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1951-11-21 第12回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十一日(水曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長代理理事 青木  正君    理事 坂田 英一君 理事 船田 享二君       阿左美廣治君    井上 知治君       大泉 寛三君    大内 一郎君       中村 幸八君    本多 市郎君       松本 善壽君   山口喜久一郎君       山口六郎次君    岡  良一君       立花 敏男君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         内閣官房長官 菅野 義丸君  委員外出席者         総理府事務官         (大臣官房監査         課長)     岡田 典一君         総理府事務官         (恩給局審査課         長)      城谷 千尋君         專  門  員 亀卦川 浩君         專  門  員 小関 紹夫君     ————————————— 十一月二十一日  委員江花靜君、池田勇人君、橋本龍伍君、松岡  駒吉君及び加藤充君辞任につき、その補欠とし  て阿左美廣治君、中村幸八君、大泉寛三君、岡  良一君及び立花敏男君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 十一月二十一日  碁職に関する就職禁止退職等に関する勅令の  規定による覚書該当者指定解除に関する法  律案内閣提出第四六号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した事件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第五  二号)  公職に関する就職禁止退職等に関する勅令の  規定による覚書該当者指定解除に関する法  律案内閣提出第四六号)(参議院送付)     —————————————
  2. 青木正

    青木(正)委員長代理 これより会議を開きます。委員長所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。  本日は、恩給法の一部を改正する法律案、及び本日本付託になりました、公職に関する就職禁止退職等に関する勅令規定による覚書該当者指定解除に関する法律案を議題といたします。  まず、公職に関する就職禁止退職等に関する勅令規定による覚書該当者指定解除に関する法律案について質疑を行います。質疑の通告があります。これを許します。立花敏男君。
  3. 立花敏男

    立花委員 簡単に要点だけお聞きしたいと思いますが、問題の要点は、この改正案を出されましたのは、追放された者の解除に対する法律改正本旨だと思いますが、その場合問題になりますのは、最近行われました共産党幹部、特にその中には数名の国会議員も含まれておるわけでありますが、その者に対してどういう取扱いをなさるおつもりなのか、この改正案によつて共産党追放者に対する問題は、どういうふうにお扱いになるか、こういうことを明らかにしておきたいと思うわけなのであります。それに関連いたしまして、まず共産党に対する追放が、どういう法的な根拠に基いて行われておるのかということを明確にしていただきたい。これがありませんと、はたして今度の追放解除に対する政府の法的な措置に含まれるかどうか明確になりませんので、まずこの共産党に対する追放——九六追放、あるいはその前にさかのぼりまして、去年の六・六追放、これの法的な根拠、ことに九・六追放の法的な根拠をひとつ承りたい。
  4. 菅野義丸

    菅野政府委員 お答えいたします。共産党幹部人たちに対する追放根拠は、昭和二十二年勅令第一号、公職に関する就職禁止退職等に関する勅令、いわゆる勅令第一号と言われておりますこの政令に基いているわけでございます。それからそういう人たちはこの法律によつて解除申請をすることができるかどうかというお尋ねのように伺いましたが、これは今度出されました法律案の第二條によりまして本人あるいは本人が死亡しました場合には、その者の遺族または縁故者が、もちろん内閣総理大臣に対しまして解除申請をすることができるようになつております。
  5. 立花敏男

    立花委員 提案理由の中には、覚書該当者とあるのですが、では共産党追放されました者が、覚書のどの項に、該当するのかということを御教示願いたい。
  6. 菅野義丸

    菅野政府委員 覚書該当岩というのは、これはこの勅令規定によつて指定を受けた者のことを言うのでありまして、一項の別は、これは施行令の方できめてあるのでありまして、勅令第一号によるということだけでもつて、こまかい点は、どの項によつてというようなことは明らかにしておりません。
  7. 立花敏男

    立花委員 どの項によるか明らかでないというのは、わかつてつて発表されなかつたのか、該当する項がないから発表されなかつたのか、その点をひとつ……。
  8. 菅野義丸

    菅野政府委員 いわゆるA項とかG項とかいうような項の問題は、勅令第一号を施行します細則の中にきめられてあるのでありまして、これは一応の基準でございます。しかしながらはつきりとそのうちのどれか一つとか二つとかに該当しない場合におきましても、勅令第一号全体によつて覚書該当者としての指定をすることができるのでありまして、一応施行令の方のどの項ということは明らかにいたしませんで、勅令第一号によつてということでもつて指定をいたしたような次第であります。
  9. 立花敏男

    立花委員 どの項に該当するかわからないで、ただ一般的に漠然と勅令第一号でやるということはあり得ないのではないかと思います。特に国会議員公職から追放するような場合に、適用される項目該当者として指定されるところの條項についてもわからないで、漠然と第一号で追放することはあり得ないと思いますが、あり得るのかどうか。またそういう漠然とした形で、この間の九・六追放をおやりになつたのか、何ら施行細則該当條項にも当てほまらないのに、ただ漠然と第一号でおやりになつたのか。
  10. 菅野義丸

    菅野政府委員 先ほどお答え申し上げました通り施行令項目は決して制限的な列記ではございませんで、例示的なものであります。要するに勅令第一号に該当いたしますれば、これによつて指定ができるのでございまして、必ずしも施行令に言うAないしGのいずれかに該当しなければならぬというような制限的なものではない、かように解釈しております。
  11. 立花敏男

    立花委員 私どもはそうではないと思う。施行令でそういう何順々々とこまかくきめてありますのは、特に追放こいうような重大な問題でございますし、特にごまかく規定をいたし審査委員会をつくつて審査をやりまして、初めて愼重を期することができます一ので、そういう意味からごまかい條項が私はきめてあると思うのです。これをおやりにならなかつたのは、非常に私おかしいと思います。  それからもう一つは、審査委員会は第一号では規定されておるはずですが、それがもうなくなつている。しかるに追放だけが行われておるという形は不合理ではないか。なぜ審査委員会はおやめになつたか、これはもう第一号は適用しない乏いうところから来ておるのだと思いますが、九・六追放審査委員会との関係をひとつ明らかに、していただきたいと思います。  それから勅令第一号一般でおやりになつたとおつしやるのですが、勅令第一号一般精神とは一体どういうものであるかということを、お尋ねいたしたい。
  12. 菅野義丸

    菅野政府委員 審査委員会権限は、そのまま内閣総理大臣に帰属しているようになつておりまして、現在におきましては、審査委員会を経ないで、内閣総理大臣ができることになつております。  なお勅令第一号の精神というお話でありましたが、精神ではなく、勅令第一号に該当する、こういうふうにお答え申し上げます。
  13. 立花敏男

    立花委員 勅令第一号に該当すると申されましても、それじや勅令第一号はどういう根本的な理念でそういう追放をやるのかということがわかりませんと話になりませんので、勅令第一号に該当するということは、言葉をかえれば根本的にはどういうことを意味しておるのかということを承りたい。
  14. 菅野義丸

    菅野政府委員 ちよつと勅令適用のこまかい点になりますので、監査課長からお答えいたさせます。
  15. 岡田典一

    岡田説明員 ただいまの点は、昨年の大月六日にいわゆる六六追放に関します最高司令官総理あて書簡と、それから覚書第五四八号、団体等規正令根本でありますが、それと、この勅令第一号の基礎であります覚書五五〇号の趣旨にのつとりまして、国内法的には勅令第一号によつて追放指定を行う、そういうことに相なつております。
  16. 立花敏男

    立花委員 その問題にはおいおい入つて行きたいと思うのですが、さいぜんのこちらのお答えと大分違つて来て、第一号だけでなしに、団規令等精神も加味しておやりになつた。あるいは新しい司令部覚書、六・六追放覚書等にも根拠を置いておる、だから根拠は三つになつたと思います。団規令、六・六の覚書、それから追放令最初追放令でおやりになつたというのとは少し幅が広くなつていると思いますが、この食い違いはあとで説明していただくといたしまして、さいぜんからお尋しております勅令第一号でおやりになつたと言われる場合に、勅令第一号の追放をやる場合の根本的な精神は、一体どういうことかということをお聞かせ願いたいと思います。これは決して個々の場合の問題を申しているのではございませんで、勅令第一号の根本的な精神は何かということを明らかにしていただきませんと、今後ああいう形でどんどんやられた場合は、これはやむを得ないということで、保障は全然ないのです。ですから一体追放令根本精神は何かということが明確になりませんので、この点ひとつ明確にしていただきたいと思います。  それからさいぜんお答えになりました審査委員会はやめて、総理大臣権限に属しているのだとおつしやいましたが、それでは総理大臣は何ら審査手続なしにやつていいのかどうか。何らの審査なしに、ただ好ましからざる者と認定しただけでやつていいのか。これには何らの基準もない、何らの審査手続もやらない、こういう建前になつておるのかどうか。ではなぜそういう建前にしたのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  17. 菅野義丸

    菅野政府委員 ただいま監査課長からお答えいたしましたのと、私のお答え申し上げたのと、決して矛盾しているわけではないのでございまして、私の申し上げましたのは、国内法的にどの政令でもつて、どういう根拠でもつてやつたか、こういう御質問に対しまして、国内法的には勅令第一号によつてつたのである、こういうふうに申し上げたのでございます。しからばそのもとになるものは何であるかというような御質問でありましたので、監査課長から先ほどのような御答弁を申し上げた次第であります。  それから総理大臣は、審査委員会廃止後は何らの審査を経ないでやれるということが、おかしいじやないかという御質問でございますが、現在でも勅令第一号によりますと、やはりそうなつておりまして、これにつきましては、特に総理大臣官房監査課という課を置きまして、いろいろ愼重審査をいたしまして、指定をすることになつております。どういうわけてもつて、この審査委員会廃止したかということにつきましては、これは現在におきましては、新しく追放するというようなことは非常に少い、まれな例でございますので、こういう大げさな会を常に置く必要も認められませんので、廃止して総理大臣権限に属せしめたのでございます。  最後精神でございまするが、これはもちろん根拠になつておりまするところの昭和二十一年一月四日付の連合国最高司令官覚書公務従事に適しない者の公職からの排除に関する件というのがございますが、この覚書精神でありまして、これによります。ると、反民主主義的な者を重要なる公職から公務に従事することを排除するということが一番の目的である、かように解釈しております。
  18. 立花敏男

    立花委員 最初の問題ですが、勅令第一号のもとになるものというようなお尋ねをしたのではありませんので、勅令第一号の根本的べ精神は何かということをお尋ねしたわけなんです。それからあなたの御答弁の中に、非常にまれな問題だから、まれにしか起らないので、審査委員会廃止して総理大臣に一任してあるから、だから総理大臣は何らの手続なしにやる建前にあるのだとおつしやられましたが、まれな場合ということは、どこにも保障されておりませんので、今後非常にこういう形がふえて来る場合も予想されると思うのですが、そういう意味で、非常にまれなんだ、ほとんどやらないのだというふうにお考えにならないで、もつと本質的な問題として、こういう形で総理大臣が何ら審査もなしに審査委員会廃止して、何ら審査規定もなしにやるというようなことがはたしていいかどうか、この問題をひとつお答え願いたい。  最後に御答弁になりました一月四日の覚書精神ですが、これは単に反民主主義的なものという規定ではありません。これはあくまでもはつきり覚書にうたつてありますように、歴史的な意義を持つておるわけなんで、ポツダム宣言従つて日本軍国主義を一掃する、反民主主義的と申しますのも、あの誤つた侵略主義戦争あるいは歴史的には、日本東條軍閥のあの侵略主義的な反民主主義的な行為、これに関連し、これに参加し、これに指導的立場を占めた者を追放するという意味なんで、単にあなたの言われるように、反民主主義的というのはどこでも普遍妥当的に反民主主義的でありさえすれば、歴史段階を問わずあらゆる何を超越して行われるものではありません。覚書はそういう根本的な意味を持つておると思うのですが、そういう点にお考えが及んでいないのじやないかと思うのですが、あなたの言われるような反民主主義的だというふうな考え方から行かれますと、今後もこの追放令がどんどん反民主主義的なことに適用されるということになると思うのです。それは少しおかしいと思うのですが、その点どうなんですか。
  19. 菅野義丸

    菅野政府委員 この公職適否審査委員会廃止は不適当である、そういうような重大なことを、委員会にもかけないで総理大臣が独断でやるのは非常に不適当である、こういうような御意見でございましたが、この点につきましては、この勅令一号は御承知通りポツダム政令でございまして、これは連合国最高司令官命令によつてつくられたものでございます。従いまして廃止の時期あるいは廃止適否等も、一切司令部の判断によつて行われたのでございます。そのときの情勢によりまして、もはや相当大量の指定というものがあり得ないということから、おそらく廃止にするのが適当であると考えられたのだろうと想像いたします。  それからこの覚書精神につきましては、仰せのように、單に反民主主義的なものの排除ということでなく、もちろん極端なる国家主義であるとか、あるいは軍国主義排除ということも目的になつておりまして、その精神に基いておるのでございますが、そういう点のはつきりしたものは団体等規正令のもとになつておりますところの覚書には、明らかにしるされておる通りであります。
  20. 立花敏男

    立花委員 団体等規正令覚書五百四十八号ですか、これをまたなくても追放令覚書——あなたのお触れになりました一月四日の覚書で非常に明確になつているわけなんです。あなたの言われましたように司令部がもう太した追放はないだろう、もはやそういうものはあり得ないだろうというふうに考えて、資格審査委員会をなくしたとおつしやられましたが、まさにその通りなんで、もう追放令役割は一応果した。だから追放令がねらつておりましたところの戦時中の東條時代戦犯関係追放は、一応終つたのだ、そういうことが私はこの追放令本旨じやないかと思うのです。だから戦後に新しく問題となつておりますところの六・六追放、あるいは九・六追放などをやりますのは、これは一つの異例的ないはわば違法的な扱いじやないかと思うのですが、その点どういうふうにお考えになつておられますか。
  21. 菅野義丸

    菅野政府委員 ポツダム政令につきましては、この改正廃止一切これは司令部命令がなければできないのでございまして、これが廃止されないということから見まして、私どもは今御質問のような、全然今後はやらないのだというような趣旨ではない、かように解釈いたしております。
  22. 立花敏男

    立花委員 私今後は決してやらないと言つたのではなしに、ポツダム政令あるいは今度問題になつております追放、このものの精神から申しまして、一応役割終つておる。新しい六・六追放、九・六追放といつたようなものが、こういう精神を持つた追放令で扱う問題とはおのずから別個であるということ、これをどうお考えになつておるかということを質問申し上げたわけなんです。追放令根本になつております覚書によりますと、こう書いてあります。「一ポツダム宣言は「われ等は、無責任な軍国主義世界から駆逐されるまでは、平和と安全と正義の新秩序は生じ得ないものであることを主張するものであつて日本国民を欺き世界征服の挙に出る過誤を犯させた者の権力勢力とを、永久に根絶させなければならない」と規定している。」これが追放令基礎になりましたいわゆる一月四日の覚書なのであります。だからこの精神から参りますと、日本国民を欺いて世界征服の挙に出る過誤を犯させたものの権力勢力を永久に根絶させなければならぬ。だからそういうものに関與したものを公職から追放させなければならない。そのために覚書に基いて追放令ができておると思うのであります。だからそれ以外の者を追放令でやる、今まで追放令が生きていたからそれを適用してやるということは追放令根本的な精神と違うのではないか、だから新しい六・六追放あるいは今回の九・六追放というものをこの追放令でやることは非常に間違つておるのではないか。だからこそ施行令規定しながら何らの該当する條項規定できないで、ただ漠然と一般的な追放令精神でやるのだということになつて来るだろうと思うのでありますが、この点を明確にしない限り国民は非常に疑惑を持つであろうと思うのであります。だから追放の問題で今国民が問題にしておりますのは、残されました一万八千ばかりのこの追放令適用を受けております者、この運命がどうなるのかということでは私はないと思うのであります。これからこの追放令が今言つたよう根本的な精神を乗り越えまして適用が始まつておる、この適用がどこまで拡大されるか、この追放令の拡張的な解釈によつて基本的な日本人民の自由、あるいは日本民主主義が侵されはしないか、ここに国民の疑問がかかつて来ておると私は思うのであります。今回出されておりますこの改正案は、残されております一万八千名の今後の扱いについての問題が主だと思いますが、これはいわばちやきちきの戦犯なのであります。こういう人たちがどういう扱いを受けるかということは国民は大した関心を持つていない。むしろ今国民が與えられておりますところの幾ばくかの自由あるいは日本国民が目ざしておりますところの民主主義の進展、こういうものが追放令の誤つた適用によつて阻害されはしないか、こうことに非常に疑問を持つておるだろうと思うのであります。だから政府追放令というものを根本的にどう理解しているか、はたして六・六追放あるいは九・六追放のような形で追放令適用することが追放令の正しい解釈であるかどうか、今後もこういう形で單に民主主義に違反するというような名目のもとに、総理大臣の何らの審査手続なしに追放令適用してやつていいのかどうか、いけないという保障がどこにあるのか、この点を明確にしていただかなければ、国民疑惑は解けないと思うのであります。その点で根本的な見解をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  23. 菅野義丸

    菅野政府委員 仰せのごとく、昭和二十一年の一月四日の覚書歴史的な軍国主義とか、そういうようなものを排除するというのが主なる目的であるということは、仰せ通りであります。しかしながら政府は、過去において、戦争中にそういうことを行つた者だけに限るということには、決して解釈しておりません。いわんや、このいわゆる六・六追放のときにおきましては、最高司令官から総理あて書簡が参りまして、この特定なる者の追放を命ぜられたのでありますが、これは新たな覚書と見ても、あるいは覚書の追加と見てもいいと考えられるのであります。九・六追放につきましても、これと同趣旨でございます。そういう意味合いにおきまして、決してこれは戰争中にやつた行為に対するばかりではない、かように解釈しておる次第であります。  それから今後こういうふうにしてやつたならば、どんどんできるのじやないかという御質問でございましたが、御承知のごとく、ポツダム政令につきましては、この効力がどういうふうになるかということについては、いろいろの議論がございますが、政府は一応平和條約が発効いたしました場合におきましては、それ以後はこれを法律にするか、あるいは法律上の根拠をそれに與えて行きたいと思います。いずれにいたしましても、ポツダム政令全体について国会の御審議を仰ぐ予定でございます。その場合において、いろいろ国会の方でおきめになることもあると思いますが、現在のところ、政府講和條約の発効後、新しく追放をするというような考えは全然持つておりません。
  24. 立花敏男

    立花委員 どうもお答えがおかしいと思うのでありますが、それでは政府はこの勅令というものを歴史的なものとは見ないで、新しい段階における場合の追放にも適用しよう、講和が終りました後もそういう意味追放の面までも企図しておるというふうにはつきり理解してよろしうございますか。
  25. 菅野義丸

    菅野政府委員 平和條発効勅令第一号なり、あるいは団体等規正令をどうするかということついては目下それぞれ担当の省で検討されておりますが、先ほどもお答え申しました通り戦争中の行為等につきまして新しい追放平和條発効後するというような考えは全然持つておりません。
  26. 立花敏男

    立花委員 しかしあなたは追放令戦争中だけの行為にとどまつておるものではないのだ、戰争が終つた後の段階における問題も追放ができる規定なのだ、だからこれを存続するのだと言われたわけなのでありまして、そうなりますと、戦争後の新しい追放令を法制化なされるというお考えがあると解やざるを得ないと思うのであります。これは大問題であると思うのであります。現在大橋法務総裁考えております団規法の中に規定されております就職禁止の問題についても大問題でありますのに、あなたのようなお考えでこの追放令戦争中だけの行為に限らないで、新しい追放令に該当するような者があるから追放令を新しく法制化して復活するのだということになつて参りますと、大問題だと思うのであります。私はそうではないと思うのであります。追放令はあくまでもポツダム宣言従つて戦争中に軍国主義を助け、軍国主義を指導し、それに関連した者を公職から追放するという規定なので、新しい問題ではないと思うのであります。そういう歴史的な性格追放令にお認めになりますかどうか、だからこそあなたが言われましたように、大体終つた、もはや大きな適用はないのだ、だから資格審査委員会もいらないのだという形で、資格審査委員会廃止されておるのであります。そうでないと資格審査委員会廃止された意義がわかりません。だからそういうふうに追放令そのもの歴史的性格、しかもそれは大体終つておるのだ、だからごそ今度の案でお出しになつておる改正案も出て来ておるのだと思います。大体追放令適用した者の処分も終つて、しかもそれは大体解決されておる。残りが一万八千ばかりある。これの訴願をどう受付けてやるかというところが問題になつて来ておるので、あなたの言われるように戦時中ばかりでなく、これからもどんどん追放令にひつかけるのだということになつて参りますと、資格審査委員会も存続しなければなりませんし、一訴願の対象も万八千ぽかりではありません。これかから幾らひつかけるかわかりません問題が、問題になつて参りますので、法案の扱い方も、あるいは内容も全部違つて来なければいかぬと思います。だから政府追放令というものは、大体ポツダム宣言で言つておる、あるいは私が今読み上げました覚書の、日本国民を欺き、世界征服の挙に出る過誤を犯さしめたものの権力勢力とを永久に根絶せしめるための法案であるというふうに考えるべきだと思うのですが、あなたはそうじやないとおつしやるのです。その点をひとつ明確にしていただきたい。
  27. 菅野義丸

    菅野政府委員 私のお答えが言葉が足りなくて誤解しておられるように思いますが、私はこの勅令第一号をこのままの形で法律化して、平和條発効後も存続するというようなことは一言も申し上げておりません。そうでなくて、ポツダム政令全体が法律上の根拠を與えるとか、あるいはこれを廃止して法律化するというようなことを行う予定でおりますので、この内容についてもいずれ国会で御審議願う、こういうふうに申し上げたのでございます。今のところ検討中でございますので、どういうふうな形でこの政令が残るかということははつきりは申し上げられませんが、ただこれだけははつきり申し上げておけると思いますことは、勅八三号によつて新しい追放平和條発効後にするというような考えは全然ございません、こういうことを申し上げた次第でございます。
  28. 立花敏男

    立花委員 新しい追放はやらないとおつしやるのですが、九・六追放は新しい追放じやないですか。だから九・大追放というようなものは今後やらないということが断言できるかどうか。またそういうことを法制化する意図はないかどうか。それからああいう新しい追放勅令第一号、この追放令で今後やらないかどうか。実際九月六日に新しい追放をやつたのだが、これを今後やらないと断言できるのかどうか。これをひとつ説明願いたい。
  29. 菅野義丸

    菅野政府委員 平和條発効後は新しい追放はやりませんということを先ほどから申し上げているわけでございます。それで平和條約が効力を発生するまでは、このポツダム政令司令部の特別なディレクティヴがない限りは廃止されないでおるものでございますから、この聞のような追放をしないということは断言できません。
  30. 立花敏男

    立花委員 では講和條約が発効するまでは断言できないからやるというふうに理解していいと思うのですが、講和條約の発効後はやらないで、講和條約が発効するまではやるという根拠が私わからないのです。と申しますのは、りくつの上からはそういうことは一応成り立つでしよう。しかしこの間の追放は決して新しい覚書が出たわけでもありませんし、新しい指令が出たわけでもありません。政府の責任においてやつたということは岡崎官房長官が言われたわけなんで、なぜ政府が自発的に、政府の責任においてやれることが、講和條発効を境としてやれたりやれなくなつたりするのか、私どもにはわからないわけなんです。この間のような形で政府は自発的にやれますことをやめようと思えば発効前でもやめられますので、なぜ発効後と発効前とそういうふうな違いがあるのかこれをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  31. 菅野義丸

    菅野政府委員 このポツダム政令、いわゆる勅令第一号でございますが、これがこのままの形でかりに国会を通過して法律化したということを考えてみますと、それは新しい追放ができると思います。しかしポツダム政令は占領軍の命令に基いてつくつておるものでございまして、占領軍というものがなくなれば一応その使命を果しまして、これを存続するにいたしましても、法律上の根拠を與えることが妥当であろうと考えております。もちろんこれほいろいろの意景ござい事が、やはり国会によつて法律上の根拠を與えることが妥当であろうと考えまして、政府はそういう手続を考究中であります。それで先ほど申しました通り、このままの形でこれが法律上の根拠を受けて、平和條発効後も存続するとしたならば新しい追放ができるでありましようが、この内容をどうかえるかということについては政府は目下検討中であつてはつきりここで申し上げる段階にはないのであります。しかしながらこのことだけははつきり申し上げたいと思いますことは、新しく平和條発効後も追放ができるような内容のものに法律上の根拠を與えるとか、あるいは法律化して平和條発効後も存続しようという気持は全然ない。かように申し上げている次第でございます。
  32. 立花敏男

    立花委員 私の尋ねておりますのは、具体的に九月六日には新しい追放をおやりになつておられますので、こういうものを今後もおやりになるのかどうか。それからそういうことは條約発効後はおやりにならないと言われますが、この間のやり方を見ますと、政府が自発的に責任を持つておやりになつたのだから、政府がやるまいと思えば発効前にもやらない措置はとれるのだが、なぜ発効前にもやらないということが言えないのかどうか。さつきから申しますように、追放令を新しい追放適用するということは、根本精神で非常に疑義がある。そういうことをなぜ政府はおやりになつておるか。政府が自発的に、政府の責任においてなぜそういう誤つた追放令適用をなやりになつたのか。
  33. 菅野義丸

    菅野政府委員 このポツダム政令は、先ほどから申し上げておりまするように、これを廃止するにしても、敢正するにしても、これは政府の独断ではできないのでありまして、占領下におきましては最高司令官の何らかの命令がなければできないのであります。それが存続する限りにおきましては、最高司令官がこれを適用する事件が全然ないというふうには考えていない、かように私たちは想像しておるのでございます。従いましてこれが存続する聞、すなわち最長限、平和條約の発効までは、これを適用することが全然ないということを断言することはできない、かようにお答えしておる次第であります。
  34. 立花敏男

    立花委員 答弁がちよつと違いますので……。私はポツダム政令廃止するとか存続するとかの問題を聞いておるのではありません。このポツダム政令追放令が存続する間、新しい追放政府の自発的な名に基いておやりになるのかどうか。しかもそれが先ほどから申しておりますように、ポツダム政令追放令根本的な精神を離れまして、新しい形の追放を、しかも追放令でおやりになる意思があるのかどうか。もちろん私は新しい戦犯が発見されまして、そういう新しいケースが出まして、そうしてそれに対して司令部から命令が出まして追放令適用することには、淡して異議はありませんので、そういう問題を尋ねておるのではございません。新しい追放——九月六日におやりになつたような新しい追放を、しかもなお政府の責任において、追放令適用してやるというふうなことをやるのかどうか。この問題を聞いておるわけなんです。
  35. 菅野義丸

    菅野政府委員 私がこの勅令第一号の廃止とか存続とかいうことを申し上げるのは、それがある間はこれを適用する新しい追放が全然ないということは断言できない、こういうふうに申し上げておる次第であります。
  36. 立花敏男

    立花委員 そのことはわかつておる。そのことはさつきからわかつておりますように、そういう追放令の該当が明らかになり、追放令精神に従つて追放されるものが出て来れば私はこれはおやりになつてよいと思います。そうではなくして、そういうものから全然別に追放令歴史的な精神を離れて、反民主主義的とか、あるいは進駐軍の目的を阻害するとか、そういう名目のもとに全然新しい追放を、追放令根本的の精神を離れておやりになる意思があるのかどうかということをお尋ねするわけであります。
  37. 菅野義丸

    菅野政府委員 先ほどもお答えいたしました通り、その点については立花さんと見解が違うようでございますが、政府は決して戰争中においてある特定の行為を行りた者を公職かち排除するというだけに局限しておらないのであります。先ほども申し上げた通り六・六追放のときには新しい覚書がそれに追加されたというようにもとれまするし、決してこの勅令第一号によつて適用するものは戦争中の行為そのもののみに限らない、かように信じておる次第であります。
  38. 青木正

    青木(正)委員長代理 立花君、発言をどうというわけではありませんが、大体問題の本質はわかつて来まして、結局その点につきまして見解の相違じやないかと思いますので、他の問題の方に……。
  39. 立花敏男

    立花委員 問題をそらしまするが、今お答えになりました六・六覚書の問題です。六・六覚書の問題、この適否は別問題といたしまして私ども大いに不満がありますが、とにかく占領下において覚書が出ておやりになつた、これは私は事実だろうと思う。しかし六・六の覚書が去年の六月六日に出たから、ことしの九月六日にもその覚書適用してやつていいんだということには私はどこからも根拠が出て来ないと思う。六月六日の新しい覚書による追放は、あくまでも二十四名の名前を列記いたしまして中央委員会のメンバーとして追放するという覚書でございまして、これがなぜ今度の九月の六日の追放適用されたのか、この根拠がちつともわからないわけです。
  40. 菅野義丸

    菅野政府委員 九月六日も六月六日のものと同趣旨であるというふうに解釈しております。
  41. 立花敏男

    立花委員 どういう根拠に基いて同趣旨だとお考えになつておられるか。九月六日には新しい覚書が出たと私ども聞いていないのですが、同趣旨だとは一体どういうことなのか。
  42. 菅野義丸

    菅野政府委員 六・六追放のときの覚書趣旨考えてみまして、これは新しい覚書の追加であるというふうに解釈いたしますので、その適用として九月六日の指定もこの勅令第一号によつて行つた次第であります。
  43. 立花敏男

    立花委員 覚書の追加と言われますが、どういう意味の追加におとりになつておるのか。
  44. 菅野義丸

    菅野政府委員 特定の者を列挙してありまするが、今後もそういうような種類のものがあつた場合には公職から追放するというふうに解釈しております。
  45. 立花敏男

    立花委員 そういう種類とはどういう種類。
  46. 菅野義丸

    菅野政府委員 反民主的であります。
  47. 立花敏男

    立花委員 それはたいへんなことで、反民主的なものをそういうふうに全部追放するという覚書ですか。六・六追放覚書共産党の中央委員二十四名の名前を列挙してとれを追放せよという覚書で、反民主的なものを全部追放せよというふうに理解していいのですか。
  48. 菅野義丸

    菅野政府委員 何がゆえに二十何名のものを追放しろという覚書を出したかというその根本をつきまして、その精神によつてつておる次第であります。
  49. 立花敏男

    立花委員 それなら大問題なんで、そういう覚書精神追放令には追加されておる、そういう追加された追放令を今度ポツダム政令の改廃の場合に存続するかどうかを今検討されているのだと言われますと、これは大問題だ。そういう重大な問題が追加されておる追放令の施行に際してもう資格審査委員会もなくなつており、総理の独断にまかされておるというのでは、反民主主義的だと総理が独断しただけでだれでも追放できるわけである。これは大問題じやないか。これこそ反民主的じないか。そういうことをやること自体が反民主的じやないか一そういう形になつて来ると、一体どこに民主主義のにおいがあるんですか。だから六・六追放覚書はあくまでも共産党の中央委員二十四名と限定されておるはずなんだ。それを反民主主義的なものはごの覚書によつて追加されたんだ、というふうに解釈してどんどん追放をやつたら、国民は一体おれはいつ反民主主義的なことで追放されるかわからぬという重大な疑問がわいて来るわけである。しかもそれに対しては訴願の道も開かれていない。資格審査もやらない。こうなつて参りますと、まつたく反民主主義的な立法といわざるを得ない。あなたの今の御答弁は重大な問題だと思いますが、正気でそういうことをお考えになつているのかどうか。こうなつて参りますと、ます。れごの問題を問題にしなければならない。反民主主義的だという條項が追加されている。しかもその資格審査も何もやらず総理が一方的に追放できるのだ、検察当局さえ、逮捕して調査した後に事実無根として釈放したものを、なお追放できるような強力な反民主主義的な法律を存続することは私ども了解できないのであります。この点どういうふうにお考えになりますか。
  50. 菅野義丸

    菅野政府委員 私は先ほどからお答え申し上げております通り、この政令平和條約の発効後残すということは一言も申し上げておらないのであります。むしろ平和條発効後新しく追放するというようなことは考えておらない。こういうふうにお答え申し上げておる次第であります。
  51. 立花敏男

    立花委員 しかしあなたはさいぜんからポツダム政令全体について改廃するかどうかは今考究中であると申されましたから、そういう新しい要素の加わつている追放令の存廃もお考えになつていると思う。だから私どもはこういう問題は終つてしまつているので、撤廃すべきは当然だと考えておりますのに、政府の方ではそうでない、追放令は六・六追放で反民主主義的なものを追放するという要素が加わつて、しかもそれは戦争中だけでなく、戦後の問題も含んでおるから、これは講和條約の成立後も存続さすべきだというようなお考えも私起つて来ないとはいえないと思う。そういう意味で検討中であると言つておられるでしようが、そういうことならば私どもは断然賛成できない。ただ去年の六・六追放覚書意味をそういうふうに拡張解釈してもいいのかどうか。これはあくまでもメモランダムケースでありまして、個人の名をあげてこれを追放せよといつておられますので、あなたの言われるように反民主主義的なものを追放せよというような條項が附加されておるとは私ども断然考えることはできない。何ゆえに政府はそういうことをお考えになつているか。そういう意味で今回の九・六追放をおやりになつたとすれば、これは政府は明らかに違法的行為をおやりになつている。そういうことになりますと、去年の六・六追放覚書の拡張解釈で幾らでもこれから追放できます。共産党だけでなく、社会党、国民民主党、あるいは政府講和條約に反対するものは、これを何らの資格審査もなく、反民主主義的だというこの一言で幾らでも追放できるじやないか。追放できないという根拠はどこにあるか。しかも現在においては訴願の道すら開かれていない。これは切捨てごめんである。現に共産党国会議員の数名は、あなたの言われる六・六追放の拡張解釈によつて民主主義的だというただ一言の総理の独断のもとに、国会議員が職を追われているわけである。これに対して何らの救済の方法も訴願の道もないことなのである。こういうこと自体がフアツショ的である。反民主主義的じやないか。そういうものを存続するかどうかを審議すること自体が間違つておるじやないか。
  52. 菅野義丸

    菅野政府委員 御意見をよく承つておきます。  なお覚書命令その他の解釈の点につきましては、これを発したものの意思こよるのでございまして、政府はこの点について自信をもつて、これは適法であるというように考えております。それから訴願の道が開かれていないというお話でありましたが、今回提案いたしました法律によりまして解除申請ができますことは、先ほどお答え申し上げた通りでございます。
  53. 立花敏男

    立花委員 今後できることは問題じやありません。私は現在のことを申しておりますので、現在は何ら訴願の道は開かれていない、これは事実だと思う。それから発した覚書を、発したものの意思によると言われますが、その覚書解釈いかんによつて日本国民が被害を受ける、国会議員が何らの保障なしに追放されるということになつて参りますと、被害を受けますのは日本国民自体なんで、これは私大問題だと思いますので、そういう考え方は改めてもらいたい。あなたの言われます六・六追放趣旨、個人のメモランダム・ケースに対する追放ではなしに、反民主主義者一般を追放しろというようなあなたのお言葉が、はたして覚書を発した者の意思かどうか、これをお確めになつたことがありますか。またあなたのお言葉通り、私ども日本国民が、去年の六・六追放は進駐軍の命令によりて、反民主主義的なものを全部追放しろという覚書だというように理解していいのかどうか。これは重大な問題だと思いますので、御発言を題いたい。
  54. 菅野義丸

    菅野政府委員 いわゆる九・六追放と言われてまりますものについて私は申し上げたのでありまして、その他一般的に、先ほどからお話のように、社会党でも民主党でもというようなことは考えておりません。九・六追放の対象になつたものについて、六・六追放のときの総理あて書簡が、その趣旨にのつとつておるというふうにお答え申し上げたのでございます。
  55. 青木正

    青木(正)委員長代理 いかがですか。見解の相違に基いて堂々めぐりをしておるので、いつまでやつてつても際限がありませんから……。
  56. 立花敏男

    立花委員 見解の相違ではありません。向うの六・六追放覚書解釈を、単に共産党の中央委員二十四名に対する追放解釈せずに、反民主主義的な者を追放しろ、しかもこれは追放令に対する新しい追加の覚書である。だから言葉をかえて言いますと、戦時中の日本軍国主義を一掃するというそういう追放令の中に、反民主主義的な者を追放しろという條項が新しく加わつたのです。しかも戦争中だけの問題じやなしに、戦争後の現在も、今後も反民主主義的な者を追放しろという新しい意味追放令に加わつたのだというふうに政府解釈しておる。だからそれに基いて九・六追放もやつたのだと言われるわけなんだが、これは重大な問題だと思いますし、追放令自体の根本的な性格をかえるものではないか。そうなつて参りますと、やはり団規法の中に追放令精神が生かされて来る心配がありますし、あるいは追放令自体が存続する心配も懸念もあるわけですから、その点を明確にしていただきたいということを言つておるわけなんです。しかも副長官の言葉では、覚書を発した者の意見だと言われますので、これは単なる政府の意見じやなしに、GHQの方で、終戦後の現段階でも、今後も反民主主義的な者を追放しろという追放令を認めたということになると思いますので、これは日本民主主義にとりましては重大問題であるので、お尋ねしているわけです。しかもそれに対して、資格審査委員会もなくなつており、政府の独断で追放できるということになるとまことに大問題なんです。それこそ講和條約の発効後、独立した日本の民主化にとりまして根本的な問題ですからこの点を明らかにしてもらいたいと思つてお尋ねしているわけです。  ちようど岡崎さんがいらつしやいましたのでお尋ねいたしますが、岡崎さんは、あのお尋ねをいたしましたときに、これはあくまでも日本政府の責任において新しい共産党の臨時中央指導部のメンバーであるから追放したのだということを言われたのです。それに対しまして、じやその根拠を明らかにしろと言いましたところ、追つて発表すると言われましたが、いまだに発表がないわけで、当人にいたしましても、あるいは国民にいたしましても、なぜあの追放が行われたのか非常に不明確でありますので、もう日がたつてお調べも済んでいると思いますから、根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 そのときの説明は、いろいろ捜査上の関係もあつて、全部申し上げるわけにはいかぬということであつたのであります。これは検察もしくは警察当局の捜査上の関係でありまして、法務総裁の方がもうさしつかえないということになれば申し上げましようけれども、しかし今までも法務総裁から言える範囲においてはいろいろ御説明があつたと思います。それで御承知願いたいと思います。
  58. 立花敏男

    立花委員 法務総裁から私ども何も聞いていないのです。検察当局の調べはもう済んでおりますし、御承知のように、逮捕されました八名が全部釈放されているわけなんで、問題は何も残つていないわけなんです。しかもなお根拠の発表がないということでは、私ども非常に不安に感ぜざるを得ないわけです。しかもさいぜんから副長官より御答弁がありましたように、資格審査もなくなりまして、政府の独断で追放ができる。單に反民主主義ということだけで追放ができる。しかもこれに対して現在は訴願の道も開かれていない。根拠も明かにされないで、そういうふうなまつたく手足を縛られた形で国会議員追放されるということは、国憲の上でも、日本の民主化の上でも大問題だと思いますので、その点をひとつできるだけ明確にしていただきたい。大橋法務総裁から何も聞いておりませんので、あのときのお約束に従いまして、今後発表すると言われましたので、官房長官より根拠をただいま明かにしていただきたい刀
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 もう問題は済んだとおつしやいますが、そうでなくして、あのときに逮捕すべきであつた人でまだつかまらない人があるのであります。そういう関係で、捜査当局でまだ全部言うことをはばかつているではないかと思います。今まで申し上げた以上のことはきようは申し上げらません。さよう御承知を願います。
  60. 立花敏男

    立花委員 全部逮捕されておりませんが、全部済んだかどうか私はわかりませんが、少くとも逮捕されました八名の者につきましては、調べも一応済んでおりますし、逮捕理由でありました臨時中央指導部のメンバーということの事実無根ということも明かになつておるわけなんで、逮捕された者につきましての理由はともかくといたしまして、逮捕されて取調べがつきました者につきましての御見解はあるわけなんで、これは発表できないはずはない。少くとも官房長官が私どもに約束されました根拠を明かにするということは、ひとつ責任を持つてつていただきたい。しかもこれは、私どもだけの問題ではなしに、国民全般が非常に大きな疑惑を持つているわけで、今後ああいう形で幾ら追放されるかわからない、うつかりしたことはできな小、日本の政治はこういう形で明かにフアツショ化しつつあるという危惧を抱かざるを得ませんので、あなたの政治的な責任からしてもあの根拠は明確にすべきだと思う。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 いつまで行つても同じことでありますが、これは法務総裁もさんざ予算委員会、その他條約委員会等で申した通り、刑事訴訟の問題と行政処分の追放とは違うということでありまして、告訴されなかつたから追放はされないということにはならない。というのは、今まで追放された人で告訴された人はごくまれであります。それから私は、はつきりすれば申し上げると言いましたけれども、きよう申し上げると別に約束したわけでもなんでもないのですから、きようはまだ申し上げる段階に至つていない、さよう御承知を願います。
  62. 立花敏男

    立花委員 刑事事件と追放の行政処分とは別だとおつしやられますが、これは形の上では一応別だということはわかります。しかし追放されました根拠も、あなたは新聞にも発表なさつたのですが、言われましたのは、あの十八名は共産党の臨時中央指導部のメンバーである。だから追放したということを公然と発表されたわけです。しかも逮捕の刑事上の処分の理由もあの人たちは臨時中央指導部のメンバーとして文書の発行に協力した、こういうことが根拠になつておりますので、まつたく同一根拠なんです。同一事実に立脚して、片方は行政処分となり、片方は司法処分となつているのですが、源は一つなんです。臨時中央指導部のメンバーであるということです。そういたしますと、形の上では別であるが、根拠は同じなんで、片つ方の司法処分の方の調べは終つて、臨時中央指導部のメンバーではないということで釈放されておりますのに、追放の方は臨時中央指導部のメンバーであるから、追放するという根拠はなお残つておるというわけですが、これはどうも私どもとは不可解であり、国民一般も不可解である。この点をどうお考えになつて  おるかお教えいただきたい。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これはたびたび申した通りでありまして、つまり司法処分の方は訴訟の手続がありまして、訴訟法に基いた規定の証拠を出さなければならぬ。臨時中央指導部の一員であるという証拠は十分に持つておるけれども刑事訴訟法に塞ぐ証拠がないから告訴の方はやらない。しかし実際上証拠は十分あるのであるから、追放の処分にはした。そこでその証拠を全部出せと言われることについては、その証拠は、ただいままだ捜査中の人があるので、その証拠を出すのは捜査に妨げがあるから、まだ今は出せない、こういうわけであります。
  64. 青木正

    青木(正)委員長代理 立花君に申し上げますが、同じ問題をぐるぐるやつておられても……。
  65. 立花敏男

    立花委員 それでは新しい問題に移りましよう。今の問題で、証拠はあるんだ、これは刑事上の証拠と追放上の証拠は別なんで、刑事上では役に立たないが、追放上は役に立つ証拠があるのだということになるんですが、これはまつたく詭弁もはなはだしいので、臨時中央指導部であるからという同じ根拠で、司法処分にする、追放にすると言つておきながら、証拠はおのずから別なんだというようなことは、だれが聞いても納得できませんが、今その根拠を具体的にあげてみてくれと言つても、しないと言われる以上はやむを得ませんけれども、とにかくこういう問題が残つております以上、私は現在の政治の行き方に対しまして大きなフアツシヨ化の危惧を感ぜざるを得ない。さいぜん申されましたように、反民主主義的な岩は一切総理独断でどんどん追放するのだということになるとたいへんだと思いますので、これは国民のために、日本の民主化のために、ひとつ明確にしていただきたいと思う。それから当時岡崎官房長官は、団規令に基いてやつたのだということをおつしやられましたが、今まで政府委員の説明によりますと、団規令という言葉はどこにも出て来ないわけです。ただ六・六覚書追放令に基いてやつたのだと言つておるのですが、岡崎官房長官団規令に基いてやつたという根拠は、団規令の何に基いたのか御説明願いたい。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これはマツカーサー元帥の手紙の中にもリフアーしてありまして、はつきり覚えておりませんが、追放令根拠になるスキャップイン、それから団体等規正令のもとになるスキャップイン等をあげております。それでその手紙の趣旨がそうなつておりますから、そう申したのであります。
  67. 立花敏男

    立花委員 団体等規正令によりますと、あくまでも主体は団体でありまして、団体等規正令第二條に規定してありますところの、占領軍に対して反抗し、あるいは反対し、あるいは日本政府連合国最高司令官の要求に基いて発した命令に反抗しもしくは反対する、こういうような団体あるいはその他七号にわけて違法な団体の分類がしてありますが、これらの団体に関係し、これらの団体を指導し、そういう者に対する公職からの追放あるいはそういう者に対する罰則、こういうものはもちろんあるわけですが、団体が問題にならないで、個人だけが問題になるという場合は、団体等規正令では何ら規定していないわけです。だから六・六追放は特別のメモランダムケースだつたので、これは別問題といたしまして、九・六追放の場合に、臨時中央指導部というもの自体が問題にならないで、ただ構成メンバーだけが追放になる、こういうことは団体等規正令から私は出て来ないと思うのですが、岡崎官房長官団体等規正令適用したのだと言つておられるわけですが、その点非常に不明確であります。だから団体等規正令が今度団規法改正されようと二しおりますが、そういう意味で、今度は団体と関係を離れて、個人もそういう公職よりの追放あるいは禁止ということをお考えになつているのかどうか、この点を明確にしていただきたい。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 団体等規正令をいかに取扱うかということは、ただいま研究中でありまして、まだ内容を申し上げる時期に達しておりません。今研究中であります。
  69. 立花敏男

    立花委員 九・六追放団体等規正令関係をひとつ。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 そのお話を推し進めて行きますと、初めの中央委員でしたかのときに、マッカーサー元帥の手紙によつて追放されたわけであります。その手紙の中にもそういうことが書いてある。団体等規正令のもとになるスキャップィンをリフアーしてあります。私はそれをただ、こういうものもリフアーしてあつて、こういう手紙によつてなされておるのだ、こういう説明をいたしたのであります。
  71. 立花敏男

    立花委員 だから、あくまでも・六六追放の場合の覚書の問題になつて来るわけですが、六・六追放はあくまでも二十四名の個人的な名前をあげましての追放でございまして、それが一年三箇月たちました後で、それと全然別個の個人に適用される、しかもその場合臨時中央指導部というようなものを、何か団体自体は問題にならないで、個人に適用されるということは、どうも私ども納得できだいわけです。だからごそさいぜん御答弁になりましたように、あの六・六追放覚書は、反民主主義的な者を一切追放するんだというふうに官房長官も理解されておるのかどうか、そう理解されておると考えざるを得ないわけです。何ら具体的な根拠はないわけです。だから六六追放覚書団体等規正令とどういう関係があるか、また団体等規正令と九六追放とはどういうふうにつながつておるのか、この法的な関係覚書との関係を明確にしていただきたい。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 覚書趣旨は、あの覚書自体が明らかにしておりますように、メモランダム・ケースに対する追放覚書でありまして、二十四名の名前を列記いたしまして追放いたしております。九六追放であなた方が追放されました細川嘉六参議院議員とか、あるいは衆議院におきますところの砂聞一良代議士とか、こういう者の名前は覚書にちつとも出ていないわけです。なぜそういう名前の出ていない者を追放なさつたのか。これは覚書趣旨を尊重しておるとは決して言えません。そういうふうな覚書に全然名前の出ていない者を追放し得るというような覚書であればたいへんで、あの覚書一枚によりまして全国民追放されましても文句が言えませんが、どういう根拠で、メモランダム・ケースの覚書の中に名前の出ております以外の個人を追放なさつたのか、どうしてそれが覚書趣旨に沿つておると言うことができるのか、この点を明確にしていただきたい。
  73. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 あの覚書は名前だけ載つておるのじやありませんで、その前に長く追放すべき理由が書いてあります。そうしてたまたまその覚書を発せられたときには、その名前の上つておる人が、その趣旨に該当しておつたから追放されたのであります。趣旨は決してただ名前だけ出してこれを追放せよ、こういう覚書でないことは御承知通りでありますから、その覚書をよくごらんくだされば趣旨はよくわかると思います。
  74. 立花敏男

    立花委員 あの覚書の具体性というものを岡崎官房長官ごまかしておられるのではないか、なるほど覚書に名前が出ますまでに、前文的なものはありますが、前文はあくまでも個人の追放、二十四名の追放に対する線なんで、今後もこういう場合は追放しろということはどこにも出てないわけなんです。しかもあれは共産党の中央委員に対する二十四名の追放なんで、臨時中央指導部員を追放しろというようなことはもちろんどこにも出てないわけなんです。そういうふうにやられますと、あの覚書解釈いかんによりまして、あらゆるものが追放されるということになりますので、そういう無原則的な一般拡張の覚書解釈はひとつやめていただきたい。こういうことをお願いしておきます。  それから最後に問題になりますのは原案ですが、今度の改正では今まで政府追放なさつた六・六追放該当者、九・六追放該当者、こういう人たちに対する訴願の道をお開きになつているのかどうか、この点が提案趣旨の説明によりますと明確ではありませんので、この点はひとつ明確にしていただきたい。
  75. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ここには何も制限がありませんから、何人によらず追放なつた人は訴願ができる、こういう建前になつております。
  76. 立花敏男

    立花委員 それではもつと具体的に伺いますが、たとえば九・六追放該当者、あるいは六・六追放該当者もこの改正案によりまして正式に訴願手続はできる、たとえば細川君あるいは徳田書記長、こういう連中の訴願手続もできるというふうに理解してよろしゆうございますか。
  77. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 繰返して申すように、追放されている人はだれでも訴願はできる、こういうことであります。
  78. 青木正

    青木(正)委員長代理 他に御質疑はありませんか。
  79. 岡良一

    ○岡(良)委員 先ほど菅野長官のお話では、平和條約が効力を発生していよいよ独立ということになれば、公職追放等のことは政府としてはする意図がないということを繰返しおつしやいましたが、岡崎官房長官もそういう御意思でございますか。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 政府としてこれはまだ決定しておりません。しかしながら一般の考えからいいまして、われわれお亙いに日本人同士で追放をするとかしないとかいうことは、あまり好ましい制度ではありませんので、そういうことはしない方がよいであろうという、今後追放というようなことをすることは、ない方がよいであろうという気持を持つておりますけれども、これは政府として決定したわけでもありませんから、正式にはお答えする立場にはないのであります。
  81. 岡良一

    ○岡(良)委員 九月六日の毎日新聞——非常にわれわれも大きな衝動を與えられましたが、あれでは団規法公職追放令を一本にして、ゼネストの禁止とか、各府県に行われている公安條例、またプレスコードも強化した国家安全保障法というようなものが大橋法務総裁の構想として伝えられております。十一月一日の朝日新聞では多少緩和され、公職追放という文字が消えて就職制限という文字となつてやはり新聞に大きく取扱われておりますが、そうしますとあれは四百條にわたる厖大な構想であるなどと伝えられておりますが、あれは朝日新聞や毎日新聞の單に無責任なスクープであると承知してよろしゆうございますか。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 私も詳細の事情は知りませんけれども、たとえば閣議にかかつたとか、あるいは閣僚が報告を受けたとか、そういうものではないのでありまして、いずれ関係の当局ではいろいろ研究もしておりましようから、その研究の途中で、何かそんなものが漏れたということはあるかもしれませんが、それは私ども知らないのであります、ただいまいろいろの点を研究中であります。     —————————————
  83. 青木正

    青木(正)委員長代理 次に恩給法の一部を改正する法律案について質疑を行います。——御質疑がなければ恩給法の一部を改正する法律案についての討論を省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 青木正

    青木(正)委員長代理 御異議がなければさよう決します。  採決に入ります。本案に対して御賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  85. 青木正

    青木(正)委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。     —————————————
  86. 青木正

    青木(正)委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。規定による覚書該当者指定解除に関する法律案について討論採決に入ります。立花君。
  87. 立花敏男

    立花委員 現在追放の問題が問題になつておりまして、国民は非常に関心を持つているわけなんですが、国民追放の問題に関心を持つておりますのは、ただいまお出しになつております改正案によつて、現在残つております一万八千名、すでに追放令適用されております者、この大部分の者は、数回の追放解除にも漏れましたところの重要なる戰争犯罪人を多分に含んでいると思うのですが、追放解除されていない残りのこの一万八千名が、国民の関心の的ではなくて、実は国民追放令の問題がどうなるかというところに関心を集めております。焦点は最近政府追放に関する覚書精神をかつてに拡張解釈いたしまして、国民の基本的人権あるいは日本の民主化を阻害しようとするところの誤つた追放に関する関心だと思うので、その誤つた追放が今後どれだけ拡大されて行くか、日本の民主団体にどれだけ誤つた追放令適用が行われるか、あるいは卑近に申しますと、いつ自分の頭の上に誤つた追放令適用が行われて来るか、あるいは国会の問題にいたしますと、いつわれわれ国会議員の上にもこの誤つた追放が加えられるか、九月六日の共産党三名の国会議員を含みますところのむちやくちやな追放、こういう形がいつわれわれ国会議員の上にふりかかつて来るかわからない。そういう危惧こそが、今追放に関する国民の関心だと思うのです。そういう意味におきまして、私ども追放の問題を国会で問題にする場合は、どういたしましても政府追放に対する態度、これをまず第一に問題にしなければいけないと思う。しかも政府は今まで追放解除によりまして、たくさんの者を解除いたしました中から、警察予備隊に編入し、あるいは警察に採用いたしまして、最近の弾圧機構を強化いたすことに努めておるのは周知の通りです。すでに解除されました者のうち、元の陸軍あるいは海軍の佐官級四百名を神奈川県で再訓練いたしまして、予備隊あるいは海上保安庁に吸収する、あるいはさらに尉官級四百名ばかりを再訓練して、同じく予備隊あるいは海上保安庁に採用する。そういうようなことを行つておりまして、むしろ国民追放解除ということに対しましては、喜びの念よりも恐怖の念を抱いておる。日本政府の最近のフアッシヨ化の方向あるいは再軍備の方向に、この追放解除が非常に悪用されておるということに疑惑を持つておるわけです。また一面先ほど申しましたように、新しい追放令解釈によりまして、全国民が新しいこのフアツシヨ化の機運に脅え、またそれがいつ自分の身に振りかかつて来るかわからないということで、危惧を持つているわけです。だから私どもといたしましては、政府の方で考えております追放令のこの問題も、そういう観点から検討しなくてはならないと思いますし、ただ單に今度の改正案に盛られておりますような訴願委員会をつくるというような形では、決して追放の問題は解決されないのではないか、そういうふうに考えます。特にこの質疑の中で明らかになりましたように、政府は明らかに、この歴史的な法律でありますところの追放令を非常に拡張解釈いたしまして、戦時中の軍国主義的な要素、あるいは日本国民を欺いて侵略戦争にかり立てたような勢力、そういうものに対する追放の処分であるという精神を逸脱いたしまして、戰後におきましても、現在におきましても、あるいは将来におきましても、單に反民主主義的という名目のもとに、あらゆる者が追放できるというような拡張解釈をやつているわけなので、これはわれわれとしては断じて許すことはできないと思います。しかもすでに追放令の施行に伴いまして規定されておりました資格審査委員会というものも、大体これはもう新しい追放該当者はないだろう、新しい追放令適用の場合はもうないだろうという建前から廃止されまして、現在では総理大臣に一任されておりまして、総理大臣は何らこの審査の特別な手続もやらないで、追放を行つているわけなのでありますが、そういう場合に政府がこの新しい追放令の拡張解釈をやりまして、現に九月六日には共産党幹部と称しまして、多数の国会議員を含む者を追放しておるのであります。こういう形でやられて参りますと、私ども追放令そのものに重大なる疑惑を持たざるを得ませんので、單に訴願委員会ができたからといつて、こういうふうな政府の弾圧の機関になり、反民主主義的な、人民を抑圧するところの機関にされようとしております追放令そのものに、私どもは重大なる疑惑を持たざるを得ませんので、この法案には賛成できないわけであります。  しかも政府は、今度の改正案によりまして、六・六追放あるいは九・六追放該当者訴願の道が開かれておると言われますが、私ども訴願の道自体が問題ではございませんので、こういう六・六の場合あるいは九・六の場合のような問題に追放令適用すること自体が問題ではないかと思う。しかも岡崎官房長官はそこにいらつしやいますが、どういう理由で追放令をこれらの共産党幹部適用したか、その具体的な根拠は何らお示しになつていない。当時私どもに約束されました追つて発表するということも、今に至つてなおこれが発表されてない。そういう不明瞭な形のままで、この追放令による具体的な行政が行われますことは、私どもはどうしても納得できません。しかもだんだん追究いたしますと、いや追放令でやつたのではないのだ、六・六追放の場合の覚書の拡張解釈によつてつたのだ、あるいはいやそうではないのだ、団規令の場合の覚書精神に基いてやつたと言う。一体何が根拠で、何に基いて追放が行われておるのか。国民はもう五里霧中だといわざるを得ないと思うのです。そういう形で国民に不明朗なもの残しながら、しかも国民に恐怖の念を與えて、五里霧中のうちに、人心を不安動揺にからしめているようなこの追放令根本的な処理なしには、私どもは単なる追放令の部分的な修正に対しましては、どうしても賛成することができないわけです。  この際政府はよろしくこの追放令に対する根本的な考え方を明確にし、そうして最近行われました六・六追放あるいは九・六追放に対する具体的な根拠と、具体的な、法的な根拠を明確にいたしまして、民主化を要望します国民の期待にこたえるところがなければならないと存じます。しかし最近の傾向といたしまして、政府団規法を準備いたしまして、ただいま私が指摘いたしました、新しい拡張解釈をされました追放令を、団規法の中に盛り込もうとしておられます。公職追放という言葉では出ておりませんが、就職禁止あるいはその他の名前で、政府が今まで拡張解釈を専断的にやつて参りました追放令精神を、今後の新しい事態における団規法に織り込もうとしておるわけなので、これに対しましては、全国民が治安維持法の復活といたしまして、重大なる関心を持つております。またこれに対しましては、今や全国のあらゆる労働組合あるいは民主団体がこぞつて反対をいたしておりまして、悪法反対の運動がほんとんどすべての日本の労働組合の、最近の主たる闘争の目標になつております。国鉄労働組合におきましても、悪法反対の闘争を宣言いたしておりますし、あるいは日本で今一番大きな組合であります総評におきましても、非常事態宣言を発しまして、政府が企てておりますところの労働組合法の改悪、あるいはゼネスト禁止法の制定、あるいは終局的には団規法の制定、こういうものに対しまして一齊に反撃に立ち上つておりますし、また最近ストライキを断行いたしました炭鉱労働組合、いわゆる炭労と言われております組合におきましても、この総評と同じような趣旨から、団規法を先頭といたします日本の現在の政府のフアツシヨ的な諸立法に対しまして、断固闘うということを非常事態宣言の中で言つておるわけなんです。あるいは最近の輿論の動向に見ましても、あらゆる新聞、商業新聞までも加えまして、プレスコードの復活を含みますところの最近の一連のいろいろな弾圧法規、こういうものに対しましては、輿論の大きな反撃があるわけなんです。そういう観点からいたしまして、私ども政府が單に公職追放の問題に対して訴願委員会を設けるというふうなごまかしの法案は、われわれはのむことができませんので、政府が大衆の圧力によつてこの一連の弾圧法規を撤回なさるまでは、われわれはこういうごまかしの法案には賛成できないことをここに明確にいたしておきまして、反対の言葉にかえます。
  88. 青木正

    青木(正)委員長代理 岡良一君。
  89. 岡良一

    ○岡(良)委員 私は日本社会党の立場から、次の点を強く要望いたしまして、本案に賛成をしたいと思うのであります。それは本日同僚の立花委員政府側との応酬を拝聽いたしておりまして、まつたく政府の最近における追放者の取扱い方が、反共に名をかつて国民の基本的人権に重大な侵害を與えようとする危惧を遺憾ながら感ぜざるを得ないのであります。申し上げるまでもなく、公職追放令の措置は、勅令五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件、これに基いて一月四日のマッカーサー元帥のあの覚書から発したものであつて、その内容は明らかに日本人をして無謀な戦争にかり立てた軍国主義のいわば元兇を除くというところにその本旨があることは、今も明らかであろうと思うのでります。ところがたまたま六・六追放なり、九・六追放なりということで、われわれとしてはきわめて遺憾な措置がとられておる。元来軍国主義の指導者を追放しなければならない法律が、むしろ民主主義の陣営に大きくそのやいばが向けられ、しかも一方においては、歴然たる戰争の重大な責任を負うべきような人たちに対しては訴願の道が開かれて、大量にこれが解除になつて来るということになりますと、これは明らかにその当初における公職追放令の運び方、精神、動向というものが大きく歪曲されているような感じを強く持つのであります。そういうわけで、われわれは訴願の道が設けられることはもちろん大いに賛成ではありまするが、しかしながら、それについては、やはり六・六追放なり、九・六追放なりの諸君に対しても公正な道が開かれることが、すべての国民の納得するゆえんであろうと思います。現に先ほども政府の方ではそういう意図は一部に研究中であると申しておりますけれども、しかしながら、とにかくプレスコードなどを強化して言論の取締りを強くしたり、あるいは公安條例を法律にして集会やデモを取り締まつたり、あるいはまたゼネスト禁止法を出そうというような意図が誇大に報道されて、われわれに重大なるシヨックを與えておりますが、日本の独立が真に民主化の徹底の上に行われようとするならば、かかる一連の立法的措置なり、または権力的な措置というものは、明らかに日本の真の独立のための民主化をはばむものといわざるを得ないのでありまして、公職追放令日本の民主化のためのものでありながら、その運用がむしろ非民主的に運用されんとするということについては、私どもは衷心より遺憾にたえないのであります。繰返し申し上げまするが、訴願の措置等において婆あらゆる追放者に対して十分均等なる機会が提供されると同時に、公正なる取扱いが望ましい。かつはまた、真に歴然たる戦争の犯罪者は、この際何百万の戰争犠牲者のためにも、またその遺家族のためにもやはり決して個人的な情誼においてこれを許すべきものではないと私どもは思うのであります。そういう意味合いからいたしまして、それらの取扱いについても十分周到なる注意と顧慮をもつて臨まれんごとを期待いたしまして、この案に賛成する次第であります。
  90. 青木正

    青木(正)委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  採決に入ります。本案について御賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  91. 青木正

    青木(正)委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本日可決いたしました両法案の報告書の作成につきましては、委員長に御一任あらんことをお願いいたします。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 青木正

    青木(正)委員長代理 御異議がなければ、さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会