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1951-10-23 第12回国会 衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十三日(火曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 田中 萬逸君    理事 北澤 直吉君 理事 倉石 忠雄君    理事 島村 一郎君 理事 竹尾  弌君    理事 笹森 順造君 理事 並木 芳雄君       池田正之輔君    石原 圓吉君       石原  登君    小川原政信君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       近藤 鶴代君    佐瀬 昌三君       鈴木 正文君    田嶋 好文君       田渕 光一君    仲内 憲治君       中山 マサ君    西村 久之君       西村 直己君    原 健三郎君       福田 篤泰君    藤枝 泉介君       守島 伍郎君    若林 義孝君       小川 半次君    中曽根康弘君       山本 利壽君    吉田  安君       猪俣 浩三君    林  百郎君       米原  昶君    中村 寅太君       黒田 寿男君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君     ――――――――――――― 十月二十三日  委員麻生太賀吉君辞任につき、その補欠として  橘直治君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)     ―――――――――――――
  2. 田中萬逸

    田中委員長 会議を開きます。  本日は安全保障條約及び交換公文に対する逐条の質疑を行うことといたします。  まず安全保障條約の前文及び交換公文を合せて議題に供します。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 この安全保障條約が世界最大強国であるアメリカ日本とで締結されましたことは、何と申しましても日本外交一大成果であると考えておる次第でございます。過般同僚黒田君が指摘せられたように、日本韓国との併合前における条約と酷似しておるそれでもつて危険であるといつたようなことは、われわれの常識でとうてい考えることができないことであります。アメリカ日本を併呑しようなどという考えがあろうはずがない。日本を併呑する考えがあるならば、アメリカフイリピンをも離しはしません。キユーバをも独立をさせないと思うのであります。この心配は絶対に御無用であると私は考えるのであります。でありますが、あまりにこの條約が簡単でありまして、わずかに五箇條にすぎない。しかも米軍日本を守るという義務が、明確に規定されてない、こういう点、われわれ多少の不満を感ずる次第でありますが、これでは第三国軍侵入にあたりまして、米国軍がこれと戦うところの法的根拠があるかないかということも一応疑われるし、これと戦うと戦わざるとは、米軍の自由であるというような解釈もできるわけでありますが、われわれは米国の信義に信頼いたしまして、彼らが侵入軍に対して戦われぬということは絶対に想像することはできないのでありますが、しかしながら条文においては、どつちでも自由であるというように解釈が下されるのであります。かつてロイヤル長官の時代におきまして、日本アメリカ防衛拠点としては価値なきものであるというような言説が行われたこともありまするし、これに加えてアメリカの輿論というものは、常にねこの目のごとくかわつてしまう、こういう点に考え合せまして、この條約は将来もし日本軍備が――もしではない、まあできるでありましようが、軍備ができましたときにおきましては、この條約を修正する必要があるのではないかと考える次第であります。まずこの條約の中に米軍日本を守り抜く義務規定されておるかどうか、このことにつきまして条約局長の御見解を一通りお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点につきましては、もう二回ばかり御説明申し上げてあるところでございます。同じことを繰返すことになりますが、いま一度御説明申し上げます。  この條約をごらんになりますと、前文日本が、日本に対する外部からの武力攻撃に対して、日本防衛するために、合衆国において軍隊国内及び付近に置いてもらいたいという希望を表明いたしまして、この希望に対応しまして合衆国の方におきまして、前文の第四項にあります通り世界の平和と安全のために日本に兵隊を置くということを応諾しておるわけであります。合衆国ともあるものが日本希望に応じて兵を置いておる以上は、こちらの希望の原因となりまするような事態が発生しました場合に、その兵によつて防いでくれるということは、当然インプライしておる次第でございます。また條約の第四條を見ましても、この條約は暫定的なものでありまして、国際連合措置なり、またはその他の安全保障とりきめによりまして、日本地域の平和と安定が確保されたと両国政府で認めたときには、それによつてつてかわられるということになつております。従つてそれに至るまでの間は、この暫定とりきめによつて日本地域における平和と安全は確保されるという趣旨がはつきり出ておるわけであります。この二つから見ましても、私どもとして武力攻撃日本に対して加えられた場合には、日本国内におる合衆国軍隊はこれを阻止してくれるということについて、何ら疑惑を持つ必要はないと思うわけであります。菊池委員は一歩進んでこの條約文面に、日本に対する武力攻撃が起つた場合には、合衆国は必ずこれを阻止するという義務規定を置くべきではなかろうか、こういう御意見でございます。ごもつともな御意見だと思うのであります。しかし合衆国といたしましては、これまた毎々御説明申し上げました通り、そういうふうな恒久的な安全保障とりきめの條約を結ぶことは、相手国が永久的な、かつ効果的な自助及び相互援助をなし得る国家の場合に限られておる次第であります。ヴアンデンバーグ決議はそれであります。それでありますので、日本のように憲法軍備を持たないし、また交戦権を放棄しておるという国、言いかえれば自衛の権利はありましても、これを行使するための有効な手段を持たない国は、合衆国との間に、ヴアンデンバーグ決議が予見しておるような有効な恒常的な相互援助の條約関係に入り得ないわけであります。自然條約上にはつきりと義務規定として規定することを得ない立場にあるわけであります。さらにまた議論を進めますと、しからばヴアンデンバーグ決議によつて合衆国恒久的な安全保障のとりきめに入り得る国との條約面におきまする規定を見ましても、たとえば最も典型的だといわれております北大西洋條約の場合には、締約国は他の締約国に対する武力攻撃が発生した場合には、兵力行使を含み、その必要と認める一切の措置をとつてお互いに援助するという規定になつております。必ず兵を動かして防止するというのではなくして、必要な措置一つとして兵力行使も去るという規定方法になつております。この條約が合衆国の上院で審議まれましたときに、これが合衆国憲法上いいかどうかということで論議の的になつたことは御承知通りであります。結局憲法用兵権は国会にあるのか、それとも大統領にあるかという論点から、同條約の第五條が大いに議論の的になつたといういきさつがございます。従つてその後の事態を見ますと、合衆国安全保障條約を結ぶ場合には、いわゆる兵力行使義務を條約面に規定するようなことは極力回避する、ないしは極力慎重な方式をとるという態度に出ているようでございます。それは、日米安全保障條約と相関連しまして、合衆国太平洋における広義の安全保障体制の一部をなすといわれております濠州とニユージーランドとの條約、フイリピンとの條約を見ましても、各締約国はその憲法上の手続従つて必要なる措置をとることを宣言すると、義務的の規定は排除いたしておりますし、また武力攻撃ということは全然云々されておりません。憲法上の手続従つて適当な措置をとることを宣言する、こういうふうになつております。今申し上げましたような事情を総括的に考えまして、この日米安全保障條約は、平和のためにあるものでございまして、この條約ができますれば、菊池委員の懸念されるような日本に対する外部からの武力攻撃というものは、必ずなくて済むと確信いたしおりますが、万一われわれの確信に反しまして、外部からの武力攻撃というようなことがありました場合には、日本における合衆国軍隊は必ず阻止してくれるという確信を持つていいと思うのであります。この点をまた間接に確認している事柄は、今申し上げました二つの條約、濠州とニユージーランドアメリカとの間の條約と、フイリピンアメリカとの條約におきまして、太平洋における合衆国軍隊に対する武力攻撃は、合衆国に対する武力攻撃と認めるという条項が明白に存置する事実でございます。日本に対する外部からの武力攻撃は、必然日本国内におります合衆国軍隊に対する武力攻撃になります。必然それは合衆国に対する武力攻撃と認められるわけであります。それを考えますと、菊池委員の抱かれるような御懸念は、根拠ないと申し上げてよろしいかと考えておる次第でございます。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 よくわかりました。暫定措置ということが條文の中にうたわれておりまするが、実は日本軍備はいつになればできることやら、外債を払わなければならない、また賠償を払わなければならない、その他国内財政困難等考え合せましてなかなか困難である。結局これは暫定措置ではなく、半ば恒久措置にならぬとも限らぬのであります。これらのために私は心配いたすのでありますが、アイスランドなんぞ、その他一、二の国は、全然軍備を持たないで、あの厳格な規定を持つておりますところの北大西洋條約に加盟いたしておりますという事実もありますので、たとえばヴアンデンバーグ決議がありましても、この日本の半ば恒久措置であるといたしますなれば、まだ日本全権各位が折衝せられる余地はあつたのではないかと私は思うのであります。  それではお伺いいたしまするが、日本軍備がないために、ヴアンデンバーグ決議に拘束せられまして、こういう條約を結ぶのほかなきに至つたというのでありますれば、将来日本軍備を持つたときは、たとえば米国フイリピンのごとく、あるいは米国と濠州・ニユージーランドのごとく、もうちよつと進んで相互防衛を確実に約束する條約に修正することも両国話合いでもつてできると思うのであります。いかがでありましようか、この点お伺いいたします。
  6. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今回の安全保障條約は、実は独立後の日本の力の真空を防ぎまするために、しかもそういうそのままの状態において日本独立することは危険であり、むしろ東亜の安定を逆に阻害する状態になることを憂えられて、日本希望し、日本希望に対してアメリカがこれに協力をする、同等の立場におきましての條約を締結した次第であります。従いまして今後さような状態が起り得ない国際情勢になるか、あるいはまた他の国際連合等における方法によつてこの安全保障條約の趣旨とするところが解消するか、または他の方法によつてその方法がとられまするならば、この安全保障條約そのものが暫定的な措置として考えられまする点はその点でありまするから、必要性を失つて来ると思います。必要性を失つて参りましたあかつきにおける国際情勢によりましては、その情勢に応じて日本考えるべきものであると思います。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 よくわかつておりますが、私の申しますのは、日本がたとい大なり小なり曲りなりにも軍備を持つことができるようになりましたときは、たとえばフイリピン軍備といつたところで、オーストラリアの軍備といつたところで、こんなものはもうほとんど鎧袖一触にも値しないような弱体のものでありますが、それすらも相当突き進んだ條約を結ぶことができておるのであります。日本といたしましても、たとい弱体といえども、将来軍備を持つことができましたならば、アメリカ日本との話合いによつてこの安全保障條約を改正することもできるだろうと思いますが、どうでしようか。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだ軍備を持つか持たないかということは今後の問題で、現在の情勢におきましては、政府軍備を持ち得ない状態にあるという立場をとつてこの條約を結んだのであります。従いまして今後日本国民総意による意見によりまして、お話のような情勢になるかならないかは、今後の問題でございますから、その今後の問題を、今まだ日本国民総意を反映していないうちからこれを論議することは、差控える方がいいのではないかと思います。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 了承いたしました。  次にお伺いいたしますが、第一條の中に極東の平和と安全の維持のために云々と書いてあります。この字句は、米国極東においてもし第三国と事を構え――現在も事を構えておりますが、事を構えた場合においては、日本もこれに協力するところの義務を負うべきものと解すべきであると私は思うのでありますが、軍備がない日本といたしましては、たとえわれわれが現在も朝鮮事変におきまして国連軍協力しておりまするように、軍備以外の武力以外の他の方法において協力すべきものであると解すべきであると思うのでありますが、この点いかがでございましようか、条約局長にお伺いいたします。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 合衆国極東において軍事的行動に出る場合ということを、まずお考えになる必要があると思うのであります。合衆国軍事的行動に出る場合は二つの場合以外にございません。これは合衆国立場に関しますけれども、そう言つていいと思います。米国国際連合加盟国でございますので、あらゆる條約に優先いたしまして連合憲章義務が働くわけでございます。憲章によりますと、加盟国武力措置に出ることを許されておるのは二つの場合しかございません。一つは、国際連合憲章発動によります制裁措置としての武力行動でございます。いま一つは、憲章五十一條による合衆国自衛権発動としての武力措置でございます。五十一條の場合は、合衆国に対して武力攻撃が発生した場合になつております。日本といたしましては、平和條約第五條におきまして、国際連合憲章第二條の行動原則連合国との関係において受諾いたしております。その中には国際連合のとる行動協力するという原則がございます。従いまして合衆国極東における平和のために行動をすることは、とりもなおさず国際連合憲章発動によりまして国際連合強制措置として動く場合、これは朝鮮動乱一つの例でございますが、こういう場合にむろん日本米国軍協力することになります。それは国連行動として米国がとる行動協力いたしますもので、その根本は、平和條約第五條規定から生れて来ると考えるべきものでございます。その場合に日本としてどういう協力をいたすかということになりますが、これは日本国としてなし得る限度においてであるということは、毎々御説明申し上げている通りでございまして、国法上許されたる範囲内において、また事案問題として日本ができる範囲内において協力をする、こういう関係になる、こう考える次第でございます。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 なお日米両国行政協定でありまするが、その内容につきましてはお伺いする必要がございませんが、この協定によりまして、日米安全保障條約の不備なる点を補足することもできるわけでありましようか、その点はどうでしようか。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第三條の意義は、日米安全保障條約の実施細目を両政府間のとりきめできめるという趣旨でございます。実施細目の本条約に対する関係は、不備を補足するという観念よりも、本條約の実施に必要なる細目事項をきめるというのにございます。本條約の趣旨を明らかにするという意味解釈すべきであろうと思います。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 これで質問を打切ります。
  14. 田中萬逸

  15. 北澤直吉

    北澤委員 今回の平和條約及び日米安全保障条約はいわゆる和解信頼の條約であります。しかるにこの委員会におきまする野党側質問を聞いておりますと、中には、しいて連合国、なかんずくアメリカの真意を歪曲して、はなはだしきに至りますと、日本韓国の間の日韓議定書の例を引きまして、日本アメリカ保護国とするのだ、こういうふうな独断を下して、アメリカに対しまする不信の態度を露骨に現わしておる者があるのでありますが、これはまことに遺憾に存ずるのであります。ただいま条約局長からも御説明がありましたように、この日米安全保障條約におきましては、片務的な條項があるのでありますが、これは日本がいまだ軍備を持つておらぬ、従つて北大西洋條約、あるいはアメリカフイリピンとの間の防衛協定、またはアメリカ・濠州・ニユージーランドの間の三国の防衛協定のような雙務的安全保障協定というものを締結する条件日本が持つておらない、こういうためでありまして、もし将来日本が右のような条件を備えるようになりますならば、これは当然雙務的防衛條約というものができますることは明らかであります。韓国日本保護国とした場合におきましては、日本韓国を軍事的に守るばかりでなく、韓国政府の部内に、あるいは財政あるいは警察あるいは外交、こういう方面に日本人顧問を入れまして、この日本人顧問を通じまして日本韓国の内政を監督したわけであります。また満州の場合を申しますと、御承知のような日満議定書がありまして、これによつて日本満州共同防衛の責任を負つたわけでありますけれども、この日満議定書の付属の公文によりまして、日本満州国の総務庁の総務長官、あるいは満州国の各省の次長というふうなところにいわゆる日系官吏日本人の役人を入れまして、この日系官吏を通じまして日本満州国をいわゆる内面指導したのであります。しかるに今回の平和條約の効力発生後におきましては、占領行政は撤廃せられまして、日本の完全な主権が回復せられ、日本の政治は完全に日本人の手にゆだねられることとなるわけでありまして、ここに日本は完全平等な独立国となるわけであります。従いまして日本韓国関係、あるいは日本満州関係というふうなものは、講和後の日米関係とは完全に異なる状態にあるということはきわめて明らかであります。日本アメリカ保護国となるだろうというふうなことを言うのは、これはためにせんとする議論であるか、もしそうでなければ、私はこれは精神異常者議論だと思うのであります。国家間の信頼は、これは相互的なものであります。連合国日本信頼しても、もし日本連合国信頼しなければ、連合国日本に対する信頼というものは維持できないのであります。平和條約及び安全保障條約のような政治的な條約は、関係国相互信頼がなければ一片のほごになつてしまいますことは、歴史の教へるところであります。今回の平和條約の起草にダレス代表の補助として非常に活躍しましたアリソン公使は、ニユーヨークの十九日発APの報道によりますと、ニユーヨークアメリカ極東商工会議所会議におきまして演説をしまして、米国和解の條約を唱道し、かつそれに調印したことによつて日本国民日本政府に対する信頼の情を示したと同様に、日本国民もまた米国民米国政府が、日米両国の長期にわたる真の友好と太平洋全域の平和に寄与するよう安全保障條約を履行しようとしていることを信頼しなければならぬ。アメリカがこれだけ日本を信用して今回の平和條約を結んだのであるからして、日本アメリカ信頼しなければいかぬ、こういうことをアリソン公使は述べておるのでありますが、これはまことに至言でありまして、私は日本国民はこのアリソン公使の言を銘記しなければならぬ、こう思うのであります。ただいま申しましたように、結局信頼というものは相互的である。アメリカ日本信頼する場合には、日本アメリカ信頼にこたえてアメリカ政府信頼するというこで、初めて今回の平和條約と日米安全保障條約というものが結ばされるのでありまして、もし相互信頼がなければこういう條約は一片のほごになつてしまうのであります。こういうことでありますので、この点に関する政府の御所見を承りたいと思います。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、日韓保護協定当時におきまする国際情勢、あるいはまた日満議定書締結の当時におきまする極東情勢、なお現在平和條締結の現状におきまする極東並び国際情勢、この中に置かれておりまする日本立場は、おのおの全然違つておることは御意見通りであります。従いまして今回戦争の終結の跡始末をいたしまする平和條約が締結いたされ、その効力を発生いたしまするあかつきにおきまして、武装を解除され、武力を放棄いたしました日本が、現在のような極東国際情勢の中にそのまま、まる裸で出て行くことは最も危険である。危険ばかりではなく、かえつて極東の間に、世界の平和の将来に危惧を与える状態に相なりまするので、そこでアメリカ日本の間において結ばれて参ろうといたしまするのが、この日米安全保障條約であります。従いましてこの日米安全保障條約は、まつたく自主権を回復しました日本がそのみずからの立場において最善なりと考えるその認識の上に立つて結ばれるものであり、従つてアメリカと平等、対等の地位において日本のこのような真空状態をいかにするかという立場に立つてなされたものである。こういう点から考えますると、過去におきまするもろもろの問題とは、おのずからその本質とその形式とその内容とが全然異なつたものであります。日本独立後の行かんとする道の最善方法考えている次第であります。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたい点は、この日米安全保障條約の前文の末尾にこういう言葉があります。「アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章目的及び原則従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、」こういうふうな字句があるのでありますが、この意味は一体どういう意味でありましよう。これは想像しまするところによりますと、将来日本軍備を持つような場合には、ちようどヨーロツパ統一軍に類するようなアジアの統一軍ができて、日本がその統一軍対等立場で参加するというふうな形にするというふうなことも想像できるのでありますが、この将来日本軍備を持つ場合には、攻撃的な脅威となり、または連合憲章目的以外に用いられ得るような軍備を持つことを常に避けつつ、こういうふうな字句は一体どういうことを予想しておるのかお伺いいたします。
  18. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その趣旨はここに現われている文字の裏をとればわかると思います。他日日本軍備を持つならば、その軍備防衛的なものであると同時に、国際連合目的及び原則従つて、平和と安全を増進するために使用さるべき性質のものであつてほしい。こういう合衆国の期待が表明されておると思います。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 サンフランシスコ会議におきまするトルーマン大統領演説の中には、将来日本防衛軍を持つ場合においては、日本防衛軍は他の諸国の防衛軍と結びつけねばいかぬ。アソシエーテツドという字が使つてありますが、結びつけねばいかぬ、こういうふうなことを大統領言つておりますが、あの大統領言葉は一体どういうことを意味しておるのでありますか。お伺いいたします。
  20. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 大統領の意思をそんたくするということになりますので、やや機微な事項だと存じます。しかし申し上げれば、一国の軍隊が、今日の世界におきましてはただにその国の防衛ということだけでなくて、同時に国際連合目的原則従つて国際の平和と安全の維持のためにも寄与すべきものでなければならぬということは、今日の国際社会の通念でございます。その通念を大統領は申された、こう考えます。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 では次の問題に移りまして、ただいま議題となつておりまする日米安全保障條約の付属の吉田総理大臣とアチソン国務長官との間の交換公文でありますが、この交換公文によりまして、極東において行動する国際連合軍と日本との協力関係規定しておるというふうに思うのであります。従つて日本安全保障というものは単に米国軍隊ばかりでなく、事実上においては国際連合軍によつても守られる、こういうふうに私は思うのであります。日本のある一部におきましては、今回の日米安全保障條約というものは日本がある特定国、アメリカというある特定国だけとの間に安全保障條約を結んだのである、だからいかぬというような議論があるのでありますが、私はこの交換公文によつて――その文句はいろいろありましようが、実際上においてはアメリカ軍のみでなく、国際連合軍も万一日本の地域におきまして平和が乱れる場合には行動をとる、こういうふうなことが暗々裡に示されておる、こういうふうに思うのでありまして、今回の日米安全保障條約というものは、決して特定国だけと日本との間の問題ではない、こういうふうな解釈を持つのでありますが、その点に対する政府のお考えを伺いたい。
  22. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはこの平和條約そのものの中におきましても、平和條約の第五條によりまして、日本国連憲章の第二條の根本目的協力して参る、これを義務として実行して参りますとともに、連合国におきましても同様に、これを指針としながら進んで参る。従つて平和を阻害する状態が起りましたら、あるいはこれに対する強制行動なり、防止行動なりがとられて参ります。また今度みずからの力を持ちません日本状態におきましては、安全保障條約によりまして、日米両方によつて安全を保障する。従つて極東における平和を阻害する状態が起りまする場合におきましては、当然日米安全保障條約による防衛と同時に、国際連合目的に相反する情勢におきましては、国際連合もともどもにこれに協力してくれると存じます。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの御説明によりまして、日本地域におきまして平和が乱れる場合には、アメリカ軍隊ばかりでなく、国際連合軍も行動するであろう、そう予想されるというふうな御説明でありまして、これによつて今回の安保條約というものは、単なる日本と特定国の間のものでないということが明らかにされたのであります。次に伺いたいのは、この交換公文の中に、「将来は定まつておらず、不幸にして、国際連合行動を支持するための日本国における施設及び役務の必要が継続し、又は再び生ずるかもしれませんので、本長官は、平和條効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国軍隊極東における国際連合行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合行動に従事する軍隊日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、」こういう字句があるのでありますが、「日本国が許し且つ容易にする」ということは、これは国際連合軍隊極東において行動をとる場合には、日本国にも入つて来れるというふうなこと、及びこれに対して日本はこれに便宜を与えて容易にする、こういう意味でありますか、念のために伺つておきたい。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話通りと存じます。この交換公文によりまして、将来は定まつておらないが、不幸にして国際連合行動を支持するため、日本国にこのような施設なり役務の必要が継続し、現在の状態がさらに続いて参る、またこの状態がかりに終了いたしましても、将来再び生ずるかもしれないような場合が起り、またその生じたときには、現在のような情勢においてお話のように協力して参る、こういう点を申しておる次第でございます。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 日本に駐留するアメリカ軍隊に対しまして、日本が施設及び役務を提供する場合には、その施設、役務の提供の程度は、この安保條約の第三條の行政協定によつて定められると思うのでありますが、アメリカ軍以外の国際連合軍に対する施設及び役務の提供の範囲、あるいは提供の程度というものは何によつてきめられるのか。また施設及び役務の提供以外の国連軍に対する協力、たとえば日本に入つて来た国連軍がいろいろな特権を持つ、そういう施設、役務の提供以外の国連軍行動に対する日本協力、こういうものの協力の程度、度合いというものは何によつてきめるかという点について、政府の御説明を願いたいと思うのでございます。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これを実はきめますためにこの公文を交換いたした次第でありますが、條約が効力を発生いたしました後には、日本がまつたく自主的な独立立場に立ちますので、その場合における日本の施設及び役務の使用に伴う費用が現在通りである。さらに今後におきまして、当該連合加盟国との間でいろいろはつきりしない場合には、合意をもつてとり行いをして来てその負担等を決定する、今後さような方法で進められることと存じます。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 この公文によつて、そういう役務及び施設の使用に伴う費用については今のような点がありますが、しからばいかなる施設を提供し、いかなる役務を提供するか、その方はこの公文では何らきめてないのでありますが、その点についてお伺いします。
  28. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 手紙の中に「日本国が許し且つ容易にすること、」とあります通り日本国が許す範囲内において提供するということであります。従つて許す権限は日本政府にあるのであります。
  29. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、米国軍隊の場合は行政協定によつてはつきりきめられるが、国際連合軍に対しては、日本の決定に一任されている、こう解してよろしいのですか。
  30. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御所見の通りでございます。
  31. 北澤直吉

    北澤委員 これに関連してもう一つ伺いたいのでありますが、国際連合憲章の四十三條によりますと「国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要求に基き、且つ特別協定従つて国際の平和及び安全の維持のために必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には、通過の権利が含まれる。」こういうふうなことが規定されているわけであります。もちろん日本兵力軍備を持つておりませんので、兵力によつて国際連合に援助を与えることはできないということは、たびたび政府委員からも説明があつたわけでありますが、しかしながら兵力以外の援助あるいは便益、英語で言うと、アシスタントとフアシリテイーズと書いてありますが、この援助あるいは便益の提供の問題でありますが、国際連合憲章によりますと「安全保障理事会の要求に基き、且つ特別協定従つて、」こうあるのでありますが、そうしますと、ただいま議題になつております交換公文というのは、この国際連合憲章にいわゆる特別協定というものに相当するものでありますかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  32. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それには該当しないのでございまして、四十三條に規定してあります特別協定というものは、国連安全保障理事会の補助機関であります軍事参謀委員会で作成いたしまして、安保理事会と連合加盟国との間に締結される協定規定しているものでございます。
  33. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、この四十三條によつて国際連合安全保障理事会が日本に援助及び便益の提供を求める場合におきましては、特別の協定はいらない、ただいま議題となつております交換公文で十分だ、こういうような御解釈でありますか、念のために伺います。
  34. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 四十三條は安全保障理事会、それから軍事参謀委員会におきましてこの特別協定をつくろうと、国連の発足以後努力して来ておりますが、ソ連邦と、その他の諸国との間に大きな意見の相違がありまして、今日まででき上つていないのであります。四十三條の規定実施されていないということと、それから大国の一部に拒否権の濫用の傾向があるということが、結局今日国際連合憲章による一般的保障が効果的でない大きな原因になつておるということは、北澤委員の御承知通りでございます。交換公文によりまして、日本国連加盟国国際連合のために行動をとる場合に、その国が極東に派遣している軍隊を支持するために措置をするについて、日本がかような連合国に援助をするということは、平和條約第五條国連行動に対して日本は援助をするという一般原則から来たものでございまして、特別協定との関連において考えるべきものではないのであります。
  35. 北澤直吉

    北澤委員 その点はただいまの説明で明瞭になりましたから次に移ります。この交換公文によりますと、日本の施設及び役務を国連軍に提供する場合におきましては、その費用は現在通りに、または将来日本国と当該国際連合加盟国との間で、別に合意されるところによつて負担される。こうなつておるのでありますが、ことしの七月以降におきましては、御承知のように終戦処理費の一部は、アメリカに関する限りはドル払いになつておるということで、アメリカの方は終戦処理費を一部負担しておるわけでありますが、米国以外の軍隊については現在どうなつておるか。このドル払いというのはアメリカだけでありまして、アメリカ以外の国の終戦処理費というものは、これは全部日本が負担しておる。こういうふうになつておると思うのでありますが、その点はどうでありますか。また将来国連軍隊に施設及び役務を提供する場合におきましては、その費用の分担については、大体アメリカとの話合いの線に沿つて、両方でこれをわけて負担するというふうになるのでありますかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  36. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現在国連軍合衆国以外の国連軍に対する役務その他の協力に対しまする支払いは、全部ドル払いになつておると承知いたしております。
  37. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、ここにいう現在通りということは、国連軍に対して日本が施設及び役務を提供する場合には、その費用はこれは全部ドルによつて国際連合加盟国が払う、こう了解してよろしゆうございますか。
  38. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この書翰にもあります通り、または特別な合意がされればそれによるということになつておりますので、現在はドル払いでございますが、将来は関係連合国日本との話合いによつて、ドル払い以外の方法によることもあり得るかと考えております。現状はドル払いでございます。
  39. 北澤直吉

    北澤委員 次に移りまして、講和條約の効力発生後、日本日米安全保障條約によつて結ばれる行政協定及びただいまの交換公文によつて、施設及び役務等をアメリカ軍または国際連合軍に提供する場合には、今度は占領中と違いまして、総司令部の命令によつてこれをやるわけに参りませんので、たとえば土地収用法とか、そういうような国内法をつくる必要がある。またそういう場合には、これによつてもし民間の施設を坂上げて外国軍隊の使用に供する場合には、正当の補償を払うということが必要と思うのでありますが、講和後におきまして、日本米軍または国際連合軍に施設または役務等を提供する場合におきましては、そういう国内法を出す用意がありますかどうか。あるいはまたその場合には当然政府の補償があるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  40. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一応私から御答弁いたします。もし間違つておりましたら後刻法務総裁から御訂正をお願いいたします。  現在におきましては、占領軍のための土地収用に関しますポ勅と物資調達に関するポ勅がございまして、所有者たる個人がどうしても承諾しない場合には、これを発動することになるわけでございますが、私の承知しております限りにおきましては、現在まで発動された実例は一回もないのであります。ですから全部政府の方で所有者から民法上の契約によりまして借りて、それを占領軍に提供する。物資の場合は、政府が買い取りまして占領軍の需要に応ずる、こういうふうになつております。占領管理が終了いたしまして、日米安全保障條約によりまして合衆国軍隊が駐屯することになります。その需要に応ずるために物資または不動産がある場合必要になることがあるかと存じます。個人の所有である土地家屋がそういうふうなようにならないことをわれわれは切望いたしますが、しかしどうしても所要の場合には提供せざるを得ないことになるかもしれません。そうしますと、現在同様、個人の所有者におきましてどうしてもうんと言われない場合に、提供し得るような法的措置を講じておく必要があるわではあるまいか、言いかえますれば、現在のポ勅を、法律として制定する必要があるのではなかろうかと一応考えます。また補償の点を問題になさいましたが、国家が公共の目的のために私有財産を収用する場合には、補償の額が非常に問題になります。従つてどの法令を見ましても、公正な補償を与えるために必ず第三者的機関を設けて、それによつて公正な補償額を決定させ、その決定を政府は尊重する仕組みになつておると理解いたしております。かりに法律制定ということになりましても、公正な補償を支払う道は必ず確保されるものであろうと考えております。
  41. 北澤直吉

    北澤委員 最後にもう一点だけ質問いたしまして私の質問を終ります。従来日本の国民が占領軍かち受けた損害の救済につきましては、いろいろな問題があるのであります。昨日も同僚の石原委員からお話がありましたが、占領軍の演習のために漁場が非常に荒らされて、その補償の点が非常に問題になつたのでありますが、講和條約の効力発生後におきましては、こういう日本に駐留する外国軍隊から受けた日本人の損害の救済について、何か法律等によつてこれを規定するというふうなお考えがありますかどうか、伺つておきたいと思います。
  42. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在占領下におきまして、占領軍による損害等の補償というのは、ただいま条約局長から御答弁申し上げましたように、進められて参つておりますが、しかしあるいは十分でないかとも存じます。今後独立しました場合における、いわゆる日米安全保障條約によります場合におきましての救済、補償というような問題につきましては、お話のようにこれが適当な方法が十分なされるように、必要でありましたら、それぞれ必要な措置をとつて進んで参ることと存じます。
  43. 田中萬逸

    田中委員長 吉田安君。
  44. 吉田安

    ○吉田(安)委員 今回のこの平和条約並びに安保條約が審議されるにあたりまして、私ははからずも六年前の憲法改正の当時がまざまざと目に浮ぶのであります。当時あの旧憲法を改正いたしますときに、特に天皇の地位に関する條章を論議されるときには、私はできるならばあの憲法について行つてしまいたいというほどの感じがいたしたのであります。しかるにその憲法改正後六年間、苦難の道を歩き続けて参りますと、今度またこの憲法に劣らない国家百年の運命を決するほどの大きな二條約案が審議されるのでありまして、ただいま私かようなことを申し上げることは余談に失するかもわかりませんが、吉田総理が全権としてアメリカに出発される際に、見送りこそいたしませんでしたが、私は心から老総理の御健康を祈ると同時に、その活躍と御成功を祈つてつた次第であります。おかしな話でありますが、たまたま東京で某映画館に行きまして、あのサンフランシスコの世紀的なる会場の一端を見ることができたのであります。米英両国初め四十有余箇国の戦勝列国の中に、ひとり敗戦国たる日本の全権の方々がその片すみに着席されまして、連日にわたる各国代表の演説の後に初めて許されて吉田総理がその議席からやおら立ち上つて、演壇に原稿を持つて進まれたるときの光景、そして開口一番されましたときの私のせつなの感じであります。今まで六年の間、言いたいことも言うことを禁ぜられたようなかつこうで黙々として歩き続けた日本が、今初めてあの会場で発言を許されたその瞬間の光景、私はそこに吉田総理を通して日本の姿を感じたのであります。日本のほんとうの縮図を見たような感じがまざまざとしまして、思わず目がしらの熱くなることを禁じ得なかつたのであります。これはお笑いになるかもしれませんが、瞬間における私のほんとうの偽らざる事実であり、何らの誇張もないことを今申し上げておきます。しかるにその吉田総理の御演説は、私はその後新聞で見まして、今また渡されたる書類でも見ますと、いま少しく積極的な御意見の発表ができなかつたか。なるほど総理といたしましては、国際上いろいろの関係がありますから、おつしやることに気がねもありましたでしようけれども、八千万国民は私と同様に、いま少し日本の覚悟なり、あるいは理想なりを高揚することはできなかつたかと存ずるのであります。しかしながらこれもいたし方ないのでありますが、そしてお帰りになつて召集になつたのがこの批准国会でありますから、この批准国会に対しまして、議員各位がこれに対してあらゆる方面から、いろいろ重複することがあつても、なおかつお尋ねいたしたいということは、これは当然のことであると私考えます。しかしながらあまり重複したことをお尋ねいたしておりますと、先刻西村局長からおこごとがあつたように、また御迷惑であろうとも思いますから、簡単率直に私は一、二点お尋ねいたしたいのであります。安保條約は、申すまでもなく、日本の運命を気づかわれるほどの重大なる必要に迫られて、今回締結されんとすることは当然であります。しかるにそれほどの大きな條約でありますにかかわりませず、その内容を見ますと、渡されたる案文では、紙数にしてわずかに二枚半、これを記述する條文わずかに五箇條、これだけの簡単なるもの、いわば法三章的なるものであつて、その大体のことは、第三條によつて行政協定にみなぶちまかしておるのであります。そこに私は尋ねる人の不安も生ずるし、また御答弁なさつても、割切れぬ点が数々出て来るのではないかと存じます。しかし前同僚が言われたように、平和條約にしてもこの安保條約にをも、もともとこれは国家相互間の信頼に基いてできておる。従つて信頼の基礎に立つ以上は、どこまでもこの問題をとらえて心配することはないではないか、こういう御意見でありまするが、私も一面まつたく同感であります。およそ物事は考えようによつては、どんなりつぱな問題でもそこに疑心暗鬼が生ずることはやむを得ません。この安保條約にしましてもこれだけのことでは将来日本アメリカの属国になりはしないかというような心配も出て来るでしよう。あるいは国外にまた兵力を出動するということは、大戦争に巻き込まれる危険がありはしないかというような、いろいろの心配が出て来るのは当然であります。しかしながらこれはほんとうに信頼の基礎観念の上に立つてできておるといたしますならば、私は疑心暗鬼を生ずることはやむを得ぬといたしましても、私絶対にこれを信頼してもあえてさしつかえないと思うのであります。しかしながら何としても日本がこの真空状態を守るについては、武力なき今の日本としては、他国の力をまつよりほかに方法がない。そのためにできたのがこの安保條約でありまして、本年の一、二月ごろから講和條約を折衝なさるかたわら、一方安保條約の必要を感ぜられまして、この條約にも相当御努力なさつて今日になつて来ましたことは、私政府に対して感謝せざるを得ないのでありますが、やはり今申し上げましたように、あまりにも法三章的でありますから、そこにいろいろ質問の点が出て来ると思います。しかし端的にこれを申し上げますならば、今日本はエア・ポケツトに落ち込んでしまつておるのだ。これから早く切り抜けるのにはどうすればよろしいかといえば、これは端的に、早く日本軍備を完成すればいいじやないかということに結論はおちつくと思うのであります。武力なき今日の日本が、その間の真空状態が憂慮にたえないから、今さしあたり暫定的に米国の力にすがつて日本を守ろうとするのである。この真空状態を早く切り抜けるということが、政府初め国民すべてのものの今日ただいまからの考えでなくちやならないと思う。この出発を忘れてこの法案を幾ら審議いたしましたところで、私はこれは何らの価値はないと思うのであります。今日ただいまからこの暫定的措置をとつておるところの真空状態をどうすれば切り抜け得るかということが、われわれに課せられたる最大の問題であると思うのであります。この点に対する御当局の御意見を私は伺いたいのであります。
  45. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見、御質問の点につきまして、いわゆる力の真空状態になることは、当然予想されるから、今からこれを防ぐための一つ方法は、日米安全保障條約を持つと同時に、再軍備ではないが、みずからの力で日本をみずから守るというのは当然であるから、今からこれをやつて行くことが最も必要である。まことにごもつともな御意見と思います。結局日本がこの平和條約の効力発生と同時に、完全に自主権を回復いたしましたあかつきにおきまして、武力を持たず、武器を放棄した、こういう状態ではいかないということは御意見通りでありまするから、従つてこの空白を防ぐ方法をどうするかという問題があります。しかし今すぐに武力を準備するということはもちろん憲法にもこれを放棄いたしておりますし、また先般来総理も申し上げましたように、国際間の国々の感情は、これに十分なる理解と協力とを得ておらない状態もあります。ことにまた日本の経済情勢におきましては、これをなし遂げ得る経済力も持ち得ない現状であります。持つことが危険な現状であります。無理にこれを持つことはたいへんなことになり、経済の圧迫を来すという点におきまして、政府におきましては、現在の段階において今ただちに力の真空状態効力発生と同時に起る状態において、軍備をするということはなし得ない。これにはあらゆる点からの検討とあらゆる方法とを十分に準備し、国民の総意を傾けた上になすべき問題である。それは現在の段階ではなお困難な状態にある、こういう観点に立ちまして、しからば力の真空状態で、独立後の日本がどうして立つて行くかというところにおいて、日米安全保障條約というものを締結する段階に相なつた次第でございます。御意見趣旨はよく了承いたしまするが、日本の現状におきましては、ただいま申し上げましたような現状でございますので、その軍備状態につきましては、独立いたしましたあとに、経済も相当に余裕を持ち、また国際間の情勢も十分に理解をしたあとでゆつくりと御相談いたすべき問題であると存じます。
  46. 吉田安

    ○吉田(安)委員 私の用語が少し飛躍しまして、政務次官の今の御答弁に相なつたことと思います。私もただいますぐに首相の言われるように、完全なる軍備をしろというのでは絶対にない。今の国力でさようなことを言うことは、これは言うだけのことであつて、その不可能なことはわかります。しかしながらただこの日米安全保障條約にまかせきつて他を顧みないでよろしいか。今日本はこうしたことになりますると、再軍備ということは国民の常識になつておりまするから、これを一体どうすればよろしいか。物心両面から考えて行かなければならぬ。でありまするから、暫定的の間のこの日米安全保障條約ができましたことは、今さしあたり幸いなことでありまするけれども、こういうことは総理がおつしやる通りに、いつまでも他国の力によつて自国の防衛をすることはよくない、その通りでありますが、いつまでもこれにわれわれが安心しているというわけには行かない。今からその心構えがなくてはならぬじやないか、こういうわけでございます。しかるに、御承知通りわが党としましては、久しい以前から今日あることを覚悟して、御協力申したいということを考えました。あるいはまたときによつては再軍備の口吻も漏らし続けて来たのであります。しかるに幸いにもこういうことになつて、暫定的でありまするが、私もこれは一種の軍備だと思う、他国の力による軍備だと思うのであります。その軍備がここで不十分ながらいたされようとしている。しかも吉田総理も、今までは再軍備ということについてはほとんど耳をお傾けにならなかつたような状態であつたのであります。それが本国会召集以来だんだん前進されまして、自衛力もお認めになつていることだし、そしてまた信託統治についても、昨日でありましたか、西村君からもおつしやつたように、主権は厳として存在するというような解釈なり信念なりが政府内に出ていることは非常に幸いだと存じますが、何としても軍備というものは一朝一夕にできるものじやない。ことに経済の面、財政の面から考えますと、今の日本状態では容易なことではないのであります。それは物的方面のことでありますが、一面軍備というものは、いわゆる国民の心的方面が非常に重大な要素をなすと存ずるのであります。それを今までの政府態度から見ますると、大体軍備の必要であるということはお認めになつております。まことに幸いでありまするが、しからば再軍備をするかせぬかということになると、あるいはするがごとく、あるいはせざるがごとく、一向要領を得ない。この点が先日芦田元総理からも熱心に御追究なさつた点でありまして、将来するかも、しないかもはつきりせぬということでは、一番戸惑いを生ずるのは国民であります。そういうことで、いざ必要が出たというときにこれをしようとしたところで、ほんとうの精神というものがそこに入つて来ない軍備というものは何ら役に立たないと考えるのであります。でありますから、今日ただいまから、物心両面についていつの日にか再軍備をしなければならないというその心構えだけは、この国会を通して政府より国民に知らしていただきたいと私は思うのでありますが、この点に対する御所感を伺いたいと思うのであります。
  47. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の御趣旨はよく了承いたしました。しかし、総理もそう申しまするように、お話のようにいつまでもこの状態にあることは日本人の自尊心が許さない。従つて、そういう状態において参りまする場合におきまして、まず現在の状態においては、何と申しましても独立後の日本が生活に、経済に、相当文化的に伸張して来るという情勢を政治の中心として行かなければならないと思います。従いまして、今ここでその状態を次に飛躍いたしまして、その軍備のために日本があらゆる努力をして来るような情勢は、かえつて日本のとらざる道ではないか。十分に内容を強くして、経済的にも、文化的にも、民主的にも内容が十分に伸張いたしましたあかつきにおいて、国民全体が相談し合つて、そうして次の段階をきめることが最も妥当ではないか、かように考える次第であります。     〔発言する者多し〕
  48. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。     〔「静粛にできない」と呼ぶ者あり〕
  49. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  50. 吉田安

    ○吉田(安)委員 草葉次官のお答えはよくわかります。聞く方もお答えになる方も、今の状態ではただ並行線を引いて行くようなかつこうに陥るきらいがあります。大体において、再軍備をなさるということについては、われわれ多年の意見と今日幸いに一致しておるように感ぜられます。経済面その他の国力の面から容易でないと今おつしやることはよくわかりますが、しかし、大体の見通しはおつきにならないでありましようか、お尋ねいたします。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は、この安全保障條約において暫定的と申しておりますのも、これは必ずしもそういう点ばかりでなしに、脅威を受けるような事情の事柄も解消するような国際情勢、できまするならば、さような情勢にならない世界情勢が最も適当であろうと思います。そして、そうではなしに進む場合におきましては、日本の国力の回復と同時に、その状態に応じて、そのときにおける国際情勢の観点を考えて行かねばならないと存じまするので、この條約におきまして暫定ということを用いて進んで参つたのであります。従つて、いつの時代にこうなるというような問題ではないと存じます。
  52. 吉田安

    ○吉田(安)委員 この点についてこの上お尋ねいたしましても、結局同じことであると思います。  次にお尋ねいたしたいことは、再軍備と警察予備隊の関係でありますが、政府は現在の警察予備隊の性格をどう見ておられますか。法務総裁は御退席のようですが、どうなされましたか。
  53. 田中萬逸

    田中委員長 法務総裁は参議院の方に行かれております。
  54. 吉田安

    ○吉田(安)委員 では次官からでもけつこうであります。
  55. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま法務総裁が席をはずされましたから、私がかわつてお答え申し上げます。  軍備の問題と関連いたしましてのお尋ねでありますが、警察予備隊は国内治安のために用いられており、純然たる警察の立場においてなされておると存ずるのであります。
  56. 吉田安

    ○吉田(安)委員 お答えの通りに、警察予備隊が純然たる警察の仕事をするものであることは、これはもう設置の当時から明らかであります。しかるにだんだん今日は警察予備隊の性格が変化しつつある、いわゆる軍隊化しつつあることを存じておるのであります。従つて、今日ただいまの現状の警察予備隊をどうごらんになつておるかをお尋ねしたいのであります。
  57. 草葉隆圓

    草葉政府委員 私の立場から申し上げることはかえつて妥当ではないと存じますが、実は、いわゆる近代的な性格における治安というものは、従来のような形とは違つてつております。従いまして世界の国々の状態を見ましても、そういう状態に進化をして参つておると存じます。
  58. 田中萬逸

    田中委員長 吉田君に申し上げます。法務総裁は先刻までお待ちでありましたが、参議院から急に呼びに参りましたので参議院へ行かれました。午後出られますから、もし必要があれば留保されたらいかがかと思います。
  59. 吉田安

    ○吉田(安)委員 おさしつかえがあればもういいです。外務政務次官に警察予備隊のことについていろいろお尋ねすることはまつたく無理でありますが、しかしこれは聞く方が無理なのではなく、出席しない方が無理なのだから、その点はあしからず御了承願います。  吉田総理は、警察予備隊を再軍備に使う意思はないということをかつて言明されておるのでありまするが、政府は現在もなおさようにお考えになつておるのであるか。あるいはまた警察予備隊の目的国内治安の維持以外の、いわゆる安保條約の目的のようなことにもお使いになる意思はないのであるかどうか、これをお尋ねいたします。
  60. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは全然ありません。ほかの方へ、いわゆる軍備に使う意思は全然ございません。
  61. 吉田安

    ○吉田(安)委員 全然ないとおつしやいまするが、それは法的性格から行けば全然ないのでありまするが、そういうことが実際に今にでも起つたというような場合にはどうなさるおつもりですか。
  62. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今にでも起つたような状態におきましては、国民が全力を尽して、そのなし得る方法をもつてみずからの分を守る以外にはないのであります。
  63. 吉田安

    ○吉田(安)委員 その点がどうも奥歯にきぬを着せたような御答弁であります。そういう場合があるときには、当然警察予備隊をひつさげて治安の維持に当らせられ得ると私は考えるのでありますが、その点について御見解を伺います。
  64. 田中萬逸

    田中委員長 御答弁がありません。次にお進み願います。
  65. 吉田安

    ○吉田(安)委員 御答弁がなければ、私はなおさらに進んでお尋ねいたしますが、それでは、あの警察予備隊の実際の訓練の内容方法を御存じですか。ただ一片の警察予備隊令あたりをひつさげてさような御答弁をなさるが、実際の訓練の内容を御承知ですか。祖国防衛のための訓練をしつつあることは御承知ではないのですか。
  66. 草葉隆圓

    草葉政府委員 警察予備隊の問題は、私からお答えを申し上げるよりも、直接の責任者の法務総裁に御質問を申し上げてお答えをいただく方が妥当であると存じます。     〔発言する者多し〕
  67. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  68. 吉田安

    ○吉田(安)委員 ほかに御答弁なさる適当な方はいらつしやらないのですか。
  69. 田中萬逸

    田中委員長 次にお進み願います。
  70. 吉田安

    ○吉田(安)委員 私は今度は、さような点についていま少しくお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、せつかくお尋ねいたしましても、法務総裁がおられないので、また後刻お尋ねいたすことにいたしまして、私の質問は留保いたします。
  71. 田中萬逸

    田中委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時より委員会を再開して質疑を続行することといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時十四分開議
  72. 田中萬逸

    田中委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  安全保障條約全文及び交換公文に対する質疑を継続いたします。吉田安君。
  73. 吉田安

    ○吉田(安)委員 法務総裁が見えましたから、午前中にお尋ねしました、現在の警察予備隊の性格が設置当時よりも大分かわりつつある、かように存じますために、その性格についてお尋ねをいたしたのであります。法務総裁御退席のあとでありましたから、そのままになつておりますから、簡単でよろしゆうございますからお答えを願います。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊につきましては、昨年八月にポツダム政令として警察予備隊令を創設せられまして、これにおきまして警察予備隊の任務というものは、国内治安のための普通警察に対する補助的役割を担当させられることに相なつたわけであります。この性格は今日におきましても何ら変化をいたしておりません。
  75. 吉田安

    ○吉田(安)委員 多分そうした御答弁のことだとは存じまするが、設置当時の性質、性格はまさにその通りであつたと存じます。しかし今日においては、それは大分変貌いたしまして、まつたく祖国防衛のために日夜訓練を続けておるというようなことを聞くのであります。なおまた装備の点においても、今総裁の言われた現警察の補助の意味どころではなくして、警察の域を脱した程度に進んでおるということを聞くのでありますが、いかがでありましようか。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察の装備と警察予備隊の装備は確かに違つております。もともと警察と同じ装備をさせるならば、これは警察を増員すればいいのでありまして、警察予備隊として警察に対する補助的役割を担当させるというゆえんのものは、その装備におきましても、普通警察とはおのずから違いがあるということは、当然当時から予想されておることであります。その線に沿うて装備を着々充実いたしておるのでございます。
  77. 吉田安

    ○吉田(安)委員 私の聞きかつ見るところの現在の警察予備隊というものは、はるかに軍備に近い傾向を生じておると思うのであります。といつて、これをどこまでもお尋ねいたしたところで、法務総裁からはその域を脱しない御答弁を承るよりほかに方法はないかとは存じますが、この警察予備隊を裏から考えましたときに、再軍備の方に将来移行して行くというお考えはないのでありますか、お尋ねいたします。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 再軍備につきましては、総理からもたびたび申し上げましたる通り政府としてはまつたくその考えはございません。
  79. 吉田安

    ○吉田(安)委員 警察予備隊の問題はその程度にいたしまして、ただいま再軍備ということでありますが、先般芦田さんからも吉田総理に対して、再軍備の意思ありやいなやという点をひつさげてお尋ねになつていたのでありますが、そのとき芦田さんも、再軍備はするがごとくしないがごとき態度では困るということを申されておるのであります。それに対して吉田総理は、いつまでも自国防衛のために他国の力をもつて防衛することは避けたいと思うのである、と同時に、また今日の憲法から考えれば、武力は一切放棄しておるのであるから、その憲法の精神に従つて行動せねばならぬというような御答弁であつたのでありますが、それだけの程度の御答弁では、なかなかはつきりいたしかねるのでありますが、憲法武力を放棄しておるから、その精神に従つてという総理のお心持はわれわれよくわかりかねますが、部内におられる法務総裁のそれに対するお考えはいかがでありましようか。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現行憲法におきまして、日本軍備というものは禁止されおる、こうわれわれは解釈しておるわけであります。この憲法規定というものは、容易に改正することは憲法の性質上できないものでございまして、現在の憲法がそのまま存続いたします以上は、軍備ということは問題にならない、こういうような意味ではないかと存じますが、これ以上は総理にお聞きを願います。私としてはお答えいたしかねます。
  81. 吉田安

    ○吉田(安)委員 この点については大体了承いたします。つきましては本文にもどりますが、この安保條約の第三條でありまするが、これはおそらく私以後にも、わが党からもその他の同僚からも、この行政協定の点について鋭い質問が起つて来るだろうと存ずるのであります。今までの点では、これこそ何回も質問をいたしておりまするが、その内容についてはまつたく白紙であるから、答弁の限りでないという総理のお言葉も聞いておるのでありまするが、その点いかがでありましようか、西村さんにお尋ねいたします。それはほんとうに白紙のものであるかどうか、これはほんとうに大事なところでありまするから、あまり法三章的に行政協定にまかしてしまつておることは、審議する立場としては、実は力が抜けるような状態であります。
  82. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は総理が御答弁された通りでございます。実は安全保障條約問題につきましては、この春ダレス特使が来訪されましたときに、考え方について大体意見の一致を見たということは事実であります。それによりまして、その後これを條約の形にするということについて話合いが断続的に行われた次第でございます。その間しからば何をしていたかという御疑念をお持ちになるかもしれぬと思いますが、先日サンフランシスコでもダレス、ヤンガー両全権が説明していましたように、合衆国が中心になつて五十数箇国政府を相手に、あの平和條約の條文をとりまとめるために非常な交渉をしておられたようでございます。それでございますので、日本としては平和條約に対して意見を開陳する、同時に春の話で大体考え方が一致しておりました安全保障條約を條文化するということをやりますので、日本側から見ればかなり時間的余裕もございますし、行政協定まで同時にとりまとめられる余裕があつたのではなかろうかという御疑念を持たれるのはもつともだと思います。しかし実際、いわゆるあらゆる交渉の中心点に立つた合衆国政府から見ると、これはまた全然別でございまして、五十数箇国相手のあの内容の複雑な平和條約をまとめることそれ自身がきわめて大きな事業だつたということは、私ども率直に認めていいと思います。でございますから、安全保障條約のこの法三章的な、二ページ半にわたる簡単な文書でございますが、この文書すらもが最終的に條約の形になりましたのは、正直に申し上げまして八月二十日前後でございました。私どもすらもが実は心配いたしたほどでございます。ほんとうにサンフランシスコにおいて話合いをして、最終的決定を見るべき段階に至るのではなかろうかと思うくらいに、この簡単な文書すらもが今年の八月下旬に大体まとまつたような次第でございます。自然法三章的な條約で、実施条件規定する行政とりきめにつきまして、日本政府はもちろんのこと、国会の皆様はもちろんのこと、日本国民が多大の関心を持つてその内容を知りたいというお気持に立たれるということはよくわかります。私どもも同じ気持でおりますので、できるだけ早く実施協定をとりまとめたい、とりまとめたいという努力は、今日まで日本政府としては一度も怠つたことはございません。しかしどうしてもまとまるに至つておりません。要するに今後の問題に全部残されているという総理の御答弁の通りでございます。皆様がそういうふうなことを申されて、何か隠しておるだろうとお考えになるのは、主として私は新聞の報道のせいであろうかと思うのでありまして、私自身も、この席に見えていらつしやいます新聞記者諸君の中には、仲のいい方もございます。それで皆さんがどんまことを書かれても私は決して驚かない、迷惑も受けません。何となれば、それはあまりに実際と違いますからということを、何回ともなく皆さんに申し上げております。今日もなおかつやはり同じことを申し上げておるのでございまして……。     〔「実際と違うということはどういうわけでわかる。何かあるから……。」と呼ぶ者あり〕
  83. 田中萬逸

    田中委員長 私語を禁じます。
  84. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それがまとまつていない。まとまつていないから、これから話合いをしてきめるべき事項について、まことにきまつておるかのごとく、英米間の基地協定、米比間の軍事協定内容を適宜にあんばいして記事をお書きになる。でございますから、私の方から見ますと、この問題についてこうなつておるとお書きになつても、ちつとも迷惑を感じないのであります。と申しますのは、ほんとうにそうでございまして、今日すらそうおつしやつてくださいましても、総理と同じような御答弁をするということになるわけでございます。全部将来の問題です。ただ私どもとしては、皆様が非常な御懸念を持ち、関心を持たれるということは当然のことと思いますので、皆様がその実施協定実施条件をきめるについて、どういうふうに日本国としてはすべきであるか、こういうふうにすべきものと考えるというような、むしろ皆様方の御意見を拝聴しまして、それによつて今後米国政府との間に話合いをすべき立場に立つ事務当局の参考にいたすことができれば非常にけつこうだ、こういうふうに思つております。     〔「その相談会を開こうじやないか」と呼ぶ者あり〕
  85. 吉田安

    ○吉田(安)委員 真摯な御答弁で、大体そうではないかということも想像されるのでありますが、何分この條約なるものは、午前中にも申し上げました通りに、ほんとうにわが国民としては関心を払わねばならぬ問題であるのでありまするから、勢いこのままで審議を進めますることはまさに隔靴掻痒の感があるのであります。ただいま局長は、米国ですらもあれだけの多数国を相手に平和條約の方に没頭したために、長い間時間はかかつたのだから、この安保條約の具体的内容については、手がついていない、いわば白紙のようなお言葉でありますが、その後何らかこれについての交渉開始というようなことは、今日までないのでありますか。
  86. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 お言葉通りつたくないのでございます。
  87. 吉田安

    ○吉田(安)委員 これは結局お言葉通りに聞くことが是か非か、はなはだ疑問でありますが、そうすると、急いでただこの五箇條だけの條約案をここで批准いたしましても、いつその具体的細目、その根幹をなすものについての話合いができるか、その点についての見通しはいかかでありますか。
  88. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この安保條約は、前文にうたつてあります通り平和條約が日米両国の間に効力を発生するときから効力を発生する、こういうことになるわけでございます。ですから平和條約が効力を発生しますと、その瞬間におきまして、今日本におります合衆国軍隊というものは占領軍としての性格を完全に喪失するわけでございます。そうしますと、そのあとはこの日米安全保障條約という條約に基いて日本におる軍隊、こういうことになるわけでございます。それで第三條にいいますように、この條約に基いて日本におる軍隊としていかなる立場に立つかということにつきましては、自然、平和條約の効力発生前に、日米両国間にとにかく必要な事項については何らかのとりきめができるということが絶対必要であるし、またそれが望ましいと考えておるわけであります。大体明春くらいになりますれば、平和條約は効力を発生すると考えられますので、それまで数箇月の余裕がありますので、できるだけこの数箇月の間に実施細目についての合意に到達するように話合いを進めねばなるまいと考えておる次第でございます。
  89. 吉田安

    ○吉田(安)委員 この点につきましてはその程度にいたします。  聞くところによりますと、この案文には出ておりませんが、結局行政協定一つの現われとして、実際の運営については日米合同委員会というものが設定されるやに聞いておりまするが、そういう御構想がありますか。
  90. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうな構想がとりかわされたことはありました。しかし何ら確定いたさないで今日に至つております。
  91. 吉田安

    ○吉田(安)委員 そうしますと、その性格なども今聞いても何ともいたし方ありませんが、さらにそれではお尋ねいたします。この安保條約なるものは、日本側の立場から簡単に見ますると、結局この講和條約成立と同時に生ずるある程度の空白の間を米軍によつて日本を守ろうということから出発しておるのでありますが、もちろんこれはそれだけではなくして、案文にもあります通りに、これは双方の――アメリカからは守つてもらうし、またこちらもそういうことでアメリカにもためになつてやろう。いわゆるギブ・アンド・テークという原則があるのではないかと思います。そう考えますと、これはただアメリカさんに向つて感謝ばかりしている必要もない。われわれもいろいろなことでアメリカさんに大いに手伝つてやることになるのであります。このギブ・アンド・テークということの一面といたしまして考えねばならぬことは、目下停戦の交渉をしておりまする朝鮮問題でありまするが、このこともすでに何回か同僚諸君からお尋ねしておることであると思います。どうでしよう、この朝鮮問題というものは、ここでお尋ねしても無理と思いまするが、この関係のいわゆる雲行きについては、外交畑のお立場として、どう御観察になつておるのでありますか。
  92. 草葉隆圓

    草葉政府委員 八月下旬以来、休戦会談がそのままとだえておつたような形になつてつておりましたのが、ごく最近再び開かれるような情勢に相なつたように伝わつております。実はこれらの状態から考えまして、根本的な問題は別にいたしましても、休戦状態が両方とも望まれているところからとられている措置ではないか。日本立場といたしましても、東亜においてあのような動乱が起つておりますことは、一日も早く解決することを望んでおる次第であります。
  93. 吉田安

    ○吉田(安)委員 解決を望むことは国民ひとしくその通りでありますが、お立場として、どういうお見通しがあるかということはおわかりにならぬのですか。
  94. 草葉隆圓

    草葉政府委員 会談の状態によりまして、朝鮮動乱の今後の見通しという問題になつて参りまするが、これはおそらくは今回の休戦会談によりまして、両方ともできるだけの妥協の方向に向つて来るのではないかと思つております。
  95. 吉田安

    ○吉田(安)委員 池田さん御出席のようでありますが、この機会にお尋ねをいたしておきたいと思います。実はこの安保條約をめぐつてわれわれが国を憂えて考えることは、結局いかにして日本を安全、平和の状態に置くかということであります。つきましては、ただいまのところでは、こうした安保條約を結んで日本を守ろうというのでありますが、所詮はこれは暫定的でなくちやならない。ついては将来必ずや再軍備という問題が起つて来るのであります。特に池田大蔵大臣にお尋ねいたしたいことは、いわゆる日本の国力の点からいつて、再軍備について忌憚ないところをお答え願いたいのであります。国力からいつて相当遠くかかるものか、あるいは意外に早く再軍備なるものが着手され完成されるのであるか。元来池田さんは、日本の国力に関しては非常に楽観的な見通しをお持ちになつておる。われわれ日ごろこれは大いに意を強うしておるところです。実際悲観してばかりおつてはならない。楽観的に大きな気構えでやつて行くことが私は必要であると思う。その点について池田さんの日ごろの御抱負に私は敬意を表しておる。そういう観点から行きまして、再軍備可能なりや、可能であるならば、今の日本の国力、将来の国力からして、大体の見通しを御返答願いたいのであります。
  96. 池田正之輔

    池田国務大臣 再軍備の問題は、総理がたびたび言われておりますように、現在の日本の国力から申しますると不可能でございます。これは、ある程度の軍備を持つておりまして、それを軍備拡張というふうなことならばたやすいのでございます。しかしそれにいたしましても、経済界には非常な影響を及ぼすのであります。今度の世界的再軍備の以前におきましては、大体イギリス、フランス、アメリカ等におきましても、国民所得の七、八%が軍備であつたのであります。しかるところアメリカは御承知通りの軍拡をやりまして、六百億ドルに近い予算を組んだのであります。しかしてイギリスがこのアメリカの軍拡に相応じまして、国民所得百二十億ポンドの一割二、三分まで今やろうといたしておる。このことによりまして、イギリスは最近ポンドが非常に不足になつて、巷間ではもうポンドの切下げではないか、物価が急激にここ四、五箇月上つて来て、そうして今度のような総選挙になつたのであります。フランスにおきましても、やはりいろいろなことを言つておるのでありますが、予算には組んでおるけれども、あまり軍拡をやつておらないというようなことを聞きますが、それにしても国民所得に対しまする七、八パーセントの軍備を、やはりイギリスと同様に十二、三パーセントに引上げました関係上、フランスは昨年までは一般歳出予算から一割七、八分ちようど今の日本と同じような状態であつたのが、軍拡によつて三〇%を越えるような歳計の膨脹を来しておるのであります。これは軍拡ばかりではございません。ほかの経費も加わるでしよう。こういうことを考えまして、日本の今の国民所得を四兆五千億といたしまして、一割二、三分をやりますというと、五、六千億の負担になつて来る。五千億程度の負担になつて来たらば、今度の歳出の八千億の過半数を軍備に持つて行かなければならぬ。しかも軍備を置くということになりますというと、もう人件費もさることながら、それ以上にいわゆる施設費、いろいろな施設がいるのであります。私が聞くところによりますと、これは正確な数字ではございませんが、中型のタンクを一つつくるのに七、八千万円いるという。これはもう想像外でございます。一箇師団にはどのくらいあれがいるかということを考えると、なかなか楽に行くもんじやございません。七万五千人の警察予備隊が今いろいろな鉄砲なんか持つて練習しているといいますが、七万五千人に対して当初予算で百六十億円、今度も百五十億円入れておりますが、これは鉄砲や弾の代ではございません。病院をこしらえたり、いろいろな施設をしたり、直接戦闘行為以外のものの経費であつて、しかもそれが七万五千人に十分に行くわけではない。今鉄砲とかいろいろなものはみなアメリカから借りてやつておるようです。こういうことを考えまして、今の日本状態からいつて、自分の国は自分の力で守りたいという念願は、総理を始めわれわれとしてもありますが、実際においては行われない。七万五千人の警察予備隊でもかなりかかる。これがあなた海軍を置くとか陸軍を置くとかということになつたらたいへんなことです。今まで何もないところに置くのですから……。私は今の日本の経済状態としては、なかなか困難である。で空白状態アメリカに頼んでしばらく守つてもらうよりほかにない。いつごろになつたらできるかということになりますと、日本の経済がいつごろになつたらどのくらいになるかということと同じことで、なかなか想像がつきません。従つてわれわれとしては、できるだけ国の経済力を急速に拡大し、そして自分の国は自分の力で守るという一般世界の通念に乗つかつて行くという念願で努力を続けて行くよりほかはないと思います。
  97. 吉田安

    ○吉田(安)委員 国力上今できないとおつしやることは、もうわかりきつたことでありまして、当然なことであります。ただ大臣としては、再軍備をやるとすれば大体どのくらいの費用があればできるように今のところお考えがありますか、ありませんか。将来できるときのことを考えて、幾らあればできるかというようなお考えはありませんか。
  98. 池田正之輔

    池田国務大臣 私は再軍備のことを考えるだけの余裕がございません。警察予備隊七万五千を整備するのにどのくらいいるかというので頭が一ぱいでございます。再軍備というものは、今のように陸軍ばかりでなく、海軍、空軍という問題があります。どれだけの兵隊を置き、どれだけの艦船を置き、どれだけの飛行機を持つか――平和会議でソビエトの提言したあの軍備、陸軍十五万人、海軍二万五千人、こういうことでもたいへんなことでございます。しかもその鉄砲も軍艦も日本でつくるといつたならば、とても莫大なことで私は今とても計算ができません。
  99. 吉田安

    ○吉田(安)委員 大蔵大臣としては、再軍備のことは全然今のところは国力上考えられる余地もないというようなお話であります。しかしこれはお言葉でありまするが、だれでも一応考えることなんです。どのくらいかかるだろうかということは、巷間でも再軍備といえばすぐにそれを言う。いわんや大蔵大臣としては、正確なことを本格的にお考えにならなくても、一体どのくらいかかるかというようなことは、これはもう常にお考えになつておることだと存ずるのであります。しかしこれを申し上げたところでいたしかたのないことでありまするが、といつて、今は再軍備なんかは頭にはないのだというようなことで、ほつておくということがいいことか悪いことか、これはほんとうに考えねばならぬことだと考えるのであります。しかしそこは議論にわたることでありますし、いずれわが党の同僚からこういうこともつつ込んでお聞きをいたすことでありまするから、私はこの程度で打切ります。
  100. 田中萬逸

    田中委員長 佐瀬昌三君。
  101. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私はまずもつて本安保條約及びこれに基いてつくらるべき行政協定がいかなる性格を持つものであるか、言いかえるならば、軍事協定と解してよろしいかどうかということをお伺いしておきたいと思います。
  102. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この安保條約は軍事協定というよりも、むしろ政治協定という範疇に入るものであると考えております。但し重要なる内容日本国及び付近における合衆国軍隊の駐留ということにあるのでありますから、自然その関係から、内容上軍事的な色彩を帯びて来ることはやむを得ないところであると考えております。
  103. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 従来の吉田総理、またただいまの大蔵大臣、大橋法務総裁の説明によりまして、私どもは再軍備というものが国際関係あるいは財政上、特に現憲法が厳存する限り、法理的にも不可能である。従つてこの安保條約の必要性というものを認めるものであります。しかしなおこの安保條約及び行政協定が、ただいま西村条約局長の御説明のように、政治協定であつても、その内容その実質において、軍事的性格を帯びた政治協定であるということに相なりますると、わが憲法第九條が戦争を放棄し、一切の軍事的関係を絶つたその精神から見ると、そこになお憲法に抵触するものではないかと一抹の不安を持たざるを得ないのであります。外国軍の駐留を認め、その軍事基地を提供するこの事項が、憲法第九條に違反しないかどうか、国民はこれを知らんとしておるのであります。従来の説明には多少これに触れて、違憲にあらずというようにそんたくされる政府委員の説明も若干はあつたように考えますけれども、もしこれが憲法に抵触しないというものであるならば、その理論的根拠をこの際明確にして、御所信のほどを明らかにしていただきたい、かように私は考えるのであります。
  104. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 安全保障條約の前文におきまして「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」とあります。これはこの安保條約の締結の背景をなしておるのでございまするが、これによりまして、米国日本に対しまして、将来日本がみずからの責任において侵略の防衛に対処すべきことを期待する旨を表明いたしたのでありまして、これをもつてわが国に対して再軍備義務を負わしたという趣旨ではないことは明らかでありますから、この表現がただちに憲法第九條に抵触し、あるいは憲法第九條の改正を義務づけるものとは考えておらないのであります。これが第一の点でございます。  次に安全保障條約におきまして、米国に対して同国の軍隊日本国内に駐留することを認め、かつわが国の領域をその軍事基地に提供することを規定いたしておりまするが、この点が憲法第九條に違反しないかという問題があるわけであります。言うまでもなく。わが憲法第九條は、正義と秩序を基調とする国際平和を念願として、戦争並びに武力による威嚇または武力行使を放棄いたしまするとともに、陸海空軍その他の戦力の保持と国の交戦権とを否認いたしております。しかしながらこれをもつて国際法上国家の保有する自衛権を否定しておるものではないのでありまして、ただ右の規定によりまして、日本国の自力による限り、このような自衛権を十分に行使するための有効な手段を持ち得ないというにとどまるわけであります。従いまして今日の緊迫いたしました国際情勢下において、切迫せる侵略危険からわが国の生存と安全を防衛するため、国際平和の維持を念願とする国際連合の中枢国でありまする米国軍隊の国内駐留を認め、これに軍事基地を提供することは、別段憲法第九條に違反するものとは考えておりません。
  105. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 佐藤参議院議長その他一、二の者は、現行憲法の上に立つてなお義勇兵を組織することは憲法違反でない、またその必要が現在あるやの説をなしておるように見受けるのでありますが、政府としてはこの義勇隊問題に対していかようなお考えをお持ちになつておるか、この際明確にいたしておきたいと思うのであります。
  106. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、日本国民が義勇隊に出て行くというようなことについては、何ら考えたことはありません。
  107. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 いやしくも国家組織として義勇隊あるいは義勇兵組織というものが、同じく憲法第九條に抵触するものとして許されないというふうに考えるのは、私はほとんど異論のないことではないかと思うのであります。ただ残された問題は、国民自身の発意に基いて、国家というものとの関連外において、かような祖国愛的な義勇隊組織というようなものが起る場合に、これに対して政府は現行法上、あるいはまた将来の立法対策上いかにお考えになるか。特に最近は旧軍人が追放解除等をされまして、相当行動の自由を許されております。それに対する政府の対策をこの際明らかにしておきたい、かように考えるのであります。
  108. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府が自己の権力下におきまする軍事的組織、特に軍隊というものを持たない、これは憲法第九條によつて禁止せられております以上、当然なことであります。次にしからば政府関係なく、国民の自発的意思によるところの軍事的組織が義勇兵という形で日本国内に組織された場合に、これに対して政府はどういう態度をとるべきかという点の御質問であつたと存じまするが、日本国といたしましては、いかなる原因から出るとを問わず、政府の意思に関係なく、国内に軍事的な組織ができるということに対しましては、これは国内治安の立場から当然取締らなければならぬと思つております。すなわち今日わが国におきましては、政府の許可なくして武器を国民が保持するということすら禁止しでおるわけでございまして、武力行使ということを目的といたしましたる国民組織が国内にできるということにつきましては政府としては当然取締るべきものである、こう考えております。
  109. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 先般当委員会において吉田総理は、憲法違反の條約は締結しない意思であるということを御答弁になつたように記憶いたすのであります。本條約は大橋法務総裁の御説明等によつて、私どもはもちろん憲法違反の疑いはないものと確信はいたすのでありますが、憲法第九十八條によると、條約は憲法の上を行くものではないか、これはほぼ大多数の憲法学者等の一致した意見であるといつてもよいくらいであります。その点から考えると、いささか憲法と條約の関係に対する政府のお考えが論議の対象になる余地があるのではないかというふうに考えられますので、政府の法規上の最高顧問である大橋法務総裁から、この点に対する御所信を承つておきたいと思います。
  110. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法第九十八條におきましては、御指摘のごとく「日本国締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」もとより国際條約につきましては、政府その他の国家機関はこれを遵守する必要があるという趣旨であると了解いたすのでありますが、このことは憲法違反の條約が結ばれた場合にそれを遵守すべきであるという意味ではなく、政府といたしましては憲法違反の條約が結ばれることはあり得ないという前提のもとにかような趣旨規定してある、こう了解をいたしておるわけでございます。
  111. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 そうすると、憲法に違反する條約は無効である、かように解釈してさしつかえないという政府の見解でございましようか、なおこの点をお伺いしておきたいと思います。
  112. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございまして、それでは現実に憲法違反條約が締結された場合に、それは條約としても無効であるかという点になりますると、必ずしもそうは言えないと思います。しかしながら九十八條にありまするところの遵守しなければならないというのは、憲法違反の條約とかいうものが有効に締結されるということはあり得ないという前提のもとにかような規定ができていると、こう理解しているわけでございます。
  113. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 本條約について必ずしも論議するわけではございませんが、将来の国際関係の発展とともに、各種の條約が多数締結されることを予想し得るのであります。その場合に憲法九十八條の立場かち、憲法違反であるかどうかというような問題が起つた場合、これに対する法令審査権というものがどこにあるか、あるいはまたこれに対する最後的決定権は、憲法の上に立つて、どこにこれを求めるかということを私どもは危惧しなければならぬのでありますが、これに対する政府の御意見を承つておきたいと存じます。
  114. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 條約は憲法上、常に事前または事後におきまする国会の承認が必要と相なるわけでございます。この国会が承認されるにあたりましては、具体的な條約につき、憲法のあらゆる規定に照して違憲の点はないかどうかということを当然審査されるものと存じまするし、その審査を経て條約というものは承認が与えられると思うのであります。  なおかくして成立いたしましたる條約に対しまして、これが国内におきまして具体的に実行に移された場合、何らか民事あるいは刑事の問題を生じました場合において、その刑事または民事の事件の裁判の上において、條約と憲法関係、特に條約が違憲にあらずやというような点が問題となることがあるわけでございます。この場合におきましては、当然裁判所がその判定の権限を持つものと考えております。
  115. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 次に西村条約局長にお伺いしておきたいのでありますが、第一條との関連の問題でございます。先日の当委員会における局長の御意見によりますると、たしか吉田総理大臣もさような御意見であつたことを記憶するのでありますが、アメリカ日本に対する外部からの武力攻撃に対してあくまでこれを防衛してくれるかどうかという問題に対し、政府は、それは防衛してもらえることと確信を持つている、あるいはまたこれは期待できることであるという御意見のようであります。しかしこの前文と第一條関係、いなむしろこの安保條約の、また平和條約の根本精神から考えるならば、アメリカには日本防衛する責任、義務があるのではないかというふうにもわれわれは解し得ると信ずるのであります。前文には、平和條約が日本自衛のための安全保障とりきめを締結する権利を与えておる。また国際連合憲章は、日本の個別的もしくは集団的な自衛の固有の権利を認めている。のみならず、条約局長の先般の説明にもありますように、自衛権そのものは国際法上の一大原則であるというふうに考えましてこの前文をながめると、前文は、これらの権利の行使としてこの安全保障條約を結ぶのであるという趣旨が明確にされております。権利の行使としていやしくも国家間がかようなとりきめをするのであるならば、私は法律学上の常識でありますこの権利に対応する義務として、やはりアメリカ日本防衛に対する責任を終局的に負担すべきではないか。単にこれを期待する、あるいはかくあるべきであろうということを確信するというような程度の問題ではなくして、條約上の法律上の問題として、私はこれを正しく理解しておく必要があるのではないかと考えるのであります。この点に対する条約局長の御意見を明らかにしていただきたい、かように考える次第であります。
  116. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘のような責任が、この條約の前文並びに第四條を見ますときには、政治的に含まれているということは言えると存じます。
  117. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 條約が法律的でありますがゆえに、私は法律上の議論として今お尋ねいたしたのでありますが、これは直接さような解釈が生み出せないことは政治上の問題であるというようにお考えになるのも、これは一応の御意見とは拝承いたすのでありますが、しからば政治道義上、国際道義の上に立つてやはり日本防衛する責任がアメリカにはあるのではないかということを最後に承つて、私の質問を終りたいと考えております。
  118. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点についてはお考え通り考えております。
  119. 田中萬逸

    田中委員長 並木芳雄君。
  120. 並木芳雄

    ○並木委員 平和條約及び日米安全保障條約の内容については、私どもは幾多の疑点を持つております。その点についてなお釈然としない点が多いのでございまして、実は私どもの方の党でもまだ結論が出ておらないのであります。特にこの日米安全保障條約については、本日の質疑応答というものは私どもの方の党にとつてはこの判断上非常に重要性を持つておりますので、ひとつ懇切丁寧に御答弁願いたいのです。先ほど同僚の吉田委員からまことに質問はりつぱな、よい質問があつたのでありますけれども、これに対する政府の方の答弁は、まことに残念ながらわれわれとしては納得の行かない点が多うございました。結論的に申しますと、あるいは今の内閣に望むのはもう無理で、私どもの方の内閣ができなければもうだめじやないかというような感じを私は抱きながら聞いたんですが、残念ながらまだ政権を持つております。この政権を持つている現内閣でこの両條約が結ばれようとすることは、あるいは私ども国民の悲運かもしれないのであります。  そこで私は日米安全保障條約について、なぜこの條約を結ばなくてはならないか、どういうわけでこの條約を急いで結ばなければならないかということについて、いろいろの角度から掘り下げて行きたいと思うわけであります。  まず大橋法務総裁にお尋ねいたします。日米安全保障條約においても、事前に国会の承認を経べしとなつておる憲法七十三條の規定従つて、調印前に国会の承認を求められなかつたことを私は遺憾とするのであります。この前の前の国会のときでございましたか、私は事前に国会の承認を経べしという、その事前は調印前に解すべきである、もしそうしなければ、国権の最高機関である国会としては、いつでも政府のやつたことにあとをついて行かなければならない。ことに議院内閣制をとつておる、与党が絶対多数の場合が多いのでありますから、判こをつかれてしまつたのでは、もうあとから私どもはあれよあれよといつてついて行くよりもしかたがない。だからこの事前にという意味は、調印または署名前にと解釈しなければ、ほんとうに民主主義というものが守り切れないんじやないか、また政府としても、国会のそういうバツクがあつた方が、外交交渉をやつて行く上に安全弁となり、力となるのではないかと思うのであります。平和條約の場合にはまず万やむを得なかつたかもしれません。しかしこの日米安全保障條約はほんとうに対等立場に立つて締結される條約でございますので、私どもとしては、調印前に国会の承認を得る段取りをつけていただきたかつたと熱望するものであります。どういうわけで今回調印前に国会の承認を求めなかつたのでありますか、その点をお伺いしたいと思います。
  121. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 條約は、調印によつて成立いたしますものと、調印後批准の手続を経て初めて成立いたしますものと、その成立の手続に二通りあるわけでございます。平和條約並びに今回の安全保障條約は調印のみによつて成立せず、批准によつて成立する、こういうことに相なつておるのでございまして、この点は條約上明記いたしてございます。従いまして、ただいま国会の御承認を願うために御審議を願つておりまするのは、これは條約成立前、すなわち事前に御承認をいただく手続をとつておるわけでございます。御指摘の事前の承認ができなかつたのは残念である、こう言つておられまするが、そうではなく、事前に承認の手続がとられておるわけでございますから、十分御満足をいただいてしかるべきだと存じます。
  122. 並木芳雄

    ○並木委員 政府としては、事前にという解釈をまだかえておらないと今聞きました。しかし批准制度というものについては、西村条約局長も御説明があつたのでありますけれども、現今では、ほとんどその重要性がないのだ、むかし通信とか交通の不便なときに、この存在の必要性があつたのであつて、現在としては、それほど必要性がないというふうに私は聞いておつたのでありますけれども、いかがでしようか。つまり私が言いたいのは、批准という制度を設けなければ調印だけで條約が成立いたしますから、いやでもおうでも調印前に国会の承認を経ることになる。そうしなければ事前の承認になりませんから、必ず調印前に国会の承認を経ることになるわけです。ですから私ども国会の立場からいうと、むしろ批准条項というものがない方がかえつて調印前にわれわれの承認を求めて来るわけでありますから、いわゆる祕密外交と疑われ、あるいは祕密條約と疑われるような懸念が一掃されると思うのでありますけれども、この点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  123. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今日條約の締結につきましては、各国ともにこれを政府あるいは全権委員の専権に属せしめることなく、必ず国内憲法上正当な機関によつて承認その他の必要な手続を経た上で批准をいたして効力を確定する、これが通常の建前でございまして、これは別に通信機関が不備であるとか、そういうこととは関係のないことと考えておるのでございます。調印前に條約の承認を受けさせたらどうかという御意見でございまするが、調印前におきましては、御承認をいただくべき内容が確定をいたしておらないのであります。むしろ今日のように、調印後批准前に提案をする、これによつて初めて国会が十分なる御審議ができる、こう私は考えております。
  124. 並木芳雄

    ○並木委員 局長としては何か答弁はありませんか。あなたの名前を出したから――政府としてはそういう答弁になるでしようけれども、どうしても私どもは、民主主義というものは守り抜きたい、国民八千万というものは、つんぼさじきに置かれたり目隠しをされたりすることのないように守り抜きたいという熱意に燃えているわけなんです。ですからあるいはそういうような御解釈が成立つかもしれませんけれども、それをどうしてもがんばられるんだとなれば、これは私どもとしてはしかたがないと思うのです。ですから立法上の問題になると思いますが、今後憲法改正に際して、この七十三條の但書を改正して「事前に、」とあるのを調印または署名前にと訂正する、そういうふうになつたらいいと思うのですけれども、政府はこれに対してどういうお考えをお持ちになりますか。
  125. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 並木君は調印前に国会の承認を受けろ、そういうふうにすべきではないか、こう言つておられますが、調印前におきましては、條約の内容はまだ具体的にきまつておらないのであります。従いまして、具体的にきまらないものにつきまして事前に国会の御審議を願うといいましたところで、これはなかなか困難でございます。そういう点につきましては現行国会法におきましても、国会に国政審査権というものがあるのでございまして、並木君も昨年以来たびたび外務委員会におきまして、この事前審査の方法として、いろいろな機会に講和條約その他の問題について御質問をなさつておられるわけであります。ああいう方法によつて御調査を願つてさしつかえないわけで、憲法の改正については全然考えておりません。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは次の質問に移ります。吉田首相はサンフランシスコ会議において、こういうような演説をしております。「近時不幸にして、共産主義的の圧迫と専制を伴う陰険な勢力が、極東において、不安と混乱を広め、且つ各所に公然たる侵略に打つて出つつあります。日本の間近にも迫つております。しかし、われわれ日本国民は、何らの武装を持つておりません。この集団的侵攻に対して日本国民としては、他の自由国家の集団的保護を求めるほかはないのであります。これ、われわれの合衆国との間に安全保障條約を締結せんとする理由であります。固よりわが国の独立は自力をもつて保護する覚悟でありますが、敗余の日本としては、自力をもつてわが独立を守り得る国力の回復するまで、あるいは日本区域における国際の平和と安全とが、国際連合措置、若しくはその他の集団安全保障制度によつて確保される日が来るまで、米国軍の駐在を求めざるを得ないのであります。日本はかつては北方から迫る旧ロシヤ帝国主義のために千島列島と北海道等は、直接その侵略の危険にさらされたのであります。今日、わが国は、またもや同じ方向から共産主義の脅威にさらされているのであります。平和條約が成立して占領が終了すると同時に、日本に力の真空状態が生じる場合に、安全保障措置を講ずるは、民主日本の生存のために当然必要であるのみならずアジアに平和と安定をもたらすための基礎条件であり、又新しい戦争の危険を阻止して国際連合の理想を実現するために必要かくべからざるものであります。」これが吉田総理の演説でございますが、この中にはいろいろ重要な言葉が使われておると思うのであります。特にこれは日本国内の治安と密接な関係がありますので、この際大橋法務総裁に、この中に吉田さんが引用されておる事柄で、われわれの間近に迫つておる、危機と申しますか、あるいは国内における共産主義の実態、動向と申しますか、こういうものについて詳しくお知らせ願いたいと思うのです。要するに、こういうものの実態がつかめませんものですから、どういうわけで日米安全保障條約というものを急いで結ばなければならないかという点に対する答えが出て来ないわけでありますから、納得の行くように御説明願いたいと思います。
  127. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日米安全保障條約は、国外よりいたしまする侵略的勢力というものに対する日本自衛権行使方法についてのとりきめをいたしたわけであります、国内治安が原因になつてこの條約ができたのではございません。国外からの侵略が迫つておる、この国外的な情勢が原因になつておるのであります。こういうふうに私は承知いたしております。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 それはそうでしようけれども、この安全保障條約の中には、国内の治安の維持についても規定が設けられておるのでおつて、今日は外からの侵略というものと国内の治安というものは、切つても切り離せない関係にあると思うのです。先ほどこの点は単葉次官が、進展したとか何とか、非常に珍しい言葉を使つて、ダーウインの進化論でしたか、進化して来たという表現をもつてお答えになつていましたけれども、今の大橋さんのようなはつきりした答えは出ないのじやないか、やはり外からの侵略と呼応する国内の治安の乱れ、そういうものがあるからこそ、日米安全保障條約にもあの一項が盛られたのであつて、どうしてもこの際、現実にどのくらい緊迫した、われわれの間近かに迫つている危険というものがあるのか、これを明確にしてもらわないと困るのであります。
  129. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日米安全保障條約は、特に国内の特定の事実を押えまして、かくかくであるからこれが必要であるという趣旨ででき上つたものではないのでございまして、今日の国際情勢というものに基礎を置きまして、これに対応する日本自衛措置が必要となる、こういう意味であると考えておるのであります。なるほど安全保障條約の第一條におきましては、日本国内におきまする大規模の内乱、騒擾を鎮圧するために駐留軍の援助が行われるということも予定せられております。これは単なる国内の内乱、騒擾に対するものではなく、それは国外の勢力による教唆または干渉によつて引き起された場合に限る、かような措置が予定されておるのであります。すべて国際情勢というものがこの動機をなしておる。こういうふうに私は理解をいたしております。
  130. 並木芳雄

    ○並木委員 今の吉田首相の演説の中に、一方においてはこういう言葉が使われております。「近時不幸にして、共産主義的の圧迫と専制を伴う陰険な勢力が」というふうに抽象的に言われております。ところが片方においては、この集団的侵攻に対して、日本国民としては、他の自由国家の集団的保護を求めるというふうに言つて、他の場合には自由国家とはつきり国家というものを出しております。前の場合にどういうわけで国家というものを出さなかつたのであるか、この点について大橋さんでもあるいは外務当局の方でも、どつちでもよいから御答弁願いたいと思います。
  131. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この日米安全保障条約前文にはつきり書いてあります。この前文によりますると、日本は武装を解除されておる、そして武装は解除されておるが、しかし本来の固有の主権、その主権は自衛権を含む、しかし武装を解除されておるから、自衛権の有効な手段を持たない。ところが世界情勢を見ると、無責任な軍国主義がまだ駆逐されていない、そうしてその中に、ことに極東にはいろいろな問題があるから、現在の日本としては危険である、これをどうするか、これがこの本質であります。その本質から出て参りまする場合において、内容の中には、ただいまお話のありましたような、あるいは騒擾とか、あるいはいろいろな国内の問題等にも、場合によると日本政府の明示の要請があつた場合には援助するということを含めてやつて行く、こういうのでありまして、本質は世界の平和に寄与するために、従つて極東の平和を守るため、力の真空状態のままに置くことはかえつて危険な状態であるから、これを防ぐためにというのが本質的な目標でありますことは、前文ではつきり示しておるところであります。
  132. 並木芳雄

    ○並木委員 一方に共産主義の圧迫と専制を、というように抽象的に書いてありますので、ぴんと来ない。だから、それならばそういう勢力というものはどういうふうな危機として迫つておるのかということをどうしても知りたい。その点をどうぞ具体的に説明してもらいたいと思います。
  133. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは再三総理からも私からも、御答弁申し上げましたように、現在東亜におきましては、朝鮮動乱というものは国際連合がすでに一つ武力による侵略といたしまして、国際連合軍をもつてその平和を維持するため、あらゆる方法をいたしております。また本年二月一日にはさらに、中共の共産主義の圧力によりますることもこれまた侵略と認めて、これに対する防止方法を講じて参つたのであります。かような現実の問題がありまする中で、日本のまる裸のままの独立ということは、日本自身に危険であるばかりでなしに、世界の平和に脅威を来すというのが根本であります。
  134. 並木芳雄

    ○並木委員 私はどうしてもこういう点についてもう少し具体的な、そしてより緊迫感を与えるところの説明がほしいと思うのであります。  その次に私がお尋ねいたしておきたいと思いますのはソ連の場合ですが、ソ連は今度の平和条約に加盟いたしませんでした。そこで調印をしなかつたソ連が日本に進駐して来るのではないかという質問に対しては、政府として先般来そういう心配はないという答弁のように私は記憶をしております。しかしそれはどういう根拠に基いてそうなるか。私たちとしては厳然とした法律的の根拠というものがほしいのでありますけれども、この点大橋法務総裁に法律的の裏づけがあるかどうか、かりにソ連が進駐すると言つて来たときに、これを法律的にしりぞけることができるのかどうか、その点をお確めしたいと思います。
  135. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 一国の軍隊が他国に進駐いたしまするには、必ず法律的な根拠が必要であります。その根拠が何もないということは、すなわちソ連が進駐することがないという理由であります。
  136. 並木芳雄

    ○並木委員 現実の問題として、この点は相当心配をしている人があるのでございますから、私は今の総裁の答弁では物足らない。要するに條約に加盟しない場合には戦争状態というものはなお続く。ソ連と日本との間で戦争状態が続くのであるから、従つてその戦争状態というむのに基いて日本に進駐して来ることがあり得るのではないか、それに対する法的にあり得ないのだというはつきりした根拠はないのですか。
  137. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 戦争ということは、これは一つの法律状態に対する破壊でございまして、法律状態を破壊してこれを実力によつて解決しようという行動、これがすなわち戦争だと考えておるのであります。もしソ連と日本との間の状態が戦争状態である、それを理由にいたしましてソ連が日本に侵略をいたして参るという場合におきましては、これはすなわち日本の安全が一つの侵略によつて脅かされておるという事態に相なるわけでございまして、そういうことのために安全保障條約というものが今論議をされているわけであります。
  138. 並木芳雄

    ○並木委員 西村条約局長ちよつとお尋ねいたしたいのですが、今の戦争というものは法律状態を破壊して云々という総裁の御答弁、あれは国際法上ああいうものなんですか。
  139. 草葉隆圓

    草葉政府委員 おそらく並木委員は十分御承知の上でさらにお尋ねになつていると思いますが、この間から、総理からも私からもるるお答えを申し上げておつたと思いますが、戦争状態が続いておると申しますのは、国交がいわゆる平和状態に回復していない、戦闘はすでに昭和二十年の九月二日の降伏文書の調印によりまして済んだのであります。これによりまして、それぞれ御承知のような方法がとられて現在に参つたのであります。これがいわゆる法的根拠によつて進んで参つたのであります。それを全然無視をして新しい方法で、あるいは進駐をしあるいは侵略をする、あるいはその他の方法によつて日本を占領するという形になりますると、問題は全然新しい状態の展開においてのみ考えるものだと存じます。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 次に大橋法務総裁に日本の自主性についてお尋ねしたいと思います。今度の日米安全保障條約というものは、よほど上手に運営されませんと、日本としては相当主権は回復いたしましても、その主権が制限されたり、従つて自主性というものが制限をされたりする場合があるのではないかと思いますのでお伺いするのであります。平和條約が成立して日本として独立したときにはほんとうに完全に自由になる。これは私どもの常識的な感じでありますけれども、たとえばその点憲法の改正などについてもおそらく完全に自由になり得るかどうか。     〔「そんなことを聞いてはずかしいじやないか」と呼ぶ者あり。笑声。〕
  141. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 自国の憲法をいかに定めるかということは、これは国の主権の作用でございまして、平和條約によりまして日本の主権は完全に回復されておるということによつて、そういうことは当然に言えると思います。
  142. 並木芳雄

    ○並木委員 私は今の憲法の改正も自由になるかと聞いたときに、皆さんは、中には笑つた人もありますけれども、これはなかなか現実の問題として出て来るときに、そうほんとうに完全に、自由になるかどうかということについて疑問があるから聞いておるのである。もう一つの例をあげてお聞きするならば、たとえば今は占領治下でございますから、言論などについても完全に自由にはなつておりません。しかしこれは独立したあかつきには完全な自由となつて、外国に対する批判なども何ら制限を受けないかどうか、特に米軍日本に駐留することになりますから、そういうものとの関係においてどうなるか。日米安全保障條約によつて米軍日本に駐留をいたします。それに対する私ども日本人の批判、そういうものも含んで完全に自由になるかどうか。
  143. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本が主権を回復して自由になるということは、国内の問題につきまして日本自身が自由に定め得るということを意味するのでありまして、講和條約が効力を生じましたならば、この意味の自由は完全に日本にとりもどしたわけでございます。そしてこの自由に基きまして、外国に対しまする国内の国民の行動に対していかなる規定を設けるかということは、これは主権の自由なる判断によつてきまるものであります。
  144. 並木芳雄

    ○並木委員 ところが今度の日米安全保障條約の中に含まれておる行政協定で、こういう点に触れて来るんではないかと思うのです。たとえば米軍に対する防諜というような見地から、われわれの言論、そういうものの自由がある程度制限されるのではないかと思いますが、こういう点に対してはどんなふうになつておりましようか。
  145. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 行政協定はまだ始まつておりませんので、内容は全然まだわかりません。
  146. 並木芳雄

    ○並木委員 今度駐留される米軍に対して、私どもの批判というものはやはりある程度制限されるということはあり得るとお考えになりますかどうか。
  147. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 駐留軍は日本の利益のために駐留しておるのでございまして、これに対しまする国民の行動というものが、日本の利益のために駐留しておりまする駐留軍の行動を妨害するというようなことがありまする場合においては、日本は自由なる判断によりまして、そういう行為を制限するということは、これは十分に考え得ることであります。しかしこれは具体的に今日何ら問題にはなつておりません。
  148. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまの御答弁は、あるいは日本の裁判管轄権という問題とも関連して来るかと思いますが、日本の司法権、裁判管轄権、こういうものも、米軍の駐留によつてある程度の制限を受けることがあり得るとお考えになりますかどうか。
  149. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国際法の原則によりますると、国外に駐留いたしておりまする軍隊というものは、その駐留いたしておりまする国の裁判管轄権に服しないというのが原則でございます。従いまして、今日安全保障條約によりまして当然米軍の駐留ということが、予定せられまする以上は、その駐留軍そのものに対しまする日本の裁判管轄権がないということは、これは当然国際法上明らかであります。     〔発言する者多し〕
  150. 田中萬逸

    田中委員長 委員外の不規則な発言は禁じます。
  151. 並木芳雄

    ○並木委員 米・比間の協定というものはできておりますけれども、それに裁判管轄権という第十三條の項目がございます。今度の場合に日本で大体こういうような形において裁判管轄権の問題がきめられて行くものと予想しておられるかどうか、総裁にお尋ねしたいと思います。
  152. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 行政協定は、先ほど来申し上げます通り、全然まだ議題となつておりません。従いましてまだ何とも予想いたしておりません。
  153. 並木芳雄

    ○並木委員 それは西村条約局長の答弁によつても了承したのですけれども、政府としては、大橋法務総裁としては、裁判管轄権はこうあるべきだ、こうあつてほしいという腹案はあつていいと思うのですが、その腹案を示していただきたいと思います。
  154. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 外国軍隊に対します。る治外法権というものは、これは国際法上いかなる国においても認められるところでございまして、この程度は当然予想しなければならぬと思うのでありますが、それ以上につきましては別に考えておりません。
  155. 並木芳雄

    ○並木委員 現在ありますプレス・コードなんというものは当然なくなるものと思つておりますが、いかがですか。しかし米軍駐留に伴つて新聞とかあるいはその他に対する検閲の制度、そういうようなものを設けられるのではないかという声もあるのですけれども、そういう点に対する総裁のお考えはどうでありますか。
  156. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在のプレス・コードは昭和二十五年の政令三百二十五号によりまして法的な効力を持つておるものでございますが、この政令三百二十五号というものは当然講和條約の発効に際して廃止せらるべきものと考えております。従いましてその後においてはプレス・コードというものはなくなるわけでありまして、政府といたしましてはこれにかわるべき何らの措置というものはただいま全然考えておりません。
  157. 並木芳雄

    ○並木委員 この際池田大蔵大臣にお尋ねをしたいと思います。私は自主性というものが阻害されてはいけないという見地からの質問なのですが、日米経済協力というものが出て参ります。またその他の関係においても、日本独立しても、日本アメリカとの経済関係は密接な関係を持続して行くものと思われます。そういう見地から、私どもとしては最も大事な予算の編成あるいは予算の審議、そういうものに対して、どうしても実質上制限を受ける、日本政府あるいは国会独自の立場行動できない場面が出て来るのではないかと思いますけれども、そういう点に対する池田大蔵大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
  158. 池田正之輔

    池田国務大臣 平和條約が成立いたしまして、その後におきまする予算の編成権は主権がこちらに参るのであります。完全な独立国になるのでありますから、制肘を受けることはございません。
  159. 並木芳雄

    ○並木委員 次に大橋法務総裁に、米軍日本国内治安に協力する場合の点についてお尋ねをしておきたいのであります。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助」という文字が使つてあります。ここでこの「大規模の内乱及び騒じよう」ということをはつきりしておきませんと、私どもとしては判断に苦しむのでございまして、この際大橋法務総裁にどういうものを「大規模の内乱及び騒じよう」とするか、その定義を下しておいていただきたいと思います。
  160. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 内乱、騒擾につきましては、すでに刑法においてかような言葉を使つてあるのでありまして、どういうものが内乱であり、どういうものが騒擾であるかということについては、おのずからそれぞれ定義が下されております。ここで注意を要しまする点は、いかなる場合に米軍の援助を要請することができるかという点でございます。これは條約に明らかにされたところによりますと、国外の一または二以上の外部の国による教唆または干渉によつて引き起されたものでなければならないということであると思つております。
  161. 並木芳雄

    ○並木委員 日本政府の「明示の要請」とはどういうことを意味しますか。
  162. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 明示の要請は、日本政府を代表する者がアメリカ政府に対して行うわけでございます。これは口頭または文書によつてなされるものと考えております。
  163. 並木芳雄

    ○並木委員 その場合総理大臣がやることになるかどうか、あるいは外務大臣か、法務総裁か、どういうふうになりますか。
  164. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはいずれ内閣において十分相談いたしまして、それに基いて、この際の要請は日本のいかなる機関からアメリカ側のいかなる機関になさるべきが適当であるかということを日本側としても考えると思います。またアメリカ政府としても、いろいろ意見があることと思います。現実にこの要請が日本側のいかなる機関からアメリカ側のいかなる機関に対してなされるかということについては、必要があれば行政協定も行われることと考えます。     〔発言する者あり〕
  165. 並木芳雄

    ○並木委員 やじを少し整理してください。わかつてもいないくせに、人のことを勉強しろとか、失礼千万だ。
  166. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  167. 並木芳雄

    ○並木委員 米軍日本国内治安のために援助をする場合に、その指揮監督権はもちろん日本政府にあつて米軍側ではないと考えますけれども、この点確かめておきます。それは大元の場合ですが、その末端において、個々の警察機関などは相当のトラブルが起るおそれもなきにしもあらずと思うのです。そういう関係はどういふうなものになつて行くか、この際お確かめしたと思います。
  168. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 米軍の指揮監督は米軍側の機関によつて行われるものと考えます。また日本側の機関と共同して国内の鎮圧に出ます場合はおきまして、いろいろトラブルを生ずるということもあり得るわけでありまするが、これを予防するために必要な措置は、必要があれば行政協定としてあらかじめ相談されるということもあろうかと思います。
  169. 並木芳雄

    ○並木委員 答弁の最初のところの、米軍の指揮監督は米軍側でするということは現実には、日本政府が明示の要請をして、そうして援助に出て来た場合の行動において、なおかつ米軍の指揮監督下にある、こういう意味ですか。私はその場合は、米軍を含めて、その最高の監督というものは日本政府側になければならないのじやないかと思うのですけれども、その点確かめておきます。
  170. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 当然必要な事柄があれば、行政協定においてきめられる事柄と思います。ただ今、私の想像いたしておりまするところでは、日本政府の明示の要請に基いて出動をするのでありますが、出動をした以上は、これは米軍側の指揮監督によつて行動をするというような仕組みに当然なるのではなかろうか、こう思います。
  171. 並木芳雄

    ○並木委員 そこはちよつと大切でありますから、くどいようですがもう一度お尋ねをいたします。そうすると、日本の警察とかあるいは警察予備隊、そういうものはやはり米軍の方の指揮監督に入つて行く、こういうことになりますか。
  172. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 本来日本側の機関は、ただいま結ばれておりまする條約の文面からいたしましては、何ら米軍に対して指揮監督をするというような根拠はないわけでありまして、ただきまつておりますことは、米軍国内の騒擾、内乱に際して出動する場合においては、日本政府の明示の、要請に基かなければならないということだけでございます。出動した場合において、その出動の範囲、程度あるいはまたその際におきまする日本側の機関との関係、こういうことにつきましては現在何らきまつておりませんから、きまつておらないという意味においては、アメリカ側の機関はアメリカ側の指揮監督のもとに、日本側の機関は日本側の指揮監督のもとにというのが当然のことであります。これと異なつた定めをなすという必要があるといたしますれば、それは行政協定で特別のとりきめを必要とする上思います。
  173. 並木芳雄

    ○並木委員 治安の任に当る大橋総裁としてはどうお答えになりますか。国内の治安に当るのでございますから、日本政府の方に最高指揮監督権がないと非常に困るのじやないかとお考えになると思うのです。いかがですか。
  174. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国内事態に対しまして日本側の機関が活動いたしますのは当然でございます。その際におきまして、なお騒擾あるいは内乱の性質から見まして、米軍の援助を懇請する必要があるという場合においては、当然明示の要請をしなければならない、そうしてその場合におきまして、どういうふうにあることを希望するかという御質問と存じますが、これはただいまのところそこまで考えておりません。
  175. 並木芳雄

    ○並木委員 この国内の治安に関する條項も含まなければならないということは、私たち独立する国民としては実に情ない感じがするのです。実際に国内の治安維持力というものは、こういう規定を必要とするほど貧弱なんですかどうか。
  176. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 最近のアジア諸国におきまする実情を見ますると、国内の内乱騒擾というごときものでありまして、これが国外の勢力の教唆あるいは干渉によつておると認められるものが相当あるわけでございます。この場合におきまして、国外勢力の教唆干渉のありようのいかんによりましては、非常な大規模なものになるということも考え得られるわけでございます。そうしてそれらの事態をも含めまして、国内においては、できるだけ国内の治安は政府といたしましてみずからの力で守つて行くようにいたしたい、こういう希望を持つておるわけでございまするが将来いかなる事態があるかもしれませんので、かような條約がとりきめられたものと考えております。
  177. 並木芳雄

    ○並木委員 共産党の追放された幹部がいまだにつかまつておりませんけれも、これなどの動向は今どうなつていますか。
  178. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の幹部に対しましては、引続き捜査を継続いたしております。
  179. 並木芳雄

    ○並木委員 国民の間ではずいぶん不安を感じて、実際これがつかまらないなんて、そんな貧弱な治安維持力というものはないじやないか、どこにその原因があるのだということを知りたがつているのです。この際、追放幹部の逮捕されない原因を明らかにしてもらいたいと思います。
  180. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 追放幹部の所在につきましては、関係機関が協力いたしまして捜査いたしておりますが、不幸にしていまだ的確につかんでおらないのであります。
  181. 並木芳雄

    ○並木委員 ばかにあつさりした答弁なのですけれども、このごろは、むしろそういう不安から大橋総裁の不信任にまで拡大されつつあるのです。何ゆえにつかまらないのか、その欠陥というものをもう少し明らかにしてもらいたいと思うのです。たとえば先般自治警察を国家警察にもどすことができる法的措置をいたしましたけれども、あれなどは、やはり自治体警察にしたということが一つの原因になつておるかどうか。そうだとすれ、ば今後自治体警察を国警一本にする計画を持つておられるかどうか。あるいは海上保安庁とか、そういうものを一括して国家保安省、こういうものをつくつて治安系統を一本にして強化する、こういう計画を持つておられるかどうか。何かそこに対策を示して、必ず治安の任に任ずるという決意が現われませんと、国民としては安心しておられないと思うのです。そういう点について、大橋法務総裁の御答弁を伺いたいと思います。
  182. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 自治体警察の小規模なるものは、能率上これを廃止いたしまして、国家地方警察に一緒にする方がよろしいという考えのもとに、今春警察法を改正いたしたわけでございます。当分の間、警察制度につきましてはこの改正いたしました現在の制度によつてできるだけ警察の能率を発揮させるようにしたい、こう思つておりまして、最近においてこれを重ねて改正するという考えは持つておりません。なお治安省というような構想があるかという御質問でございまするが、政府といたしましてはまださような点は考えておりません。
  183. 並木芳雄

    ○並木委員 国内治安の不安に伴つて、先般こういう新聞記事を見たと記憶します。消防団員に対しても捜査の権利を与えるというようなことなんですが、消防団員を国内治安の任につかせようという計画がおありなんですか。
  184. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 消防団員という意味がどういう意味かわかりませんが、案は消防のために従事いたします人々の中で、義勇消防団と申しますか、平生は他の任務についておりまして、火災の際に臨時消防団を編制して消火のために従事する人々もあるわけです。しかし大都市等におきましては、消防の任務に専従いたします特別の公務員がおるわけでございます。ただいま御指摘になりました、何か消防団員に特別の捜査権を与えるという問題は、おそらくこの消防に専従いたします公務員に対しまして、放火、出火等の犯罪についての取調べのために強制権を与える、こういう問題ではないかと思うのでございます。この点は、放火、出火等の火災関係の犯罪の予防あるいは取締りという上から申しまして、研究すべき問題だと思いまして、政府といたしましては研究中でございます。
  185. 並木芳雄

    ○並木委員 国内治安が日米安全保障條約に盛られる、ことほどさように非常に深刻になつて来ておることに関連して、警察予備隊というものにわれわれは大きな期待をかけているのですけれども、この警察予備隊は、今後増員をして行く予定ですか、どうか。
  186. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 予備隊の増員については、計画はございません。
  187. 並木芳雄

    ○並木委員 警察予備隊をもつと増強すれば、この日米安全保障條約による米軍の援助というものは、国内治安に関する限り不要になるのではないかと思うのですけれども、そういう点はお考えになつておるのですか。
  188. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在の警察予備隊のごとき性格のものを幾ら増強いたしましても、これで日本安全保障が確実であるということは、ちよつと困難だろうと思います。
  189. 並木芳雄

    ○並木委員 それはどういうわけですか。
  190. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今日の日本安全保障というのは、国内の治安だけの問題ではございませんので、日本を取巻く国際情勢というものから来るわけでございまして、日本安全保障ということは国内だけの問題ではない、こう私は考えるわけであります。
  191. 並木芳雄

    ○並木委員 国内の治安の維持に対して、警察予備隊を幾ら増強しても、やはり何にもならないという考えを持つておられるのですか。
  192. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本国内の治安につきましては、安全保障條約において、すでに外国からの教唆、干渉というものによつて国内に大規模の内乱または騒擾が惹起されるということが十分に予想されておるわけでございます。かような場合におきましては、国内の治安をかような事態について完全に守るというためには、警察予備隊のごとき性格のものだけでは不十分ではないか、こう思います。
  193. 並木芳雄

    ○並木委員 さつきから警察予備隊と軍備との問題が出ておりますけれども、軍備とは、前に大橋法務総裁の説明によれば、近代的装備を持つているかどうかということが軍隊であるかどうかを定める標準のように私は記憶しております。ところが最近では相当優秀なる近代的武器を警察予備隊が持つておるように聞いておりますけれども、どういう装備を持つておりますか。
  194. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊といたしましては、カービン銃、ライフル銃並びに機関銃を持つております。
  195. 並木芳雄

    ○並木委員 それらはいわゆる近代的武器にはならないんですか。
  196. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 近代的軍隊においても使用しておるところの武器と同じ武器であります。
  197. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、やはり警察予備隊は軍隊であるという所論が出て来るわけなのですが、もう一度、これはくどいかもしれませんけれども伺いたい。政府は近代的武器というところで、警察予備隊は軍隊でないと言い張りつつ、これをうやむやのうちにだんだん軍隊に切りかえて行くおそれがあるのではないかと私は思います。
  198. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の持つておるカービン銃、ライフル銃あるいは機関銃等は、近代的な軍隊が持つておるものと同じでありますが、しかしこれだけでは近代的な軍備というものはできないのでございまして、警察予備隊はそのごく一部を持つておるだけでございます。これはまつた国内治安ということのために必要なりと認めて、それだけの装備をいたしておるわけでございます。
  199. 並木芳雄

    ○並木委員 総裁の答弁も多少内容がかわつて来たようですから、その程度にしておきます。  次に外から侵略のあつた場合についてお尋ねをしておきたいと思います。外部からの侵略があつた場合に、米軍の判断で行動を起すと思いますけれども、その場合に米軍だけが行動するのかどうか。日本の警察予備隊あるいは警察、こういうものはどういう扱いを受けるか。つまりこれに協力して一緒に出動しろということになるのかどうか。こういうような点をお伺いしたい。
  200. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 外部からの侵略の際におきまして、これは安全保障條約の第一條におきまして「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」こう米軍について規定をいたしておりますから、当然この際は米軍の判断によつて米軍は活動するものと考えます。そうしてその際におきまして、日本の警察機関その他はいかなる活動をするかという点をあわせて御質問になりましたが、この際におきましては日本みずから自衛権を持つておるのでございますから、この日本自衛権範囲におきまして、日本政府の必要と認めた措置をこれらの機関に対して命ずることは当然考え得るところであります。
  201. 並木芳雄

    ○並木委員 行政協定というものが、これは條約であるという総裁の見解を私は正しいと思うのです。ところが総裁はしかしながらといつて、これを憲法七十三條の国会の承認を経るものとして扱つておりません。この点が物足らないのですけれども、條約ならばやはり條約として、憲法七十三條で行政協定は当然国会の承認を経べきであると思うのですが、どういうわけで総裁はその点がんばるのですか。
  202. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この行政協定は七十三條第三号の條約でありますから、国会の承認を経るのは当然であります。その国会の承認の方法といたしましては、その基本になつております安全保障條約を承認することによつて、事前の承認をこの行政協定に対してもお与えをいただくべきものである、こう考えておるわけであります。
  203. 並木芳雄

    ○並木委員 私どもはいろいろの点でこの條約というものは憲法に違反をするのではないか、抵触するのではないかということを感じるのです。たとえば在外私有財産の補償などは、当然政府としては個人に対してやるべきであると思いますけれども、先日来の政府の答弁では、どうもその点がはつきつしておりません。もしその個人に払わないのであるとするならば、これは憲法違反になると思うのですが、その点どう説明されますか。
  204. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法におきましては、個人の財産に対しまする侵害に対しましては、補償あるいは賠償ということは当然原則となつておりますが、在外財産は憲法施行区域外にあるものでありまして、日本憲法の管轄外の事柄である、こう考えております。
  205. 並木芳雄

    ○並木委員 とにかくいろいろのそういう憲法に抵触するおそれのあるものについて、私は條約と憲法との関係をお伺いしようと思つてつたのですが、先ほど他の委員からお尋ねがあつたようです。あのとき私聞いておつたのですけれども、結論的には憲法と條約が抵触した場合に、どつちが優先するかというところを総裁はぼかしておつた。どつちが優先するということを政府立場としてどうしてはつきり言えないのですか。
  206. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、憲法に違反したるような條約ができ上るということは、あり得ないと考えております。
  207. 並木芳雄

    ○並木委員 それは政府考えであつて、私どもの考えはまた別の立場から見る場合があるわけです。どうしても解釈が対立する場合もあるのですから、憲法と條約とが抵触した場合に、どつちが有効であるかということを聞いておるのですけれども、どつちが優先するとかあるいは抵触しておるとかいうことを最終的に決定するのは、先ほど総裁の答弁では裁判所とかいうふうに聞いたのですが、その点もう一度はつきりさせておいていただきたいと思います。
  208. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私のお答え申し上げておりまするのは、憲法に違反したような條約の効力がどうなるかという御質問でございますから、憲法に違反した條約は現内閣といたしましては結ばないことになつておるのであります。しかしもし結んだらどうかという御質問でございますから、それはあなたのお考えによつて、結ぶような内閣ができたときに、それにひとつお聞きを願いたい。(笑声)
  209. 並木芳雄

    ○並木委員 そうでなく、法的にどうですか。
  210. 田中萬逸

    田中委員長 並木君、時間もだんだんたちますから簡潔に願います。決して言論を抑圧するものではありません。
  211. 並木芳雄

    ○並木委員 委員長の注意がありましたから、なるべく簡潔にはやりたいと思います。しかしほんとうにこれは私は疑問の点が多いものですから、それを確かめるべく、先ほど来お聞きの通りすこぶる穏健な質問を継続しているのです。いやがらせの質問とか、時間食いの質問とは違うのでありますから、その点御了承願いたい。  今度の日米安全保障條約をどうして結ばなければならないかということに関して、私どもはこの條約を結ぶことによつて絶対に外部からの侵略を寄せつけないのだという断言を政府にしてもらわないと、納得が行かないのです。(笑声)と申しますのは、それはお笑いになるかもしれませんけれども、来てしまつてはおしまいなんです。先ほど来の政府の答弁によつても、実に弱体な日本なんですから、来てしまつては、爆弾を落されるか、どういう攻撃を受けるかわかりませんけれども、国民は塗炭の苦しみに追い込まれるのであります。で、私はどうしても防衛するのだという消極的な意味よりも、むしろこの条約締結すれば絶対に外からの侵略は来ないのだ、こういう断言ができるかどうか、それを政府に聞いてみたいと思います。
  212. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問のように、このような極東情勢において日本がいよいよ独立してまる裸になる。しかしそれではいかないからこの日米安全保障條約を結ぶ、結んだ場合にアメリカ軍が日本に駐留することによつて外部からの侵略は全然ないという点が国民のたいへん心配しておる点だという御質問の御趣旨だと承知いたしますが、私どもはアメリカ軍がこの條約によつて日本に駐留いたしますことによりまして、絶対にそのような状態を起し得ない状態確信いたしております。
  213. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでその確信をお聞きするために、かりに米軍の駐留を希望しなかつた場合はどうなるかということを政府考えたと思うのです。もし米軍の駐留を希望しなかつた場合にはどんなふうになつたか、その考えた径路をここに示していただきたい。これは何でもないことのようでありますけれども、非常に裏から見た場合に重要性を持つて来るので、われわれが納得をする一つの大きなよすがになると思いますから、その点をひとつお答え願います。
  214. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この條約を結ばずに日本独立した場合におきましては、最も日本は危険な状態になると思います。
  215. 並木芳雄

    ○並木委員 その場合国際連合の一般的保障というものは受けられることになつていますけれども、それだけでは心細い、こういうことになるわけですか。
  216. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御承知のように国際連合の目約、原則等によりまして、平和を保つためにいろいろな方法が講じられ、また講じられて参つたのでありまするが、しかしあれだけによりましては現在十分な安全ということを来し得ないことは実例が示しておるのであります。時間的に考えましても、その侵略等の場合に、ただちになし得るという方法は、やはり自衛権発動あるいはこれにかわる方法を持つて来なければならないので、従つて国際連合憲章の五十一條というものが最もとらるべき一つ方法になつて参るのであります。
  217. 並木芳雄

    ○並木委員 政府はこういうことを考えたことがあるかどうか。要するに米軍が常駐しないで日米安全保障條約というものをつくる。つまりたとえば日本の周辺の島嶼などには米軍は基地を持ち、そこに駐兵されるのでありますから、それとアメリカの本国、そういうところから急遽日本に来る、そういう形をつくつておいて、日本の領土そのものに駐留をしないでやつたらどうか、そういう場合を考えたことがあるかどうか。
  218. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、たとえばずつと遠方の方へ消防の機械を置いて、そうして火事があつた場合のことを予想するという問題でありますが、第一にその消防器具を置く場所の問題にもなつて参りましようし、こういうことは考えたことはございません。
  219. 並木芳雄

    ○並木委員 大体どのくらいの米軍が駐留されるということを予想していますか。
  220. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは日本の安全を保障するのに最も妥当な数字をアメリカ軍が考えておることだと存じます。
  221. 並木芳雄

    ○並木委員 それだと私がさつき聞いた、つまり日本の領土そのものには駐兵をされていなくても、間に合う場合があるのじやないかということに対する答弁にならないと思うのです。最低どのくらいは常駐してもらわなければ困るという政府としての考えがはつきりしていなければならないと思います。その点はいかがですか。
  222. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本のぐるりは御承知のように海でございます。現実の問題で陸がありまするならば、それは他国であります。従つて日本防衛のために他国が犠牲になるというようなことはあり得ないことであります。まず日本みずからが真剣に考えて行く場合に、この方法考えられるのであります。従つてその場合にどれだけの兵力量というようなことは、これは今後におきまして十分アメリカ軍を中心にして考えられる問題だと思います。
  223. 並木芳雄

    ○並木委員 その兵力だとか、それから基地をどこにするかということは、つまり行政協定できめられるのですか。
  224. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この條約についての具体的の問題は、ここにありまする通りに、配備を規律する条件は両政府間の行政協定できめる。従つてその配備を規律しまするもろもろの細則の問題を行政協定で相談するというのであります。
  225. 並木芳雄

    ○並木委員 そういう点が、私どもが率直に聞いて何かしら不安を感ずるわけなのです。いかにも政府がこわがつて触れないで、受身の形になつておるというふうにとれるのです。先ほども西村条約局長が、実はそういう点については皆様の御意見などを聞いて、そうしていろいろと政府としての考えも定めたいという言葉があつた通り、私の側からいえば、政府としては当然自主的にこれこれのものはどうしてもこうあるべきだ、そういうプランが今日までにもうできていなければならないはずだと思います。そのプランが全然ないということは、まつたくあなたまかせということにしか受取れないのです。そこで不安になつて来るのですけれども、そういう点、どういうふうにお答えになりますか。
  226. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は前々から申し上げますように、この條約が効力を発生いたしましたあかつきに、根本的には、国際連合憲章の五十一條による集団安全保障方法をとる上においては、アメリカ軍の日本国内における駐留ということを考えてもいいのではないか。この駐留という点につきましていろいろ具体的な問題が通るが、この具体的な問題は、今まで早く相談をし、そして具体的にきめて遊んで参りたいという準備で参つておりましたが、第一に、アメリカ日本との平和條約の各国との折衝その他によつて手をとられまして、その後今日まで何らこれについての打合せを進め得ない状態になつておりますことは、先刻くれぐれも申し上げた通りであります。従いまして、これはいずれこの條約が発効いたしますと、その日にただちに発効する問題でございますから、なるべくすみやかに遊んで参る。しかしこの内容は、むしろほんとうは国会の皆さん方の審議の前にきめるということよりも、――これは偶然時間的にこういうようになつて参りましたが、さきに西村局長からも申し上げましたように、十分御意見等も拝承して、今後の相談の問題に進めて行くことがむしろ民主的ではないか、かように考えておるのであります。
  227. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、せめてその項目だけでもあげることができないのが、実に残念に思うのです。前例として米比協定あるいは米英協定というものがあるのですが、どうなんですか。大体あれにあげられているような項目がやはり今度取上げられて来るものと見ていいのですか。大体の構想くらいは政府として持つていなければ、ただ向うのきめて来ることを待つているという姿ではほんとうに心細いと思うのです。
  228. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、総理からもこの前お答え申し上げましたように、あるいはアメリカとイギリスとの問題、あるいはアメリカフイリピンというようなこともあるようだが、しかし日本は最も適当な方法で、今後進めて参らなければならぬ、しかも今度のアメリカ日本に対します態度は、いわゆるほんとうに信頼の上に立つた相談で進んでおりますから、今までにかつてない最も日本に妥当な方法であると思つております。
  229. 並木芳雄

    ○並木委員 どうもその点非常に心細い答弁で困るのですけれども、急いでやれという御注意もありましたから次に移ります。もうすぐ終ります。項目だけ言います。  国連加盟が実現したら日米安全保障條約は必要がなくなるものと見られるかどうか。国際連合に加盟をした場合にはこの條約は不要となるものと思うかどうか。
  230. 草葉隆圓

    草葉政府委員 平和條約におきましては、国際連合に加盟することを日本は意思表示をし、申請をする。そして加盟いたしません前からもその国際連合目的を承認しながら、義務を持ちながら進んで行くということが條約の中にうたつてあるのであります。従いまして加盟をいたしませんでも、国際連合憲章の精神とその目的に向つて協力をし、またその国際連合目的に大いに力を注いで参りまするので、その目的によつてできました日米安全保障條約は、国際連合日本が加盟いたしましたからといつてそれで解消するものとはならず、国際連合憲章目的を達する一つの手段として日米安全保障條約を結んだ次第であります。
  231. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、暫定的といつている暫定的というのは、相当長いものとなる、こういうふうに予想されますけれども、いかがですか。
  232. 草葉隆圓

    草葉政府委員 必ずしも長くなるというものではない、いわゆる言葉通りの暫定的だと思います。
  233. 並木芳雄

    ○並木委員 国連に加入するには便法があるという答弁がありました。その便法があるならば、期間として大体どのくらいの間に便法が講ぜられると政府は予想しておりますか。
  234. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は調印をいたしてくれました四十八の国々は、ともどもに日本国際連合に加盟することを支持しております。従つて、あるいは手続上、正式に国際連合加盟の処置がとられない状態になりましても、この支持は続いて参ると存じまするから、一昨日来申し上げましたように、正式な加盟ができないまでもいろいろな方法が講じられるだろう。しかしこれは、時間的にいつてというようなことは申し上げかねると存じまするが、おそらくは調印をいたし、今後批准をいたしてくれまする多くの国々が、日本国際連合加盟に対する支持に強く協力してくれることと信じております。
  235. 並木芳雄

    ○並木委員 この條約は朝鮮動乱を解決するための條約だと説く人もあるのですが、この点について政府の見解をただしておきたいと思うのです。その論拠とするところは、軍備に制限を設けておらない点や、それから国連に加入する前でもその義務は條約上の義務としてわれわれが守らなければいけないということ、あるいは国連行動に対して援助を与える、それから駐日米軍日本以外の地域へも出動できるというようないろいろな条項を一貫して考えますときに、この日米安全保障條約は、朝鮮動乱を解決することを目的として急がれておるのではないかというふうに説く人もあるのですが、政府の所見をお伺いいたします。
  236. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、前文にもはつきり書いてありますように、日本の安全を保障し、ひいては東亜の安全と平和とに寄与する目的で進んで参つておるのであります。
  237. 並木芳雄

    ○並木委員 やはり私どもとしては、再軍備の問題を取上げておかなければならないのです。先ほど来池田大蔵大臣の答弁にも、軍備というものは非常に金がかかるから、今考えておらないという点があつたのですが、こういうことを政府考えたことはないか。それは、六年前の敗戦を喫したときに、実際二度と戦争などというものは起るものでないということを、これはだれも感じた。だからこそ、日本でも軍備を放棄し、憲法でも第九條ができたわけなんです。ところが六年後の今日、独立しようとするときに、世界情勢は私どもが予想したのとは反対に、今なおこういう激化した情勢にある。そうだとすれば、あのときばらばらにした日本軍備は、措しいことをしたな、そういう感じを政府は特になかつたか。こんなことであるならば、軍備をばらばらにしないでとつて置いてもらいたかつた。私が申し上げるのは、決して当時の軍国主義を保存しろとか、当時のそれに携わつた人々を助けるとか、そういう意味ではない。軍備そのものは無色透明なものなんですから、そのものをとつておきたかつたという気持――今日世界情勢が激化されて来ておることは、日本のせいではない、日本の責任ではないと思う。しかも日本においては、先ほど来申し上げます通り、今度の條約を通じて、軍備を禁止されたものが、軍備を持つてもさしつかえないというふうに急転回をして来た。そういうことを考えますと、日本がほんとうにみずから進んで軍備を持つという意思を決定するならば、連合国の方としては財政的援助をしてくれるのではないか、そういう一つの論拠が私は出て来るのではないかと思うのです。この点について政府はどうお考えになりますか。
  238. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本といたしましては、政府も国民も心からポツダム宣言の受諾により、それの履行を忠実にいたした。日本人らしく、男らしく、しかも誠心誠意を込めましてポツダム宣言を忠実に履行いたしたのでございまするから、みんな心よりこの点を釈然としながら、進んで新しい日本の建設に進んで参ると存じております。
  239. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで大橋法務総裁に一つお伺いしたいのは、憲法九條で軍備を放棄した、武装を放棄した。ところが今度の條約では、持ちたければ持つてもいい、つまり禁止の条項がないわけです。憲法ではそれは積極的規定として、これこそ断固として軍備を放棄したのが九條である。しかるに今度の條約では、持ちたければ持つてもいいという内容を含んだとりきめをしております。それはやはりこの憲法九條に抵触するんじやないかという疑いを持つのですけれども、その点どういうふうに説明されますか。
  240. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 平和條約によりまして、日本の主権は何らの制限を受けておらないのでございます。従いまして平和條約によりますれば、日本国は、日本国みずからの意思によつて軍備がほしければ軍備を備えてもいい、こういう状態なつたわけであります。このことは完全なる主権国として、日本軍備の問題についてみずから決定できる状態なつたということを意味するわけでありまして、そのみずから決定できる状態なつ日本において、日本国憲法によつて軍備は持たないということをみずから決定しておる。これは何ら矛盾はないわけでございます。これが主権国としての当然の本来の姿である、こう思うのであります。
  241. 並木芳雄

    ○並木委員 では最後にお伺いします。これは手続の問題になるのでありますが、日米安全保障條約に米軍の駐留する内容を持つことは、アメリカ平和條約に調印し、署名した後でなければ効力を発生しないのではないかという昨日の私の質問に関連してのことであります。昨日の私の質問に対して西村局長は、日米安全保障條約は、平和條約の第六條(a)の但書によつてできるのではなく、その前の第五條の(c)によつてできるのだ、と答弁されました。私どもは第六條によつて日米安全保障條約が当然結ばれるであろうと予想した。「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」これによつて初めて日米安全保障條約による米軍の駐留はクリエートされると信じておつたわけなんであります。ところが昨日の局長の答弁ですと、この第六條ではなくて、その前の第五条の(c)、つまり「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一條に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」これによつて締結されるのだということなんです。そこから出て来るということは答弁として受取れるのですが、駐兵そのものは第六條の(a)の但書によつてのみ出ると私は思う。もしそうでないならば、どうしてこの但書をわざわざつくつたか、この点が私の疑問なんです。ですから日米安全保障條約は米軍の駐留を内容としておる以上、アメリカ平和條約に批准をした後でなければ締結ができない、効力を発しないと私は思うのですが、この点についての御説明を求めたいと思います。
  242. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 並木委員が御指摘になりました通り日米安全保障條約は、平和條約第五條(c)項に言つておりますように、日本が完全独立主権国として持つております安全保障とりきめを締結する権能に基いて締結されるものでございます。この点は何ら疑問のない点でございます。ではなぜ第六條の但書があるかという点でございます。この但書は平和條約の交渉中におきましても、インド政府が最も強硬に無用だということを主張した点であると了解いたしております。第五條(c)がある以上は、日本連合国のみならず、世界のいかなる独立国とも自国の安全保障のためにその好むところのとりきめを締結することができる、但し国際連合憲章の一般原則に従うことはむろんであります。従つて但書はいらないという主張をいたしました。それに対して米国はなぜ第六條の但書を存置することを固執したかという点でございますが、その点はサンフランシスコ会議でダレス米国代表がはつきりと説明をいたしております。それは第六條但書がありませんと、第六條に規定しておりますように、平和條約が効力を発生すれば占領軍は日本を撤退しなければならないという規定がある。それで但書がないと、今占領軍として日本におる米国軍はどうしても第六條(a)の規定によつて一たん日本国外に撤退しなければならない。そのあとで再度日米間の安全保障とりきめによつてあらためて日本に駐屯しなければならなくなると考えられるかもしれない。こういう無用の誤解を招く懸念があるので、合衆国政府としてはインド政府の主張をいれることはできなかつたと説明いたしております。私どももそういう意味でこの但書は注意規定として有要であると、解釈いたしておるわけであります。
  243. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは私の質問を終りますが、今の局長の答弁のうちに、條約が成立したらすぐ撤退しなければならないと申しますけれども、アメリカが批准をしてから條約が成立するまでの間は、相当あるのじやないですか、だから必ずしもそればかりでこれをつつぱるということも、ふに落ちない点もあるのですが、この点はいかがですか。
  244. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 平和條約が効力を発生いたしますと、日本におる合衆国軍隊は、占領軍としての性格を完全に喪失いたします。従つて日本国内において、この日米安全保障條約によつてある種の目的を与えられない以上、軍事的行動をとることを得ないのであります。要するに九十日間船待ちをする期間をもつておるにすぎない軍隊になるわけでございます。
  245. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は初めて聞いたのですけれども、條約が成立したあかつきに占領軍がそのまま駐屯するということは、無力になるということですか、どういうことを意味するのですか。もう少し具体的に説明しておいていただきたいのです。
  246. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 條約が発効いたしますれば、第一條の(b)項にありますように、日本国民の主権は完全に回復いたされます。従つて占領管理というものは、その瞬間から完全になくなるわけでございます。
  247. 田中萬逸

  248. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は時間があまりないようですから、簡単に重要な点だけお聞きしたいと思います。  まず第一は、先ほどの並木君の御質問で、講和條約ができたあと、ソ連がもし占領をやりたい、こう言つて来た時に法的にどうなるかという質問がありました。それに対して草葉政務次官及び大橋法務総裁の答弁があつたのでありますが、この点については、私は前に西村条約局長にただしたことがあるのであります。その答弁がちよつと食い違つておるようでありますので、この問題は大きな問題だと思いますので、お尋ねいたしたいと思います。西村条約局長にお尋ねいたしたいと思いますが、ソ連軍がもしポツダム宣言によつて占領を継続したいというので、軍隊日本に派遣した場合に、それは一九四五年十二月のモスクワ協定違反にならないか、お答え願いたいと思います。
  249. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一九四五年十二月のモスクワ協定は、連合国による日本の占領管理の準則を定めました連合国間の協定でありまして、日本にとつてきわめて関係の深いものでございます。なお日本の軍事占領につきましては、一九四五年十二月のモスクワ協定以前に連合国間に軍事的協定があつたと推察いたされます。しかしその辺の事情は、今日まで明らかにされておりません。いずれにいたしましても、連合国軍隊によります日本領域の軍事的占領の範囲、それから日本の降伏後におきます日本における連合国の占領管理につきましては、モスクワ協定連合国間の約束がございます。これらによりますと。占領地域につきましても、占領管理の組織、方法につきましても、連合国間にとりきめがあるわけでございます。ソ連邦が他日一方的に、この平和條約によりまして、日本領域として残される地域に兵を入れますことは、今申しました連合国間の話合いに反するものであると考えております。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がお尋ねしているのは、そのモスクワ協定違反になるかならないか。要するに戦争が起るか起らないか、どちらの国が正当であるかということは、国際法の蹂躪に対して言えるのでありまして、その基準である一つ協定、すなわちモスクワ協定というものがこの問題に関する非常に重要な主軸をなすものだと思うのであります。そこでモスクワ協定違反になるのかならないのか、御答弁を願いたい。
  251. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 モスクワ協定は、連合国軍隊による日本領域の軍事占領については規定していないと了解いたしておりますので、お答えができないのであります。留保いたしたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 留保いたしますという理由はわかりませんが……。
  253. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 モスクワ協定は、日本の軍事占領を規定していないからでございます。
  254. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私の記憶によりますると、日本における占領管理ということは、アメリカが任命した唯一の事務的な連合軍司令官によつてそれが行われるというような趣旨があつたと思うのです。従つてもし平和條約が発効することによつてマツカーサー司令部あるいはリツジウエイ司令部がなくなつてアメリカの任命する総司令官が日本にいなくなつた場合に、ソ連がもしかつて日本に軍を進めるということになれば、交渉の相手自体がいなくなるのでありますから、モスクワ協定違反になる、こういう解釈が成立しているのです。こういう解釈が成立するならば、ソ連の上陸ということは国際法違反ということになつて、一方が防衛行為をとる正当な理由が成立する、そういう正当な理由が成立しなければ正しい防衛ということは行われないのです。それで違反になるのかならないのか、こういうことをお聞きしているのであります。
  255. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 モスクワ協定には連合国日本における最高唯一の執行機関はスキヤツプであるとの規定があるわけでございます。ですからそれに反する措置をとろうとすることは、むろんモスクワ協定規定に反するわけでございます。ある数箇国間の協定、それをただちに国際法とこう考えますならば、むろん国際法に違反する行為であります。しかし正確に言えば、モスクワ協定に違反する行為と言つた方が、私は正確であろうと思うのです。学者の間に国際法とは何ぞやということについて、いろいろ議論がございますが、大体私の了解する範囲内におきましては、いわゆる慣行によつて確立しています世界全体の文明国によつて認められている原則と、文明国家の大部分が参加している一般国際條約によつて認められている原則、これをもつて国際法の原則というのが大体正当な学説のようでございますから、二国間の條約なり数箇国間の條約の規定をすぐ国際法の原則とは言えない、むろんそういう説をとる学者もないではありませんが、国際法の通念とは言えないと思います。ですからモスクワ協定に反する行為ではなかろうかという御質問でありますれば、さようでございますと御返事申し上げます。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、もしソ連軍が対日平和條約発効後、日本の占領を継続したいといつて兵を上陸した場合には、アメリカ側としては、その協定違反を理由として、これを防渇的措置をとり得るものかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  257. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういう措置に出るか出ないかは、わからない問題でありますから……。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 とり得るかとり得ないかということです。
  259. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 問題は米ソ両国間の問題でございますので、仮定の問題に対しましては、仮定的にしろ、私どもとしては、政府の見解の公表は慎むべきであると思います。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題は、国民が一番心配しておる問題である。あなたは條約局長という、條約の解釈を中心につかさどつておられる役目でありますから――外務省としてはどういう解釈をしておるかということは、日本人としても一応知つておく必要があるのであります。従つて日本の意思がどうであるかという問題ではなくて、国際法あるいは協定解釈として、米軍がもしやろうと思えばできるかどうかという解釈をお示し願いたいと思います。(発言する者あり)これが一番重要な問題だ。対日講和が全面講和になるか多数講和になるか、一番騒がれた問題だと思う、これを明らかにしなければ意味をなさぬのである。
  261. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題は、米ソ両国政府間の問題でございますので、かりに仮定の問題にいたしましても、日本政府の公的解釈は言うべきではないと思つております。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 言うべきではないと言われますけれども、一体アメリカ日本防衛するかどうかということは、この間一番重要な問題としてとりかわされた。それで、アメリカ日本防衛するということを、政府の要路は決然として答えておる。しからば防衛するならいかなる法的根拠に立つて防衛するかということは当然出で来る問題です。法的根拠なくしてそういうことはできない問題です。従つてその有力なものはモスクワ協定である。それに対する日本側の解釈というものが成立しておらなければ、そういう返事もできないのです。当然この問題に対する見解は、国民にお示しあつてしかるべきと思いますので、重ねてお尋ねいたします。
  263. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題は、日米安全保障條約上の問題であります。あなたはモスクワ協定の問題すなわち米ソ両国間の問題を取上げられましたから、私は日本政府として公的見解を申し上げるべきではないと申し上げたのです。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もちろんこれは安全保障條約によつて防衛できるということもある。しかしアメリカ、イギリスあるいはソ連、フランスというような国国の関係は、この国々の関係によつてまた処置されるものもあるべきです。従つて競合する場合もあり得るわけです。もしソ連側が、何しろ講和が発効してもソ連との講和ができていないのだから、ポツダム宣言は有効であるとして来ることは、向うのりくつとして言い得るでしよう。それに対抗できる理論がこちらの陣営にあるかということを心配しなければならぬ。その一つの要素としてモスクワ協定というものが取り出されるとわれわれは思う。そういう意味で競合する場合もあるし、向うがポツダム宣言を取上げて来た場合に、どういうふうにしてわれわれは対抗するかという根拠をお示し願いたいと思つて申し上げておる。御答弁願います。
  265. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 大体私どもの考えでは、この日米安全保障條約ができたことによりまして、そういう事態は未然に防ぎ得る、起らないんだと考えておる次第であります。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは条約局長解釈であつて世界解釈でもなければ、日本国民解釈でもない。いわんやわれわれ野党の解釈ではない。一番大事な問題は、今申し上げましたように、これが全面講和になつたか、多数講和になつたかということによつて、ソ連がどう出るかという問題です。しからば未然にそういうことが起り得ないといつても、ソ連が法律上の根拠を持つてやればやり得る。国際法の学者に聞いてみると、ソ連がポツダム宣言をもつて出て来れば、少くともりくつはフイフテイ・フイフテイだといわれている。こちらとしては少くともフイフテイ以上のものを持たなければならない。そういう意味で、国民の前に示しておくことは、この條約を結ぶ政府の前提的な責任条件だと思うが、この問題はもう少し明確にお示し願いたい。     〔発言する者多し〕
  267. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  268. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本と戦争関係にあります国は五十五箇国ございます。この五十五箇国のうち、四十八箇国その他まだ数箇国ございますが、絶対多数の国が日本はすでに講和を結ぶ資格ありと認めまして、この平和條約を締結し、そうして普通の国交関係に入ろうとしておる次第でございます。この大多数の見解に応じない一、二の国がありましようが、私どもの立場といたしましては、平和條約ができますれば、連合国による占領管理は解消いたす、何となれば、連合国日本の占領管理は解消いたす段階にすでに達しておる、いや、すでにおそ過ぎるという見解に立つて、この平和條約を締結しているからであります。従つてこの絶対多数の国の見解に同調しない二、三の国の主張は、私は道理に反すると思います。しかし国の中には、この道理に反してまでもその立場を固執する国があるのが現実の姿でございます。そういう国との間にはいわゆる降伏文書に基く休戦状態が今後も継続いたします。これは法律論的に認めざるを得ないでしよう。その点中曽根委員のおつしやる通りでございます。しからば今日降伏文書によつて存続する休戦状態なるものは、戦闘状態ではないのであります。新たに軍を動かして敗戦国に軍を進めるごときいわゆる戦闘行為をとるについては、相手側における重大なる違反行為がなければならないのであります。戦争関係にありました五十五箇国の絶対多数がすでに日本平和條約を結んで、平和関係を克服しようとしておるその段階に、二、三の国がそれを理由に兵を進めることは、国際法上容認できない事柄であります。しかし必ずしも国際法の原則を守らない国もあり得るかもしりません。まつたく仮定として申すのでありますが、そういう場合どうなるかということになります。その場合を中曽根委員は聞いておられるわけであります。その場合は日米安全保障條約が日米間にありまして、かような事態を防遏するために、合衆国日本国内及び付近に軍隊を置いてくれておるわけであります。そういう事態が発生するならば、この軍隊は必ず動くでしよう。もし動かないようではわれわれはこの條約を結ぶかいはないと思います。
  269. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは政治論であつて、これをわれわれがやらなければチヤンスが逃げるからやらざるを得ぬと最後に認めて条約局長は害われておる。しかしソ連側からすれば、たとえば占領をやろう、これはポツダム宣言に基く協定によつて占領行為をやるのであつて、戦闘行為をやるのではないのだ、管理をやるのだ、またそれを分担してやるのだ、そういう意思でやつて来れば、今あなたが御説明になつたような新しい戦闘行為や、あるいは戦時状態の中で激烈なものが予想されるという段階ではない。そういう平和上、休戦条件のもとにおける占領をこのまままた継続して来るという事態は、この日米安全保障條約を発動させる根拠になり得ますか、なり得ませんか。
  270. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本における占領管理は、連合国による共同的な占領管理でございます。単独の占領管理というものは、連合国間の申合せに反することです。しかしその問題は日本が直接関係はない問題でございますから、日本政府として公的見解を述べないと言つているわけでございます。
  271. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ですから私は結論をお尋ねいたします。ソ連側がポツダム宣言を元にして占領行為をやりたい、こう言つて、戦闘によらずして兵をあげるという場合には、この安全保障條約を発動し得る根拠になり得るか、なり得ないか、それだけの御答弁を願います。
  272. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 なり得ると確信いたします。     〔発言する者多し〕
  273. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その次に、この安全保障條約成立の経緯を条約局長にお尋ねいたしたいと思います。     〔発言する者多し〕
  275. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に願います。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この安全保障條約ができました期間は、大体ことしの一月から二月にかけての吉田さんとダレスさんの交渉で原則がきめられた。それは当時の新聞を読んでみても、二月の十一日でありましたか、両方の政府が正式の声明を発表しておるのを見てもわかります。そこで私たちは、何ゆえこのような一方的に保護されるような安全保障條約が出ざるを得なかつたかという根拠を実は承りたい。この問題は吉田さんとダレスさんが話合つた問題で、条約局長は中をよく知らない、こういう御答弁になるかもしれませんが、少くともあなたはその座席におつたはずであります。そういう観点からお尋ねいたします。もし条約局長がお答えにならないならば、私はこの問題は一番重要な問題でありますから、明日吉田総理大臣にお答えしていただきたいということを留保しておきます。
  277. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ……。
  278. 田中萬逸

    田中委員長 中曽根君。あなたは時間を省くためにそうして立つていられるのでしようが、今のような場合が起りますから、どうぞ政府の答弁の際には着座してください。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 承知いたしました。それではどうぞ御答弁願います。
  280. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御答弁申し上げます。この條約を中曽根委員が、日米保護條約だと言われるのはまことに心外でございます。この日米安全保障條約の話は、むろん同委員が御指摘の通り、本年の一、二月の交に始まつたわけでございます。その際新聞に公表されましたような大体の構想、考え方が一致したわけであります。しかしその構想に到達するまでの間に種々の話合いがあつたことは事案でございます。申すまでもなく、私どもも平和條約ができまして完全に日本独立を回復いたします以上は、安全保障の問題につきましても、日米間に完全に対等な條約を結ぶべきだと考えた次第でございます。従つて私どもが考えました安全保障体制というものはこの條約とはかなり違つたものであつたことは率直に申上げます。しかしいろいろな話をしておりますうちに、合衆国としては、日本政府立場はよく了解するけれども、合衆国としては自国の安全保障体制について重要な根本原則を持つている。それは、ヴアンデンバーグ決議であります。それによりますと、よく御承知通り相手国合衆国に対して有効な、また継続的な援助を与え得る国家でなければ本格的な安全保障体制締結する資格がないことになつておるわけであります。本格的な安全保障体制と申しますれば、簡単に申しますと、当事国の一国に対する武力攻撃が、同時に相手国に対する武力攻撃ともなり、また両国相ともにそういう事態が発生した場合には、その国の憲法の許す手続従つて、その必要と認める措置をとつてお互いに相助ける、これが一番本格的な体制だと思います。そういう立論で行く場合に、日本憲法によつて軍備を放棄し、また交戦者たることも放棄しております。言いかえれば、自衛権はありましても有効なる手段がないわけでございますから、ヴアンデンバーグ決議にいう永続的な効果的な安全保障体制合衆国と現状が続く限りは締結することはできない。しからば日本としてはできるだけ早くそういう段階に達することを合衆国としては希望する。これが前文の末項に期待として述べられてあります。それに至るまで、しからばこの日本地域における平和をいかにして保障するやという話合いになつて、今申し上げましたようなこの條約に出ました構想がおのずと総理とダレス全権との間にでき上つた次第でございます。スタートは完全に平等でございまして、保護を与え、ないし保護を受けるという観念はみじんもない次第でございます。
  281. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 かなり正直に説明されたわけでありますが、そこで西村条約局長に伺いますが……。     〔発言する者多し〕
  282. 田中萬逸

    田中委員長 静粛に。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 かなり完全に対等でやるということになると、憲法の障害があつたということになる。そうすると、外務省の方で素案としてお考えなつたのは、憲法改正ということをやはりある程度前提とした形でお考えになつてつたのでありますか、いかがでございますか。
  284. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうことは全然考慮に入れません。現在の状態における対等なる安全保障体制考えておりしました。
  285. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それはいかにして可能でありますか。条約局ではヴアンデンバーグ決議なんというものはもちろん知つておいでになりましよう。北大西洋條約の問題もありましようし、現在のような形で完全に対等なものをつくり得るとすれば、どういう内容のものを考えられますか、ぜひ教えていただきたいと思うのであります。
  286. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ヴアンデンバーグ決議の真意の説明を聞いたときには、本格的な安全保障体制を現状の日本締結することはできないという事情を、よく了解いたしたわけであります。しからばどういう方式によつて、現状の日本において本格的な安全保障とりきめが考えられるか、結局考えられないということになつたわけでございます。私どもの考案は成り立ち得ないということになつたわけであります。
  287. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでお尋ねいたしますが、この間総理大臣が委員会あるいは本会議でお答えになつ内容と、あなたがお答えになつ内容にやや食い違いを感じさせられるようなところがあります。それは安全保障條約の前文のところで「自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」ということに関係することでありまして、西村条約局長の御見解によれば、ヴアンデンバーグ決議があり、端的にいえば、武装力を日本が持たない、武装力による援助を日本は期し得ないので、その資格がないというふうな御答弁があつた。ところが吉田総理大臣の答弁は、いや必ずしもそれは軍備とか、あるいは装備を持つた武装力によるものを意味していない。あらゆる面におけるそういう力を意味するのだと、非常に抽象的な言葉をもつて言つておる。一体どちらが真意でありますですか、条約局長の御見解を伺いたいと思います。
  288. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 総理が言われた通りだと思うのであります。総理が子の答弁をされましたのは、第四條の関係でございます。この條約は暫定協定である。しからばいつになつて本格的な安全保障体制ができてこの條約にとりかわり得るか、その場合は日本が再軍備をして、いわゆる自衛の能力が整つたときであろうという御質問があつたと思います。それに対する御答弁でありました。四條を見ますと、国際連合その他の措置によつて、または安全保障とりきめによつて日本の地域の平和が確立されたと両国が認めるときにこの條約はとつてかわられることになつております。総理はそういうふうな国際連合措置ないしは安全保障体制、それからもう一つ総理が言われましたのは、この安全保障條約を必要とした国際情勢の変化、この三つを考慮して、必ずしも再軍備だけではないと思うという御答弁だつたと、私はわきにいて了解いたしたわけであります。
  289. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、必ずしも西軍備をやらなくとも、たとえば北大西洋同盟條約であるとか、あるいは全米相互援助條約であるとか、その他にモデルがあるような形のものを、日本は将来この第四條にうたわれているものとしてつくり得るということを考えていいわけでありますか。
  290. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私はそうはならないと思うのです。要するに国際情勢の変化というのが一つの契機となると思います。今前文にあるような、無責任な軍国主が跳梁しておるところに大きな原因が一つあるわけであります。国際情勢が緩和いたしまして平静に復帰すれば、その面からこういう安全保障條約のとりきめはいらなくなります。それからもう一つ国際連合による措置とありますが、国際連合は先刻申し上げましたように、第六章に規定いたしております、いわゆる特別協定もできず、軍事参謀委員会行動ができない、安保理事会は拒否権によつて麻痺している、こういう状況のもとに、国際連合から期待されている安全保障がきわめて薄弱になつております。この事態は必ずしも永続の事態ではございませんし、また永続してはいけないと考えます。国際連合というものが、創立者の希望した通りに動くようなときが来ましたならば、ただに日米安全保障條約だけでなくて、北大西洋條約も、またソ連邦が結んでおります各衛星国との相互援助條約も、みな存在の理由がなくなると思います。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういうことも考えようによつて考えられますが、非常に現実的でない話でありまして、私が承りたいのは、この第四條によつて個別的、もしくは集団的の安全保障措置効力を生じたと認めたときには、これは効力を失うと書いてある。そうすると個別的もしくは集団的安全保障措置というのは、いわばアメリカがこの中に参加するとすれば、現在われわれが考えられる範囲では、やはりバンデンバーグ決議というようなものに対応し得る内容を持つたものでなければ入れない、つくり得ない、こういうふうに解釈してさしつかえないわけでありますが、その他のものも考えられるわけでありますか。現実の認識をもとにして申し上げます。ソ連との間が和平になつたとか何とか抜きにして、現在の状態を基準にして御回答を願いたいと思います。
  292. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 必ずしも中曽根委員のお考えのように、北大西洋條約を考える必要はないと思うのであります。それは北大西洋條約が上院で審議されたときの状況を見ましても、かなり内部的に異論があつたようでございます。その後今年の夏できました太平洋に関しまする二個の恒久的な安全保障体制ともいうべき、アメリカと濠州ニユージーランド、それからフイリピンとの條約を見ましても、かなり北大西洋條約とは違つて来ております。それから見まして、必ずしも北大西洋條約だけを考えなくてもよろしかろうと考えられるわけであります。
  293. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が承りたいのは、いわゆるヴアデンバーグ決議というむのがいつも纒綿しておつて、それに対応し得るようなものがなければできないのか、それを中心に承りたい。米比、あるいは米英あるいはその他のものは、大体自助と相互援助というものが基準になつております。その点を承りたいと思つております。
  294. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 合衆国としては、それだけを期待しておるのではなくて、むしろ国際連合による安全保障の確立をも同時に期待している、こう思つております。
  295. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がお尋ねしているのは、第四條のまん中の辺に「国際連合措置」というのが上にあつて「又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置」とあるわけです。従つてもちろん国際連合措置も期待しておるでしよう。それがだめの場合の集団的ないしは個別的の場合をお尋ねしておるのです。この場合にはやはりあくまで現在の情勢から判断すれば、ヴアンデンバーグ決議というものは最後まで貫かるべき様相であるのかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  296. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は全然御同見でございます。合衆国立場はそうであろうと考えております。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでお尋ねいたしますが、日本の場合は、いわゆる憲法の障害や自衛力がないということから、現在のような一方的に庇護される片務協定的なものがここへ出て来ております。全米相互援助條約とか、あるいは北大西洋條約から見ますと、非常に濃度の薄いものになつている。こういう結果が出て来たことを私たちは日本の伝統や、日本民族の名誉心から非常に悲しく思う。そこでこういう状態を現出させない方法はなかつたかということを考える。そこで思い至るのは吉田・ダレス会談であります。あの吉田・ダレス会談において、私たちが聞いた範囲では、アメリカ側は日本の陸軍の創設やその他を期待し、要望しておつた。しかし吉田さんは、経済的な事由や、あるいは国民の心理状態からしてそれを避けて、特に白洲氏の意見をいれて、現在のような一方的に庇護される方法を要請した。政府の声明に書いてあるからうそじやない、要請した。そこでこういうとりきめができたのです。もしあのときに吉田さんが、日本が将来独立後はただちに憲法改正その他の措置をとつて自衛措置を講ずるとか、少くとも、多少なりといえ相互援助のできるような形にスタートするという意思を持つてダレス氏と話合いをすれば、必ずやこれと違つた方向へ軌道が敷かれたとわれわれは想像している。吉田さんのそのときの決心一つにかかつてレールが違つて来たと私は考えるのであります。なぜ私がそれを言うかといえば、必ずしも相互援助という内容は、軍隊の強弱や有無を意味しない。アメリカ側の前例から見ても意味しない。西村さん御存じのように、この北大西洋條約を読んでみると、アイスランドも入つております。アイスランドは一体どれくらいの軍隊を持つておるだろうか。陸軍と空軍と海軍をどれくらい持つておるだろうか。どれくらい相互援助をやり得る兵力を持つておるでしようか。そういう点から考えて見ても、要するにあのときの吉田さんの決心一つつた。私はその点を今でも非常に疑問に思つておる。そこで条約局長にお尋ねいたしますが、アイスランドはなぜ入れたか、アイスランドにどれくらいの兵力がありますか、教えていただきたいと思うのであります。
  298. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もし合衆国がアイスランドと二国間に、安全保障上の條約をつくるとしたならば、北大西洋條約の方式はとらなかつたろうと考えられるわけであります。
  299. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がお尋ねしているのは、アイスランドに幾ばくの軍備があつて、幾ばくの相互援助の力があるか、これが第一です。第二番目に、そういうアイスランドと何ゆえアメリカはこのような集団安全保障措置を結んだか、その理由であります。
  300. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、第二点は私として答弁の限りではありません。合衆国政府にお問合せを願いたいと思います。アイスランドは、御指摘の通り警察以外に何ら兵力を持つておりません。但し通過権、基地等を提供することによつて北大西洋の安全保障に貢献をしているようでございます。
  301. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこが重大なところで、この北大西洋條約の第三條を読んでみると「この条約目的を一層有効に達成するために、締約国は、単独に及び共同して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗する個別的の及び集団的の能力を維持し、且つ、発展させる。」と書いてある。これだけの要件が北大西洋條約には規定されて要件とされておる。もし日本立場を吉田総理がもう少し認識して、腰を強く持つたならば、ただちに集団安全保障條約はできるはずであつたろう。北大西洋條約の前例を見ても、日本はアイスランドよりはるかに多くの力を持つております。戦略約な位置も持つております。工業力も労働力も持つております。アイスランドの何十倍ほどのものを持つておるでしよう。その日本に対して集団安全保障條約ができない。これをつくりたいということは、この安全保障條約の前文にも書いてあるし、政府の声明にも、ダレスの声明にも書いてある。集団安全保障條約ができるのが終局の目的である。日本相互援助も自助もやらぬから、こういうへんぱな條約になつたのだということを言つておる。しからば何ゆえにアイスランドの場合に可能であつて日本の場合に集団安全保障條約はできなかつたのか。これは吉田総理大臣の見解と弱腰以外の何ものでもないと私は思う。この点について御答弁を願いたい。
  302. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 北大西洋條約のような集団的安全保障條約が十二、三にわたる多数国家間にできたということにつきましては、単に軍事上の要素だけではないと思うのであります。政治、経済、文化の面における連帯性が大きく働いていると思います。太平洋におきます日本その他の国の集団安全保障体制考えられますときにはいると考えられる国々の間に、はたして北大西洋諸国のような政治的、経済的、文化的、軍事的な連帯性があるかどうかということをお考えになれば、今ただちに西太平洋における一般集団的安全保障体制が成立し得ないということは、賢明なる中曽根委員もおわかりになることと思います。
  303. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しかしこの前文を読んでみても、集団的安全保障措置をとりたいとアメリカもいつておるし、日本もいつておるわけであります。そういう両方の希望考えてみれば、条件が熟しさえすればただちにやり得る。そのために暫定的な措置としてこれをやるというふうに政府言つておられるのであります。そういういろいろな条件考えてみて、これができなかつたということは、私は吉田内閣の識見の不足や見通しの誤りから来ていると考える。これは民族の歴史や名誉にとつて非常に根本的な問題であります。そこで西村条約局長にお尋ねいたしますけれども、そうすると、集団的安全保障條約あるいは措置というものが、アジアや太平洋の場合は、ヨーロツパの場合と比べてみて非常に成立に困難な条件があるというふうにお考えになりますか。
  304. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現在フイリピンと濠州、ニユージーランドアメリカの三国間にすら共通の集団的安全保障体制はまだでき上つておりません。第二次世界大戦の結果でき上りましたアジアの諸国を考えてごらんになつても、この地域における集団的安全保障体制ができ上るまでには、まだ相当の政治的、経済的、文化的の準備が必要であろうと思います。
  305. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、それまでの間は現在の安全保障條約によつて代位してもらうということになるのですか。
  306. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 必ずしもそうだとは考えないのであります。第四條によれば、国際情勢の変化が一つの原因と考えられます。第二は国際連合による措置の確立ということが考えられます。第三には安全保障体制、これは必ずしも一種を見ておるわけではございません。一般的安全保障体制考えられましようし、数箇国間の安全保障体制考えられましようし、日米間の安全保障体制考えられましよう。これは何らきめられていないのでありまして、すべては今後における事態の発展を見て初めて判断がつくと考えます。
  307. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の御答弁ははなはだ不満足でありまして、それは言いのがれにすぎないと思うのであります。現実的な効果的な集団安全保障措置というものは、もはや幾つものモデルができておる。北大西洋條約であるとか、あるいはその他モデルができております。そのモデルによらないようなものであるとするならば、かなり濃度の薄い、あまりわれわれが効果を期待し得ないようなものが出て来るおそれがある。私は西村条約局長の御見解、見通しに非常に嘆声を発するのです。なぜかといえば、あなたのおつしやつた通り大西洋を中心とする向うの連帯観念と、アジアや太平洋を中心にする連帯観念は非常に違う。それはアジアの国国の間においてすら違うし、不信や猜疑がある。のみならず、これに対するいろいろな予算や経費の関案を考えれば、大西洋諸国は、強力なものがアジアにできることに対しては相当反対であるとか障害が出て来るということも予想しなくちやならぬ。そうすると、そのような効果的な集団的安全保障措置ができるまでは、われわれは今常識で判断するところによれば、この安全保障條約がしばらく続かなくちやならぬと考えざるを得ない。そうすると、もしこれがかりに成立すれば、一体日本としては、こういうような一方的な庇護状態に便々として甘んずるわけにいかぬ。しかも現在伝えられておるところによれば、このままであれば防衛分担金まで負担する。向うの通信によれば、半額負担するということである。そうすると五、六百億負担するということすら想像できるのであつて、五年、六年、十年と毎年五、六百億も負担するというような形で行くということは、かえつて私は日本財政負担、政治的な面からいつても、新しい措置考えなければならぬと考えておるのです。そういう点からすると、この集団安全保障措置ができるまでに、もう一つここに階梯ができて来なくちやならぬ。現在のような非常に稀薄な、不平等な安全保障措置から集団安全保障措置に至るまでの間に、日本アメリカとの間にもう一歩前進したものが、最短期間の間にできなくちやならぬ。しかる後に、それから安全保障措置に行くのが外交的な常識ではないかと思う。それは日本民族のほんとうの名誉と独立考える者が当然思いをいたさなければならぬところだと思うのです。こういう考えに対して、西村条約局長はいかなる御判断をお持ちでありますか。
  308. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問を受けてまことに恐縮でございます。私は一条約局長でございますから、日本安全保障に対する将来の政策というような大問題に対して御答弁申し上げることは、ごかんべん願いたいと思います。
  309. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは草葉政務次官は堂々たる政務官でありますから、ひとつ御政策を御披瀝願います。
  310. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問は、現在の段階からさらに北大西洋條約のような、かりに一種の理想的なと申しますか、そういうようなものが太平洋の地区において予想されるならば、その間にもう一つの段階があるではないか、こういうお話でございますが、私は北大西洋、いわゆる西ヨーロツパ方面の情勢と、――現在もそうであり、あるいは近い将来もそうであろうと存じますが、その情勢と、極東、東亜の情勢とは相当違うのである。違うから、従つてその違う情勢においての安全保障というものは、この情勢に即応した安全保障というものが考えられて来るので、一方におきましては、ただいまお話にありましたように、東亜の現在の情勢があるいは経済あるいは文化において、いろいろ西ヨーロツパと違つております点も、これは一つの頂因でありましようが、また一方一種の圧迫感に対する地理的な立場から考えましてもすべての点に考えましても、ヨーロツパの立場太平洋地域の立場とは根本的に違つておる情勢にあろうと存じます。従いましてこういう情勢の中にあります日本は、そういう情勢に即応した将来の道をとつて行く。従つて必ずしも北大西洋條約というものは、本質的に東南アジア、太平洋の集団保障、これよりほかにない道だというようなものとは、違つて来るのではないかと思います。
  311. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 あまり要領を得ない話ですが、しかしまああまり追究してもあれですから、私はこの問題は非常に重要なポイントだと思いますので、明日吉田総理大臣に直接お尋ねをいたしたいと思います。  最後に、行政協定とそれから交換公文についてちよつと承りたいと思うのでありますが、まず第一に吉田総理とアチソン国務長官の間にかわされましたこの交換公文によりますと、あるいはまた安全保障條約第一條等によりますと、現在の朝鮮事変を想定しての日本協力的な措置がうたわれております。そこで第一條によると「極東における国際の平和と安全の維持」云々と書いてある。それから交換文書によると、現在の施設や役務を提供するということが書いてあります。そうしますと、万一たとえば満州爆撃をやるとか、あるいはその他の問題が出て来る。防衛措置の中にそういう程度のものまで入ると一応常識で考えられるのであります。そういうような現在の朝鮮を対象にする以外の新しいような措置国連軍が出て行く。そういう場合も日本側には何らの相談もなしに、単独に飛行機の出撃や何かを国連軍総司令官は命じてよろしいのか。この点に関して日本政府国連軍総司令官の間には何らかの話合いはないのか。言いかえれば、もし満州爆撃をすれば、向うは日本の博多を爆撃するとか、東京を爆撃するというようなことが、これは一つのケースでありますが例として起り得る。そういう場合に、日本政府日本国民が何も知らずに、そういうことが行われるということになると、それは重大な問題になるのであります。この点について政府の御所信を承りたい。条約局長でけつこうです。
  312. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために、日本にあるアメリカ合衆国軍隊を使つてよろしい、この規定、これに対応ずる交換公文の中の文句の意味でございます。まず中曽根委員に御了解願いたい点は、一国の軍隊は何のためにあるかという点でございます。合衆国軍隊合衆国の国防の安全と、それから合衆国国際の平和と安全のために負つておる責務を果すためにあるのであります。それが合衆国軍隊の本務であるという点については御同見であろうと思います。そういう本務を持つておる軍隊が、この條約の規定に基いて日本にいることになるわけでございます。その場合に、合衆国国際連合憲章規定によりまして、国際平和の維持と確立のために強制措置をとる場合があり得るわけでございます。現在の朝鮮動乱における出兵がその一例であります。日本におる合衆国軍隊日本に対する外部からの武力攻撃に対して、日本を防ぐためにのみ使えるというような条約をつくろうとしても、それはできない相談であります。この道理はいかなる場合にも、いかなる国に対してもあてはまると思うのでありまして、従つて問題とされる文句が入りましたのは、当然なことと存じます。かりにこの文句がなくとも、さよう解釈すべきであります。一国の軍隊は、結局自国の安全を保持することを本務とすると同時に、その国が国際平和維持のために負担しておる責務を果すために使い得るのだと思います。そうすると、日米安全保障條約によつて日本におることになる合衆国軍隊は、要するに三つの目的を持つことになるわけであります。一つは、合衆国自体の安全のために、もう一つは、いわゆる国際連合憲章に基く合衆国が負担しておる国際平和維持上の責務を果すための任務、それから日米安全保障條約に基いて、日本に対して外部から武力攻撃があつた場合にこれを阻止する任務、こういうことになるわけであります。問題とされる文句が入つて来たことについては、何ら深い意味はない。当然のことを解明したものであります。現在朝鮮動乱日本にいるアメリカの占領軍が出動しております。この関係は、従来は日本アメリカとの関係について法的根拠はなかつたわけであります。それは占領軍として日本にある米国軍が出動しておるという形でございます。従つて平和條約が発効いたしまして、日本にいる米国軍隊が占領軍の性格を失いますと同時に、日米安全保障條約によつて駐在する軍隊になる以上は、その以後における米国軍朝鮮動乱における出動に対する法的根拠を明らかにする必要があります。その意味において、この交換公文をとりかわされたわけでありますが、国連行動として出動し得ることは、條約一條規定がありますから、いらない、いらないというのは言い過ぎで念のために規定したものといえるのでございまして、交換公文の主たる意義はむしろ後段にある、すなわち経費の面に主たる目的があるわけであります。極東の平和のために行動するのに要する合衆国軍の経費は、原則として全部合衆国が負担するという点に主たる意味があるわけでございます。
  313. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私の質問に対して半分答えられて半分答えられておらないのでありますが、私がお聞きしたいのは、たとえば朝鮮事変がもし不幸にして拡大するという場合が当然考えられる。そうするとこの條約においても、交換公文においても「極東における国際連合行動に従事する場合には、」と書いてあります。そうすると極東における国際連合行動に従事する場合というと、将来相当広範囲のものも考えられます。特に第一條においては「極東における国際。平和と安全の維持に寄与し、」と書いてあります。従つて戦局は単に朝鮮に限らないということは法律的にも予想し得るわけです。もしそういうふうに拡大し得るとするならば、それに対する先方の報復的措置も当然考えられることであつて、そうなると日本国民の生命財産というものが非常な危険にさらされる状態になるのです。そういうように現在程度の朝鮮の事態以上に発展して、日本自体に惨禍が来るというような場合に、日本政府は何らの権限もなくして、連合軍総司令官が黙つて無断でそういう措置をやつておるのを、われわれは黙つて見ておるよりしかたがないのか。それに対する何かの保障措置あるいは事前の相談を受けるとか、その他の保障措置というものを政府は得ておるのかどうかということを質問しておる。無断でやり得るかどうかという問題です。
  314. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 要するに、いかなる軍事的行動をとり得るかは、現地の司令官の判断によるのでなくして、国際連合の当該機関によりまして、またそれに参加しておる加盟国政府の間の協議によりまして協議決定されるものと私は思うのであります。現在でもそのようであります。平和條約発効後、日米安全保障條約によつて合衆国軍隊日本に駐在することになりましたあとにおきましては、この駐屯軍の軍事行動については米国政府限りにおいて専断的に行われることはないと思うのでありまして、日本政府意見を開陳する機会は十分あると思うのであります。従つてとるべき措置内容国連決議とか、国連加盟国政府間の協議とかによつてきめられるということと、日米安全保障條約発効後におきましては、随時緊密なる協力関係両国政府間にございますので、御懸念のような問題は回避し得ると存じまする
  315. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは重大な問題でありまして、たとい合同委員会というものがかりにできたとしても、この第一條の明文によつてこういうような権利が与えられ、また交換公文によつて日本の総理大臣が向うの国務長官に約束していることなのでありますから、法律的な義務はないということになるのではありませんか。要するに、向うの言うのは事実上の好意であり、あるいは向うの好意にすがつて日本は話をつけるという程度であつて国連軍総司令官が国連の総会や、また国連の諸機関の決定、あるいは関係国の決定に基いて、現地司令官がそのような出兵行為やら、出動をやるというような場合には、日本政府としては法律上の権利としては言い得ない、そういう関係にあるのではないか、このことを明確にしていただきたい。
  316. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この條約に基いて、合衆国軍隊日本防衛のためにある以上は、この目的と反する措置合衆国がとるということを想像することそれ自身が、私は信頼の精神に反すると考えております。
  317. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは条約局長の間違いでありまして、第一條には「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」と書いてある。従つてその目的のために許しておるわけです。従つて極東におけるというのですから、アジア東部における全部の問題にひつかかつて来るのであつて日本だけの問題ではありません。この問題はいかがですか。
  318. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は平和條約第五條の(a)によりまして、日本連合国との関係におきまして、国際連合憲章第二條の原則、特に国際連合行動をとる場合にはこれに協力するという義務を受諾いたしておりますし、連合国も同じ原則をもつて日本に対して行動することになつておりますので、この第五條(a)の関係において十分協力関係を打立て得ると信じます。
  319. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 協力関係は打立てられるといつても、それは事実上の協力関係であつて、法律的な関係においてはどうしても現地司令官の決定―一方的な決定を日本としてはそのまま見のがすよりしかたがないという立場にあるのではないですか。こういうことは非常に重要な問題で、明確にしておく必要があると思うのであります。もちろん将来アメリカの好意や日本の輿論にかんがみて、そういう事実上の行為に出るということはあるいは予想されましよう。従つてわれわれが知つておきたいことは、法律上どういう関係にあるかということであります。
  320. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 平和條約第五條の(a)項は日本側のことを規定したものであります。(b)項は連合国側のことを規定したものであります。従つて(a)項と(b)項とによりまして、日本連合国との関係平和條約第五條に基く法律上の関係でありまして、事実上の関係ではございません。
  321. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば平和條約第五條あるいは国連憲章第二條等の関係によつて、現地の国際連合軍総司令官はそのような満州爆撃――これは例でありますが、あるいはその他の現在以上の大きな行動に出る場合には、必ず日本政府に打合せをするとか、意向を聞くとか、そういう措置がとられるのごあると考えてさしつかえありませんか。法律上の措置としてやちれる責任がありますか。
  322. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 実際そういう事態が生じた場合でなければはつきり申されませんが、むろん法律上の関係、條約上の関係でございますから、條約上なすべきことは、国連のために行動する連合国政府において措置をとられるもの、またとらるべきものと考えております。
  323. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 焦点を狭めてお答え願いたいと思うのであります。たとえば満州爆撃とかその他の行為、そういう行動に出る場合には、国連軍総司令官は日本政府に対して、何らかの相談なりあるいは打合せの措置に出るものと日本側は解釈しておるかいないか。
  324. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現実問題といたしまして、国連軍による満州爆撃を許すべきか許すべからざるかということは、すでに国際連合の当該機関において問題にされております。国際連合加盟国政府の間でも取上げられております。スキヤツプ最高司令官は専断的にそういう措置はとり得られない現状でございます。平和條約並びに安全保障條約発効後におきましては、日本国連加盟国がとる行動に、平和條約第五條関係において協力いたす関係になります。その場合にはむろん日本政府としても意向を聴取さるべきものであると考えます。
  325. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その答弁でようやく明確になりました。しからば今度はそういう行動が終結を告げる場合もやはり同じであると解釈してさしつかえありませんですな。
  326. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 目的を達成した場合に相談をする必要がございますでしようか。ちよつと御質問意味がわかりません。
  327. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 と申しますのは、たとえば満州爆撃がどんどん継続しておつた。しかし作戦の都合上もういらなくなつた、あるいは戦局が不利になつたので、これはやめるという場合に、一方的にそれを打切つて日本政府に何ら連絡なしにやられてしかるべきものなのか。あるいはそういう場合には、日本政府に対してあらかじめ了承を求めるとか、何らかの措置日本政府は期待してよろしいのかということです。
  328. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういう場合には、その行動に参加しております国際連合加盟国政府と同等の地位を与えられるものであるし、また与えらるべきものであると考えます。
  329. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 わかりました。そこでその次に承りたいと思いますが、この第三條の行政協定の問題であります。この内容については御答弁がないようでありますが、ここでお尋ねいたしたいと思いますのは、行政協定内容は平時的な措置だけに限るものか、あるいは戦時的な措置も予想しておるのかどうか。と申しますのは、もし戦時的な状態が出現した場合には――安全保障條約ですから当然予想されておるわけです。その場合には国連軍なりあるいはアメリカ軍が――これはアメリカ軍ですが、アメリカ軍がやるいろいろな行動に対して、日本としては戦時的な段階になれば、あるいは国家総動員法的な、昔のそういう類似の措置まで考えられるのですか、そういうような措置までこの行政協定の中に含まれるのか。単なる平時状態だけを予想しておるのか、いかがですか。
  330. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この点は今後の問題でありますから、御答弁いたしかねます。しかし私の考えといたしましては、日米両国政府はこの安全保障條約を締結することによりまして、日本地区の平和が撹乱されることはないという確信を持つものでございます。従いまして、行政協定には戦時措置みたいなものは全然入る余地はないと考えます。
  331. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばこの間立川の付近で燈火管制が強要されて、協力してやつた、あのような燈火管制に協力することでありますが、これは戦時的とはいえないですが、そういうような軍に対する作戦協力です。それに類似するような協力内容もこの行政協定の中に入つておるわけですか。その限界はいかなる程度まで盛らるべきであるかということです。
  332. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今後の問題でございますから、御指摘の点が入るかどうか、わからないのでございます。
  333. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本政府としてはどういうふうにしたいと思いますか。
  334. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 まだ話合いに入つておりませんので、上司におきましてどういうお考えであるか、承つておりません。
  335. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 行政協定内容くらいはすでに政府としては方針をきめているはずです。しかし条約局長のお苦しい立場を同情して質問はやめます。  そこでもう一つこの問題でわれわれ関心を持つておるのは、この交換公文の中に「合衆国に関する限りは、合衆国日本国との間の安全保障條約の実施細目を定める行政協定従つて合衆国に供与されるところをこえる施設及び役務の使用は、現在どおりに、合衆国の負担においてなされる」と、こう書いてある。そうすると行政協定範囲内のことを行政協定を越える施設や役務と二つあるように解釈されるのでありますが、一体それはいかなる内容のものであるか。
  336. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 行政協定内容はまだ何ともきまつておりません。交換公文意味は、合衆国日本に駐留するについて日本が提供する施設役務以外のものは、全部合衆国の負担とする、現状がそうなつておりますが、全部合衆国の費用で朝鮮に行動いたしております。現状通り、いわゆる第一條にいいます極東の平和及び安全の維持のための軍事行動は全部米国の自費をもつてやります。日本には迷惑をかけないということであります。
  337. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それはわかつておりますが、行政協定によつて供与される分とそれを越える分とある。それを越える分というものは、合衆国が自前で負担してやるという意味ですか。行政協定範囲に含まれる分とそれを越える分というのはどういう性格のもので、具体的にどういうものであるかということを聞いておる。
  338. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは行政協定がきまりませんと、何ともお返事ができません。
  339. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういう無責任なお答えをぜひひとつやめていただきたい。それは現に行政協定の中に入るであろうと思われることと、それから現に国連や朝鮮問題でアメリカがやつている問題とを考えてもわかるはずであります。そうすると、なるほど国連あるいはアメリカ朝鮮事変専門にやつていること程度のことは、越えるものだからアメリカの負担であり、それ以外のことは大体行政協定範囲に入るであろう、こういうけじめがわれわれしろうとにはわからないから、大体のメルクマールでもいいから教えていただきたいというのであります。
  340. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 説明しろと言われましても、具体的に説明する資料を持ちません。行政協定を話し合つたあとでないと、わからないのであります。
  341. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のような答弁が続く限り、私は質問しても意味がないと思うのであります。しかし今のように、行政協定が出て来ぬうちは何も話ができないというような態度では、この委員会は審議を進めるわけにはいかぬ、委員会をつくつた意味がない。国会が何のためにこの安全保障委員会をつくつたか。もう少し明確な答弁を委員長において条約局長にやらせてもらいたいと思う。これは一番重要な問題ですぞ。現に朝鮮事変が起きてアメリカに対する協力が行われて、日本としてもやろうとする意思がある。そういう内容を国民に教えないでやれといつてもやれるものでない。自由党の諸君はやれるかもしれないが、ほかの国民はやれない、もう少し今の点だけでもお示し願いたいと思います。行政協定範囲内に残るものと、行政協定範囲外に出るものくらいの、大体差別くらいでもわかりましよう。
  342. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは交換公文で申しておりますのは、いわゆる国際連合軍としての行為である。従つて行政協定日米安全保障條約によりますると、米軍の駐留であります。米軍駐留に関する問題は行政協定によつて相談する。しかし国際連合軍と指定いたします場合は、今後交換公文によつて、費用は従来出しておるような状態で分担をほとんどアメリカで出す、こういうことであります。
  343. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大体見当がついて来ましたが、しかしマツカーサー司令部の上を見ると国連旗というものが立つておる。それからアメリカの旗が立つている。そうすると一体どういうふうにけじめがつけられるべきものか、同じ人間が両方の仕事をやつているわけですね、そうするとそれを分割すべき基準というものがなければならない、その辺はいかがでありましようか。たとえば同じ基地にしても、日本の安全のために使つている基地は、朝鮮の幸福のために使つておる基地でもある。そういう分界点はどういうふうにけじめをつけるか。それはなぜかというと、これによつて日本国の費用負担が出て来る。アメリカがいかに朝鮮関係はおれが持つてやるといつても、これは日本自体のためにやつているのだといわれたらおしまいであります。そういう意味で分界の基準をもう少しお示し願いたい。
  344. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは前の国会にも法務総裁からお答え申し上げた点かと存じます。いわゆる現在占領軍として占領軍の要務をいたしておりまするのは、この占領軍としての費用の分担においてやられておるのである。占領軍が次に国際連合軍としての行動を起す場合には、国際連合軍として、厳密に申しますと国際連合作戦に飛び出す場合、あるいはその指揮をする場合こういうような御答弁を当時いたしておつたはずであります。それと現在も同様であり、また今後におきまする独立日米安全保障條約によりまして駐留いたしましたあかつきに、さらに国際連合軍としての行動が継続いたしまする場合には、この交換公文によつて同様な状態が続いて参ると存じます。
  345. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 あとの質問者がありますから、私は簡単に質問しまして、あしたに留保いたします。  具体的に西村さんにお尋ねいたしますが、アメリカ軍が駐屯軍として駐屯します。そうして兵隊さんが、たとえば町に出て来て日本の女の子をからかつたとすれば、その場合に日本の青年が怒つて、その兵隊さんに傷害を加えた、そういう場合に裁判の管轄権はどつちに行くべきであるか。日本側の要望としてどつちに行くべきであるか。
  346. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の点は国際法上の学説も先例も一致いたしておりません。結局その点がどうなるかは今後の話合いできめておいた方が、将来の紛争を避ける意味において望ましいと考えております。
  347. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本人の側の方からすれば、当然その程度のことは日本の裁判管轄権にあるべきである。アメリカ人同士のけんかや傷害やその他の問題なら、それはアメリカが持つてもいいかもしれない。しかし日本人アメリカ人の刑事事件、少くとも現行犯に関する限りは日本の警察権が発動して逮捕すべきはずであると、われわれ日本人として考える。その程度のことについて日本側としてはどういう構想をお持ちでありますか。
  348. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今後の問題でございますが、御意見はまことにごもつともだと考えております。
  349. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういうような将来に延ばすような抽象的な答弁で、私は満足しないのでありまして、私はこれで質問を一応打切りますが、もう少し誠意のある答弁を次の機会にぜひしていただきたいと要望します。
  350. 田中萬逸

    田中委員長 これにて前文及び交換公文に対する質疑は終了いたしました。  次に第一條及び第二條を議題に供します。この両條につきましては別に質疑の通告がありませんから、次に移ります。  第三條を議題に供します。仲内憲治君。
  351. 仲内憲治

    ○仲内委員 時間も過ぎておりますし、問題も重複しておるのでありますので、ごく簡単にお尋ねいたします。  政府行政協定はまだ交渉の過程にある、内容の発表はできない、しかしその内容は決して條約の基本線を越えるものとはならないという言明をしておるのでありまして、われわれは一応これを了承するのでありますが、日本としての交渉案ないしは方針も言えないという結果、野党の執拗な質問が繰返されました。幸いに西村条約局長の明快にして懇切な答弁によつてりつぱに応酬せられてはおるのでありますが、一般国民の間には無用な誤解や疑惑を今なお持つ者があつて平和條約ないし安全保障條約の審議の進行の障害となるおそれがありますので、重複を顧みず政府がこの行政協定内容を発表できないという理由あるいは事情について、一、二の点を伺いたいと存じます。  まず平和條約と安全保障條約は不可分一体であると了解するのでありますが、この條約の形式を見ますと、安全保障條約の調印者は、平和條約と異なつて、わが国は吉田全権一名が署名しておる。アメリカ側は上院議員を含む数名であるのでありますが、これには何か理由があるのか、たとえばアメリカ側の対上院関係その他内政的の理由があるのか、この事情をお伺いしたい。
  352. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは実は前の国会当時からの問題でございましたが、別に特別な意味があるわけではなかつたのであります。いわゆる平和條約はすでに八月十五日に発表になり、その経過等もよく申し上げたのでありますが、ただ日米安全保障條約は事前にこの條文等を発表して、その経過等をお話申し上げる状態になつておらなかつたのでありますから、従つて條文内容が十分はつきりいたしておらずに、ほんとうにこの調印の直前に調印の日も決定したような次第でありますので、かような状態に相なつてつたのであります。
  353. 仲内憲治

    ○仲内委員 次に集団安全保障に関するアメリカのいわゆる基本方針は、いわゆるヴアンデンバーグ決議にあるものと了解するのでありますが、この決議趣旨からいえば、日米安全保障條約は、その本文にもある通り、暫定的のものでない限り、日本の現状においては、いわゆる持続的にして効果的な自助及び相互援助をなし得ないから、米上院の批准を得ることに困難があるかもしれないと想像せられるのであります。またこの点に関連して思いあたりますることは、アメリカ憲法は普通の條約、トリーテイと行政とりきめ、イグゼキユテイヴ・アグリーメントと区別して、行政とりきめは上院の批准を要せず、政府独自の約束でなし得ることになつておる。従来かなり重要な協定もこのいわゆるイグゼキユテイヴ・アグリーメントとしてとりきめられておるのであるが、今度の日米安全保障條約はいわゆる行政協定、アドミニストラテイヴ・アグリーメントという言葉を使つておりますが、これは米国憲法上のイグゼキユテイヴ・アグリーメントと性質を同じくするものではないかと思いますが、この点も一応お伺いいたします。
  354. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点は御見解と同様に私どもも考えております。
  355. 仲内憲治

    ○仲内委員 交渉中の外交案件については相手のあることでありまして、相手国立場考え、またその内政的な考慮も払つて、そうして責任当局としては交渉案件中の内容の発表を差控えられるというのはむしろ必要であり、かつ当然であることと思うのでありますが、ただ国民としては少くともその発表せられない事情、理由を十分理解させられないと、先ほど申し上げましたような無用な誤解と不安を招くおそれがあるのでありまして、政府はこの点についてさしつかえない限り、この発表に至らない事情をこの上とも明確にせられて、本條約の審議を促進するように役立たせていただきたいと思うのでありますが、この点について何か伺えることがありましたら……。
  356. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先ほど来るる御答弁申し上げますように、実は一月、二月ダレスさんが日本に参りました当時、どうしても日本独立後の状態考えて参つた場合には、このままではいかない、従つてこの危険な憂慮すべき状態を除去するためには、日米安全保障條約、こういうものをつくつて行く以外には最善方法はないと存じまして、当時発表し、またその後国会において総理からも経過等において詳しく御発表申し上げたようないきさつになつてつたので、そこで根本方針はそれによつて進んで参つたのであります。従つて今回御審議を願つております日米安全保障條約もこの根本方針に従いまして、この根本が御承認を願えますならば、あとはごく細目的な、事務的な問題でありまするから、その細目的な、事務的な問題を実はその時間的な余裕がありますと、これまでに相談し合うのでありまして、決してこれは秘密的なものではないと存じます。十分その内容を御発表して、そして第三條の行政協定というものはこういう内容で相談したということを申し上げ得るはずでございましたが、先ほど来申し上げましたように、時間的余裕がなかつたので、この内容を相談するまでには至らなかつた。いわゆる相談と申しますか、まとめ上げるまでには至らなかつた従つて実は率直にそのことを総理からも申し上げ、また他の政府委員からも、私どもからも申し上げた次第でございます。そう申しますとかえつてそれが何か秘密があるのじやないかというような疑念を生んだかもしれませんが、現実におきましてこの行政協定は、安全保障條約を実施する上における細目的問題でございまして、従つて決してこれからこれによつて秘密を持つというようなものでは全然ないのであります。従いまして内容は、協定ができましたら当然これは時期を見まして、公表すると申しておりまする通りでありますから、この点はどうぞこの審議を通じまして、国民の方にも十分御了解願いたい、今政府が進んでおりまする問題といたしまして、日米安全保障條約は、日本独立しましたあとにおきましては、最もなくてはならぬものだと考えるのであります。これがない場合におきましては、まことに憂慮すべき日本の現状になつて来ますから、絶対に必要なものであると存じますが、その中にありまする行政協定は、ただいま申し上げたような細目的な、ごく事務的な問題でありまするので、これは十分打合せまして、もしその中で経費なり、あるいは権利義務関係するような問題が生じますような場合は、これは当然国会の御審議を願う方法をとつて参りますから、その際におきましてはまつたく事務的な問題で取組んで来る。これはほかの国の場合におきましても同様であります。従いましてこの点はどうぞ十分御了承いただきたいと思います。
  357. 仲内憲治

    ○仲内委員 この機会にいま一点、国際連合に関する啓蒙運動の必要を認めるかどうかという点で一言伺いたいと思います。平和條前文及び第五條等の規定する通り日本安全保障及び国際平和協力は、国際連合との協力にその基本を置くこととなり、今後わが国の対外関係国際連合の占める重要性はきわめて重大であります。また日本としてもできる限りこの国際連合を活用して国際的地位の向上をはからなければならないと信ずるのであります。ことにこのたびの平和、安保両條約の特徴は、個々の條文字句解釈よりも、現下の国際情勢を背景として、和解信頼の基礎の上に立つ條約全体を通じて流れるいわゆる含みを感知して、初めてこの條約の味は出て来ると思うのであります。これは平和條約の領土問題、賠償問題はもちろん、安保條約のいわゆる行政協定等随所にその例が見出されるのであります。しかるに一部ためにする反対論等に誤られて、一般国民の両條約ないし国際連合に対する理解と認識は不十分であると思うのであります。この講和を機会として大いに啓蒙運動を必要とすると思うのでありますが、民間の自発的運動のみに放置せず、政府としてこの際両條約の審議徹底、あるいは国際連合に関する啓蒙を行われる意思ありやいなやをお伺いしたい。
  358. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は今回の日本との平和條約及び日米安全保障條約につきましては、まつた国際連合憲章の根本精神、根本目的を中心にしてつくり上げられましたいわゆる和解信頼との條約であります。しかるにややともいたしますると、この條約によつてことに日米安全保障條約によつて将来戦争を誘発するおそれはないかというような誤つた考え方が一部にしろありますることは、まことに政府といたしましても、これらの問題がかように考えられるところの中には、お話のように最近の国際情勢国際連合及び国際連合憲章の根本的精神をふみ違えておるところから起つて来る誤解が多いのではないかと深く憂えておる次第であります。従いまして今後は、国際連合の精神並びに世界の平和と安全とに向つて進みまするこの條約の内容等につきまして、十分国民の了解を得るあらゆる方法をとつて進んで参りたいと存じております。
  359. 田中萬逸

    田中委員長 米原昶君。
  360. 米原昶

    ○米原委員 発言時間が極端に制限されておりますから、簡単に二、三点質問します。この第三條の行政協定について今までの政府の答弁を聞きますと、きわめて事務的な細目だけであつて、それが法律化するものは法律案として議会に提出し、予算とすべきものは予算案として出す、こういうことを言つておられますが、決してこれは事務的な細目として簡単に済む問題ではないと思います。たとえば防衛分担金にしても、この防衛分担金がどういう割合になるかということは、現在の状態から考えてみても、国の財政に基本的な影響を与える重大な問題であります。そういうものがここできまる。それを予算案として出すんだから、国会の審議を受けるんだからいいというようなことを言つておられるが、しからばその予算案が出たときに、国会でこれを否決するとする、その場合に、結局この行政協定で決定したことは実行できないわけでありますが、その場合に政府はいかなる責任をとるかということを聞きたい。
  361. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは実は今回の平和條約にいたしましても、それから日米安全保障條約にいたしましても、根本の精神は信頼し合つた上にでき上つた條約であります。従いましてこのすべての條文を流れておりまする精神は、まつたくその信頼感の上に立つてお互いに了解し合つた上につくられたものであります。ことに日米安全保障條約は、対等な、平等な立場において、しかも日本の将来に対して経済的発展、文化的発展、民主的発展というものを祈念しながらアメリカ日本とが結ぼうといたしておる問題であります。ことにアメリカ日本に念願し、期待しておりますのは、このりつぱなる経済的、民主的発展を十分支援し、協力するという意味において、しかもその平和を保つ意味においてこそ、この日米安全保障條約ができたのであります。従いましてこの第三條にありまする両政府行政協定にいたしましても、この精神を元にいたしまして今後相談いたす問題でありまするから、従つて十分従来の日本のあり方、また今後のあり方というものを承知をしながら、両方の政府で相談をいたす次第でございまするから、十分この点はアメリカ承知をし、また日本状態も了解をしてくれて進んで参ることと確信をいたしております。従いまして皆様方も十分御協賛をいただけるような方法内容がすべてとられて来ることと思います。
  362. 米原昶

    ○米原委員 私は次官とまつたく異なつた見解を持つておるのでありまして、ここで見解の論争をやるわけじやないが、私の聞いておるのはそういうことではなくて、もしもそういう予算案なり法律案が出て、これが否決された場合はどうかということを聞いておるので、それだけ答弁してもらえばいい。
  363. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはこれからの問題でございまするから、そのときになつてから十分論議されるべきものだと思います。
  364. 米原昶

    ○米原委員 そうすると、これが否決されれば当然それは無効である。その協定よりも、その法律案なり予算案なりができないというだけのことであつて、それほど政府がそういうことを非常にぼかして答弁されるのはおかしいと思う。ところがぼかして答弁されるところを見ると、一旦この行政協定できまつたものは事実上はもう法律以上の法律であつて、これはどうしても通さなくちやならないんだというふうに聞えるのでありますが、そうでありますか。
  365. 草葉隆圓

    草葉政府委員 行政協定もこれからの問題で、十分両方の政府間で話し合つて、ここにありますような配備等について相談し合つて参るのでありますから、一旦きめたからそれが永続的にかえることができないというような行政協定ではないはずであります。いろいろそのときの状態に応じまして、相談し合つて進んで行くべきものだと考えております。
  366. 米原昶

    ○米原委員 私の聞いておるのは、かえることができないとしても、もしも法案としてこれが否決された場合――何かそれすらできないような答弁をしておられるが、そういうものだとすると、ますますもつてこの行政協定は、これを現在発表しないで審議するなどということは、まつた憲法に違反する行為だということであります。さらに問題点は、先ほどから法務総裁その他の説明を聞いておりましても、この行政協定自体が非常に問題を含んで来ると思う。内容はまだ発表しないけれども、当然この中に含まれておるものがどんなものであるかということは、大体今までの説明でもうなずけるのであります。たとえば現在では占領下にあつて、占領軍の占領政策違反というやつでずいぶんいろいろな弾圧を受けております。ところがそういう言論、集会に対する弾圧というようなものが、この駐屯軍の場合にどうなるかという質問に対して、法務総裁は、やはり形はかわるだろうが、何かそういうものをつくらなくちやならぬということを先ほどおつしやつた。ところが少くとも平和條約を結んで、そうして日本の主権が回復して、少くとも憲法通りにやるという建前ならば、そういうことは絶対に許されないはずだと思う。憲法によつたみても、集会、結社、言論、出版、その他一切の表現の自由はこれを保障する、検閲はこれをしてはならない、通信の緊密はこれを侵してはならない、これは無条件であります。かつての旧憲法とは違う。一切制限できない性質のものである。そういうことが制限できるような協定を結ぶとすれば、これは少くとも法理的にいえば、憲法を改正してからでなければ、この協定は結べないはずだ。また裁判権の問題にしても、先ほども質問がありましたが、日本の裁判権がどの程度まで制限されるかということが問題になつている。しかしながら憲法によれば、裁判は日本の裁判所で受ける、この権利は奪われてはならない。これも無条件であります。そういうような憲法の条項が制限される条項を明らかに含む。またその先日も申しましたが、たとえば飛行場のために土地を取上げる、漁区を取上げるとかいうことで莫大な損害を与えて、財産権を明らかに侵害している。しかも公正なる賠償をやつたらよろしいと憲法にはなるほど書いてあるけれども、公正な賠償が今まで行われておるか。絶対に行われておらない。そういうことをこの条項できめるのは、もう憲法も何もかも無視したものであります。そういうものが行政協定と称してはたしてできることか、できないはずです。そういうものを内容としておるのでありますから、これはもう明らかに単なる事務的な細目などといつておられないと思う。さらに当然この行政協定を実行するにあたつては、どうしてもここに――政府は日米合同委員会というようなものはまだきまつてないとおつしやるけれども、どうしても日米間の共同の機関ができなくちやならぬ。名前は日米合同委員会であろうが何であろうが、事実上はそういうものができなくちやならぬ。しかも政府の説明によると、そこで法律案、予算案というものが出されるということである。そうすると、現在政府の持つている権限以外のもの、まつたく別個の政府的な機関がここにできることに当然なつて来る。この点もまつたく、重大な問題であつて、当然この内容を発表しなくちやならぬ。さらに先ほど中曽根委員質問でも触れられておりましたが、この協定によつて事実上日本が戦争に入る。自衛のための戦争と言つておりますが、それに入ることをちやんと明らかにこの條約では予定されておる。そういう場合に一体宣戦布告する権利がどこにあるか。そんなものは憲法にはありません。しからば憲法を改正しなくちやならぬ。憲法を改正するほか、こういうものを含むところのこの協定は結べないじやないか。当然この場合には、憲法改正とまつたく同じ手続によつて、両院とも三分の二以上の多数で、この案をさらに国民投票にかけるという手続をとるのが当然だと思います。当然そういうことにならなくちやならぬが、そういうことすらまつたく無視しておるこの行政協定については、国会の承認を求める必要がないと答えている。そういうことがどうして許されるか、説明を願いたい。
  367. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問は御意見が大部分であつたと思いますが、私どもはさようには考えておりません。この行政協定を結びます中心は、この日米安全保障條約を実現する上においての施行細目を定めるのである。従いましてこの日米安全保障條約は、東亜の安定、日本防衛を中心にいたしておりまするから、これによつて戦争を引起すということは、戦争を引起す人の口実の立場に立つておるものと存じます。ただいまの御意見政府意見とは全然相反するものだと存じます。従いまして、この日米安全保障條約は何ら人権を侵害するものではなく、制限するものではなく、むしろ日本を平和のうちに持つて行くためにこそ取結ぶものであります。これはまつたく御意見とは反対の立場でありますから、十分政府の意のあるところを御了解いただきたい。
  368. 米原昶

    ○米原委員 私は意見の相違ではないと思う。これは事実なんだ。そういうことをおつしやるならば、土地も取上げなければ、日本軍隊も置きません、飛行機も置きませんということをなぜはつきりおつしやらないか。事案とまつたく反することを言つて……。     〔「時間だ時間だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  369. 田中萬逸

    田中委員長 米原君、米原君。
  370. 米原昶

    ○米原委員 そういうことはできない。そういうことで憲法を破り国際法を破るというならば、この国会でそういうことを幾ら承認しようとしても、国民がそういうものを絶対に認めない。かかる憲法違反の行動を認めない。もしもこういうことを政府がやるならば、そうして国会がこれを承認するならば、そういう国会は国会でない。そういう政府日本政府ではない。かかるものは必ず実力をもつて国民がぶち倒してしまうということを言つて、私の質問を終ります。
  371. 田中萬逸

    田中委員長 これにて第三條に対する質疑は終了いたしました。  次に第四條及び第五條を一括して議題に供します。  この両条につきましては質疑の通告がありません。以上をもちまして、安全保障條約及び交換公文に対守る質疑は終了いたしました。明二十四日は午前十時より委員会を開会いたして、両條約についてさらに一般的質疑を行うことといたします。本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十九分散会