○有田(二)
委員 さらに
一つ長官にお願いしたいことがある。先般大阪の天王寺
税務署管内で、判事の令状をと
つて旅館を三軒調べたのであります。それが脱税という容疑で、しかもこれを摘発してやるという精神でや
つておられるならば、
けつこうでありますけれ
ども、税金をすみやかに自分の思う線に持
つて来させるために、判事の令状をと
つて来た。しかもそれを、署長も知らなければ、もちろん直税においても知らないというような行き過ぎがありまして、大阪の直税部長なり天王寺署長に十分
注意しておいたのでありますが、全国的に判事の令状をとるというような場合でも、査察課の問題は別でありますが、その他のところで判事の令状をと
つてこれを調べるというようなときには、十分慎重にや
つていただきたい。税金を早く自分の思う線に持
つて来るために、判事の令状をと
つてだ、だ、だ、だとかきまわしておいて、おどかしてきめるというようなやり方は、これはおそらく
高橋長官の意思に反したやり方だろう。また大阪南
税務署では、以前に三人で薬局の税金を調べに行
つた。今は
法律でヒロポンは持つことができなくなりましたが、今から約一年前、このヒロポンが店の中にあ
つたというので、商品のヒロポンを南
税務署で持
つて帰
つて来た。お前はヒロポンの密売をしておるから、これから検察庁に届を出すというような調子で、非常におどかした。さらに三人が、直税課長の了解も了承も得ずして、本人の住まいの奈良県の富雄というところへ
行つて家宅捜索をした。そのときに、お婆さんが病気で瀕死の重症にあ
つたが、そこへ上り込んでいろいろや
つた。そのためにそのお婆さんは三日後に死んでしま
つた。そういうような事実があるのであります。当時
法律で薬局がヒロポンを持
つておることは許されていなか
つたので、そのヒロポンの商品を持
つて帰
つて来て、そうしてそれをだしにしておどかして、税
決定に持
つて行
つたというわけですが、こういうようなやり方は非常に行き過ぎであると私は
考えるのであります。先刻も墨田
税務署の話が野党の諸君から出ましたが、墨田
税務署員が
法人会でどういうことを言われたかと申しますと、二号さんがある人は税金を高くするという声明をしておられるのであります。二号さんと申しますか恋人と申しますか、恋人と税金がどういう
関係にあるのか。
税法上こういうことはおそらくないだろうと思う。そういう感情で税金をきめるというあり方が、まだ第一線には多分に残
つている。あいつはなまいきだからよけいと
つてやれとか、あいつは二号があるからよけいと
つてやれ。二号とか恋人と税とはどういう
関係があるか。これははなはだ変な例になりましたけれ
ども、しかし最もわかりやすい例でありますから申し上げますが、こういう
税務官吏の
考え方というものを、根本的にかえて行かなければならない。また間税課の吏員の中には、われわれは非常な権限を持
つておる、権力を持
つておる、何をや
つてもいいんだというような
考えを持
つておる者がある。従
つて間税課員の中には、非行が枚挙にいとまなくあるのであります。間税課が御存じの
通り飲食税を担当しておりました当時、役得のごとく間税課員が料理屋に
行つて食い荒してお
つたことは、皆さんも御
承知の
通りであります。そのときの残渣が今も残
つてお
つて、業者と間税課員、この因果
関係というものは、相当粛正する必要がある、かように私は
考えておるのであります。この点につきまして、私
どもは将来物品税あるいは間接税のあり方というものについて、熱心に
考えて行かなければならぬ、真剣にとつ組んで行かなければならぬと
考えておるのであります。この間税課員の
指導の仕方ですが、先般も大阪の浪速
税務署管内でありまするが、大阪間税部の監視課員が、ある冷蔵庫屋さんを調べに行
つた。そうしてそこの預金通帳を調べまして、銀行から逆算して調べて、その原料を入れておるトタン屋さん、地金屋さんを調べた。そうしてそこへ
行つて、何だ、こんな帳面じやだめじやないかと言うと、そこのおやじが、それじやどうかひとつ計理士を世話してくれと言
つた。よしというので世話して、そこへ
行つて酒を飲んでおる。監視課員を監視をするのが商売であ
つて、職業安定所の
職員にはな
つていない。また先般申しましたように、
調査課員が
税務代理士の仕事をや
つておる。この点も厳重にや
つていただきたい。最近大阪では
調査査察部長が吉田さんにかわられてからというものは、非常に締めた。私のある熱心な応援者の一人が料理屋をや
つておるが、そこへ私が行きましたら、有田さん、実は困
つたものだ。今度の
調査査察部長の吉田さんというのは、非常に厳重であるために、実に困
つておる。今までは
調査課の何人かの人が客引きをしてくれて、非常に
景気がよか
つたのであるが、夏枯れと、
調査査察部長がかわ
つてからというものは、厳重にごちそうになることを禁止されて、そのために不
景気にな
つて困
つておるということを聞いて、私は非常に喜んだ。それほど大阪ではごちそうになることを何とも思
つていない。これからこの
会社の税金を調べなければならぬという相手方からごちそうになる。直接ごちそうにはならない。間接にごちそうになる。なかなか上手なやり方でありますが、こういうやり方はいけないということを、私は吉本君時代にも
注意してお
つたのでありまするが、吉田さんはやはり監督官の経歴を経られただけに、これからごちそうになる場合には、必ず部長の許可を得べしという指示をした。従
つて調査課の課員は非常な動揺を感じまして、一時ストライキを起すような形勢でありましたけれ
ども、結局それがなくな
つて、今日ではそういうごちそうが非常に減
つて来た。以前はこういうことが非常に多か
つた。どうかひとつ全国的にこういう事態のないように、ひとつ
国税庁長官としてもや
つていただきたい。特に
調査課の運営につきましては、先般も申し上げましたけれ
ども、
調査課ができました目的は大体達成されて非常に
けつこうであります。私は
調査課が上げた
実績というものは、非常なものであろうと
考えるのでありますが、今日におきましては、相当
調査課につきまして、いろいろな魔の手が伸びつつあるのであります。若い
税務吏員の意思で、何百万円あるいは何千万円という税
決定をするのであります。非常な権力を持
つておる。この権力に、
ちようど砂糖につくありのごとくに、魔の手が伸びるのは当然であります。しかも今日
税務吏員は非常に薄給で、しかも営々として仕事をしておられる。従
つてこれに対しても誘惑の魔の手が伸びるのは当然であ
つて、これをどうして防ぐか。この点について
国税庁長官としても、機構の面において十分検討していただきたい。特に私は
税務署と一緒にな
つて税
決定をや
つて行くというような方向へ行くのが、非常にいいじやないかと思う。先般も申し上げましたが、岐阜の南
税務署の東海製糸の競売の問題にしましても、局の徴収課と南
税務署との間で共同でやられたら、あの問題は起らなか
つた。岐阜
税務署だけでやりましたために、二千万円の値打ちのあるものが、四百万円で競売された。しかも競売のその日に、工場で公売するということを十日前に発表しておきながら、その日にな
つて一日で公売しておる。これは
税法違反であります。こういうようなやり方で公売がなされるということは、
税務署のみにまかせたからであります。しからば局にまかせたらどうか。局だけにまかせましてもやはり間違いが起るのであります。ありは砂糖につくのであります。そういう権力のあるところには、どうしても誘惑が多いのであります。十分ひとつあらゆる面から監視をして、誘惑の芽を防ぐようにしていただきたい。しかも今度
法人税が四二%に上りましたが、この
法人税の問題につきましても、今日の
会社の労使という字は、使用人の使であります。資ではない。従
つて今日の
会社の社長あるいは重役というものは、ほんとうの資本家でないのでありまして、自分が社長にな
つて、役得のごとく料理屋に行く、あるいはごちそうを食うというようなことのために、結局経理部に頭が上らない。経理部が非常な権力を持つ。この経理部の対象になるのが、この
調査課であります。
会社の金を自由にする力を持
つておる。しかもこれが帝大を出た、あるいは大学を出た優秀な人が経理部員にな
つておりますから、その誘惑のやり方も非常に知能犯的なやり方であります。従
つて調査課員だけが悪いとは私は簡単に
考えないのでありまするが、どうしてもありは砂糖につくのであります。どうしたら、ありが砂糖につかないようにできるかという研究を、税制の面におきまして、
主税局長におかれても、
国税庁長官におかれても、その
観点から実際の
税法の運営の面において、十分に御検討いただきたいと思うのでありますが、御所見を承りたい。