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1951-11-22 第12回国会 衆議院 文部委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十二日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君       甲木  保君    鹿野 彦吉君       小西 英雄君    圓谷 光衞君       笹森 順造君    坂本 泰良君       渡部 義通君    浦口 鉄男君  委員外出席者         衆議院農林委員         長       千賀 康治君         参議院議員   高橋 道男君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 森田  孝君         参  考  人         (京都大学学         長)      服部峻治郎君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 十一月二十一日  六・三制確保等に関する請願玉置實紹介)  (第一四九一号)  附属学校教員定員削減反対に関する請願(池  田正之輔君紹介)(第一五二七号)  六・三制確保等に関する請願玉置實紹介)  (第一五二八号)  教職員給與改訂等に関する請願辻寛一君紹  介)(第一五七七号)  学校給食法制定等に関する請願有田二郎君紹  介)(第一五七八号)  奄美大島在住教職員身分保証に関する請願(  本多市郎君外七名紹介)(第一五七九号)  小学校舎建築費国庫補助等に関する請願(逢澤  寛君紹介)(第一六一六号)  台風ルースによる私立学校災害復旧費国庫補助  等に関する請願金光義邦君外六名紹介)(第  一六二七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  文化財保護法の一部を改正する法律案堀越儀  郎君外十九名提出、参法第三号)(予)  学校給食に関する件  六・三制教育制度実施に関する件     ―――――――――――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより開会いたします。  議事に入る前に一言私よりごあいさつ申し上げます。本日は、特に京都大学服部学長の御出席を賜わりましたことを、厚くお礼を申し上げます。服部学長には、公務御多端のところ、本日十時お帰りのところを、当文部委員会学校教育の諸問題審査のため、御出席くださいましたことを、厚くお礼を申し上げます。  この際、お諮りいたします。京都大学学長服部峻治郎君を、参考人に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認めます。京都大学学長服部峻治郎君を参考人に指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 長野長廣

    長野委員長 これより、六・三制教育制度実施に関する件を議題といたします。  本件に関連する大学教育京都大学事件等に関して、参考人より意見を聽取いたします。――服部君、何かありませんか。
  5. 服部峻治郎

    服部参考人 何もありません。
  6. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員 御旅行先で、さだめしお忙しいことだと思うのでありまするが、わざわざ参考人として御出席くださつたことを、深く感謝いたします。  昨日、懇談の形式で、二、三の点について御意見を拝聽したのでありますが、どうも少しまだよく納得行かぬ点がございますので、この機会にもう一回正式にひとつ御意見を拝聽したいと思うのでございます。  その第一点は、昨日の懇談会でも伺つたことでありましたが、せんだつて京都大学における学生の一部の不作法な行動陛下に対して、私ども国民としてまことに看過できないこの不作法な行動があつたことにつきまして、学校当局では、十分これが取締り指導ということに腐心されておる由でございます。その点はまことに了といたします。ただ八名かの学生停学処分になつておるということでございます。さらに拡大するかもわかりませんが、私、昨日特に聞きたいと思いました点は、この学生に対する指導上の責任は、一体だれが負うのか。その点なのであります。もちろん学校には、補導部長とか、あるいは学生課長とかいうのが設置されておるはずと考えますが、單にその人たちだけでいいのか、またその人たちにいかなる責任を負わせるのか。現在の制度では、学生課長、それから補導部長とかいうのは、教官にはあらずして、單なる事務官というふうに承知いたしておるのでございますが、その人たちのみが責任を負うのか負わないのか、ほかの教授たち、あるいは学長、そういつたようなところは、どういうふうな責任をおとりになるのであろうか。單に若い学生を処分しただけで、決して能事終れりとは考えられないのであります。もちろん学問の自由、また大学自治というその精神は、相当尊重して庁かなければなりませんけれども、常軌を逸しがちな若い学生たちを御指導なさる上において相当重き責任があるべきだと考えるのであります。ことに今度の事件のごときは、その数日前にありました、水谷代議士の自宅を襲撃して、非常な乱暴を学生諸君がしたということを伺つて、私どもは、はなはだこれを遺憾に考えておる際でもあり、裏面にいろいろな魔手が伸びているのではないか。どうかさようなことのないように、間違つた行動のなきように、われわれは念願するのあまり、どうしてもこれは学校当局とまた一般社会、特にわれわれ国会におる者としましては、お互いに協力合つて、これが根絶をしなければならぬ、こういう観点から、たいへん心配いたしておつてお尋ねしたようなわけでありまするが、私の見るところでは、やはり責任帰趨を明らかにすること、それでないとどうも真劍さが出て来ない、こう考えるのでございます。これが、私が昨日の懇談の形において、服部先生お尋ねしたかつた第一点なのであります。つまり学校側責任はどうなさるのでしようか。  それから第二点は、きのうもお話にありましたが、大学としては、学生信用しておるから、まさかああいうことはなかろうと考えておつた。つまり善意のしくじり、こういうことに表面から考えられるのであります。しかし私は、昨日も強調いたしました通り、まだほんの高等学校を出たばかりで、実社会の実情に触れず、また国際情勢におけるいろいろな複雑微妙な争い、謀略などに対する透徹した判断力のないだろうと思われる年ごろの、その学生たちを過信しておるのではないか。野放しにしておいていいのか。信用にはおのずから限度がありわせぬか、條件がありわせぬか。これを一体野放しにしておくというようなことは、まことに危險この上もない。ことに学問の自由とか、大学自治とかいう美名のもとに、いろいろの忌まわしい謀略が行われておるように、私どもは看取いたしております。でありますから、その学生信用しておるがゆえにうりかりしておつたのだというような、きのうの服部先生自身のお言葉であつたものですから、その点を私はさらにはつきりとしておいていただきたい。信用とは、決して無條件野放しにしておく意味でなかるべきはずだ。相当に深く根源にまで掘り下げて行つて、そうして親切なる指導をすべきではないか。信用というものは、決して野放しにすることではないと思うが、その心構えについていかがお考えでしようか。これが第二点であつたのであります。  それから第三点でございますが、これは現行法によりますと、国立大学監督権と申しますか、これが文部大臣にないようであります。国立学校設置法によりますと、国立学校文部大臣の所轄に属す云々という法になつておるために、文部大臣がいつも国会でいろいろな行政上の責任を問われ、追究されるたびに、まことに現行法では困つている。文部大臣には單に義務のみあつて権限が與えてないのだ。これではどうもまことに手のつけようがないと言つて嘆息されておるのであります。つい最近にも、その御答弁があつたのであります。この点について、私ども国会からこれを見たときに、これはたいへんなことだ、国民の血税によつて、国を守り発展せしめるために非常な犠牲を拂つて国立大学ができておるのに、逆にこの学問の自由とか、大学自治とかいう美名を悪用されるようなことがあつたのでは、これはたいへんだ。どうしてもこれには相当責任帰趨を明瞭にし、従つて監督権限文部大臣に與うべき必要があるように私ども考えるのであります。従つて、たとえば、今の国立学校設置法は、法といたしましても、特に国立学校管理法といつたようなものを立法いたしまして、文部大臣文部行政に関する権限を明確にすることが必要のように私どもは見るのでありまするが、当局者として、大学のすべてを代表して日夜学生指導にお当りになつておる学長として、また、たくさんの教授たちを率いて努力なさつておる学長として、そういつたような立法手段の必要をお考えになるやいなや、この点であります。  この三点について、学長としての率直なる御所見を伺つておいて、そうして私どもは国政を審議する上の参考に資したい、こう考える次第でございます。
  7. 服部峻治郎

    服部参考人 お答えいたします。責任の範囲という点につきましての御質問にまずお答えいたします。なるほど、大学国家から委託されて学問研究し、指導することを本体としておる団体でありますが、これの内に起りました責任は、むろんあげてすべて総長、今日では学長と申しますが、学長に存在することは申すまでもないことであります。今度の事件につきましては、昨日も申し上げました通りに、当日起つたことのみを切り離して考える場合におきましては、なお調査中でありまして、鋭意調査はしております。これに対する結論は、まだ出ていないわけでありまするが、いずれにいたしましても、大学の感じております責任上、一定処置を急いでおります。その措置としましては、対学生、対大学内部でありまするが、学生全体に対しては、すでに昨日も申し上げました通りに、今日における不健全な団体を解散して、もつと健全なる団体の新発足を要望し、助長さすという点にあります。大学内の責任といたしましては、今までも、もちろん学生厚生補導には、現在においてあとう限りの全力をあげて善処して来たのでありますけれども、いろいろな事情で万全を期し得なかつた証拠として、今度のような不祥事件が起つて来たのは、非常に遺憾としております。従つて、まずこれに対する責任上、厚生補導の面におきまして強化充実をはかり、教官全部は單に学問の授業のみならず、精神方面における指導、広い意味教育の万全を期すということに向つております。また個々の極端に言うと進退というような個人的のことにつきましては、なお実態調査終つた後にならぬと、何とも今日は言明できぬ状態であります。すなわち目下調査中でございます。  それから、次の学生信用の程度問題。これはごもつともな御意見でありまして、決して学生野放しにして、ただ彼らの良識に信用して、そのままほうつておるというようなことは、むろんないのでありまして、先ほど申しました通りに、今日の状態におきまして、あとう限り善導をすべく努力は続けて来ており、将来はもつとこれをあとうるだけ強化したいということは、今申した通りでありまするが、特に昨日ここで御返事いたしました中に、学生信用するあまり、あるいは信用した結果ということを取上げて申しましたのは、きのうも二回目の御返事のときに申したと思いまするが、あれは当日のことについての、つまり警備上の点でありまして、これは陛下おいでになる、陛下の間近に学生がある場合の学生態度を特にさして言うたのでありまして、いかなる思想を持ち、いかなる考えを持つておる者でも、日本国民である以上は、陛下の御来校に際しては、よもやああいう混乱状態を来すような態度を示さぬであろうという信用でございました。決して学生野放しにして、何してもいいというように、むちやな信用は、むろんしていないのであります。この点は御賢察を願います。  それから大学自治の点でありまするが、何と申しましても、学問普通性のものであるために、これらの研究方面におきましては、どうしても自由というものが存在せねば、学問進歩は成り立つて行かないということは自明の理であります。従つてこの学問進歩、発展、研究を委託されております大学といたしましては、一定の自由というものを認められております。すなわち、たとえば学問政策の道具に使う――これは露骨な言葉で恐縮かもしれませんが、そういうふうなことはあり得ない。今日まで認められておりますところの大学自治、自由というものは、大学人個人々々をさして言うたのでは絶対にありません。たとい大学におる者も、個人というものを埓外に置いた自由を、そんなに普通の人以上に持つておるということは毛頭考えておりません。すなわち大学が扱いまする専門学的の学術研究が、すべての権力から統制干渉または政策の圏外に立つということが承認せられたのが、大学自治あるいは学問の自由、こういうふうに私は了解しておるのであります。もつとも、その次に問題になるだろうと思いますることは、学校治外法圏であるかのごとき考えを持つておるのはけしからぬというのは、事件の前後にもしばしば承ることであります。これにつきましては、昨年の暮れでありましたか、公安條例が出ましたときに、文部省と警視庁との申合せがあつた。その結果われわれ大学へその旨の通牒がありまして、われわれの大学といたしましても、市の公安委員会と打合せをいたしまして、その線にのつとつてある程度まで大学自治沿つて申合せができております。それは四つの條文からなつておりまするが、第四だけを特に取上げて申しますならば、本学構内及び学長管理上の責任を負う地域、または建物、その他の施設における集会、集団行進及び集団示威運動等取締りについては、学長が措置することを建前とし、要請があつた場合警察がこれに協力すること、こういうことが申合せになつておるのでありまして、治外法圏ということは毛頭ございませんが、ある程度こういう申合せが成り立つておることも御参考までにお耳に入れる次第であります。
  8. 長野長廣

    長野委員長 この際ちよつと申し上げておきますが、実は総長は、十二時の汽車でどうしても帰らなければならぬそうであります。それで十二時十五分前くらいで一応ここは打切らなければならぬと思いますので、発言をなさる方は、他にもたくさんあろうと思いますから、その辺を御考慮の上でお願いいたします。
  9. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員 もう一つ、これはむしろお願いしておきたいと思うわけですが、御賛同を得たいと思うのであります。  この事件において、学生諸君陛下に対して求めようとされた五箇條ばかりの問題であります。たとえば、平和を世界に呼びかくるの意思がおありかどうか、あるいは再軍備を拒否されるのお考えはないかとか、あるいは国民軍備のために駆使されておるような事実を知つておるかとか、あるいは京都大学学生生活実態を知るために面会するようなことはしてもらえないか、その他原爆展の問題というようなことを扱つているのであります。言うまでもなく、新憲法によつて陛下は全然政治上の責任地位にはおありにならぬのであります。質問しようとした題目が、ほとんど政治問題である。私どもは、これはとんでもない感違いである。せつかく新しい憲法で保障された天皇が、しかも旅先で国民環視の中でああいう目におあいになるというようなことは、国民としてとうていがまんのできないことである。今後全国に波及しなければいいが、またほかの学生たちがもの好きにこれをまねるようなことがなければいいが、またあるいは一部の謀略によつていろいろな煽動に乗るようなことがあつてはならないと非常に心配するのであります。どうぞ学長は、御帰任なさいましたならば、国会ではこういうふうなことについて深く関心を持ち、心配しているということを、十分にお伝えを願い、かつ積極的に、天皇地位憲法上いかなるものであるかということを、よく全学に徹底するように御説明を願いまして、そうしてかようなことの起らざるようにひとつ御努力を願いたい、こう思うのでございます。もちろん御賛成くださることとは思うのでありますが、その決心のほどを重ねてお伺いしておきたい。  もう一つは、学生の騒動する場合には、私どもの経験から見ますると、必ず教員または教授といつたような人たちうしろで糸を引いているのが、ほとんど九十九パーセントなんであります。ひよつと京都大学内に、さような先生方でもおいでになるとすると、これはたいへんな京都大学自身の迷惑でもあり、また卒業生方の今後の就職などについても、たいへんな迷惑だと思う。往々にして、京都大学卒業生は物騒だ、どうも極端な破壊的な極左分子思想を持つている人が多いようだからあぶない、なるべくこれらの者はとらぬ方がいいぞといつたようなことを、常に私どもは民間におつて聞くのであります。これらのことははなはだ国家のためにも不幸なことだと思います。たくさんの国費をかけて、また父兄にたいへんな負担をかけてせつかく勉強した学生が、就職にも困るような、かえつて世のやつかい者になるような、そういうようなことにでもなつたのでは、たいへんなことでありますから、一段と努力されまして、いわゆる学内の粛学と申しますか、こういう点に徹底するような御努力をお願いいたしたい、こういうわけでございます。どうぞさらに先生の御決心を、この機会に御表明をお願いしたいと思います。
  10. 服部峻治郎

    服部参考人 いろいろ懇切適切な御忠言をいただきまして、ありがとうございます。申すまでもなく、私どももその決意は初めから強く持つておりまするし、また国会のそういう御忠言も、もちろんつつしんでお受けをして、一層われわれの努力のかてといたしたいと存じます。ありがとうございました。
  11. 浦口鉄男

    浦口委員 昨日の懇談会の中で、二、三お尋ねをいたしたわけでありますが、なおこの際あらためてお尋ねをしておきたいことがあります。ただいまお話の中にも、学校当局としての責任帰趨について、御考慮中であるということがあつたのであります。昨日もほかの委員から、学生を八名だけ処分して、学校の方の責任はどうかというふうな御質問もあつたのでありますが、私は、学校がどういう形かで責任をとられる、その基本的な考えをひとつお聞きしておきたいと思います。     〔委員長退席佐藤(重)委員長代理着席〕 それはもちろん、今度の問題が起きるまでには、きのうの学長お話しによりましても、ああした事態が起きるような空気は、必ずしも突発的なものではなかつた、従来からいろいろな情勢が重なつて来て、たまたま天皇の行幸という一つの事実によつてこれが勃発したと思う。であるから、そういう事態を釀成して来た一部の者を処断した、こういうふうな御答弁があつたように承知をいたしております。もちろんそうであろうと私も思うのでありますが、そこで現在の法律におきましては、天皇に対する不敬罪というものは、すでにございません。だから、ああいう事態が起きてもいいということとは、これはまたおのずから別の考えになるわけでありますが、私がお聞きしておきたいことは、学校当局責任をおとりになるという、その基本になるお考えは、一体どこにあるかということを、まずお尋ねをしたいのであります。
  12. 服部峻治郎

    服部参考人 責任をとりまする基本的と申しますると、はなはだむずかしくなりまするが、私はこういうふうに考えております。ただいまもおつしやいました通りに、今度一部の処置はとりましたけれども、これは決して全貌的のものではありませんし、こういうふうな機運を学内で助長して来て、ああいう結果を来したという総括的な責任の一部分を表わしたのが、あの解散と数名の学生停学処置、これに現われたわけでありまして、なおその他のことは、先ほども申しました通り調査が進み、全貌がはつきりした上で善処したいつもりでおります。罪人を出すのが、もちろん本意ではありませんけれども、その調査によつてわかつた全貌のいかんによりましては、なお協議の上しかるべき処置はとるつもりでおります。
  13. 浦口鉄男

    浦口委員 ああした事態が起きるには、起きるべき相当の期間において、いろいろな問題がからまつて、ああした事実に発展したと思うのであります。学長も、やはりこうした事件を契機といたしまして、今までのような同学会の不健全な内容を一掃して健全な団体として新しく発足させたい、こういう御希望まことにごもつともであり、またそこに非常な御苦労をわれわれもお察しするわけでありますが、そうした、従来と申しましても、とりわけ終戰後学生思想的動向と申しますか、あるいはそれが行動に現われた面につきまして、幾多遺憾な点があつて、今日の事態を起したということをお認めになる以上、そうした現在までの過程において、学校当局としていかにすればよかつたかというような点についてこれは決して学長責任を追究するという意味でなしに、御感想があればひとつ承つておきたいと思います。
  14. 服部峻治郎

    服部参考人 これに対しましては、まず学生生活をゆたかにしてやるということが、一つの大事な点であると考えます。これに対しまして、はなはだ虫のよい話でありますが、またこの委員会の方々に、直接ではありませんが、どうぞ間接にお願いすることは、この議会を通じまして、学生厚生補導の面にもう少し国家として物質的の援助を御協力を願いたい。これは答弁にならぬ、虫のよいお願いでありますが、どうぞ御協力をお願いいたしたい。何と申しましても、たくさんの学生の中にはいろいろな考えを持つておる者がおります。これを一々個人的に指導して行くということは、学生以上の数の補導員を必要とするというても過言でないくらいでありますが、今日許されました国家教育機構におきましては、とてもそれだけのことは不可能であります。現在京都大学におきましての補導実態を申しますと、各教官は、自分のクラスの指導教官として、学生生活上なり、思想上なりの相談にあずかつて、これを善導するという形はとつております。なおその上に、各学部それぞれ千名ないし千数百名の学生を持つておりますが、これに対して教官の中から四名ないし十名の補導委員というものをつくつております。これが学生が積極的に団体としての交渉に当つて来たときに、これに応接し、これを善導するという建前になつております。なお全学を一丸として自治団体をつくつております同学会、これを対象といたしましての補導には、補導部というものができておりまして、この補導部長教授が一人当つております。その下に学生課長教務課長というものがありまして、あと事務員から給仕まで入れて二十七、八名くらいの数であります。これで形の上におきましては、一万人の学生に当らなければならぬというような状態であります。少くとも学生課長あるいは教務課長相当すべき地位の者が、もう十名ほどもありますれば、よほどこの点は万全を期し得られるものと思つておりまして、なるべくこの線に沿うて今度は拡充して行きたいと今相談中であります。
  15. 浦口鉄男

    浦口委員 ただいまのお言葉、まことにごもつともだと思うのでありまして、われわれも、省みまして大きな責任を感じているわけであります。と申しまして、これをまた別な観点からも考えなければならぬと思いますことは、当然そうした国家財政なり経済の影響によつて、そこに大きな変化が来るということが考えられるわけです。たとえば、アメリカ住居せんとするものは、アメリカのゆたかな物資生活の中において自由を得たいという気持で、アメリカに移住するということも聞いております。なおまた英国の学生などは、教授学生が常に食事をともにするとか、いろいろ個人的な会合を持つて、その中で深遠な学問を、社会を通じ、芸術を通じ、通俗的な問題の中に精神面あるいは物質面から学問の実をあげて行くということも聞いております。もちろんこういうことは、国家予算の裏づけをもつて適切十分にやつて行きたいということは、われわれも同感でございます。と申しまして、私はやはりそこにそうした経済的な内容とはまた別に、学問そのものに対する一つの高い境地に立つてものを考えていただきたいということも、希望せざるを得ないのであります。ことに、大学が少くとも最高学府であつて学問の奥義をきわめるのはもちろんでありますが、その人の一挙一動が社会に大きな影響を與えるわけであります。私は大学思想の自由、学問の自由ということについて、今ここで論ずる時間を持ちませんから、それには触れませんが、一応それを肯定するといたしましても、おのずからそれを主張するについての表現の姿というものがあると思います。このたびの事件につきましても、極端にこれを申しますならば、かつて天皇に対するいわゆる直訴というような形があつたわけでありますが、ああした形とも比較され得るような事態が起きたというところに、私は非常な遺憾を覚えるわけであります。ことに民主主義が討論と納得によつてものが進められて行く、あるいは相手の人格を尊重して、一応相手の立場、資格というものを認めて、なおそこにお互いが徹底した論議をなして行く行き方というふうに、われわれは承知しておることからいいましても、大学の最高学府にある学生が、ああした姿をもつてみずからの主張を通そうとしたところに、私は経済的な面、あるいは学問の自由というよりも、もう一つ深いところの人間性を教えるというふうな点が、今の大学指導面に私は何となく欠けておるのじやないかということを考えるわけでありますが、学長のそれに対する御感想をお聞きしておきたいと思います。
  16. 服部峻治郎

    服部参考人 ごもつともでございます。大学教育は、必ずしも学問だけに限局するものでありません。将来国家をになうべき国家の宝を養成しておるという気持は、あなたと同じ感じであります。従つて、これは学問のみならず、人間として完全なものに仕上げるということが、われわれ教育者としての任務であります。このことはあなたのお考えとまつたく同感でございます。
  17. 浦口鉄男

    浦口委員 昨日の法務委員会で、学長京都大学の中にいわゆる共産細胞というものがあつたことは知らなかつた、こういうような御答弁があつたように私は承知しておるのでありますが、やはりそういうことでございますか。
  18. 服部峻治郎

    服部参考人 われわれが交渉団体として取扱うべき団体は、いろいろありますが、その中に京大細胞なるものは認めておりません。
  19. 浦口鉄男

    浦口委員 少くともこの間の事件に参加した学生は、京都大学学生のほかに、他の大学学生もあつた、あるいは第三者もあつたというふうに聞いております。その数が五百あるいは千、あるいは二千と伝えられておりますが、私は全部が同じ気持であの事件を起したとは思わない。少くともそこにある数の指導的な役割をした人があり、第二、第三のそれに賛同する気持、考え方は、いろいろ段階があると思います。そうした差異がある。その主なる指導的役割を果した者を、これを細胞というか何と申しますか――それは学校当局は細胞として認めないとおつしやられれば別でありますが、かりにこれを細胞と認めないとしても、そうした中心勢力が一体どのくらいあつたかということは、ふだんからお考えと思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  20. 服部峻治郎

    服部参考人 学校が公認しておらない団体でありますから、何人くらいあるかという数的のことは、ちよつと私は存じておりません。
  21. 圓谷光衞

    圓谷委員 昨日の懇談会において二、三質問いたしたのですが、きようは二点についてお伺いしたいと思います。この公開質問状を見ますと「私達は貴方が退位され、天皇制が廃止されることをのぞむのです」ということがありますが、この思想はこれは明らかに共産党の思想であります。現在世界は二つの思想にわかれて争つておりますし、共産党の議員も国会におります。でありますから、共産党の学生がこれを研究し、こういう思想を持つた者が学校でやつておるということは、これは学長としてけつこうであると認めておるかどうか、この見解をお伺いしたいと思います。     〔佐藤(重)委員長代理退席、委員   長着席〕
  22. 服部峻治郎

    服部参考人 決してけつこうなものとは存じません、まことに不都合と信じております。
  23. 圓谷光衞

    圓谷委員 昨年東大事件が起りましたときに、あの曲学阿世とまでいわれた南原さん、この方は共産党を研究し、学問としてやることはさしつかえない、こういうことを答弁されておる。今こういう混乱した思想の中に、世界が二つに対立しておるし、日本にもこの二つの対立抗争が起つております。こういう時代にあたつて、あなたの持つておる思想は、南原さんとは違う、りつぱな人格の人であるということを聞いておりますから、あえてあなたを追究するわけではありませんけれども、われわれが国家予算を審議し、国民の代表として国会におる以上は、この京大の学生二十四名かを処分して、学長はてんとして恥じない、この責任の問題をお伺いしたいのであります。問題は、民主主義思想の根本は、結局責任にあると思うのであります。学生を処分しただけでは、決して学風は改まらない。昔からそれを統轄し教えるところの学長責任、これが最も重大なものと私は存じております。人を責めず、真にみずからを責める、この態度において初めて学風が改まるという。あなたは先ほどは学校の中の共産党の研究その他はけつこうと思う、不都合と思わぬという御答弁をなさつておる。しかしこの学生ができるということは、やはり教授学長、すべての責任でなければならぬと私は存じております。過去においては内閣からの辞令によつて免職あるいは解職、譴責とか、いろいろの法的処置によつてその責任のあり方をはつきりいたしたのでありますが、現在においては、責任は同学会にありとして、八名の学生を処分した。しかし現在直接の事件については、いまだ調査中である、こういう御答弁でございますが、この公開質問状の全貌を読みますと、これは恐ろしい根源が残つておるように見えます。これは学長もおそらくお読みになつたと思いますが、この公開状をお許しにならなかつたということも、私はきのうの答弁でわかつておりますが、いかにして責任をとるかという問題を私はお聞きしたいのです。ただ経過の報告をお伺いすることによつて――今後大学管理法案もございます。何とかこれは考えなければならない。きのう法務総裁は、こういうことは、まだ今後たびたび起るかもしれないということを答弁しておる。おそらく学長自身も、この次には学内にはこういう事件は絶対に起らないということは、確信を持つて答弁できないだろうと私は存じます。いかにしてこういう問題を解決するか、これについての御見解をひとつお伺いいたしたいと思うのであります。
  24. 服部峻治郎

    服部参考人 引合いに南原学長が出まして、これに対しては他人のことにわたりますので――とにかく私といたしましては、南原学長は先輩として敬服しておる方の一人であります。これでごかんべん願います。  さてあの公開状の内容で共産主義云云ということは、ごもつともな御見解と存じます。むろんそういう行動に出ましたことは遺憾であります。しかし初めにも申しました通りに、大学におきましては、研究ということは自由にさせております。いかなる思想でも、いかなる学問でも、研究は自由にさせておりますが、これを形に現わして、ことに政治的活動にわたるような場合は、これは厳禁するようにしておりまして、その線に沿つて学生指導しております。たまたまれそれが政治的活動の一端として現われたと認むべきかどうかということについては、まだ何とも今日は申し上げかねる次第でありますが、あなたのさつきの御説明によつて、大分その点も明らかになつた次第であります。
  25. 若林義孝

    ○若林委員 昨日来の懇談会及び今日の正式な委員会において、大体服部学長は、どういう意図で本委員会学長の発言を煩わしておるかということは、おわかりくださつたであろうと思うのであります。今度の京大騒擾事件というように、新聞紙上には現われておるのでありますが、私たちはこれは社会的に非常に重大な影響を及ぼしておる、重大問題とわれわれの胸に映じておるのであります。学長御自身はどういうふうに思つておられますか。一番最初ずつと御説明を聞いたときには、重要な主題となる公開質問状のごときものも御発言がなかつた。それから平和の歌というだけのことであつて、それが陛下のお耳にまでも入つておるということを、われわれは聞いておるわけですが、そういうことについても御発言がなかつたわけであります。こちらからお尋ねしての御発言であつたのであります。これは決して学長を責めるために承つておるのじやないのです。これからどうすべきか、またこの事柄がどういうようないきさつで起つたかということを掘り下げて、われわれとしては考えておかなければならぬというこの気持なのであります。学長自身は、その原因は学生生活が苦しいからだ、これは学習をもつとゆたかにしてやらなければならぬのだと言う。これについても、われわれ当委員会といたしまして、しばしば問題になつておることでございまして、気持はわかるのでありますけれども、それを突き詰めて行けば、敗戰ということが理由になる、あるいは生れて来たからだということに原因がなつて来るわけであります。苦しいのは全般なんでありますが、なぜ京都の大学に特にああいうことが起つたか。おそらく気持においては、どの大学でもあるかもしれないけれども行動として起つて来たのはどういうわけであるか、つぶさに検討をしたところを承りたいと私たち考えるのであります。今日はもう時間もございませんから、学長からああでございます、こうでございますということを、今私は承ろうとは思いません。将来この委員会において大学管理法その他が審議されることになつております、そのときにも非常に参考になることなんであります。今日うまく言いくるめたというような考えをお持ちにならぬように、将来日本の大学――国立大学ばかりではない、私立の大学におきましても、学生一般に関してこういうことを未然に防ぐことのできるように万全の措置を講じて行かなければならぬ。たまたま不幸にして京都大学においてこれが表面的に行動となつて現われたわけでありますが、これを契機として全国の学生も自粛をし、また学生補導にあたつて、非常にしやすいように行くということになる一つのきつかけとしたい。こういうように私は思いますので、また後日京都からでもございましようが、この委員会にお出ましを願つて意見を承ることがあると思うのでありますが、そういう意味において深く掘り下げて御考究を願いたいと考えるのであります。私もかつて京都大学で今日の学生補導の役割を持つて一年ばかりお手伝いをした経験を持つておる者として、深憂をいたしておる次第であります。  ただ一つつておきたいのは、京都大学事務官学生課長などにしておられるのでありまして、従つて元の学生主事と異なつて制度上は教育権限を何ら持たないところの事務官がこれに当つておられるのであります。従つて、魂の入らない機械的なものになるのじやないかと思うのであります。先ほど圓谷委員から東大が引合いに出されておつたのでありますが、東大の補導部長と申しますか、これは教授が当つておるのであります。京都の大学では、われわれの承知しているところでは、一事務官としての仕事にせられている。この点はどうお考えになつてこれを続けて行つておられるか。このことは学長御自身に責任はないと思いますけれども、お気持を承つて、今までのような事務官で行くがいいか、あるいは教育という面に重点を置く教授が当るべきかということについての御意見を承つておきたい。
  26. 服部峻治郎

    服部参考人 ごもつともでございます。われわれの方も、教育という立場から、なるべくあなたの御趣旨の線に沿うべく努力しまして、その現われとしまして、現在は補導部長教授がやつております。それから教務課長は助教授がなつております。その他は事務系統の者でありますが、これは漸次教官をもつて充実するように、現在もくろみつつあります。この点につきましても、予算その他定員というようなことに縛られて、相当に不自由は覚えます。けれども、早急にその線に沿つて行くつもりでおります。
  27. 渡部義通

    ○渡部委員 今回の京都大学事件は、あたかも古今を通じての一大不祥事といいますか、そういうものであるかのように騒がれて、学長としては、はなはだ迷惑に感じられる点もあるに違いないと思いますが、しかしこの内容を虚心坦懐に見て行きますならば、事件には、それほど重大であるような要素は。何一つないとわれわれは考えております。たとえば、質問状の内容であります。これは圓谷君も非常に深刻に考えているようでありますけれども、それが刑事的な内容を何ら含まないものであるということは、昨日大橋法務総裁も言明された通りであります。それのみでなくて、現在の内外情勢をゆがみなく判断する力を持ち、また日本の現状を憂える者にとつては、この質問状はまことに当然のことであると私たちは考えております。のみならず、これは学生の心、あるいは考え方の現われなのであつて、そういうものとして考えられなければならぬと思うわけです。学生諸君は、これを天皇に伝えたいというのであつて学長にその手続をお願いした。しかし、学長からはこれを拒絶されたというふうに聞いておりますが、その手続の点においても、われわれは決して日本人の常識として今日考えてみても、不当のものではないと思います。さらにまた学生は、もし学長がこれを天皇に伝えることを許容されないならば、たとい一分間でもいいから、学生自身が天皇に面接する機会をはからつてもらいたいということを依頼したそうでありますが、これも拒絶せられた。しかし、この天皇に面接するということは、以前にはしばしば、たとえば労働組合の代表とか、あるいは慶応大学に行かれたときは、慶応大学学生の代表とかが会つた事例もあるのでありまして決してこれも沒常識の要請ではなかつた。もしも学長がこういう……。
  28. 長野長廣

    長野委員長 時間が迫りましたから、どうぞまたあとで……。
  29. 渡部義通

    ○渡部委員 学長がこういう点を考慮に入れられて、たとい質問状の内容が学長の見解に異なるものがあつても、学生の気持と考え方を天皇に伝えたいというその点を取上げられて、しかるべき処理をしていただいたならば、こういう問題が起る一つの原因はなかつたのじやないかというふうに考えるわけでありますが、どういうお考えでこれを受けられなかつたか、この点をひとつお聞きしておきます。これが第一点で……。
  30. 長野長廣

    長野委員長 渡部君、発言中ですが時間が迫りましたから、どうぞそのお考えで、なるべく早く……。
  31. 服部峻治郎

    服部参考人 将来につきましては、十分考えた上で善処いたします。
  32. 長野長廣

    長野委員長 もう時間がありません。まだほかにもずいぶん残つておりますし、委員長一つ重要な問題で質問がありますから――それではもう一つだけ、まとめてください。
  33. 渡部義通

    ○渡部委員 それではまとめます。またたとえば、この騒ぎは君が代のかわりに平和の歌を歌つたということが、一つ條件にされているようでありますが、一度禁止された君が代のかわりに平和の歌を歌つたところで、これもまた事件を重大視する何らの内容をなしておらない。天皇の車に接近したと言いますが、この問題も終戰直後には群衆が天皇の車を取巻いて身動きができないような状態であつた、そういうこともその時代には天皇と民衆との親しみりように考えられた時代があつたのですが、今日ではそういうふうには考えられなくなつて来たということにすぎないわけです。こういうことも、決して事件の内容を不祥事的なものにする何らの要素をもなしておらないわけであります。  それから第三点は秩序維持の問題でありますけれども学校当局としては、切めから学内自治建前から、警察の学内侵入を強く拒絶せられておつたというふうに聞き及んでおり、警察の強硬な要請によつて、むしろ入れざるを得なくなつたということも、学生諸君が直接に来てわれわれに報告しております。しかも警察が入ることによつて学生が刺激され、傍観的な立場にあつた学生までがこれに巻き込まれざるを得ないようになつたということ、言いかえれば秩序を混乱させたものはむしろ警察側にあつたのだということは、これはわれわれ大衆運動の動きを見ている場合に、しばしば経験するところでありまして、こういうこともあつたのではないか、これもまたお聞きしたいと思います。しかも秩序の維持について、同学会から協力を申し出たことに対して、大学当局はこれをすなおに受け入れられなかつた。しかも秩序がいわば乱れたというような状態のもとで、同学会幹事が学生諸君に向つて秩序を保つように呼びかけたところが秩序を保つことができた。こういう状態のもとでは……。
  34. 長野長廣

    長野委員長 御発言中ですが、時間が切れましたので……。
  35. 渡部義通

    ○渡部委員 学生諸君と一緒に秩序を保つような方針をとらるべきではなかつたか、そういう方針をとろうとはしなかつたかという点をお聞きしたいわけであります。
  36. 服部峻治郎

    服部参考人 一方的な御報告に立脚した御意見もあるように思いますが、貴重な参考となる御意見として、ありがたく拝聽しておきます。
  37. 長野長廣

    長野委員長 この際委員長から一言希望を申し上げておきます。  すでに御発言もありました通り、この事件の起りますところには、これを起さしめるに至るまでのことにつきまして、教育者として当然責任があると思います。これにつきまして、なるべくすみやかに、あるいは御調査等によりまして一定の方針をお立ていただいて、適当の機会にお伺いすることができればけつこうであると思います。なおこのことに至るまでの病根は、決して当日の群衆心理その他による現象にあらずして、必ずや深き病根があることと存ずるのであります。ことに当日及び数日前の大学の環境におけるあらゆる現象というものは、容易ならぬ影響を学内に及ぼしたものがあると私は考え得る材料を握つておるのであります。つきましては、大学とせられましては、単に京都大学のためのみならず、他に波及するおそれがあるという事柄から考えましても、この病根一掃についての資料の收集及びその方策の確立をお願いいたしたい。またそれを承る機会もあると思いますが、特に希望するものであります。
  38. 圓谷光衞

    圓谷委員 これは昨年も申し上げたのですが、昨年東大生を二人預かつて就職に困難を来し、えらい目にあつたのです。要するにレツド・パージの事件から、東大生がどうも赤もしくは桃色がかつているというので、はねつけられて困つた。そこでこの事件によつて、京大の学生就職等がもし困難に陥つた場合、学長はいかなる責任をとるかということ。それは国家予算が学生一人に年五、六万円もかかつている場合に、こういう就職の困難な学生を養成されるということは、われわれ議員として忍び得ないので、こういう場合には学長はどういう責任をとるか。百パーセント就職の見込みがありますかどうか、それをひとつお伺いいたします。
  39. 服部峻治郎

    服部参考人 憂うべき結果を来すことが考えられまして、その点非常に心配の種になつております。なるほど学生一人について五万円ずつ出ておるそうですが、もつと二十万、五十万と出るようにお骨折りを願いたいという気持もございますが、十分現在許された範囲におきまして善処するように努力しまして、こういうことが起らないように、これを防止して、学生、ひいては大学信用の維持回復に努力いたします。
  40. 圓谷光衞

    圓谷委員 学生教育の面において、金を出せばそういうことがなくなるのですか。国家予算において一番金がかかつているのです。昔ならば帝大生といえば、金鵄勳章付でどこへでも就職できたのです。それが就職できないような学生を養成されるというようなことになつておりまして、われわれ国民の代表として忍びがたい。それを、金をもつと出せば必ずそういうものは出さないとおつしやると……。
  41. 服部峻治郎

    服部参考人 そんなことは毛頭ありません。ほしいような気持がするという趣旨でございます。
  42. 圓谷光衞

    圓谷委員 金があればこういう思想的な考えを持つ者は一人もおらぬというような……。
  43. 服部峻治郎

    服部参考人 そうではございません。それでは失言として取消します。
  44. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 私は希望だけ申し上げます。今回の事件は、われわれとしても遺憾に思つているのであります。そこで、この事件において学生補導に重点を置くがために、学園の学問の自由を破壊されないようにお願いしたいと思うのであります。私は、大学教授の一員といたしまして、大学はあくまでも真理を探求し、学問の蘊奥をきわめるところであると思います。従つて学問の自由、すなわち研究の自由、こういうことは、これは大学の使命であると存ずるのであります。しかるがゆえに、行政的なある事件によつて学生補導に嚴なるがゆえに、この大学の使命であるところの学問の自由、研究の自由を阻害することのないように、あくまでも大学学問の自由の殿堂としてやつてもらいたいという希望を申し上げておきます。
  45. 長野長廣

    長野委員長 本問題はこれをもつて終了いたします。
  46. 渡部義通

    ○渡部委員 この問題は非常に重視されているようですから、この問題が真実であつたのかどうか、また学生諸君はどういう気持を持つてつたのかというような点も判断して、将来大学管理法等の参考としても、学生諸君意見を十分聞く必要があると思います。当局の意見だけではだめと思うのです。従つて、次のしかるべき機会に同学会学生諸君の代表を呼んで、詳細に真相を探求していただくように希望いたします。それをとりはからつていただきたいと思います。
  47. 長野長廣

    長野委員長 渡部君のせつかくの御希望でございますから、理事と御相談の上決します。  渡部君に申しますが、理事協議の結果、その必要なしということに決定いたしましたから、さように、御了承を願います。     ―――――――――――――
  48. 長野長廣

    長野委員長 次に文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、質疑に入ります。
  49. 高橋道男

    高橋参議院議員 発議者の一人である参議院の高橋でございます。昨日堀越文部委員長伺つて、提案の理由の説明をいたしたことにおいて、ずでに趣旨の御了解は得ておると思いますが、参議院におきましては、昨日の文部委員会でこれを議了いたしまして、可決いたしました。さつそく成規の方式によつて本会議を経て、当委員会に審議をお願いすべきでございますが、参議院の都合で、本会議が月曜にしか開かれませんので、はなはだ恐縮でありますが、予備審査をもつてお進めくださるように、特にお願い申し上げておきます。御了承願います。     ―――――――――――――
  50. 長野長廣

    長野委員長 次に、学校給食についての問題に入りたいと思いますが、ここで暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後零時十二分開議
  51. 長野長廣

    長野委員長 再会いたします。農林委員長がお見えになりましたので、学校給食に関する件についてただいまより懇談会に入ります。      ――――◇―――――     〔午後零時十三分懇談会に入る〕     〔午後零時二十四分懇談会を終る〕      ――――◇―――――
  52. 長野長廣

    長野委員長 懇談会を終ります。  本日はこれにて散会いたします。次会は、文化財保護法の一部を改正する法律案が参議院より送付される日とにらみ合せまして決定をいたします。追つて公報をもつてお知らせいたします。     午後零時二十五分散会