○長谷政府
委員 それではこのテレビジヨン方式に関する資料というものに基いて、大体の御
説明を申し上げたいと思います。テレビジヨンにつきましては、
電波監理委員会といたしましては、すでに一年数箇月も前から、近くテレビジヨンというものが日本においても問題になる、また御
承知のようにNHKにおきまして、戦前も行
つておりましたし、戦争後もテレビジヨンの実験を行
つております。だんだん
一般の国民の方々が、テレビジヨンに関する心を高めてをられまして、現にいわゆるアマチユアの人々も東京近辺におきましては、百名以上の人々が研究心に燃えて、みずから手製の受像機をつく
つて、NHKのテレビジヨンを楽しんでおるというような状況にもな
つて来ております。テレビジヨンには、世界各国の様子を
調べますと、お手元に差上げました資料の
最後の方に表としてあげてございますように、英国、アメリカ、フランスそれぞれ違
つた方式をと
つております。また国際電気
通信連合の中の無線
通信諮問
委員会、これは私
どもは略しましてCCIRと言いますが、このCCIRが、国際的にいろいろテレビジヨンの現在の技術と将来の方向等を
考えまして、推奨しておる方式もございます。またこういうものが現実に世界の各国でどんなぐあいに活用されておるかというのが、
最後の方に表にまとめてございますが、そのうち大部分の国はただいま実験中でございます。本格的にテレビジヨンの放送を実施しておりますのは、御案内のようにアメリカ、イギリス、フランス、この三つだけが本格的に業務を行
つておりまして、そのほかにもこの表の中に一、二の国が放送中と書いてございますが、これは単に研究所の中のいわゆる技術的な実験という段階から、実用的な試験の段階に移
つておるという
程度でございまして、本格的な業務を行
つておる
意味ではございません。これらの外国で行われておる実際の状況並びに標準方式は、大別しまして四つあるわけでございますが、これらの
関係等を十分
調査いたしまして――この一番
最初のところに経過と書いてございますように、単にわれわれ
電波監理委員会の職員ばかりでなしに、広く学識経験者の御意見もいただかなければならぬ。従いまして現実的には、昨年の十月以来いろいろな形で、
電気通信省の研究所の方々、あるいはNHKのテレビジヨンを長く研究された方々、各学界、学校方面の方、製造工業界の方、あるいはその他の学識経験者の方々の御意見もいただいて、十分
検討を重ねまして、また
電波監理委員会としましては、純然たる技術的なことばかりでなしに、いろいろ他の面から
考えなければならぬ点もございますので、そういう点からもにらみ合せをしていただいて到達しましたのが、別刷りでお手元へ差上げました標準方式なのでございます。
この標準方式を決定するのは、どんな
考え方ででき上
つておるかということが、この資料の三枚目のところに書いてございます。それは一口に申しますと、ただいま申し上げましたように、諸外国の
事情、日本の経済
事情なり、あるいは現在の技術水準というようなこと、それから政治的、経済的な国際的
関係というようなことも、当然
考えなければならないのでございます。なお標準方式というものについて平たく申し上げますと、たとえば電力の何ボルトで、電源のサイクルを何サイクルにするかというようなことにやや似通
つております。御案内のように、日本では大体電圧は
一般家庭では百ボルト、電力は二百ボルト、サイクルは、御
承知のように関東では五十サイクル、関西では六十サイクルというぐあいにかわ
つておりますが、テレビジヨンは、日本における電力と同じように、関西と関東でサイクルが違
つておるというようなことでは、全国的にテレビジヨンのサービスを行うことができなくなります。送る方も受ける方も統一するようにしなければなりませんので、たとい実験段階におきましても、一応標準方式というものをきめて行かなければならない
事情にございます。
大体この標準方式を今申し上げたような観点から、いろいろ
調査を進めて参
つたのでございますが、なおその際に
考えなければならないのは、最近アメリカで非常に発達しております天然色テレビジヨンとの
関係でございます。この資料にも簡単に述べてございますように、たといとりあえず白黒の標準方式をきめるといたしましても、将来天然色のテレビジヨンが実施されます場合に、それに移るのにあまりにも不経済にな
つたり、今まで持
つておる受像機が全然役に立たなくなるということではいけない。できるだけスムースに移りかわりができるということを
考えに入れて行きたい、こういう
意味でございまして、ただいま長谷川
委員から御
質問のありましたのは、そういう
意味で、何ら変更を加えることなくというのは、少し行き過ぎた表現にな
つておりますが、全然そのままでという
意味でもございません。このコンパテイブルであるという
意味はどういう
意味かと申しますと、天然色のテレビジヨンを出してお
つても、受ける側は、天然色で見たいならば天然色で受けるような受像機に改造するか、新しいものを買えば天然色で見れる。しかし従来白黒で受けてお
つたものは、天然色には映らないが、そのまま白黒で受けれる、こういう
意味でございましてカラー・テレビが実施されても、従来使
つてお
つた白黒の受像機で、何ら手を加えないで、但し白黒として受けられる、こういう
意味でございますから、御了承願います。そういう
考え方から、とりあえずは白黒の標準方式をきめるのが――またかねて
お話もありましたように、国会におきましても実施促進に関する決議もございまして、とりあえずは白黒の標準方式をきめるのが妥当であろう、こういう
考え方から取上げたのでございます。なお御案内と存じますが、アメリカにおきましても、いろいろな国際情勢から、大体天然色のテレビジヨンの見通しはついたけれ
ども、当分はその製造を禁止するということが国防長官の名前で発表されまして、現在はその製造を中止しておる段階に来ております。そういう点も
考えまして、とりあえず白黒でやれるかつこうで標準方式をきめるのがまず妥当ではないか、こういうことから白黒だけの標準方式を取上げた次第でございます。
それならば、この白黒の標準方式の中で、どの方式を日本では採用するかということになるわけでございます。先ほど申し上げました各国で実施しておる標準方式の長短をいろいろ
調査してみますと、現在イギリスとフランスで採用しております方式は、きわめて特殊な方式でありまして、現在国際的にこの方式がだんだん普及して行くとは思われないのであります。なお先ほど申し上げました国際電気
通信連合の
委員会で提案しておりますのも、イギリスとフランスというものでなしに、別な方式を提案いたしておるのでございます。ところがこの国際電気
通信連合の
委員会に提案されましてから後に、御案内のようにアメリカにおきまして非常に急速な発展を見まして、昨今は一千四百万台を越ゆる受像機の普及を見ているわけでございます。それとともにアメリカの方式が、南米その他にそのままの形で普及を見つつございますので、本年七月にヨーロツパで開かれました国際電気
通信連合の
委員会におきましては、前に推奨をしたところの方式については
委員会ともて正式に推奨することをやめまして、ただ現在世界各国で行われているのはこういうものが行われておるのだ、それのどれを採用するかは、それぞれの主管庁が諸般の
事情を考慮して、適当に採用すべきものだろうと思うということに、
委員会の意思の表明もかわ
つて来ておるのでございます。そういう点も
考えなくてはいかぬのでございますが、大体われわれとして対象になりますのは、要約して申し上げると、アメリカの方式と、ただいま御
紹介申し上げました国際電気
通信連合が推奨し、特にヨーロツパの大陸方面で目下試験中の方式、この二つの方式の間の比較になるように存ずるのでございます。この二つの方式の長短を私
どもとしていろいろ
検討いたしましたもののうちで、重要な点だけを資料の中に一、二書いてございますので、それに基きまして御
説明申し上げたいと思います。
まず第一番目には、一秒間にテレビジヨンの絵を何枚送るかということでございます。御案内のように、映画は一秒間に二十四牧というぐあいに送るわけでございますが、この一秒間に送る画の数は、画面のちらつきに
関係して参ります。このちらつきというのは、画面が明るくなるほど明るさと
関係いたしまして、画面が暗いと多少画の数が多くなくともちらつきを感じませんが、だんだんテレビジヨンの技術が進みまして、昔は暗い部屋でしか見えなか
つたテレビジヨンが、最近は明るい部屋でも見られるように、画が非常に明るくな
つたのであります。明るくなりますと、一秒間の画の数が少いと非常にちらつきを感じます。
従つてその点から言いますと、先ほど申し上げましたアメリカともう一つの方の方式との優劣を
考えますと、一秒間に二十五枚送
つておるものよりも三十枚送
つている方が、見る人はちらつきを感じがなくなる。端的に申し上げますと、アメリカ式の方が片方よりは目に対するちらつきの度が少い。
従つて三十枚という方をと
つた方が妥当だというふうに
考えたのでございます。なおこの一秒間に送る画の数は、従来電力のサイクルと関連がついておりました。アメリカのように電力のサイクルが六十サイクルのところでは、
ちようどその半分の三十という画を送る方式を使い、ヨーロツパのように電力のサイクルが五十サイクルのところでは、一秒間にその半分の二十五枚画を送る方式をいずれもと
つてお
つたのでございます。ところが御案内のように、また先ほど
ちよつと触れましたように、日本では関西と関東で電力のサイクルが違います。
従つて日本の場合には電力のサイクルと
関係のない、しかも目のちらつき等にもつとよい方の画の数をきめたい、こういう問題にな
つて参りまして、われわれといたしましては、最近におきまして電力の周波数とサイクルと
関係がなく、独立してやれる見通しも十分ついておりますので、これも世界各国の技術の動向ということもにらみ合せまして、電力のサイクルには
関係なしに、画の数は三十ということにするのがよかろうという結論を出しておるのでございます。それならばこの三十というのは、実際なまのテレビジヨンの放送でなしに、どこでも映画のフイルムからテレビジヨンの放送を行
つておるものが非常に行われておりますが、その映画のフイルムから
テレビジヨン放送を行う場合の
関係はどうかということを
調べてみますと、その場合は、映画の一秒間二十四駒という数字からむしろ離れておる。三十の方が技術的に非常にやりよい。二十五枚よりは三十の方がよろしいという結論も得ておりますので、そういう面を
考えまして、毎秒に送る画の数は三十という方を結論的に採用しておるのでございます。
次に走査線でありますが、この走査線と申しますのは、テレビジヨンの画を送る場合に、これをこまかい細い線に分割して送る、そのこまかくわける線の数でございます。一口に申します。と、この線の数が多いほど画面が緻密に現われるわけです。許されるならばこれはこまかい方がいいので、結局走査線数は多いほど、テレビジヨンの画が精密に出るわけです。ところがこれをどんなにこまかくいたしましても、テレビジヨンを受ける場合の――これをわれわれは受像管と申しておりますが、画面に出て来る画型が、たとえば太く出て来ておるのでは、送る方がどんなに精密に送りましても、それに追従して精密なきれいな画が浮かびません。これはもつぱら真空管あるいはわれわれはブラウン管と申しておりますが、画の映る大きな一種の真空管でございますが、これの性能のいかんにかかるわけです。たとえば英国では四百五本という方式を使
つておりますが、見た目ではアメリカの五百二十五本とほとんどかわらないということもいわれております。これは送る方の技術と受ける方の技術を、総合的に
考えてみなければならないのでございます。大体私
どもといたしましては、
一般の家庭で見る場合のことを想像いたしますと、結局五百二十五本というので十分満足が行くであろうということで、五百二十五本の方をと
つてみたわけでございます。
最後に、この資料には周波数帯幅という言葉で書いてございますが、これはテレビジヨンの放送をするためにどのくらいの
範囲の電波を専有してしまろか、こういうやや技術的な問題になりますけれ
ども、われわれはこれを周波数帯幅と申しております。これは精密なものを送るほどよけいこの幅がいります。たとえば電信を送るのでは非常に狭い幅で送れますが、電話になるとこれが
相当広くなるつ電話のうちでも放送のように
相当音質のよいものを送るということになりますと、
相当幅が出て来る。ところがテレビジヨンの場合は御
承知のように一秒間に三十枚の画で、しかも微細な点まで画面に現われるように送るためには、幅が非常に広くなるのであります。私
ども電気
通信に
関係いたします者の
一般的な常識として
考えておりますのは、同じものを大体実用的な
範囲で送れるならば、できるだけこの幅は少くしたい、そうすればたくさんいろいろなものをほかに送れますから、できるだけ一つのことに専有される周波数帯幅は狭くしたいというのが、われわれ
関係者の志すところでございますが、そういう点からいろいろ
考えまして、また先ほど御
説明申し上げました走査線数は、一応五百二十五本というぐあいにと
つてみたわけであります。これと一秒間に送る画の数の三十枚、こういうものの
関係をいろいろ
調べますと、一番適当な周波数帯の幅は六メガサイクルで十分だということになりますので、大体走査線が五百二十五本、画の数が三十枚、周波数帯幅六メガサイクルは、
ちようどアメリカが現在採用しているものと同じ規格になるわけでございます。
なお
最後に
ちよつとつけ加えたいと存じますのは、カラー・テレビジヨン、いわゆる天然色にな
つた場合にどうであるかということでございますが、現在最も天然色のテレビジヨンの研究が進んで、一応実用の段階まで達しているのはアメリカだけでございます。そのほかの国では、天然色テレビジヨンが本格的に広
範囲に研究されているところはございません。そのアメリカにおきましては、すでに六メガサイクルの周波数帯の幅で、満足すべき段階に達しております。しかもなお最近の情報によりますと、続々いろいろと新しい考案なり方式などが生れまして、まだまだ天然色のテレビジヨンの技術は進歩して行くように思われますが、現実にアメリカにおいて六メガサイクルでこの方の要求が十分満たされているのでありますから、将来日本におきましてテレビジヨンが天然色に移行する場合にも、これだけの周波数帯幅をと
つて行くならば十分であろうというふうに
考えられまして、先ほど別途差上げました標準方式の案というものができ上
つたわけでございます。なおこの標準方式の案の中には、そのほかのこまかい点もいろいろ書いてございますが、これはただいま概略御
説明申し上げました一秒間に送る画の数、それから走査線の数、周波数帯幅、これが骨子でございまして、
あとはそれがうまく画になり音が伝わるために付属していろいろきめてあることでございますので、
説明は一応省略させていただきたいと思います。なお御
質問によりまして、追加して御
説明申し上げたいと思います。