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1951-10-31 第12回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月三十一日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 内藤 友明君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       大上  司君    島村 一郎君       清水 逸平君    高間 松吉君       三宅 則義君    宮幡  靖君       宮腰 喜助君    上林與市郎君       松尾トシ子君    深澤 義守君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君  委員外出席者         参  考  人         (一ツ橋大学教         授)      井藤 半弥君         参  考  人         (旭化成工業株         式会社取締役) 磯部 一充君         参  考  人         (経済団体連合         会理事理財部         長)      内山 徳治君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 十月三十日  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一六号)  米国日援助物資等処理特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第一七号) 同日  未復員者給與法の一部改正に関する請願田中  不破三君紹介)(第五〇二号)  同(庄司一郎紹介)第五四〇号)  未復員者給與法の一部改正等に関する請願(庄  司一郎紹介)(第五〇三号)  在外公館等借入金返済実施に伴う現地通貨の換  算率に関する請願若林義孝紹介)(第五〇  四号)  在外資産の補償に関する請願大森玉木君紹  介)(第五〇五号)  たばこ小売人利益率引上げに関する請願(山  口喜久一郎紹介)(第五四一号)  同(河原伊三郎紹介)(第五四二号)  同(小西寅松紹介)(第五四三号)  同(松永佛骨紹介)(第五四四号)  同(淺香忠雄紹介)(第五四五号)  同外二件(中野武雄紹介)第五四六号)  同外四件(東井三代次君紹介)(第五四七号)  同(田中萬逸紹介)(第五四八号)  同(堀川恭平紹介)(第五四九号)  同外一件(前尾繁三郎紹介)(第五五〇号)  同(有田二郎紹介)(第五五一号)  同(川西清紹介)(第五五二号)  同(前田種男紹介)(第五五三号)  同(田中織之進君紹介)(第五五四号)  同(松澤兼人紹介)(第五五五号)  同(芦田均紹介)(第五五六号)  同(早川崇紹介)(第五五七号)  同(木下榮紹介)(第五五八号)  同(世耕弘一紹介)(第五五九号)  未復員者給與法適用患者に対する療養期間延  長に関する請願川本末治紹介)(第五六〇  号)  同(佐藤親弘紹介)(第五六一号)  同(青柳一郎紹介)(第五六二号)  同(遠藤三郎紹介)(第五八八号)  熊本国税局存続請願川野芳滿紹介)(第  五六三号)  漆器に対する物品税撤廃請願飯塚定輔君紹  介)(第五六四号)  旧軍港市転換法による転換地域の再接收反対に  関する請願宮原幸三郎君外四名紹介)(第五  六五号)  原稿料等源泉徴收率引下げ請願有田二郎  君紹介)(第五六六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人より意見聴取の件  所得税法臨時特例に関する法律案内閣提出  第一〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一二号)  米国日援助物資等処理特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第一七号)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  本日はまず法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては昨旦内藤委員より、公廳会を開いてほしいという旨の要求がありましたが、時日の関係もあり、参考人を招致して意見を聴取することに決定いたしましたので、まず参考人の方方より、本案に対する忌憚のない御意見を拝聴することにいたします。発言の順位につきでましては、委員長に御一任を願います。発言の時間はお一人大体二十分以内でお願いいたしたいと存じます。  それではまず一橋大学教授井藤半弥君にお願いいたします。今一応参考人の方々から御意見を拜聴して、その後に御質疑を願うことにいたしたいと存じます。御了承願います。井藤君。
  3. 井藤半弥

    井藤参考人 一橋大学教授井藤半弥でございます。お招きにあずかりまして、法人税法の一部を改正する法律案に関する意見を述べさしていただきます。できるだけ簡單にそれでは法人税を中心に述べさしていただきます。  御案内通り現在日本法人税というものは、シヤウプ勧告によつてできておるのでございます。シヤウプ勧告は御案内通り法人につきましては、法人擬制説的な考えをとりまして、法人というものは個々人の單なる営利のための集団である。これを独立の経済單位と見ないという考えとつておるのであります。これにつきまして私の率直な考えを申しますと、私は法人のすべてにつきまして擬制説的な考えをとることに対しては、私個人としては反対しておるのであります。結論を申しますと、多数の株主からなるところの大法人につきまして、擬制説的な考えをとらないで、法人実在説的な考えをとる方がいいのではないか。これを税金の問題について申しますと、法人利益に対しては個人とは別個に税金をかける。これは別のものとして税金をかける方がいいんじやないかと申すのであります。別の言葉で申しますと、シヤウプ勧告以前の日本制度の方が、むしろよかつたのではないかと思つておるのであります。これは但し大法人であります。ところが家族寄集まりというような小法人がございますが、これは形式法人形式とつておりますけれども、実質は組合に準ずるものでございますので、これにつきましてはやはり擬制説的な考えをとり、シヤウプ勧告流擬制説によつたところの課税形態をとる方がよいのじやないかと、私は考えておるのであります。これは但し私の意見であります。  そこでそういう私の考えを背景にいたしまして、問題になつておりまする法人税法の一部を改正する法律案に関する私の意見を、申し上げさしていただきます。問題はあまりたくさんありませんが、一番重要な問題は、一般法人税法税率を三五%から四二%に上げる問題であります。これがいいか悪いか。私は結論を申しますと、引上げることは賛成であります。これはこの委員会におきましても、過去数回そういう意見を述べさしていただいたところでございまして、現在もその意見はかわつておりません。なせかと申しますと、この法人税税率を三五%から四二%に上げるということは、その法人立場からいえば確かに困ることであります。どんな場合でも増税というものはあまり感服しない。ところが租税制度の他の方面とあわせ考えますと、これはやむを得ぬのではないか。別の言葉で申しますと、今度個人所得税につきまして、免税点を三万円から五万円に引上げられることになりました。それから家族控除につきましても、三人までは一人について二万円引くことになりましたが、一体基礎控除家族控除が五万円または二万円程度でよいのかと言いますと、これは決してよいのではなく、これは最低生活で一家族たとえば五万円で一年暮すということは、とうていできないのであります。それから家族一人で二万円で暮すということも無理なのでありまして、一方でそういう無理なことを国家財政の必要上やつておりますので、そこで負担能力のある法人におきましても、税金をたくさん負担してもらうということが、私は当然じやないかと思つておるのであります。それのみならず、現在の日本個人所得税でありますが、これは何といつても大衆課税でありまして、最近大蔵財務協会の発行いたしました財政金融月報ですか、あれを資料として私ちよつと算定してみたのでありますが、これは個人所得税で、申告納税の分でありまして、昭和二十五年度の申告納税者数が四百三十万人ありますが、そのうち二十万円以下の人が八三%であります。二十万円と申しますと、昭和十年ごろの貨幣の価値で言えば一千円以下であります。昭和十年ごろの第三種所得税すなわち個人所得税は、千二百円以下が免税であつた。それと照し合せますと、現在は所得税についてもみな大衆課税であります。だからそういう大衆課税をやつておる際でございますので、負担能力のある法人が、少し税金を重く負担していただくということは、私は日本税制全体を考えまして、当然じやないかと思うのであります。もちろん市町村民税法人割をも考慮に入れての話であります。そのほかに今度の改正案を見ますと、一部の法人でありますが、法人について特別償却が認められております。すなわち特定重要産業が取得する特定機械などにつきまして、取得した年に取得価格の二分の一の特別償却を認めるという、非常な恩恵を與えておるのであります。一方で税率を上げておりますけれども、一方でこういうよう恩恵をも與えておるのでございますので、私は税率引上げは当然じやないかと思うのであります。その他納期について便宜を與えるとか、いろいろございますが、これはまた一切手続に準ずることでございまして、私はこの案にみな賛成でございます。そこで委員長のお許しを得まして、今回の改正法案とは直接関係はございませんけれども、現行日本法人制度につきまして、卑見を申し上げさしていただきたいと思います。もちろん二十分以内で終るつもりでございます。そこで現在の日本法人税制度でありますが、これはさつきから申しております通り、また申すまでもなく皆さん案内通りシヤウプ勧告基礎としたものであります。それでおととしシヤウプ勧告による税制改革ができましたときには、大体シヤウプ勧告に忠実に準拠しておつたのであります。そこでいろいろ理論的にも問題はありますが、かりにシヤウプ勧告前提とすれば、あれを忠実にやつておりました。ところがことしの春の国会あたりからいろいろなことが行われておりまして、これが大分乱れて来たのであります。私は現在日本国税制度のうち、理論的に申しまして一番問題の多いのは、法人税制度じやないかと思うのであります。そこでこのシヤウプ勧告というものは法人擬制説をとる。法人擬制説をとれば、税金をとる場合はどうかというと、法人というものは結局は個人集まりなんだから、法人のもうけは個人所得の中へ繰入れて、そして個人税金をかけるということを究極の理想としておることは、皆さん案内通りであります。ところがシヤウプ勧告でこの方針が一貫しておるかというと、事実は一貫しておらないのです。ということは、やはり法人税もかけております。そうしてまた個人配当された場合には、所得税をかけております。いわば二重課税を、やはりやつておるのであります。しかしながら二重課税は気の毒だというので、配当の二五%を個人所得税から引くということをやりまして、いわば二重課税の緩和をやつておるのであります。これはもちろんシヤウプ日本の国情を考えまして、こういうなまぬるい方針をやつたのであります。ところがこれについて私数字的に計算いたしますと、どうもりくつに合わぬところがあるのであります。それは今度の改正法についても、この点は手を加えておられませんし、それからおととしからずつと同じ欠点があるのであります。それをきよう数字によつて申し上げます。それはどういうことかと申しますと、シヤウプ勧告、すなわち日本の現在の税制におきましては、結局法人利益というものは個人利益だという考え、そこで現在日本法人利益がかりに百円ございますと、百円に対しまして現在は三五%、すなわち三五円の税金をとります。これから私が申し上げます数字改正の案の数字でございます。それが今度は百円について四十二円まず法人税がとられる。そこで残りの五十八円を全部個人配当する、そうすると五十八円に対しまして、個人累進税がかかります。だからして個人單位で見ますとどういうことになるかというと、百円の法人利益があつた場合に、法人税として四十二円拂う。それから残りの五十八円に対しましては個人のところで累進税がかかる。だからこの二つを合計いたしましたものが、その個人負担する法人利益に関する税額となると思うのであります。ところが次のような不合理が現われて来るのであります。個人所得税税率計算——すべて改正法案によつたものでございます。現行のものではございません。今出ております改正法案によつたものですが、それはどういうことかと申しますと、個人所得税基礎控除その他の事情免税なつ階級、いわば一番貧乏な階級は幾らかと申しますと、今言つた法人個人を通算いたしますと、四二%の税金がかかります。そのわけはあとから申します。結論だけここでは申しておきます。四二%、ところがそれよりも金持ちの、基礎控除を突破すること八万円以下のものはどうかというと、三九・一%、かえつて税率は軽くなります。それから八万円を越えて二十万円以下のものはどうかというと四二%、以下累進税なつております。ところが御注意願いたいことは、八万円以下のものは三九・一%になる。それよりも貧乏の基礎控除以下のものが四二%になる。この点はいわば累進の逆でありまして、逆進税なつておるのでありまして、いわば貧乏のものほど重い税金がかかるので、反社会政策的な傾向が現われておるのであります。なせこうなるか。これはもう解読しなくても皆さんおわかりのことと思いますが、まず基礎控除以下のものはどうかというと、法人利益百円に対して法人税を四十二円拂います。四十二円かかりつぱなしで個人所得税がかかりませんから、四十二円だけかかる。ところが今度はそれより金持ち基礎控除を突破すること八万円以下のものは、なぜ三九・一%になるかというと、こういう計算になるからであります。それは法人税は確かにこの人も四十二円かかります。ところが八万円以下のものに対する個人所得税改正税率は二〇%、だからして二〇%の個人所得税がプラスかかるはずなんです。ところがこの人は個人所得税を拂いますので、どういうことになりますかというと、配当金の二五%を個人所得税から引くという制度があるのであります。すなわち五十八円に対しまして二〇%の個人所得税とつて、それから配当金の二五%を引くのだから、差引五%たくさん引いてもらえるということになるのであります。そこでそれを通算いたしますと、さつき申しましたように、八万円以下のものは三九・一%になるのであります。それから八万円と十二万円の間のものはなせ四二%になるかというと、八万円と十二万円の間のものは個人所得税が二五%、それから配当金から引いてもらう割合がまた二五%、差引ゼロというのでありまして、四二%になるのであります。もう少し上のところを申しますと、今は八万円から十二万円まで申しましたが、今度は十二万円から二十万円までのところはどうなるかと申しますと、税率は今言つたよう二つを通算して合計いたしますと四四・九%、二十万円から三十万円のものは四七・八%、それから三十万円から五十万円のものは五〇・七%、五十万円から百万円のものは五三・六%、百万円から二百万円のものは五六・六%、二百万円を越える部分につきましては五九・四%、こういうようにずつと累進税にはなつておるのでありますが、さつき申しました八万円のところだけがむしろ低くなつておるのであります。これは私は現行制度欠陷と思うのでございまして、もし擬制説で貫くならばこれは修正しなくてはいけないと思います。それではどうしたらいいか。私はその対策といたしまして、次の二つの案のどれか一方をとればいいと思うのであります。その一つはどういうことかと申しますと、現在個人所得税をかける場合に配当金の中から二五%を引いております。あの割合個人所得税累進税最低率と同じにする。こうすれば今言つたよう欠陷がなくなるのであります。たとえば具体的にいいますと、個人所得税累進税最低率が今度の改正案でも二〇%、そこで配当から引くものを二五%から二〇%にする。そうすれば今申しましたよう欠陷がなくなります。それが一つやり方、それからもう一つやり方イギリス式法人課税方式をとりまして、今申しましたよう個人所得税基礎控除において免税となる階級、ああいう人たちだけに限りまして、あの四二円の法人税あとから拂いもどしをしてやる。そういうことをすれば、今言つたよう欠陷がなくなるのであります。私はいずれか一つをとるべきではないかと思つております。これが一つ欠陷なつておる。  もう一つはこの前の国会におきまして、法人累積積立金に対する二%の課税をやめました。あれはシヤウプ勧告で非常に苦心したものでありまして、法人個人経営企業との負担の均衡という立場から、こういうことをやつたのでありますが、あれを中止したということは、少くともシヤウプ勧告をいいといたしますと、その精神に反するのであります。それからもう一つの問題は株式讓渡所得でありますが、株式讓渡所得は、これは個人にまとめてそれから累進税をかける。ところがこの讓渡所得を把握することが困難だということで、これがうまく行われておりません。しかしながら讓渡所得個人所得税をかけないということは、これは大きな落し穴でありまして、これはイギリス租税制度における欠陷として多くの人たちが指摘するところで、それがわが日本にも行われておるのであります。そこでその代案といたしまして、一部の人々の間では有価証券移転税をかければいいではないかという案がありますが、結論を申しますと私は反対であります。なぜかと申しますと、有価証券移転税富裕税がかかります。ところが個人株式讓渡所得に対して税金をかける場合は、当然累進税をかけるべきでありますから、もしシヤウプ勧告がいいとするならば、この有価証券移転税をもつて、株式讓渡所得に対する累進税にかえるという説はよくないと考えます。こういう点が私は検討を要する点ではないかと思うのであります。これはいずれもシヤウプ勧告前提とした日本租税制度根本精神前提としての話であります。そこでそれを帳消しいたしまして、日本租税制度シヤウプ勧告ということを離れて、それではどうしたらいいか。それに対する私の意見さつきも申しましたように、法人と申しまてもいろいろあるのだから、大法人については実際的な考えをとれ、それから小法人につきましては組合課税の方法をとりまして、法律上は会社でありましても、会社と認めないで個人にまとめて課税する。こういうふうにすればいいのではないかと思うのであります。現に最近は会社が非常にふえております。今いただきました資料にも一昨年十七万だつたのが、ことしは二十三万にふえております。これはある意味におきましては非常にけつこうなことでありますけれども、他方から申しますと、これは税金が安いからなのです。これらは会社といつても実は会社でなくて個人経営なのでありまして、こういう小法人には個人経営並課税をする。別の言葉で言うならば、法人擬制説に準拠した課税をする、こういうふうに法人二つにわけて課税をするのがいいのではないかと考えております。但しこれは私一個の意見でございます。これをもつて私の意見を終ります。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に旭化成の取締役磯部一充君。
  5. 磯部一充

    磯部参考人 私は本日は日本化学纎維協会総務会の一員として選ばれて参つたものであります。法人税率が三五%から四二%に上るという問題につきまして、今先生方からお話がございましたが、われわれの企業が今どういう現状にあるかということを認識していただくということが、この税率引上げの問題に非常に大きな関連があると思います。と申しまするのは、御承知の通り戰争中機械をスクラツプとしてある程度供出し、また爆撃を受けた工場もございます。従つて戰争中はわれわれ纎維業界補修資材もなしに、非常に苦境に陷つたのでございます。同様に内部保留はもちろんなくなり、その間配当もなくなり、ようやく終戰を迎えましてほつとしたという現況でございます。それでは終戰後はどうしたかと申しますと、さつそく復元にかかりまして、相当古い機械設備ではありますが、それをようやく復元して最近相当大量輸出方面に活躍をしておりますが、戰後ようやく復元した機械でありまして、その機械は必ずしも新式機械ではない。どうにか動く程度までにしたという状況でございます。従つて外国、たとえばアメリカ、ドイツ、イタリアというふうな諸外国機械と比較いたしますと、残念ながら非常に劣つておると申さなければならないと思います。ところがようやく復元したのは、新式機械でなくて旧式の機械つたのでありまして、それをどうにか動ける程度までにしたという状況でありますから、それを今度は世界の輸出市場で争うということになりますと、やはり新しい機械にかえて行かなければならぬ。そうしてコストの引下げも行わなければならない。それにはどうしても社内保留を、ある程度行つて行く必要があるということになるのであります。ところが世上いわゆる糸へん景気と申されまして、われわれの企業が非常にもうかつておるかのよう考えられておりますけれども、残念ながらそういう新式機械をどんどん購入するというほどの状況では、決してございません。その証拠には各企業体とも相当の借金をかかえておりますが、残念ながらそれを拂つておりません。そうして新しい機械設備、たとえば連続紡糸とか合成纎維設備だとか、そういうふうなものを買う、あるいは研究して行く費用も決して十分ではございませんので、各社ともそういう方面の金の出所——現状よう金融逼迫で、設備資金の借入れは非常に困難な情勢でございます。従つてそういうふうな方面で伸びるためには、やはり内部保留が最もほしいのであります。ところが残念ながら現在三五%、及びそれに附加税もかかつております。附加税と申すとおかしいのですが、事業税及び固定資産税——これは翌期においては損金に経理されますけれども、絶対額としては一応現金として出て行くわけであります。そういうふうに現在でも十分な内部保留をしてどんどん合理化をはかつて行くことは、残念ながら資金的になかなか困難な情勢にある。そういうところへさらに三五%から四二%に上げて行かれるということは、われわれはますます合理化の困難を感ずるわけでございます。それと三五%から四二%にしますことについても、いろいろ事情がございまして、その税率上つた分だけただちに消費者に転嫁できればけつこうですが、そういう七%からの大幅な税金をただちに消費表に転嫁できるかどうか。またこれは日本だけ上つたわけでありますから、輸出市場において消費者に転嫁させるということは不可能でございます。ところが日本市場においてでも、それだけのものを消費者に転嫁させることができるかどうか、疑問だろうと思います。そうするとただちに七%が響いて来るわけでございますから、たとい引上げられるとしても、内部保留の問題と別個に考えましても、大幅な引上げではなくして、小幅な引上げを順次行つていただく方がいいんじやなかろうか。一般的の考えといたしましてそういうふうな考えを持つております。一応それだけ申し上げておきます。
  6. 夏堀源三郎

  7. 内山徳治

    内山参考人 きよう経済団体連合会としての意見を申し上げられると、非常によかつたのでありますけれども、それははつきり決議等の形できまつておりませんので、いろいろの委員会、役員会等で出ております各方面意見を、私個人立場から見た観察として御紹介を申し上げ、それに多少私自身の私見をつけ加えさしていただくということで、申し上げたいと思います。ただいまこの臨時国会で問題になつております法人税関係の問題は、税率引上げの問題と法人税の運用の合理化に関する問題と、二つにわかれて出ておると思うのであります。運用の合理化としましては、退職金引当金の損金認容の問題、それから合理化等の新設備に対して特別償却——これはすでに現在認めておるわけでありますが、それをさらに認める範囲を広げるということ、それから法人税の納期を、金融操作の関係から三箇月間猶予することができるという、大体三つの問題があるようでございます。こういうふうな法人税の運用の合理化に関する事柄と、それから税率引上げるということの問題とは、少しく性質が違つておると思いますので、一応わけて考えてみたいと思うのであります。もちろん法人の租税負担という一般論として考えますと、非常に深く関連しておるのでありまして、運用の合理化によつて一面負担が軽減いたしますから、そうすれば法人税税率引上げても、その負担力は出て来るという問題はございますが、しかしその負担関係は、たとえば退職金の引当金の損金認容にいたしましても、数年間ははつきりそれが法人税の軽減になりますが、数年たちまして退職金引当金が大体その限度一ぱいまで積み立てられますと、あとは現実に退職して行く人に対する支拂いと、年々の積立てとがほぼバランスを得て来るようになるはずであります。ただ特別に経済界の変動が非常に大きく、人員整理を行うといつた場合には、そこに違いが出て参りますけれども、限度まで積み立てますと、もはや減税的な効果はなくなる、こういうふうな性質のものでございます。すなわち実際に退職金を支拂つたときに、損金として利益の中から差引いてもらうか、積み立てたときに差引いてもらうかという、いわばその間における金利の差だけ負担が軽くなるというのが、正味のところでございます。そういようないろいろな関係がございます。それから運用の合理化ということは、税率を上げるか下げるかということとは別にしまして、いずれにしても、ある意味では今までの運用が非常に不合理であつたのを、直す意味を持つておるわけでございますから、税率引上げとは別個の問題として当然考えるべき問題であつて、こういうふうな意味で、運用の合理化に関する問題は、今度出ております改正案のほかにも、なお若干要望せられておるところでございまして、これは今後も起つて来る問題で、法人税率をどうするかということとは、別個に考えなければならぬ問題であると思います。今度の案に対する見解としましては、運用の合理化の方は、もちろん合理化されるのでありますから、その限りにおいて全部賛成でございますが、ただ結論的に賛成します中にも、二、三それに対する考えをさらに申し上げてみますると、法人税の徴收延期の問題でございます。これは今度の案によりますと、三箇月間延期を認めますけれども、その間四銭の日歩を徴收するということになつておりまして、この問題は、経団連として先般来各方面から非常に強い要望がございまして、大体の見解をまとめて大蔵省に要望しておつた問題でございまするが、四銭の日歩を徴收されるということでは、せつかくの延納の措置が、非常に効果が少くなるであろうという意味において、日歩四銭というものは、少くももつと低くしていただきたいという気持を持つておるわけであります。でき得ればそれは日歩に触れないで納期をかえる、すなわち分納を認めるという制度にしていただくことができれば、一番いいのでありますが、これにつきましては個人所得税との権衡の問題も、若干あるようでございまするので、経団連としては、最後的な妥協案として、日歩四銭を二銭程度に下げてもらいたいということを要望いたしましたが、今回のところでは、大蔵省との話合いでは、大蔵省もそこまではどうも認めがたいということでございまするので、これは将来の問題として、なお検討を続ける必要のある問題だと考えております。しかしこれも日歩四銭の利子を徴收して納期を延ばすことが、そうしないよりも悪いということでは決してございませんから、決して原案に反対するわけではないわけであります。それから次に退職引当金の損金認容の問題は、詳しいことはあとの施行法の問題になると存じまするので、目下検討中でございますが、一つの問題は、労働協約ではつきりきめたものに限つて認めるという考え方に、大体現在なつておるようでございますが、その点は労働協約まで行つておらなくても、はつきりした会社の規定がある場合には、認めてしかるべきものではなかろうか、その方が実際の運用上妥当ではないか、大体それでさしつかえないであろうと考えておりますけれども、なお大蔵省側では、それにはちよつと疑問があると申しておられまするので、ただいま研究中でございます。そういつた点に多少問題が残されておるということだけを申し上げまして、合理化関係のことはもちろん全部賛成でございます。次に税率引上げの問題でございますが、これにつきましては、実は経済界の中での意見が必ずしも完全に一致しておるとは、申し上げかねるのであります。所得税との振合いとか、あるいは講和後の財政の見通しというようなことから見まして法人税引上げることにいろいろな根拠があると思いますが、それらの根拠を全面的に認めて、この案に全面的に賛成するという態度をとつておられる方は、経済界の中にはまつたくないか、あるいはあつてもごく少数であると思います。従つて税率引上げ賛成反対かという点だけで色わけをいたしますならば、ほんとうの賛成論はごくわずかで、反対論が大部分である、こういうことが申し上げられると思います。ただその反対論の中に、また少し色合いの違うところがございまして、この際考えられる限りでは、絶対に反対だという態度をとつておる向きが相当数ございまするが、また中には、ある程度まではやむを得ないであろう、引上げ程度を低くしてもらいたいという程度に、考えておるものもあると思うのであります。ところがその引上げ程度その他の問題を、だんだん考えて参りますると、これは結局時期の問題として今年度の補正予算の問題として、この臨時国会できめることは妥当でないというふうに考えるのが、至当であろうと思われる考え方が相当多いと思います。全部がそこに統一されておるとまでは言えないかと思いまするけれども、そういう考え方に根拠があるように思うのであります。私自身の気持といたしましては、やはり時期の問題として考えたいのでありまして、絶対に困るという議論も相当にございますけれども、しかし来年度の予算として考えます場合には、特に財源の問題として、どうしてもこれだけの財源が必要であるということであれば、それは当然覚悟しなければならない。これは経済界の考え方としても、当然そう考えなければならないことでありまするので、その点がはつきりすれば、承認するというか、賛成する人が非常に少くないと思うのでありますが、今年度の補正予算の問題としてこれを考えます場合には、どの程度引上げたら最も適当であるかという程度も、非常に判断しにくうございますし、また財源の問題としても、今年度の補正予算におけるその要求はきわめてわずかでございまするので、今年度の補正予算としては、これをとりやめてもさしつかえないのではないかというふうに、考えられるわけでございます。すなわちこれの引上げが来年の一月から実施されたといたしましても、今年度の歳入に入つて来ますのは、一月中に決算をする会社負担分だけになるわけでございまするので、大体大蔵省の見積りでも、法人税引上げによる増収が三億円程度、それから一方における運用の合理化による軽減の方が一億可程度を見込んで、二億円程度の税収を期待しておるというふうに聞いておるのであります。すなわち一月から実施いたしましても、二月以後に決算期の来る会社の税は明年度の収入になる、こういう関係になるわけでありますから、財源の問題としては、ほとんど補正予算の上では問題にならないと思うのであります。そうしますとその負担の問題としては、もつぱら明年度以後の財政の状況によつて、考えなければならぬことである。それから税率引上げるもう一つの大きな理由は、財源の問題はしばらくおいて、税のつり合いの上から見て、すなわち租税体系の問題として、法人税引上げが妥当だという見解がありますことは、先ほど井藤先生からもお話があつた通りでございます。しかしこれにつきましては、経済界の方の側から見ますと、若干の異論があるわけでございまして、法人の税負担が現在以上に相当大幅にふえるということは、生産活動に相当悪い影響を與えるおそれがある。特に現在の日本の各種事業会社の経理の実情から見ますと、三五%の法人税でも相当重い負担なつておつて、そこから税負担が重いために起ると思われる弊害がいろいろ考えられる。それをさらに重くするということになりますと、各種の弊害が生ずるということを、よく考えていただく必要がある。従いまして所得税の軽減はもちろん経済界としても非常に希望するところでございますが、所得税の軽減をはかるために法人税引上げて、その穴埋めをするというところまで行くことについては、これもやはり財源の問題とにらみ合せることになるわけで、所得税の軽減が非常にやりにくいという場合には、そういうことも考えなければならぬことになるわけでございましようが、今度の原案程度所得税の軽減が可能であるならば、そういう必要がないのではないかというのが、大体の結論であるようであります。それでは法人税引上げることに対して、どういう理由で反対をとなえておるかということでありますが、これにつきましてちようど昨日、日本貿易会から——これは貿易関係会社立場から出した結論でございますが、法人税率引上げに対する反対の要望書が出ておりますので、それをちよつと私御紹介申し上げてみたいと思います。あまり長くございませんから、理由のところだけを朗読いたしますが、第一は、企業收益が必ずしも安定しておらないということをあげております。   今回の法人税引上問題が取沙汰され始めた動機としては、昨年の朝鮮動乱勃発以来、輸出の伸長及び特需の増大によつて、経済活動が活溌化し、企業收益が全般的に好転したことが考えられている。けれども、業種別相異は暫く措くとして、果して総体として、わが国の各企業が実質的に高い收益をあげているか否かに就いては、多くの問題がある。結論的に言つて、現在のわが国の企業の收益や配当は、実動総資本と比較すると、決して高收益でも高率配当でもなく、むしろ正常化しつつあると断じてよいであろう。換言すれば、過少資本による名目上の高收益であり、償却を犠牲にした高收益である。企業活動の積極化のためには、むしろこれ母上の収益を常に維持せしめることが必要である。従つて、わが国の企業収益の水準を実質的に高いものとみなして、これを増税の対象とすることは、決して適正な措置とは言い得ないであろう。勿論昨今の納税成績よりみて、法人企業にかなりの担税力があることはわれわれも否定しない。けれども景気の偏在、稼動の破行性が是正されず、まだ資産の再評価どころか、資本の食潰しをしている企業さえ皆無ではない現段階においては、法人税の引上は時期尚早と言わなければならない。然しながら、われわれが企業採算の最近における好転を増税源とする政府の見解に対して最も強く指摘したいことは、企業収益の現状維持が果していつまで可能であるかということである。換言すれば、経営の安定性の問題である。複雑な国際政情の起伏によつて、各国の経済が急変を余儀なくされることの多い最近の緊迫した世界情勢を引合いに出すまでもなく、底が浅く芯の弱いわが国経済における企業は、基礎條件の変化による影響を直ちに収益の面に受けざるを得ないのである。このことは、現在の電力不足問題が各企業の採算面に與えつつある深刻な波紋が、最もよく語つているであろう。  第二に、企業の資本蓄積がこれによつて阻害されることの危険をあげております。   周知の通り法人税はいわゆるシヤウプ税制改革によつて、抜本的に合理化と軽減がはかられ、比較的にすつきりした税制なつたために、税務行政が円滑化され、かてて加えて、右のよう企業收益の増勢が伴つたために、自然増收が予想外に現われ、本年の八月には既に本年度予算に計上した法人税徴収予定額(六百三十六億四千万円)を達成したのである。ここにおいて、政府は、法人税の自然増收に満足しないで、更に税率引上げて税收をはかろうとしているようである。けれども、このよう考え方は、税源を培養する素地たる資本蓄積を徒らに阻害する結果となり、講和後の経済復興のためにまことに遺憾なことであり、正しく時代に逆行する措置であると言つても過言ではあるまい。   そもそも、自然増収は税の軽減財源に充当すべきものであつて、これを見込んで税率自体を引上げることは一考を要することである。殊に今回の措置が所得税負担軽減はよいとしても、法人税引上げてまで所得税引下げることが、果して妥当であるか否かについては、疑問なきを得ない。国家財政の膨張をカバーするものは、実に国民経済の安定と進歩による国民所得の増大であることは多言を要しない。かかる見地からも、企業基盤の強化方策たる資本蓄積を阻害するような今回の措置は、愼重に再検討されなければならないと考える。   資本蓄積は、今更言うまでもなく、わが国経済界における刻下の急務である。敗戰後日本経済の諸々の病根は、実にすべて資本蓄積の貧困に帰せられるとみてよい。電源開発といい、輸送力の充実といい、或は産業施設の近代化といい、これを可能にするのは、けだし資本の蓄積以外にはないのである。それには先ず資本蓄積を促進し、且つ可能にするような環境が整序されなければならない。このことが業界全般に強く要請されているときに、法人税引上げを敢えて行うことは、重税に対する反動としての、好ましくない浪費性向の彌漫をますます助長する結果を生ぜしめ、最近唱導されつつある新生活運動を画餅に帰せしめるおそれがあるばかりでなく、日本経済の脆弱性をいよいよ慢性化せしめることとなるのである。   殊に貿易商社の場合は、全般的に自己資本と借入資本の割合が、戰前と戰後において大きく相異し、自己資本六割に対して借入資本四割という戰前の一般的状態が、現在においては種々の事情があるから計数のみでは判断し得ないとはいえ、自己資本が五分ないし一割で、残余を借入資本でまかなうという不健全な様相が一般化しつつあるのである。従つて、貿易商社自体のためのみでなく、対外信用保持の上からも、今日ほど貿易商社の資本蓄積がはげしく要請されることはあるまい。かかる意味で、われわれはこれに反するよう法人税引上には断乎として反対せざるを得ないものである。  貿易会の意見には、そのほか地方税による調整が困難であるということがあげられております。基本的な考え方といたしまして、現在の事業会社の収益というものが、三、三年前に比べて、傾向としては非常にふえておることは十分認めるけれども、それは二、三年前がめちやくちやに低かつたのであり、そして現在の状態をとつて見ても、決してそう高いとは言えないのである。そして現在の経済情勢では、まだ必ずしも安定しておらない要素も多多ありまするので、負担カのある会社もおいおい出て来つつあるであろううけれども、そうでない、まだ非常に困窮している会社相当あるのであるから、一律に税率引上げということは妥当でないというのが、大体の考え方であり、特に現在の日本法人というものは、借入金に依存しておることが非常に多いために、これをもう少し是正して行くことがせひ必要であり、正そのために資産再評価による再評価積立金の資本繰入れということも、行われつつありまするけれども、それ自体はまだ借入金を返す力には全然ならないわけでございまするから、もうしばらくの間、少くも相当資本の蓄積ができるような状態に置いていただいて、そうしてこの資本の構成を適当に直し、收益の状況というものもはつきりするようなつた上で、法人税税率というものが軽ければ、それを引上げるということは考えていいでありましようけれども、現在の状態では非常に無理ではないか。こういつた点に大体反対論の根拠があるように思うのであります。そのほか一般的に税が重いために、浪費的な傾向が生ずるというような点も、よく言われておる点でございますが、現状において時期尚早だという理由の根拠は、大体こういう点にあるように思われるのであります。しかしこれも結局は相対的な問題になりまするから、情勢のいかんによつては、ある程度の税負担ということは、覚悟しなければなるまいと考えておる方も、今日としては相当数あると思うのでありますが、しかしそういう考え方からしましても、財源の問題としては、今年度の補正予算で考えることは、おそらく必要のないことである。それから一方、来年度以後の問題となりますると、来年度の歳出予算がきまつた上でなければ、どの程度引上げる必要があるかということはわからない。それからもう一つは、租税体系としての負担の問題でございますが、これについては地方税との関係が非常に密接なものがございまして、先般来法人税税率引上げに関連しまして、地方税の方は相当軽減するらしいことが、内閣の税の懇談会の結論としても出ておりまするし、またそれにはある程度地方財政委員会が参加して立てた意見であるようにも、私ども伺つておるのでありまするが、しかしどうもその後の成行きを見ておりますと、地方税の軽減ということは、今日の情勢では必ずしも当てにならないことである。そういたしますと、負担程度、どの程度までは負担さして適当かということも、また地方税の問題とにらみ合せまして、来年度の中央、地方を通ずる予算の全体の問題として考えないと、十分の結論が下しがたいのではないか。特に法人税率を二割も引上げるということになりますと、租税体系全般の問題として、もう少し愼重に検討した上で、あるいは二割の引上げが適当になるかもしれないけれども、しかしもちろん税は、井藤さんからお話がありましたように、できるだけ低くしたいのであります。そうしますと、どの程度にとどめるのが適当かということは、現在それを判断してきめるということは、時期にあらずと言うべきではなかろうか。つまり結論といたしましては、税率引上げは、本年度の補正予算の問題としては、一応とりやめていただいて、そうして来年度の予算の問題として、通常国会においてあらためて考えていただくということ一番適当ではないか、こういうのが大体私が経済界の方々の意見を聞きながら、私の頭でまとめた結論でございます。以上で私の公述を終りまして、あと御質問等がございますれば、お答えいたしたいと思います。
  8. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ただいまの御意見に対して、御質疑があればこれを許します。
  9. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は簡單に三人の方にお尋ねいたします。旭化成の磯部さんは、化学工業は今発展途上にありまするから、税金は多くしてもらいたくない、こういうようなお話でありましたが、私どもは糸へん、金へんというのは、今の企業の代表的業界であるというふうに考えておるわけです。特に今回の改正によりまして、重要産業一つでありますところの、特定重要産業機械等につきましては、これは一年に半額も免除するというよう特別償却にいたしておるわけでありまするから、これらと関係いたしまして、化学纎維等に関しましても、これは適当なように私どもは考えるのです。この点あなたの考えと多少食い違うかもしれませんが、もう少し頭を広げて考えたならば、原案の方が妥当だと考えるのでありますが、いかがですか。あなたの御構想を承りたい。
  10. 磯部一充

    磯部参考人 半額免除とおつしやいますが、これは買つたあとの問題だと思います。われわれはそれを買う保有金がないわけでありますから、買つてしまつたあと、進展のためにいろいろ御配慮いただくことは非常にけつこうだと思いますが、買う金を何とか調達できるようにお願いしたいと思います。
  11. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 次に内山さんに伺いまするが、自己資本が少い。今伺いますと五%ですか、あとの九五%が借入金である、こういうような御説明があつた。もし間違つておつたら改めますが、さように国もしくはほかから借り入れておる資本が大きいということになりますと、企業の不健全ということも考えられるわけであります。また考え方によりましては、その中心がどこにあるかという点も、考慮されなければならぬのでありますが、これはむしろ企業の堅実性を期するために、自己資本をもつとふやして、借入金とのバランスをもう少し接近せしめる方がいいと思いますが、これに対してあなたはどう考えておられますか承りたい。
  12. 内山徳治

    内山参考人 実はまつたくお話の通りでありまして、これは特に貿易会社の場合自己資本の割合が小さくなつておると思うのでありますが、貿易会の調査では、総資本のうちの五分ないし一割が自己資本である。もちろんこれについては再評価の問題、その他若干の問題があるけれども、と断つてありますが、そういうわけで非常に自己資本が小さい。そのために、ことしの春から後にかけて起りましたような景気の中だるみと申しますか、価格が下つて非常に困るというような問題も、結局は平常の場合ならば、当然それくらいは保有できるはずの滞貨が持ち切れないために、そういうようなことが起つたというようなこともございまして、会社の資力が非常に足りないというのが実情であります。一般の事業会社は貿易会社ほどではありませんけれども、やはりそれに類した事情があることは否定できないのであります。そこでこれが将来の解決の問題としては、御意見通り、もう少し自己資本を充実して行くことが目下の急務であるわけであります。それを行う方法としては、一つは社内の蓄積をふやして行くということ、それからもう一つは増資をいたしまして、株式の形で資本を集める。この二つの道しかないわけでございます。ところが増資をして株式の形による資本をもう少しふやすと申しましても、全体の状態としますと、現在の証券市場の事情では、それがなかなか急にはとてもできないわけでございます。それをできるだけ得やすいようにするのには、いろいろな條件がありますけれども、会社の側としては、もう少し自己資本を充実し、それから利益のあまり大きな部分を、税金でとられるというようなことをやめていただいて、株式に投資する人が安心して、そして相当有利なものとして投資できるような状態をつくり出すということが、一番必要なわけでありまするので、そういう意味合いから申しまして、特に今例に出ましたような、脆弱な基礎の状態にある会社に対しては、増税ということが非常につらいことになるということが一つ、それからもう一つは、そういうふうに自己資本が少くて、非常に多くの部分を借入金に依存しておる状態であることは、会社の金融が非常に苦しいということでありますので、せつかく得た利益のうちから、非常に多くの部分を税金として国家に吸い上げられてしまうということが非常につらい。このように資本の是正の問題と金融の問題と、両方あるかと思うのであります。
  13. 磯部一充

    磯部参考人 ちよつと恐れ入りますが、今の御質問の中で、いわゆる企業合理化法案の中で、減価償却が最初かつら二分の一で云々というお話がありました。ところがあの企業合理化法案の中には鉄、石炭、電力、造船、それからベアリング、自動車、そういう重工業方面は入つておりますけれども、われわれのような軽工業は入つておりません。その点念のために申し上げます。
  14. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 それでは次に内山さんと、政府に関連をして西川さんと主税局の方から御答弁願いたいと思いますが……。
  15. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 三宅君に御相談申し上げます。参考人の方々の休憩時間が間もなく来ますから、一応参考人の方々だけの御質疑を願つて、ありませんでしたら打切りたいと思います。
  16. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 わかりました。それでは参考人の方々に御質問申し上げます。企業会計を重んじておられます経団連の方でありますから、特に申し上げたいと思いますが、退職金のことであります。これは計算上これを算定したものは損金に入れる、労働協約以外のものは算定に入れないというふうにお考えなつておると思いますが、私どもはむしろこれは計算上、企業会計上、積立金というものは全部損金に入れる、こういうふうに解釈しておりますが、あなた方のお考えは、労働協約に限定したものに限る、こういう解釈でありますが、私は全部のものを、少くとも企業会計上損金にいたした以上はやつていいと考えております。それともう一つ関連いたしておりますが、四二%というのは三五%から二割上げておるのでありまして、むしろ企業会計からいいますと、当然過ぎるほど当然だ、こういうふうに考えておる。特に中小企業等におきまして、大企業におきましても同じでありますが、往々にいたしまして、今日は労資と申しましても労働者と使用人の資本家、これが重点的に企業の中心となしておるのでありまして、この使用人の重役等は、昔の資本家とは大分異なつておりまして、むしろ経費を使うことに専念——ではありませんが、大いに力を盡しておるということも言われておるわけでありまして、私どもは当然過ぎるほど当然、むしろ四五%くらいまで上げまして、そのほかの協同組合というような公益法人の方を、たとえば二五%まで引下げるというような方が穏当じやないかと思いますが、あなたの御感想を承りたいと思います。
  17. 内山徳治

    内山参考人 退職手当金のことでございますが、これにつきましては、民間の要望としては、労働協約のないものも認めてもらいたいというのが趣旨であります。しかし実際の運用上、どうも労働協約にはつきりきめられたものでないと認めにくいように、大蔵当局の説明を聞いておりまするので、そういうふうに狹くなつてははなはだ遺憾である。もう少し広く解釈できるように、お考えを願いたいというのが趣旨であります。それから四二%の問題は、程度の問題でありますから、いろいろな方面から検討しないとわからないことでありますが、かりに四二%になりますると、地方税を現在のままで行きますれば、利益金の約六割が税金でとられるという計算なつて参ります。それにしても現状ではやはり大体五割ちよつとでありますが、それは六割ということになりますから、やはり二割の増税ということになるわけです。二割の程度が妥当であるかどうかという問題なのでありますが、これは根本論としてはなるべく上げない方がいいのだという考え方が、根本になつておりまするから、そうするとできるだけ上げる程度は少くする方がいいのであつて、幾ら上げるのが妥当だという最初からの考えは、税については私は出て来ないと思うのであります。必要がどれだけぜひあるかということによつて、きめなければならない問題だ。こう思いますので、そういう点から見ますると、すでに現行の三五%のままでも、地方税を入れると五割が税金であり、今度増税されますと六割が税金になるという、この程度の重くなつた税をさらにより上げるという場合には、なせ上げなければならないかという必要がはつきり理解されなくては、少くとも納税者としては納得できない。ぜひ上げる必要があるのだ、その上げたところの財源が、非常に有効に国のために使われるのだということであれば、喜んで負担もいたすでありましようが、そことの見合いできめるべき問題であつて、それがはつきりしないのに、二割が妥当であるとか一割が妥当であるという言い方は、ちよつとできない。こういう意見であります。
  18. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 もう一点聞きます。今お話になりました使用人、重役、こういうものに対しまするところの感想は、ほとんどなかつたわけでありますが、むしろ私どもはそういうものに対しまして相当経費を出しまする関係上、利益が低くなるからいけない。ここに重点があるのではないかと思いますから、これらの方々もよほど注意をされまして、相当経費を節減するという線を出しまするならば、個人会計、個人企業と同様に考えまするならば、相当にあるはずだと私は思う。でありまするから、その辺につきましてあなたの偽らざる真相を御発表願いたい。
  19. 内山徳治

    内山参考人 税を上げれば使用人、重役の経費が少くなるのかという問題でありますが、これはなかなかむずかしいところだと思うのでありまして、同族論としてはむろん税を上げる上げないにかかわらず、これは減らすべきものでありますから、減らすための運動も経済同友会あたりが中心になつて起しておりますが、しかし税を引上げた結果どうなるかということになりますると、どうせ税にとられるのだから、ある程度使つてもいいという観念——これはけしからぬ観念でありまするけれども、人情としては起り得るということを考えなければならないと思います。
  20. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 その他御質問ありませんか。——以上をもちまして参考人の方々よりの参考意見の聴取を終了いたしました。  参考人各位には御多忙にもかかわらず御出席をいただきまして、忌憚のない参考意見を開陳せられ、本法案審査の上に多大の参考となりましたことを、厚くお礼を申し上げる次第であります。ありがとうございました。     —————————————
  21. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に昨三十日本委員会に付託になりました米国対自援助物資等処理特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府当局より提案理由の説明を求めます。西川政府委員。
  22. 西川甚五郎

    ○西川政府委員 ただいま議題となりました米国日援助物資等処理特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提出の理由を御説明申し上げます。  米国対日援助物資等処理特別会計において取扱つている軍拂下げ物資の対価につきましては、従来は米国対日援助物資及び援助役務の場合のように、この会計からこれを米国対日援助見返資金特別会計へ繰入れることとする規定を欠いていたのでありますが、今回これを見返資金特別会計へ繰入れることとする必要がありますので、これに関する規定を設けようとするものであります。すなわち軍拂下げ物資についてこの会計から見返資金特別会計へ繰入れる金額は、その売拂い代金からこの会計で負担した当該物資に関する諸掛等を控除した金額といたしているのであります。  以上がこの法律案の提出の理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  23. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に先ほど参考人より参考意見を聴取いたしました法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続行いたします。——それでは休憩後理事会を開きます。午後は一時半より会議を開きます。  それでは休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  24. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。午前中参考人より参考意見を聴取いたしました法人税法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、質疑を続行いたします。
  25. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま議題となつておりまする法人税法の一部を改正する法律案につきましては、すでに質疑も盡されたと思われますので、この際本案につきましては質疑を打切られんことを望みます。
  26. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ただいまの奥村君の動議のごとく決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 御異議なしと認め、本案につきましては質疑を打切ることにいたします。  次に本案を議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。島村一郎君。
  28. 島村一郎

    ○島村委員 ただいま議題となつておりまする法人税法の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表して討論を試みたいと存じます。  まずこの改正の要点を拝見いたしますと、第十七條並びに第二十六條を除きました第九條以下の各條文につきましては、大体手続上の改正であろうかと考えられます。ただ十七條の内容に盛られましたものは、この法人税税率改正でありまして、二十六條の三の規定を見ますと徴収猶予の條項で、まず第十七條から申しますと、私どもは法人の育成とか、あるいは助長の画よりいたしまして、はたして妥当な税率引上げであるかどうかという点、幾分考えさせられる点もあるのでありますけれども、たとえばたなおろし勘定あるいは積立金勘定等についての政府の取扱いにつきまして、よほどゆるやかにも考えられます。もう一つは二十六條の三に規定されようとしております徴収猶予の点等もあるのでありますから、まずその点なれば満足とは申せませんけれども、やむを得ない措置であるかと考えておるのでございます。なお政府から提出されましたところの資料等によりましても、まあ現段階におきましては、やむを得ない措置であろうかというふうに考えられるのであります。それから第二十六條の徴収猶予の面におきましては、現在までこうした規定はなかつたと思うのでありますが、今度は税額の半分を、三箇月の期間を限つて徴収を猶予するというような規定もございますので、その辺に親心も示されたことと存じまして、私はこの改正案につきましては、自由党を代表いたしまして、賛意を表する次第でございます。
  29. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 宮腰喜助君。
  30. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 私は民主党を代表いたしまして、法人税法の一部を改正する法律案に、一定の條件を付しまして賛成するものであります。大蔵大臣は毎毎、委員会や本会議に臨んでは、資本の蓄積という立場から、会議のたびに、減税をするのである、こういうことを申されておりまするが、今回はからずも百分の三十五から百分の四十二に、約二割の引上げをしたということについて、われわれは疑問に思う点が多々あるのであります。これは現在までの税の自然増収から考えますと、相当額の自然増收があるにもかかわらず、この法人税を画一的に、全体のそれから考えて百分の四十二にまで引上げるということは、私は資本蓄積という立場よりも、また小さな法人に対しての政府の方針並びに納税をするところの法人立場から考えても、これは妥当ではないようにも考えられるのであります。従つて、私は今後法人税考える上に、政府当局では非常に利益を計上されまして、今まで無配当であつたよう会社がどんどん配当をしておる。並びにまた統計上から見た利益も非常に成績が上つておるから、この程度引上げは妥当だと申されますが、私は今までたびたび大蔵大臣から資本の蓄積という立場において、いろいろ新聞記者会見や委員会、本会議等で説明された趣旨と、大分反する方向に進んで来ておる関係上、この問題については、今後一定の時期にまた元の状態に引下げてもらいたいという條件を付して、また他方協同組合とそのほかの財団法人に対する税の考慮も、現状のままにはなつていますが、私はこういうような非営利的な協同組合等については、特にいま少し減税をしなければ妥当でないと考えるものでありますので、今後の税法改正のときは、ぜひともそういう特殊法人に対していま少し減税してほしい、こういう條件を付しまして、本案賛成するものであります。
  31. 夏堀源三郎

  32. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案に対して、社会党は反対を表します。簡單にその反対の理由を申し上げますと、今回の税率引上げを大中小法人に対して、一律にしたことが納得が行かないのであります。しかも中小はその資本の上においても、事業量の上においても非常に小さいものであつて、大と同じように七%の税率引上げには耐えられないように、私たちは思うのであります。私は中と小は公益法人並びに特別の法人と同じように、少くともすえ置きまして、大からもつととつたらいいと言いたいですけれども、これを二段階にしたらいかがかと思うのであります。そうして大の方はもつと税の調定を厳格にいたしますれば、四二%どころか、五〇%もとれるのではないかというふうな考えを持つておりますので、この法案に反対をいたす次第でございます。
  33. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 深澤義守君。
  34. 深澤義守

    ○深澤委員 ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案に対しまして、日本共産党は反対であります。  このたびの税法の改正は、税率を三五%から四二%に引上げるというのであります。その根拠は法人の收益が著しく増加しておるという見解に基くものでありますが、法人と申しましても非常に階層があるのであります。特に本年度において收益の増加いたしましたものは、朝鮮動乱による特需に恵まれた特殊の軍需的大企業であることは明らかであります。その他の平和産業の法人並びに中小の法人等は、むしろ現在は破産の状態にあるというよう状況が真実であります。また日本全国にあるところの農業協同組合等の特殊法人は、その経営が困難な状態に陷りまして、政府もこれに救済の手を差伸べなければならないというのが、今日の実情であります。しかるにもかかわらず、單に一部の軍需的な大企業が非常な収益をあげておるという理由によつて、この法人全部をひつくるめて、一律一体に三五%から四二%に値上げしたということは、明らかに大企業にはこたえないが、中小企業あるいはまた平和産業関係企業に対しましては、甚大なる影響があるということを、われわれは考えなければならないのであります。こういう意味合いにおきまして、われわれはまず第一点として、この法案に反対するものであります。第二といたしましては、今般の税法改正によりまして、三箇月の徴税猶予というような問題や、あるいは退職手当積立金を損金に算入して課税しないということや、あるいはまた特定機械、船舶等に対しまして、その半額を特別償却と認めて、これを非課税にするという問題、なお先般の質問によつて明らかになりましたように、政府はたなおろし資産の価格変動準備金制度を設けまして、これに対してもある程度の減税をしようとしておるのであります。これら一連の措置というものは、明らかに大企業及び軍需産業育成の措置でありまして、まつたく大企業につきましては、こういうようないろいろな処置によりまして、三五%から四二%に値上げされたといたしましても、その他の処置によりまして、減税面が非常に多くなつております。こういうことによりまして、本法案のねらいは、まつたく平和産業並びに中小企業法人に対しまして、大きな犠牲をしいるものであるという見解をわれわれは持つのであります。この意味において、われわれは本法案に対しまして反対せざるを得ぬのであります。
  35. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 社会党二十三室、上林與市郎君。
  36. 上林與市郎

    ○上林委員 法人税法の一部を改正する法律案に対しまして、日本社会党二十三控室は反対するものであります。反対の理由は、ほとんど前討論者によつて盡されておりますので、この際は省略いたします。
  37. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 討論は終局いたしました。これより本案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  38. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。     —————————————
  39. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次に所得税法臨時特例に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに質疑打切りとなつておりまするので、これより討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。島村君。
  40. 島村一郎

    ○島村委員 ただいま議題となりました所得税法臨時特例に関する法律案につきまして、私は自由党を代表いたしまして、賛成の意を表したいと思います。  まず本法律案につきましては、最近の物価の動向と国民の担税力等を洞察して、負担の一層の軽減、合理化をはかつた適切な措置であると考えるものであります。すなわち基礎控除、扶養控除等の増額、または税率におきましては段階を、ただいままで五万円以下二〇%とありましたのを、八万円以下二〇%としたこと、及び最高は百万円を超過する金額に対しては五五%とありましたものを、最高二百万円を越える所得額に対しては五五%と改正されましたことは、現下の経済政策に適応したまことに機宜に適した改正であろうと存じます。ただここに源泉徴收を受けておる給與所得者、あるいは勤労学生に対しての基礎控除、及び扶養控除の増額等につきましては、いま一段当局のごしんしやくをお願いいたしたいのであります。現在給與所得者の待遇を見ますのに、物価その他実際の社会生活の実情と給與ベースとの関係考えますれば、ただちに結論が得られることであるにもかかわらず、諸種の事情からこれが改善が行われぬ現状におきましては一層その感を深くするものであります。なお退職者に対しましては、明年の四月一日以降はその所得とは切り離して課税の対象とし、しかも一定額の控除を行わんとするもので、労に報いるためにとられる処置といたしましては、まことにけつこうな考え方と思うのであります。  以上の観点からいたしまして、本案賛成するものであります。
  41. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 宮腰喜助君。
  42. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 所得税法臨時特例法案に対しまして、民主党を代表しまして、本案に対して條件を付しまして賛成するものであります。  現行法より税の負担を軽減しようという政府のお考えには、われわれも賛成するものではありますけれども、現在の物価高から考えまして、はたして軽減されておる状態であるかどうか。その点について疑問を持つものでありますが、左の三つの條件を付しまして本案賛成いたします。  第一番に、中小企業、ことに一人大工、一人左官等に対しては、いまだ企業者と同様に処遇をしております。こういうような一人大工、一人左官というものは勤労者と同様な所得であり、あるいは一方、労働組合に参加するような零細なる所得者であるにかかわらず、これを企業者と同様に取扱われて、勤労控除というような控除をなされておりません。従つてこういう業者は地方においては事業税をとられ、両方の負担で耐えがたいところの大きな犠牲を拂つております。従つて税の均衡上、こういうようなものに対しては、特別な考慮を今後必要とすることを、われわれは痛感するのであります。  第二に、東北寒冷地帯に対するこの税の考慮であります。たとえば九州や関西方面ように、二毛作のできる地帯の所得の状態は、非常に優秀でありますが、東北のような單作地帯はそうではないのであります。ところが税の徴收の仕方は画一であります。関西や九州の所得の状態と、東北の所得の状態とは相当の隔たりがありますが、法の規定上、画一性のために税は同一の徴收の仕方をされております。たとえば寒い国においては雪囲いとか雪拂いとか、あるいは冬の燃料を燃やす代金が、生活費に相当かさんでおるにかかわらず、こういう点も法律上考慮さ、れない。政府ではそういう場合には特別に行政措置によつて、各国税局長に通告するというようなお話ではありますが、われわれが九州の宮崎県で調べた農家の所得状態と、それに対する税の関係と、秋田県の農家の所得と税の負担関係を調べてみますと、大体同様な税のとり方をしております。こういうところに大きい矛盾した問題が横たわつて来ます。これを将来ぜひ改正をしてほしい。  第三には、富裕税の廃止の問題です。これは前国会から私は再三この富裕税廃止論を唱えて参つた一人であります。その理由の一つは、現金を調査するということになれば、結局銀行を調べられる。銀行を調査するということになると、現金を引出しましてたんすのごやしにしてしまう。従つて産業資金が不足して参ります。また現金を調べないということになれば、株を縛つておる者は全部現金にかえてしまいます。従つて長期の産業資金は得られないというような、事業上重大影響を及ぼす問題が起きて参ります。こういうぐあいで富裕税ような悪税は今後ぜひ廃止してほしい。  こういう三つの條件を付しまして賛成するものであります。
  43. 夏堀源三郎

  44. 松尾トシ子

    ○松尾委員 日本社会党といたしましては、ただいま議題になつております所得税法臨時特例に関する法律案に対しまして、一、二の條件をつけて賛成いたします。  今度の補正予算を拜見いたしますと、本年度に限つては、減税の財源がおありになるので、長い間の政府の公約であつた減税をなされたことは、まことにいいと思つております。しかしながら朝鮮事変後に九箇月間で物価が五〇%上昇しておるにもかかわらず、一方勤労生活者の收入の引上げは、その半分くらいで打切られております。御承知のように主食も値上げをしたし、電力料金や鉄道運賃、通信料金の値上げ等も断行しておる現在、国民負担の過重を減税によつて完全にカバーする必要があることを、私は強調いたしたいと存じます。特に今小さな個人経営をやつている企業家にとつては、この程度の控除やあるいは税率引下げでは、なかなかやつて行かれないという状態がここに出て来ております。農民もその通りであります。しかしながら政府は、インフレーシヨンのきざしが見える今日においては、どうしても勤労生活者の收入を物価指数よりはるか下の線で押えておかないと、インフレになるということをおそれていらつしやるのでしようと思いますけれど、私が思うのに勤労者の生活から、勤労者が支出する面からインフレーシヨンを促進しているような生活は、まだやつていないと思いますから、どうぞもつともつと減税をしていただきたいと思うのであります。けれどもただいつまでも物価と賃金のいたちごつこをやつていられませんので、講和のこの時期をよい転機にして、政府としましては完全な物価体系をお立てになつて、いつまでもこのような悪循環をしないようにしていただきたいことをつけ添えまして、賛成いたすものであります。
  45. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 深澤義守君。
  46. 深澤義守

    ○深澤委員 ただいま議題となりました所得税法臨時特例に関する法律案に対しまして、日本共産党は反対するものであります。  吉田内閣の減税政策が国民に非常に大きく期待される折から、最近来朝いたしましたドツジ氏は、この減税政策は世界の大勢に逆行するものであると言つて、これを非難しているのであります。私はおそらくこれこそが本質であると考えます。このたびの平和條約の締結によりまして、御承知のごとくアメリカの日本駐屯軍に対する費用、あるいはそれに対する日本の再軍備の費用、あるいは賠償あるいは外国財産補償等に関する莫大な費用が必要であるということは、これ周知の事実であります。新聞あるいはその他の日本の雑誌の論調から申しましても、増税は必至であるというよう状況のさ中に、吉田政府が今減税政策を高く掲げておるのでありますが、この背後には、恐るべき増税の陰謀があると、われわれは指摘せざるを得ないのであります。かつての日本帝国主義者が戰争をやるために平和を高く掲げ、そうして東洋永遠の平和のために、遂に東洋の破滅の戰争をやつたと同じように、この減税の背後には増税の陰謀があると、私は指摘せざるを得ないのであります。  大体減税あるいは増税と申しますが、問題は單に税法上の減税や形式上の減税では、これは問題にならないのであります。減税の基準は国民生活の実態が、税の負担に耐えるか耐えないかというころに、税金の基準がなければならないとわれわれは思うのであります。最近における国民生活は、今社会党の松尾さんが申されましたように、一般生活物資の値上りあるいは運賃、電燈料、郵便料の値上げのだめに購買力が減退いたしまして、中小企業の不況というような状態は、全国的にどこにもかしこにもあるのであります。それにもかかわらず基礎控除の多少の引上げ、あるいは扶養控除の引上げ税率の多少の変更等は、このような国民生活の苦しい状態を何ら緩和するものではない。従つて過去二箇年間行われました吉田内閣の減税政策のその裏には、自分の職業を転業したり廃業したり、あるいはまた一家心中をしなければならないという悲惨事が、次から次へと続出しているのであります。これこそ吉田内閣の減税政策に対する国民の悲しい抗議であると、私は考えるのであります。こういうよう状況から申しまして、それでは現在徴税の状況はどうかと申しますれば、依然として警察よりも税務署の方がこわいという感じが、全国民にあるのであります。私も先般墨田税務署の実態を調べたのでありますが、二十三年、二十四年、二十五年の滞納税金を差押え、公売しているのであります。国税徴収法によつて禁止されているところの差押え物件まで差押え、公売しているという事実さえあること、これは昨日の委員会におきましても、自由党の有田委員が具体的に指摘しておりますように、税務官吏の徴税のための血迷つた状態というものは、依然として解決されていない。こういうことをしなければ税金が納められないのだ。ここに自由党の減税政策の現実暴露が行われていると指摘せざるを得ない。さらに政府は税法上の減税の裏で、必ず所得額の水増しをやるというのが常套手段であつた。いわゆる自然増收という形によつて、予算外の莫大な税金を毎年かき集めているのであります。この自然増收の背後には、国民の血と涙があるということを、われわれは指摘しなければならないのであります。おそらく税法上の減税をこのたびやればやるほど、その裏におきましては伝家の宝刀であるところの所得の水増しをやつて、ますます税金を収奪しなければならないということは、必然の結果であります。日本の国民は、依然として徴税旋風のために苦しまなければならない。これこそアメリカの日本の植民地的支配のためには、どうしても国民から税金をしぼらなければならないというこの至上命令によつて、日本政府が忠実にこれを行わんとしたものであります。従つて減税政策は何ら国民生活をゆたかにするものでなく、ますます窮地に追いやるものであるという見地から、わが党はこの法案に対して絶対反対であります。
  47. 夏堀源三郎

  48. 上林與市郎

    ○上林委員 日本社会党二十三控室は、所得税法臨時特例に関する法律案賛成いたします。
  49. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 討論は終局いたしました。  これより本案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  50. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。  なお、ただいま可決されました両案に関する報告書の作成並びに提出手続等につきましては、委員長に御一任を願います。  明十一月一日は午前十時より在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案について、海外同胞引揚に関する特別委員会と連合審査会を開会し、在外公館等借入金提供関係者より、参考意見を聴取することに相なつておりますので、委員各位にはできる限り御出席相なるよう委員長より特にお願いいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後二時五十八分散会