○神戸
政府委員 自治区と認めました点をよく御了解いただきまして、はなはだ仕合せであります。実は自治区でなくする、完全な行政区にしたい
という強力な要望もありましたけれ
ども、私
どもといたしましては、東京の二十三区は他の大都市の区とは沿革上違
つておるし、急激にこれを行政区にしてしま
つてはおもしろくない。どうしてもこれは自治区として残すのが当然である
という
考えで、特に区民生活に身近なところでや
つている行政を尊重する
ということが、民主政治の上においては非常に大事なものであると認めたのであります。でありますが、他の一面におきまして、東京都の二十三区
というものは
一つの大都市であ
つて、統一性を持
つてやつた方がよく行く
という仕事が相当にあります。たとえば水道とか交通等は言うまでもありませんが、屎尿の処置等の関係、これらにおきましてずいぶんいろいろな問題が出て来まして、各自治区でも
つてできることもありますが、同時にまた全体としてやらなければ、
ほんとうに徹底した糞尿の処分ができない
ということになりますので、区にはただわずかばかり道路の清掃とか公衆便所
という程度のものをまかせまして、
あとの始末は一本でやる方が合理的であると思い、この
問題等もずいぶんあちらこちら実態も
調査しました結果そうなりました。どうも東京都
というところは、自治区だけでやるわけにも行かない、全体として一本でやつた方が能率的にも、民衆にも都合のいい点もある
というふうで、結局私
どもはこの
一つの妥協的な
考えにおちついたわけであります。自治区として区でやらすことも一部の人は認めたのです。しかし同時に全体として統一性を持
つて二十三区をやる、大都市の性格を都に持たした
ということになりました。従いまして人事権におきましても全部を都に持たしたわけではないのでありまして、委任
事務等については、都の吏員を区に割当てることもできる
ということになりましたが、基本
といたしましてはやはり自治区にも区長のもとにいる吏員
というものはあるわけでありまして、人事権は全部ではありませんが区にも一部あるわけであります。
それから
財源の問題でありますが、これも非常にむずかしい問題でありまして、よく調べてみたのですが、区に指定しました仕事をまかなうのにどのくらいいるか、どんな税源が
考えられるか
ということをにらみ合せました結果、区に当てがわれた仕事を支弁するのに小さな税では、
一つ、二つ、三つ合せたところでとうてい十分ではない。どうしても大きな重要な税、
市町村に割当てました固定資産税とか、住民税
というようなものにまで行かなければ十分でない
ということを見出しました。しかしさりとて住民税なり固定資産税なりどちらかを、すべて区に与えることになりますと、これは少し多過ぎる
という結果になりまして、いろいろこれまでの沿革等もありますので、まず住民税
というものを、区の主要な
財源といたしたわけであります。しかし
財源の与え方が普通の
市町村と違いまして、区がと
つて区が自分ですぐ使
つてしまう、と
つて使う
というような完全な自治的な運用ができないようなことになりまして、結局住民税のうちの一定部分
というものを、決して随意でなく、妥協でもなく、法規によ
つて一定部分だけを残しまして、たとえば三割なら三割
というものを残して、
あとの七割
というものは、各とつた区に還付する
ということになりました。
従つて一部は都が二十三区全体の仕事に充つるために、あるいはそれを各区の費用に充てる
といたしましても、どこの区からとつたものはその区に渡す
というのでなく、全体として平均的にあるいは均衡的な働きをさせるためにそれを都にと
つて、都がそれをかれこれ各区に適当に出す。しかしその一定部分、たとえば七割なら七割
というものは、各区からとられたところの住民税
というものを還付する、返してもらう
ということになりますから、住民税
というものが完全な区の税ではなくなります。都がと
つてそれを一定の部分だけを留保して、残りを区にわける
というのですから、完全な区の税ではありませんが、しかしながらきわめて制限された不完全なる区の独自の税です。還付税
というものは御
承知のように、とる方ととられる方とその両方に属するわけです。都の税であり、同時に区の税である。還付されたものを元へもどしてもらうのだからして、ある一面においては都の税であるが、同時に区の税でもあると言えるわけでありまして、きわめてあいまいでありますけれ
ども、それをそれなら全部住民税を還付税にしてしま
つてはどうか、こういう
議論が出て来ましたけれ
ども、しかしそういたしますと区の中でも貧弱な財の乏しいところでは、完全な区税としておいて全部還元される
ということになりますから不利益でありまして、やはり弱いところは全部還元してもらうよりはそれを留保しておいて、財力の強いところも弱いところも一緒にして、平均して適当な方法によ
つて、それを共通な仕事の方に充つる
ということにした方が都合がいい
ということで、どちらか
といえば貧弱な区の方の立場を
考えまして、そのかわりそれだけまたあるいは強力な団体、区の方は少し不利益
というのでありますが、それは二十三区
というものが一体性を持
つている。大都市と同じ性質を持
つている
ということで、しんぼうしていただくよりしかたがない。大都市
という性格が都にあり、同時に区においてはまた自治区としてある
ということで、さようなわけできわめて徹底しないことになりましたが、とにかくある程度自治区としての区を残す。しかしながらまた、都が大都市としての行政は能率的にやり得て市民、あるいは都民の便宜をはかり得る
ということにもなりましたわけで、私
どもの
考え方はそういつた順序できめて来たのであります。どうぞ御了承願います。