお話でありまするが、大砲は使つておりません。大砲と申しましても口径どのくらい以上のものを大砲というか、どうかということになりまするが、いやしくも大砲と称せられるようなものはただいま使つておりません。バズーカ砲といつても口径がこのくらいのものであります。そうして長さはこのくらいのものでありまして、非常に小さなバズーカ砲であります。これは人を殺傷することが主たる目的ではないのであります。バリケードを築いておる、そのバリケードをこわすとか、あるいはかたい建物を占拠しておる、その建物の窓のところをこわす程度のバズーカ砲であります。私どもはあくまでも非常に強力な警察隊である、その点でもまた一人一人が警察事務を執行するのと違つて部隊行動をとるという点に警察予備隊の主目的があるわけでありますので、部隊行動をとるために、また非常に強力な警察であるためにその程度の武器は私は持つてさしつかえないものではないか、かように考えます。
  80. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今のあなたのお話を聞けば、山砲だろうと思いますが、そういう計画はないというお話であります。そうすると、地方事務所長が非常に弱つておりました。この八月、予備隊ではどうしても富士のすそ野と新潟県の関山付近が一番山砲の実弾射撃にいい場所であるから、どうしてもあそこは実弾射撃場にしなければならぬ。ところが片一方、開拓団が入つておる。開拓団は、今度はいつ予備隊にとられるかわからぬからというので開拓の意思は衰えてしまう。一体どうするのだといつて、地方事務所長は弱つておりまして、私にも相談があつた。一体そういう山砲なりその他の大砲なりを予備隊で練習なさる意思がないならば、高田にいる予備隊の言うことは何であるか、不可解です。さようなことであるならば、地方事務所長に対しましても、私どもはそんなものはけ飛ばしてしまえと言うことが一ぺんにできるのであります。そういうような大砲の、それが山砲であるか曲射砲であるかわかりませんが、昔いわゆる大砲なるものの実弾射撃場として使つてつたその場所で普通の小銃の射撃を今やつております。例のバズーカ砲やその他の小銃の練習に五十八連隊がやつてつた場所をそのまま使つております。そうして富士のすそ野とそこだけが理想的だと言われ、山砲なりあるいはどういう大砲でありますか、大砲であることに間違いない。そこで実弾射撃場が必要なので、それで地方事務所長は弱つておる。そうするとあなたの方ではそういうようなことは全然計画はないのですか。
  81. 江口見登留

    ○江口説明員 ただいままでは迫撃砲とバズーカ砲ほどの武器しか持つておりません。これ以上どの程度の武器を持つかということは、ここでは私は言明できません。高田の付近でそういう話が出たとすれば、そういうふうになるかもしれない、そうすると相当広い訓練場がいるということで話をされているのかもしれません。昔と違いまして、非常に自動車の装備も進んでおりますので、昔の訓練場以上に広い訓練場がいるということは想像されます。関山の訓練場はどのくらいの広さか存じませんが、将来そういうようなこともあるかもしれないから、そういう所が欲しい、せわをしてくれぬかという依頼をしておるのかもしれません。開拓民が入つておるようなところを訓練場に貸してもらうことについては、円満に事情を了承していただいた上でその土地を使わしてもらうということにいたしておりますので、昔のように強制的に補償も何もせずに立ちのかせるということは、現在の予備隊としては考えておりません。
  82. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それはわかりましたが、まだ本隊で考えていないことを、そんなことに使うのじやないかといつてそういう交渉をやるということは、少し先走つておると思う。それが真実なら、そんなことは本隊は何も考えておらぬ、貸す必要はないという回答をさせますが、これはあなたの方でも確かめていただきたい。今事実困つておるのです。そうしてとにかく小銃の射撃なんかもやりますが、昔の軍隊のようにきちんとしてやればいいけれども、乱暴にやつて、実に危険千万である。今言つたような不発弾もぐちやぐちやのままで集めて、小さい標札をちよつと立てて、柵を結うわけでもない、何かでおおうわけでもない、裸のままでそこに不発弾を置いてある。夜行くと見えないのです。それを盗みに行くのは悪いやつで、自業自得でありますけれども、子供でも何でも自由にそこに行ける。昔はそんなことはなかつたのですが、それを盗んで来て、それが爆発して四人一ぺんに死んだ。バズーカ砲はそう大きいものではないというが、小銃弾が爆発して四人一ぺんに死ぬということはないと思う。そういうことが高田で起つたのです。そうして隊長にも私は言つて、不始末じやないか、隊長はこつちはちつとも不始末ではない、盗みに来るやつが悪いのだ——盗みに来るやつは悪いのでありますけれども、盗みに来ても、そういうことの危険のないようにしてもらうことが、やはり予備隊としては考えなければならぬことだと思うのであります。いずれにいたしましても、これは警察で、どこまでも警察だとおつしやられればそうでありますが、そうすると、私はいつだかも質問したのでありますが、一体警察であるけれども普通の警察とは違う。それは了解できる。しかし警察精神というものは同じでなければならない。警察法のあの警察精神でなければならないのでありますから、そういう警察精神の教育というものは、これは一元的にしないといけない。自治体警察も、国家警察も、警察予備隊も一緒に警察大学に入れて、そうして警察精神を教育する。それがまた将来なわ張り争いをなくする一つの方法でもあるし、この三者の連絡を緊密にする方法でもあるからして、警察法にのつとつて警察大学をつくつて、そこへ警察予備隊の人たちを入れたらどうかという質問を私はしたのでありますが、江口さんはそういうお考えはありませんか。
  83. 江口見登留

    ○江口説明員 ちよつと、ただいまの高田の訓練場の問題ですが、訓練場がほしいことは事実なんでございます。その理由に大砲などという言葉を出すのははなはだこれは先走つたことだと思いますので、訓練場の入手については、地元の猪俣さんも反対なされないようにしかるべく御後援願いたいと思います。  それから警察精神でございますが、警察である以上は警察大学などを普通の国警や自治警と同じように利用して、そこでいわゆる警察精神の教育をやつたらいいのじやないかというお話です。確かにこの前の国会でも猪俣さんからお聞きしましたが、やはり警察予備隊は特殊の警察隊でありますので、普通の警察官のように個人々々が警察事務をとるというようなことを主眼として教育をするということは、警察予備隊については向かないのではないかと考えております。常に部隊行動をとるという種類のものでなければいかぬので、警察大学を利用して、今の警察で行われているような中身と同じような教育をすることはいかがであろうか。その点が非常に特色でありますので、もしそういう教育施設を持ちますならば、別に施設を持つた上で、あるいはそういう精神的共通点を強調するという点では同じ精神でこれに当るというふうにした方がいいのではないか、かように考えております。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今広い練習場が入り用だから申し込んでおるのじやないか、あなたはそう考えるのは無理もないことでありますが、こちらは広い師団のある跡でありますから、そこは大砲練習場の特殊な所である。それだから向うでも正直に大砲と言つたのでしよう。あなたは否認なさるならそれでもいい。  それから、警察大学に入れない、特殊のものだから特殊の教育、これは意見が違いますけれども、さような方法でなさるならやむを得ないのでありますが、最近追放解除されたような旧陸海軍人が多数警察予備隊に入つておる。その者たちと在来から予備隊にいる者たちとの間がどうも円満を欠いているといううわさもあるのですが実情はどうですか。
  85. 江口見登留

    ○江口説明員 昨年の秋に追放解除になりました旧陸士、海兵出身者で非常に若い連中を二百五十名ばかり今年の八月に総隊学校に付属しております久里浜の学校に入れまして、二箇月の教育を受けて後、各部隊に配属いたしました。これらは年齢は二十五から二十八くらいのものであります。これらの者のここ数箇月間にわたる部隊における勤務ぶりを聞いてみますと、これらのものと従来から入つている連中の間にいざこざがあるということも聞いておりません。非常に張り切つて、みんなの中に溶け込もうとして適切に警察予備隊の職務に精励しているようでございます。御心配なのは、最近採用いたしました元の中佐、少佐級の陸海軍の将校で、それを予備隊の警察士長ないし一等警察正にとりまして、今久里浜の総隊学校に入れて二箇月の準備教育を施しておる最中でありますが、これらは十二月初めに卒業しまして各部隊に配属されることになります。ただいまの御心配はわれわれも心配しておるところでありますが、それから後にそれらと従来おつたものとの折合いはどうなるかということでございます。しかしながらただいま久里浜に入つておりまする総隊学校の勉強の仕方なり、物の考え方なりをいろいろと匿名で感想録を出さしておりますが、それらを読んでみましても、何と申しますか七万五千の一隊員として溶け込もうとしている気持が強く現われております。昔の自分たちがとつた行動については多分に反省的ないろいろな現われがありまして、従いまして十二月にこれらの人々を久里浜から出して部隊に配属いたしましても、極力従来の隊員と溶け込もうとしておることは私ども見られるものと考えております。十二月から先どういうふうな状態で推移しますかは、われわれも苦慮しておるところでありますが、それほど心配するほどのこともないのではないかと、かように考えております。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 終りました。
  87. 大西正男

    ○大西(正)委員 今の猪俣さんの質問関連して私いずれ詳しくお尋ねいたしたいと思つてつたところでありますが、例のバズーカ砲、それから迫撃砲の問題、これは十二日でしたかの新聞によつて明白に発表になつてつたのでありますが、あれは間違いないのでありますか。
  88. 江口見登留

    ○江口説明員 増原長官が新聞に発表した通りであります。
  89. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうしますとバズーカ砲というのは大体われわれの理解しているところでは対戦車砲というのですか、戦車をくじくための武器だと、こういうふうに解釈しておるのであります。それから迫撃砲というのは今持つているのはどの程度の迫撃砲なのですか。
  90. 江口見登留

    ○江口説明員 口径の数字ははつきり覚えておりませんが、このくらいの小さいものであります。バズーカも迫撃もこのくらいのものであります。私は陸軍の昔の武器は存じませんが、それらに比べますとそう大したものではない。もちろん薄い装甲車あたりをバズーカ砲で撃ち抜くことはできるでしようが、対戦車砲と申し上げるにははなはだ貧弱なものでありますが、バリケード、建物をこわすという爆弾みたようなものでない、窓のところをこわして行くとか、その程度の作用しか持つていないものと考えます。
  91. 大西正男

    ○大西(正)委員 それからこの前の国会のときに猪俣委員からもお尋ねがありましたし、私からもお尋ねしたことでありましたが、機関銃を練習用に使つているということが最後の御発表にあつたのでありますが、その後機関銃はどうなつておりますか。
  92. 江口見登留

    ○江口説明員 機関銃も使つております。ただいまあります武器は最初にカービン銃というものが参りました。これは短かい騎銃、それから最近にライフルが入つております。ライフルと申しますと三八式と申しますかあれくらい重たい。騎銃の方は軽いのであります。入つたライフルと同じ数だけのカービン銃はアメリカが持ち帰つた。すべて武器は借りているので、その後機関銃が入り、最近バズーカ砲と迫撃砲が入つた
  93. 大西正男

    ○大西(正)委員 もう一点だけお伺いしますが、それらの武器というものは鎮圧用というのでありまするか、一体具体的にどうお扱いになるものか。そうして具体的なものにお使いになるについての法的基礎があるのかどうか、どう考えるか、この点だけ……。
  94. 江口見登留

    ○江口説明員 そういうものを使わないで済めばこれに越したことはないのでござざいまして、非常に頭の中で考えたような物の言い方をしなければならない。やはり国内の暴動というものの、武器を伴うような暴動が絶対あり得ないと考えられない。それだけ用意しておく必要があるのではないかということで、それでその程度の武器は持つてつた方がよかろうということで、それらのものをアメリカから借りているわけであります。
  95. 大西正男

    ○大西(正)委員 それを使うについての法的根拠はありますか。
  96. 江口見登留

    ○江口説明員 それは猪俣さんがこの前お述べになりました警察官吏武器使用規程、あれによつております。
  97. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでいいと今もお考えになつておりますか。
  98. 江口見登留

    ○江口説明員 そうであります。
  99. 押谷富三

    押谷委員長代理 本日はこの程度にいたし、次会の期日は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十分散会