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深澤委員 ただいま
議題となりました
連合国財産補償法案に対しましては、
日本共産党はこれに対して反対であります。
本法案は吉田
内閣が一九五一年七月十三日の閣議で決定し、連合国財産補償について平和條約第十五條a項にこれが挿入されているのであります。しかしてその條約の
規定によ
つて、本法案に定める
條件より不利でない
條件で連合国財産の補償をすることにな
つているのであります。このたびの平和條約の締結は、憲法七十三條によ
つて、事後において
国会の承認を求めるということにな
つておるのであります。
従つて国会が承認を與えるまでの行為は
内閣の責任であります。その吉田
内閣が、本法案を
国会に諮ることなく、平和條約の一部に挿入いたしまして、本法案を連合国に有利に修正すること、すなわち
日本にと
つては不利に修正することはできるけれ
ども、連合国に不利に、すなわち
日本に有利に修正することはできないという
ぐあいに、あらかじめ制限をすることにな
つておるのであります。これは明らかに行
政府の立法府に対する越権行為である。
国会の立法権を制限する違憲行為であると、われわれ見なければならないと思います。なおその結果として、
日本の
国会は連合国財産補償に関しましては連合国の有利になるように、
日本国の不利になるように奉仕する道のみが與えられている、こういう立場に置かれております。先日の大蔵
委員会におきまして、民主党の内藤友明君並びに私が大橋法務総裁に対しまして
質問いたしましたときに、大橋法務総裁は、
審議権を制限するのではない、しかし
国会が連合国に不利に
日本に有利に修正したとしても、それは対外的には効力が発生しない結果となるという
意味の
答弁をせられていることによ
つても明らかなように、
わが国の
国会の権限は、
日本国に有利に奉仕するという道がとざされているという結果になると思うのであります。吉田総理が和解と信頼の講和として欣然として調印して帰
つて参りました平和條約には、このように
わが国の国憲の最高機関である
国会の立法権を、金縛りにするような工作が行われているということが言えるのであり事。これがわれわれの反対の第一点であります。
第二の反対の点は、本法案の
審議にあたりまして、
政府はただ一片の表を参考資料として
提出したのみであります。漠然と建物が十六億、動産が八十七億、株式百十四億、預金が一億、債権が五千万円、工業所有権が五十億、合計二百六十九億円が補償の
対象になることが予定されている、という
程度のことが明らかに
なつたのみであります。私は国民も
国会も十分納得し得る具体的な資料を
提出することを切に要望いたしまして、夏堀大蔵
委員長を通じて
政府に交渉していただいたのでありますが、この資料の
提出は
政府によ
つて無視されております。何ゆえに
政府はこれを明らかにすることができないのか。われわれはまことにふしぎにたえないのであります。こういう点につきましても、
政府自体が
国会の
審議権を非常に軽視していると言わざるを得ません。そういう
観点からわれわれは反対するのであります。
第三の反対の点は、本法案の補償の大
部分が英米
関係であります。具体的なことを国民と
国会に発表せずに、大国のみの
部分を優先的に補償するという根拠は一体どこにあるか。大東亜戦争によ
つて日本帝国主義の侵略の犠牲になり、最も深刻な被害を受けたのはアジアの諸国でないかということは明らかであります。この諸国に対する補償をあとまわしにして、いち早く毎会計年度において百億ずつを計上いたしまして、これらの大国の優先補償をするということは、まことにわれわれは理解に苦しむものであります。
第四の反対点は、本法案の補償の根拠についてでありますが、戦時中に国家主義によ
つて行われた敵産処理であるとか、あるいは戦時特別措置等によ
つて受けた連合国の財産の補償に対しましては、当然戦敗国として補償の責、任のあることは言うまでもありません。しかしながら交戦国の戦闘行為による被害の一切を、
わが国が補償するという責任を負うことは、はたしていわゆる和解と信頼の講和と言い得るかどうかという問題であります。戦時中行われた
アメリカ空軍のあの無差別爆撃によ
つて受けた被害というものは、われわれ国民が身をも
つて体験したのであります。その際に一緒に受けた連合国財産の被害の補償を、全部
わが国の国民が負担しなければならないことは、あまりにもわれわれは苛酷であると思います。イタリアの平和條約においてすら、損害補償の三分の二を負担させるということにな
つているのであります。こうように和解と信頼の講和に基くこの平和條約の内容は、決して和解と信頼に基くものでなくて、こういう内容が擬装されているということを、われわれは
指摘せざるを得ないのであります。
こういう
観点から、わが党は本法案に対しまして反対するのであります。