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1951-11-28 第12回国会 衆議院 通商産業委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十八日(水曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長代理 理事 中村 幸八君    理事 高木吉之助君 理事 高橋清治郎君       阿左美廣治君    今泉 貞雄君       小川 平二君    澁谷雄太郎君       永井 要造君    中村 純一君       福田  一君    南  好雄君       村上  勇君    山手 滿男君       西村 榮一君    風早八十二君  出席国務大臣         海商産業大臣  高橋龍太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       首藤 新八君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商企業局         長)      石原 武夫君         專  門  員 谷崎  明君     ————————————— 本日の会議に付した事件  企業合理化促進法案(小金義照君外三十四名提  出、衆法第七号)     —————————————
  2. 中村幸八

    中村委員長代理 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。本日は私が委員長の職務を行います。  まず企業合理化促進法案を議題といたします。本案につきましては、昨日大体の質疑を終了いたしましたが、なお補充的質疑の通告がございますので、これを許します。西村榮一君。
  3. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は大臣が三時からお出かけだそうですから、本法を審議する上において必要な点で大臣質問しておきたいと思う点を申し上げてみたいと思います。昨日の政府側答弁では、どうも私はふに落ちない点があつたのですが、これは直接通産大臣とは関係ないが、まず第一に念のためにお伺いしておきたいことは、去る十一月九日に閣議で第七次造船計画決定されております。これは所管運輸大臣ですが、日本産業にとつて非常に重要な点でありますが、そのときの閣議決定は、十五万トンを第七次造船計画にするということに決定されておるのですが、あなたは国務大臣としてこの閣議決定を遂行できる見通しを持つておられるか、また確信を持つておられるか。このことをなぜ私がお伺いしておきたいかは、少くともこの十五万トンの最低限の造船計画ができるかできぬかということは、日本の将来の製品の輸送のコスト、あるいは貿易に影響するのみならず、目前には日本産業の根幹をなしている明治中期以来育成して来た日本造船業というものに多くの打撃を與える、それで私は国務大臣としてあなたの見通しをひとつつておきたい、こう思うのです。
  4. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 今の造船のことは私の所管ではありませんが、私としてはまだまだ造船が必要だ、望ましいことだと考えております。戰前のような船腹を持つことはむずかしいでありましようけれども、私在野当時にも日本の輸出入の貨物の半額くらいは日本の船で運ぶということは、経済人としては一応考える理想だと思うのです。ところであの閣議で十五万トンというのは、これは運輸大臣からお聞き願いたいのですが、あれば——もし運輸大臣答弁多少間違つておりましたならば、私は取消すわけでありますが、あのときは十五万トンという一応運輸大臣意見で決議されたのですが、資金関係で三十五億しか見返り資金が出せない、それ以上はどうしても出せない見通しであるので、そのために十五万トンは実際にはむずかしいであろう。つまり見返り資金民間資金と五十対五十ではむずかしいだろう、むずかしいだろうが、運輸大臣として造船価格の引下げ、また民間資金を集めること、そういうことに対してさらに努力をして十五万トンつくろう、その運輸大臣努力の結果によつて十五万トンに足りなくても、あるいはそれが十三万トンになるか、十二万トンになるか、十四万トンになるか、これはやむを得ないというような趣旨閣議でのあの結論を得たわけなのであります。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が通産大臣質問しようというのは、決して運輸大臣その他の所管大臣との答弁の食い違いをとらえて、そのすき間にくさびを打込むというふうな根性の悪い質問はいたしておりませんから、どうぞ安心して率直な御答弁を願いたい。実は私が本日あなたに御足労願つたのは、昨日の政府側答弁というのは少し見当違いである。私としては今日の根本問題は、日本増産政策にある、だから一体どうするのだと言うのにかかわらず、その答弁は、あたかもドツジ氏か大蔵大臣答弁のようなことであつて、ものをつくるという立場における通産省所管に即しての答弁でなかつたからあなたの御足労願つたのであります。以下私の質問するところは、決してあげ足はとりませんから、率直にひとつお答えを願いたい。造船計画は私は十五万トンは最低だと思います。それの三十五億円の見返り資金からの支出ということも、私はこれは遠慮した数字ではないかと思う。にもかかわらず、これが故障が出ておるということは、私はどうしてもおかしいと思う。そこで何とかしてあと見返り資金は削られるなら削られるでしかたがないから、まだ預金部資金が相当余裕があるのですから、そういうふうなところもひとつ筋をつけて、閣議決定の十五万トンの造船計画というものは、日本産業政策の大綱に立つて、ひとつあなたは運輸大臣に協力して貫徹してもらいたい、こう思います。  次に私は、あなたの所管に属するのでありますが、この際お伺いしておきたいことは、現在何といつても非常な金詰まりでありまして、おそらくこの年末は何とかして越えるだろうと思いますが、その越え方というものは、これは破産的主格を持つて越えるのです。しかも来年の二、三月ごろに決定的な傷が吹き出して来るということを考えてみると、今日からこの年末金融対策ということについては、日本産業を主管せられておるあなたとしては、金融的な立場大蔵省並び日銀的立場でなしに、これは相当方針をお持ちにならなければならぬ、こう思うのです。そこで現下金融難並びに年末金融対策、これに対して通産省としてはどういう御方針をお持ちであるか、承つておきたい。
  6. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 率直に答弁をするようにという御注文で、私も率直に答弁したいと思いますが、年末といいますか、あるいは二、三月ごろに経済界が非常に心配でないかという今のお言葉ですが、私も同様に考えております。またそれに対する金融云々の点も、これは私は非常に苦慮しておりますが、今どういう見通しで、どういうふうにやるつもりだという御質問は、私だけの考えでもいけませんから、しばらくお待ちを願いたい。しかし私が非常に苦慮しておりますことは率直に申し上げます。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではその問題はあなたに深くお問いはしないことにして、ただこの際明らかにしておきたいことは、貿易引取資金のしりぬぐいを政府は一体どういうふうにされておるか。たとえて言うならば、今日の資金難一つ原因は、本年の四月、五月にどつと輸入されて来た輸入代価を、そのまま金融的処置で一応処理した、また処理すべきである。しかしながらその後国際価格変動から、遂に輸入した価格が非常に暴落して来て、この傷がいまだ解決されてない。そのまま押せ押せになつて来て、これが焦げついて来ている。これを年末処理するか、来年の二、三月ごろに処理するか、どつちかにこれは処理しなければならぬことになるのであるが、これは通産省としての所管に属することですが、この処理の方法については何か今御方針をお持ちですか。
  8. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 これも私の所管ではあるのですが、御承知通り通産省は金を一つも持つていないので、金を出す方になると所管でなくなるのですが、お言葉通り今の引取資金は、本年の七月、八月ごろにああいう問題になつたのですが、御承知通り引取資金を出すということは、どうしてもその当時関係方面で同意を得なかつた。それで私自身もその当時、大蔵大臣にも日銀総裁にも、いろいろなそういう事情を私も知つておるからして、それはやむを得ぬが、しかし財界を見殺しにはしないだろう。それだけは大丈夫だろう、それはもう見殺しにしないということで実は引取資金は出さなかつたのですが、一面相当徐々に運転資金といいますか、何か日銀の貸出し資金というのは、結局千億ぐらいも実際は出たのです。それでその当時破綻した商社も一、二ありますけれども、そういう連中は非常に信用の悪いものがボロを出したので、多少信用のあるものは今日までそれを切り抜けて来たのです。ところが今日に至つてみると、その後商品の値上りもなし、そういう比較的信用のある店でもう持ちこたえられなくなつておる店が出て来ておる。つまり今非常に危機に瀕しておる商社というものは、この七、八月のときに問題になつた人よりも、比較的信用のある店が今日は問題になつておる。これが非常に憂慮すべき状態なのであります。今の引取資金を八月には出すことはできなかつた引取資金という名前のものをいつ出すのかという御質問は、私もお答えしかねるのであります。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 今私は年末における金詰まり一つ原因としてあげたのですが、これは今大臣の御説のように信用のある店だけが当時融資の対象になつた、今信用のある店もその持つておる品物が二割ないし三割、これをかりに三割としますと、ユーザンスの最高は八月において二千億円、だから六百億円の穴が明いておる。あなたの今言われるように一千億円としても、三百億円の穴が明いて焦げついてしまつておる。この問題をどう処理するかということが、私は金融と将来の日本産業の再出発に大きな問題ではないか。私は今あなたの率直な御答弁を承つたから、もう一度御答弁を伺おうとも思いませんが、通産省としてはこの問題について年内に片づかなくても、少くとも来年の二、三月までには処理しなければならぬ問題であるから、今から対策をお立てになつておく必要があるのではないか、このことを申し上げておるわけであります。  次に通産大臣にお伺いしたいのは来年度産業の姿ですが、私はきのうは通産省の政務次官に、生産と生活の面から来れば窮乏インフレーシヨンだ、財政の面から行けば講和インフレーシヨンだ、こう申し上げたのだが、生産はますます上昇して窮乏インフレーシヨンではないという御答弁であります。これは少し私の考え方とは違うのであるけれども、まあまあ御説を承つておいたのですが、そこで私があなたにお伺いしたいのは、昭和二十七年度景気というものは、大体本年ぐらいの程度で持続できるのかどうか。あるいはなお最近二、三箇月に電力事情、あるいは金融難、あるいは国際経済悪影響が、弱い日本経済にしわ寄せされて来ておる最近の傾向から見て、来年度も、本年特需があつたような形において、経済上昇傾向というものがそのまま認められるのかどうか。これはひとつ、私はあげ足はとりませんから、率直にあなたの見通しを承つておきたい。
  10. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 私も率直に申し上げますが、私の経済界見通しは、何十年来経済人として民間におるわけですが、私の年の初めの見通しが当つたことは少いのです。(笑声)もしそういう先見の明があれば、私はもつと非常に成功しておつたわけですけれども、この老人になつてこう碌々年をとつたので……。ところで実際に本年度の上半期は予想以上によかつたわけです。ところで下半期に産業が落ちて来たことは、電力危機が一番の原因です。そこへもつて来て世界的の影響がある。ところで私は元来民間人としてはあまり楽観論者でないのです。悲観する方の問題を取上げてみると、御承知のようにずいぶんたくさんあるのですね。それだけを考えると非常に恐ろしくて、じつとしておれないような感じがするのですが、また楽観する面もあるのですね。そのプラス、マイナスをどういうふうに評価して行くかというのですが、簡單に私の今考えていることを率直に申しますれば、まあ本年くらいには行くのじやないかと思います。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 高橋さんの相手ではどうも困つたものです。池田君でも出て来れば張合いが出て来るのですが、年も違うし、どうも……。(笑声)私はそこであなたのあげ足をとるわけではないが、最近八、九月ごろから出て来た状況からいえば、本年度通り行くとは思いません。かりに本年度通り計画が行くとしても、新しい講和後における日本経済再建のために所要資金もいりますし、産業合理化のために資金もいる。従つて本年の規模からいつても、財政支出というものが相当やはり制約されなければならぬ。来年度はとうてい本年度通り行かない。ということは、本年度景気上昇を見ると、均衡がとれていないのです。とつぴようしもなくつて行くものもあるが、全体としてはびつこです。これは非常に国際情勢悪影響をすぐに受ける底の浅い危険なものを持つている。そこで私はあなたに来年度の展望をお伺いした目的はどこにあるかというと、今朝の新聞に見ると、ドツジさんが二千五百億円を講和條約に伴う諸経費に天引きして、あとは国内でまかなえというような御題を吐かれておる。私は今あなたにお説を伺う機会に、とうていそういうふうなことは日本経済実態が許さぬと思うものですから、来年度景気状況をお伺いしたのです。あなたの御答弁においては言いにくいところがたくさんあるだろうが、とにかく私は来年度景気は楽観しておりません。従つて窮乏インフレーシヨンの打開は増産、その増産均衡のとれた増産でなければならぬということで一応これは打切つておきますが、あなたが国務大臣として閣議に出られたら、今のようなとぼけた、また要領のいい御発言によつてツジ氏の二千五百億円の要求というものは、とうてい日本経済実態からいつて不可能であるということをひとつ力説してもらいたい、こう思うのです。  それから次に私はあなたの所管でお伺いしておきたいと思うことは、何といつて日本の枯渇しておる産業資金をどうまかなうかということが、原料の手当とともに現下の大きな問題だ。そこで今の政府のやり方を見ると、運転資金設備資金もほとんどが市中銀行に肩がわりさせているということになる。これはちよつとあなたは産業人としてお考えになつても不可能なことだと私は思う。窓口で、受付けてただちに支拂う契約を結んでいる預金で、一年以上三年、十年たつ長期資金をこの市中銀行でまかなえというてみたところで、銀行がびくびくするのはあたりまえです。そこで日本経済再建にあたつて必要なことは、運転資金とともに設備資金です。私は同工行政一つとして、大蔵省打合せをして、何とかしてこの運転資金設備資金とを区別して、設備資金だけは別にまかなうというような方法をお講じになつたならば、今日の金融難というものが、ある程度までは打開できるのじやないか。一緒にするからいけないので、これは別にされたらどうか、そういうふうな対策を徐々に持つて行かれたらどうか、こう思うのですが、いかがでしようか。
  12. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 私は先刻の答弁にもう一度触れてみますが、財政はお言葉のように非常に苦しいと思います。ただ私の言いましたのは、一般の景気、来年の景気という問題ですが、日本経済界というものは、百も御承知のように、いかにも深さがないものですから、ちよつとしたことで波が上つたり下つたりする。現に来年は大体ことしくらい行こうかというようなことを私申しましても、先刻のあなたのお言葉のように、二、三月ごろは相当苦しいと思いますが、どうも日本の深さのない経済界では一年のうちにも何回かそういう変動はどうしても免れることができないのだと思います。おしなべてどういうふうに見るかということが問題なんで、そういうつもりで申し上げたのです。  ただいまの長期資金運転資金、あるいは短期資金といいますか、それをもつとはつきり区別してみたらどうかという御意見は十分参照して研究してみます。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は産業を扱われておるあなた方の省においては、大蔵省打合せされてぜひそういうふうな日本産業特殊性をドツジ氏その他にお話になつて、何とか打開せられたらどうか、これはあなたに申し上げるまでもなく御存じだと思うのですが、アメリカは何といつても今は二千二百八十億ドルの金塊を持つておるのです。それから潜在講買力は七百五十億ドルから一千億ドルかかえ込んでいる。そういうふうに純金も持つておれば資金も持つておる潤沢な国の金融政策、それから来る産業資金統制というものと日本とは違うと思うのです。同時に壊滅に瀕した日本生産界並びに電源造船その他の再建には何といつても乏しい国民資本蓄積ではだめです。これは国家財政で何とかせにやいかぬ。私はそこであなたに、区別してひとつ日本再建資金の調達をされたらどうかと申し上げたのは、ほかではないのですが、電源開発あるいは造船、その他の中小企業に対する再編成というようなものの資金を、ここで約二千億かあるいは三千億をひとつ建設公債というようなものでまかなつて行く。それを三年なり五年なり置いての長期資金にするというふうにして、日本再建国家資本造出をやられたらどうだ。かりにこれを三千億としても、日本公債保有量から行けば微々たるものです。これはあなたは御存じだと思いますが、アメリカ国民所得に比較して、公債は一〇七%持つておる。イギリスは国民所得に対して二五七%の国債を持つておる。日本は五%を切つておるのです。しかも日本経済再建のために、資金需要は旺盛だというようなときに、私は二千億、三千億というふうな建設公債の発行、しかもそれは建設面においてひもがついているのですから、将来償還の材料がある。しかもそれを出すごとにおいても、一ぺんに通貨がどつと出て行かないのです。すぐにそれは預金部預金に回転して来るということになるから、通貨が膨脹してインフレーシヨンの懸念はない。それよりも窮乏インフレーシヨンから来るところの経済の混乱の方が恐ろしいということであれば、どうしてもそういうふうな財政信用造出というものは、建設公債ひも付公債というものが必要だと思う。これは今の状態では日本政府の一存では行きかねるかもしれませんが、ひとつあなたと大蔵大臣共同戰線張つて、ドツジさんにぶつかつてみたらどうですか。御老体を煩わしてははなはだ恐縮であるが、ドツジさんが帰ろうとしておるから、ドツジさんが帰るまでに一ぺんだめ押しをして、どうだろうというので、日本産業再建方策について、ひとつ大蔵大臣共同戰線張つてがんばつてみたらどうです。あなたの御所見はどうでしよう。
  14. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 御意見としては非常に有力な御意見としてつつしんで承ります。そういう御意見をひとつまた池田君にも十分に聞かしてやつていただきたいと思います。ところでドツジ云々は、これは今度ドツジ氏が見えて、所管事項で会つてみまして、私が予想しておつた以上に固い、深刻です。大蔵大臣と私と共同戰線張つてつかまえてみても、とても見込みがありません。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は年長者のあなたの言われることだから、そのまま聞き流しますが、あなたの先ほど来の答弁池田君がやつたら、これは穏やかでは済まぬです。従つて池田君にも十分に申し上げておきしよう。  最後に私があなたにお伺いしたいことは、中小工業倒産の問題であります。これに対して何らか年末に際して手を打たれませんか。最近あなたのところの統計によると、八月においては中小工業倒産の理由は四六%までが資金難であるという。その資金難先ほども私が断片的に、抽象的に、簡單に申し上げたような原因にもなつて来ておる。従つてこの際何とか手を打たなければ、日本経済中枢的役割をなす中小工業は立ち行かないと思う。これに対して何らか手をお打ちになることは考えておりませんか。
  16. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 先刻も申し上げましたように、その問題では非常に苦慮いたしております、研究をいたしておりますが、今まだここで御答弁をするような程度に達しておりません。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がありませんから、私は商工行政に対する質問を打切りまして、企業合理化促進法案についての将来の取扱いについて——法律案についてはこれは議員提出案でありますから、議員が責任を持つのですが、将来の取扱い方法について簡單に一、二御質問しておきたい。その中の第三條において「国の所有に係る機械設備等国有財産法の定めるところにより貸興することができる。」こういうことになつております。そこでどの事業に貸與し、どういうふうな方法で貸與するかというふうな貸與の基準と運営を査定するのに、一体これほどこの省がおやりになるのであるか、国有財産であれば当然大蔵省がおやりになることになるが、本法趣旨からいえば通産省でおやりになるというふうなことにもなるが、一体どこの省がこれを所管されるのであるか、運営についてひとつつておきたいと思います。
  18. 石原武夫

    石原説明員 お答えを申し上げます。現在国有機械設備がございますが、これは大部分は大蔵省所管になつておりまして、ごく一部のものは通産省所管になつておりますが、それの貸與の場合は、現在でも実施を一部しておりまするが、その場合に貸與いたしますのをどこに貸與するかを決定する手続につきましては、大蔵省の所有されております国有財産につきましては、形式上大蔵省手続をされるわけで、大蔵省が貸與されるわけですが、それをどこにやるかということをさめるにつきましては、大蔵省通産省打合せをいたしまして、意見が一致したものにつきまして大蔵省手続をして貸與しておられるわけです。通産省所管しております一部の機械につきましては、これは通産省においてその手続をいたしておるのであります。  お尋ねの第三條の規定で今後この法律のもとにおいて実施されますのは、実は現在行われておりますのをこの法律法文化をしたといいますか、法的根拠を與えたということでまつたく同様な取扱いで進みたいというつもりでおるのであります。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 それは将来少しややこしくなりませんか。たとえば試験をやろうという人が政府機械設備を貸與を受けたいと思つても、大蔵省へ行つた通産省へ行つたり、行つたり来たり行つたり来たりしなければならない。もつとも近ごろはシルクハツトをかぶつている強盗が各役所の中においてはやりまするから、そういう人は簡單に電話一本で命令で済むかもしれないけれども、普通小さい事業家はこれはお役人のところに行つたり来たりすることで煩にたえぬと思う。そこで私はそういうことでなしに、質問した要点は、第三條の運営について、大蔵省管財局あるいは通産省企業局、あるいはその中に安定本部が入りますかどうかわかりませんが、そういう関連した各省において、ひとつこれの運営について、将来一定期間、二年なり三年なり特別委員会をつくつて、そこでひとつ処理するというふうなことがよかろうと思うが、そういうことをお考えになつているかどうか承つておきたい。
  20. 石原武夫

    石原説明員 ただいまお尋ねがございましたように、二省に少くともまたがりますので、その点は民間からごらんになりまして確かに煩瑣であると私も思いますが、現在の建前で、国有財産大蔵省が全面的に所管をしておられますので、その所管をただちに移すということはなかなか問題があると思います。そこでただいま御指示がございましたように、関係のところで連絡会議といつたようなものを設けて、そしてそこで事実上の打合せ決定ができるというような点につきましては、現在でも大蔵省との間に始終密接に打合せておりますが、今後は通産大蔵に限らず、もつとほかの省の所管事業の場合も一応予想されないことではございませんので、御指示のようなことは確かに非常に有効適切なことと考えますので、そういう方法について十分検討して参りたいと思つております。
  21. 西村榮一

    西村(榮)委員 細目については私は、大臣もおられるからあとでまたお伺いするかもしれませんが、念のために伺います。これはざつくばらんな質問ですが、本法が提出せられ、国会の委員会の審議にかけられたのと、巷間伝えられている播磨造船所あるいは四日市その他いろいろなところから拂下げ貸與の運動が行われている。そういうふうなものと本法とは関係はないと私は思うが、何か若干関連性を持つているのですか。これはまことに頭の悪い質問で、愚問に属するが、かつまた率直だが、一応念のためにお聞きしておきたい。
  22. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 私は、全然関係はありません。
  23. 西村榮一

    西村(榮)委員 何かそれらのことについて政府は四人か五人の諮問委員会をつくられたそうですが、この諮問委員会の人選を見てもかなり片寄つているので、公正な諮問ができるかできないかということは見る人によつてなかなか疑問なんですが、これは記載通り諮問委員会ということに解釈してよろしく、ある程度まで決定権を持つ諮問委員会であるか、ほんとうの文字通りの諮問委員会であるかということをひとつつておきたい。
  24. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 これは私が全責任を持つて通産省意見決定いたします。これはやはり国有財産でありますので、またあるところから先は大蔵省所管にあるわけですが、通産省所管は私が全責任を持つて決定いたします。あの委員を委囑するということも事実でありますが、これは私の諮問機関にすぎないのであります。あの人選は主として私がしたのでありますが、私はずいぶんあの人選には苦心をしたのですが、適当な人を得ていると思うのです。これはまた率直に申し上げますが、たとえば四日市の出願者などはいろいろな財界の人から出ております。かりに民間の人にあの委員を委囑するにしましても、出願者の方にといいますか、三菱系もある、いや三井系もある、日産系もあるというようなわけでありますから、ところが今の民間人は現在は何も関係がありませんが、経歴をたどつてみるとこれは三菱系の人であつたとか、これは日産系の人であつたというようなのが多いのです。努めてそういうものを避けるべきだと考えまして、私相当あの人選には苦心をしました。四日市関係は、まああれも結局油関係に利用するのがいいんだろうと思いますが、私の人選した趣意が、油の方の専門家を要しない、人格的にりつぱな私の信頼することのできる人ということを主にして考えたのであります。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると今承つて大体明らかになつたのですが、あの諮問委員会通産大臣の詰問委員会ですね。
  26. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 さようです。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたが人選なさつたんですか。
  28. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 さようです。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 次に簡單ですからお伺いしたい。それではあれを貸與拂下げをする、あなたが査定される基準は、何か今大体目安をお定めになつておりますか。
  30. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 何にも目安を持つておりません。私はまだ結論を得ないのですが、あるいは今拂下げることは時期的に適当でないかもしれぬと私は考えております。それから拂い下げる場合に一番考えなくちやならぬことは、四日市のごときは相当厖大な土地でありますので、あれを拂い下げてわが国の経済界に貢献するかどうかということを主にして考えなくちやいけない。またあれを拂下げを受けて、あれに施設をやるということになりますと、相当大きな金がいります。その資金関係がはたしてどうなつているか。安心して資金計画を持つているかどうかということも考えなくちやいけかせん。またあの六、七十万坪、もつとあるかもしれませんが、それの拂下げを受けて、そうしてそのうちの三分の一しか施設をして使わない、あとは何年か遊ばしておく、それが適当か不適当かということも考えなくちやいけません。これは私はまだ白紙でいるのです。今私が何か構想を持つて決定するために、にわかに諮問委員をこしらえたのではありません。それからいろいろな運動が民間にあの問題についてあることは事実でありますが、ところがふしぎに私に対してはあまり運動はないのです。一応は社長だとか何とかいう人が来まして私も話を聞いておりますが、そうしたいやな運動を持ちかける人は一人もないので、私はすこぶるのんきでいるわけです。
  31. 山手滿男

    ○山手委員 そのことについて私は大臣に一、二お伺いをしておきたいのでありますが、大臣はあの四日市の施設の一部分をある会社に転用さす了解運動を総司令部の方へ行つておやりになつております。しかしわれわれ考えますると、私はあの厖大な施設の実情をよく存じておりますけれども、あれは化学工場でございまして、四方八方パイプが通つておる。あるいはその関連というものがくもの巣のようになつておる。それのまん中あたりのいいところを一部の会社に転用さすというような動きについて、大臣が総司令部に乗り出してされますると、それに関連して地下のパイプでつながつておる周囲のいろいろな施設が全部だめになつてしまう。今お話の諮問委員会や何かをおつくりになつておるのですが、どうしてああいうことを軽率にされておるのか。  それからもう一つは、あの施設はもう相当雨ざらしになつておりまして、なおこの先それを置いて行くと朽廃してしまうおそれもあるのであります。総合的な利用について、非常にのんびりしているようなお話でありますが、現在までどういうふうに持つて行くおつもりで通産省自体は動いておられますか、大臣にお伺いいたします。
  32. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 四日市の施設の一部分をある特定の会社に使用さそうということに私が動いておるというような御質問は、意外に思うのです。私はあなたの御質問と反対の立場におるのです。肥料会社が一部分使つておりますが、肥料も御承知のように今非常に大事な問題です。今ああいうふうに遊んでいるから、肥料会社が使つておる区域を広げて貸そうという意見が省内の一部にあつて、私のところへ意見を省内で聞いて参りましたので、私は、四日市の施設の処分が今日問題になつておるときに、そういうことを決定すべきでない、それはやめいということをさしずしたのであります。
  33. 山手滿男

    ○山手委員 そうしますと、新聞で、あるいは情報として伝えられておることとは逆のことを今御答弁なすつたように思うのでありますが、実はその肥料会社が、現在硫安をつくつております。その硫安をつくつておる会社が、さらにいろいろ関連会社と提携をいたしまして、あれの全面的な使用について運動をしていることは周知の事実であります。そういう全面的にあれを利用するということでなしに、硫安製造工業と関連いたしまして、相当な部分を拡張して使いたいということで、今お願いをしておる。大臣はそれを流用さすということについて総司令部の許可を得に行つたけれども、その見通しはついたというふうな新聞記事も出ております。これについてはどういうことなんでありますか、大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  34. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 先刻私が答弁した通りに、特定の会社にどういう手続で許可しておるか私存じませんが、今会社の使用しておる区域を拡張するということは、私は大臣として反対です。現在それははつきり申してあります。どういう面からあなたのところへそういう情報が伝わつておるのか知りませんが、私に関する限りは今申し上げた通りであります。これは念のために申し上げておきますが、私が今反対しておるのは、あれを肥料会社にするのがいいことか悪いことかという問題でなくて、現在あの全体のものをどういうふうに処分しようかということが問題になつておるときに、それを今拡張して使用許可を與えるということは、私は反対せざるを得ないのです。
  35. 山手滿男

    ○山手委員 大臣の御答弁を聞きまして、私もかくあるべきと思うのですが、しかし事実はそれと逆のことが新聞にも報道されておりまするので、ひとつ大臣はお取調べになつた方がいいのではないかと思います。
  36. 高橋清治郎

    高橋国務大臣 何べん繰返しても、私はうそはよう言わん男なんです。それを私の信念としておる。先刻来繰返して申しておる通りであつて、新聞もずいぶん誤つたことを伝えております。その新聞記事も私見ていないのですが、それを今調べて見ようという気にもならない、無視したいと思つておりますから、どうかさように……。
  37. 中村幸八

    中村委員長代理 次は南好雄君。
  38. 南好雄

    ○南委員 私も大臣に二、三点質問したかつたのですが、その話はあとで政務次官からお聞きすることにいたします。まず法律について、ぜひお聞きしておきたいと思う点があるのであります。すでに同僚議員から質問があつたと思うのですが、何と申しましても、合理化法案——私も提案者の一人で、こういう質問をするのはどうかと思うのですが、やはり問題は第二條と第六條との政令の内容だろうと思うのであります。いずれこれは大蔵委員会と連合審査になりますので、その際におきまして、詳細に大蔵省側の意見も聞いてみたいと思つておりますが、とりあえず第六條の「政令で定めるものを営む者が機械設備等の近代化のため」という、その政令の内容として、一体どの程度大蔵省打合せ済みになつておるか、お答え願いたいと思うのであります。
  39. 石原武夫

    石原説明員 各業種を申し上げます前に、一応通産省といたしましては、通産省の希望の案をとりまとめて、目下大蔵省に御相談中であります。なおこの業種に該当いたしますものは、通産省以外の関係各省にもあるわけでございまして、それらを一括して今大蔵省で御研究中でありますので、大蔵省と最後的に話がついた案がこうだということは、遺憾ながら今ただちにはつきり御答弁いたしかねますが、通産省といたしましては、少くともこれだけの業種につきましては、ぜひこの政令に定めていただきたいということで、お話合いをしておるものを申し上げます。実はこれは昨日の御質問にもございましてお答えしたのでございますが、一応今通産省大蔵省といろいろ御折衝申し上げておりますものは、鉄鋼の関係、石炭の関係、金属工業の関係、非鉄金属の圧延と申しますか、金属になつたものの関係、金属鉱物のほかに非金属鉱物としての硫黄、硫化鉱、化学肥料、化学関係でソーダ工業、カーバイド工業、それからコールタールの流動物と申しますか、いろいろ化学工業の基礎原料となりますコールタール関係の製品、それから染料、染色加工、自動車、工作機械、ベアリングというようなもの、少くともこれらのものにつきましては、ぜひ政令の指定をしたいということで、目下大蔵省と交渉中であるという段階であります。
  40. 南好雄

    ○南委員 そういたしますと、今お答えなつた中に含まれるものもあるのでありますが、第六條の趣旨である減価償却の特例というものは、何と申しましてもいろいろ種類がありまして、償却が長く持つものと、償却がごく短期にやらなければならぬものがあるのですが、今お答えなつ程度のものは、相当長期に償却が見込まれ得るのでありまして、たとえばここにあります第二條の土木建築業に使用しておりますもの、これは程度の差はありますが、この事業に使つておりますいろいろの機械設備等が、全然第六條の減価償却の対象にならぬということも、いささか酷に過ぎるように思うのであります。建設省あたりでもいろいろの関係から見返り資金等まで放出して、土建業の機械をつくるに必要な資金を心配しておるような、機械のものについても減価償却の特例を認めてやる方が、むしろこの法律趣旨に沿うのではないか、こういうふうに考えますので、今のお答えの中に全然そういうものを含んでいなかつたことははなはだ遺憾に思うのでありまして、その点どういうふうにお考えになりますか。
  41. 中村純一

    中村(純)委員 先ほど通産省から御答弁を申し上げましたのは、通産省所管に属する範囲に関するものについてのことでありまして、ただいま御指摘のような土建業とかあるいは造船業といつたような通産省以外の省において所管しておる事業につきましては、通産省としてはよくわからない立場にあるわけです。従いましてこの種の通産省以外の各省で所管をいたしておりまする事業で、この第六條による政令の指定を受けるかどうかということにつきましても、これまた当該省と大蔵省との今後の折衝の結果にまたなければならないことでありまして、私提案者の立場といたしまして、この際これはどうなるこうなるということをただいま申し上げる事での段階に達しておらないのでありますが、お尋ねの御趣旨はまことにごもつともと思われるのでありまして、運用面は政府がやることでありますが、私ども立案に参画をいたした者といたましても、できるだけ御趣旨のごとく広い範囲に適用されるように努力をいたしたいと考えるのでございます。ただそれは同時に財政收入の面に影響を持つ問題でありますので、全部が全部というわけにも参りかねると思いますが、できるだけ必要なるものは取入れて行きたい、かように考えておる次第であります。
  42. 南好雄

    ○南委員 ただいまの御答弁で大体のことはわかるのでありますが、少くともこれはお互い提案者として各省所管のものは各省で大蔵省と交渉するというような程度では、いささかお尋ねするのに困るのでありますけれども、繰返して申し上げますが、この土建業のごときものは、非常に短期間にだめになつてしまう機械が多い。それについても国は特別に日本の国土開発総合計画というものについて留意いたしまして、わざわざ金まで貸してつくつてやる機械等もたくさんあるのでありまして、ぜひとも次会までには少くとも建設省あたりの意見も取入れて、どの程度のものがこの対象になるか、ひとつお調べ願つて答弁いただきたいと思うのであります。  大体第六條についてはその程度でありますが、幸いここに政務次官が御出席になりましたので、二、三私が最近考えましたことについて、御所見をお伺いしたいと思うのであります。  この前、大臣にはいろいろお伺いしたのでありますが、その方法がなくて困る、こういう御返事であつた。最近鉄鋼業におきましてはどういうものか鋼材の輸出だけが非常に盛んになつて来た。きようも新聞によりますと、八幡の第二厚板工場が三交代になるというような話を聞くのであります。その事情をいろいろ聞いてみますと、いわゆる輸出船舶の製造が非常に多くなつて来た。これは日本造船業にとつてはたへんよいことではありますが、御承知通り日本の製鉄業は特別の立場にあり、高い運賃をかけて鉱石や粘結炭をアメリカから入れておる。こういうものを使つて輸出の船をつくつて行くというのは、造船業それ自身には非常によいかもしれませんが、それとともに内地の資材も失われて行くのでありまして、その間の調整と申しますか、——鋼材を輸出したり、それから日本には金がなくて船がつくれない、それで来年度見通しはドル不足で困るというような際に、日本の鋼材を使つて輸出される船をつくつて、その船で日本の物資を運んでまたドルを拂わなければならぬというようなやり方で、はたしてこれから行くものかどうか。役務賠償の性質であるならば、原料は日本に持つて来てもらつて、それを使つていわゆる日本の労働力を提供するという意味合いで行かなければならぬのにかかわらず、今のような方針のもとにおいて輸出船舶のごとく鋼材を輸出して行くということは、どつちかと申しますと、日本の鉄鋼業の将来にとつても飢餓輸出みたいな状態になつて来るのであります。この点に関する通産省の御所見をお伺いしたい。
  43. 首藤新八

    ○首藤政府委員 本年の鋼材の生産量ほ、国内の消費をカバーしてなお相当量の輸出の余力は持てる程度生産計画をしているのでふります。しかもその線に沿つた生産が軌道に乗つた状態を続けているわけであります。従いまして鋼材が何に使用されようとも最近のように輸出が好調になつたということは、決して飢餓輸出とはわれわれ見ていないのでありまして、むしろ外貨獲得上非常に喜ばしい現象だ、特に最近は御承知通り薄板の輸出がやや停頓状態でありまして、もし鋼材の輸出が不振になりますれば、鉄鉱業に與える影響というものは、かなり深刻であつたろうということが予想されるのであります。幸いに鋼材の輸出が相当好調を呈しておりますので、従いまして、全般的に鉄鋼業に対してあまり圧迫的な影響をもたらしていないという現状でありますので、最初に申し上げましたごとく、輸出に相当の余力があり、その生産を上げておる。従いまして今後も鋼材はできるだけ輸出の方に向けたいというつもりでおります。
  44. 南好雄

    ○南委員 はなはだ楽観的な御答弁ですが、そうであれば私も別にこう質問しないのであります。私たちの考えでは、一体半製品とか粗製品が輸出されるということは、その業者にとつてはいいかもしれぬが、ほんとうに国富を増進して行く方法ではないのだ。私なんかの考えでは、何としても鋼材などは、ああいう高い鉱石なり粘結炭を輸入するのですから、これを徹底的に国内で最後の製品にまで持つてつて、そうしてこれを輸出することによつて、初めてその間における運賃によるコスト高というものを縮め得ると思うのです。ひとり鉄鋼業においてのみ、そういうように最近輸出が多くなつて、鉄鋼業の薄板の輸出が停頓したものが、厚板の輸出でカバーし得られるのだというようなお考えでは、あまりに近視眼的な見方じやないかと思います。何と申しましても、大体日本にとりましては、貿易外の収入といいますか、船舶その他の運賃収入は相当戰前に多かつた。こういう点から考えてみても、日本において、先ほど同僚の西村さんからも御質問があつたが、船をつくて、その船によつて原料なりまた製品を輸出するというような建前をとらなければならぬことは、これは明白です。しかもその方面に見返り資金が出ないで、そして造船業も鉄鋼業も、高い原料を使つて輸出の船をつくつて行く。こういうような状態では、あまりにさんたんたる現状であつて、その状態をもつて、非常に将来これで息がつけるのだという御見解では、少々皮相の見解のように思われますが、もつとひとつ掘り下げてお考えおき願いたいと思います。
  45. 首藤新八

    ○首藤政府委員 御趣旨は非常にけつこうでありますけれども、しかしながら現実の問題として、国内の造船に対しましては、すでに七次の後期まで実は融資が行われておるわけでございます。しかしこれも船主の資力その他から見まして、ことにこれを融資する銀行の側といたしましては、一応将来ということを考えることも、またうなずけるのであります。しかも一面から見ますると、現在の船価は一トンが十四万円ないし十五万円ということになつておるのであります。現在の運賃そのものがもし動かない、安定して将来も続けられるものだということになりますれば、採算の余地があるかと思いますけれども、しかし現在の経済界は、御承知通り異常経済であります。いつ何どき大きな変化が来るかもしれないというような場合も、一応考えておかなければならぬのじやないか、そういうふうに考えますと、むろんできまする限り、造船は積極的に推進すべきでありますけれども、しかしそれだからといつて、いたずらに高い船をつくることは、将来のためにどうかということも一応考えなければならぬのじやないかということを考えるのであります。従いまして、これは私の個人的意見になりますが、むしろ現在の財政的に非常に困難な、無理な資金を投じて造船するよりも、現在の日本の国情に沿うように、そして外貨をなるべく運賃に拂わないという建前をとるためには、むしろ中古船を輸入して、そうしてできる限り邦船によつて物資を輸送するという方針の方が、日本の国情に適する方法ではないかと、私個人としては考えておるわけでありますが、いずれにいたしましても、船舶に対する融資が、大体マキシマムに達したということは、御異議ないと思います。こういう関係上、造船の方に向けるがいいと、理論的にはそういうふうに考えられますが、実際問題としては、これ以上大量の鋼材を国内の船舶に向けるということは、困難だという結論に到達し、来ると思うのであります。  もう一つは、この鋼材の輸出が、高い資材を輸入しておりますることはむろんでありまするが、これが原価を切つて輸出するものであるならば、これはまた別個の考え方をしなければならぬと思いますが、現在の輸出価格は、いずれも採算ベースを上まわつておるのであります。従いましてこれが製品とならなくても、とにもかくにも輸出が可能であるという以上は、やはり輸出の方に振り向けるべきである。その間に徐々できる限り製品化して輸出を振興する方に努力すべきである、こういうふうに考えておるのであります。
  46. 南好雄

    ○南委員 鋼材の輸出については、大体そういうような考えでいいのでありますが、今私が申し上げているのは、日本では金がないから日本の船はつくれぬ、外国は金があるから日本の高い、いわゆるトン当り十四、五万円もするような船をつくつて、その運営をして、しかも引合うのだという、そのりくつが私にはわからない。もちろん国家の財政資金というようなものは、占領治下でありますから、かつてにできぬということも十分わかるのでありますが、外国の引合う商売が日本ではなぜ引合わないか。つまり日本の船がどうして十五万トンが十万トンになるのか。外国では同じ船価の船をどんどん日本に注文して、その船でどうして運賃がかせげるのか、こういうことをお聞きしておるのであります。ちよつとこれは運輸大臣に聞くべき筋合いかもしれませんが、関連が通産省とありますので、貿易関係もかねて、政務次官の御答弁をお願いしたいと思います。
  47. 首藤新八

    ○首藤政府委員 内地で高価なものが、海外でどうして引合うかという問題でありますが、これは推測でありますけれども、おそらく為替関係によつて日本では円で計算すれば非常に高いものになるが、海外の自国の貨幣によつてこれを換算しますれば、さして高くないということに相なつているのじやないかということが、一つ原因と思います。もう一つは、日本造船工業が、海外の発注国で生産するよりも、日本に発注した方が安くできるということも、あわせて大きな原因だと思います。そういうことが総合いたしまして、日本に輸出の船舶の発注が絶えず来ているというふうに了解するのであります。
  48. 南好雄

    ○南委員 今の御答弁は、一応そういうことも考えられるのでありますが、実際調べて見ますと逆であります。欧洲においては鋼材としては非常に高い輸出値段が出されるのでありますが、その鋼材を原料として輸出せられる機械に至つては、はるかに安く、日本機械メーカーが競争できないような値攻で売つている。そういう点から考えてみますと、日本に船を注文して、その船で商売が成立つて行くというような現象は、單に為替相場だけでは説明できぬのじやないか。やはりそこには各国ともに相当大きな財政支出をやつて、そして将来、いわゆる外貨獲得に都合のいいような方策を持つているのだ、こういうふうに私は考えるのでありまして、こいねがわくば通産省は運輸省と協力して、こんなに日本の船を値切らずに、ひとつ日本の船がどんどんできるようにしてもらいたい。そしてそれが今後貿易外の収入として、ドルなりボンドなりの獲得に役立つようにしてもらいたい。最近新しい情報によりますと、英国の鉄鋼メーカーのごときは、船舶業者と一緒になつて船をつくつて、鋼材專用船をすでに十数万トンも発注したような状態であります。さきに政務次官が言われたように、ぜひとも通産省といたしましては、鉄鋼業自身の将来の対策考え、今注文があるからというて三交代にしたり、あるいは溶鉱炉を入れて、そして注文がなくなると、とたんに鉄鋼業に大きな影響を與えるような、そういう間に合せの政策をとらずに、じつと鉄鋼業を見詰めるような深い理解のある指導方針をもつて、鉄鋼業を育てていただきたい。何にしても原料はできるだけアメリカに仰がず、東亜で仰いで、そして安い鉄鋼を出して、鉄鋼を原料とするもろもろの工業を繁栄さすような方針を一貫して通産省は持つていただきたい。その意味において 先ほど政務次官が言われたように、鉄鋼メーカーの自家用船舶というようなものは、この際ぜひやつていただきたい。そういうことをすることによつてのみ鉄鋼価格の引上げもある程度期待され、かついわゆるドルの不足を補う意味にもなり得るのでありまして、ぜひこれは通産省一つの国策として大きく打出していただいて、各省間の意見をまとめて、そして二十七年度あたりには、日を見るような結果に持つてつていただきたいと切に思うものであります。どうぞひとつよろしくその点をお考えおきの上に、かわらない、いわゆる一時的の現象に迷わされない鉄鋼業の指導政策をとつていただきたい、こういうふうに思うのであります。
  49. 首藤新八

    ○首藤政府委員 まつたく御指摘の通りでありまして、政府もその御趣旨に沿つた政策を今日まで続けておるのであります。これがために遠くアメリカから高い運賃を拂つて輸入しておりまする鉄鉱石、あるいはその他の粘結炭等も、なるべく近距離から輸入いたしたいということが、東南アジア開発でありまして、できる限り運賃の安い近距離からそれらの原材料を輸入いたしたい。そうしてその面からコストを低くすると同時に、さらに企業体の内容の合理化を促進いたしたい。ここに提案されておりまする企業合理化促進法も、実はこういう点を目的といたしまして法案を提案されておると存ずるのであります。さらにまた金融の面その他におきましても、できるだけ政府は鉄鋼業の将来に備えるべき指導育成に熱意を示しておるのでありまして、将来現在の好況が不況になりましても、なおかつ国際的に競争し得る態勢を整えるに絶好の機会だというふうな考え方のもとに、もろもろの対策を強力に推進しておるのであります。従いましてこの促進法も、ただいま申し上げましたごとく、そういう目的の一環であります。なお今後もそれらの目的を達成するために、いろいろの行政措置を講じたいと考えておりますので、その点を御了解願いたいと思います。
  50. 南好雄

    ○南委員 大体お答えで私満足するのでありますが、どうもこの鉄鋼の輸出につきましては、御承知通り非常に高いものを輸入しておるのでありますから、これは賠償の精神におきましても、役務賠償という性質を持つものにいたしましても、輸入せられた原料それだけを輸出するというような行き方で、それにプラス・アルフアであつては、私が先ほど申し上げました飢餓輸出の形になつて来るのであります。二十六年度におけるアメリカあたりからの鉱石、石炭の輸入実績を調べてここに持つておりますが、それらをながめて見ましても、最近の輸出は少し行き過ぎのように私は見受けられるのであります。そういたしますると、私の一番心配しておりまするような鉄鋼業だけが繁栄するような方向に進んで行く。いわゆるもろもろの産業の根幹になつておりますそういう工業が、自分の繁栄だけを考えて、当面の方策を立つべきものでなし、まだそれを自由経済だというて、通産省としては放任すべきものではないと私は思う。この点においてもう少し的確に現象を把握していただいて役務賠償なら役務賠償のような、輸入せられた原料だけを輸出して行く、それで引合うなら輸出をやる、それ以外は内地工業の育成ということに重点を置かれて、通産事業を完全な方向に御指導あらんことを切にお願い申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  51. 風早八十二

    ○風早委員 今南委員質問に対する次官の御答弁の中で、あたかも今日本造船の注文がたいへんあるかのごとき意味の御答弁があつたと思う。南委員もこれを了承されたかのごとくに私は受取つたのでありますが、これはいささか事実が——いささかどこらかたいへん違いはしないかと思います。これは次官の所管ではおありにならぬかもしれませんが、今日日本に対する船舶の注文というのは、むしろ逆であつて、ほとんどもう開店休業、七次船も減らされた上に、そのあと全然見通しがつかない。現在船台に上つておるのは、まず二台くらいであるということをわれわれは聞いておりますが、たいへんそこに認識の違いがあるように思いますが、その点はどういうことになつておりますか。
  52. 首藤新八

    ○首藤政府委員 輸出用の船舶が、最近一時よりも相当減つておるということは了承しております。ただ今南委員質問は、鋼材の輸出に関連いたしまして、船舶の問題もあわせて御質問がありましたから、これを一緒にして実は答弁いたしましたので、船舶の輸出は非常にたくさん入つているようにお聞きになつたことと思いますか、現在輸出の旺盛なのは、鋼材そのものでありまして、それが南米その他に相当活発に輸出されておるのでありまして、輸出用船舶を受注したことによつて、内地で鋼材が消費されておるという量は、至つて少いということは御意見通りであります。
  53. 風早八十二

    ○風早委員 これはついででありますが、この造船の問題はやはり日本の鉄鋼業の問題にも至大な関係がありますから、もう少し確かめておきたいと思います。一体政府が今日本造船業をほんとうに育成というか、とにかく造船業を盛り立てて行くという政策、方針をとつておられるかどうかということを、私どもは非常に疑問に思います。これは最近ボロ船を盛んに向うから押しつけて買わされておる。日本の鉄鋼を使つて日本造船をやる、これこそが日本産業の育成であると思いますが、そうでなくして、開店休業せざるを得ないように向うからちやんと売りつけられる。しかも非常に船齢のおそろしく古い船が続々と売りつけられる。この間の絹笠丸のことは、これは新聞にも出ておりましたから省きますが、あれも船齢が二十七年。ところが最近私どもが聞きました、これは実際の現場の人から聞いたのでありますから間違いないと思いますが、旭汽船で東丸というのを買つております。これはイースタン・プライドから買つております。ところがこれなどは一九一一年の建造にかかるそうです。でありますから、普通償却年限は二十年として、これは二度くらい償却をするような古いものであります。これをまた相当いい値で買つております。一億五千万円で買つておる。ところがこれに対して一億五千万円くらい新たに出さなければ、実際荷物が積めないというような状況だそうです。なぜこういうことになるかというと、つまり船を全然見せないで、書類だけでこれを売りつける、こういうような線が出ているのです。他面私どもは、またこれを裏づけるように、最近東日本重工業で首切りが二千名——これは主として横浜です。ですから造船に違いない。つまり朝鮮の問題が大体片づいて、この辺に来ておつた外国船の修理関係が閑散になるのかといいますと、それだけじやない。造船そのものがまるで閑散である。そうして大体八大造船会社以外のものは、石川島のようなところにしましても、これはほとんどもう問題にならないというような、非常な危機に今直面しておるように聞いておるわけです。この東日本重工業でも西日本あたりでも、つまり八大造船の中に入るものでも、広島というようなところは、これは二級に落されて先はわからない、こういうような状態であると聞いておるわけですが、そうでありますと、これは日本の鉄鋼業にとつて——それは輸出があると言われますが、厚板で行けばまだいいけれども、インゴツトのままで送られるというようなことにもなるし、てんでそれは話にならぬ。ほんとうに健全なる国内市場というものを育成するゆえんじやないと思うのです。これは通産当局とされても、日本造船政策というものに対する見解をやはり堅持されなければならぬと思いますが、どういうことになつておりますか。私どもが結果から見ますと、これはさんたんたるものになり行くのではないかと考えられるわけでありますが、いかがですか。
  54. 首藤新八

    ○首藤政府委員 造船に対しましては、御承知通り運輸省が所管省でありますから、運輸省の方で対策は当然考究されておると思います。但し御質問のように造船業、いわゆる船舶そのものが日本の大きな基礎産業であるという点には一点間違いがないのでありますから、政府といたしましても当然この産業の指導育成には格別の考慮を拂うべきだということは、これまた議論の余地はないと思います。ただしかしながら、それだからといつて、このまま放任していいかどうか。少くとも現在の造船業もできる限り企業の合理化をやつて、そうしてコストを安くする。そうして最近やや下り坂になつておりまするところの買船の発注等が続々として受注できるところまで持つて行く必要があるのでないか。これはひとり船舶のみならず、あらゆる産業についても同じことでありまして、この際何としても緊急にとるべきものは重要産業の合理化である。原価をできるだけ安くすることである。かような方針のもとに、すべての産業に臨むべきである。かくすることによつて、船舶の方におきましても原価がかなり安くなりますれば、若干停頓しておりますところの船舶の引合いも、また再び増加して来るであろう。また同時に現在の船価では採算上非常に危険であるけれども、これが相当低下するということになりますれば、また国内用の船舶も再び建造の余地が出て来るのではないか。そういう余地のできるような態勢を整えることが、現在最も緊急な対策だというふうに考えておるのであります。
  55. 風早八十二

    ○風早委員 ちよつとその点でもう一点だけ。コストを下げることはきわめてけつこうでありますが、しかしその下げ方にもよるのでありまして、大体今新品はトン当り平均十四万円と言われておるやつが、七次船の單価トン当り十一万五千円で売り渡しておるというような事実になつておるわけです。その結果はやはり鉄鋼に対する圧迫になつて来る。どうしても鉄鋼のコストを下げる。コストが事実下ればいいわけでありますが、電力その他の関係で、なかなかそうは行かない。こういう関係が出ておるわけでありますから、だんだん下ヘ下へと行つて、結局労働者の方へ非常な大きな影響が與えられるという立場から、われわれはこういう非常な不当な輸出ということは、はなはだ迷惑千万だろうと思うのです。こういうことは、鉄鋼業の所管の次官とされても、やはり相当これに対しては警戒、注意をしていただきたい、こう考える次第です。その点どうでしようか。
  56. 首藤新八

    ○首藤政府委員 政府も風早委員の御意見に同感であります。従いまして、先ほど来申し上げておりまするごとく、基礎産業の合理化をできる限り促進しまして、そうしてその基礎産業のコストをできる限り引下げまするとともに、関連産業に対しましても自然に原価の低下するような方針をもつて行きたい。これが現在御審議を願つておる企業合理化促進の目的であります。同時にこれは一つ対策でありまするが、これらの別個の対策も目的はまつたく同一でありまして、あらゆるケースを通じて原価の引下げを可能ならしむるような対策を講じて行きたい。そうしてできる限り労務者にしわ寄せのないような方法をもつて行きたいということを念願しておるのであります。
  57. 風早八十二

    ○風早委員 とにかくそういうしわ寄せが外から来るわけでありますから、その点をひとつ御警戒を願いたいと思います。  そこで本論に入りまして、本法案に関して御質問いたしたいと思いますが、前回の質疑で、大体この法案によつて企業合理化への一つの補助が行われる結果、この平和産業の発達奨励という立場からしまするならば、これが今の基本的な経済政策とも関連して、やはり軍需生産一辺倒になりはしないか。そちらの方へ多分に偏重するという危険がないかという点について、中村委員にも大分お尋ねをしたし、通産当局にも御答弁つたわけでありまするが、その点いまだに非常にわれわれとしてははつきりしない。答弁は満足できなかつたわけであります。大企業と小企業との関係におきまして、やはりこの法案が大企業に結局有利であるというのは、この補助金の基準を見ましても、とてもこれは大企業でなければ、——相当の資金があり、またその技術的な陣容も整えておかなければ、補助金の対象にならぬというようなことでありますから、この点も事実そういうことのできない、中小企業にこそ補助金が必要であろうと考えるのであります。そういう点についての格段の保障がないという点で、私どもは非常に不満足に思つておるわけです。これは全体を通ずる問題でありますから、まだあとで出て来ると思いますが、ここで第三に私の補足したいことは、これらの企業合理化の促進によりまして、労働條件というものがどういうふうになつて来るかという点であります。その点では、もちろん所管外だから関係ないと言われるでしようが、それでもやはり問題は一つである。われわれとしては十分納得ができないわけです。この点で若干質問をしてみたいと思います。  大体日本の今までの経済の発達の通例の型からいいますと、日本では御承知のように機械化の意味での、ほんとうの労働の生産性を高める意味での合理化というものは、根本的には奨励はされないのみか、しばしばこれは否定せられておつたわけです。これは特に科学技術に関係のある人は十分に身をもつて体験しておられることと思う。そこに日本の非常に高度に発達したといわれながら、日本の資本主義の非常な弱点があつたと思う。そういう点で、これは正しい意味で合理化するといわれる、労働の生産性を高めるという意味におきましては、そうしてコストを低めるという意味におきましては、これはきわめてけつこうなことなんです。われわれはそういう意味におきまして、もちろん抽象的には賛成なんです。しかし現実に今の他の諸條件をそのままにしておくならば、労働者の上にどういう影響が来るか、この点を拔きにして、ただ企業の合理化といつた場合に、もしもコストが下りましても、その下つた分は全部ただ利潤の引上げになるだけであつて、労働者の方は何らの恩典にあずからない、こういうことにならざるを得ない。そういう点については、一体通産当局とされては、所管外にしたところで密接に関係がある問題でありまして、これについては考えられたことがあるか。考えられておるとすれば、どういうふうに考えられ、かつ処置されようとするか、この点をお尋ねいたします。
  58. 首藤新八

    ○首藤政府委員 企業合理化即原価の切下げでありますが、これには幾つかの方法があると思います。たとえば設備を改善して非常に高能率化する。さらにまた労務者の能率を非常に引上げる、あるいはまた労務者の賃金をある程度引下げるというふうな幾つかのケースがあると思います。しかしながら現在の日本の社会情勢から見て、労務者の賃金を引下げるということは至難だ、また同時に能率を急速に引上げるということも困難だ、従いまして残るところは設備の改善をできるだけやつて、そうしていわゆる設備による高能率、そうしてそれによるところの原価の引下げ、これが一番達成しやすい方法だと考えておるのであります。ところが設備の改善をすることによつて労務者のいわゆる数がある程度圧縮されるんではないかというような御不安があるかと存じますが、政府はそれとはまつたく反対な考えを持つておるのでありまして、現在の高価格では輸出が不振である、あるいはまた国内のその他の産業にまわしましても、いずれもインフレ的な価格になつて輸出を阻害する、そこでこの際設備の改善によりまして、この面からでも相当大幅な原価を引下げるごとによつて需要が急激に増加するであろう、増加させなければならぬ。輸出もむろんでありまするが、国内の消費も全部の消費を増大せしめる。そうしてそれによつて設備を改善して労務者の方には何らしわ寄せをしないという方針をとることが、一番日本の国情に合う適当なる対策だという方針を続けておるのであります。従いまして合理化の目的はあくまでも原価を安くし、そうしてそれによつて生産を向上する、輸出を向上する。そうして国内経済の自立を一日も早く達成するということが目的でありまするし、御指摘のように労務者にしわ寄せするような点はないのみならず、むしろ労務者のために非常なプラスになるであろうということを目的といたしておるのであります。     〔中村委員長代理退席、高木委員長代理着席〕
  59. 風早八十二

    ○風早委員 労務者の方に負担をかけないのみならず、プラスさせるつもりだと言われますが、実際問題として考えていただきたい。これは今の政府の労働政策といいますが、労働者の問題に対する全体の態度のみならず、個々の実例を見ましても、なかなか今政務次官が考えておられるようなふうになつておらない。まつたくその反対なんである。これは生産の向上ということはもとよりだれしも否定するものじやありません。生産の向上は最も大事なことなのです。しかしながら実際に生産の向上ということをただとるならばそれはまだたくさん余地があるわけです。これは労働者の條件を少しよくしただけでも生産の向上はうんとできる。反対にもし労働者の條件が悪くてストライキでもやられるということになれば、これは石炭だけでも一日にすぐ何万トンとすつとんでしまうわけであります。そういうふうな状態にまで労働條件が引下げられているという現状がある。これに対していろいろ要求もあるわけですが、それが人事院の裁定の線までも望むことができない。それ以外には何らもう抗弁の余地がない。つまり争議権、団体交渉権そのものを奪われている公務員などにとりましては、人事院の裁定ということが最終のもの、それ以外に何らたよるところはない。そのために裁定がつくつてあるのだけれども、その裁定まで行かぬのに抗弁する権利を奪われている。その公平なる裁定ものまないというのが大体政府方針である。しかしながらこれは公務員に対してだけではありません。今日の労働政策が全部そうなつている。労働基準法というようなものはまつたくこれを改悪という前に、今現に改悪された状態で動いておる。こういう状態のもとに私はお尋ねしておるのであつて、そういう点でただあれしないつもりだ、労働條件には響かないつもりである。プラスさせるつもりであると言われましても、初めからそれは実際が伴わない。これは今までの実例を見ますとはつきりしておる。労働時間を短縮することはできますよ。機械設備を改善すれば非常に短縮できる。しかし短縮できるからといつて、労働者の実際に働く労働時間を短縮するわけじやない。それだけはつまり浮かぶわけです。そういうものをどこへ持つて行くか。これはただ利潤の増強に持つて行くだけである。おまけに人がいらなくなりますから失業と来る。失業者に対してまた対策がない。こういう條件をにらみ合せて、それに対するある保障を伴いながらこの問題が出ないと、これはにわかに生産の向上といいましても、かえつて生産向上自身からいつてもあふりが来る危険もありますし、また向上されてもその収益というものは全部もうけの方へ行つてしまつて、労働者には来ない。こういうふうなことになる。ですからただただ資本家の立場——立場にのみ立つとは言われませんけれども、そういうふうに帰着したのでは、これは問題だと思うから、そういう点で私どもは今まで詳細な実際の調査研究にもよりまして、炭鉱で実際に合理化が行われる。今までの切羽なり運搬設備なり、そういつたものを機械化し、あるいは機械の改善をするというようなことで、能率が上る、そうするとそれがちつとも労働者の利益にならないのみか、かえつて首切りがふえる。これは私は自分で実際に当つて研究したところであり、また日本鉱業協会あたりの研究調査とも照し合せて出したことがあるのでありますが、飯塚炭鉱でかつて実際合理化をやりましたが、支柱の合理化、運搬の機械化、坑道をいろいろ集約する、坑口や切羽を直すというようなことをいろいろやりました。その結果わずか三年ほどの間に採炭夫一人一日当りの出炭能率が一・四八トンが五・一二トンと何倍かに増大しているわけです。ところがそれによつて採炭夫が二千七十五名がらわずか三百五十七名に減つているわけです。そういうふうに失業がどえらく出る。失業の対策がちやんとある前提であれば、それが伴えば意味をなす。もちろん失業者をこしらえたのじや意味をなさないのでありますが、失業者をこしらえても、それに対してちやんと手当が用意されているというのであれば、これはまたおのずから話は別なんだけれども、そういうこともあり得ない。むしろ人をふやしてその方の費用を削る方が、その場合においては若干の機械に対するコストはかえつて安上りである。こういうふうなことなのです。こういうふうな事実の例はもう無数にあるわけです。これは紡績でも、例の小馬力の誘導電動機を採用したので、大紡績工場ではたいへんな失業者がでてきた。そういうようなことがやはりありますから、われわれが今回の場合においても特にこの点に注目をするわけでありまして、そういう点についてはおそらく今まで通産当局としては、何ら厚生省なり労働省なり、あるいは大蔵省なりと交渉なり保障なり、何ら話合いはなかつたわけです。今回もおそらく提案者側においてもそこまでの余裕はなかろうと思う。そういう点は今度は提案者になお念のため御答弁つておきたいのでありますが、そういつた点について実際考えられたことがあるかどうか、これをひとつ率直に御答弁願いたいと思います。
  60. 中村純一

    中村(純)委員 先ほど通産政務次官からお答えを申し上げましたように、この法律の眼目は、ごらんの通り技術並びに機械設備の面における改善、能率の向上ということが目的となつておるものでありまして、これによつてわが国の企業が若返り、さらにまた発展を重ねて行くということを目標といたしておりますし、またさようになることを確信をいたしておるのであります。従いましてただいまお話のごとく、この機械設備の改善等に伴つて、ただちにこれによつて失業者がふえるとは考えられないのであります。この企業能率の向上に伴いまして、わが国の企業が発展して行くことによつて、また労働市場も開拓されて行くという循環性も当然考えられるのであります。お話のようにただちにこれによつて失業者が増大するとは考えられないのであります。むろん労働政策一般といたしまして、私ども提案といたしましても、また政府といたしましても、先ほど通産次官の答弁のありましたことく、わが国の労働生産性の向上、また労働者の生活の向上、安定ということにつきましては、極力努力をいたしておるわけであります。今後ひとりこの法律の施行の問題といわず、わが国の経済全般の状況とにらみ合しまして、必要なる労働対策を講じて行くことは当然のことであろうと考えます。
  61. 風早八十二

    ○風早委員 提案者の側では、この問題を扱われる場合に、労働者のことを具体的に考えておられないということは、すでに明らかでありますから、その点はこれ以上は繰返しません。われわれはそういうふうに了承せざるを得ないのであります。口でいくら何と言つたつて、事実が許さないのだから、その事実を実際是正して行くだけの誠意を示すような手が打たれておるということを示されない限りは、どうにも信頼できないわけであります。そういつた点について何度お聞きしても同じような御答弁でありますから、この点はこれで打切りたいと思います。  もう一つ法案の十四條でございましたかに、報告及び立入検査の規定があるわけです。これは今までいろいろな法案でこういう問題がよく出来てるわけです。私どもがこの委員会で記憶しておるものでも、たとえば火薬類取締法案でありますとか、あるいはまたこの前の高圧ガスの場合でありますとか、ああいう場合にいろいろな名目で報告、立入検査の條項が入つているわけです。でありますから、これについては今までたびたび私どもの見解は述べておるわけです。だからあまり詳しく申し上げたくないわけでありますが、その点が結局一つの官僚統制強化というふうにならないかという点でありまして、こういう点についてはどういうふうなお考えを持つておられるか、提案者として御答弁いただきたいと思います。
  62. 中村純一

    中村(純)委員 この十四條に規定されておりますることは、この法律にありますごとく「この法律の適正且つ円滑な実施を確保するため必要があると認めるときは」云々という前提がついておるわけであります。これは申し上げるまでもなく、この法律の適用を受けまする企業におきましては、種々のいろいろな恩典と申しまするか、特典が與えられるわけであります。従いましてこの法律の適正な実施を確保いたしまするためには、やはり必要なる検査は行わざるを得ない。また行う必要があると考えるのでありまして、毛頭ただいま御指摘のような官僚統制と申しまするか、さような趣旨、意味合いのものではありませんし、また運用上も十分その辺のところは注意して運用されるものと信じておるのであります。
  63. 風早八十二

    ○風早委員 だれがやるかという場合に、当該職員がやることになつておりますが、当該職員というのはどういう職員であるか。実際にこの検査に当る、あるいは質問に当る人についてお答え願いたいと思います。
  64. 石原武夫

    石原説明員 当該職員は、他の法律に、明文でありますが、いろいろ各條で規定しております事務を実際に担当しております職員をいうことになつております。
  65. 風早八十二

    ○風早委員 最近新聞あたりをにぎわしている問題として、重大な汚職問題があるわけですが、やはり直接現場へ職員が出かけられるということに関連して、とにかくそういう機会が出て来るということは、これは争われない事実なのであります。そういう点は、これはいくら法文でどう取締ろうが、どうしようもないことであります。直接現場へ入つて来る、会社の中へ入つて来るということは、役所に待つてつて、各業界から来る場合よりも、もつとそういう危險があるということだけは明らかだと思うのであります。これはだれが監督するのか知りませんが、そういう点については十分な考慮が拂われなくちやならぬと思うのです。そういう点は提案者として、あるいは通産当局として十分考えられたことでしようが、海産当局からお答え願いたいと思います。
  66. 首藤新八

    ○首藤政府委員 最近の汚職事件を引用いたしまして、この取締りに対する対策を別個に考慮しておるかという御意見であります。しかし汚職事件は例外的問題でありまして、官吏がそれぞれ服務紀律を完全に守つておりますれば、そういうことは起きないのであります。同時に今後におきましても、この方面は別個にそれぞれ対策をとりまして、さような問題の起らないような措置を講じて行きたいというふうに考えております。
  67. 風早八十二

    ○風早委員 それは管轄が別個であるといつても、問題そのものはやはりそれに関連しておるのでありまして、たとえば会計検査院のような最も公正であるべきところで、もちろん会計検査院の職員としての自覚を持つておれば、問題は起るはずはないのでありますが、実際問題としてこれが非常な饗応その他が問題になるわけであります。行つてビールが出る、酒が出るぐらいはまあ軽い方として、次から次へとそういうようなことが常識になつているというような御答弁が、決算委員会でもあつたわけであります。そういうようなことが常識化しているような状態で、職員が実際に検査に行く、検査の名目で現場に何ぼでも行くことができるわけでありますが、そういう場合にいろいろそういう機会がある。もう少し立ち入つて、それこそこの点についてに考慮があるはずだと思うのであります。まあそういうことはその本人次第というような、大まかなことであつては、いささか無責任のそしりを免れぬのではないかと思うのであります。少くとも提案者としては、もう少し御用意があるべきだと思うのであります。すべてわれわれの申していることは、今の現状、ことに綱紀粛正が大問題になつている現状に即して言つておるわけでありますから、その際にそういう穴をあけておくような印象を與えるようなことでは困ると思うので、私は念を押しているわけです。
  68. 中村純一

    中村(純)委員 綱紀粛正と申しまするか、汚職事件に対する処置方法と申しまするか、これにつきましては、先般来本院並びに参議院のいろいろな機関において審議が行われたことは、新聞等にもごらんの通りであります。これに対しまして、政府といたしましても、十分正すべきは正し、匡正する措置をとつて行く。またこれも新聞で見たことでありまするが、吉田総理大臣からも特段の監視と申しますか、組織をもつてこの種の事件の絶滅を期するということを参議院において声明をされておるやに承知しておるのであります。この法律の立案の趣旨そのものは、先ほど申し上げましたごとく、この法律の適用を受ける者が、法律による恩典を受ける、従つてその間に十分適正な措置が講ぜられておらなければならない、その必要からいたしまして、この種の規定を挿入したわけでありまして、ただいま御指摘のようないわゆる綱紀粛正の問題につきましては、政府全般といたしましても、全面的特段の措置を講ずる決意を持つているように承知いたしております。私ども提案者といたしましては、それに信頼をいたしておる次第であります。
  69. 風早八十二

    ○風早委員 これは吉田内閣の重大問題でありますから、ひとつその点は十分に警告を発しておきます。私の質問は多々あつて実は盡きないのでありますけれども、時間の関係もあつて、大体この程度にして打切りたいと思います。
  70. 高木吉之助

    ○高木委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後四時十五分休憩     〔休憩後は開会に至らなかつた