○若林海外同胞引揚に関する
特別委員長 ただいま本
委員会におきまして御
審議中の、未
復員者給與法等の一部を改正する
法律案に関しましては、海外同胞引揚に関する
特別委員会といたしましても、過般来参議院の在外同胞引揚問題に関する
特別委員会と、同じく引揚者に対する切実な問題として、その改正につき愼重に調査検討を
行つて参つたのでありまして、その調査の過程におきましては、特にこの
法案の
内容であります復員患者に対する療養期間の延長並びに障害一時金の増額、診療録その他の帳簿の検査等につきまして、多数の意見も出ましたほか、この
法案にありません点、すなわち遺骨引取りに要する経費、及び未復員者の俸給についても増額すべきであじとの改正意見が出まして、ともどもに検討を行つた次第であります。今日この
法律案が本
委員会において
審議されるに際し、この海外同胞引揚に関する
特別委員会における調査検討の際の意見と、その概要とを申し述べますことは、本
委員会の審査の上におきまして、多少なりとも御参考に供する点があるやと存ずるのであります。
本
法案につきましては、参議院の
提案者より趣旨の
説明がありましたものと存じますが、未
復員者給與法という
法律は、元陸海軍に属しておりました軍人軍属で、未復員の者に対しての各種の給與を規定した
法律であります。この
法律に規定されております給與の種類は、未復員者の俸給、扶養家族に対する手当、帰郷旅費、遺骨引取り経費、遺骨埋葬費、復員患者に対する療養期間の延長及び障害一時金でありまして、本
法案はこのうち復員患者に対する療養期間の延長と、障害一時金の増額及び療養の際の診療録その他の帳簿を検査させ、療養を適正ならしめるべく改正しようとするのであります。
本
法案の
内容であります障害一時金につきましては、第十国会以来種々問題となり、愼重に調査検討を加え、改正立案をする運びにまで
なつたのでありますが、諸般の実情により現在まで延び、また療養期間の延長については第十一国会当初より問題となり、数回にわたり
関係当局ときわめて真摯なる
質疑応答を重ね、検討した結果、三年間あるいは必要期間延長すべきであるという結論のもとに、海外同胞引揚に関する
特別委員会においては改正立案に着手し、閉会中も引続き
審議を継続し、努力して参つたのであります。当初はこちらの
特別委員会より改正案を
提出するように予定しておりましたが、参議院との
折衝の結果、あちらより
提出するように
なつたのでありまして、その趣旨も大体同様でありますので、ここにあらためて申し上げることをいたしませんが、この
法案における療養期間の延長につきましては、経済的に恵まれない復員患者に対し、重大なる問題でありまして、現在この療養を受けている復員患者はなお六千六百三十名に上り、しかもこのうちの約九〇%が、本年の十二月二十八日をも
つて法に規定されている療養期間の三年が終るのであります。この患者の大部分は主として結核性疾患の患者。外傷者、精神病患者であり、今後なお相当の期間療養を必要とする者ばかりであります。この
法律による療養を打切られますと、患者は一時金をもらいましても相当期間の療養もできず、どうしても生活保護法の適用を受けて行くほかはないのでありまして、国としてもこれに対する処置に二重の手間をかけ、かつ財政上二重の
負担となるばかりでなく、患者としてもこの法による療養に変更が加えられることは苦痛でありますので、これらの患者よりこの面の苦衷を訴える声はまさに悲痛なものがございます。こういう点を
考えますと、結局三年た
つてもなおらない者に対しては、療養期間を必要とする限り延長することが一番妥当と
考えるのであります。
本改正案によりますれば、療養期間につき現行の療養期間満了後も、引続き療養の必要があると認める者に対して、国はさらに三年間療養を継続することになるのでありますが、三年間と限定せず、必要な期間延長するという意見もありまして、大体従来の計算によりますと、毎年二五%ずつ減
つて行きますところより見ますれば、大差はないのでありますが、結核性の
長期の患者になりますと、かえ
つて限定しない方がよいのではないかと
考えられる点もあります。
次に障害一時金につきましては、厚生年金保険法中の障害手当の倍額の増額と並行して、現行の障害一時金最低八百円から最高一万九千円を、二倍に増額して支給しようとするのでありまして、たとえば一眼が失明した者については七千五百円、最高の両眼が失明した者でも一万九千円であり、はなはだ少額に過ぎると思うのであります。また診療録その他の帳簿の検閲についても、療養を適正にする趣旨においては、海外同胞引揚に関する
特別委員会での意見と同様であります。
なおこのほかに海外同胞引揚に関する
特別委員会で検討しております未
復員者給與法についての改正を要すべき点を申し上げますと、第一は未復員者の俸給の増額についてでありますが、現行は月額千円を支給することにな
つておりまして、現在の経済事情よりいたしまして、あまりに少額でありますので、この増額につき当局とも
折衝を続けて、でき得るならばこの際改正をいたしたいと
思つておりますが、遺族に対する援護との
関係もありまして、この点については結論がいまだ出ていないのであり、結論を得次第改正して行きたいと
思つております。
第二は未復員者が死亡した場合における遺骨引取りに要する経費であり、現行は死亡者一人当り二千二百円でありまして、これは
公務員の旅費規程に準じて、二人につき五十キロを
算定の基礎としております。その二千二百円の内訳は宿泊料が千二百八十円、日当六百四十円、鉄道運賃二百八十円でありますが、今回の鉄道運賃の賃上げにより鉄道運賃は三百六十円に
なつたのでありますから、この値上りによります増額は切り上げつつ百円として、二千二百円は当然二千三百円に増額することが妥当と思われるのであります。これにつきましては当局との了解もありますので、この際これについての改正も同時に行われればという意見もあるのであります。
以上大体において本案に関し、海外同胞引揚に関する
特別委員会においての調査との関連せる点について申し述べましたが、この
法案が本
委員会で
審議の上このように改正せられますことならば、現在療養中の患者並びにその
関係者の喜びはいかばかりかと思われますと同時に、さらに遺骨引取り経費等についても考慮せられて、検討くださればと存ずる次第であります。何とぞこの
法案につきましては海外同胞引揚に関する
特別委員会の意のほどをおくみとりを願い、
愼重審議せられんことを希望してやまないのであります。