○中原
委員 次に産業戦線という文字がこの
委員会の記録の中で出て来る。
従つて産業戦線に向
つて失業者の諸君を転換させて行こう、こういう試みのもとに職業補導をなさるということはわかるのでありますが、たまたま私はここに妙な文書を発見したわけです。しかもその文書の指さしているところが、職安局長の指摘されました職種などと非常に
関連性が深いので、ちよつと私自身として気をまわすわけです。四、五行ですから読んでみます。これはどういうものかといいますと、日産協の文書ですが、その中に、「
日本及びその周辺に駐屯する米軍の軍需物資を生産供給する、これは朝鮮動乱に伴う特需の延長としての
性格を有し、当面は軍需部品及び補助軍需物資の生産、修理、サービス等の提供が中心となる。その次は、「
日本以外の極東諸地域に駐屯する米軍の軍需物資調達に応ずる。」第三は「米国を中心とする太平洋諸国の安全保障協定と表裏の
関係において、これら諸国の必要とする軍需物資の一部生産供給にあたる。」大体以上のように三つの問題を目ざして今後の協力態勢を強化して行く、こういうことがたまたま日産協の文書で出ておるわけであります。これは決して祕密文書でも何でもない。日産協の文書なんです。そういうものがあることを指摘し、しかもたまたま今回の大量
整理等に伴うて、その受入れ態勢として機械
関係の職業補導に相当な重点を置く、こういうこととにらみ合せて
考えますると、あるいは中小企業もすでに問題じやない、平和産業も壊滅に瀕しておる、この経済事情は
御存じの通りのわけですし、そうであるならば、結局はこういうような方向へこの人たちを動員して行くということが予想されるわけです。しかし何でもいいじやないか、
仕事があればそれでいいじやないか、こういうふうに一口に簡単に片づける人がもしあるとすれば、これは問題ではありません。しかしわが
日本が、今後おもむくべき方向は、やはり平和な
日本、こういうことだと思うのです。それでありまするならば、こういう方向へ動員される
労働者の
仕事というものは、平和とはま
つたくうらはらの
仕事に動員されて行く、これが予想されるわけです。しかもこれらの職種を動員するいわゆる軍需産業というものは、おそらくこれらの人たちを永久に臨時工として、臨時雇として使うことを最も都合よしとするであろうと
考えます。そのことは情勢の変化につれては、簡単にまたもう一度首を切るということの必要を
考えるからでありまして、これはどのような大工場にいたしましても、本雇いの人たちにこれを転換して参りますると、首を切ります場合に、相当費用がかかります。しかも首切るのに、はなはだ不便を感ずるので、簡単にさつと片づけるために、やはり臨時工であることが適切だと彼らは
考えております。また今までの例から
考えましても、特需、新特需以来、その
関係工場の
労働者は、たいてい臨時工である場合が多いのです。ことに最近臨時工の採用の数が非常に激増いたしておることにつきましては、今さら私が指摘いたしませんでも、主務官庁としての
大臣並びに局長は
御存じだと思います。こういう諸傾向が出ておるわけであります。そこで私が
一つ心配いたしますのは、そういうような方向へ、何でも
仕事さえあればいいではないかというので動員され、しかも安い悪条件の臨時工として、しやにむに引きず
つて行くということにな
つて参りますると、いかに失業者といえ
ども、特に官庁
関係の
労働者諸君は、しばしば平和、独立、こういうことを主張して参りましたはずであります。
従つて骨の髄まで平和を愛好する熱情に燃えておると思うのです。しかもその
仕事の条件が、経済的には非常に劣悪であるし、また雇用条件が臨時工であるし、そういう不安定な条件をからみ合せて
考えますときに、これらの首切られた人たちが、喜んでおもむくとは
考えられない。あるいはまたそればかりじやなくて、それ以外の一般失業者も、それを求めるようになるであろうと
考えまするが、そういう
一つの産業軍の動員といいますか、
労働者のそういう動員の態勢というものが、これから非常に重大な課題にな
つて持ち上
つて来るのではなかろうか、こういうふうに私は思うのであります。私
どもが非常に心配する一点がすなわちこれなんです。そうな
つて参りますると、
労働階級の、
日本国民の願うところと相反した方向へ、しかも積極的に協力態勢を強化して推し進めようとするならば、当然
労働者動員のためのきつい
方針が出て来るような危険性がないと保証しがたいのであります。しかも先日来からの
委員会のいろいろな
質疑の中の
答弁を調べてみますると、そういうにおいがやはり出て参るのであります。そこで私はこの問題について、
政府がどのようにほんとうには
考えておるのか、ま
つたくそういうことは夢にも思うておらないことなのか、このことを私は責任ある
大臣の
答弁として承
つておきたいと
考えるのであります。しかしつけ加えておきまするが、私の仄聞するところでは、職安局あたりで何かそういうような
構想が討議されておるということなんです。そうではないと一言にこれは否定なさると思いまするが、しかし一種の強制労務徴用のごとき恐るべき
方針が、
労働省所管内で論議されておる、ではなくてむしろ
研究されておる。いやむしろそれがさらに進んで、もつと具体化されつつあるということさえ耳にいたすのであります。これは決して笑いごとじやありません。そういうことにもしな
つて参りまするならば、
日本の国民は自分の自由な意思によ
つて職を求めることが、その辺から許されなくなるでありましよう。しかもそういう場合に直面する日を予想するとき、この繰返し述べられました御
答弁の中では、本人の意思に
従つて、本人の技能に沿うて、いわゆる本人の自由のおもむくところにこたえるというような御
答弁が繰返されておるやさきでありまするが、しかしながら私はそのいかようなるお
言葉にもかかわらず、現実は非常に冷酷にも、とてつもない方向に動こうとしておることを憂えなければならぬと思うのであります。そういう問題に関しまして、
大臣はどのようにお答えをいただくことができるか、私はこの際この点についての御
答弁を求めておきたいと思います。