○風早
委員 労務者の方に負担をかけないのみならず、プラスさせるつもりだと言われますが、実際問題として
考えていただきたい。これは今の
政府の労働政策といいますが、労働者の問題に対する全体の態度のみならず、個々の実例を見ましても、なかなか今政務次官が
考えておられるようなふうにな
つておらない。ま
つたくその反対なんである。これは
生産の向上ということはもとよりだれしも否定するものじやありません。
生産の向上は最も大事なことなのです。しかしながら実際に
生産の向上ということをただとるならばそれはまだたくさん余地があるわけです。これは労働者の條件を少しよくしただけでも
生産の向上はうんとできる。反対にもし労働者の條件が悪くてストライキでもやられるということになれば、これは石炭だけでも一日にすぐ何万トンとすつとんでしまうわけであります。そういうふうな
状態にまで労働條件が引下げられているという現状がある。これに対していろいろ要求もあるわけですが、それが人事院の裁定の線までも望むことができない。それ以外には何らもう抗弁の余地がない。つまり争議権、団体交渉権そのものを奪われている公務員などにとりましては、人事院の裁定ということが最終のもの、それ以外に何らたよるところはない。そのために裁定がつく
つてあるのだけれども、その裁定まで行かぬのに抗弁する権利を奪われている。その公平なる裁定ものまないというのが大体
政府の
方針である。しかしながらこれは公務員に対してだけではありません。今日の労働政策が全部そうな
つている。労働基準法というようなものはま
つたくこれを改悪という前に、今現に改悪された
状態で動いておる。こういう
状態のもとに私は
お尋ねしておるのであ
つて、そういう点でただあれしないつもりだ、労働條件には響かないつもりである。プラスさせるつもりであると言われましても、初めからそれは実際が伴わない。これは今までの実例を見ますとはつきりしておる。労働時間を短縮することはできますよ。
機械設備を改善すれば非常に短縮できる。しかし短縮できるから
といつて、労働者の実際に働く労働時間を短縮するわけじやない。それだけはつまり浮かぶわけです。そういうものをどこへ持
つて行くか。これはただ利潤の増強に持
つて行くだけである。おまけに人がいらなくなりますから失業と来る。失業者に対してまた
対策がない。こういう條件をにらみ合せて、それに対するある保障を伴いながらこの問題が出ないと、これはにわかに
生産の向上といいましても、かえ
つて生産向上自身からい
つてもあふりが来る危険もありますし、また向上されてもその収益というものは全部もうけの方へ行
つてしま
つて、労働者には来ない。こういうふうなことになる。ですからただただ資本家の
立場——立場にのみ立つとは言われませんけれども、そういうふうに帰着したのでは、これは問題だと思うから、そういう点で私どもは今まで詳細な実際の調査研究にもよりまして、炭鉱で実際に合理化が行われる。今までの切羽なり運搬設備なり、そうい
つたものを
機械化し、あるいは
機械の改善をするというようなことで、能率が上る、そうするとそれがちつとも労働者の利益にならないのみか、かえ
つて首切りがふえる。これは私は自分で実際に当
つて研究したところであり、また
日本鉱業協会あたりの研究調査とも照し合せて出したことがあるのでありますが、飯塚炭鉱でか
つて実際合理化をやりましたが、支柱の合理化、運搬の
機械化、坑道をいろいろ集約する、坑口や切羽を直すというようなことをいろいろやりました。その結果わずか三年ほどの間に採炭夫一人一日当りの出炭能率が一・四八トンが五・一二トンと何倍かに増大しているわけです。ところがそれによ
つて採炭夫が二千七十五名がらわずか三百五十七名に減
つているわけです。そういうふうに失業がどえらく出る。失業の
対策がちやんとある前提であれば、それが伴えば意味をなす。もちろん失業者をこしらえたのじや意味をなさないのでありますが、失業者をこしらえても、それに対してちやんと手当が用意されているというのであれば、これはまたおのずから話は別なんだけれども、そういうこともあり得ない。むしろ人をふやしてその方の費用を削る方が、その場合においては若干の
機械に対するコストはかえ
つて安上りである。こういうふうなことなのです。こういうふうな事実の例はもう無数にあるわけです。これは紡績でも、例の小馬力の誘導電動機を採用したので、大紡績工場ではたいへんな失業者がでてきた。そういうようなことがやはりありますから、われわれが今回の場合においても特にこの点に注目をするわけでありまして、そういう点についてはおそらく今まで
通産当局としては、何ら厚生省なり労働省なり、あるいは
大蔵省なりと交渉なり保障なり、何ら話合いはなか
つたわけです。今回もおそらく提案者側においてもそこまでの余裕はなかろうと思う。そういう点は今度は提案者になお念のため御
答弁願
つておきたいのでありますが、そうい
つた点について実際
考えられたことがあるかどうか、これをひ
とつ率直に御
答弁願いたいと思います。