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高田参考人 ガス料金改訂を
申請をいたしました
理由につきまして簡単に申し上げます。
申請は六十四社ございましたが、私は
東京ガス会社の
立場において申し上げたいと存じます。
ガス料金は
認可を要しますところの
統制価格でありますが、これがためには
ガス料金及び
原料炭、及び
コークスの
価格と
一般の
物価との間に、いわゆる
関連の
価格として
均衡と安定が保たれておることが絶対に必要でございます。しかるに
経済情勢の
変動から、この
関連の
価格の
均衡と安定とが今日くずれてしま
つて、現在の
料金安、
コスト高とな
つたのでありますが、それでは
事業経営は困難であるばかりでなく、
公益事業としての
使命達成にも支障を来しますことは明白なことでございます。しかも従来の
ガス料金は低
物価政策の
見地から、政策的にきわめて低く押えられまして、この
企業経営の
立場を十分に考慮されなかつたように思うのでございます。
現行の
ガス料金は昨年の七月に
改訂されたものでありますが、その際
料金原価に織り込みました諸
要素は、
朝鮮動乱以後
発生の
経済情勢の変化によりまして、著しく
変動を来している次第でございます。まず
原料炭の著しい
騰貴に加えまして、
修繕材料費等も大幅に
値上りいたしまして、その他
資産の再
評価による
償却価格の
増血、
固定資産税の
増加等の結果、今日では
料金の適正さが失われておるのでございますが、この中にも特に
原料炭価の著しい
騰貴は非常なる
影響を与えておる次第でございます。もちろん当社といたしましては、この
経済情勢の
変動に即応いたしますために、
設備の
機械化、
生産能率の
向上、
漏洩の低減、
経営管理の
合理化等によりまして、極力
コストが
低下するようはか
つて参
つたのでありますが、なおこの間
コークス等の
副産物の
値上りはありましたものの、それだけでは
原価の上りましたことをカバーできないのでございます。その結果
収益力の不足から、製造、
供給等の
設備の
維持、あるいは更新いたすことが困難となりまして、このままで進みますならば、
償却も十分に行うことができませんし、数年にして
設備及び資本を食いつぶし、かつ
供給能力の
低下と
なつて、公益的な
使命の遂行はまつたく困難な状態に立ち至るのでございます。
かような
理由によりまして、今般
ガス料金の
改訂を
申請いたしたものでありますが、
料金原価の
算定の方式は、もちろん
公益事業委員会が制定せられましたところの
ガスの
料金算定基準によ
つて計算いたした次第でございます。この
料金原価算定の際に、
需要家の
生計費並びに他
産業に及ぼしますところの
影響はきわめて少くするように考慮いたしまして、
企業努力を十分に織り込みまして、
最小限度の
値上げ申請をいたした次第であります。すなわち
料金を
改訂しましても、本社のありますこの
京浜地区の
供給区域においては、
平均二割一厘、それから地方の
供給区域におきましては二割六分一厘の
値上げ程度にすぎないのでございます。
次にこれらの
原価費目並びに
供給規程の改正につきまして少し述べたいと思うのでございます。それで
原価費目の中で、
原料炭の
騰貴がどうかということを申し上げたいと思いますが、
原料費の中で
原料炭が総
原価において占めています割合は、二十五年度の
実績におきましては五七%、
申請料金では実に六三%を占めておるのであります。その
平均価格は、昨年七月の
現行料金の
改訂のときに比べますれば、現在では三七%方
値上りしておりますし、
原料炭の
市況は、
朝鮮動乱発生以来の鉄鋼その他の
産業の活況に伴いまして、
需給の
関係がまつたく不
均衡になりまして、逼迫の度を加えて参りまして、そのため
価格は著しく
騰貴したのでございます。将来においても引続き
市況はますます強調でございまして、
価格は一層高騰するものと考えられるのでございます。それは山元の
生産原価についても、
値上りの
材料としては、あるいは労賃が上るとか、あるいは
資材費、
電力料の
値上りが考えられる。
運賃につきましても、
貨車運賃、
船運賃、
港湾荷役、
はしけ賃等、それぞれの
値上りが予想されますので、そのはね返りは直接
ガスの
料金原価にも重大な
影響を及ぼすのでございます。また最近の電力事情の悪化は、火力発電用
石炭の
需要を一層激増せしめましたので、ひいては
原料炭の
需給関係を逼迫させまして、その
影響するところ、
ガス事業にとりましても楽観を許さない次第でございます。当社は最近の
ガスの
需要の旺盛なる要望にこたえるために、
原料炭につきましては、必要量の確保に最大の
努力を払
つておりますが、国内炭の絶対量がはなはだしく不足いたしており、将来も引続き相当量の不足が予想されますので、今日
価格の著しく高い外国炭にも依存しなければならないのであります。これらの米国炭あるいはインド炭等の外国炭を使いますことは、
コストに
影響する度合いもおのずから高くならざるを得ないのでございます。
副産物の
コークスの
価格は、
現行料金改訂当時と現在と
比較すれば、その
値上率は五七%上
つておりますが、もともと
原料炭一トンから生産されます、得ることのできる
コークスの量は、おおむねその半分以下でございますから、
コークス価格の
騰貴額が
原料炭の
価格の
騰貴額の二倍になりますれば、
原料炭の
値上りは
コークスの
値上りによ
つてほぼカバーせられるのでございます。しかるに今日のごとく
原料炭の
騰貴率が三七%であ
つて、
コークスがその倍額でなくて、五七%では、その比率が一倍半しかならないのでありまして、
料金改訂の重要な
要素がここにあるのでございます。
また次に修繕
材料でございますが、当社は厖大な
発生炉とかあるいは
ガスの精製装置とか
コークスの処理装置等の製造の
設備とか、あるいは銅管、
ガスだめ、メーター等の供給
設備を
使用して、
ガスを豊富、円滑に供給する必要から、また危険の防止、安全保安上の必要からも、不断に絶えざる修繕補修をゆるがせにすることができないのであります。しかも
ガスの供給を断続しないでこれが処置を必要とする現在の実情にあるのでございます。ところがこれらの修繕
材料の
価格騰貴は、
現行料金の定められましたときと現在とを
比較しますれば、その
騰貴率はいわゆる鋼管、鉄管におきましては一七三%、
一般の鋼材におきましても一七一%、セメント一一五%、耐火れんが五一%、鉛二七二%、銅八三%のごとく高率を示しております。
経済情勢の推移によるのでありますが、今後の見通しといたしまして鋼管や
一般の鋼材は目下横ばいでありますけれ
ども、まだまだ先は予測はつかないのでありますし、鋳鉄管も当分変化はございませんし、その他の
材料もなかなか現在ちよつと下る見込みはないのでございまして、従来の
料金原価ではこの費用の増加をまかなうことはとうてい及びもつかなく
なつた状態に追い込められている次第でございます。今回
申請原価に織り込みましたところの
修繕費の、総
原価に占めます割合は一一%でありますが、これは昭和五、六年度における同一の割合の一二%に
比較しますならば、なお低い率で織り込んでいる次第でございます。
次は減価の
償却費でありますが、当社は相当厖大な固定資本を擁しておりますので、常に
資産の
維持更新をはかるため、
資産の公正なる
評価と、これに対します適正なる
減価償却を必要とするのでございます。しかるに終戦後は、
償却もきわめて不十分であつたところへ、昨年の七月に行つた
資産再
評価は、
ガス料金が低いため、
収益力が不足するために、当社の再
評価額は法定額の約七〇%
程度にとどめざるを得なかつた次第でございます。しかも
現行の
料金には
資産再
評価分の
減価償却の増加は織り込まれておりませんので、現状のままにしますならば、
設備や資本をますます食いつぶして、結局
ガスを豊富に円滑に、安全に供給するという当社の社会的な
使命の遂行がまつたく不可能となるのでございます。従いまして
資産再
評価の適正な実施と、これに対応するところの適正な
減価償却の
料金織込みが絶対に必要でございます。
なお当社の現在持
つておりますところの
設備は、これを再建しますとするならば、約五百億を要するのでございますが、かりにこの再建費をここで全額回収いたしたとしても、
減価償却は相当大きいことになるのでありますが、当社が見込んでおります
償却額はこれに比べればまことに少額なものしか入れていないのでございます。
次に
固定資産税について申し上げたいと思います。
固定資産税は、昨年
料金がきめられましたときにはなか
つたのでありますが、その後に起りました新しい事情でありまして、これが
料金原価に及ぼします
影響もまた少くないのであります。なお
需要家の新増設の申込みに対して、
ガスの供給を豊富円滑にするために、製造供給
設備を拡充すれば、これに伴いまして
固定資産税はさらに今後も増加して行くことは明らかなことでございます。
さらに公正報酬のことについて申し上げたいと思います。今日
産業の回復に従いまして、
ガスの
需要が増加して参りましたが、これに伴いまして、製造及び供給
設備の改善、拡充強化をはかりますことは、
公益事業といたしまして社会的
使命の遂行上絶対に緊急なことなのでございます。これまでも
設備資金調達のためには、増資及び社債の発行その他によ
つて努力して参
つたのでありますが、投資市場は自由競争にまかされておりますので、自然
ガス事業のように利潤のきわめて低い
企業には資本が入
つて来ないのでございます。当社は戦災後の整備によりまして、社内の蓄積は非常に乏しくございますし、また収益も少いので、勢い
設備資金は、公正市場の事情から見まして、その調達がなかなか困難な今の状態に
なつております。従来の
ガス料金には公正報酬は認められていなか
つたのでございますが、それでは
資金の調達が不可能であり、
事業は行き詰ま
つてしまうのであります。当社は真にやむを得ない措置ではありまするが、雑
収入によりまして
償却金を少くしまして、最近ようやく二、三期間低率な
配当を行つた次第でございます。これも
資金を得て、次の拡張に充てるということにほかならなかつた次第であります。今後かような措置をなすことのないように、また現在の経済の情勢から見まして、
資金の調達のために一五%
程度の公正な資本土の報酬を
申請いたしましたが、国家融資を認められることが至難であります現状では、むしろこの率では低過ぎるのではないかと思うのでございます。
以上、本
申請をいたしましたやむを得ない事情につきまして申し上げましたが、さしあた
つて需要者の
負担が増加することは、今日の経済の情勢から申しますと、好ましくないことは言うまでもないことであります。しかし現在の
料金では、前申しましたように
事業の
設備が荒廃いたしますし、供給の不円滑を来しまして、
ガス事業としての社会的
使命の遂行は困難と
なつて、かえ
つて需要者各位に迷惑をかける事態が招来すること必至とも考えられるのでございます。つきましては、当社はこれまでも経営の
合理化をはかり、
コストの
低下とサービスの
向上に
努力して参
つたのでありますが、今後とも
設備の改善、作業能率の
向上、
副産物の品位の高度化、販売工作の刷新、
経営管理の改善等、技術面におきましても、また経営面におきましても極力これが
合理化を促進することは申すまでもない次第であります。
今回
申請いたしました
申請料金は
最小限度のものであることを御認識くださいまして、どうか御承認願いたいと思いまして
改訂を申し出た次第であります。以上で終ります。