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堀越参議院議員 ただいま
議題となりました
文化財保護法の一部を改正する
法律案の
提案理由を御
説明申し上げます。
第七回
国会において成立し、昨年五月三十日に公布施行せられました
文化財保護法によ
つて、
わが国の
文化財保護行政は、今や新たな軌道に乗ろうとしているところであります。
従つて、この
法律の
充実改善について根本的検討を加えることは、いましばらく
運営を経た後に譲るべきものと存じますが、従来からその必要を痛感されていました京都国立
博物館及び奈良
文化財研究所新設の機運が熟しましたことと、今日までの同法の実施状況に照して、若干の
規定整備を加える必要も認められますので、これらの小範囲の改正をいたそうとするのが、この改正案の趣旨であります。
次に本案により改正いたそうとするおもな事項について御
説明申し上げます。
改正の第一点は、京都国立
博物館及び奈良
文化財研究所の新設であります。御承知の通り、奈良、京都を中心とする関西地方は、質的に最も貴重な
文化財が数的にも最も多く保存されている地方であります。
従つて、この地方に適当な公開
施設を設けますならば、
文化財の出品を行いますのに便利であり、
充実した企画に基く公開を実施することができますし、その
文化財の保存され来
つた地方の歴史的、自然的環境風土の中においてこれを鑑賞することが、一層深い感銘を与えることとなり、
わが国文化財の内外における
認識理解を深めるのに寄与すること少からぬものがあろうと存じます。また、この地方に適当な
研究機関を設けますことも、その豊富な
研究対象が手近にありますので、その
研究を行う上において大きな利便がありますことは申すまでもなく、また
文化財所有者の求めに応じて、すみやかにその保存に関する適切な指導助言を与えることもできる等、
文化財研究の
充実向上及び
文化財保存の徹底に大いに貢献し得るものと
期待ざれるのでございます。この観点に立ちまして、現在の京都市立
博物館を譲り受け、これを
充実改善いたしまして京都国立
博物館を設けるとともに、新たに奈良
文化財研究所を新設し、現在東京都にある国立
博物館及び
文化財研究所と、東西相対応して
文化財の公開及び
研究の中核といたしますことは、
文化財保護行政の
目的速成上、最も適切な施策であろうと存ずる次第であります。なお、この二つの機関の設置は、予算の
関係上昭和二十七年四月一日から実施することといたしておるのであります。
改正の第二点は、
国宝その他の重要
文化財の所在の変更について、現在事後の届出を要することとな
つておりますものを、事前の届出を要することといたそうとするものであります。
国宝その他の重要
文化財の所在の変更にあたりましては、その移動の際における
文化財の毀損防止上必要な指導、移動先の環境に応ずる管理上必要な指示を事前に行うことが、
文化財の保存上適当な場合があり、事後の届出のみでは、
保護の万全を期し得ないうらみがありますので、原則として
文化財の所在の変更につきましては、所在を変更しようとする日の二十日前までに事前の届出を要することといたそうと存ずるのであります。
改正の第三点は、都道府県の
教育委員会に関する
規定を整備いたそうとするものであります。すなわち史跡名勝天然
記念物の
現状変更に関する
文化財保護委員会の許可の権限を、都道府県の
教育委員会に委任し得る道を開き、また都道府県の
教育委員会は、当該都道府県の区域内に存する
文化財の保存及び
活用に関し、
委員会に対し
意見具申を行うことができることとし、
文化財保護行政に関する都道府県
教育委員会の権限と責任を広めることといたしまするとともに、この
教育委員会に専門的、技術的
補助機関として、
文化財専門
委員を置くことができる旨の
規定を設けることといたした次第であります。
以上のほか
国宝または重要
文化財の国に対する優先的売渡し申出に対する国の買取り通知期間を二十日から三十日に延長し、
文化財保護委員会附置の「
研究所」の名称を「
文化財研究所」と改めるとともに、重要
文化財の修理等につき、国から
補助金、負担金を受けた者またはその相続人等がその重要
文化財を有償で譲り渡す場合に、国に返納すべき納付金に関する
規定、
文化財保護委員会事務局各部の所掌事務に関する
規定及び国有財産法との調整
規定、その他二、三の点について若干の事務的整備を行うことといたしました。
以上がこの
法律案の
提案理由及びその
内容の骨子でございます。何とぞ、十分御
審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。